JP4927263B2 - 樹脂成形品の衝撃解析方法及び設計方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂成形品の衝撃負荷時の変形挙動を予測するために用いる衝撃解析方法及び樹脂成形品の設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、乗用車の乗員に対する安全性を向上させるために、車体の様々な部位に衝撃吸収や補強を目的とした樹脂成形品が配置されている。このような部材は、収容空間の容積や形状、あるいは重量等の条件内において要求される性能を発揮する必要がある。このような成形品の設計を省力化するために、素材の物性値をコンピュータに入力して、荷重や衝撃が負荷された時の挙動をシミュレーションにより予測することが行われている。素材の物性値は、例えば、同一素材について作成した試験片を用いて測定している。
【0003】
このような手法を用いることにより、実地に成形して試験をする手間を省き、構造の最適化を容易に行なうことができる。従って、構造部品の開発の期間の短縮とコストの低減が実現できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、ピラーガーニッシュやダッシュボード表面の被覆材のような自動車用の内装部品は、事故の時に人体に直接に接触し、自らが変形・破壊等することによって人体に負荷される衝撃をできる限り軽減する役割を担っている。米国の連邦自動車安全基準(FMVSS)では、事故の際に人体の頭部が受ける損傷の程度を示す目安として、HIC(d)(頭部傷害値)を定義し、この値が所定値以下になるべきことを定めている。HIC(d)を実際に求めるには、人体の頭部を模したフリーモーションヘッドフォーム(FMH)の中に加速度センサを設置し、所定の速度で内装部品に衝突させる実地試験を行い、センサから出力されたデータを所定の方法で処理する。
【0005】
内装部品の開発を行うに当たっても、このような実地試験の代わりにコンピュータを用いた衝撃解析方法を活用するのが望ましい。しかしながら、このような自動車用の内装部品は、リブ構造のような複雑な形状を有し、さらに、衝突時の衝撃エネルギーを吸収する為大きく変形し、時として部分的な破壊に至る。一方、樹脂材料は金属材料と異なり、粘弾性特性を有するため、物性値は歪速度に大きな影響を受ける。したがって、このような複雑な変形過程の衝撃解析を精度よく実現する適切な物性値を設定することが難しかった。
【0006】
この発明は、上記課題に鑑み、例えば自動車用の内装部品のような樹脂成形品の衝撃特性を精度良く予測することができる衝撃解析方法及び設計方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、樹脂材料の機械的特性を示す物性値を設定し、任意の形状の樹脂成形品の衝撃特性を評価する樹脂成形品の衝撃解析方法であって、前記設定される物性値のうち、破壊判定値については、所定形状の樹脂成形品を用いた実地の衝撃試験結果と、この所定形状の樹脂成形品について破壊判定値をパラメータとして行った衝撃解析から得られた衝撃特性評価結果とを比較して、当該実地の衝撃試験結果における変形挙動と当該衝撃特性評価結果における変形挙動とが一致する場合の破壊判定値を衝撃解析の物性値として設定し、任意の形状の樹脂成形品の衝撃特性を評価することを特徴とする樹脂成形品の衝撃解析方法である。
【0008】
これにより、破壊判定値について正確な実測値を得ることが難しい場合でも、所定形状の樹脂成形品について破壊判定値をパラメータとして変化させて衝撃特性の評価を行い、これを実地試験結果と比較することによって、正確な破壊判定値を得ることができる。なお、「一致」とは、完全に一致する場合だけでなく、許容範囲内である、あるいは両者の誤差が最小である等の概念を含む。つまり、事前に必要な誤差の許容範囲が経験的に又は実験的に分かっている場合はその範囲内にあるか否かを判定し、許容範囲が不明な場合や、得られた誤差の最小値が許容範囲を超える場合には、得られた誤差が最小値となる場合を一致すると判定する。この場合、複数の破壊判定値について衝撃特性評価を行うことになる。例えば、パラメータとして仮に決めた破壊判定値を基点として、適当なピッチで値を振って評価を行う。衝撃特性の評価結果と実地試験結果との比較は、例えば人間がグラフを対比させて行うこともできるが、後述するようにコンピュータ処理することもできる。このようにして得られた破壊判定値を衝撃解析の物性値として設定することにより、同じ材料で作られた任意の形状の樹脂成形品の衝撃特性を精度よく評価することができる。
【0009】
前記設定される物性値のうち、降伏応力については、樹脂材料が粘弾性を有するため、歪み速度依存性を設定するのが望ましい。樹脂成形品の大きな特徴だからである。例えば、降伏応力の歪み速度依存性は、高速引張試験の結果から回帰したモデル式を用いて設定する。
【0010】
前記破壊判定値として破断塑性歪み又は破断歪みを用いるのが望ましい。例えば、自動車の内装部品として用いる樹脂成形品は一般に延性的に破断するので、破断塑性歪み又は破断歪みが破断を適切に示す判定値となる。
【0011】
前記所定形状の樹脂成形品はリブ構造体であるのが望ましい。この構造は、衝突時に大きく変形し、部分的な破断に至るため、適切な破壊判定値を得ることができるからである。
【0012】
前記破壊判定値の決定においては、実地の衝撃試験結果と衝撃解析から得られた衝撃特性評価結果における変形挙動を示す曲線の誤差を最適化手法によって最小化することが望ましい。これにより、人間による手作業を廃して効率化、高精度化を図ることができる。
【0013】
前記最適化手法は、応答曲面法、焼き鈍し法、遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワーク法のうちの1つ又は2以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。前記変形挙動を示す曲線は、時間−荷重曲線、時間−加速度曲線、変位−荷重曲線、変位−加速度曲線のいずれかであることが望ましい。いずれも状況に応じて適宜に選択が可能である。
【0014】
この発明の他の態様は、樹脂成形品に所定の衝撃特性を付与する樹脂成形品の設計方法であって、請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂成形品の衝撃解析方法を用いて前記所定の衝撃特性を達成したかを判断し、達成されていない場合は形状修正を行い、再度前記衝撃解析方法を用いて前記所定の衝撃特性を達成したかを判断し、以下、この工程を前記所定の衝撃特性が達成されるまで行うことを特徴とする樹脂成形品の設計方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ発明の好適な実施の形態を説明する。図1は、この発明の1つの実施の形態の衝撃解析方法の工程を示すフロー図である。まず、ステップ1において用いる樹脂材料の物性値を測定する。この物性値には、弾性率、降伏応力、ポアソン比、密度が含まれる。降伏応力については高速引張試験を実施することによって得ることができる。
【0016】
図2は、例えば自動車用内装部品に用いる樹脂材料の高速引張試験の結果を模式的に示すもので、降伏応力には歪み速度依存性が顕著に見られ、一般に歪み速度が大きいほど降伏応力も大きくなる。従って、降伏応力を歪み速度をパラメータとして表す必要が有る。この実施の形態では、一般的に知られたCowper-Symonds式を用いており、これによれば降伏応力は、
【数1】
Figure 0004927263
と表され、複数の歪み速度で引張試験を行うことにより、この材料における上式の各定数が定められる。この引張試験においては、ASTMD1822に記載のTYPE Lの試験片を用いるのが望ましい。また、歪み速度としては、1.0×101〜1.0×103の範囲が望ましい。なお、ここでは式を用いたが、降伏応力を歪み速度に対応する数値として与えるテーブル定義としてもよい。
【0017】
次に、ステップ2において、所定形状のモデル成形品を作成し、実地で衝撃試験を行うとともに、ステップ3において、同一モデルについてステップ1で得た物性値とパラメータとして仮に決めた破断塑性歪みと所定の解析手法を用いて同一の衝撃試験について再現解析を行う。この実施の形態では、衝撃試験として、図3に示すように、HIC(d)を求める試験を行う。すなわち、人間の頭部に似せたフリーモーションヘッドフォーム(FMH)10を、樹脂成形品12に規定の速度で衝突させる。ここで用いる樹脂成形品12の形状については、特に条件は無いが、設計しようとする成形品とある程度の類似性があることが好ましい。ここでは、平板の裏面に格子状の補強リブが設置された構成を用いている。
【0018】
次に、ステップ4において、ステップ2及び3で得た2つの評価結果における変形挙動を比較する。具体的には、変形挙動は、時間−荷重曲線、時間−加速度曲線、変位−荷重曲線、変位−加速度曲線等として得られるので、実地試験と再現解析のそれぞれの曲線を所定の方法で比較して、両者の一致度を調べる。
【0019】
両者の一致度を調べる方法として、例えば、人間の目視判定も1つの方法であるが、熟練度によって差がでる、定量的でない、等の不具合が有る。ここでは、2つの曲線の差の二乗の平均値が所定の許容値以下となる場合を一致すると判定するようにした。これにより、精度を向上させることができる。
【0020】
両者が一致しない場合には、ステップ5において破断塑性歪みの値を修正して設定し、ステップ3に戻って再度再現解析を行う。修正の方法は、例えば、パラメータである破断塑性歪みを所定のピッチだけプラス又はマイナス方向に移動する修正を行う。その結果を再度実地試験の結果と比較し、以下、同様の工程を両者が一致するまで繰り返し行う。例えば、誤差が拡大する場合には、客方向へ移動したり、ピッチを細かくするなどの方法を採る。
【0021】
結果を比較する作業や破断塑性歪みの修正作業については、手作業で行うのも1つの方法であるが、作業に膨大な工数が掛かる、繰り返し回数が制限されるため、一致判定の許容値の精度を低く設定せざるを得ない等の不具合が生じる。そこで、このような結果を比較する作業や破断塑性歪みの修正作業等を、所定の最適化手法や比較判定プログラムを用いてコンピュータに自動的に実施させ、両者を一致させることが望ましい。これにより、作業に必要な工数を減らし、作業を迅速化し、精度を向上させることができる。最適化手法としては、応答曲面法、焼き鈍し法、遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワーク法等が挙げられる。ここでは応答曲面法を用いた。
【0022】
両者が一致すると判断された場合には、その時の破断塑性歪みをその樹脂素材の物性値として採用し、これと再現解析に用いたと同じ解析手法を用いて、個々のニーズに応じた成形品の設計を行う。すなわち、何らかの方法で部品形状を設計し(ステップ6)、それを上記手法で解析し(ステップ7)、得られた評価結果が要求性能を達成したかどうかを判断し(ステップ8)、達成されていない場合は形状修正を行い(ステップ9)、再度ステップ7に戻って解析を行い、以下、この工程を性能が達成されるまで行う。
【0023】
(実施例)
素材として、住友化学工業株式会社製耐衝撃性ポリプロピレン、住友ノーブレン(商品名)WP712Fを用いて、図3に示すような所定の形状の成形品を成形し、また所定の形状モデルを作成して、実地の衝撃試験と再現解析を行った。実地試験の結果は図4の時間−加速度曲線に細い実線で示してある。事前の材料物性測定試験により、弾性率、降伏応力等の物性値が以下のように求められた。
・弾性率:863MPa
・降伏応力:19.6MPa
・ポアソン比:0.4
・密度:900kg/m
・Cowper-Symonds式のパラメータ:C=2.80 s-1, P=9.87
【0024】
再現解析はこれらの値と以下の手法を用いて行った。
・使用ソフト
LS-DYNA version 940(Livermore Software Technology Corporation製)
・解析手法
空間の離散化:有限要素法
時間積分:中心差分に基づく陽解法
・樹脂成形品の固定条件
フリーモーションヘッドフォームの反対側に剛体壁を定義(実地試験では鉄製バリアに固定)
・材料モデル: LS-DYNA物性タイプ24
【0025】
次に、再現解析の結果を図1に示す手法を用いて実地試験結果と比較し、誤差が最小である場合を選択し、図4に太い実線で示した。また、誤差が最小である場合を手作業で選んだ場合の結果を図4に太い破線で示した。それぞれの場合の破断塑性歪みと誤差を表1に示した。手作業で行った場合の方は、膨大な手間と時間を要している。
【表1】
Figure 0004927263
【0026】
次に、同じ樹脂素材の別の形状のモデルを作成し、実地試験と再現解析を行った。再現解析は、同じ解析手法と、上記で得られた破断塑性歪みの値とを用いている。実地試験結果を図5において細い実線で、また、再現解析結果を同図において太い実線で示した。この場合の誤差は10.1であり、得られた破断塑性歪みの値が正しいことが実証された。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、複雑な形状を有するような樹脂成形品の衝撃特性を精度良く評価ことができ、実地に成形して試験をする手間を省いて構造の最適化を容易に行ない、構造部品の開発の期間の短縮とコストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の衝撃解析手法の1例を示すフロー図である。
【図2】樹脂素材の引張試験の結果を模式的に示すグラフである。
【図3】衝撃試験の解析方法を模式的に示す図である。
【図4】衝撃試験における変形挙動を示すグラフである。
【図5】この発明の効果を確認するための試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
10 フリーモーションヘッドフォーム
12 樹脂成形品

Claims (8)

  1. 樹脂材料の機械的特性を示す物性値を設定し、任意の形状の樹脂成形品の衝撃特性を評価する樹脂成形品の衝撃解析方法であって、
    前記設定される物性値のうち、破壊判定値については、所定形状の樹脂成形品を用いた実地の衝撃試験結果と、この所定形状の樹脂成形品について破壊判定値をパラメータとして行った衝撃解析から得られた衝撃特性評価結果とを比較して、当該実地の衝撃試験結果における変形挙動と当該衝撃特性評価結果における変形挙動とが一致する場合の破壊判定値を衝撃解析の物性値として設定し、任意の形状の樹脂成形品の衝撃特性を評価することを特徴とする樹脂成形品の衝撃解析方法。
  2. 前記設定される物性値のうち、降伏応力については歪み速度依存性を設定することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の衝撃解析方法。
  3. 前記破壊判定値は破断塑性歪み又は破断歪みであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂成形品の衝撃解析方法。
  4. 前記所定形状の樹脂成形品はリブ構造体であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の樹脂成形品の衝撃解析方法。
  5. 破壊判定値の決定において、実地の衝撃試験結果と衝撃解析から得られた衝撃特性評価結果における変形挙動を示す曲線の誤差を最適化手法によって最小化することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の樹脂成形品の衝撃解析方法。
  6. 前記最適化手法は、応答曲面法、焼き鈍し法、遺伝的アルゴリズム、ニューラルネットワーク法のうちの1つ又は2以上を組み合わせて用いることを特徴とする請求項5に記載の樹脂成形品の衝撃解析方法。
  7. 前記変形挙動を示す曲線は、時間−荷重曲線、時間−加速度曲線、変位−荷重曲線、変位−加速度曲線のいずれかであることを特徴とする請求項5又は6に記載の樹脂成形品の衝撃解析方法。
  8. 樹脂成形品に所定の衝撃特性を付与する樹脂成形品の設計方法であって、
    請求項1ないし7のいずれかに記載の樹脂成形品の衝撃解析方法を用いて前記所定の衝撃特性を達成したかを判断し、達成されていない場合は形状修正を行い、再度前記衝撃解析方法を用いて前記所定の衝撃特性を達成したかを判断し、以下、この工程を前記所定の衝撃特性が達成されるまで行うことを特徴とする樹脂成形品の設計方法。
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