JP4922082B2 - 選択的接触還元反応用パラジウム触媒 - Google Patents
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Description
Angewandte Chemie,International Edition、2004、43巻、第1397〜1399頁 Green Chemistry、2004、6巻、第114〜118頁
請求項2の選択的接触還元反応用パラジウム触媒は、請求項1に係る発明において、前記モレキュラーシーブに対する金属パラジウムの含有量は2〜10質量%であることを特徴とする。
請求項1に記載の選択的接触還元反応用パラジウム触媒は、モレキュラーシーブを担体とし、その細孔に金属パラジウムが露出状態で担持されている。このため、モレキュラーシーブの細孔には金属パラジウムが露出状態で存在すると共に、還元され得る官能基を有するアルケン又はアルキンがモレキュラーシーブの細孔内に入り込み、そこでアルケン又はアルキンのπ電子が特異的に金属パラジウムに近づき、パラジウムが活性化され、アルケン又はアルキンの二重結合又は三重結合が選択的に接触還元されて単結合に変換されるものと考えられる。従って、還元され得る官能基を有するアルケン又はアルカンを選択的に還元してアルカンを定量的に得ることができる。
一般に、ニトロ基、エポキシ基等を有する化合物は、還元触媒の存在下に還元され、それぞれアミノ基、水酸基等を有する化合物に変換される。一方、二重結合を有するアルケンや三重結合を有するアルキンは、還元触媒の存在下に還元され、単結合を有するアルカンに変換される。このため、ニトロ基、エポキシ基等の還元され得る官能基と、二重結合又は三重結合との双方を有する化合物について、還元触媒の存在下に還元反応を行うと通常ニトロ基、エポキシ基等と、二重結合又は三重結合との双方が還元される。しかしながら、本実施形態の選択的接触還元反応(以下、単に還元反応ともいう)用パラジウム触媒(不均一系触媒)を用いることにより、分子内の二重結合又は三重結合を選択的に還元することができる。
・ 本実施形態における還元反応用パラジウム触媒は、モレキュラーシーブを担体とし、その細孔に金属パラジウムが露出状態で担持されている。このため、基質として還元され得る官能基を有するアルケン又はアルキンがモレキュラーシーブの細孔内に入ったとき、そこで金属パラジウムが基質の二重結合又は三重結合と特異的な相互作用を発現する。従って、当該還元反応用パラジウム触媒は、還元され得る官能基を有するアルケン又はアルカンの二重結合又は三重結合のみを選択的に還元して単結合とすることができ、還元生成物であるアルカンを定量的に得ることができる。
(製造例1)
選択的接触還元反応用パラジウム触媒の製造を以下のようにして実施した。すなわち、細孔径5Åのモレキュラーシーブ(以下、モレキュラーシーブ5Aという)を用意した。そして、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)を満たしたフラスコに酢酸パラジウムを555mg(2.47mmol)量り取り、メタノール30mlに溶解した。この溶液中にモレキュラーシーブ5Aを、金属パラジウムの含有量が5質量%になるように5.00g添加し、アルゴン雰囲気下に室温で、上澄みが透明になるまで6日間攪拌を続けた。そして、得られた灰白色の粉末を吸引濾過した後、メタノール(20mlずつ2回)及び水(20mlずつ2回)の順に洗浄し、次いでデシケータ中で減圧下、室温にて3日間乾燥した。
(製造例2及び3)
製造例2では、製造例1において、細孔径3Åのモレキュラーシーブ(以下、モレキュラーシーブ3Aという)を用い、該モレキュラーシーブに対する金属パラジウムの含有量を10質量%に変更した以外は、製造例1と同様に操作して選択的接触還元反応用パラジウム触媒(以下、10%Pd/MS3Aと称する)を定量的に得た。
(製造例4)
この製造例4では、製造例1において、モレキュラーシーブ3Aを用いた以外は、製造例1と同様に操作して選択的接触還元反応用パラジウム触媒(以下、5%Pd/MS3Aと称する)を定量的に得た。
(実施例1、2及び参考例1、ベンジルオキシ基を含むアルケンの接触還元)
実施例1では、メトキシ基とベンジルオキシ基とを有する芳香族アルケン(基質)としての1−ベンジルオキシ−2−メトキシ−4−(1−プロペン−1−イル)ベンゼン〔1-Benzyloxy-2-methoxy-4-(1-propene-1-yl)benzene〕127mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの12.7mg(基質に対して10質量%)をアセトニトリル(CH3CN)に懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で24時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮することにより、1−ベンジルオキシ−2−メトキシ−4−プロピルベンゼン〔1-Benzyloxy-2-methoxy-4-propylbenzene〕が転化率100%で得られた。この芳香族アルカンの収量は125mg(収率98%)であった。なお、上記の芳香族アルケンはトランス体である。
実施例3では、エポキシ基を有する脂肪族アルケン(基質)としての1,2−エポキシ−9−デセン(1,2-Epoxy-9-decene)77mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの7.7mg(基質に対して10質量%)をメタノール1.0mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で24時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮することにより、1,2−エポキシデカン(1,2-Epoxydecane)が転化率100%で得られた。この脂肪族アルカンの収量は70mg(収率91%)であった。
実施例4では、ベンジルエステル(基質)としてのベンジルシンナメート(Benzyl cinnamate)60mg(250μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの5.9mg(基質に対して10質量%)をアセトニトリル0.5mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で3時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮することにより、ベンジル−3−フェニルプロパノエート(Benzyl-3-phenylpropanoate)が転化率100%で得られた。その還元生成物の収量は55mg(収率92%)であった。
実施例6では、下記の化学式で表されるフェニル基及びジエン結合を有する芳香族ケトン(基質)としての1,5−ジフェニル−2,4−ペンタジエン−1−オン(1,5-Diphenyl-2,4-pentadien-1-on)117mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの11.7mg(基質に対して10質量%)をメタノール1.0mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で24時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮することにより、1,5−ジフェニル−1−ペンタノン(1,5-Diphenyl-2,4-pentadien-1-on)が転化率100%で得られた。その還元生成物(アルカン)の収量は117mg(収率100%)であった。
この実施例8では、両末端にビニル基を有するカーバメート化合物(基質)としてのベンジルN,N−ジアリルカーバメート(Benzyl N,N-diallylcarbamate)116mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの11.6mg(基質に対して10質量%)をメタノール1.0mlと共に、圧力計付き封管中で懸濁させ、水素置換した後、0.3MPa(3気圧)、室温下で3時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮することにより、ベンジルN,N−ジプロピルカーバメート(Benzyl N,N-dipropylcarbamate)が転化率100%で得られた。その還元生成物(アルカン)の収量は109mg(収率94%)であった。
実施例9では、ニトロ基及びビニル基を有する脂肪族アルケン(基質)としての6−ニトロ−1−ヘキセン(6-Nitro-1-hexene)65mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの6.5mg(基質に対して10質量%)を重メタノール(CD3OD)1.0mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で3時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮することによって、1−ニトロヘキサン(1-Nitrohexane)が転化率100%で得られた。この還元生成物(アルカン)の変換収率は100%であった。該還元生成物の構造及び変換収率については、1H−NMR(核磁気共鳴スペクトル分析)によって確認した。
この実施例12では、末端にビニル基を有する芳香族アルデヒド(基質)としての4−(アリロキシ)ベンズアルデヒド〔4-(Allyloxy)benzaldehyde〕81mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの8.1mg(基質に対して10質量%)をメタノール1.0mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で24時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮したところ、4−プロピロキシベンズアルデヒド(4-Propyloxybenzaldehyde)が転化率100%で得られた。その還元生成物(アルカン)の収量は76mg(収率94%)であった。
実施例13では、ベンジルエステル(基質)としてのベンジルシンナメート(Benzyl cinnamate)60mg(250μmol)及び還元触媒として製造例2で得た10%Pd/MS3Aの6.0mg(基質に対して10質量%)をメタノール1.0mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で3時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮したところ、ベンジル3−フェニルプロパノエート(Benzyl3-phenylpropanoate)が転化率100%で得られた。その還元生成物(アルカン)の収量は44mg(収率74%)であった。
(実施例15及び16、モレキュラーシーブの細孔径を変更した場合におけるグリシジルエステルの接触還元)
実施例15では、グリシジル基を有する脂肪族アルケン(基質)としてのグリシジルメタクリレート(Glycidyl methacrylate)71mg(500μmol)及び還元触媒として製造例1で得た5%Pd/MS5Aの7.1mg(基質に対して10質量%)をメタノール1.0mlに懸濁させ、系内を水素置換した後、室温下で24時間激しく撹拌した。次いで、還元触媒をメンブランフィルタで濾別し、濾液を減圧濃縮したところ、グリシジルイソブチレート(Glycidyl isobutylate)が転化率100%で定量的に得られた。得られたグリシジルイソブチレートの収量は66mg(収率91%)であった。
(実施例17、モレキュラーシーブの細孔径を変更した場合におけるベンジルエステルの接触還元)
この実施例17では、前記実施例5において、還元触媒として製造例4で得た5%Pd/MS3Aを用いた以外は実施例5と同様に接触還元反応を行った。その結果、生成物はベンジルイソブチレートが85%(転化率85%)で、未反応のベンジルメタクリレートが15%であった。この実施例17を実施例5と比較すると、モレキュラーシーブの細孔径が5Åである還元触媒を用いた場合(実施例5)の方が、モレキュラーシーブの細孔径が3Åである還元触媒を用いた場合(実施例17)に比べ、アルケンの還元について高い活性を示した。
(実施例18、モレキュラーシーブの細孔径を変更した場合における脂肪族カーバメート化合物の接触還元)
この実施例18では、前記実施例8において、還元触媒として製造例4で得た5%Pd/MS3Aを用いた以外は実施例8と同様に接触還元反応を行った。その結果、ベンジルN,N−ジアリルカーバメートが全て還元され、生成物としてベンジルN,N−ジプロピルカーバメートが転化率100%で得られた。この実施例18を実施例8と比較すると、モレキュラーシーブの細孔径が5Åである還元触媒を用いた場合(実施例8)と、モレキュラーシーブの細孔径が3Åである還元触媒を用いた場合(実施例18)とでアルケンの還元について全く同じ活性を示した。
・ 基質として、二重結合のみを有するアルケン又は三重結合のみを有するアルキンが含まれている混合物を使用することもできる。
・ 還元反応用パラジウム触媒として、モレキュラーシーブの細孔径の異なるものを複数種類組合せて得られたものを使用することも可能である。
Claims (2)
- 細孔径が3〜7Åであるモレキュラーシーブを担体とし、その細孔に金属パラジウムが露出状態で担持され、還元され得る官能基を有するアルケン又はアルキンが、還元され得る官能基としてベンジルオキシ基、エポキシ基、ニトロ基、エステル結合、ケトン基、カルボキシル基、カーバメイト基、アルデヒド基若しくはグリシジル基を有するアルケン又はアルキンであり、このアルケン又はアルキンの二重結合又は三重結合を選択的に接触還元してアルカンに変換する反応に用いられることを特徴とする選択的接触還元反応用パラジウム触媒。
- 前記モレキュラーシーブに対する金属パラジウムの含有量は2〜10質量%であることを特徴とする請求項1に記載の選択的接触還元反応用パラジウム触媒。
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