図1〜図12を参照し、本出願に係るローテーション計画立案方法及びローテーション計画装置について説明する。
(実施例1)
図1は、本実施例に係るローテーション計画装置が行う処理の概要を示すブロック図である。本実施例に係るローテーション装置は図1に記載された複数の手段を用いて処理を行う。まず図1を用いて本実施例の概要を説明する。
図1に示す処理は、運転日程入力手段1と、部品種類属性入力手段2と、部品情報入力手段3と、部品割付処理手段4と、割付成立判定手段5と、計画表示手段6と、を少なくとも有している。なお、本願明細書では、説明の便宜のためこれら手段に名称を付しているが、以下に示す処理を行っている限りにおいて処理手段の名称で特に限定されることはなく、また、
運転日程入力手段1は、運転計画立案の対象となる複数の軸・プラントの運転・検査停止に関する日程情報の入力を受け付け、部品割付処理手段へと出力する。部品種類属性入力手段2は、部品の種類に応じて決められている当該部品の寿命や補修必要期間等の属性についての入力を受け付け、部品割付処理手段4へと出力する。部品情報入力手段3はローテーションする部品のローテーション計画開始時における運転状態や運転時間等の初期状態の入力を受け付け、部品割付処理手段4へと出力する。部品割付処理手段4は、運転日程入力手段1により入力される各軸・プラントの運転期間に、部品種類属性入力手段2から入力される各部品の属性や部品情報入力手段3から入力される初期状態の情報に基づき適切な部品の割り付けを行う。なお各軸・プラントの各運転期間は直接入力された情報により計算することも可能であり、入力された各軸・プラントの検査停止期間から計算することも可能である。割付成立判定手段5は、部品割付処理手段4が割り付けた結果の入力を受け、運転計画の矛盾の有無を判定する。そして計画表示手段6は、割付成立判定手段5の処理により成立した情報、例えばローテーション計画における部品の割付,部品別の総運転時間,部品が交換又は補修になる時期を表示画面等に表示する。
次に、図1〜図8を用いて本実施例の詳細を説明する。ここでは部品種類の例として一段動翼を想定し、4軸のガスタービンで7つの部品をローテーションする例を挙げて説明する。なお実際の一段動翼は複数の個体をローターに組み込み1セットとして扱うが、簡単のためここで部品1,部品2…と呼ぶのは夫々部品1セットを指すものとする。同様に他の種類の部品についても、1セットとして1つの軸に組み込むものを1部品として以降扱う。また、本明細書では以降「運転時間」の表現を統一して用いるが、これはそのまま運転負荷を考慮し、あらかじめ設定された係数から換算される「等価運転時間」と置き換えても構わない。なお、この詳細な説明であっても本実施例のガスタービンの軸数,部品数に限定されることはない。
運転日程入力手段1は、運転計画立案の対象となる複数の軸・プラントの運転・検査停止に関する日程情報の入力を受け付け、部品割付処理手段へと出力する。図2に入力された日程情報の例を示す。
図2は検査停止に関する日程情報を示すものであり、図2の列21は検査停止の行われる軸の名称を、列22は検査停止名称を、列23は検査停止の開始日を、列24はその終了日をそれぞれ示す。
図3は、図2の情報に基づいて日程情報を表現しなおしたものであり、横軸は時間軸を、縦軸は軸の名称をとり直している。ここで、停止期間以外は運転すると仮定すれば、例えば第1軸の運転期間1は、検査停止1の終了日の翌日(4月6日)から検査停止5の開始日の前日(7月4日)までとなり、図3中に示すような日程情報を得ることができる。
部品種類属性入力手段2は、部品の種類に応じて決められている当該部品の寿命や補修必要期間,補修に必要とされるコスト等の属性についての入力を受け付け、部品割付処理手段4へと出力する。ここで入力する属性は、燃焼器部品,動翼,静翼,シュラウド等、部品種類により決まる属性であり、ローテーション計画立案手順上は、運用計画を行う上での制約条件となる。ここで入力する属性には、例えば(1)部品の寿命、(2)補修が必要な部品の場合は、補修の必要な連続運転期間を表す補修間耐用時間、(3)補修に要する期間をあらわす補修期間、等がある。
部品情報入力手段3はローテーションする部品のローテーション計画開始時における運転状態や運転時間等の初期状態の入力を受け付け、部品割付処理手段4へと出力する。図4は部品1から部品7の初期状態についての例を示す。
図4における列41は部品番号を、列42はローテーション計画開始時点の運転状態を、列43はローテーション計画開始時点での総運転時間を、列44はローテーション計画開始時点で直前に行った補修時における運転時間を、それぞれ示す。なお列43の現在の運転状態は、いずれかの軸・プラントで運転中/補修中/予備品/交換による廃棄、のいずれかの状態をあらわす。
部品割付処理手段4は、運転日程入力手段1により入力される各軸・プラントの各運転期間に、部品種類属性入力手段2から入力される各部品の属性や部品情報入力手段3から入力される初期状態の情報に基づき適切な部品の割り付けを行う。即ち部品種類属性入力手段2及び部品情報入力手段3からの入力に基づいて、運転日程入力手段1で入力された期間のローテーション計画を立案する。図3を用いて具体的に説明すると、運転日程入力手段1で入力された検査停止期間等より決まる図3中の31〜38の運転期間に、図4で示す部品を使用される部品として割り付ける処理である。なお、部品割付処理手段は、割付成立判定手段5の出力に応じて再度部品割付処理を行う場合もある。また、入力された全部の運転期間に部品が割り付けられたかをチェックするのも本手段の処理である。
割付成立判定手段5は、部品割付処理手段4が割り付けた結果の入力を受け、運転計画の矛盾の有無を判定する。即ち部品割付処理手段4で割り付けられた部品が、割り付けられた運転期間で運用可能か否かを判定する。ここで、運用可能か否かを判定する条件としては、
(1)部品に割り付けた運転期間にその部品は予備品状態となっているか否か(いずれかの軸に組み込まれていたり、補修中でないか否か)、
(2)その部品が割り付けられた運転期間とその部品の総運転時間との和(加算した値)が部品の寿命時間をこえているか否か、
また、一定期間ごとに部品の補修が必要な場合は
(3)その部品に割り付けられた運転期間とその部品の前回補修時の運転時間との和(加算した値)が部品の補修間耐用時間を超えているか否か、
等がある。
以上の条件を考慮し、運転可能であると判断された場合、割付成立判定手段5は割付が成立したと判断する。
ここで、図5の処理フローを用いて割付成立判定手段5の判定処理を具体的に説明する。なおここではまず運転期間jに部品Iを割り付けられている場合において、運転期間kに対する部品Iの割付成立判定を行う場合を例にとり説明する。
まず処理51では、運転期間k終了時点における部品Iの総運転時間を算出する。これは、運転期間j終了時点における部品Iの総運転時間に運転期間kの運転時間を加算することで求めることができる。なお、運転期間j終了時点における部品Iの総運転時間は入力されたローテーション計画開始時点における総運転時間(図4参照)と当該開始時点から運転期間j終了時点までの期間(残り時間)を加算して求めてもよい。もちろん、運転期間j開始時点における部品Iの総運転時間を入力させ、運転期間jの運転時間を加算させても良い。
処理52では、運転期間k終了時点における部品Iの補修後運転時間を算出する。これは、前回補修時における部品Iの運転時間(前回補修時運転時間)をメモリ上に記憶しておき、処理51で求めた部品Iの総運転時間から差し引くことで求めることができる。なお本処理は、部品種類として一定時間ごとに補修の必要な部品についてのみ必要となる。
処理53では、運転期間kの開始時点で部品Iが予備品であるか否かを判定する。これは部品Iに割り付けられた他の運転期間が、運転期間kと重複していないことを判定する。
処理54では、運転期間k開始前に補修が必要であるかを判定する。具体的には、一定時間ごとに補修が必要となる部品種類であるか否か、処理52で求めた部品Iの(補修後運転時間)>(補修間耐用時間)となるか否かで判定する。(補修後運転時間)>(補修間耐用時間)となった場合は、運転期間kに部品Iを割り付けると部品Iは補修間耐用時間を超えてしまうことになるため、運転期間kの前に補修期間を設ける必要が生じる。なお、検査停止の度に補修が必要となる部品の場合は、運転期間に関わらずこの処理での判定は無条件でYes(補修必要)となる。一方、補修を必要としない部品種類の場合は、判定はNoとなり処理58へ進む。
処理55では、処理54の判定に基づいて部品Iの運転期間kの前に補修を設定する。
処理56では、処理54の判定で運転時間kの前に補修の必要があると判断されている場合、運転期間k開始時点で部品Iについての補修が終了しているか否かを判定する処理である。ここの判定では部品Iが現在割り当てられている運転期間(運転期間j)の終了時点から運転期間kの開始時点までの期間が部品Iの補修に必要な期間以上であることを確認すればよい。判定がYes(補修が終了している)の場合は処理58へ、No(補修が終了していない)の場合は処理57へ進む。なおここでNoの場合、即ち処理56で運転期間kの前に補修期間がとれない場合は、部品Iの運用制約条件を充たさないことになるため処理57では部品Iが運転期間kに割付不可であると判定し、処理する。これにより部品Iの運転期間への割付処理は終了する。
処理58は、処理51で求めた部品Iの総運転時間が部品寿命より少ないか否かを判定する。具体的には運転期間kで部品Iを使用しても部品寿命を超えていないか否かを判定する処理である。超える場合は処理59へ、超えない場合は処理60へ進むこととなる。なおここで処理59は、部品Iを運転期間kで使用した場合寿命を超えてしまうと処理
58により判定されているため、部品Iを他の部品に交換した後、新たな部品Iを運転期間kに割付可とする判定を行う。ここで部品Iの運転期間kへの割付処理は終了となる。
処理60は、処理58で部品Iを運転期間kで使用しても寿命を超えないと判定された場合に行う処理である。この時点で部品Iは上記全ての条件を満たしていることとなり、部品Iを運転期間kに割付可とする判定を行う。これにより部品Iの運転期間kへの割付処理が終了する。
以上、図5に例示する処理を行うことで、部品割付処理部で割り付けた部品が割付可能であるか否かを判定するとともに、部品の寿命や補修間耐用時間を参照しながら当該運転期間前に補修や交換の必要があるか否かも判定し、交換や補修の必要な部品の交換や補修のタイミングを決定し、効率の良いローテーション計画を立案することができる。
なおもちろん本出願に係る発明は以上の制約条件に限定されるものでなく、例えば同じ軸で連続して同じ部品を使わない等、他の制約条件があれば必要に応じて割付成立判定手段5の判定内容に追加することで制約条件を満たす部品の割付を設定し、効率が良いローテーション計画の立案することができる。
次に、図6を用いて部品割付処理手段4と、割付成立判定手段5のローテーション計画立案時の処理フローを説明する。
この処理フローは複数軸のそれぞれが複数の運転期間を有する場合(図3参照)に、各運転期間へ部品を割り付けるローテーション計画の立案を想定している。図中の各処理のうち、図中破線で囲んだ処理61,62,64,65,66は部品割付処理手段4の処理であり、図示はしないが処理63は割付成立判定手段5の処理である。なお本実施例では説明の便宜のため、各運転期間の開始日が早い順にそれぞれ運転期間1,運転期間2…と番号を割り振るものとする。
処理61は、運転期間のカウンタKを1に初期化する。
処理62は、運転期間kに、部品割付処理手段4による割付処理を行い、任意の部品Iを割り付ける。
処理63は、運転期間kに、割付成立判定手段5による割付成立判定を行う。なおこれは図5において説明した処理である。
処理64は、処理63の判定処理で運転期間kに割付が成立したか否かの判定処理を行う。割付成立の場合は処理65に進み、割付不成立の場合は処理62に進むこととなる。
処理65は、運転期間kの割付成立判定を受けて、次に割付処理を行う運転期間kのカウンタを次に進める処理である。
処理66は、運転期間のカウンタKが、ローテーション計画を立てる運転期間数を超えたか否かを判定する。カウンタKが運転期間数を超えた場合には、すべての運転期間に割付が終了したとして処理を終了する。運転期間数に満たない場合は割付が終了していないため、処理62に戻り、処理62以降の処理を繰り返す。
以上の処理を行うことで、当該部品種類の運用制約を満足するローテーション計画が立案可能である。
なお、図6の処理を通じてどのようなローテーション計画が立案できるかは、部品割付処理手段4の動作に依存し、様々なローテーション計画を立案できる。例えば部品割付処理手段4の割付ルールは様々に設定することが可能であり、例えば部品番号の若い順から割り付けるルールを設定すると、部品割付処理手段4は部品1,部品2,部品3…と部品番号の若い順を優先して用いるローテーション計画を立案することができる。また、部品の残り寿命が多い順、もしくは少ない順に優先的に割り付ける設定、部品の残り寿命と運転期間の長さの差が小さい順に割り付ける設定等、様々なルール設定が可能である。更にはルールを設定せず、ランダムに割り振ることも可能である。この割付のルール(ユーザが所望する評価値も含む)は分割ルール入力手段(図示せず)として部品割付手段へ入力させることで可能である。
次に計画表示手段6について説明する。計画表示手段6は、割付成立判定手段5の処理により成立した情報、例えばローテーション計画における部品の割付,部品別の総運転時間,部品が交換又は補修になる時期を表示画面等に表示する手段である。
図7に計画表示手段6での表示例を示す。図7の横軸は時間軸であり、縦軸の上部には各軸ごとの運転日程入力手段1で入力された検査停止・運転期間の日程が、下部にはローテーション計画立案の結果割り付けられた部品毎のローテーションが夫々表示されている。図7の71〜78は部品の割付の必要な運転期間であり、図中の71a〜78aが立案されたローテーション計画である。図7の例では71aが運転期間1の71に、72aが運転期間2の72にそれぞれ割り付けられていることをしめしている。なお、計画表示手段6に表示するその他の内容としては、割付成立判定手段5で決定する補修や交換の時期がある。例えば79と80は補修期間を表示し、81〜83は部品の交換の時期を表示している。また割付成立判定手段5では部品の総運転時間も算出しているため、部品交換時の当該部品の総運転時間も表示することができる。
なお、計画表示手段6の機能として、結果を参照するのみでなく、表示されたローテーション計画について画面上で対話的に変更を加えて、その結果を同画面上で参照する機能を加えることも可能である。以下に具体例を挙げて説明する。
図8は立案されたローテーション計画の表示画面の例であり、図8の符号111で示される矢印は、画面中の任意の位置を選択可能とするマウス等のポインティングデバイスである。
例えばポインティングデバイスにより、画面中に表示される日程情報のうち検査停止6の終了日を示すライン112を選択し、終了日の位置を右や左に移動する処理が可能となる。移動した後ライン112の位置を確定すると、検査停止6終了日を例えば112aに変更したと見なすことができる。上記日程の変更操作を受けると、表示されているローテーション計画のうちライン112で示される検査停止6の終了日に関連する項目も対応して変更される。この例では検査停止6終了日と関連する項目は、部品4の2軸での使用開始日である113で示される日程と、日程の変更に伴い変更になる部品4の総運転時間
115である。具体的には、日程112を日程112aへ変更すると、113を112aと同一の日付である113aに移動し、113と113aとの差分で計算される総運転時間の差分を計算により115に変えて表示する。
以上のように、計画表示部では、表示画面上の縦のラインで表されるすべての日付情報について、表示画面中の他の日付や、日付に基づき計算される運転時間情報と関連付けておき、ユーザからの日程変更操作に応じて変更結果を表示することもできる。なお、ポインティングデバイスによる変更に基づいて運転日程入力手段1への再入力,ローテーション計画の再立案を行い、その結果を表示することも可能ではある。
また、この画面表示例では、113の日付の変更しうる範囲は図8の114の矢印の範囲内である。これを超えると、部品4のほかの運転期間と重複してしまうため、運用計画が成り立たなくなる。したがって、各日程ごとに運用が成り立つ範囲で変更できる範囲の範囲を決定しておき、この範囲を超える場合はアラーム音を鳴らすなどの機能を加えることも可能である。
また、上記実施例では、マウス操作により日程変更を行う例を挙げたが、必ずしもこれに限らず、日程を選択して日付を書き換えるなど、他の手段を用いることも可能である。
以上のように本発明の構成により、複数軸に、軸数+n個の予備部品をローテーションする計画を立案し、結果を表示することが可能となり、更には複数軸の管理者が少ない部品数で複数軸を効率よく運用することができ、またローテーション計画の策定負荷も大幅に低減できる。
(実施例2)
次に本出願に係る発明の第二の実施例について説明する。
図9は、本実施例に係るローテーション計画装置が行う処理の概要を示すブロック図であり、図9のブロック図は図1に示すブロック図の割付成立判定手段5と計画表示手段6との間に評価関数計算手段7を備えた構成となっている。
評価関数計算手段7は、部品割付処理手段4,割付成立判定手段5を経由して立案されたローテーション計画に対し、評価値計算を行う手段である。本出願に係る発明を用いると、部品ローテーション計画に対して複数の計画を立案することが可能となる。複数の計画が存在する場合にはいずれの計画がより良いかを評価する評価値が必要である。このため、評価関数計算手段7では立案されたローテーション計画について評価値計算を行い、計算した評価値を計画表示手段6に表示することで、立案されたそれぞれの計画についてユーザが評価値を参照し、より良いと思われる計画を自動若しくは手動で選択することができる。また、システム内部で最も評価値の良かったローテーション計画を選択し、計画表示手段6に表示することもできる。
評価関数としては、例えば部品に交換が発生した場合の残り寿命の総和や、補修にかかるコストの総和などを用いることができる。もちろんユーザにより重視する対象が異なることが考えられるので、複数の評価関数を準備し、ユーザが任意に選択できるようにすることも可能である。
図10は本実施例に係るローテーション計画装置の評価関数計算手段7が行う処理の概要を示すブロック図である。なお61〜66の処理は、図6において説明した処理と同様であるため説明は省略する。図中の各処理のうち、図中破線で囲んだ処理61,62,
64,65,66は部品割付処理手段4の処理であり、図示はしないが処理63は割付成立判定手段5の処理であり、処理91,92,93が評価関数計算手段7の処理である。
処理91は、評価関数計算手段7の機能による評価関数の計算処理であり、61から
66までの処理で立案されたローテーション計画に対して評価関数の計算を行う。
処理92は、61から66までの処理で立案されたローテーション計画と、処理91で算出された評価関数をメモリ上に記憶する。
処理93は、終了条件を判定し、終了条件に適合した場合には終了し、適合しない場合には処理61に戻り、61〜92の処理を繰り返すことで次のローテーション計画を立案する。終了条件には様々な設定方法が考えられるが、例えば予め求めたいローテーション計画数を設定しておき、メモリ上に記憶されたローテーション計画がそれ以上になったら終了、もしくは計算時間がかかるような場合には計算時間の上限を設定しておく、更にはユーザがローテーション計画の立案段階において設定した評価関数の値に達した場合に終了させる等の設定が考えられる。
以上の図10で説明される実施例2の場合も、立案されるローテーション計画の内容は図7の場合と同様に部品割付処理手段4の動作に依存する。部品割付処理手段4では、運転期間k(k=1〜運転期間数)のそれぞれにすべての部品を割り付ける可能性を考慮し、総当りでローテーション計画を行うことも可能であるし、ランダムに割り付けることも可能である。またGAやSAなどの最適化手法を使って割付を決定することも可能である。
以上のように、本実施例に係るローテーション計画装置によれば、複数のローテーション計画を立案し、それぞれの計画を評価,選択することが可能となる。なお実施例1と同様、この割付のルール(ユーザが所望する評価値も含む)は分割ルール入力手段(図示せず)として部品割付手段へ入力させることで実現可能である。
特に、現実のガスタービンの運用計画では、管理者の計画により検査点検の期間が変動し、すべての運転期間が同一の長さに設定されることは考えにくい。ローテーション計画期間内の各運転期間の長さがばらついていると、部品の割り付け方によって残り寿命を最少にする計画を立案できる場合もある。
以上、複数のローテーション計画の立案時に残り寿命などの評価関数も求めることで、よりよいローテーション計画を立案することができる。複数のローテーション計画を立案する場合の評価関数計算手段7を設けることで、最も効率の良い、若しくはユーザが所望するローテーション計画を立案することができるのである。
図11は、実施例2に係る計画表示手段6の表示内容例を示す。
同じ期間のローテーション計画について、例えば101と102の2種類のローテーション計画が立案でき、さらにこの2つの計画を比較することができる。例えば図11において、第一のローテーション計画101の符号103と104の部品の軸割付と、第二のローテーション計画102の符号106と107の部品の軸割付とは入れ替わっている。それに伴い第一のローテーション計画101では103の割付により部品1が寿命に至り、交換となっていたものが、第二のローテーション計画102では108の運転期間6にも部品1を割り付けることができ、その結果として交換の必要な部品が3個から2個に減少している。
(実施例3)
次に本出願に係る発明の第三の実施例について説明する。
図12は、本実施例に係るローテーション計画装置を用いたシステムの概要を示すブロック図である。図12の122a,122b…はそれぞれ複数もしくは単一の軸を運転するプラントである。121は、これら122a,122bのプラントの運転実績や運転計画情報を保持し、管理保全計画を立てる拠点である。これら122a,122b…と121の拠点は、電気通信回線などの通信手段120で結ばれており、データの送受信が可能な状態である。
プラント122a,122b…では、実績・計画格納手段123a,123b…をそれぞれ備え、これは各プラントのローテーション計画と実績に関する情報を蓄積する手段である。また、それぞれデータ入出力手段124a,124b…を備え、実績・計画格納手段123a,123b…に蓄積された情報を入力して通信手段120を介して拠点121に情報を送信する。拠点121はデータ入出力手段125と、入カデータ作成手段126と、既に実施例を挙げて説明したローテーション計画装置と実績・計画一括格納手段128を有する。ここでは、ローテーション計画装置を便宜上まとめて符号127であらわす。実績・計画一括格納手段128は、実績・計画格納手段123a,123b…に格納されているものと同様の情報を、まとめて格納する手段である。また、図12の例ではローテーション計画装置は第一の実施例の実現形態として表現しているが、これは既出の実施例のうちのどれを用いてもよい。
拠点121では、通信手段120を介して伝送された計画と実績に関する情報をデータ入出力手段125で入力し、実績・計画一括格納手段128に格納する。また、入力された情報から、入カデータ作成手段126で127のローテーション計画装置の入力に必要な情報を作成する。該作成された入力情報を入力としてローテーション計画装置127でローテーション計画を立案する。立案されたローテーション計画は実績計画格納手段に蓄積されるとともに、通信手段120を介して、ローテーション計画に該当するプラント
122a,122b…のいずれかまたは複数にローテーション計画を送信する。
これらプラント122a,122b…と121の拠点は、通信手段120で結ばれているため、国内、世界の様々な場所に離れて分布していても、ローテーションの実績・計画等のデータを共有化することができる。
また、複数のプラントにわたって部品のローテーションを行う計画を立てることもできる。
本実施例でのローテーション計画の立案方法は、各プラント122a,122b…でデータを電子メール等の手段を用い、データ入出力手段124a,124b…と通信手段
120を介してデータを送信し、拠点側で該データを受信してこれを入力としてローテーション計画立案を実行し、立案したローテーション計画を実績計画格納手段122に蓄積し、またデータ入出力手段125を介して立案したローテーション計画をプラント122a,122b…の該当する実績・計画格納手段123a,123b…にメール等の手段を用いて送信する。
または、拠点120において、ローテーション計画装置127をインターネット経由でプラント122a,122b…に提供する実施形態もある。この場合は、拠点121で保持するローテーション計画装置127をインターネットのホームページを利用し公開する。プラント122a,122b…では、インターネットのブラウザを利用して該ホームページを開き、データ入出力手段124a,124b…からローテーション計画立案に必要な情報を入力して、実行命令を送信する。該入力された入力情報と実行命令は通信手段
120を介して拠点121に送信され、ローテーション計画装置127が実行される。立案したローテーション計画を実績・計画一括格納手段128に蓄積されると同時にデータ入出力手段125を介してプラント122a,122b…のインターネットブラウザに表示される。プラント122a,122b…では送信されたローテーション計画必要に応じ該当する実績・計画格納手段123a,123b…に格納する。
以上のように、拠点でローテーション計画装置を保持し、複数のプラントのローテーション計画を立案することで、複数のプラントの実績及び計画情報を拠点で一括管理することができる。
このような実施形態をとることで、各プラントの保有者は、適切なローテーション計画を手作業の立案による負荷なく、また時間遅れもなく立案できる上に、ローテーション計画装置が拠点で一括管理されているため、ローテーション計画装置自体の保守管理も行わなくて良いメリットがある。
また、この実施形態をとると、複数のプラントに関する実績・計画情報を拠点で一括管理しているため、複数のプラントにわたった部品のローテーション計画を立てることができる。このような場合は例えばサービスの形態として、拠点である部品のメーカや保守サービスの提供者が部品を一括して管理し、プラント側の設定した運転計画を入カデータとして、拠点でローテーション計画装置を実行し複数プラントに渡ったローテーション計画を立てることができる。
また、以上の実施例の説明では拠点と表現したが、これを複数のプラントの部品の生産や、補修などの保守管理を行うメーカもしくは保守会社とすると、上記のような実施形態をとることにより各プラントの実績や計画をあらかじめ把握し、適切な生産計画,補修計画を立てることができる。点検時期など、運転計画に変更が生じた場合には拠点のシステムを介して計画を立てるため、計画の更新時には意図しなくても必ず拠点側に更新された計画が送信されることとなり、時間遅れなく常に最新の計画が拠点側で参照できることとなる。
(実施例4)
次に本出願に係る発明の第四の実施例について説明する。
図13は、本実施例に係るローテーション計画装置が行う処理の概要を示すブロック図であり、図13のブロック図は図1に示すブロック図に監視情報入力手段10と運転条件設定手段9,寿命算出手段8を加えた構成となっている。
監視情報入力手段10は、本実施例に係るローテーション計画装置に、ローテーション計画の対象となるプラントや軸に装着したセンサから得られる運転情報を入力する手段である。寿命算出手段8は、入力された運転条件から、部品の損傷量を算出し、損傷量を部品の設計された耐用時間に対する寿命として算出する手段である。運転条件設定手段9は、ローテーション計画時の運転条件を設定する。
本実施例に係るローテーション計画装置では、寿命算出手段8は、監視情報入力手段
10からの情報を入力してローテーションに用いる部品の現在寿命を算出する際と、運転条件設定手段9からの情報を入力して計画時の部品の寿命を算出する際に用いる。
ここで用いる寿命算出手段8は、例えば、ガスタービンの運転温度から部品にかかる温度・応力・ひずみなどを推定し、部品の損傷量を推定することで部品の寿命を算出する方式などを用いる。すなわち監視情報入力手段10から、実測の運転温度などの情報が入力される場合は実測データから部品の寿命を算出する。また計画時の部品寿命を推定する際は、運転条件設定手段9で運転条件を設定し、設定した運転条件で推定される温度等のデータを推定し、その情報から部品寿命を推定する実施形態が取れる。
第四の実施例の処理の流れを図14を用いて説明する。
なお61〜66の処理は、図6において説明した処理と同様であるため説明は省略する。図中の各処理のうち、図中破線で囲んだ処理141は監視情報入力手段10の処理であり、142,145はそれぞれ寿命算出手段8の処理であり、143,144は運転条件設定手段9の処理である。
処理141は、ガスタービンの運転中にセンサから観測される監視情報を入力する。
処理142は、処理141で入力されたセンサから観測される監視情報から、推定される部品の初期状態の寿命を算出する処理である。
処理143は、計画時に推定される運転条件を設定する処理である。本処理については後述する。
処理144は、処理143で設定した運転条件から温度を推定する手段である。
処理61,62は既に説明のように処理を行う。
処理145は、処理62で割り付けられた部品に対し、処理144で推定した温度で運転された場合の部品寿命を算出する手段である。
処理145で算出した部品寿命を用いて、処理63では運転期間kの割付成立判定を行う。
以降は既に説明したものと同様に処理64から処理66までの処理を行い、判定がNoであれば処理62に戻り、Yesであれば終了する。
以上の処理を行うことで、本実施例によるローテーション計画装置は、プラントや軸から得られた温度等の運転情報を用いて精度良く運転寿命を算出することができる。
次に、運転条件設定手段9につき説明する。
運転条件設定手段9は、計画時の運転条件を設定する手段である。本手段はプラントの運転計画時にどのような運転パタンで運転を行うかを設定し、それにより部品の受ける損傷を予測して寿命算出に用いる。
ここで設定する運転条件としては、WSS(一週間の運転),DSS(一日の運転)等のモデルパタンを予め作っておき、それを選択したり、ユーザが任意に運転パタンを定義する方法や、それらを組み合わせた方法を選択する方法などが取れる。
以上のような手段をとることで、複数軸間のローテーション計画を立てる場合に、いつも一定の条件を想定するのでなく軸ごとに異なった運転パタンや、もしくは季節ごとに異なった運転パタンも考慮したローテーション計画を立てることができる。
(実施例5)
次に本出願に係る発明の第五の実施例について説明する。
図15は、本実施例に係る運用計画システムが行う処理の概要を示すブロック図である。図15のブロック図は図12に示すブロック図の構成要素120,121,122a,b…,123a,b…,124a,b…,125,126,128の構成に、運用計画手段161,補修計画立案手段162,補修計画格納手段163を加えた構成となっている。このうち、122a,122b…はそれぞれ複数もしくは単一の軸を運転するプラントである。121は、これら122a,122b…の1つもしくは複数のプラントで運転される部品の補修や交換等の管理保全を行う拠点である。
運用計画手段161は、部品の運用計画を立案する手段である。1つもしくは複数の軸もしくはプラントでの部品の運転期間や補修や廃棄の時期に関する計画を出力する手段である。
補修計画立案手段162は、運用計画手段161で立てた部品の運用計画により、部品の補修が必要となる時期および納期の予定を把握し、該予定に基づいて、122a,122b…の複数のプラントにわたる補修計画を立案する手段である。補修計画格納手段163は、補修計画立案手段162で立案された補修計画を格納する手段である。
部品の運用計画を立てる場合、補修条件は部品の材料属性により、どれくらい使用した時点で補修が必要となるか(仮に補修期限aaaとする)、また1回の補修作業にはどれくらいの期間を要するか(仮に補修期間bbbとする)の目安を予め設定しておく。運用計画手段では、これら補修期限と補修期間に基づき運用計画を立案するため、部品を使いつづけた結果の部品の使用時間が補修期限aaaに到達する前に、補修期間bbbをあけて次の使用期間を割り当てることになる。したがって、運用計画手段で補修に関し決定されるのは、各部品につきいずれの運転期間と運転期間の間に補修を実施しなければならないかである。補修計画立案手段は、補修を行う拠点121のもつ補修リソース(場所,資材,作業者等)や補修計画と、運用計画手段で計画した運用計画を照合して、補修リソースに適合した補修期間を設定する、またできない場合は再度運用計画立案に処理を戻す手段である。
補修計画立案手段162の処理につき、図16,図17を用いて説明する。本説明では、プラント1,プラント2の補修を拠点121で実施する場合の補修計画を立案する例を想定する。図16は、プラント1の運用計画と、運用計画に基づいて立案された補修計画の例である。図17は、プラント2の運用計画と、運用計画に基づいて補修計画を追加する過程を説明するための図である。
図16中で、182で囲んだ領域はプラント1につき運用計画手段161で立案された運用計画の例である。図中の縦軸,横軸等の説明は図7の説明と同様である。182の運用計画中で、183a,184a,185a,186aは運用計画182中で必要となる補修の期間を表している。
187で囲んだ領城は、182の運用計画に基づき作成した拠点121の補修計画である。簡単のため、例えば拠点121の補修作業のリソースとしては2種類のリソースがあるものとし、それぞれ作業1,作業2とする。ここでいうリソースとは補修作業の行える場所や、作業者や、作業量をまとめて考慮することとする。作業1,作業2のスケジュールをライン188,189で表す。運用計画182に含まれる補修183a,184a,185a,186aは、それぞれ補修計画187中の183b,184b,185b,
186bに割り当てられている。
プラント1の運用により補修計画を立案した時点では、拠点121での補修計画は187のようになっているとする。この状態で図17中の190は、運用計画手段161で立案されたプラント2の運用計画とする。191a,194a,197aは運用計画190中で必要となる補修である。ここで、補修191aに対し192aは部品1の補修前の使用期間の最終日の日付、193aは部品1の補修後の使用期間の開始日の日付である。したがって部品の補修に必要な補修期間をbbbとすると、192aと193aの間の任意の期間bbbを191aの補修期間として定めることができる。同様に、補修194aに対しては195a,196aの間の任意の期間bbbが補修期間として設定可能な期間であり、補修197aに対しては198a,199aの間の任意の期間bbbが補修期間として設定可能な期間である。
運転期間190中の各補修について、補修設定可能な期間を抽出したものを200中に示す。プラント2部品1については192aから193aの期間、プラント2部品3については195aから196a、プラント2部品4については198aから199aの間の任意の期間bbbを補修期間として設定すればよいことになる。この時点ではプラント1の運用計画に基づき補修計画が図16の187のように設定されているため、187中の作業1の188,作業2の189で示される期間のうち、補修が設定されていない期間で、かつ、図17の200中の192aから193aの期間、195aから196a,198aから199aの各期間と重複する期間で、補修に必要な期間bbbが確保できるか否かを決定する。
201は、図16の187の補修未設定期間と、図17の200の補修設定候補期間とで設定可能な補修期間を設定した結果の補修計画を示す。運用計画190の補修191aが補修期間191bに、補修194aが補修期間194bに、補修197aが補修期間
197bに設定され、これは図16の187に、新たに191b,194b,197bを追加した結果となる。このように、図17の200に示す補修候補期間のうち、すでに決定している補修計画の制約(図16の187)にもとづいて実際の補修期間を設定するのが補修計画立案手段162の機能である。
図17中201のように設定された補修期間191b,194b,197bに、図17の運用計画で仮設定された補修期間191a,194a,197aを変更することもできる。
なお、本説明では、補修計画が201のように成立する場合の例を用いたが、補修期間が重複するなどして必ずしも補修候補期間と補修リソースが一致する計画が立てられない場合がある。この場合は運用計画手段161に戻り、補修リソースと見合う補修計画が立案できるまで以上の手順を繰り返し行うことで、プラントごとの運用計画と、拠点121の補修計画が双方ともに無理なく実施できる計画を立案することが可能となる。
以上補修計画立案手段162の実施例の処理の流れをまとめて図18に示す。なお、本処理の開始は、運用計画手段161で運用計画が立案され、実績・計画一括格納手段128に運用計画が格納されたときに起動されるとする。
処理202では、プラントxの運用計画を実績・計画一括格納手段128から読み込む。
処理203では、プラントxの運用計画中の補修数Nを入力する。前述のプラント2の例ではここは部品1,部品3,部品4でN=3である。
処理204では、保留フラグを0とする。
処理205では、補修カウンタmを1にする。
処理206では、補修mの前の使用期間終了日、後の使用期間開始日を入力する。図
17の例では、例えばサイト2部品1の前の使用期間終了日は192aの日付、後の使用期間開始日は193aの日付である。
処理207では、その時点で決定している拠点121の補修計画を入力する。前述の例では図16の補修計画187を入力する。
処理208では、補修mの補修期間が補修リソースに適合して設定可能か否かを判定する。ここの処理は、具体的には前述の例で図17の200中で、各補修候補期間と図16の187中の補修リソース188,189中の補修が設定されていない期間を照合し、重複する期間で補修必要期間bbbが確保できるかを判定する処理である。Yesの場合は処理209へ進み、Noの場合は処理210へ進む。
処理209は、処理208で判定がYesである場合に、m=m+1とし、判定を行う補修を1つ先へ進める。
処理210は、処理208で判定がNoである場合に、補修mの補修期間の設定が保留であるとし保留フラグを1とする。その後処理209に進む。
処理211はm>Nであるか否かを判定する。Yesの場合はすべての補修の補修期間が設定可であったとし、処理212に進む。Noの場合は補修期間の設定可の確認が未済の補修があるとして処理206に戻る。
処理212はすべての補修についての設定可の確認が終了した後に、設定保留の補修があったか否かを確認する。保留フラグが0であればすべての補修の設定が可であるので、処理213に進む。補修フラグが1であれば補修期間が設定できなかった補修があるため、処理202に戻り再度プラントxの運用計画を立案する。
処理213は以上の処理で設定された補修計画を補修計画格納手段に出力する処理である。
なお、図示はしていないが213で設定された補修計画に基づき、運用計画中の補修時期を更新することもできる。
以上の例は、拠点121が補修作業を実施する際に補修リソースに制約がある場合を仮定しているが、ない場合も、図17の201に示すような形式で複数プラントの補修期間を整理し、どれだけのリソースが必要となるかを計算するための手段とすることができる。
(実施例6)
次に本出願に係る発明の第六の実施例について説明する。
図19は、本実施例に係る運用計画システムが行う処理の概要を示すブロック図である。
図19のブロック図は図15に示すブロック図の構成に、検査来歴格納手段220,部品来歴格納手段221,補修内容予測手段222を加えた構成となっている。
検査来歴格納手段220は、定期検査等の点検時に、どの部品がどのような損傷を受けたかの来歴を格納する手段である。例えば一段動翼の例であると、定期点検時に個体別に計測される部位別の減肉量がどの程度であるか等の情報である。これらの情報は、個体番号や、損傷量等の記録内容をキーに該当するレコードを任意に検索できるものとする。
部品来歴格納手段221は、個体別の部品について、どのような来歴をたどってきたかの情報を格納する手段である。格納される情報の例としては、(1)いつの期間、どこの軸で何時間使用されたか、(2)何時間使用された時点で、どのような補修がどれくらいかかって行われたか、等の情報が挙げられる。これらの情報は、個体番号や、使用された時間等の情報をキーに該当するレコードを検索できるものとする。
補修内容予測手段222は、運用計画手段161で立案された部品の運用計画中の補修につき、前述の検査来歴格納手段220と部品来歴格納手段221から得られる過去の部品の来歴を統計処理することにより傾向を抽出し、それをもとに補修の内容を予測する手段である。
補修内容予測手段222の具体的な処理の流れを図20に示す。なお、本処理の開始は、運用計画手段161で運用計画が立案され、実績・計画一括格納手段128に運用計画が格納されたときに起動されるとする。
処理230は、あるプラントx(図19中の122a,122b…)の運用計画を実績・計画一括格納手段128から読み込む。
処理231は、プラントxの運用計画中の補修数Nを入力する手段である。処理232は、プラントxに含まれる補修のカウンタmを1にする。
処理233は、補修mについて、補修を実施する時点の使用時間を入力する。これは図17の190の場合、例えば部品1の補修191aを行う時点での使用時間は、日付192aの時点での部品1の使用時間となる。説明の便宜のため、仮にこの使用時間をcccとする。
処理234は、検査来歴と部品来歴から部品損傷量を推定する処理である。本処理は、部品来歴格納手段221と検査来歴格納手段220から、処理233で入力された使用時間cccと近い使用時間の部品来歴レコードを抽出し、使用時間ccc前後の個体の損傷量の実績データを抽出する。これらの複数のデータの平均値等の統計量から、使用時間
cccの時点での損傷量を予測する。説明の便宜のため、仮にこの使用時間をdddとする。
処理235は、検査来歴と部品来歴から補修を見積もる処理である。本処理は、処理
234で推定された部品損傷量dddの場合に、どのような補修を行っているかを部品来歴格納手段221と検査来歴格納手段220から部品損傷量dddと近いレコードを抽出し、その際の補修の種類,内容を見積もる手段である。見積もる内容としては、補修にかかった期間,補修内容等が挙げられる。
処理236は、処理235で推定された推定補修期間を、補修計画格納手段163に出力する手段である。
処理237は、補修のカウンタm=m+1とし、処理対象の補修を1つ先へ進める処理である。
処理238は、m>Nであるか否かを判定する。Yesの場合はすべての補修の補修期間を予測済であるとし、処理を終了する。Noの場合は補修の予測が未済の補修があるとして処理233に戻る。
以上の処理により、運用計画手段161で立案される運用計画中の各補修につき、どれくらいの期間がかかるかを予測し、予測した結果を元に補修計画を立案することができる。尚、以上の例では予測する補修の内容を補修にかかる期間に限定して説明したが、部品来歴格納手段221に格納する部品来歴に記録する補修の内容として、かかった作業員数,資材の量など他のリソースもあわせて記録すれば、これら他のリソースについての見積もりも行うことができる。
以上の処理では、入力する値としては対象となる補修時の使用時間のみを挙げたが、必ずしもそれだけではなく、使用された軸,運転温度等の条件を入力とし、該当するレコードを検索することにより補修内容を予測しても良い。ただしその場合は新たに入力される項目も部品来歴の項目として登録されていることが前提となる。
また、本処理の流れでは、部品の使用時間の入力で部品来歴格納手段221と検査来歴格納手段220から検索を行う処理としたが、予め部品ごとに使用時間と損傷量のマスターカーブを作成しておき、該当する補修時の部品の使用時間の入力によりマスターカーブの参照を行う方法でも良い。またこの場合、マスターカーブも部品毎に1種類ではなく、使用する軸,運転温度などの運転条件により分類し複数準備しても良い。
尚、本処理の流れでは部品の使用時間から損傷量を推定し、損傷量から補修を見積もる方法を例示したが、部品の使用時間を入力とし、使用時間別の過去の補修実績から補修量を見積もる方法を取っても良い。
(実施例7)
次に本出願に係る発明の第七の実施例について説明する。
図21は、図19のブロック図の構成に来歴参照手段240を加えた構成である。来歴参照手段240は、運用計画手段161により立案される運用計画、もしくは運用実績から、部品別の来歴や検査の来歴を参照する手段である。
図22は来歴参照手段240の実現形態を説明するための画面例である。
ウインドウ241は運用計画手段161により立案される運用計画もしくは運用実績を表示したものである。これは、実績・計画格納手段123a,123b…、もしくは実績・計画一括格納手段128に格納された運用実績もしくは運用計画を線表の形態で表示する。該ウインドウ上でマウス242を用い、任意の運転期間243を選択すると、選択された部品2について、部品来歴格納手段221に格納された情報を表示する。例えば一段動翼のように、複数個体がセットで運用される揚合には、ウインドウ244に示すように、選択された部品2と呼ばれるセットに含まれる個体別の来歴が表示されることになる。来歴情報の内容としては、いつ,どこの軸で、何時間使用されたか、またどのような補修がどれくらいの期間で行われたか等の情報である。実績・計画格納手段123a,123b…、もしくは実績・計画一括格納手段128には、このような来歴情報は含まれていないので、来歴参照手段240では、マウス242で選択された運転期間に使用される部品番号(セット扱いの場合はセット番号)を取得し、該取得した部品番号を部品来歴格納手段
221から検索することで該運転期間に使用される個体の情報を抽出し、表示する機能である。
本手段により、特にセット扱いの部品で1セットのなかに含まれる個体数が多い場合には、必ずしもセット中の個体がすべて同じ来歴をたどっているとは限らない。このため、個別の個体の来歴情報を確認し運用計画を考える際に有効となる。
また、必ずしも部品来歴に限るわけでなく、同様に検査来歴についても本手段で参照・表示することが可能である。
(実施例8)
次に本出願に係る発明の第八の実施例について説明する。
図23は、図21のブロック図の構成に在庫管理計画立案手段250と在庫管理計画格納手段251を加えた構成である。在庫管理計画立案手段250は、拠点121が部品の供給を担当するプラント122a,122b…の運用計画を参照し、部品が廃棄になり新規の部品の導入が必要になる時期を複数のプラントにわたり把握し、部品の購入時期や、時期による必要在庫スケジュールを決定する手段である。本手段は、拠点121で運用計画手段161が実行され、実績・計画一括格納手段更新される際に起動し、更新された運用計画を参照することで、在庫管理計画を更新する。在庫管理計画格納手段251は在庫管理計画立案手段250で立案された在庫管理計画を格納する手段である。本手段で管理する項目としては、部品の納期,発注時期,在庫の数,各在庫部品の予定納入先などの情報が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するわけではない。
複数のプラントの運用計画を長期に把握し、また計画変更にもすぐに対応できるため、部品の調達も必要に応じてではなく、長期にわたり計画的に行える。例えば部品をまとめて購入すると購入コストが下がるような場合には、メリットが大きい。
(実施例9)
次に本出願に係る発明の第九の実施例について説明する。
図24は、図23のブロック図の運用計画手段161として、図12の127のローテーション計画装置を採用した構成である。前述の実施例6,実施例7,実施例8の運用計画手段161として実施例1,実施例2,実施例3,実施例4,実施例5のいずれかに記載のローテーション計画装置を用いることにより、部品の運用計画として、最適なローテーション計画をもとに補修計画,在庫管理計画を立てることが可能となる。これにより、各プラント122a,122b…にとって効率がよく、プラントの保有者にとって望ましい部品運用が行える上に、その運用を基にプラント122a,122b…の保守管理を行う拠点にとっても、時間遅れなく効率の良い保守管理を行うことができる。
以上のように、本発明を用いることで、手作業によるローテーション計画の負荷を大幅に低減でき、複数のローテーション計画を策定でき、また残り寿命などの評価値を算出することで、複数のローテーション計画の比較評価をおこない、より効率的なローテーション計画の策定が可能となる。
また、もちろん実施例1の図8を用いて説明したように、ポインティングデバイスの操作に応じて常にユーザが求める最適な評価のローテーション計画を求め、更新表示させていくことも可能である。
特に、燃焼器部品,動翼,静翼,シュラウド,ディスク,ローター等の、交換や時には補修が必要な高温部品に用いて、複数軸間でのローテーション計画を立案することが可能となる。
1…運転日程入力手段、2…部品種類属性入力手段、3…部品情報入力手段、4…部品割付処理手段、5…割付成立判定手段、6…計画表示手段、7…評価関数計算手段、8…寿命算出手段、9…運転条件設定手段、10…監視情報入力手段、123a,123b…実績・計画格納手段、128…実績・計画一括格納手段、161…運用計画手段、162…補修計画立案手段、163…補修計画格納手段、220…検査来歴格納手段、221…部品来歴格納手段、222…補修内容予測手段、240…来歴参照手段、250…在庫管理計画立案手段、251…在庫管理計画格納手段。