以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1から図3に、本発明の電線観測方法並びに電線観測システムの実施形態の一例を示す。この電線観測方法は、撮像手段5を用いて電線20の監視画像を取得すると共に、風速測定手段3を用いて撮像手段5によって取得した監視画像データの保存の要否を判断可能な地点の風速を測定し、複数の画像保存手段10のうちの一台が取り込んだ監視画像のデータを風速の大きさに基づいて保存するか否かを判断すると共に保存しないと判断した場合に消去する間は複数の画像保存手段10のうちの他の一台が監視画像データを取り込むようにして、監視画像データの取り込みと消去とを予め設定された取込時間帯に従って複数の画像保存手段10で交互に行うようにしている。
上記電線観測方法は、本発明の電線観測システムとして装置化される。本実施形態の電線観測システム1は、電線20の監視画像を取得する撮像手段5と、撮像手段5によって取得した監視画像データの保存の要否を判断可能な地点の風速を測定する風速測定手段3と、予め設定された取込時間帯に従って監視画像のデータを交互に取り込むと共に風速の大きさに基づいて監視画像データを保存するか否かの判断を行って保存しないと判断した場合に消去する複数の画像保存手段10とを備えている。
本実施形態では、画像保存手段10を例えば2台備えている。2台の画像保存手段10について、以下、第一の画像保存手段に符号10Aを、第二の画像保存手段に符号10Bを付して説明する。なお、画像保存手段10の台数としては、必ずしも2台に限るものではなく、3台以上でも良い。
観測の対象となる電線20は、例えば鉄塔21間に架け渡された送電線である。送電線としては、多導体電線であっても単導体電線であっても良い。なお、電線20としては鉄塔21間に架け渡されたものに限るものではない。
電線20を撮影する撮像手段5としては、例えばITV(Industrial Television)カメラを用いることができる。ただし、ITVカメラに限るものではなく、例えば市販のCCDカメラ等でも良い。電線20の画像は、例えば、鉄塔21にITVカメラを設置して、電線20の長手方向とITVカメラのレンズの光軸が平行になるように撮影する。これは、地面に対し水平方向の揺れと地面対し垂直方向の揺れの計測が重要であり、電線20の動きを垂直、水平方向で計測できるようにするためである。撮像手段5によって取得された画像は、例えば電線20の揺れ計測のために用いられる。
風速測定手段3としては、例えばベーン型風速計を用いることができる。ただし、ベーン型風速計に限るものではなく、その他の風速計を用いることもできる。風速測定手段3は、撮像手段5によって取得した監視画像データの保存の要否を判断可能な地点に設けられている。即ち、測定した風速が予め決定した閾値を超えた場合に電線20の被観測位置の揺れが監視画像データの保存が必要になる程度に大きくなる関係にある地点に風速測定手段3は設けられている。本実施形態では、風速測定手段3は撮像手段5と共に鉄塔21に取り付けられている。ただし、撮像手段5によって取得された監視画像データの保存の要否を判断可能な地点であれば、鉄塔21以外の場所に設けても良く、例えば電線20の下の地面に立てた支柱の上に風速測定手段3を設けても良く、その他の場所に設けても良い。
本実施形態では、風速のデータを蓄積して保存するデータサーバ4が用いられる。風速測定手段3とデータサーバ4とは通信回線等により接続され、通信回線等を介して風速測定手段3で測定した風速値データの送受信が行われる。そして、風速測定手段3で測定された風速値データ並びに当該風速が測定された時刻のデータが蓄積されてデータサーバ4に風速データベース18が構築される。
また、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bとデータサーバ4とは通信回線8により接続され、通信回線8を介して相互にデータや制御指令等の信号の送受信(出入力)が行われる。
本実施形態の電線観測システム1は、撮像手段5により取得された監視画像データをビデオ信号補償器2を介しデータ伝送ケーブル9を通じて伝送するようにしている。なお、例えば監視画像データの伝送距離が長距離となる場合にデータ伝送の高速化を図るためや近傍の大きな電界の影響によるノイズ流入の防止を図るためにデータ伝送ケーブル9として光ファイバを使うようにしても良く、この場合には、ビデオ信号補償器2の代わりに電気/光信号変換器を用いるようにしても良い。さらには、データ伝送ケーブル9や光ファイバを使用する代わりに、無線伝送によって監視画像データを伝送するようにしても良い。
さらに、本実施形態の電線観測システム1は、撮像手段5により取得された監視画像データを第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとに分配して伝送するための監視画像データ分配器6を備える。監視画像データ分配器6は、撮像手段5から入力された監視画像データをデータ伝送ケーブル9を通じて第一の画像保存手段10A又は第二の画像保存手段10Bのどちらかに分配して出力するものである。
なお、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bは、データ伝送ケーブル9が接続されて撮像手段5により取得された監視画像データを監視画像データ分配器6を介して取り込む入力端子16を備える。入力端子16は、具体的には例えば、USB(Universal Serial Bus)やSCSI(Small Computer System Interface)やIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)1394等である。
さらに、本実施形態では、通信回線8にNTP(Network Time Protocol)サーバ7が接続され、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bに対して通信回線8を介して時刻データの提供が行われる。また、データサーバ4に対しても通信回線8を介して時刻データの提供が行われ、風速測定手段3で測定された風速のデータが風速データベース18に蓄積される際に当該風速が測定された時刻のデータとして一緒に蓄積される時刻データもNTPサーバ7から提供される時刻データに基づく。これにより、第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10B並びにデータサーバ4の時刻が同期される。
複数の画像保存手段10A,10BがNTPサーバ7により提供される時刻に基づいて監視画像データの取り込みの開始と終了とを同期するようにしているので、監視画像データを取り込む装置が切り替わるタイミングにずれがなく、欠落のない監視画像データがより確実に収集される。なお、NTPサーバ7によって時刻を同期させる代わりに、NTPサーバ7を省略し、各画像保存手段10A,10Bが備えるタイマー(図示せず)により時刻同期を取るようにしても良い。また、GPS(Global Positioning System)の人工衛星からの時刻信号を受信して時刻同期を取る装置を使用しても良い。
電線観測システム1の処理は、図1のフロー図に示すステップに従って実行される。すなわち、まず、風速測定手段3を用いて風速の測定を開始すると共に撮像手段5を用いて電線20の監視画像の取得を開始するステップ(W1)が実行される。
そして、第一の画像保存手段10Aの処理ターン(T1)として、ステップW1で取得を開始した監視画像データを取り込むと共に記録を開始するステップ(T1−S1)と、ステップT1−S1で開始した監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T1−S2)と、ステップW1で測定を開始した風速値データを読み込むステップ(T1−S3)と、ステップT1−S3で読み込んだ風速値の大きさに基づいてステップT1−S1からT1−S2までの間に記録した監視画像データをそのまま保存するか否かを判断するステップ(T1−S4)と、ステップT1−S4で監視画像データを保存しないと判断した場合(T1−S4;No)にステップT1−S1からT1−S2までの間に記録した監視画像データを消去するステップ(T1−S5)と、電線20の観測を終了するか否かを判断するステップ(T1−S6)とが実行される。
さらに、第二の画像保存手段10Bの処理ターン(T2)として、第一の画像保存手段10Aの処理ターンT1における監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T1−S2)と同時にステップW1で取得を開始した監視画像データを取り込むと共に記録を開始するステップ(T2−S1)が実行され、続いて、ステップT2−S1で開始した監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T2−S2)と、ステップW1で測定を開始した風速値データを読み込むステップ(T2−S3)と、ステップT2−S3で読み込んだ風速値の大きさに基づいてステップT2−S1からT2−S2までの間に記録した監視画像データをそのまま保存するか否かを判断するステップ(T2−S4)と、ステップT2−S4で監視画像データを保存しないと判断した場合(T2−S4;No)にステップT2−S1からT2−S2までの間に記録した監視画像データを消去するステップ(T2−S5)と、電線20の観測を終了するか否かを判断するステップ(T2−S6)とが実行される。
そして、第一の画像保存手段10Aの処理ターン(T3)として、第二の画像保存手段10Bの処理ターンT2における監視画像データの取り込みと記録とを終了するステップ(T2−S2)と同時に、ステップW1で取得を開始した監視画像データを取り込むと共に記録を開始するステップ(T3−S1)が実行され、続いて、第一の画像保存手段10Aの前回の処理ターンT1におけるステップT1−S2からT1−S6までの処理と同様にステップT3−S2からT3−S6までの処理が実行される。
以降同様に、ステップS6(T1−S6,T2−S6,T3−S6,…,のこと)で処理終了(S6;Yes)と判断されるまで、一方の画像保存手段の監視画像データの取り込み及び記録の終了と同時に他方の画像保存手段の監視画像データの取り込み及び記録が開始され、二台の画像保存手段によって監視画像データの取り込み及び記録が中断することなく交互に繰り返される。
上述の電線観測方法並びに電線観測システムは、電線観測プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、電線観測プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
電線観測プログラム17を実行するための電線観測システム1の全体構成と共に、コンピュータを用いて構築される第一の画像保存手段10A及び第二の画像保存手段10Bの構成を図2及び図3に示す。なお、以降では、第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとのことを単に画像保存手段10とも記載する。
画像保存手段10は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続される。制御部11は記憶部12に記憶されている電線観測プログラム17により画像保存手段10全体の制御並びに電線20の観測に係る演算を行うものであり、例えばCPUである。記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。入力部13は少なくとも作業者の命令をCPUに与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部14は制御部11の制御により文字や図形等の表示を行うものであり、例えばディスプレイである。メモリ15は制御部11が各種制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となる。
画像保存手段10の制御部11には、電線観測プログラム17を実行することにより、NTPサーバ7から時刻データを取得すると共に取得した時刻データに基づいて監視画像データの取り込みの開始と終了とを判断する処理時間制御部11a、監視画像データ分配器6を介して撮像手段5から監視画像データを取り込むと共に取り込んだ監視画像データを記憶部12に記録する監視画像データ記録部11b、データサーバ4の風速データベース18から風速値データを読み込むと共に読み込んだ風速の大きさに基づいて監視画像データを保存する必要があるか否かを判断するデータ保存要否判断部11c、データ保存要否判断部11cが監視画像データを保存する必要がないと判断した場合に記憶部12に記録した監視画像データを消去する監視画像データ消去部11dが構成される。
さらに、記憶部12には、取り込んだ監視画像データを記録すると共に記録した監視画像データを保存する必要があると判断した場合に監視画像データをそのまま保存して蓄積する監視画像データベース19が作成される。
電線観測プログラム17を用いた本発明の実行にあたっては、まず、風速測定手段3による風速の測定を開始すると共に、撮像手段5による監視画像の取得を開始する(W1)。また、第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとにおいて電線観測プログラム17を起動させる。
そして、電線観測プログラム17の起動と同時に、画像保存手段10の制御部11の処理時間制御部11aはNTPサーバ7から時刻データの取得を開始すると共に、取得した時刻データに基づいて各画像保存手段10が監視画像データの取込時間帯か否かを判断する。ここで、取込時間帯とは画像保存手段10が監視画像データの取り込み及び記録を行う時間帯のことをいう。
処理時間制御部11aがNTPサーバ7から取得した時刻データに基づいて取込時間帯に該当すると判断した場合には監視画像データ記録部11bに対して監視画像データの取り込み及び記録の指令を与え、取込時間帯に該当しないと判断した場合には外部に対する処理指令の出力は行わずに時刻データの取得を継続して行う。
ここで、本発明は、監視画像データの取り込みと記録とを複数の画像保存手段で交互に行うことにより、監視画像データの収集を中断することなく継続して行うものである。本実施形態では、第一の画像保存手段10Aと第二の画像保存手段10Bとで監視画像データの取り込みと記録とを交互に行う。
監視画像データの取込時間帯の設定は、電線観測プログラム17上に予め規定しておくようにしても良いし、電線観測プログラム17起動後に作業者が指定するようにしても良い。電線観測プログラム17起動後に取込時間帯を設定する場合には、制御部11の処理時間制御部11aが取込時間帯の指定を要求する内容のメッセージを表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定の時間帯を用いるようにする。
取込時間帯が、電線観測プログラム17上に予め規定されている場合には処理時間制御部11aがプログラム17から読み込んだ時間帯をメモリ15に記憶させ、電線観測プログラム17起動後に作業者が指定する場合には処理時間制御部11aが入力部13を介して入力された作業者の指定の時間帯をメモリ15に記憶させる。
監視画像データの取込時間帯は、監視画像データの取り込み及び記録が中断することがないように、電線観測システム1を構成する複数の画像保存手段が交互に連続して取り込み及び記録を行うように設定される。本実施形態では、第一の画像保存手段10Aは偶数分台に監視画像データの取り込み及び記録を行うように設定され、第二の画像保存手段10Bは奇数分台に監視画像データの取り込み及び記録を行うように設定される。なお、偶数分台とは例えば2分00秒から3分00秒までや4分00秒から5分00秒までのことをいう。そして、奇数分台とは例えば1分00秒から2分00秒までや3分00秒から4分00秒までのことをいう。また、毎時丁度の00分は偶数分として扱う。
本実施形態では、電線20の観測開始後、制御部11の処理時間制御部11aがNTPサーバ7から当初に取得する時刻が偶数分台の場合、即ち第一の画像保存手段10Aによる監視画像データの取り込み及び記録の処理から始まる場合について説明する。
まず、第一の画像保存手段10Aの処理(T1)について説明する。なお、以下においては、特に断らない限り、第一の画像保存手段10Aを構成する手段の処理について説明する。
制御部11の処理時間制御部11aはメモリ15に記憶された取込時間帯の設定を読み込む。本実施形態では、処理時間制御部11aは、第一の画像保存手段10Aの取込時間帯の設定として偶数分台であることを読み込む。
そして、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から当初に取得する時刻が偶数分台であるので、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を開始する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データ分配器6を介して撮像手段5から監視画像データを取り込むと共に取り込んだ監視画像データを記憶部12の監視画像データベース19に記録する(T1−S1)。なお、処理時間制御部11aは時刻データの取得を継続して行う。
そして、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から取得する時刻が偶数分台が終わって奇数分台に入った場合には、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を終了する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データの取り込み及び記録を終了する(T1−S2)。以下では、当該処理ターン(即ちT1)において監視画像データ記録部11bが監視画像データの取り込み及び記録を行う時間帯即ちT1−S1からT1−S2までの時間帯のことをT1時間帯と呼び、T1時間帯に監視画像データベース19に記録される監視画像データのことをT1時間帯監視画像データと呼ぶ。
次に、データ保存要否判断部11cは、データサーバ4内の風速データベース18から、T1時間帯の風速値データを読み込んでT1時間帯風速値データとしてメモリ15に記憶させる(T1−S3)。
続いて、データ保存要否判断部11cは、メモリ15に記憶させたT1時間帯風速値データ中の最大値(以下、T1時間帯最大値と呼ぶ)を特定する。そして、データ保存要否判断部11cはT1時間帯最大値と監視画像データを保存する必要があるか否かを判断するための閾値(以下、データ保存要否閾値と呼ぶ)とを比較して、記憶部12の監視画像データベース19に記録したT1時間帯監視画像データの保存の要否を判断する(T1−S4)。
データ保存要否閾値は風速の大きさに関する指標であって、監視画像データの取込時間帯における風速値がこの閾値よりも大きい場合には当該取込時間帯の監視画像データは保存する必要があると判断するための指標である。データ保存要否閾値の大きさは特に限定されるものではなく、電線20の被観測位置の揺れの大きさとの関係等を考慮して作業者が適当な値を設定すれば良い。即ち、例えば電線20の被観測位置の揺れの大きさが監視画像データの保存が必要になる大きさになるときの風速測定手段3の測定値をデータ保存要否閾値とすれば良い。本実施形態では、データ保存要否閾値として風速の大きさ例えば10m/sとする。ただし、データ保存要否閾値としては10m/sに限るものではない。
なお、データ保存要否閾値は、電線観測プログラム17上に予め規定しておくようにしても良いし、電線観測プログラム17起動後に作業者が指定するようにしても良い。電線観測プログラム17起動後にデータ保存要否閾値を設定する場合には、制御部11のデータ保存要否判断部11cがデータ保存要否閾値の指定を要求する内容のメッセージを表示部14に表示し、入力部13を介して入力された作業者の指定の値を用いるようにする。
データ保存要否閾値が、電線観測プログラム17上に予め規定されている場合にはデータ保存要否判断部11cがプログラム17から読み込んだ値をメモリ15に記憶させ、電線観測プログラム17起動後に作業者が指定する場合にはデータ保存要否判断部11cが入力部13を介して入力された作業者の指定の値をメモリ15に記憶させる。
データ保存要否判断部11cは、メモリ15からデータ保存要否閾値を読み込み、T1時間帯最大値がデータ保存要否閾値以下であってT1時間帯監視画像データを保存する必要がないと判断した場合には(T1−S4;No)、監視画像データ消去部11dに対して監視画像データベース19に記録したT1時間帯監視画像データを消去する指令を与える。監視画像データ消去部11dはこの指令に基づいてT1時間帯監視画像データを消去する(T1−S5)。なお、この場合のT1時間帯監視画像データには、保存が必要なほど大きく揺れる電線20の画像データは含まれていない。
一方、T1時間帯最大値がデータ保存要否閾値より大きくT1時間帯監視画像データを保存する必要があると判断した場合には(T1−S4;Yes)、データ保存要否判断部11cは、ステップT1−S3でメモリ15に記憶させたT1時間帯風速値データを読み込み、このT1時間帯風速値データをT1時間帯監視画像データに対応する風速値データとして監視画像データベース19に書き込む。なお、この場合のT1時間帯監視画像データには、保存が必要なほど大きく揺れる電線20の画像データが含まれている。
ステップT1−S4;Yesの場合の処理又はステップT1−S5の処理に続いて、制御部11は電線20の観測を終了するか否かを判断する(T1−S6)。
電線20の観測終了の設定は、観測終了時刻として電線観測プログラム17上に予め規定しておくようにしても良いし、電線観測プログラム17起動後に作業者が適時に指定するようにしても良い。さらに、電線観測プログラム17上に観測終了時刻を予め規定すると共に、プログラム起動後に作業者が適時に指定することもできるようにしても良い。電線観測プログラム17起動後に観測終了を適時に設定する場合には、作業者が観測終了に適当な時期であると判断した時に入力部13を介して入力した観測終了の指令が制御部11に与えられるようにする。
観測終了時刻が電線観測プログラム17上に予め規定されている場合には制御部11がプログラム17から読み込んだ時刻をメモリ15に記憶させ、電線観測プログラム17起動後に作業者が観測終了を指定する場合には制御部11が入力部13を介して入力された作業者の観測終了指令をメモリ15に記憶させる。
そして、メモリ15に記憶されている観測終了時刻になった場合、若しくはメモリ15に観測終了指令が記憶されている場合には(T1−S6;Yes)、第一の画像保存手段10Aの制御部11は当該処理ターンT1の処理を終了すると共に電線20の観測を終了する(END)。
一方、メモリ15に記憶されている観測終了時刻になっていない場合、さらに、メモリ15に観測終了指令が記憶されていない場合には(T1−S6;No)、第一の画像保存手段10Aの制御部11は当該処理ターンT1の処理を終了すると共に第一の画像保存手段10Aの次の処理ターン(本実施例ではT3)に移行する。
続いて、本実施形態では第一の画像保存手段10Aの他方の画像保存手段に該当する第二の画像保存手段10Bの処理(T2)について説明する。
第二の画像保存手段10Bの制御部11の処理時間制御部11aはメモリ15に記憶された取込時間帯の設定を読み込む。本実施形態では、処理時間制御部11aは、第二の画像保存手段10Bの取込時間帯の設定として奇数分台であることを読み込む。
そして、本実施形態では、前述のとおり、電線20の観測開始後、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から当初に取得する時刻は偶数分台であるので、奇数分台に監視画像データの取り込みを行うように設定された第二の画像保存手段10Bの処理時間制御部11aは当初は外部に対する処理指令の出力を行わずにそのままNTPサーバ7からの時刻データの取得を継続して行う。この時、第一の画像保存手段10Aは監視画像データの取り込み及び記録を行っている(T1−S1)。なお、以下においては、特に断らない限り、第二の画像保存手段10Bを構成する手段の処理について説明する。
NTPサーバ7から取得する時刻が偶数分台が終了して奇数分台になると同時に、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を開始する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データ分配器6を介して撮像手段5から監視画像データを取り込むと共に取り込んだ監視画像データを記憶部12の監視画像データベース19に記録する(T2−S1)。なお、処理時間制御部11aは時刻データの取得を継続して行う。
ここで、偶数分台の終了と同時に第一の画像保存手段10Aの監視画像データ記録部11bは監視画像データの取り込み及び記録を終了しており(T1−S2)、第一の画像保存手段10Aによる監視画像データの取り込み及び記録の終了(T1−S2)と同時に第二の画像保存手段10Bによる監視画像データの取り込み及び記録が開始(T2−S1)され、途切れることなく連続した観測が行われる。
そして、処理時間制御部11aがNTPサーバ7から取得する時刻が奇数分台が終わって偶数分台に入った場合には、処理時間制御部11aは監視画像データの取り込み及び記録を終了する指令を監視画像データ記録部11bに与える。監視画像データ記録部11bはこの指令に基づいて監視画像データの取り込み及び記録を終了する(T2−S2)。以下では、当該処理ターン(即ちT2)において監視画像データ記録部11bが監視画像データの取り込み及び記録を行う時間帯即ちT2−S1からT2−S2までの時間帯のことをT2時間帯と呼び、T2時間帯に監視画像データベース19に記録される監視画像データのことをT2時間帯監視画像データと呼ぶ。
次に、データ保存要否判断部11cは、データサーバ4内の風速データベース18から、T2時間帯の風速値データを読み込んでT2時間帯風速値データとしてメモリ15に記憶させる(T2−S3)。
続いて、データ保存要否判断部11cは、メモリ15に記憶させたT2時間帯風速値データ中の最大値(以下、T2時間帯最大値と呼ぶ)を特定する。そして、データ保存要否判断部11cはT2時間帯最大値とデータ保存要否閾値とを比較して、記憶部12の監視画像データベース19に記録したT2時間帯監視画像データの保存の要否を判断する(T2−S4)。なお、データ保存要否閾値の設定等については第一の画像保存手段10Aの場合と同じである。
データ保存要否判断部11cは、メモリ15からデータ保存要否閾値を読み込み、T2時間帯最大値がデータ保存要否閾値以下であってT2時間帯監視画像データを保存する必要がないと判断した場合には(T2−S4;No)、監視画像データ消去部11dに対して監視画像データベース19に記録したT2時間帯監視画像データを消去する指令を与える。監視画像データ消去部11dはこの指令に基づいてT2時間帯監視画像データを消去する(T2−S5)。なお、この場合のT2時間帯監視画像データには、保存が必要なほど大きく揺れる電線20の画像データは含まれていない。
一方、T2時間帯最大値がデータ保存要否閾値より大きくT2時間帯監視画像データを保存する必要があると判断した場合には(T2−S4;Yes)、データ保存要否判断部11cは、ステップT2−S3でメモリ15に記憶させたT2時間帯風速値データを読み込み、このT2時間帯風速値データをT2時間帯監視画像データに対応する風速値データとして監視画像データベース19に書き込む。なお、この場合のT2時間帯監視画像データには、保存が必要なほど大きく揺れる電線20の画像データが含まれている。
ステップT2−S4;Yesの場合の処理又はステップT2−S5の処理に続いて、制御部11は電線20の観測を終了するか否かを判断する(T2−S6)。なお、電線20の観測終了の設定等については第一の画像保存手段10Aの場合と同じである。
メモリ15に記憶されている観測終了時刻になった場合、若しくはメモリ15に観測終了指令が記憶されている場合には(T2−S6;Yes)、第二の画像保存手段10Bの制御部11は当該処理ターンT2の処理を終了すると共に電線20の観測を終了する(END)。
一方、メモリ15に記憶されている観測終了時刻になっていない場合、さらに、メモリ15に観測終了指令が記憶されていない場合には(T2−S6;No)、第二の画像保存手段10Bの制御部11は当該処理ターンT2の処理を終了すると共に第二の画像保存手段10Bの次の処理ターン(本実施例ではT4)に移行する。
ここで、奇数分台の終了と同時即ち処理ターンT2における第二の画像保存手段10Bによる処理ターンT3の監視画像データの取り込み及び記録の終了(T2−S2)と同時に第一の画像保存手段10Aによる監視画像データの取り込み及び記録が開始(T3−S1)される。そして、この取り込み及び記録の終了(T3−S2)と同時に第二の画像保存手段10Bによる処理ターンT4の監視画像データの取り込み及び記録が開始(T4−S1)される。
このように、一方の画像保存手段による監視画像データの取り込み及び記録の終了と同時に他方の画像保存手段による監視画像データの取り込み及び記録が開始され、本実施形態では二台の画像保存手段によって交互に途切れることなく連続した監視画像データの取得が行われる。
そして、例えば本実施形態のように二台の画像保存手段10A,10Bによって交互に途切れることなく連続した監視画像データの取得を行うために、一方の画像保存手段が監視画像データの取り込み及び記録を行っている間即ちステップS1からS2までの間に他方の画像保存手段がステップS3からS6までの処理を終了させていることが必要である。そのため、画像保存手段がステップS3からS6までの処理を終了させるのに必要とされる時間を踏まえて監視画像データの取込時間帯が設定される。また、三台以上の画像保存手段を用いて電線観測システムを構成する場合には、他の複数台の画像保存手段が交互に連続して監視画像データの取り込み及び記録を行う間に一台の画像保存手段がステップS3からS6までの処理を終了させることができるように画像保存手段の台数並びに一台の画像保存手段が一回で監視画像データの取り込み及び記録を行う時間が設定される。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態の電線観測システム1では、各画像保存手段10が処理時間の制御を行うと共に取込時間帯の設定に従って監視画像データを取り込むようにしているが、これに限られず、監視画像データ分配器6が処理時間の制御を行うと共に取込時間帯の設定に従って各画像保存手段10に対して監視画像データを入力し、このデータ入力の開始と終了とを契機として各画像保存手段10が処理を遂行するようにしても良い。
また、本実施形態の電線観測システム1では、風速測定手段3によって測定された風速値データが蓄積される風速データベース18を格納するデータサーバ4を別個に有するものとして構成されているが、場合によっては、データサーバ4を有さない構成とすることも可能である。この場合には、風速測定手段3によって測定された風速値データが各画像保存手段10に風速測定手段3から直接入力されると共に各画像保存手段10の記憶部12に記録され、ステップS3においてデータ保存要否判断部11cは記憶部12に記録された風速値データ中から最大値を特定する。
また、本実施形態の電線観測システム1では、システムを構成する各機器の処理時間を同期させるための時刻データを提供するNTPサーバ7を別個に有するものとして構成されているが、場合によっては、NTPサーバ7を有さない構成とすることも可能である。この場合には、画像保存手段10のどちらか一方が電線観測システム1の構成機器に対する制御信号出力機能を備え、この制御信号に従って各機器の処理の開始と終了とが制御される。あるいは、NTPサーバ7の代わりにGPSの人工衛星からの時刻信号を受信して時刻同期を取る装置を使用しても良い。