JP4912292B2 - 環境負荷化学物質を検出し得るトランスジェニック植物 - Google Patents

環境負荷化学物質を検出し得るトランスジェニック植物 Download PDF

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Description

本発明は、環境負荷化学物質を花色の変化によって検知する植物体を作製するための植物の形質転換用ベクター、このベクターで形質転換したトランスジェニック植物、このトランスジェニック植物を用いて環境負荷化学物質を検知する方法などに関する。より具体的には、本発明は、アリルハイドロカーボン受容体(AhR)の遺伝子を含む遺伝子群を導入した植物を用いることによって、環境中に存在するAhRリガンドであるダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素を簡便に検知する技術に関する。
現在にいたる産業の発展の過程において、様々な化学物質が環境中に放出されてきた。その中には、環境中に残留・蓄積し、人類を含む生物の健康を脅かす原因となるような物質(以下、環境負荷化学物質という)も多く存在する。特にその中でも、極低濃度で環境に悪影響を及ぼし、社会的に問題視されてきたのがダイオキシン類と多環状芳香族炭化水素である。ダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素(これにはベンツピレン、メチルコランスレンなどが含まれる)は環境負荷化学物質の中でも哺乳動物に対して、免疫毒性、催奇形性、発ガン性など様々な生体毒性を呈し、人間の健康のみならず生態系への影響が懸念されている物質である。
急性毒性はその化合物のLD(致死量)で比較することができる。ダイオキシン類の中でも極めて毒性が高いとされる2,3,7,8−TCDDのLD50(50%致死量)は対象生物により異なるが、いずれもきわめて低い濃度である。たとえば、ヒトに近いサルに対するLD50は50〜70μg/kgであり、他の毒物と比較しても非常に低濃度である。さらにダイオキシンは発ガン性、催奇形性、ホルモン様作用などといった多様な毒性を示すため、急性毒性が現れない低い濃度であっても体内に蓄積されることにより健康への影響が出ると言われている。また、コプラナーPCBを含む他のダイオキシン類の毒性に関しても、強弱の差はあるものの、2,3,7,8−TCDDと同様の多様な毒性を示すことが知られている(「環境ホルモン&ダイオキシン」、化学同人、1999年)。
そこで、環境中に低濃度で存在するダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素の分布、動態をモニタリングする技術が求められてきた。
従来、ダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素のモニタリングは、モニタリングする地域の多地点から試料を採集し、実験施設に運搬した後に機器分析を行って検出および定量することによって行われてきた。しかしながら、このような機器分析は感度、精度に優れているが、分析設備と熟練技術とを必要とし、時間がかかり、しかも機器・試薬などの経費が高いという問題がある。現状では1件につき数十万円の依頼コストがかかる。従って、簡便迅速、高感度で安価な方法が求められている。
一方、生物はダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素を認識して、それらを代謝する機能を有している。このような生物機能を応用してダイオキシン類等をモニタリングする方法は、有機溶媒の多用などによる二次汚染の危険性が少ないことなどから、環境負荷が小さく、公共の理解を得やすい方法であり、これまでにも、生物機能を利用して環境負荷化学物質をモニタリングする方法の開発が行われてきた。例えば、環境負荷化学物質の1つである内分泌撹乱物質のアッセイには、女性ホルモン(エストロジェン)、男性ホルモン(アンドロジェン)、甲状腺ホルモンなどの内分泌系機能に関与する受容体への応答性を指標とした方法が知られている。また、生体内における抗原抗体反応の特異性を利用した、環境負荷化学物質に特異的な免疫化学測定法なども知られている。ダイオキシン類においても、受容体を用いるインビトロアッセイ法の試薬キット、例えば、エコアッセイダイオキシンELISAキット(大塚製薬)やAhイムノアッセイキット(和光純薬工業)、Dioxin/Furan EIA kit, 60 test, Dfl-60(関東化学)などが市販化されている。
しかし、前記のアッセイ法はいずれも採集した試料を逐次採集地から実験室に持ち帰り、各種分析に適した試薬および機器などを使用して測定するものである。従って、実験施設のない、またはその利用が実質的に困難である場所(例えば、実験施設から遠隔地の野外)においては実施できない。さらに、前記のアッセイ法では実験施設での分析後にしか測定結果が判明しないので、採集地点における迅速なオンサイト測定はできない。
ダイオキシン類は、上述のように、特に哺乳類に対して極低濃度であっても強い毒性を示す。その際、ダイオキシン類は細胞内で、受容体AhRに特異的に結合する。その後、ダイオキシン類がリガンドとして結合したAhR−ダイオキシン類複合体は、AhR核移行タンパク質(Arnt)とともにヘテロ2量体を形成し、核内に移行する。このヘテロ2量体はAhR中のDNA結合ドメインを介して特定のDNA配列に結合し、AhR中の転写活性化ドメインを介して、その特定のDNA配列の3'側にある構造遺伝子の転写を活性化する(J. Biol. Chem. 270, 29270-29278, 1995)。
哺乳動物のAhRが極低濃度のダイオキシン類をリガンドとして認識できる特徴を利用することにより、ダイオキシン類を検出しようとする試みはすでに報告されており、部分的に成功している(特開2004−89068号公報)。特開2004−89068号公報に記載されるAhRリガンド特異的遺伝子誘導発現システムでは、AhRの構造を、そのアミノ末端から、(i)DNA結合ドメイン、(ii)リガンド結合制御ドメイン、(iii)転写活性化ドメインの3つの機能領域に分割し、このうちリガンド結合制御ドメインを基本的な機能ドメインとして利用し、それに適切なDNA結合領域およびヘルペスウイルスVP16因子の転写活性化領域などの機能領域を融合している。そして、この公報には、ダイオキシン類が存在する場合に大腸菌β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子が誘導されるようなベクターを導入したタバコの場合には、5nMの20−メチルコランスレン(ダイオキシン類のアナログとして使用)により、GUS遺伝子を発現できたことが記載されている。
しかしながらこの方法では、ダイオキシン類の有無を調べるために、被検植物の葉を採取してGUS染色する必要があり、簡易な方法とは言えない。
一方、花の色は主にアントシアニン、カロチノイド、ベタレインの3種の化合物群に由来する。その中でもアントシアニンは色相が最も広く、多くの植物種の花色に貢献している。アントシアニンを含むフラボノイドの生合成経路は詳細に研究されており、高等植物においてその経路は保存されている。アントシアニン合成に関わる酵素遺伝子もクローニングされており、これらの遺伝子の発現を人為的に調整することにより、花で蓄積するフラボノイドの構造と量を改変し、花色を変えることができることが知られている(Plant Cell Physiol.39, 1119-1126, 1998)。このような手法を用いることにより、自然には存在しない青いカーネーションやオレンジ色のペチュニアが作出されている。しかしながら、このような色の変化が、ダイオキシン類の検出に用いられた、もしくはダイオキシン類との相関関係があるという報告はない。
また、アントシアニン合成に関わる構造遺伝子のうち、カルコン合成酵素、フラバノン3−水酸化酵素(F3H)、ジヒドロフラボノール還元酵素、アントシアニジン合成酵素の各遺伝子の発現を抑制することにより、花の色が白くなったり、薄くなったりした報告はすでにある(Plant Cell Physiol.39, 1119-1126, 1998;Plant Cell Physiol. 44, s122, 2003; Plant Biotechnology, 21,377-387,2004)。また、RNAi法を用いてアントシアニン合成に関与する遺伝子の発現を抑制することにより、花の色を変えた報告もある(Plant Cell Physiol. 44, s122, 2003)。しかしながら、これらの文献には、これらの花色の変化をダイオキシン等の検出のために用いられるという記載も示唆も一切ない。
また、根圏を含む植物下部におけるGUSなど外来遺伝子のサイレンシングのシグナルは、植物体内を通って植物上部に移行し、植物上部においてもサイレンシングを引き起こすことが接木試験などにより示されている(EMBO J. 16, 4738-45, 1997)。しかしながら、外部から導入した外来フラボノイド代謝遺伝子の発現を根圏でRNAi法により抑制し、そのシグナルが地上部に移行して花色を変化させたという報告はない。
さらに、上述のダイオキシン類誘導性の転写システムとフラボノイド3',5'−水酸化酵素などのチトクロームP450遺伝子を組み合わせると、ダイオキシン類が存在するときに花の色がピンクから青に変化するペチュニアなどを作ることができるとされている(独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構生物系特定産業技術研究支援センター、[Online]、[平成17年1月27日検索]、インターネット<URL: http://brain.naro.affrc.go.jp/tokyo/gijutu/14kadai/hp3/kobetu/10-12.htm#kobetsu11>)。しかしながら、このような植物の作出は現在のところ未だ実現されていない。
上述のような状況において、オンサイト測定が可能で、環境負荷が少なく、簡便迅速、高感度で、かつ安価な、環境中のダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素の検出方法の開発が望まれている。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、以下のような植物の形質転換用ベクター、そのようなベクターで形質転換したトランスジェニック植物、およびそのようなトランスジェニック植物を用いて環境負荷化学物質を検出する方法を提供する。
(1)環境負荷化学物質を花色の変化によって検知する植物体を作製するための植物の形質転換用ベクターであって、発現可能に組み込まれたAhR遺伝子、AhRリガンド刺激誘導型プロモーター、及び該プロモーターによって発現可能に組み込まれた所望の花色素合成に関与する遺伝子の発現を抑制する発現抑制因子を含有する、植物の形質転換用ベクター。
(2)上記(1)に記載の植物の形質転換用ベクターであって、DNA結合ドメイン、AhRリガンド結合ドメインおよび転写活性化ドメインをコードする遺伝子を含み、さらに、花色素合成に関与する遺伝子に対してRNA干渉作用を有する二本鎖RNA(dsRNA)をコードする核酸を含み、該核酸は前記AhRリガンド刺激誘導型プロモーターの制御下にあり、該誘導型プロモーターにはAhRリガンドに応答して前記DNA結合ドメインが結合するように構成されたベクター。
(3)前記花色素合成に関与する遺伝子がアントシアニン生合成に関与する遺伝子である、上記(1)に記載のベクター。
(4)前記アントシアニン生合成に関与する遺伝子がフラバノン3水酸化酵素(F3H)またはフラボノイド3',5'-水酸化酵素(F3',5'H)をコードする遺伝子である、上記(3)に記載のベクター。
(5)前記AhRリガンドがダイオキシン類および/もしくは多環状芳香族炭化水素またはそれらのアナログである、上記(1)に記載のベクター。
(6)XD4VまたはXD5Vを含む、上記(1)に記載のベクター。
(7)前記誘導型プロモーターがLexAプロモーター配列を含む、上記(1)に記載のベクター。
(8)さらに1つ以上の所望の遺伝子を含む、上記(1)に記載のベクター。
(9)前記所望の遺伝子が薬剤耐性遺伝子である、上記(8)に記載のベクター。
(10)前記所望の遺伝子がカーネーションTHC2'GT遺伝子である、上記(8)に記載のベクター。
(11)前記植物がペチュニア、トレニア、またはバーベナである、上記(1)に記載のベクター。
(12)AhRリガンドに応答して花色を変化させるトランスジェニック植物であって、上記(1)に記載のベクターで形質転換したトランスジェニック植物。
(13)ペチュニア、トレニア、またはバーベナである、上記(12)に記載のトランスジェニック植物。
(14)上記(12)に記載のトランスジェニック植物の繁殖材料。
(15)土壌中のAhRリガンドをトランスジェニック植物を用いて検出する方法であって、上記(12)に記載のトランスジェニック植物を試験すべき土壌に移植して栽培し、花色変化を観察する工程を含む、方法。
(16)前記AhRリガンドがダイオキシン類および/もしくは多環状芳香族炭化水素またはそれらのアナログである、上記(15)に記載の方法。
本発明により初めて、ダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素に応答して誘発される花色素関与遺伝子発現抑制作用を利用して植物の花色変化を生じさせる方法が提供される。また、本発明の環境負荷化学物質の検出方法は、オンサイト測定が可能で、環境負荷が少ないという効果を有する。さらに、本発明の好ましい検出方法は、簡便迅速、高感度で、かつ安価であるという効果も有する。
前述したように、上記ダイオキシン類誘導性の転写システムとフラボノイド3',5'−水酸化酵素などのチトクロームP450遺伝子を組み合わせると、ダイオキシン類が存在するときに花の色がピンクから青に変化するペチュニアなどを作ることができるとの報告がある。しかしながら、実際には、本発明者らの実験によれば、このような手法では、ダイオキシン類によるフラボノイド3',5'−水酸化酵素遺伝子の誘導レベルが低いために、花色の変化は観察されなかった(本明細書の参考例1および2を参照)。
そこで、本発明者らは、環境負荷化学物質の刺激によって発現を誘導するプロモーターを用い、そのプロモーターの発現誘導によって、その被検植物の花色素の合成に関与する遺伝子の発現を抑制することにより、花色を変化させて環境負荷化学物質を検出するという発想に基づいて実験を重ねた。そして、本発明者らは、環境負荷化学物質であるAhRリガンド(例えば、ダイオキシン類および/または多環状芳香族炭化水素)に応答して誘発されるRNA干渉(RNAi)法によって内在性の花色素に関連する遺伝子発現の抑制を誘発することにより、花色変化を生じさせることに成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、環境負荷化学物質を花色の変化によって検知する植物体を作製するための植物の形質転換用ベクターであって、発現可能に組み込まれたAhR遺伝子、AhRリガンド刺激誘導型プロモーター、及び該プロモーターによって発現可能に組み込まれた所望の花色素合成関与遺伝子の発現を抑制する発現抑制因子を含有する、植物の形質転換用ベクターを提供する。
本明細書中で、「環境負荷化学物質」とは、環境中に放出され、環境中に残留・蓄積している間、ヒトを含む生物の健康を脅かす原因となるような、生態系に負荷を与える物質のことをいう。代表的な環境負荷化学物質としては、AhRリガンドであるダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素が挙げられる。
本発明の植物の形質転換用ベクターに使用される「AhR遺伝子」としては、AhRの構造を(1)DNA結合ドメイン、(2)AhRリガンド結合ドメイン、および(3)転写活性化ドメインの3つの機能領域に分割して考えた場合、ヒト、マウス、ラット、モルモットなど様々な種由来の適切なAhRリガンド結合ドメインを基本構造体として、それに対して適切なDNA結合ドメイン(例えば、マウスAhRのDNA結合ドメインや大腸菌LexAタンパクのDNA結合ドメイン)、および適切な転写活性化ドメイン(例えば、ヘルペスウイルスVP16因子の転写活性化領域)などのような同種または異種の機能領域を融合したAhR融合タンパク質をコードする組み換えAhR遺伝子が好適である。もちろん、必ずしも融合タンパク質である必要はなく、上記3つのドメインが同種由来のものであってもよい。
本明細書中、「AhRリガンド刺激誘導型プロモーター」は、AhRリガンドのような誘導因子に応答して、所定の分子生物学的プロセスに従って、その制御下にある転写単位を転写せしめる誘導性のプロモーターを意味する。
本明細書中、「発現可能に組み込まれた」遺伝子とは、導入された細胞内で発現可能であるようにベクターに組み込まれている遺伝子のことをいう。「(ベクターに)発現可能に組み込まれた遺伝子」は、該遺伝子の発現を制御する適切なプロモーターのような発現制御因子を、該ベクター中の該遺伝子の発現を制御可能な位置(例えば、該遺伝子の上流)に配置することなどによって実現され得る。
本明細書中、「花色素合成に関与する遺伝子」とは、花を発色させるための色素の生合成に関わる一群の遺伝子のことをいい、例えば、アントシアニン、カロチノイド、ベタレインのような色素群に含まれる色素の生合成に関わる酵素遺伝子が挙げられる。本発明に使用される花色素合成関与遺伝子の好ましい例としては、アントシアニン生合成に関与する遺伝子が挙げられる。アントシアニンは、上記色素群の化合物のなかでも色相が最も広く、多くの植物種の花色に貢献しているからである。アントシアニンを含むフラボノイドの生合成経路は詳細に研究されており、高等植物においてその経路は保存されている。アントシアニン合成に関わる酵素遺伝子もクローニングされており、これらの遺伝子の発現を人為的に調整することが可能である(例えば、Plant Cell Physiol. 39,1119−1126,1998参照)。アントシアニン生合成に関与する遺伝子としては、カルコン合成酵素、フラバノン3−水酸化酵素(F3H)、ジヒドロフラボノール還元酵素、アントシアニジン合成酵素、フラボノイド3’,5’−水酸化酵素(F3’,5’H)等が知られているが、好適にはF3HまたはF3’,5’H遺伝子が使用される。F3Hはナリンゲニンをジヒドロケンフェロールに変換する反応を触媒する酵素であり、F3H遺伝子の発現を抑制することにより、ジヒドロケンフェロールより下流のフラボノイド生合成が阻害されるため、アントシアニンの蓄積が阻害される。その結果、有色の色素であるアントシアニンの蓄積により呈されている花色が減退し、白色に近い花色に変化する。F3’,5’Hはジヒドロケンフェロールをジヒドロミリセチンに変換する反応を触媒する酵素であり、F3’,5’H遺伝子の発現を促進することにより、ジヒドロケンフェロールからの色素変換効率の低い植物品種の花色を、薄い色から濃い紫色へと変化させることができる。また、一旦発現を促進することで濃い紫色に花色を変化させた系統に、さらに該F3’,5’H遺伝子の発現を抑制するコンストラクトを導入することで、花色を濃い紫色から再び薄い色へと変化させることも可能である。
本明細書中、「発現抑制因子」とは、特定の遺伝子の発現を抑制するために本発明のベクターに挿入されるDNA配列のことをいい、例えば、RNAi法における特定の遺伝子に対してRNA干渉作用を誘起するdsRNAをコードするDNA配列、アンチセンス法における特定の遺伝子に対して発現抑制効果を奏するアンチセンスRNAをコードするDNA配列、コサプレッション法における特定の遺伝子と同配列のDNA配列等が含まれる。一般に、植物に内在する遺伝子の発現を抑制する方法には、アンチセンス法、コサプレッション法、RNAi法などがこれまでに知られており、特にRNAi法は最も効率よく内在性の遺伝子の発現抑制を起こすことが知られている(Plant Cell Physiol. 44,s122. 2003)。したがって、本発明では、「発現抑制因子」としては、RNA干渉作用を誘起するdsRNAをコードするDNA配列が好ましい。また、抑制する遺伝子としては、内在する遺伝子のほか、導入・発現させた外部の遺伝子も可能であり、その場合の形質転換植物体の作出方法としては、同一ベクター上に該遺伝子およびdsRNAをコードする該遺伝子を連結して植物に導入するか、もしくは該遺伝子とdsRNAをコードする該遺伝子を時期を変えて2段階に分けて導入する手法が好適であるが、これに限定されない。
以下、本発明をより詳細に説明する。
(ベクターの構築)
本発明においては、環境負荷化学物質誘導型の遺伝子発現系を構築する。この遺伝子発現系に用いられる転写システムとしては、特にこれに限定されないが、特開2004−89068号公報に記載された転写システムが好ましく用いられる。例えば、本発明の環境負荷化学物質誘導型発現系においては、(1)構成的な発現を促す第1プロモーター配列の下流に、DNA結合領域、核局在化シグナル配列、AhRリガンド結合制御領域および転写活性化領域を含む融合タンパク質をコードする遺伝子を繋いだものと、(2)前記DNA結合領域と特異的に結合する配列を含む第2プロモーター配列の下流に、植物に導入された場合に当該植物の花色素合成に関与する遺伝子の発現を抑制する発現抑制因子を繋いだものを連結し、これら一連の配列を含むベクターを構築する。なお、このようなベクターの構築に際しては、特開2004−89068号公報の記載を参照することができる。
本発明の好ましい態様に係るベクターは、(1)DNA結合ドメイン、AhRリガンド結合ドメインおよび転写活性化ドメインをコードする遺伝子を含み、(2)さらに、花色素合成に関与する遺伝子に対してRNA干渉作用を有するdsRNAをコードする核酸を含み、(3)該核酸は前記AhRリガンド刺激誘導型プロモーターの制御下にあり、該誘導型プロモーターにはAhRリガンドに応答して前記DNA結合ドメインが結合するように構成される。
本明細書中、「AhRリガンド」とは、AhRに結合し、AhRの生理活性を誘起する物質をいう。本発明における好ましい「AhRリガンド」としては、ダイオキシン類および多環状芳香族炭化水素が挙げられる。ダイオキシン類としては、代表的には、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ダイオキシン(PCDDs)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)、コプラナーPCB(Co−PCBs)などの物質が挙げられる。多環状芳香族炭化水素としては、代表的には、ベンツピレン、メチルコランスレンなどの物質が挙げられる。本明細書では、AhRに結合し、AhRの生理活性を誘起する限り、上記化合物のアナログ(類似体)も、「AhRリガンド」と称する。そのような化合物として、例えば、20−メチルコランスレン(MC)、β−ナフトフラボン、インジゴ等が挙げられる。
本明細書中、「AhRリガンド結合ドメイン」は、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモットなど様々な種に由来するAhRのリガンド結合ドメインを意味する。AhRリガンド刺激誘導型プロモーターを活性化し得るAhRタンパク質のAhRリガンド結合ドメインを構成し得る限り、いずれの種のAhRリガンド結合ドメインでもよい。AhRリガンド結合ドメインには、AhRリガンドが特異的に結合し、AhR−AhRリガンド複合体が形成される。なお、上記のAhRリガンド本来の機能を失わない程度に上記AhRリガンド結合ドメインのアミノ酸配列に1個以上(例えば、1〜数個(例、6個))のアミノ酸が欠失、付加、または置換したアミノ酸配列からなるその改変体も、ここでいう「AhRリガンド結合ドメイン」に含まれるものとする。
本明細書中、「AhRリガンド結合ドメインをコードする遺伝子」とは、上記のAhRリガンド結合ドメインをコードする遺伝子を意味する。例えば、マウスAhR(PDB Accession No. D38417)のアミノ酸配列中83−593位のアミノ酸配列をコードするDNA配列、83−493位のアミノ酸配列をコードするDNA配列等が本発明において使用され得る。
本明細書中、「DNA結合ドメイン」は、AhRタンパク質のアミノ酸配列中、誘導型プロモーターの所定の配列に結合する領域に対応するドメインのことをいい、ヒト、マウス、ラット、モルモットなど様々な種に由来するDNA結合ドメインが本発明において使用され得る。DNA結合ドメインは、AhR−AhRリガンド複合体が形成されると、誘導型プロモーターに結合する。なお、上記のDNA結合ドメイン本来の機能を失わない程度に上記DNA結合ドメインのアミノ酸配列に1個以上(例えば、1〜数個(例、6個))のアミノ酸が欠失、付加、または置換したアミノ酸配列からなるその改変体も、ここでいう「DNA結合ドメイン」に含まれるものとする。
本明細書中、「DNA結合ドメインをコードする遺伝子」とは、上記のDNA結合ドメインをコードするDNA配列を意味する。DNA結合ドメインをコードする遺伝子は、使用する誘導型プロモーターに依存して適宜選択される。例えば、マウスのAhRのDNA結合ドメイン(アミノ酸残基番号1〜82のアミノ酸配列)や、LexAのDNA結合ドメイン(バクテリアリプレッサーLexAのアミノ酸残基番号1〜202のアミノ酸配列)をコードするDNA配列が適宜使用され得る。
本明細書中、「転写活性化ドメイン」とは、AhR−AhRリガンド複合体が誘導型プロモーターにDNA結合ドメインにおいて結合したときに、誘導型プロモーターを活性化すると考えられているAhR中のドメインをいい、ヒト、マウス、ラット、モルモットなど様々な種に由来する転写活性化ドメインが本発明において使用され得る。なお、上記の転写活性化ドメイン本来の機能を失わない程度に上記転写活性化ドメインのアミノ酸配列に1個以上(例えば、1〜数個(例、6個))のアミノ酸を欠失、付加、または置換したアミノ酸配列からなるその改変体も、ここでいう「転写活性化ドメイン」に含まれるものとする。
本明細書中、「転写活性化ドメインをコードする遺伝子」とは、上記の転写活性化ドメインをコードする遺伝子をいい、様々な種に由来する転写活性化領域をコードするDNA配列が本発明において使用され得る。好ましくは、単純ヘルペスウイルスVP16タンパク質の転写活性化領域をコードするDNA配列に対応するDNA配列、より好ましくは、単純ヘルペスウイルスVP16タンパク質の転写活性化ドメインにおけるアミノ酸番号413−490をコードするDNA配列に対応するDNA配列が使用され得る。
本明細書中、「RNA干渉」は、当該分野で使用される通常の意味で使用され、二本鎖RNA(dsRNA)が相補的な標的mRNAの特異的な分解を促進することによって標的タンパク質の発現を特異的に抑制する現象のことをいう。本発明では、誘導型プロモーターが誘導因子により活性化されることによって、花色素合成に関与する遺伝子(例えば、フラバノン3−水酸化酵素の生合成に関与する遺伝子)に対してRNA干渉作用を有するdsRNAが転写され、内在性の花色素合成に関連する遺伝子の発現を阻害する(図2を参照)。
本発明において、誘導型プロモーターは、DNA結合ドメインを特異的に結合すると、転写活性化ドメインの作用を受けて、その制御下にある構造遺伝子の転写を活性化する。本発明において、誘導型プロモーターは、上記DNA結合ドメインをコードするDNA配列として使用する配列に依存して適切なものが適宜選択され得る。例えば、DNA結合ドメインをコードするDNA配列としてマウスAhRのDNA結合ドメイン(アミノ酸1〜82)をコードするDNA配列を使用する場合には、大腸菌由来の6×XRE配列(6つのマウスXRE配列をタンデムに連結した配列)を使用することが好ましく、また、DNA結合ドメインをコードするDNA配列として大腸菌のリプレッサーLexAのDNA結合ドメインをコードするDNA配列を使用する場合には、8×LexA−46−P配列(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターのオペレーター領域(転写開始点から46塩基上流)にLexA結合配列を8回繰り返したもの)を使用することが好ましい。
好ましい態様において、本発明のベクターは、さらに1つ以上の所望の遺伝子を含んでいてもよい。そのような遺伝子としては、例えば、薬剤耐性遺伝子(例えば、NPTII(ネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼII)、カーネーションTHC2'GT、Arnt、フラボノイド3'−水酸化酵素、フラボノイド3',5'−水酸化酵素、ジヒドロフラボノール4−還元酵素をコードする遺伝子などが挙げられる。これらの遺伝子は、好ましくは、適切なプロモーター(例えば、ノパリンシンターゼプロモーター、Macプロモーター)の制御下に配置される。
本発明のベクターは、通常、核局在化シグナル配列に対応するDNA配列を含む。核局在化シグナル配列は、本発明のAhR遺伝子の翻訳産物であるタンパク質を細胞の核内に局在化する。好ましくは、SV40由来の核局在化シグナル配列が使用されるが、これに限定されない。
本発明のベクターは、通常、それらを導入すべき宿主の種類などに依存した適切なプロモーターおよびターミネーター等の発現制御領域および複製起点等を含有する。例えば、遺伝子を植物細胞内で発現させるためには、(1)植物細胞内で機能可能なプロモーター、(2)遺伝子、および(3)植物細胞内で機能可能なターミネーターを機能可能な形で有するDNA分子(発現カセット)を作製し、植物細胞に導入する。このようなDNA分子は、プロモーターに加え、転写をさらに増強するためのDNA配列、例えば、エンハンサー配列を含んでいてもよい。用いられるプロモーターとしては、植物細胞内で機能するものであれば特に制限はないが、例えば、35S(Shcell,J.S.,1987,Science,237:1176−1183)、Nos(Schell,J.S.,1987,Science,237:1176−1183)、rbcS(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、PR1a(Ohshima,M.ら、1990、Plant Cell,2:95−106)、ADH(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、patatin(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、Cab(Benefy,P.N.およびN−H.Chua,1989,Science,244:174−181)、)、およびPAL(Lian,X.ら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:9284−9288)等が挙げられる。
(トランスジェニック植物の作製)
上記のようなベクターの構築は、公知の制限酵素等を用いて、常法に従って行い得る。例えば、アグロバクテリウムを用いる場合には、PBI121などのバイナリーベクターを、パーティクルガンを用いる場合には、PUC19などの大腸菌ベクターを用いることができる。さらに、当該ベクターで形質転換された植物細胞を、例えば、抗生物質耐性遺伝子などのマーカー遺伝子を用いて選抜し、適切な植物ホルモン等の条件を用いて再分化させ、目的の遺伝子で形質転換された植物体を得ることができる。
植物細胞へのベクターの導入は、当業者に周知の種々の方法を用いて行うことができる。例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスやアグロバクテリウム・リゾゲネスを利用した間接導入法(Heiei,Y.ら、Plant J.,6,271−282,1994、Takaiwa,F.ら、Plant Sci.111,39−49,1995)や、エレクトロポレーション法(Tada,Y.ら、Theor.Appl.Genet,80,475,1990)、ポリエチレングリコール法(Datta,S.K.ら、Plant Mol Biol.,20,619−629,1992)、パーティクルガン法(Christou,P.ら、Plant J. 2,275−281,1992、Fromm,M.E.,Bio/Technology,8,833−839,1990)などに代表される直接導入法を用いることが可能である。本発明において遺伝子導入を行う植物細胞としては、植物体に再生可能であれば特に制限がなく、例えば、懸濁培養細胞、カルス、プロトプラスト、葉の切片などを構成する細胞などが含まれる。
形質転換された植物細胞は、再生させることにより植物体を作出することができる。したがって、本発明はまた、別の態様において、本発明のベクターで形質転換したトランスジェニック植物を提供する。本発明のベクターで形質転換するのに好ましい植物種としては、アントシアニンが花弁にすでに蓄積している、もしくは遺伝子導入により容易にアントシアニンが蓄積する見込みのある植物種が挙げられる。さらに形質転換体取得が可能な植物種であれば、なお好ましい。このような植物種としては、例えば、ペチュニア、トレニア、バーベナ、タバコ、バラ、キク、カーネーション、金魚草、シクラメン、ラン、ドルコギキョウ、フリージア、ガーベラ、グラジオラス、カスミソウ、カランコエ、ユリ、ペラルゴニウム、ゼラニウム、チューリップなどが挙げられる。
本発明のベクターを植物体に導入および発現することにより、花色が改変された植物体に加えて、その繁殖材料(例えば、種子、後代、切花、塊根、塊茎、果実、切穂など)から得た植物体もまた、本発明の技術的範囲に含まれる。
(環境負荷化学物質の検出方法)
本発明はさらに、別の態様において、土壌中の環境負荷化学物質(例えば、AhRリガンド)を、本発明のベクターで形質転換したトランスジェニック植物を用いて検出する方法を提供する。この方法は、本発明のベクターで形質転換したトランスジェニック植物を試験すべき土壌中に移植して栽培して、花色変化を観察する工程を包含する。花色が変化した場合(例えば、花色が減退し、白色に近い花色に変化した場合)、環境負荷化学物質が検出されたと判断される。土壌中の環境化学負荷物質としては、代表的には、AhRリガンドであるダイオキシン類および/または多環状芳香族炭化水素が挙げられる。また、本発明のトランスジェニック植物は、土壌に限られず、培養培地や水、大気などに含まれる環境負荷化学物質の検出にも使用し得ることはもちろんである。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
以下の実施例において、分子生物学的手法は特に断らない限り、WO96/25500あるいはMolecular Cloning(Sambrook et al. (1989) Cold Spring Harbour Laboratory Press)に記載されている方法に従った。
ダイオキシン類化合物を園芸植物の花色変化によってモニタリングするため、特開2004−89068号公報に記載されるAhRリガンド特異的な遺伝子発現誘導因子及びその機能に基づく異種遺伝子誘導発現系の利用技術を応用した。同技術は2つの転写構造体を利用したものである。第1転写構造体は、構成的発現プロモーターならびにその制御下にあるDNA結合ドメイン・核局在化シグナル配列・リガンド結合ドメイン・転写活性化ドメインを含む。第2転写構造体は、第1転写構造体から転写翻訳されて合成されるタンパク質にリガンドが結合した時に作用する転写を活性化する誘導型プロモーターならびにその誘導型プロモーター下のレポーター遺伝子(GUS、GFPもしくはチトクロムP450遺伝子等)からなる。本実施例では、この第2転写構造体においてダイオキシン類が存在する時に転写される遺伝子としてアントシアニン合成に関わる遺伝子(花色遺伝子)を用いることにより、花色が変化する植物を開発することを試みた。このような植物が開発された場合、ダイオキシン類が存在する場合にのみ花の色が変化することが期待され、このような植物は環境汚染の状況を簡便かつ広域にモニタリングするために有効である。
上記第1転写構造体として3種類の転写構造体を作製した。1つはマウスAhRの転写活性化ドメインをヒト単純ヘルペスウイルスの転写活性化ドメイン(VP16)へ入れ換えたもの(AhRVとする(図1参照))である。他の2つはAhRVのDNA結合ドメインを大腸菌のリプレッサーLexAのDNA結合ドメインに入れ換えたもので、特開2004−89068号公報に記載されているLexA−AhR83−494−VP16、LexA−AhR83−593−VP16を用いた(それぞれを、XD4V、XD5Vと記載する(図1を参照))。XD4V、XD5Vにおいては、DNA結合ドメインとして大腸菌由来の配列(LexA)を用いているため、第1転写構造体が結合する配列は、AhRVの場合の6×XRE配列ではなく、8×LexA−46−P配列(カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーターのオペレーター領域(転写開始点から46塩基上流)にLexAの結合配列を8回繰り返し連結したもの)である。XD4Vは、ダイオキシン類結合ドメインとして、マウスAhRの83番目から494番目のアミノ酸配列を、XD5Vは、83番目から593番目のアミノ酸配列を含む。すなわち、AhRの領域に関しては、XD5Vの方がXD4Vよりも100アミノ酸残基だけ長いものを用いる。
先ず、第1転写構造体としてAhRV、XD4V、XD5Vの3種類を用い、第2転写構造体にチョウマメのフラボノイド3'5'−水酸化酵素(F3'5'H)遺伝子を用いた。ダイオキシンが土壌中に存在する場合、花色が紫に変化することでダイオキシン類をモニタリングする園芸植物を作出することを試みた。また、第2転写構造体にレポーター遺伝子としてsGFP遺伝子を用い、ダイオキシンに応答して目的遺伝子(第2転写構造体)が発現するかどうか確認できる植物体も作出することを試みた。
(参考例1)
PAB、PD 4 B、PD 5 B、およびTAGのコンストラクトの構築
PAB用コンストラクトの構築
カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター上流にエンハンサー配列を2回繰り返し持つEl235Sプロモーター配列(Plant Cell Physiol. 37,49−59(1996))と、チョウマメのF3'5'H cDNA配列(WO2004/020637に記載)、ノパリン合成酵素(nos)のターミネーター配列をバイナリ−ベクターpBinPlus(Trangenic Research4,288−290(1995))に導入してあるpSPB748(PlantCell Physiol.44, s122, 2003)より、チョウマメF3'5'H cDNAとnosターミネーターの連結したDNA断片(約2.0kb)をBamHI消化とEcoRIの部分消化によって回収し、pBluescriptII (sk−)(Stratagene社)のBamHI/EcoRIサイトに導入することにより、プラスミドpB−Bnとした。マウスの異物応答配列(XRE)を6回繰り返し持つ6xXREプロモーター配列と、GUS遺伝子、nosターミネーターをpBluescriptII (ks+)(Stratagene社)に導入してあるpBlueSXXREGUSよりGUS遺伝子とnosターミネーターの遺伝子カセットをXbaIとKpnIでの消化により抜き出し、同サイトにpB−BnからXbaIとKpnI消化で切り出したチョウマメF3'5'Hとnosターミネーターの連結したDNA断片(約2.0kb)を挿入し、pB−X6Bnを得た。バイナリーベクターpBin19(Nucl.Acids Res, 12, 8711-8721, 1984)上に、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターとnosターミネーターからなる発現ユニット2組にアルファルファモザイクウイルスの5'非翻訳(UTR)配列をそれぞれ付加させたAhRV及びArntを順方向に挿入したベクターpSKAVAtのSalIサイトに、pB−X6BnをXhoI消化して切り出した6xXREプロモーター配列とチョウマメF3'5'H cDNA、nosターミネーター配列の遺伝子カセット(2.2kb)を導入することにより、pSPB1459を構築した(図1を参照)。pSPB1459をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株(BioTechnology 9,963−967(1991))に導入し、ペチュニア(品種PL,Skr4 xSw63(Nature,366,276−279を参照))をリーフディスクを用いるアグロバクテリウム法で形質転換した。アグロバクテリウムへのプラスミドの導入、形質転換の方法は公知の方法(Plant J. 5,p81−92、1994)によった。品種PLはフラボノイド3',5'−水酸化酵素遺伝子、フラボノイド3'−水酸化酵素遺伝子を欠損しているため花色は白ないし薄いピンクである。なお、本実施例では、品種PLを用いたが、本発明の目的に使用するペチュニア品種はPLに限定されない。独立した形質転換ペチュニアPABを38系統取得した。
TAG用コンストラクトの構築
CaMV35S−sGFP(S65T)−NOS3'(Plant J, 18, 455-463, 1999)をBamHIとEcoRIで消化し、sGFP遺伝子とnosターミネーター遺伝子の連結DNA(1.0kb)をpBluescriptII(sk−)のBamHI/EcoRIサイトに導入することにより、プラスミドpB−Gnを構築した。pBlueSXXREGUSよりGUS遺伝子とnosターミネーターの遺伝子カセットをXbaIとKpnIで抜き出し、同サイトにpB−GnからXbaIとKpnI消化で切り出したsGFPとnosターミネーターの遺伝子カセット(1.0kb)を挿入、pB−X6Gnを構築。pSKAVAtのSalIサイトに、pB−X6GnをXhoI消化して切り出した6xXREプロモーターとsGFP、nosターミネーターの遺伝子カセット(1.2kb)を導入、pSPB1458を構築した(図1を参照)。
pSPB1458をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株に導入し、リーフディスクを用いるアグロバクテリウム法でトレニア(商品名サマーウェーブ(登録商標)ブルー:SWB(サントリーフラワーズ株式会社))リーフディスクに形質転換を行った。トレニアの形質転換は公知の方法(Suzuki et al.(2000)Mol.Breeding 6,p239−246)によった。SWBの花色は青である。なお、本実施例では、SWBを用いたが、本発明の目的に使用するトレニアはSWBに限定されない。独立した形質転換トレニア(TAGとした)を40系統取得した。
PD 4 B,PD 5 B用コンストラクトの構築
特開2004−89068号公報に記載されているAhRリガンド特異的に遺伝子発現が誘導されるシステム(XDV)のうち、LexA−AhR83−494−VP16(XD4V)を含むバイナリーベクターpGPΩD4VGUSとLexA−AhR83−593−VP16(XD5V)を含むバイナリーベクターpGPΩD5VGUSのGUS遺伝子部分をチョウマメのF3'5'H cDNAに入れ替えたバイナリーベクターの構築を以下のように行った。pGPΩD4VGUSをXhoIとSpeIにより消化してGUS遺伝子領域を除き、同サイトにSpeIXhoI−FとSpeIXhoI−Rのオリゴヌクレオチドによるアダプターカセットを挿入したpSPB2229を作製した。同様にしてpGPΩD5VGUSからpSPB2221を作製した。pBluescriptII (sk−)に含まれているチョウマメのF3'5'H cDNA(約1.7kb)をSpeIとXhoIで消化することにより回収し、pSPB2229をSpeIとXhoIにより消化したDNA断片と連結し、pSPB2222を構築した(図1を参照)。同様にpSPB2221とチョウマメF3'5'HcDNAよりpSPB2219を構築した(図1を参照)。前述のように、pSPB2222をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株に導入し、このアグロバクテリウムを用いて、ペチュニアPL株を形質転換した。独立した形質転換ペチュニア(PD4Bとした)を42系統取得した。また、pSPB2219を導入した独立した形質転換ペチュニア(PD5Bとした)を38系統取得した。
なお、使用したSpeIXhoI−FおよびSpeIXhoI−Rの塩基配列は、以下の通りである。
SpeIXhoI−F)5'−tcgactagtccctcgag−3'(配列番号:1)
SpeIXhoI−R)5'−ctagctcgagggactag−3'(配列番号:2)
(参考例2)
PAB、PD 4 B、PD 5 B、およびTAGのダイオキシン類薬物による誘導実験
ダイオキシン類薬物を含む培地・土壌中で形質転換体植物を栽培し、目的の遺伝子(この場合F3'5'H遺伝子またはGFP遺伝子)が発現して花色が変化するかどうかを確認する誘導実験は、誘導のかかりうる優良な系統の選抜を目的としたin vitroの組織培養苗を用いた寒天培地での誘導実験(1次評価)と、実際に花を咲かせて花色の変化を見る土壌栽培での誘導実験(2次評価)の2段階に分けて誘導実験を行った。
1次評価
1次評価ではダイオキシン類として20メチルコランスレン(MC)を用いた。MCはダイオキシン類のアナログで、AhRに結合することが知られている。5μMの20−MCを含むMS寒天培地(Physiol Plant, 15, 473-493, 1962)に移植し、1週間後に葉と根を回収し、それぞれからRNeasy Plant Mini Kit(QIAGEN社)を用いてtotal RNAを単離した。得られたtotal RNA 1μgよりSuper ScriptTM First−Strand Synthesis System for RT−PCR(Invitrogen社)を用いて製造者の推奨するプロトコールに従ってcDNAを合成した。得られたcDNAのうち1μlを鋳型とし、PAB、PD4B、およびPD5BではチョウマメのF3'5'Hの発現量を調べるため、ChBHF−FとChBHF−Rをプライマーとして用い、RT−PCRを行った。また、TAGではsGFPの発現量を調べるため、EGFP−F1とEGFP−R1をプライマーとしてRT−PCRを行った。反応条件は、95℃で1分、55℃で1分、72℃で1分のサイクルを30サイクルとした。なお、得られるべきPCR産物のサイズはチョウマメのF3'5'Hが0.4kb、sGFPが0.7kbである。その結果、PABでは38系中8系統、PD4Bでは42系統中4系統、PD5Bでは38系統中12系統においてMC特異的にF3'5'Hの発現量の増加が確認された。また、TAGでは40系統中5系統においてMC特異的にsGFPの発現量の増加が認められた。以上計29系統の各系統から栄養増殖により2個体ずつを得、これらを馴化し、鉢に移植した。さらに花蕾をつけるまで1ヶ月程度温室にて栽培した。その後、各系統につき1個体の植物体をダイオキシン汚染土壌(独立行政法人農業環境技術研究所により供与を受けた)を用いた誘導実験(2次評価)に使用した。
なお、使用した各プライマーの塩基配列は、以下の通りである。
ChBHF−F)5'−agctcgtgcattcctcaaaacc−3'(配列番号:3)
ChBHF−R)5'−tcgattccgaaccctttgtctc−3'(配列番号:4)
EGFP−F1)5'−atggtgagcaagggcagga−3'(配列番号:5)
EGFP−R1)5'−ttacttgtacagctcgtccat−3'(配列番号:6)
2次評価
上記1次評価で選抜した29系統の有望系統の苗をダイオキシン汚染土壌に移植、6週間にわたり花色変化とチョウマメF3'5'H遺伝子の発現もしくはsGFP遺伝子の発現をRT−PCRによりモニターした。使用したダイオキシン汚染土壌中のダイオキシン類濃度は360pg−TEQ/g 土壌で、日本の国の環境基準値中の1000pg−TEQ/g 土壌より低い濃度である。花と葉を回収し、前述のようにRNAを回収し、RT−PCRを行った。PABの8系統中4系統で、PD5Bでは12系統中5系統で花蕾においてダイオキシン類特異的にチョウマメF3'5'H遺伝子の発現を確認できた。PD4Bの花蕾では4系統中F3'5'H遺伝子の発現を確認できるものはなかった。PABとPD5Bの花蕾でF3'5'H遺伝子の発現していた9系統の花色は遺伝子導入株のPL株の花色と同じピンク色で、花色変化は確認できなかった。TAGは葉のみサンプリングし、RT−PCR反応を行った。5系統中4系統においてダイオキシン特異的にsGFPの発現が確認できた。
以上の結果より、ペチュニア・トレニアともにダイオキシン類が土壌中に存在する場合、花や葉で第2転写構造体であるチョウマメF3'5'HもしくはsGFP遺伝子が誘導することを確認できた。しかし、おそらくその発現量が少ないため、花色変化に至らなかったと思われる。
(実施例1)
PD 4 F、PD 5 F、TD 4 F、およびTD 5 Fのコンストラクト構築
参考例1および2で行ったような、ペチュニアPL株でダイオキシン類によりチョウマメのF3'5'H遺伝子の発現を誘導する試みでは、誘導レベルが低く、花色が変化するに至らなかったと考えられる。そこで、内在性のアントシアニン合成に関与する遺伝子をダイオキシン類により特異的に抑えることで、アントシアニンの合成を抑制し、花色変化を生じさせる試みを行った。
本実施例においては、第2転写構造体として使用するアントシアニン合成に関与する遺伝子には、フラバノン3水酸化酵素(F3H)を用い、遺伝子発現の抑制方法としてはRNAi法を使用した。F3Hはナリンゲニンをジヒドロケンフェロールに変換する反応を触媒する酵素であり、F3H遺伝子の発現を抑制することにより、ジヒドロケンフェロールより下流のフラボノイド生成が阻害される。これにより、もともと有色の色素であるアントシアニンの蓄積により呈される花色が、F3H遺伝子の発現抑制によりアントシアニンが蓄積されなくなり、白色に近い花色に変化する。
また、第1転写構造体にはXD4VおよびXD5Vの2種類を使用し、植物としては、ペチュニアおよびトレニアを用いた。
PD 4 Fのコンストラクト構築
ペチュニアのdsF3HのコンストラクトはWO2004/018682の実施例8のペチュニアF3HcDNA二本鎖コンストラクト構築の方法によった。
pUC由来のベクター上にMacプロモーターとmasターミネーターを載せたpSPB560をSpeIとSacI消化したサイトに、ペチュニアF3HのcDNA遺伝子断片PhF3H−1(SacI/ClaI断片:0.7kb)とPhF3H−1'(SpeI/ClaI断片:0.9kb)を3断片のDNAライゲーションによって導入、pSPB1497を構築した。ペチュニアのdsF3H遺伝子カセットをpSPB1497よりSpeI消化で切り出し、上述のpSPB2229のSpeIサイトに挿入、pSPB2249を構築した。WO2004/018682の実施例6記述のpSPB1500からMacプロモーター、カルコン2'配糖化酵素(T170)遺伝子、そしてmasターミネーターからなる3.6kbの遺伝子カセットをAscIで切り出した後、DNA Blunting Kit(Takara社)により平滑化(以下の平滑化は全てDNA Blunting Kitを使用)し、MT170m断片を得た。pSPB2249をSacIIで消化した後、平滑末端化し、同サイトにMT170mを挿入、pSPB2274を構築した(図1参照)。なお、図1中の「カーネーションTHC2'GT」は、黄色色素であるカルコンの2'位を配糖化する酵素で、カルコン異性化酵素やカルコン自体の自動閉環によって無色色素のナリンゲニンに変化するのを防ぎ、カルコンを安定化させることから、花色を黄色にする目的のために挿入されている。しかしながら、カルコンの黄色色素は淡い色調であるとともに、THC配糖体の蓄積が少ないため、期待した黄色への花色変化は認められなかった。
上述したように、pSPB2274をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株に導入し、赤いペチュニアを形質転換した。この品種はフラボノイド3',5'−水酸化酵素遺伝子を欠損しているため花色は赤であるが、本実験の目的には使用するペチュニアは赤い品種に限定されるものではなく、有色のものであればいずれでもよい。独立した形質転換ペチュニア(PD4Fとした)を16系統取得した。
PD 5 Fのコンストラクトの構築
ペチュニアのdsF3H遺伝子カセットをpSPB1497よりSpeI消化で切り出し、上述のpSPB2221のSpeIサイトに挿入、pSPB2250を構築した。pSPB1500からMT170m断片を取得、pSPB2250のSacII消化後平滑化したサイトにMT170mを挿入、pSPB2275を構築した(図1参照)。上述のように、pSPB2274をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株に導入し、ペチュニアバカラレッド株を形質転換した。独立した形質転換ペチュニア(PD5Fとした)を15系統取得した。
TD 4 Fのコンストラクト構築
シソから得られたF3H cDNA(Zhizhong Gong et al.(1997) Plant Mol Biol. 35,p915−927)をプローブとして、トレニアの同酵素をコードするcDNAを以下のように取得した。プローブはノンラジオアイソトープDIG−核酸検出システム(Roche Diagnostics社)を用いて、製造者が推奨する条件に従いPCRによりラベルした。この際、鋳型として1ngのcDNAを含むプラスミドを用い、プライマーとして、上記の各遺伝子特異的なオリゴヌクレオチド100ngを使用し、95℃1分、55℃1分、72℃2分からなる反応を1サイクルとし、これを25サイクル行った。シソF3H遺伝子のPCR増幅産物をハイブリダイゼーションのプローブとして、トレニアcDNAライブラリー(Suzuki et al. (2000) Mol. Breeding 6,p239−246)約20万のファージをスクリーニングした。ハイブリダイゼーションは30%ホルムアミドを含む5×SSC中、37℃で一晩行い、フィルターの洗浄は5×SSC,1%SDSを用いて55℃で30分間行った。合成オリゴヌクレオチドプライマーによるプライマーウォーキング法によってcDNA配列を決定した。これらcDNAのアミノ酸コード領域の塩基配列を配列表・配列番号:7に示した。得られたトレニアF3HcDNAは、ベクターpBluescriptII(sk−)に含まれており、これをプラスミドpSPB266とした。これを鋳型とし、ベクター配列に由来するM13リバースプライマー(配列番号:8)とトレニアF3HcDNA配列に塩基置換でSalI認識部位を挿入したプライマーThF3H−SalI−1(配列番号:9)を用いて、PCRを行った。得られた約0.9kbのフラグメントをpCR2.1−TOPO(Invitrogen社)にクローニングし、塩基配列を確認した。同様にして、トレニアF3H cDNA配列に塩基置換でSalI認識部位を挿入したプライマーThF3H−SalI−2(配列番号10)とM13RVプライマーを用いて、約0.75kbのDNA断片を調製し、pCR2.1−TOPOにクローニングし、塩基配列を確認した。
pBE2113−GUS(Plant Cell Physiol. 37,45(1996))をSnaBIで消化し、プロモーター下流に存在するomega配列からGUS遺伝子の5'側に相当する部分を除去し、ここにBamHIリンカー(Takara社)を挿入した。得られたプラスミドをpUE6とした。pUE6をHindIIIとEcoRIで切断し、GUS発現カセットを有するフラグメントを回収した。これをpUCAAのHindIIIとEcoRIサイトに挿入し、得られたプラスミドをpSPB541とした。pSPB541をBamHIとSacIで切断し、GUS遺伝子部分を除き、ここにpCR2.1−TOPOからBamHIとSalI切断で切り出した0.9kbのフラグメントと、pCR2.1−TOPOからSacIとSalI切断で切り出した0.7kbのフラグメントを両フラグメントのSalI部位が連結するように挿入した。このようにして得られたプラスミドpSFL313は、植物体に導入された場合、El235Sプロモーターの制御下、トレニアのF3H遺伝子配列に由来する二本鎖RNAを発現し、RNAi法によってトレニアのF3H遺伝子発現を抑制するために構築された。
なお、使用した各プライマーの塩基配列は、以下の通りである。
M13RV) 5'−caggaaacagctatgac−3'(配列番号:8)
ThF3H−SalI−1)5'−ttctctgtcgacgcccattgcc−3'(配列番号:9)
ThF3H−SalI−2)5'−cgccgtgtcgactcgcttgaag−3'(配列番号:10)
トレニアdsF3H遺伝子カセット(1.6kb)をpSFL313よりBamHIで切り出し、pBluescriptII(sk−)のBamHIサイトに導入しpSPB2251を構築した。トレニアのdsF3H遺伝子カセットをpSPB2251よりSpeIとEcoRVで切り出し、前述のpGPΩD4VGUSをXhoI消化した後平滑化し、その後更にSpeI消化したサイトに挿入し、pSPB2260を構築した。pSPB2260をSacIIで消化後平滑化、同サイトに上記のMT170m断片(3.6kb)を導入、pSPB2277を構築した(図1を参照)。前述のように、pSPB2277をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株に導入し、トレニアSWB株を形質転換した。独立した形質転換トレニア(TD4Fとした)を40系統取得した。
TD 5 Fのコンストラクト構築
pSPB2251よりSpeIとEcoRVで切り出したトレニアのdsF3H遺伝子カセット(1.6kb)を、pGPΩD5VGUSをXhoIで消化した後平滑化し、その後更にSpeI消化したサイトに挿入し、pSPB2261を得た。pSPB2261をSacIIで消化後平滑化、同サイトに前述のMT170m断片(3.6kb)を導入、pSPB2278を構築した(図1を参照)。pSPB2278をアグロバクテリウム・ツメファンシスAgl0株に導入し、トレニアSWB株を形質転換した。独立した形質転換トレニア(TD5Fとした)を40系統取得した。
(実施例2)
PD 4 F、PD 5 F、TD 4 F、およびTD 5 Fのダイオキシン類薬物による誘導実験
外来性遺伝子(チョウマメF3'5'H, sGFP)を導入しているPAB、PD4B、PD5B、およびTAGと異なり、内在性遺伝子(F3H)を抑制させるコンストラクトを導入しているPD4F、PD5F、TD4F、およびTD5Fでは、F3Hの発現が花弁でしか見られないため、植物体の花蕾をサンプリングしないとダイオキシン類の影響をみることができない。そのため参考例2に示した様な1次評価はPD4F、PD5F、TD4F、およびTD5Fでは実施せず、得られた形質転換体の全てを鉢上げし、ダイオキシン類汚染土壌に移植・栽培する2次評価のみの誘導実験を実施した。
2次評価
PD4Fの16系統、PD5Fの15系統、TD4Fの48系統、TD5Fの40系統を参考例2の2次評価と同様に、ダイオキシン類汚染土壌(ダイオキシン類濃度360pg−TEQ/g 土壌)に移植し、4週間後の花色変化を観察した。
図3(a)および(b)に示すように、いずれの系統も、白色への花色変化が認められた。いずれもダイオキシン類特異的にdsF3Hが発現した結果生じた花色変化であると考えられた。以上のようにペチュニア・トレニアにおいてダイオキシン類が土壌中に存在する場合に花色変化を示す形質転換体を取得することができた。これらペチュニアPD4F、PD5FおよびとトレニアTD4F、TD5Fの系統を用いることによって、土壌中のダイオキシン類汚染を、これらの花色を観察することによってモニタリングすることが可能であることが確認された。
(実施例3)
形質転換ペチュニアP3BおよびバーベナSk3Bの作出
前述の方法により、pSPB748をアグロバクテリウム・ツメファシエンスAgl0株に導入し、このアグロバクテリウムを用いて、ペチュニアPL株を形質転換したところ、独立した形質転換ペチュニアP3Bを27系統取得した。PL株の花色は薄いピンクであるが、得られた系統の花色は赤紫を呈した。同様に、このアグロバクテリウムを用いて、バーベナ(商品名:花手毬(登録商標)サクラ(サントリーフラワーズ株式会社))を形質転換した。形質転換は公知の方法(Plant Cell Rep. 21, 459-466, 2003)によった。この形質転換により、独立した形質転換バーベナSk3Bを6系統取得した。花手毬サクラ株の花色はピンクであるが、得られた系統の花色は紫を呈した。
PD 5 dB, SkD 5 dB用コンストラクトの構築
LexA-AhR83-593-VP16(XD5V)を含むバイナリーベクターpSPB2219(PD5B用コンストラクト)のチョウマメF3'5'H遺伝子部分をチョウマメのdsF3'5'H cDNAに入れ替え、35Sプロモーター−ハイグロマイシン耐性遺伝子(HPT)−nosターミネーターからなるHPT遺伝子カセットを組み込んだバイナリーベクターの構築を以下のように行った。まず、pSPB2219をSacIIで消化後平滑末端化し、同サイトに、HPT遺伝子カセットを含むバイナリーベクターpLAN101MHYG(Plant Cell Physiol. 41, 1397-1406, 2000)から同カセットをHindIIIで消化して切り出し、平滑末端化したものを挿入してpSPB2295を構築した。次に、pBluescriptII (sk-)ベクターをSpeIとBamHIで消化したサイトに、pSPB748から得たチョウマメF3'5'HのcDNA遺伝子断片BHF-1(SpeI/HincII消化後平滑末端化した断片:0.6kb)とBHF-1'(BamHI/FokI消化後平滑末端化した断片:0.9kb)を3断片のDNAライゲーションによって導入し、チョウマメdsF3'5'H遺伝子カセット(1.5kb)を有するpSPB2727を構築した。前述のpSPB2295をXhoIとSpeIにより消化してチョウマメF3'5'H遺伝子領域を除き、同サイトにpSPB2727をXhoIとSpeIにより消化して切り出したチョウマメdsF3'5'H遺伝子カセットを挿入し、pSPB2736を構築した(図1参照)。
形質転換ペチュニアPD 5 dBおよびバーベナSkD 5 dBの作出
前述の形質転換で得られたP3Bのうち、最も花色変化の大きかったP3B-3株を親株として、pSPB2736を導入したアグロバクテリウムを用いて形質転換を行い、独立した形質転換ペチュニアPD5dBを13系統取得した。同様にして、Sk3Bの中で、最も花色変化の大きかったSk3B-5株を親株として形質転換を行った。形質転換は公知の方法(Plant Cell Rep. 21, 459-466, 2003)を一部改変してハイグロマイシンによる選抜を行った。この形質転換により、独立した形質転換バーベナSkD5dBを14系統取得した。
PD 5 dBおよびSkD 5 dBのダイオキシン汚染土壌による誘導実験
ダイオキシン類を含む土壌中で形質転換植物を栽培し、チョウマメF3'5'H遺伝子の発現が抑制されて花色が変化するかどうかを確認するため、土壌栽培での誘導実験を行った。
PD5dBおよびSkD5dBの各系統から栄養増殖により2個体ずつを得、これらを馴化し、鉢に移植した。さらに花蕾をつけるまで1ヶ月から2ヶ月程度温室にて栽培した。その後、各系統につき1個体の植物体をダイオキシン汚染土壌(独立行政法人農業環境技術研究所により供与を受けた)に移植し、PD5dBは10週間、SkD5dBは14週間栽培し、花色変化を観察した。使用したダイオキシン汚染土壌中のダイオキシン類濃度は前述のとおりである。
図3(c)に示すように、PD5dBでは花色がピンクに変化した系統が認められた。SkD5dBではいずれの系統も花色変化の割合が小さかったため、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を行った。ダイオキシン土壌に移植後14週目のバーベナから葉をサンプリングし、前述の方法でRNAを回収し、cDNAを合成した。チョウマメF3'5'Hの発現量を調べるため、得られたcDNAのうち1μlを鋳型とし、プライマーとしてBHF-FとBHF-Rを、プローブとしてBHF-Tを用い、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems社)を使用してリアルタイムPCRを行った。リアルタイムPCRの手法については、製造者の推奨するプロトコールに従った。また、比較対象として非汚染土壌での発現量も調べるため、各系統とも残り1個体は汚染土壌に移植せずに温室内で栽培を続け、同様の方法でリアルタイムPCRを行った。結果を表1に示す。
表中の数字は、本発明のベクターで形質転換したバーベナを、ダイオキシン類の非存在下および存在下で栽培した場合の、葉におけるチョウマメF3'5'H遺伝子の発現量の比、すなわち(存在下での発現量)/(非存在下での発現量)を示す。
表1から明らかなように、本発明のベクターを用いて形質転換したバーベナは、ダイオキシン類による発現抑制がかかったことが明らかとなった。
なお、使用した各プライマーおよびプローブの塩基配列は、以下の通りである。
BHF-F) 5'-GCTCATCATACCAACGAGTCTCA-3'(配列番号11)
BHF-R) 5'-GATGATGTATCTGTGCCTGCAGT-3'(配列番号12)
BHF-T) 5'-FAM-AACTGTCGCTCACCAACATCAAAGCACTC-TAMRA-3'(配列番号13)
本発明のベクターは、植物細胞を形質転換するために使用することができ、本発明のベクターで形質転換した植物は、AhRリガンドに応答して花色を変化させることができる。したがって、このようなトランスジェニック植物は、例えば、土壌中のダイオキシン類のような環境負荷化学物質の存在を検出するためオンサイト測定が可能で、環境負荷が少なく、簡便迅速、高感度で、かつ安価な検出方法として有用である。
参考例1および2で使用した発現コンストラクト(PAB、PD4B、PD5B、およびTAG)ならびに実施例1および2および3で使用した発現コンストラクト(PD4F、PD5F、TD4F、TD5F、PD5dB、およびSkD5dB)の構成を模式的に表わす図を示す。 本発明におけるRNA干渉の作用を模式的に表わす図を示す。 本発明のベクターで形質転換したペチュニアおよびトレニアを、ダイオキシン類の非存在下および存在下でそれぞれ栽培した場合の花色を表わす写真を示す。(a)および(b)は実施例1および2に対応し、(c)は実施例3に対応する。
なお、図中のアルファベットが示す略号(:サイズ [アクセッション番号])は、下記の事項を表す。
a: AhR:1.2kb, D4:1.2kb, D5:1.5kb [D38417]
b: Arnt:2.1kb [U14333]
c: XRE:0.1kb
d: 5'−UTR(U)
e: CaMV35S−promoter(35S−P):0.2kb [E05206]
f: mas−terminator(T2):0.8kb
g: Mac−promoter(Mac−P):1.2kb
h: NPTII:1.0kb [U09635]
i: HPT:1.0kb [AF309825]
j: LexA(X):0.6kb [AF309825]
k: LexA binding domain(8xLexA):0.3kb [AF309825]
l: VP16(V):0.2kb [AF309825]
m: GFP:0.7kb [AY598428]
n: チョウマメF3'5'H:1.7kb
o: トレニアdsANS:1.0kb
p: トレニアdsF3H(Tr):1.7kb
q: ペチュニアdsF3H(Pt):1.6kb
r: バーベナdsF3H(Ha):1.9kb
s: カーネーションTHC2'GT:1.7kb
t: NPTIIとHPTのプロモーターに使用しているNos−promoter:0.3kb [U09365]
u: NPTIIとHPTのプロモーターに使用しているNos−terminator
(T1):0.3kb [U09365]
v: G10−90promoter(G10−90−P):0.2kb [AF309825]
w: Ω配列(G10−90−PとXD4V/XD5Vの間に挿入)
x: 核移行シグナル(XD4V/XD5VのXとD4/D5の間に挿入)
y: RbcS E9−terminator(T3):0.5kb [AF309825]
z: RbcS 3A−terminator(T4):0.5kb [AF309825]
α: ラット由来のグルココルチコイドレセプター3'非翻訳領域[AF309825]
β: チョウマメdsF3'5'H:1.5kb

Claims (13)

  1. 花色素合成に関与する遺伝子を含む第1の発現ベクターと、
    発現可能に組み込まれたAhR遺伝子を含む第1転写構造体並びにAhRリガンド刺激誘導型プロモーター及び該プロモーターによって発現可能に組み込まれた前記花色素合成に関与する遺伝子の発現を抑制する発現抑制因子を含有する第2転写構造体を含む第2の発現ベクターと、
    を含む、環境負荷化学物質を花色の変化によって検知するトランスジェニック植物体であって、
    前記花色素合成に関与する遺伝子は、アントシアニン、カロチノイドまたはベタレイの生合成に関わる酵素遺伝子であり、
    前記発現抑制因子は、アンチセンス法、コサプレッション法又はRNAi法により前記花色素合成に関与する遺伝子の発現を抑制する因子であり、さらに、
    前記第1の発現ベクターから花色素合成に関与する遺伝子が発現することにより、AhRリガンド刺激を受ける前に花弁の色が薄い色から濃い紫色へと変化しており、その後AhRリガンド刺激に応じて花色素合成に関与する遺伝子の発現が抑制されることにより花弁の色が花色を濃い色から薄い色へと変化することを特徴とする、植物体。
  2. 前記AhR遺伝子がDNA結合ドメイン、AhRリガンド結合ドメインおよび転写活性化ドメインをコードする遺伝子であり、さらに、前記発現抑制因子が花色素合成に関与する遺伝子に対してRNA干渉作用を有する二本鎖RNAをコードする核酸であり、該核酸は前記AhRリガンド刺激誘導型プロモーターの制御下にあり、該誘導型プロモーターにはAhRリガンドに応答して前記DNA結合ドメインが結合するように構成されたものである、請求項1に記載の植物体。
  3. 前記花色素合成に関与する遺伝子が、アントシアニン生合成に関与する遺伝子である、請求項1に記載の植物体
  4. 前記アントシアニン生合成に関与する遺伝子が、フラバノン3水酸化酵素(F3H)またはフラボノイド3’,5’−水酸化酵素(F3’,5’H)をコードする遺伝子である、請求項3に記載の植物体
  5. 前記AhRリガンドがダイオキシン類および/もしくは多環状芳香族炭化水素またはそれらのアナログである、請求項1に記載の植物体
  6. 前記第1転写構造体がLexA−AhR83−494−VP16またはLexA−AhR83−593−VP16である、請求項1に記載の植物体
  7. 前記誘導型プロモーターがLexAプロモーター配列を含む、請求項1に記載の植物体
  8. さらに1つ以上の所望の遺伝子を含む、請求項1に記載の植物体
  9. 前記所望の遺伝子が薬剤耐性遺伝子である、請求項8に記載の植物体
  10. 前記所望の遺伝子がカーネーションTHC2’GT遺伝子である、請求項8に記載の植物体
  11. 前記植物がペチュニア、トレニア、またはバーベナである、請求項1に記載の植物体
  12. 土壌中のAhRリガンドをトランスジェニック植物を用いて検出する方法であって、
    請求項に記載のトランスジェニック植物を試験すべき土壌に移植して栽培し、花色変化を観察する工程を含む、方法。
  13. 前記AhRリガンドは、ダイオキシン類および/もしくは多環状芳香族炭化水素またはそれらのアナログである、請求項12に記載の方法。
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