JP4907069B2 - 人工乳首及び哺乳器 - Google Patents
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Description
このような哺乳器は、人工乳首の先端側に先端開口が形成されているため、乳幼児等が人工乳首をくわえ、舌による蠕動様運動を行うことで、容器内のミルク等を摂取できる構成となっている。
また、人工乳首には、外方に突出するように成るフランジが周状に配置され、このフランジがキャップと容器との間に挟まれることで、人工乳首が容器に固定される構成となっている。
このため、例えば特許文献1に示すように、人工乳首のフランジに通気孔を形成することで、哺乳器内部の負圧を解消する構成となっている。
このような哺乳器内の負圧を解消するために、特許文献1に示す人工乳首のフランジの通気孔の開口を大きくすることが考えられる。
しかし、通気孔の開口を大きく形成すると、通気孔の開口から容器内のミルク等の液体が漏れ出すという問題が生じる。
また、人工乳首は硬度(JIS−K6235(ISO7619)におけるA型デュロメータによる硬度)5度乃至30度という柔らかい弾性材料から成っているため、アダプタ部材により座板部を容器に固定する際、アダプタ部材の移動により座板部が変形するおそれがある。
そして、座板部の変形により、座板部に形成されている貫通孔が変形し、容器等の内部の負圧を解消できないおそれがある。しかし、本発明では、座板部には、複数の貫通孔が形成されているため、一方の貫通孔が変形し負圧解消の機能を発揮できなくても、他方の貫通孔で容器等の内部の負圧を解消することができる。したがって、確実に容器等内の負圧を解消できる構成となっている。
また、複数の貫通孔は、それぞれの孔径が0.1mm乃至0.2mmという小さい孔径と成っているため、各貫通孔から容器内の液体が漏れ出すことがなく、また、固形物等で目詰まりを起こすこともない。
以上のように、本発明では、硬度の低い材質で成る人工乳首であっても、容器内の液体が貫通孔から漏れ出すことがなく、容器内の負圧を円滑に解消することができる人工乳首である。
また、前記構成によれば、流出口部の開口の直径が0.55mm以上と成っている。人工乳首の先端側等に形成されている流出口部は、普通サイズの場合、その開口の直径は0.3mm乃至0.45mmと成っている。これは月齢では例えば、0ヶ月乃至8ヶ月程度の乳児等が使用する場合である。
そして、乳幼児等が更に成長し、ミルク等の摂取量が増え、飲む時間が長くなると人工乳首の流出口部の開口を大きくする必要が生じる。
本請求項に係る流出口部の開口は、このように、ミルク等の摂取量が増えた場合に使用される、いわゆるLサイズの流出口部に該当する。
ところで、流出口部の開口が大きくなると、小さい場合に比べ、ミルク等が流出口部から排出された後の容器等の内部に生じる負圧がより高まることになる。
この場合、貫通孔が1つで、漏れを防ぐため等の理由で孔径が0.1mm乃至0.2mmと小さいときは、負圧の大きさに比べ、孔径が小さすぎるため、十分に容器等内の負圧を解消できなかった。
しかし、本発明では、貫通孔が複数あるため、たとえ各貫通孔の孔径が小さくても、複数の貫通孔で負圧を解消することができる構成となっている。
このように、本発明では、例え摂取量が増えた場合であっても、容器等の内部の負圧を円滑に解消しつつ、同時に容器内の液体が貫通孔から漏れ出さない構成となっている。
そこで、本発明では、一の貫通孔から座板部の円周に沿って両側に90°(度)以上、離間した位置に他の貫通孔を配置している。これにより、一の貫通孔と他の貫通孔との間の距離が十分に離れるため、一の貫通孔と同様の影響を受けにくい。すなわち、一の貫通孔が変形等しても、他の貫通孔は変形等することなく貫通孔として機能させることができる構成となっている。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
図1は、本発明の実施の形態に係る哺乳器10の構成を示す概略図である。図1に示すように、哺乳器10は、搾乳した母乳や調整ミルク等の液体を収容するためのガラス製又は樹脂製の容器である例えば、哺乳瓶11を有している。また、哺乳器10は、弾性材料である例えば、シリコーンゴムやイソプレンゴムから成っている人工乳首100を有している。
また、哺乳器10は、人工乳首100を哺乳瓶11に対して固定するためのアダプタ部材である例えば、樹脂製のキャップ12を有していると共に、哺乳瓶11にキャップ12を介して取り付けられた人工乳首100を覆うためのフード13も有している。
図2は、図1の人工乳首100の概略図であり、図3は、図2の概略平面図であり、図4は、図3のA−A’線概略断面図である。図2に示す人工乳首100は、図4に示すように内部が中空と成っていると共に、全体が、硬度(JIS−K6235(ISO7619)におけるA型デュロメータによる硬度)が5度乃至30度、例えば15度乃至25度のシリコーンゴムで形成されている。
本実施の形態の人工乳首100を、使用者である乳幼児等が口腔内に入れると、図4の人工乳首100の先端側が、口腔内の哺乳窩に当接する。そして、この状態で、乳幼児等の舌が図4の人工乳首100の壁面110に当接し、蠕動様運動を行うと、人工乳首100が伸展(伸長)する構成となっている。
これは、母乳授乳時における母親の乳首が、乳幼児等の舌の蠕動様運動で伸展していることが近年研究により判明したこと基づき、より人間の乳首に近い動きをする人工乳首100とするための構成である。
また、図4に示すように、人工乳首100の内側には、溝状の凹部120がリング状に2カ所形成されている。凹部120の肉厚が薄くなることで、人工乳首100は乳幼児等の舌の蠕動様運動で、より先端側に向かって伸展し易い構成となっている。
なお、このような凹部120が形成されていない、内面が平滑状とされた人工乳首とされていてもよいのはもちろんである。
なお、人工乳首100の壁面110及びセンタ孔130等により、図4に示す乳首本体101が形成される。
座板部102には、図3に示すように、例えば2個の薄肉状の凹部とされた段部102a,102bが形成されており、段部102a,102bの中央に複数の貫通孔である例えば、2個の通気孔103a、103bが形成されている。また、2個の通気孔103a等は略円形の開口と成っており、各通気孔103a等の孔径は、それぞれ0.1mm乃至0.2mmの大きさと成っている。
そこで、人工乳首100の座板部102に通気孔103a等を設け、この通気孔103a等を介して外気と連通することで、哺乳器10内の負圧を解消する構成となっている。
なお、一の貫通孔からの第1の仮想線I1に対して、他の貫通孔からの第2の仮想線で形成される角度は90度乃至270度の範囲であればよく、他の貫通孔を90度の位置に配置してもよい。
さらに、貫通孔を3箇所形成し、一の貫通孔における第1の仮想線I1に対して、二及び三の貫通孔をそれぞれ120度離間した位置に配置するよう構成してもよく、通気量を考慮すると貫通孔は2箇所乃至3箇所であることが好ましい。
しかし、乳幼児が月齢を重ね成長してくると、調整ミルク等の摂取量が増え、センタ孔の径が0.3mm乃至0.45mmでは、開口面積が小さすぎて、時間が必要となるなど十分に調整ミルクを摂取できない。そこで、本実施の形態では、センタ孔の開口面積を大きくするため、孔径を0.55mm以上、例えば0.65mmとし、成長した乳幼児でも円滑に哺乳瓶11内の調整ミルクを摂取できるように構成されている。
なお、センタ孔径を0.3mm乃至0.45mm程度の通常の人工乳首とした場合でも、上述のような通気孔を設けることで、確実に通気を行うことができる。
すなわち、乳首本体101の高さが33.5mm程度の場合、広口径乳首でない、通常の人工乳首の内径は、18mm程度である。
つまり、広口径乳首では、乳首本体101の高さに対する人工乳首100の内径は75%乃至90%程度とされているが、通常の人工乳首では55%程度とされている。
そのため、広口径乳首では内径が大きく、人工乳首100が取り付けられたキャップ12を哺乳瓶11に装着する際に、座板部102に歪みが生じ易く、ひいては貫通孔による通気を確実に行い難くなる傾向が高くなる。さらに、広口径乳首とされている場合、高さ方向に対する剛性が弱くなるため、通気が行われず、哺乳器10内の負圧が高まった場合に乳首本体110が哺乳器10内に入り込んでしまうおそれもあった。
図1に示すように、哺乳瓶11の開口に近傍には、容器側ネジ部である例えば、雄ねじ11aが形成されている。また、キャップ12の内側には、雄ねじ11aに対応する容器側ネジである例えば、雌ねじ12aが形成されている。
図5は、図1の人工乳首100の座板部102とキャップ12との関係を示す概略説明図である。図1及び図5に示すように、人工乳首100は、その座板部102がキャップ12と哺乳瓶11の開口上面とに挟まれることで、哺乳瓶11に対して固定される構成となっている。
すなわち、キャップ12の雌ねじ12aと哺乳瓶11の雄ねじ11aとが螺合される際、人工乳首100の座板部102がキャップ内面と哺乳瓶開口端に挟まれて固定される。
また、座板部102上面とキャップ12内面は、ごく僅かな隙間が形成されており、さらに乳幼児が乳首本体110をくわえた際や、哺乳器10内の圧力が負圧となることに伴って、人工乳首100が僅かに変形し、通気孔103aが外気と連通することとなる。
この際、人工乳首100の座板部102は、哺乳瓶11の上面に当接した状態で、キャップ12により回転方向に力が加わる。人工乳首100は上述のように硬度20度前後の柔らかいシリコーンゴムから成っているため、この力により座板部102が変形し、座板部102に形成されている通気孔103aの開口を塞いでしまうことがある。このとき、通気孔が1つでは、哺乳器内の負圧が解消されず、乳幼児が哺乳瓶11内の調整ミルクを摂取し難くなるおそれがある。
しかし、本実施の形態では、通気孔103bも形成されており、通気孔103bで外気と連通されるので、哺乳器10内の負圧がこの通気孔103bで解消される構成となっている。
このように、本実施の形態では、硬度が低く柔らかいシリコーンゴムでなる人工乳首100であっても、哺乳瓶11内の調整ミルクを通気孔103a等から漏れ出させることなく、哺乳器10内の負圧を円滑に解消することができる。
また、図3に示すように、通気孔103aと通気孔103bとは、人工乳首100の中央部(図3のセンタ孔130)を中心に対称位置に配置されている。このため、人工乳首100の製造工程において、通気孔103a等を容易に形成することができる。
なお、本実施の形態では、通気孔103aと通気孔103bとを180°(度)離間させて配置したが、これに限らず、通気孔103aから90°(度)乃至270°(度)の範囲に形成してもよい。
すなわち、図3の矢印Rの範囲内であれば、通気孔103bは通気孔103aと十分離間して配置されるので、通気孔103aが受けた座板部102の変形の影響を回避できる構成となっている。
すなわち、センタ孔が小さい場合より、通気孔による外気との連通面積を大きくとる必要がある。しかし、通気孔の開口面積を大きくすると、その分哺乳瓶11内の調整ミルク等の漏れの原因となるという問題がある。
しかし、本実施の形態では、通気孔103a等を2カ所形成し、それぞれの通気孔103a等の開口面積を大きくしないことで、調整ミルクの漏れ防止と、負圧の解消を同時に達成できる哺乳器10となっている。
従来の哺乳器と本実施の形態の哺乳器10の人工乳首は、共に硬度22度、哺乳瓶に対するキャップの締めトルクは100Nである。
そして、従来の哺乳器の人工乳首の座板部には通気孔が1カ所のみ形成されているが、本実施の形態の哺乳器10では、図3に示すように、2カ所形成した。
そして、両者共、人工乳首のセンタ孔から大気圧基準の−26.6kPaで吸引した。
その結果、本実施の形態では、図6に示すように、哺乳瓶内の負圧は大きく解消されたが、従来の哺乳器では、負圧が解消されにくかった。
また、本実施の形態では、負圧の解消により調整ミルクの流量も増えた。すなわち、本実施の形態の人工乳首100は、月齢が高く、調整ミルクの摂取量が多い、乳幼児でも使用しやすい人工乳首であることが実際に検証された。
Claims (4)
- 使用者の口腔内に容器内の液体を流出させるための流出口部と、
使用者の舌が当接する壁面と、を有する乳首本体と、
前記乳首本体の下方側で円周状に形成されると共に、前記容器に対してアダプタ部材により固定される座板部と、を備える人工乳首であって、
前記人工乳首は、硬度5度乃至30度の弾性材料から成っており、
前記座板部には、複数の貫通孔が形成され、
前記流出口部の孔径が0.55mm以上であり、
前記貫通孔の孔径が0.1mm乃至0.2mmで形成されており、
前記乳首本体の高さに対する人工乳首の内径が75%乃至90%とされていることを特徴とする広口径人工乳首。 - 前記アダプタ部材と前記容器に、それぞれアダプタ側ネジ部と容器側ネジ部が形成され、前記アダプタ側ネジ部と前記容器側ネジ部とが螺合される構成となっており、
前記円周状に形成されている前記人工乳首の前記座板部に設けられている複数の前記貫通孔が、前記円周に沿って、相互に離間して配置されると共に、
一の前記貫通孔から前記人工乳首の中央部に向けて配置した第1の仮想線と、他の前記貫通孔から前記中央部に向けて配置した第2の仮想線とで形成される角度が90°(度)乃至270°(度)であることを特徴とする請求項1に記載の広口径人工乳首。 - 複数の前記貫通孔が前記人工乳首の前記中央部を中心とした対称位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の広口径人工乳首。
- 使用者の口腔内に容器内の液体を流出させるための流出口部と、
使用者の舌が当接する壁面と、を有する乳首本体と、
前記乳首本体の下方側で円周状に形成されると共に、前記容器に対してアダプタ部材により固定される座板部と、を備える前記乳首本体の高さに対する人工乳首の内径が75%乃至90%である広口径人工乳首を有する哺乳器であって、
前記広口径人工乳首は、硬度5度乃至30度の弾性材料から成っており、
前記座板部には、複数の貫通孔が形成され、
前記流出口部の孔径が0.55mm以上であり、
前記貫通孔の孔径が0.1mm乃至0.2mmで形成されていることを特徴とする哺乳器。
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