JP4901973B2 - 圧縮自己着火内燃機関 - Google Patents

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Description

この発明は圧縮自己着火内燃機関に関し、特に、少なくとも一部の運転条件において燃焼室内に形成された燃料と空気との混合気をピストンによる圧縮作用によって自己着火させる圧縮自己着火内燃機関に関する。
圧縮自己着火内燃機関では、従来のガソリン燃焼の内燃機関での点火に用いられる火花放電を要さず、燃料と空気が混ざり合って燃焼室内に形成される混合気がピストンで圧縮されることで自己発火温度に達して、燃焼室内空間の複数の箇所で同時多発的に燃焼が開始される。
ピストンによる圧縮での混合気温度の上昇は断熱圧縮作用によるものである。そこで、より強い断熱圧縮作用を得て混合気温度を自己発火温度に到達させるため、圧縮自己着火内燃機関では一般的に従来の火花点火内燃機関よりも圧縮比が高く設定される。
ガソリンの自己発火温度は、圧力や混合気濃度により若干異なるが、300℃前後である。常温の空気を多く含む混合気を断熱圧縮作用だけでこの温度まで上昇させることは困難であることから、高温の排気ガスの一部を燃焼室内に残留させたり、燃焼室内に吸入する空気を加熱するなどの手段を用いて混合気の温度を従来のガソリン燃焼の内燃機関の場合よりも高くする必要がある。
このようにして高温の混合気が得られるが、圧縮期間中にはその一部が冷却されてしまう。なぜなら内燃機関は常に冷却されているためである。内燃機関では燃焼室を形成する壁面やピストンが冷却されており、壁面近くやピストンの近くに存在する混合気は熱を奪われる。
壁面やピストンに熱を奪われて低温化した混合気は燃焼室内の混合気の流れによって壁面やピストン近傍から離れ、壁面やピストンの近傍には新たな未冷却の混合気が流れてくる。この混合気もまた冷却されて壁面やピストンから離れる。
このように壁面やピストン近傍で冷却される混合気が常に存在する一方で、壁面やピストンの近傍を離れた冷却された混合気は周囲の未冷却の混合気を冷却することで周辺の混合気と同じ温度になる。このような挙動を繰り返すことで、壁面やピストンに熱を直接奪われない燃焼室の中心付近の混合気も含めた燃焼室内の全ての混合気の温度がやがて概ね等しくなる。
内燃機関が比較的低回転数で運転されている場合など、壁面やピストンで冷却された混合気による冷却作用が燃焼室の中心付近にまで到達する時間的な余裕がある条件では、このような冷却作用が燃焼室の中心付近の混合気にも十分及ぶことから混合気温度は燃焼室全体で均質化されやすい。
しかしながら、内燃機関が比較的高回転数で運転されている場合など、壁面やピストンで冷却された混合気による冷却作用が燃焼室の中心付近にまで到達する時間的な余裕が無い条件では、冷却作用が燃焼室の中心付近の混合気に十分には及ばず、燃焼室の中心付近の混合気温度がその周辺と比べて高温化しやすい。
例え内燃機関が比較的低回転数で運転されていても燃焼負荷が高くより多くの空気を圧縮する場合は、断熱圧縮作用によって混合気の温度が上昇する速度が速くなるため、冷却作用が燃焼室の中心付近の混合気に十分には及ばず、燃焼室の中心付近の混合気温度がその周辺と比べて高温化しやすい。
図1(1)〜(3)は、燃焼室の中心付近の混合気温度が高くなる過程を説明する図である。図1(1)〜(3)は、それぞれ、吸気行程終了時期、圧縮初期、および、さらに圧縮が進んだ時期を示している。これらの図の上段の(a)には、それぞれの時期の燃焼室内の混合気分布イメージが示され、下段の(b)には、それぞれの時期の燃焼室の径方向の温度分布イメージが示されている。
吸気行程において温度が一様な新気や混合気を燃焼室内に吸入するため、(1)に示すように、吸気行程終了時期の燃焼室内の新気や混合気の温度は均一となる。
(2)に示すように、ピストンによる圧縮が開始されると、断熱圧縮作用により混合気温度は一様に上昇するが、同時に、燃焼室壁面やピストンの近傍の混合気とそれ以外の混合気との間の熱の移動が開始される。しかしながら、このとき、(1)に示すように混合気の温度はもともと一様であったため、混合気間の熱の移動は活発化が遅れる。すなわち、はじめに、燃焼室壁面やピストンの付近の混合気の温度が低下し始めてから熱の移動が開始され、徐々に当該熱の移動が活発化していく。
この混合気間の熱の移動の活発化の遅れが原因となって、燃焼室中心付近の混合気温度がその周辺の混合気温度よりも高くなる。
(3)に示すように、さらに圧縮が進むと、燃焼室中心付近の混合気と周辺の混合気との温度差がより顕著になり、圧縮行程の比較的早い時期に、中心付近の混合気のみが自己着火温度に達して燃焼が開始される。この時期の周辺の混合気温度が未だ低温であるために混合気の一部が十分燃焼しないことや、燃焼開始時期が早期化することで燃焼効率の低下を招く。
また、燃焼室の中心付近の混合気だけが早い時期に高温化することで局所的に燃焼速度が上昇することから、燃焼振動に伴う騒音の発生などの問題が生じる。
このような自己着火時期の早期化や燃焼速度の上昇は避ける必要があり、たとえば、特許文献1には、高負荷運転条件では燃焼室の中心付近を指向する混合気の濃度を希薄化させる技術が示されている。
特開2006−348800号公報 特開平10−339220号公報 特開平11−182246号公報
特許文献1に係る技術では、高負荷運転条件では混合気温度がより低くなる燃焼室の周縁付近に混合気を多く分布させることで圧縮による着火性を抑えた燃焼を得られることが明示されている。言い換えると混合気温度が高くなることで着火性が向上しやすい燃焼室の中心付近には混合気を分布させないことで安定的な圧縮自己着火燃焼が得られることを示している。
圧縮自己着火燃焼の形態を鑑みて、この技術が自己着火時期の早期化や燃焼速度の上昇を抑える効果を有することは事実である。しかしながら、例えば、燃焼室内の空間的に連続する中心付近には空気のみを供給して、周縁付近には混合気を供給したとしても、燃焼室内の複雑な気流の影響で周縁付近の混合気の一部は中心付近に流入してしまう。その結果、中心付近の一部の空間には非常に希薄な混合気が存在することになり、周縁付近の混合気が燃焼を開始しても、この混合気は十分には燃焼できずに燃え残った状態で燃焼ガスとともに燃焼室から排出されてしまうという問題があった。
また、燃焼室内の複雑な気流の影響で、周縁付近の濃度を保った混合気が中心付近に達することも考えられる。この場合は混合気温度が低い周縁付近の混合気よりも早期に着火することで燃焼室全体の混合気の着火を早期化してしまうという問題点もあった。
さらに、燃焼室内の一部分の空間に予混合気を指向させる特許文献1に係る技術では、吸気弁よりも上流側で空気と燃料を予混合させる必要があるため、燃焼室内に燃料を直接噴射する筒内直噴方式の内燃機関には適用できないという問題点もあった。
圧縮自己着火内燃機関とは異なるが、特許文献2には燃焼室中心付近の混合気温度の高温化を抑えることが可能な技術が示されている。
特許文献2に係る技術では、吸気ポートに合流する副通路から燃焼室の周縁を指向させて吸入する空気のみを加熱している。特許文献2では、この加熱空気で壁面に付着した燃料の霧化の促進を目的としている。
従って、特許文献2では、燃焼室内の混合気の温度をほぼ均質にすることについては目的としておらず、全く意図していないが、仮に、特許文献2において、混合気の温度がほぼ均質となる時期が圧縮行程の早い時期であったとすれば、その後、さらに圧縮が進むと燃焼室の中心付近の混合気が周縁部よりも高温化することは明白である。したがって、燃焼開始時期が早期化せず、かつ、燃焼速度の上昇を抑えた安定的な圧縮自己着火燃焼を得るためには、圧縮行程の後期、理想的にはピストンが圧縮上死点に至った時期に、混合気の温度が均一となり、その温度が自己発火温度である必要がある。なお、圧縮自己着火燃焼の特長である多点同時着火を得るためには混合気濃度が均質であることも重要である。
この混合気温度に関する条件を満たすためには、吸入時の2種類の空気温度を適正に制御する必要があるが、特許文献2に係る技術では、吸気を加熱する機能を片方のみに設けているため、外気温度や内燃機関の運転状態に応じた適切な制御、即ち、圧縮行程後期に混合気全体をほぼ自己発火温度とする制御ができないという問題点があった。
さらに別の技術として、特許文献3では2系統存在する吸気系の片側にのみ燃焼ガスを混入する技術が示されている。燃焼ガスは外気温度よりも高温であることから、燃焼ガスが混入された吸気の温度は混入されていない吸気の温度よりも高温となる。このことから、圧縮行程初期における燃焼室内の空気または混合気の温度分布は、燃焼室の周縁付近を高温にすることができる。
しかしながら、燃焼ガスを混入しない側の吸気は外気温度であることから、特許文献2の技術と同様に、圧縮行程後期に混合気全体をほぼ自己発火温度とする制御ができないという問題点があった。
さらに、特許文献3に係る技術では、燃焼ガスを混入した空気と燃料とが混ざり合って形成される混合気と、燃焼ガスを混入しない吸気と燃料とが混ざり合って形成される混合気とが、燃焼室内で成層化される。仮に圧縮行程の後期に混合気全体をほぼ自己発火温度にできたとしても、燃焼ガスが混入している混合気内の酸素濃度が低いために、燃焼ガスが混入していない混合気と同時に自己発火できず、安定した圧縮自己着火燃焼を得ることができないという問題点もあった。
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであって、外気温度や内燃機関の運転条件によらず、ピストンが概ね圧縮上死点に至る時期に、燃焼室内の混合気に局所的な高温化を生じさせず、かつ、自己発火可能な混合気温度を得ることで、内燃機関の圧縮自己着火燃焼を安定化することが可能な、圧縮自己着火内燃機関を提供することを目的とする。
この発明は、燃焼室内に形成された燃料と空気との混合気をピストンによる圧縮によって自己着火させる圧縮自己着火内燃機関であって、気筒毎に配された第1および第2の吸気弁と、前記第1及び第2の吸気弁を介してそれぞれ前記燃焼室内に吸気を導入する第1および第2の吸気流路と、前記第1の吸気流路から前記第1の吸気弁を介して前記燃焼室内に吸入される吸気に前記燃焼室の中心付近を指向させる第1の指向手段と、前記第2の吸気流路から前記第2の吸気弁を介して前記燃焼室内に吸入される吸気に前記燃焼室の周縁付近を指向させる第2の指向手段と、前記第1の吸気流路に設けられ、前記第1の吸気流路を流れる前記吸気を第1の加熱目標温度に基づいて加熱する第1の吸気加熱手段と、前記第2の吸気流路に設けられ、前記第2の吸気流路を流れる前記吸気を第2の加熱目標温度に基づいて加熱する第2の吸気加熱手段と、前記燃焼室の中心付近を指向する前記吸気の温度が前記燃焼室の周縁付近を指向する前記吸気の温度よりも低温になるように、現在の内燃機関の運転状態に基づいて、前記第1の加熱目標温度と前記第2の加熱目標温度との温度差を設定し、当該温度差に基づいて前記第1の加熱目標温度および前記第2の加熱目標温度の値を制御する制御手段とを備え、前記第1の指向手段は、その根元が前記第1の吸気流路の下側の内壁面に取り付けられ、当該根元を支点として、その先端が回動可能に設けられている板状の部材から構成され、前記吸気を指向するときには、前記第1の吸気流路の内壁面に対して所定の角度を有するようにその先端を離間させ、前記第2の指向手段は、その根元が前記第2の吸気流路の上側の内壁面に取り付けられ、当該根元を支点として、その先端が回動可能に設けられている板状の部材から構成され、前記吸気を指向するときには、前記第2の吸気流路の内壁面に対して所定の角度を有するようにその先端を離間させることを特徴とする圧縮自己着火内燃機関である。
この発明は、燃焼室内に形成された燃料と空気との混合気をピストンによる圧縮によって自己着火させる圧縮自己着火内燃機関であって、気筒毎に配された第1および第2の吸気弁と、前記第1及び第2の吸気弁を介してそれぞれ前記燃焼室内に吸気を導入する第1および第2の吸気流路と、前記第1の吸気流路から前記第1の吸気弁を介して前記燃焼室内に吸入される吸気に前記燃焼室の中心付近を指向させる第1の指向手段と、前記第2の吸気流路から前記第2の吸気弁を介して前記燃焼室内に吸入される吸気に前記燃焼室の周縁付近を指向させる第2の指向手段と、前記第1の吸気流路に設けられ、前記第1の吸気流路を流れる前記吸気を第1の加熱目標温度に基づいて加熱する第1の吸気加熱手段と、前記第2の吸気流路に設けられ、前記第2の吸気流路を流れる前記吸気を第2の加熱目標温度に基づいて加熱する第2の吸気加熱手段と、前記燃焼室の中心付近を指向する前記吸気の温度が前記燃焼室の周縁付近を指向する前記吸気の温度よりも低温になるように、現在の内燃機関の運転状態に基づいて、前記第1の加熱目標温度と前記第2の加熱目標温度との温度差を設定し、当該温度差に基づいて前記第1の加熱目標温度および前記第2の加熱目標温度の値を制御する制御手段とを備え、前記第1の指向手段は、その根元が前記第1の吸気流路の下側の内壁面に取り付けられ、当該根元を支点として、その先端が回動可能に設けられている板状の部材から構成され、前記吸気を指向するときには、前記第1の吸気流路の内壁面に対して所定の角度を有するようにその先端を離間させ、前記第2の指向手段は、その根元が前記第2の吸気流路の上側の内壁面に取り付けられ、当該根元を支点として、その先端が回動可能に設けられている板状の部材から構成され、前記吸気を指向するときには、前記第2の吸気流路の内壁面に対して所定の角度を有するようにその先端を離間させることを特徴とする圧縮自己着火内燃機関であるので、外気温度や内燃機関の運転条件によらず、ピストンが概ね圧縮上死点に至る時期に、燃焼室内の混合気に局所的な高温化を生じさせず、かつ、自己発火可能な混合気温度を得ることで、内燃機関の圧縮自己着火燃焼を安定化することができる。
従来の内燃機関における各吸気弁を介して同じ温度の新気を吸入した場合の圧縮行程での混合気温度分布の変化を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関における各吸気弁を介して温度が異なる新気を吸入した場合の圧縮行程での混合気温度分布の変化を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関の吸気系の構成を示す構成図である。 この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関における各吸気の燃焼室内での指向を説明する図である。 この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関における吸気に燃焼室中心を指向させる手段の一例を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関における吸気に燃焼室の周縁を指向させる手段の一例を示す図である。 この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関における内燃機関の運転状態に対する各吸気温度設定の傾向を示す図である。 ノッキング発生有無のクランク角度に対する燃焼室圧力発生パターンの例を示す図である。 ノッキング発生時の燃焼室圧力信号の一例を周波数ごとのスペクトル強度として表した図である。 この発明の実施の形態2に係る圧縮自己着火内燃機関における燃焼室圧力信号の特定周波数帯のスペクトル強度に応じて吸気温度制御目標値を補正する制御の流れを説明する流れ図である。
実施の形態1.
図3は、この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関での吸気系の構成を示す図である。なお、図3においては、圧縮自己着火内燃機関として、4気筒内燃機関を例に挙げて説明しているが、気筒数は、これに限定されるものではない。また、この発明の実施の形態1に係る内燃機関としては、空気と燃料が混ぜられた混合気が燃焼室内に吸入される方式の内燃機関だけでなく、空気を吸入し燃焼室内に燃料を直接噴射する方式の内燃機関も含むものとする。従って、下記の説明においては、燃焼室に吸入される空気または混合気を、合わせて、吸気と呼ぶこととする。
この発明の実施の形態1に係る内燃機関は、図3に示すように、各気筒毎に設けられた燃焼室1と、各気筒毎に配された第1の吸気弁2及び第2の吸気弁3と、同じく各気筒毎に配された排気弁4と、第1の吸気弁2および第2の吸気弁3を介して燃焼室1に吸入する吸気の吸入量を調整するスロットル5と、スロットル5の下流で2つに分流され、第1の吸気弁2から燃焼室1に吸入される一方の吸気を加熱する第1の吸気加熱手段6と、先端が気筒数に合わせて第1の吸気マニホールドして分岐され、第1の吸気加熱手段6で加熱された吸気を、各気筒ごとに設けられた第1の吸気弁2まで導く第1の吸気流路7と、上記スロットル5の下流で2つに分流されて、第2の吸気弁3から燃焼室1に吸入される、もう一方の吸気を加熱する第2の吸気加熱手段8と、先端が気筒数に合わせて第2の吸気マニホールドして分岐され、第2の吸気加熱手段8で加熱された吸気を、各気筒ごとに設けられた第2の吸気弁3まで導く第2の吸気流路9とを備える。なお、図3の構成においては、排気弁4として、各気筒ごとに、2つの排気弁4a,4bが設けられている。
また、本実施の形態1においては、第1の吸気加熱手段6および第2の吸気加熱手段8に対して、それぞれの加熱目標温度を制御するための制御手段(図示せず)が設けられている。当該制御手段は、第1の吸気加熱手段6により加熱された吸気の温度と第2の吸気加熱手段8により加熱された吸気の温度とが互いに温度差を有するように、現在の運転状態に応じた温度差を設定し、当該温度差に基づいて前記第1および第2の加熱目標温度の値を決定する。第1の吸気加熱手段6および第2の吸気加熱手段8は、それぞれ、制御手段によって決定された第1および第2の加熱目標温度に従って、分流された吸気を別個に加熱する。具体的には、第1の吸気加熱手段6で加熱される吸気の温度が、第2の吸気加熱手段8で加熱される吸気の温度よりも低温となるように、加熱目標値がそれぞれ決定される。詳細については、後述する。
また、本実施の形態1においては、第1の吸気流路7と第2の吸気流路9とに、それぞれ、後述する第1および第2の指向手段が設けられており、第1の吸気流路7から第1の吸気弁2を介して燃焼室1内に吸入される吸気は燃焼室1の中心付近を指向され、第2の吸気流路9から第2の吸気弁3を介して燃焼室1内に吸入される吸気は燃焼室1の内壁の周縁を指向されて、それぞれの吸気が指向する燃焼室1内の空間が互いに異なるように構成されている。これらの指向手段の詳細については、後述する。
なお、図3においては、一般的な圧縮自己着火内燃機関に通常設けられている、吸気ダクトや、エアクリーナー、吸気ポート、燃料噴射ノズル、排気ポート、クランクシャフト、各種センサなどの構成が省略されているが、この発明における内燃機関においても、それらの構成は必要に応じて当然に設けられているものとする。
次に、この発明の実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関の動作について説明する。先ず、図3を用いて、この4サイクル内燃機関での吸気動作を説明する。4サイクル内燃機関では、各気筒の燃焼室1ごとに、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4つの行程が連続的に繰り返される。4気筒の内燃機関では、燃焼室1は4個存在し(以下では、燃焼室1a〜1dとする)、各燃焼室1a〜1d間で内燃機関のクランクシャフトの出力軸(図示せず)の回転角度で180度の位相差を伴って、この4つの行程を繰り返すよう設定されている。
前述の通り、各燃焼室1a〜1dに対して、吸気行程で吸気(燃焼室1に新たに吸入される空気)を燃焼室1内に導入するための第1の吸気弁2と第2の吸気弁3と、排気行程で燃焼室1内から燃焼ガスを排出するための排気弁4とが備えられている。図3では、燃焼室1dに設けた第1の吸気弁2と第2の吸気弁3と排気弁4のみに符号を付しているが、その他の燃焼室1a〜1cにも、図示されるように、同じ構成で各弁2〜4が設けられている。
各燃焼室1は、内燃機関のクランクシャフトの出力軸(図示せず)の回転角度で180度の位相差を伴って吸気行程を実行するため、内燃機関の運転中は常に何れかの燃焼室1に設けられた第1の吸気弁2と第2の吸気弁3が開弁されている。
第1の吸気弁2と第2の吸気弁3が開弁されている際には、ピストン(図3では図示せず、図2参照)が下がって、その燃焼室1の容積を増加させる動作を行っており、その動作により吸気が燃焼室1の内部に吸入される。
吸気は、吸入量を調節するためのスロットル5を通過した後に分流される。分流された一方の吸気は、第1の吸気加熱手段6で加熱され、さらに第1の吸気流路7と第1の吸気弁2を通過して燃焼室1に至る。分流されたもう一方の吸気は、第2の吸気加熱手段8で加熱され、さらに第2の吸気流路9と第2の吸気弁3を通過して同じ燃焼室1に至る。
第1の吸気加熱手段6と第2の吸気加熱手段8の構造は特に限定されないが、電気ヒーターで構成されるものや、燃焼排気ガスなどの内燃機関の排熱を吸気に熱交換可能な熱交換器で構成されているものが望ましい。
このように分流された吸気は、別個の吸気加熱手段6,8で加熱されてから、同じ燃焼室1に吸入されるが、前述したように、それぞれの吸気が指向する燃焼室1内の空間が互いに異なる空間になるように構成されている。図4は、各吸気の燃焼室1内での指向を説明する図である。図4において、各構成要素は図3と同じであるため、ここでは、構成要素の説明は省略する。
図4に黒色矢印で示すように、第1の吸気流路7を通過して第1の吸気弁2に至った吸気には、燃焼室1の中心付近を指向させ、一方、第2の吸気流路9を通過して第2の吸気弁3に至った吸気には、白抜き矢印で示すように、燃焼室1の周縁付近を指向させている。これにより、第1の吸気流路7を通過して第1の吸気弁2に至った吸気は燃焼室1の中心付近に集まり、それを取り囲むように第2の吸気流路9を通過して第2の吸気弁3に至った吸気が燃焼室1の周縁付近を周縁に沿って流れる。
図5は、吸気に燃焼室1の中心付近を指向させるための第1の指向手段の一例を示した図である。図5において、10は、第1の指向手段としての縦渦生成板であり、その他の構成要素は図3と同じである。縦渦生成板10は、その根元が第1の吸気流路7の下側の内壁面に取り付けられており、当該根元を支点として、その先端は回動可能になっており、第1の吸気流路7の内壁面に沿うように縦渦生成板10を寄せたり、あるいは、第1の吸気流路7の内壁面に対して所定の角度を有して縦渦生成板10を離間させたりすることが可能となっている。
図5(A)に示すように、縦渦生成板10を第1の吸気流路7の内壁面に寄せた状態の通常の吸気では、吸気は、破線矢印で示すように、第1の吸気弁2の全周からほぼ均等に燃焼室1に吸入されるため、特別な指向性や渦の発生を伴わない。
一方、(B)に示すように、縦渦生成板10の先端を第1の吸気流路7の内壁面から浮かして、縦渦生成板10を所定の角度を有して第1の吸気流路7の内壁面から離し、縦渦生成板10で第1の吸気流路7の一部の流れを塞いで、偏流を発生させると、吸気の流速が高くなることに加えて、第1の吸気弁2の一部分の方向のみから燃焼室1に吸気が吸入され、吸気に燃焼室1の中心付近を指向させる指向性や強い渦を発生させることができる。(B)のように、吸気を燃焼室1の上壁面側に偏流させて吸入すると、吸気の多くが燃焼室1の上壁面に衝突して燃焼室1の中心付近を指向する流れとなる。
図6は、吸気に燃焼室1の周縁付近を指向させるための第2の指向手段の一例を示した図である。図6において、11は、第2の指向手段としての旋回渦生成板であり、その他の構成要素は図3と同じである。旋回渦生成板11は、その根元が第2の吸気流路9の上側の内壁面に取り付けられており、当該根元を支点として、その先端は回動可能になっており、第2の吸気流路9の内壁面に沿うように旋回渦生成板11を寄せたり、あるいは、第2の吸気流路9の内壁面に対して所定の角度を有して旋回渦生成板11を離間させたりすることが可能となっている。
図6に示すように、旋回渦生成板11の先端を第2の吸気流路9の内壁面から浮かして、旋回渦生成板11を所定の角度を有して第2の吸気流路9の内壁面から離し、旋回渦生成板11で第2の吸気流路9の一部の流れを塞いで、偏流を発生させると、吸気の流速が高くなることに加えて、第2の吸気弁3の一部分の方向のみから燃焼室1に吸気が吸入され、吸気に燃焼室1の内壁の周縁付近を指向させる指向性を得ることができる。このような手段で、燃焼室1の内壁の周縁付近を指向させて吸入した吸気は、燃焼室1の内壁の周縁に沿った旋回流を生成する。
以上のような構造を用いると、縦渦生成板10および旋回渦生成板11の働きにより、燃焼室1内の中心付近を指向する吸気と燃焼室1内の周縁付近を指向する吸気とを生成することを実現でき、さらに、第1の吸気加熱手段6および第2の吸気加熱手段8の働きにより、それらの吸気の温度に温度差を与えることで、図2の(1)に示すように、吸気行程終了時期における燃焼室1内の空気や混合気に温度差を得ることができる。
この技術は、燃焼室1の壁面やピストンによる冷却が及びにくい燃焼室1の中央付近の空気や混合気の温度上昇を抑えることに有効である。即ち、図2に示したように、吸気行程終了時期では、燃焼室1の中央付近に吸入する吸気温度を燃焼室の周縁付近に吸入する吸気温度よりも低温としておくことで、圧縮行程中に熱が移動して、圧縮が進んだ圧縮行程の終了時期において、燃焼室1内の混合気の温度がちょうどほぼ均一になるように制御することができる。
図2(1)〜(3)は、各吸気弁を介して温度が異なる新気を吸入した場合の圧縮行程での混合気温度の変化を説明する図で、燃焼室の中心付近の混合気温度が高くなる過程を説明する図である。図2(1)〜(3)は、それぞれ、吸気行程終了時期、圧縮初期、および、さらに圧縮が進んだ時期を示している。また、これらの図の上段の(a)には、それぞれの時期の燃焼室内の混合気分布イメージが示され、下段の(b)には、それぞれの時期の燃焼室の径方向の温度分布イメージが示されている。
図2(1)に示すように、吸気行程が終了した時期には、燃焼室の中心付近よりも高温の空気または混合気が燃焼室の周縁周辺に形成されている。
続いて、図2(2)に示すように、圧縮行程が進むにつれて、燃焼室1内のすべての空気または混合気の温度は上昇する。このとき、まだ、燃焼室1の中心付近よりも周縁付近の空気または混合気の方が高温であるため、周縁付近の空気または混合気の熱が中心付近の空気または混合気に移動する。
当該熱の移動を行いながら、図2(3)に示すように、さらに圧縮が進むと、混合気全体がほぼ均質な温度となる。
これにより、本実施の形態に係る内燃機関においては、圧縮行程の後期、理想的には、ピストンが圧縮上死点に至った時期に、燃焼室1内の混合気の温度が均一となり、また、その温度が自己発火温度になるように制御することが可能である。さらに、圧縮自己着火燃焼の特長である多点同時着火を得るために、燃焼室1内の混合気濃度が均質であることも重要であるが、本実施の形態に係る内燃機関においては、第1の吸気弁2と第2の吸気弁3とから吸入される混合気の濃度が均質であるため、燃焼室1内の混合気濃度にばらつきが生じることなく、燃焼室1内の混合気濃度は当然に均質である。以上により、本実施の形態においては、燃焼開始時期が早期化せず、かつ、燃焼速度の上昇を抑えた、安定的な圧縮自己着火燃焼を実現することができる。
図7に、内燃機関の運転状態(軸回転数や吸入空気量など)に対する各吸気温度設定のパターンを示す。図7に示すグラフにおいて、横軸は、内燃機関の運転状態である軸回転数および吸入空気量であり、縦軸は各吸気の温度をそれぞれ示している。
図7に実線で示す特性線は、燃焼室1の周縁付近を指向する吸気の温度を示しており、内燃機関の軸回転数や吸入空気量の増加に伴って、吸気温度を低下させることを意味している。
これは、内燃機関の軸回転数の増大に伴って燃焼室1内の空気や混合気から燃焼室1の壁面やピストンに熱が移動する時間が短くなることで、断熱圧縮熱が燃焼室1の壁面やピストンに奪われにくくなるためと、吸入空気量の増大に伴って断熱圧縮による空気や混合気の温度上昇そのものが増大するためである。
また、図7に破線で示す特性線は、燃焼室1の中心付近を指向する吸気の温度を示しており、内燃機関の軸回転数や吸入空気量の増加に伴って、実線で示す燃焼室1の周縁付近を指向する吸気の温度との温度差ΔTを拡大させることを意味している。
これは、内燃機関の軸回転数の増大に伴って燃焼室1内の空気や混合気間の熱が移動する時間が短くなることで、燃焼室1の中心付近の空気や混合気の熱が燃焼室1の周縁付近の空気や混合気に奪われにくくなるためと、吸入空気量の増大に伴って、燃焼室1の中心付近の空気や混合気の断熱圧縮による温度上昇そのものが増大するためである。
内燃機関の現在の運転状態である軸回転数や吸入空気量の増減に対応させた温度差ΔTの具体的な温度設定は、内燃機関の特性、特に燃焼室1の構造上の違い、例えば、燃焼室1の直径や、ピストン形状や、混合気を冷却する能力の違いによって異なる。そこで、本実施の形態においては、燃焼室1の構造が異なる内燃機関ごとに、軸回転数や吸入空気量ごとの温度差ΔTを導くための、軸回転数や吸入空気量に関する所定の関数や設定値データテーブルを予め作成しておくようにする。
また、第1の吸気加熱手段6から第1の吸気弁2に至る第1の吸気流路7内と第2の吸気加熱手段8から第2の吸気弁3に至る第2の吸気流路9内とのそれぞれに、熱電対やサーミスタなどから構成された吸気温度検出手段(図示せず)を設け、当該吸気温度検出手段から各吸気温度を得て、それらに応じて、上記の関数や設定値データテーブルから求めた温度差ΔTに基づいて、第1の吸気加熱手段6と第2の吸気加熱手段8のそれぞれによる加熱量制御を行う。
具体的には、まず、内燃機関の特性ごとに予め設定した上記の関数や設定値データテーブルを用いて、現在の運転状態(軸回転数や吸入空気量)に応じた吸気の温度差ΔTを求め、設定する。次に、燃焼室1の周縁寄りを旋回するように第2の吸入弁3を介して吸入される吸気の加熱目標温度T2に対しても、同様に、内燃機関の特性ごとに、軸回転数や吸入空気量に関する所定の関数や設定値データテーブルを予め設定しておき、当該関数や設定値データテーブルから、加熱目標温度T2を求め、設定する。次に、温度差ΔTを加熱目標温度T2から減じることで、燃焼室1の中心付近を指向させる第1の吸気弁2を介して吸入される吸気の加熱目標温度T1を算出する(T1=T2−ΔT)。こうして得られた加熱目標温度T1を第1の吸気加熱手段6による吸入空気の加熱目標温度としてセットし、加熱目標温度T2を第2の吸気加熱手段8による吸入空気の加熱目標温度としてセットする。なお、この制御の流れは所定の周期で繰り返し実行され、それにより、時々刻々変化する内燃機関の現在の運転状態に対応可能となる。これにより、現在の運転状態に応じて設定される温度差ΔTに基づく第1の吸気加熱手段6と第2の吸気加熱手段8のそれぞれによる加熱量制御が可能となり、燃焼室の中心付近を指向させる吸気の温度が燃焼室の周縁付近を指向させる吸気の温度よりも現在の運転状態に応じて設定された温度差ΔTだけ低温になるように制御することができる。
第1の吸気加熱手段6と第2の吸気加熱手段8により双方の吸気を加熱すると、燃焼室1内に低温の空気を直接吸入しないため、圧縮行程の終了時期における空気や混合気を常に自己発火可能な温度にでき、さらに、第1の吸気加熱手段6と第2の吸気加熱手段8により、吸気の温度差を、温度差ΔTの値に基づいて、常に適切に制御できることから、圧縮行程の終了時期における燃焼室1内の混合気の温度を均一にすることができる。その結果、混合気の低温化による失火を防止しつつ、燃焼室1内の混合気に局所的な高温化が原因となる自己着火の早期化や、燃焼速度の上昇に伴う圧縮自己着火燃焼の不安定化が防止される。
以上のように、この発明の本実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関によれば、2系統の吸気系統に別個に設けた第1及び第2の吸気加熱手段6,8を用いて、内燃機関の運転状態に応じて、吸気行程終了時期においては、燃焼室1の中心付近を指向するように設定された吸気の温度を予め燃焼室1の周縁寄りを旋回するよう設定された吸気の温度よりも低温になるように制御し、圧縮行程中に熱の移動を進ませるようにしたため、内燃機関の運転状態によらず、圧縮行程の終了時期(ピストンが概ね圧縮上死点に至る時期)に、燃焼室1内の混合気全体を概ね均一な温度に制御することができる。また、双方の吸気を加熱制御することで外気温度などによらず、ピストンが概ね圧縮上死点に至る時期に、燃焼室1内の混合気を自己発火可能な温度にすることができることから、燃焼室1内の混合気に局所的な高温化が原因となる自己着火の早期化や、燃焼速度の上昇に伴う圧縮自己着火燃焼の不安定化や、燃焼室1内の混合気温度が自己発火可能な温度に到達できないために生じる失火などに伴う未燃混合気の排出が防止される。これにより、本実施の形態1に係る圧縮自己着火内燃機関によれば、外気温度や内燃機関の運転条件によらず、ピストンが概ね圧縮上死点に至る時期に、燃焼室1内の混合気に局所的な高温化を生じさせずに、概ね均一な温度に制御し、かつ、自己発火可能な混合気温度を得ることができ、内燃機関の圧縮自己着火燃焼を安定化することが可能となり、燃焼の不安定化に伴う未燃混合気の排出を防止することができるという効果が得られる。
実施の形態2.
上述の実施の形態1では、内燃機関の特性に応じて軸回転数や吸入空気量ごとに予め設定した、燃焼室1の中心付近を指向する吸気の温度と燃焼室1の周縁付近を指向する吸気の温度との温度差ΔTに基づいて、各吸気加熱量を制御することで、自己着火の早期化や圧縮自己着火燃焼の不安定化が防止される動作について説明した。本実施の形態2においては、実際の燃焼状態を検知した結果に基づいて、温度差ΔTを補正することで、より確実に自己着火の早期化や圧縮自己着火燃焼の不安定化を防止するための制御動作について説明する。
なお、この発明の実施の形態2に係る圧縮自己着火内燃機関の構成は、図3〜図6に示した実施の形態1の構成と基本的に同じであるため、ここでは、それらの図を参照することとし、その説明は省略する。
図8は、ノッキング発生有無のクランク角度に対する燃焼室圧力発生パターンの例を示した図である。図8の太い実線は、燃焼室1内の混合気の局所的な高温化によって圧縮自己着火において異常が発生した場合のクランク角度に対する燃焼室1内の圧力変化の例を示しており、図8の細い実線は、混合気の局所的な高温化などがなく異常が発生していない場合の圧力変化の例を示している。この場合の異常とは、所謂ノッキングのごとく、正常な圧力変化に高周波数の圧力変化成分が加わった状態のことである。
燃焼室内の圧力変化にノッキングのごとく高周波数の変化が加わると、内燃機関のクランクシャフトの出力軸(図示せず)に伝達される駆動トルクが小刻みに振動することから内燃機関を搭載した車両の走行速度が小刻みに変化すると共に、騒音発生の原因にもなり、車両の乗車における快適性が損なわれる。
圧縮自己着火内燃機関において、このような圧力変化にノッキングのごとく高周波数の変化が加わる主要因は混合気の局所的な高温化であり、局所的な高温化は燃焼室1の壁面やピストンによる冷却効果が及びにくい燃焼室1の中心付近で発生するため、その防止には、図7に示す温度差ΔTを拡大する制御が有効である。
図9は、燃焼室1内の圧力変化にノッキングのごとく高周波数の変化が加わる条件でのクランク角度に対する圧力変化データをフーリエ変換して得られた各信号周波数のスペクトル強度を示した図である。
低周波数側のスペクトルの増加は、ノッキングのごとく高周波数の変化が加わっていない場合にも得られる圧縮自己着火燃焼による基本的な圧力変化に起因する変化である。
一方、高周波数側に発生するスペクトルの増加は、圧力変化に加わったノッキングのごとく高周波数成分の発生によるものである。よって、この高周波数帯のスペクトル(の強度)を求めることで、圧力変化に加わったノッキングのごとく高周波数成分の発生の有無や強さを検出することができる。
このような高周波数帯のスペクトル強度Pは、燃焼室1内の圧力変化情報や圧力変化に連動する何らかの物理量変化を電圧信号に変換可能な素子の出力を算術的に計算処理することで得ることができるが、簡易的には素子の出力信号のうち特定の高周波数帯のみを通過させるフィルターを用いるなどの方法により特定周波数帯のスペクトル強度を得ることができる。なお、高周波成分は燃焼室内を高速で移動するエネルギーの共鳴により生じるものであるため、その周波数は燃焼室1の形状が支配的である。よって、軸回転数などの内燃機関動作の周波数によってスペクトル強度を検出する周波数帯を変更する必要はない。
この特定周波数帯のスペクトル強度Pが例えば予め定めた上限値よりも大きい場合は、燃焼室1の中心付近を指向させる第1の吸気弁2を介して吸入される吸気の温度設定値を現状よりも低い値に補正して吸気加熱制御を実行することで内燃機関の軸トルクの振動や騒音の発生を抑制することができる。
具体的な処理の流れの一例を図10に示す。この例は燃焼室内圧力情報に関する高周波数帯のスペクトル強度が予め設定した値となるように制御するものである。
制御開始から、先ず、ステップS100において、高周波数帯のスペクトル強度制御目標値Psをメモリー(図示せず)にセットする。スペクトル強度制御目標値Psは内燃機関が許容するスペクトル強度の上限値などであり、0よりも大きい上限値以下の値であればよい。
次に、ステップS101で、内燃機関の現在の運転状態(軸回転数や吸入空気量など)に応じた吸入空気の温度差ΔT0と、燃焼室1の周縁寄りを旋回するように第2の吸入弁3を介して吸入される吸気の加熱目標温度T2とを、それぞれ、予め設定した所定の関数から演算して設定するか、あるいは、予め設定したテーブルを参照して設定する。
次に、ステップS102では、まず、燃焼室1内の圧力情報に基づいて、現在のスペクトル強度Pを検出する。検出方法としては、上述したいずれかの方法を用いればよく、例えば、燃焼室1内の圧力変化に応じた電気的な出力が得られる素子の出力を算術的に計算処理して求めるか、あるいは、当該素子の出力を特定の高周波数帯のみを通過させるフィルターを通すことによって求める。次に、検出された現在のスペクトル強度PとステップS100でメモリーにセットしたスペクトル強度制御目標値Psとの偏差に基づいた制御演算を実行して補正係数Rを算出する(R=f(P−Ps),0≦R)。制御演算には、偏差に対する比例制御演算(P制御)や、比例演算に偏差の積分値に比例した積分制御演算(I制御)を加えたPI制御や、比例演算にスペクトル強度の変化に比例した微分制御演算(D制御)を加えたPD制御や、これらを組み合わせたPID制御などを用いることができる。
ステップS103では、ステップS101で設定した内燃機関の現在の運転状態に応じた吸入空気の温度差ΔT0に、ステップS102で求めた補正係数Rを乗ずることで、吸気温度差ΔTを算出し(ΔT=ΔT0×R)する。
次に、ステップS104では、その温度差ΔTを、ステップS101で設定された、燃焼室1の周縁寄りを旋回するように第2の吸気弁3を介して吸入される吸気の加熱目標温度T2から減じることで、燃焼室1の中心付近を指向させる第1の吸気弁2を介して吸入される吸気の加熱目標温度T1を算出する(T1=T2−ΔT)。
よって、ステップS102における制御演算の結果として得られる補正係数Rは0以上の値とすることが望ましい。なぜならば、Rが負の値の場合は、燃焼室1の中心付近を指向する吸気の温度が燃焼室1の周縁を旋回するように吸入する空気の温度よりも高温となってしまい、圧縮行程の進行に伴って燃焼室1の中心付近の混合気温度の局所的な高温化傾向が強くなるためである。
次に、ステップS105では、ステップS104で算出した燃焼室1の中心付近を指向させる吸気の加熱目標温度T1を、第1の吸気加熱手段6による吸入空気の加熱目標温度としてセットし、ステップS101で得た燃焼室1の周縁に沿うように指向させる吸気の加熱目標温度T2を、第2の吸気加熱手段8による吸入空気の加熱目標温度としてセットする。
この制御の流れは、ステップS105からステップS101に戻ることで繰り返し実行される。よって、第1の吸気加熱手段6と第2の吸気加熱手段8のそれぞれによる吸入空気の加熱目標温度は、内燃機関の運転状態の変化に応じて時々刻々変化する。そのため、本実施の形態においては、第1の吸気加熱手段6から第1の吸気弁2に至る第1の吸気流路7内と第2の吸気加熱手段8から第2の吸気弁3に至る第2の吸気流路9内のそれぞれに設けた熱電対やサーミスタなどの吸気温度検出手段(図示せず)から各吸気温度を得て、加熱目標温度T1または加熱目標温度T2との温度差などに基づいた、第1の吸気加熱手段6または第2の吸気加熱手段8のそれぞれによる加熱制御も連続的に実行することで、燃焼運転中の内燃機関において吸入空気の温度差を常に適切に保つことができ、圧縮行程の終了時期における空気や混合気の温度の均一性が向上することから、圧縮自己着火内燃機関においては、燃焼室内の混合気に局所的な高温化を生じさせず、自己着火の早期化や燃焼速度の上昇に伴う圧縮自己着火燃焼の不安定化が防止される。
以上のように、本実施の形態2によれば、上述の実施の形態1と同様の効果が得られるとともに、さらに、本実施の形態2においては、燃焼室内の圧力変化に応じた電気的な出力が得られる素子の出力から特定した高周波数帯のスペクトル強度Pを検出し、該スペクトル強度Pに応じて燃焼室1の中心付近を指向させる空気または混合気の加熱目標温度T1と燃焼室1の周縁を沿わせる空気または混合気の加熱目標温度T2との温度差ΔTを補正するようにしたため、内燃機関の運転状態によらず、より確実に自己着火の早期化や燃焼速度の上昇に伴う圧縮自己着火燃焼の不安定化とそれに伴う未燃混合気の排出が防止されるという効果が得られる。
なお、この発明の実施の形態1および実施の形態2に係る動作は燃焼室内に温度が異なる空気を吸入する場合について説明しており、筒内直噴方式の圧縮自己着火内燃機関に関するものである。しかしながら、一方の吸気弁を介して燃焼室に吸入する流体を燃焼室の中心を指向させるとともに、他方の吸気弁を介して燃焼室の周縁を指向させて吸入する流体よりも低温に制御し、かつ、吸入する流体がほぼ同じ濃度の混合気であれば予混合方式の圧縮自己着火内燃機関においても同様の効果が得られる。
1 燃焼室、2 第1の吸気弁、3 第2の吸気弁、4 排気弁、5 スロットル、6 第1の吸気加熱手段、7 第1の吸気流路、8 第2の吸気加熱手段、9 第2の吸気流路、10 縦渦生成板、11 旋回渦生成板。

Claims (2)

  1. 燃焼室内に形成された燃料と空気との混合気をピストンによる圧縮によって自己着火させる圧縮自己着火内燃機関であって、
    気筒毎に配された第1および第2の吸気弁と、
    前記第1及び第2の吸気弁を介してそれぞれ前記燃焼室内に吸気を導入する第1および第2の吸気流路と、
    前記第1の吸気流路から前記第1の吸気弁を介して前記燃焼室内に吸入される吸気に前記燃焼室の中心付近を指向させる第1の指向手段と、
    前記第2の吸気流路から前記第2の吸気弁を介して前記燃焼室内に吸入される吸気に前記燃焼室の周縁付近を指向させる第2の指向手段と、
    前記第1の吸気流路に設けられ、前記第1の吸気流路を流れる前記吸気を第1の加熱目標温度に基づいて加熱する第1の吸気加熱手段と、
    前記第2の吸気流路に設けられ、前記第2の吸気流路を流れる前記吸気を第2の加熱目標温度に基づいて加熱する第2の吸気加熱手段と、
    前記燃焼室の中心付近を指向する前記吸気の温度が前記燃焼室の周縁付近を指向する前記吸気の温度よりも低温になるように、現在の内燃機関の運転状態に基づいて、前記第1の加熱目標温度と前記第2の加熱目標温度との温度差を設定し、当該温度差に基づいて前記第1の加熱目標温度および前記第2の加熱目標温度の値を制御する制御手段と
    を備え
    前記第1の指向手段は、その根元が前記第1の吸気流路の下側の内壁面に取り付けられ、当該根元を支点として、その先端が回動可能に設けられている板状の部材から構成され、前記吸気を指向するときには、前記第1の吸気流路の内壁面に対して所定の角度を有するようにその先端を離間させ、
    前記第2の指向手段は、その根元が前記第2の吸気流路の上側の内壁面に取り付けられ、当該根元を支点として、その先端が回動可能に設けられている板状の部材から構成され、前記吸気を指向するときには、前記第2の吸気流路の内壁面に対して所定の角度を有するようにその先端を離間させる
    ことを特徴とする圧縮自己着火内燃機関。
  2. 前記制御手段は、さらに、
    前記燃焼室内の圧力変化に応じた電気的な出力が得られる素子の出力から特定高周波数帯のスペクトル強度を検出し、該スペクトル強度に応じて前記第1の加熱目標温度と前記第2の加熱目標温度との前記温度差を補正し、補正した当該温度差に基づいて前記第1の加熱目標温度および前記第2の加熱目標温度の値を制御する
    ことを特徴とする請求項1に記載の圧縮自己着火内燃機関。
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