JP4899598B2 - ターボ分子ポンプ - Google Patents

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Description

本発明は、半導体製造装置や分析装置などに使用されるターボ分子ポンプに関する。
従来、塩素系や硫化フッ素系の反応生成物が堆積しやすいプロセスにおいてターボ分子ポンプを使用する場合には、ポンプ内における反応生成物の堆積を防止するために、ポンプ自体の温度を高温に維持する場合がある(例えば、特許文献1参照)。従来のターボ分子ポンプでは、反応生成物が堆積しやすい低真空側をヒータにより高温に維持して堆積を防止するとともに、高真空側と低真空側との間に断熱部材を設けて、ロータの温度上昇を抑えるようにしている。
特開2002−21775号公報
しかしながら、ロータ温度上昇を招く要因としては、上述したヒータ加熱だけでなく、ガスを排気する際の摩擦熱や、高温に維持されている装置側からの熱流入がある。そのため、高真空側と低真空側との間に断熱部材を設けても、摩擦熱等によりロータ温度上昇を招き、ロータのクリープ膨張による不都合、例えば、ロータとステータとの接触が発生するおそれがあった。
請求項1の発明は、ステータに対してロータを回転駆動して、高真空側から低真空側へとガスを排気するターボ分子ポンプに適用され、被排気装置に接続されるポンプケーシングと高真空側で排気ガスと接する高真空側接ガス部との間に配設され、ポンプケーシングを加熱する加熱部と高真空側接ガス部を冷却する冷却部とを有する第1加熱冷却素子を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、低真空側で排気ガスと接する低真空側接ガス部とロータを回転駆動するスピンドル部との間に配設され、低真空側接ガス部を加熱する加熱部とスピンドル部を冷却する冷却部とを有する第2加熱冷却素子を備えたものである。
請求項3の発明は、請求項に記載のターボ分子ポンプにおいて、高真空側接ガス部と低真空側接ガス部との間に配設され、低真空側接ガス部を加熱する加熱部と高真空側接ガス部を冷却する冷却部とを有する第3加熱冷却素子を備えたものである。
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボ分子ポンプにおいて、加熱冷却素子にペルチエ素子を用いたものである。
本発明によれば、ロータ温度の上昇を抑えつつ、反応生成物の堆積を防止することができる。
以下、図を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。図1は、本発明によるターボ分子ポンプの一実施の形態を示す断面図である。図1に示すターボ分子ポンプ1は磁気軸受式ターボ分子ポンプであり、また、ターボ分子ポンプ部2とネジ溝ポンプ部3とを有する高ガス負荷対応型のターボ分子ポンプである。ターボ分子ポンプ1は、ロータ4と、ロータ4を高速回転するスピンドル5と、スピンドル5が固定されるベース6と、ロータ4が収容されるケーシング7とを備えている。
ロータ4はスピンドル5に設けられた回転軸8に取り付けられている。回転軸8はラジアル電磁石9,10およびスラスト電磁石11によって非接触支持され、モータ12によって数万rpmで回転駆動される。回転軸8の浮上位置は、磁気軸受用に設けられたラジアルセンサ13,14およびスラストセンサ15によって検出される。16,17は機械式の保護ベアリングである。
ターボ分子ポンプ1は、ケーシング7の吸気口フランジ7aを装置18側のフランジにボルト締結することにより、装置18に取り付けられる。ロータ4の上部には、ターボ分子ポンプ部2の一方を構成する動翼19が軸方向(図示上下方向)に複数段形成され、ロータ4の下部には、ネジ溝ポンプ部3の一方を構成する円筒状のネジロータ20が形成されている。
一方、ケーシング内側のベース6上には、ターボ分子ポンプ部2の他方を構成する静翼21が複数設けられている。動翼19および静翼21はそれぞれタービン翼から成り、静翼21の翼角度は、動翼19の翼角度と逆向きになっている。静翼21と動翼19とは交互に配置されており、各静翼21はリング状のスペーサ22によって上下に挟持されるようにベース6上に保持され、静翼21と動翼19との隙間が数mm程度となるように位置決めされる。
また、静翼21の下側のベース6上には、ネジ溝ポンプ部3の他方を構成する円筒状のネジステータ23が、ネジロータ20の外周面に対向するように設けられている。不図示のボルトによりケーシング7がベース6に固定されると、ケーシング7内に交互に積層された静翼21およびスペーサ22は、ケーシング7の吸気口フランジ7aとベース6との間に挟持されることになる。
ベース6には、ベース温度を制御するためのヒータ24およびベース冷却水配管25が設けられている。ケーシング7の吸気口フランジ7aと最上段のスペーサ22との間、最下段のスペーサ22とベース6との間、およびベース6とスピンドル5との間には熱交換器26〜29が設けられている。また、スピンドル5の底面には、スピンドル5を冷却するための冷却水配管30が設けられている。
吸気口フランジ7aを介して装置18からターボ分子ポンプ1側へと入流したガスは、ターボ分子ポンプ部2およびネジ溝ポンプ部3の順に排気され、ベース6に設けられた排気口6aから排気される。そのため、ポンプ内においては吸気口フランジ7aの部分が最も高真空である。ガスはターボ分子ポンプ部2およびネジ溝ポンプ部3の順に排気され、排気口6aに近付くにつれて圧力が上昇し、排気口6aにおいては、油回転ポンプ等の補助ポンプによる排気が可能程度の低真空となっている。また、同一ポンプ部内であっても、排気口側に近い領域ほど圧力が高くなっている。
上述した塩素系や硫化フッ素系の反応生成物は、真空度が低くなるほど(すなわち、圧力が高くなる程)昇華温度が高くなり、堆積しやすくなる。図2は、反応生成物の昇華温度と圧力との関係を定性的に示す図である。図2おいて、横軸は圧力、縦軸は温度である。曲線L1の下側は固体状態を表しており、曲線L1の上側は気体状態を表している。図2から分かるように、同一温度であれば圧力が高いほど堆積(固化)しやすく、同一圧力であれば温度が低いほど堆積しやすい。
ターボ分子ポンプ部2は高真空になっており、接ガス面の温度が比較的低くても反応生成物は堆積しない。一方、ネジ溝ポンプ部3や排気口6aの部分は低真空であるため、接ガス面の温度が低いと反応生成物が堆積しやすい。例えば、図2のP1がターボ分子ポンプ部2の圧力で、P2がネジ溝ポンプ部3の圧力であったとすると、その時のポンプ内温度が一様にT0である場合、ターボ分子ポンプ部2では反応生成物はほとんど生じないが、ネジ溝ポンプ部3においては反応生成物が堆積する。そのため、このようなプロセスにおいてターボ分子ポンプ1を使用する場合には、ヒータ24によりベース6を加熱して、ネジステータ23の温度が図2のT2よりも高くなるように温度制御するのが一般的である。
一方、ロータ4の材料には一般的にアルミ合金が用いられており、アルミ合金はクリープ温度が低いという特性を有している。そのため、ロータ温度上昇を防止するために、ベース6部分や装置側からスペーサ22,静翼21へ流入する熱や、モータ発熱によるスピンドル5の温度上昇を抑える必要がある。
すなわち、ターボ分子ポンプにおいては、次のような加熱・冷却制御が必要となる。
(a)低真空側における反応生成物の堆積を防止するために、ネジステータ23や排気口6aを昇華温度以上に加熱する。
(b)モータ発熱によるスピンドル5の温度上昇を防止するために、スピンドル5を冷却する。
(c)ガス排気に伴う摩擦熱によるロータ温度上昇を防止するために、スペーサ22および静翼21を冷却する。
本実施の形態では、上述した加熱・冷却制御条件を十分満たすように、ベース温度制御用のヒータ24および冷却水配管25、スピンドル冷却用の冷却水配管30に加えて、熱交換器26〜29を設けている。熱交換器26〜29としては、例えば、ペルチエ素子などのように設置スペースの小さなものが用いられる。ここでは、ペルチエ素子を用いる場合について説明する。ペルチエ素子はシート状の素子であって、その一方の面は熱を放出し、他方の面は熱を吸収する。すなわち、加熱部と冷却部とを有している。
図1に示した例では、熱交換器26は、加熱部がフランジ吸気口7aに接触し、冷却部がスペーサ22に接触するように配設される。熱交換器27は、冷却部がスペーサ22に接触し、加熱部がベース6に接触するように配設される。熱交換器28および29は、冷却部がスピンドル5に接触し、加熱部がベース6に接触するように配設される。
まず、熱交換器28,29の機能について説明する。スピンドル5はモータ12および電磁石9〜11が発熱源となっており、特にガス負荷によってモータ発熱が増加する。上述したようにスピンドル5の温度上昇はロータ4の温度上昇を招くので、スピンドル用冷却水配管30によって冷却されている。そのため、発生した熱はスピンドル5の上側から下側へと流れる。一方、ベース6は、ネジステータ23や排気口6aが反応生成物の昇華温度以上となるように、ヒータ24および冷却水配管25により温度制御されている。
そのため、従来のようにスピンドル5とベース6とが接触している構成の場合、接触面を通してベース6からスピンドル5へと熱が移動する。その結果、スピンドル5に近い排気口6a付近の温度が低下して、排気口6aに反応生成物が堆積するとともに、冷却水配管25のスピンドル5に対する冷却性能が低下してスピンドル温度の上昇を招いてしまうという問題があった。
本実施の形態では、熱交換器28,29を排気ガスの流れる部材(排気口6a)とスピンドル5の熱流路との間に配置し、排気ガスの流れる部材を加熱するとともに、熱流路側を冷却するようにした。その結果、ベース6からスピンドル5への熱移動が阻止され、スピンドル5に対する冷却性能が向上するとともに、排気ガスが流れる接ガス部の温度低下を防止することができる。もちろん、冷却水配管25が無く、熱交換器28,29だけでスピンドル5を冷却するような構成であっても良い。
熱交換器26は、単に装置18からの熱流入を阻止するだけでなく、静翼21およびスペーサ22を積極的に冷却することによって、摩擦熱によるロータ加熱を抑えるようにしている。また、加熱部が吸気口フランジ7aに接するように配置したので、吸気口フランジ7aが加熱され、装置18からケーシング7側への熱流入を低減することができる。その結果、所定温度に加熱されている装置18の温度を不用意に下げてしまうのを防止することができる。なお、図1に示す例では、熱交換器26を最上段のスペーサ22と吸気口フランジ7aとの間に配置したが、吸気口フランジ7aと装置18との間に配置して、装置18から吸気口フランジ7aへの熱流入を防止するようにしても良い。
熱交換器27の機能は、加熱部によりベース6を積極的に加熱するとともに、冷却部によりスペーサ22および静翼21を積極的に冷却することである。例えば、熱交換器27が無い場合を考えると、ベース6からスペーサ22へと熱が逃げるため、スペーサ22に近い部分において、ベース温度が昇華温度よりも低くなってしまう場合ある。そのため、ネジステータ23の上部付近に反応生成物が堆積してしまう。本実施の形態では、熱交換器27によりベース側を積極的に加熱することにより、スペーサ22に近い部分のベース6すなわち低真空側の温度を、確実に昇華温度以上に保つことができる。さらに、冷却部によりスペーサ22が冷却されるので、高真空側の温度上昇を防止することができる。
なお、熱交換器27の位置は、最下段のスペーサ22とベース6との間とは限らない。ガス負荷が大きい場合には、ポンプ内の圧力が上昇してターボ分子ポンプ部2内の下部においても反応生成物の堆積が生じることがある。そのような場合には、熱交換器27を上方に移動してスペーサ間に配置し、ターボ分子ポンプ部2の下部に反応生成物が堆積するのを防止する。すなわち、堆積が生じる圧力領域を低真空と称し、堆積が生じない圧力領域を高真空と称することにすれば、熱交換器27は低真空側の接ガス部(ベース6)を加熱し、高真空側の接ガス部(スペーサ22)を冷却するような場所に配置される。
以上説明した本実施の形態では、以下のような作用効果を奏する。
(1)低真空側で排気ガスと接する低真空側接ガス部(ベース6,排気口6a)とロータ4を回転駆動するスピンドル部(スピンドル5)との間に配設され、低真空側接ガス部6,6aを加熱する加熱部とスピンドル部5を冷却する冷却部とを有する第加熱冷却素子(熱交換器28,29)を備えているので、低真空側接ガス部6,6aにおける反応生成物の堆積を防止できる。さらに、スピンドル部5の温度上昇を抑えることができるので、ロータ4の温度上昇も抑えることができる。
(2)高真空側で排気ガスと接する高真空側接ガス部(静翼21,スペーサ22)と低真空側接ガス部(ベース6,排気口6a)との間に配設され、低真空側接ガス部6,6aを加熱する加熱部と高真空側接ガス部21,22を冷却する冷却部とを有する第加熱冷却素子(熱交換器27)を備えているので、低真空側接ガス部6,6aの温度を確実に昇華温度以上に保つことができるとともに、高真空側接ガス部21,22を冷却することができる。
(3)被排気装置(装置18)に接続されるポンプケーシング7と高真空側で排気ガスと接する高真空側接ガス部(静翼21およびスペーサ22)との間に配設され、ポンプケーシング7を加熱する加熱部と高真空側で排気ガスと接する高真空側接ガス部21,22を冷却する冷却部とを有する第加熱冷却素子(熱交換器26)を備えたことにより、被排気装置18の温度低下を防止できる。さらに、静翼21,スペーサ22を積極的に冷却することで、ロータの温度上昇を防止できる。
以上説明した実施の形態と特許請求の範囲の要素との対応において、ベース6,排気口6aは低真空側接ガス部を、静翼21,ステータ22は高真空側接ガス部を、熱交換器28,29は第加熱冷却素子を、熱交換器27は第加熱冷却素子を、熱交換器26は第加熱冷却素子をそれぞれ構成する。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
本発明によるターボ分子ポンプの一実施の形態を示す断面図である。 反応生成物の昇華温度と圧力との関係を定性的に示す図である。
符号の説明
1:ターボ分子ポンプ、2:ターボ分子ポンプ部、3:ネジ溝ポンプ部、4:ロータ、5:スピンドル、6:ベース、6a:排気口、7:ケーシング、7a:吸気口フランジ、8:回転軸、18:装置、19:動翼、20ネジロータ、21:静翼、22:スペーサ、23:ネジステータ、26〜29:熱交換器

Claims (4)

  1. ステータに対してロータを回転駆動して、高真空側から低真空側へとガスを排気するターボ分子ポンプにおいて、
    被排気装置に接続されるポンプケーシングと前記高真空側で排気ガスと接する高真空側接ガス部との間に配設され、前記ポンプケーシングを加熱する加熱部と前記高真空側接ガス部を冷却する冷却部とを有する第1加熱冷却素子を備えたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
  2. 請求項1に記載のターボ分子ポンプにおいて、
    前記低真空側で排気ガスと接する低真空側接ガス部と前記ロータを回転駆動するスピンドル部との間に配設され、前記低真空側接ガス部を加熱する加熱部と前記スピンドル部を冷却する冷却部とを有する第2加熱冷却素子を備えたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
  3. 請求項に記載のターボ分子ポンプにおいて、
    前記高真空側接ガス部と前記低真空側接ガス部との間に配設され、前記低真空側接ガス部を加熱する加熱部と前記高真空側接ガス部を冷却する冷却部とを有する第3加熱冷却素子を備えたことを特徴とするターボ分子ポンプ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボ分子ポンプにおいて、
    前記加熱冷却素子がペルチエ素子であることを特徴とするターボ分子ポンプ。
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