JP4894385B2 - パッシブ型水素製造装置及びそれを用いたパッケージ型燃料電池発電装置 - Google Patents
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Description
特許文献1及び2に記載された発明によれば、低温度で水素を発生させることができる(特許文献1の段落[0042]、特許文献2の段落[0080])が、水素を発生させるためには、電圧を印加する必要があり、また、水素が発生するのは燃料用電極(燃料極)の対向電極側であり、対向電極に酸化剤を供給するものではないから、本発明のパッシブ型水素製造装置とは明らかに異なる。
Electrochemical and Solid-State Letters,8(1)A52-A54(2005) Electrochemical and Solid-State Letters,8(4)A211-A214(2005)
(1)有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を毛管力又は重力落下によって供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤を供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、前記酸化極のガス拡散層及び/又は前記燃料極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記酸化極のガス拡散層を不均一にすることにより、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするパッシブ型水素製造装置。
(2)有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤として空気を自然拡散又は自然対流によって供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、前記酸化極のガス拡散層及び/又は前記燃料極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記酸化極のガス拡散層を不均一にすることにより、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするパッシブ型水素製造装置。
(3)前記空気を自然拡散又は自然対流によって供給する手段が、前記酸化極である空気極に面して空気取り入れ口を有し、前記空気取り入れ口に調整バルブを有するものであることを特徴とする前記(2)のパッシブ型水素製造装置。
(4)前記空気を自然拡散又は自然対流によって供給する手段が、前記酸化極である空気極に面してスライド式空気取り入れ口を有するものであることを特徴とする前記(2)のパッシブ型水素製造装置。
(5)前記空気の自然拡散又は自然対流を補助するためのファンを有することを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(6)有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤として過酸化水素を含む液体を毛管力又は重力落下によって供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、前記酸化極のガス拡散層及び/又は前記燃料極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記酸化極のガス拡散層を不均一にすることにより、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするパッシブ型水素製造装置。
(7)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(8)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする前記1〜(6)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(9)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極及び前記燃料極の両極のガス拡散層の一部にマスキングを行うとともに、その対向する両側のマスキングの少なくとも一部をずらして行うことによって設けたことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(10)前記マスキングを帯状に行うことを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(11)前記マスキングを斑点状に行うことを特徴とする前記(7)〜(9)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(12)前記マスキングを前記ガス拡散層に樹脂を含浸または前記ガス拡散層の表面に樹脂を塗布することによって行うことを特徴とする前記(7)〜(11)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(13)前記マスキングをスクリーン印刷により行うことを特徴とする前記(7)〜(12)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(14)前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層を不均一にして設けたことを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(15)前記酸化極のガス拡散層を、疎密に形成するか、材質の異なるものを組み合わせることによって不均一にしたことを特徴とする前記(14)のパッシブ型水素製造装置。
(16)前記酸化極のガス拡散層を、表面に凹凸を形成することによって不均一にしたことを特徴とする前記(14)又は(15)のパッシブ型水素製造装置。
(17)水素製造装置を構成する水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(18)前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有することを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(19)前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有することを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(20)前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が400〜600mVであることを特徴とする前記(1)〜(19)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(21)前記燃料極と前記酸化極との間の電圧を調整することにより、前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(20)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(22)前記酸化剤の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする前記(1)〜(21)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(23)運転温度が100℃以下であることを特徴とする前記(1)〜(22)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(24)前記燃料極に供給する前記有機物がアルコール、アルデヒド、カルボン酸、及びエーテルよりなる群から選択される一種又は二種以上の有機物であることを特徴とする前記(1)〜(23)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(25)前記アルコールがメタノールであることを特徴とする前記(24)のパッシブ型水素製造装置。
(26)前記隔膜がプロトン導電性固体電解質膜であることを特徴とする前記(1)〜(25)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(27)前記プロトン導電性固体電解質膜がパーフルオロカーボンスルホン酸系固体電解質膜であることを特徴とする前記(26)のパッシブ型水素製造装置。
(28)前記燃料極の触媒が白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする前記(1)〜(27)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(29)前記酸化極の触媒が白金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする前記(1)〜(28)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(30)前記有機物を含む燃料の循環手段を設けたことを特徴とする前記(1)〜(29)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(31)前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする前記(1)〜(30)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置。
(32)前記(1)〜(31)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置をパッシブ型固体高分子型燃料電池と接続して、パッシブ型固体高分子型燃料電池の燃料極にパッシブ型水素製造装置で製造した前記水素を含むガスを供給することを特徴とするパッケージ型燃料電池発電装置。
(33)前記(1)〜(31)のいずれか一のパッシブ型水素製造装置をアクティブ型固体高分子型燃料電池と接続して、アクティブ型固体高分子型燃料電池の燃料極にパッシブ型水素製造装置で製造した前記水素を含むガスを供給することを特徴とするパッケージ型燃料電池発電装置。
(34)前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする前記(32)又は(33)のパッケージ型燃料電池発電装置。
(35)前記二酸化炭素吸収部をパッシブ型固体高分子型燃料電池の燃料極の近傍に設けたことを特徴とする前記(34)のパッケージ型燃料電池発電装置。
マスキングの形状としては、前記(10)、(11)のように帯状、斑点状を採用することができ、マスキングの材料としては、前記(12)のように樹脂を採用することができ、マスキングの手段としては、前記(12)、(13)のように含浸、塗布、スクリーン印刷を採用することができるが、マスキングの形状、材料、手段は、これらに限定されず、「酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域」を形成し得るものであれば、いかなる形状、材料、手段も包含するものである。
また、本発明のパッシブ型水素製造装置は、水素製造セルに外部から電気エネルギーを供給することなく、水素を発生させることもできるが、電気エネルギーを取り出す手段を有する場合であっても、外部から電気エネルギーを印加する手段を備えている場合であっても、水素を発生させることができる。
電気エネルギーを取り出す手段を有する場合には、その電気エネルギーを有効に利用することができる。
外部から電気エネルギーを印加する手段を備えている場合でも、水素製造セルに外部から少量の電気エネルギーを供給することにより、投入した電気エネルギー以上の水素を発生することができるという効果を奏する。
さらに、いずれの場合であっても、水素製造セルの電圧及び又は水素を含むガスの発生量をモニターすることによってプロセスコントロールが可能となり、水素製造装置のコンパクト化を図ることができるので、装置のコストが低減できるという効果を奏する。
また、液体燃料を燃料極に供給するためのポンプや空気を空気極に供給するためのブロアが不要になるから、補機エネルギーが節約でき、水素製造装置及び水素製造装置を用いたパッケージ型燃料電池発電装置をさらに小型にすることができるという効果を奏する。
セパレータを用いない場合には、さらに水素製造装置のコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。
特に、本発明のパッシブ型水素製造装置は、基本的に新規なものであり、以下に述べるのは、あくまでも一形態にすぎず、これにより本発明が限定されるものではない。
上記の発明における水素製造装置は、いずれも、酸化剤を流すための流路溝を設けた酸化極セパレータを用いたものであったが、セパレータを用いなくても、酸化極側に酸化剤の供給の不足する領域を設けることにより、水素が発生することを知見し、水素製造装置等の発明(特願2005−164145号)を完成させたが、本発明は、その改良発明に関するものである。
この例は、有機物と水を含む燃料を毛管力によって、水素製造セルの燃料極に供給する手段を有するものである。
水素製造セル(10)の構造は、隔膜(11)の一方の面に燃料極(12)を設け、燃料極(12)に有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を供給するための流路(13)を備え、かつ、隔膜(11)の他方の面に酸化極(14)を設け、酸化極(14)に酸化剤(空気)を供給するための流路(15)を備えたものである。
本発明のパッシブ型水素製造装置においては、燃料を供給するための流路(13)に、例えば、紙、木綿、合成繊維、アスベスト、ガラス等の有機あるいは無機繊維材料を基材とした毛管材料(多孔体)からなる部材(17)を配し、その毛管材料の毛管力で燃料を燃料カートリッジ(16)から上方向に吸い上げて燃料極(12)に供給する。
図示のように燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスク(12M)、(14M)を、マスク(12M)、(14M)の一部のみが対向するように半分ずらして設けているから、燃料は、マスク(12M)以外の部分から燃料極(12)に供給され、後述するように、空気極(14)側に空気の供給の不足する領域が形成される。
重力落下の場合には、燃料カートリッジ(16)を上部に設け、燃料誘導部を介して、燃料を落下させることにより燃料極に供給する。
燃料の供給量は、重力落下の場合には、燃料タンクの位置を変更したり、燃料タンクの出口部分に弁構造を設けること等によって調整することができ、毛管力の場合には、毛細管材料の材質を変更すること等によって調整することができる。
特に、過酸化水素を含む液体の場合には、その供給量が変化することによって水素を含むガスの発生量が大きく異なるから、上記のような手段で供給量を調整することによって最適な水素発生量となるように調整することが好ましい。
酸化剤ガスとしての空気を大気より自然拡散又は自然対流によって導入するための空気取り入れ口(18)を少なくとも一つ有する。なお、図1(d)及び(e)には、多数の空気取り入れ口を有するものが示されている。
酸化極(空気極)側に設けた酸化剤(酸素)の供給の十分な領域(以下、「放電領域」という。)では、以下の通常の燃料電池における放電反応、すなわち、図2に示すように、燃料極側で(A)の反応、空気極側で(B)の反応が起きている。
(A)CH3OH+H2O→6H++6e−+CO2
(B)6H++6e−+3/2O2→3H2O
(C)6H++6e−→3H2
(D)CH3OH+H2O→6H++6e−+CO2
すなわち、図4に示すように、燃料極側の放電領域で(A)の反応により生成したH+とe−が、同じ燃料極側の水素発生領域に移動して、(C)の反応が起き、水素が発生し、一方、空気極側の水素発生領域で(D)の反応により生成したH+とe−は、同じ空気極側の放電領域に移動して、(B)の反応が起きていると推定される。
燃料極上で(A)の反応と(C)の反応が進行し、酸化極上で(B)の反応と(D)の反応が進行すると仮定すると、トータルとして、以下の反応が成立する。
2CH3OH+2H2O+3/2O2→2CO2+3H2O+3H2
この反応の理論効率は、59%(水素3モルの発熱量/メタノール2モルの発熱量)となる。
図5〜図9に示されるようなMEAの作製方法は限定されるものではないが、燃料極触媒層及びガス拡散層からなる燃料極(12)と空気極触媒層及びガス拡散層からなる空気極(14)をホットプレスによって隔膜(11)の両面に接合する従来と同様の方法で作製することができる。
また、図6に示すように、燃料極(12)のガス拡散層(MEAのガス拡散層)の一部にマスク(12M)を設けても、後述する参考例に示すように、わずかではあるが水素が発生する。これは燃料極の一部にマスキングをすることにより、マスキングをしなかった部分で電解質を介してメタノールと水の空気極側への拡散が多くなり、マスキングをした部分でメタノールと水の空気極側への拡散が少なくなり、その結果、メタノールが拡散した空気極側においてはメタノールの酸化によって酸素が消費されて空気極側で酸素が不足する領域が形成されるのに対し、メタノールが拡散しなかった空気極側においては酸素が消費されずに空気極側で酸素が十分存在する領域が形成されることになり、空気極側の一部をマスキングしたのと同じ作用効果を奏していることが考えらえる。
図7に示すように、燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスクを同じ位置に対向するように設けた場合には、水素は発生しない。この理由は、空気極(14)のガス拡散層の一部にマスク(14M)を設けることにより水素発生領域が形成されているが、燃料極(12)の対応する領域にマスク(12M)が設けられているので、(D)の反応のためのメタノールの拡散がされず、水素生成反応(C)が起きないためと考えられる。
図8に示すように、燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスクを反対位置に対向しないように設けた場合には、水素は発生しない。この理由は、燃料極(12)の放電領域にマスク(12M)が設けられており、メタノールの供給がなく、(A)の反応が起きず、H+とe−の生成がないので、H+とe−が、放電領域から水素発生領域に供給されず、水素生成反応(C)が起きないためと考えられる。
図9に示すように、燃料極(12)及び空気極(14)のガス拡散層の一部にマスク(12M)、(14M)を、マスク(12M)、(14M)の一部のみが対向するように半分ずらして設けた場合には、放電領域(1)、水素発生領域(2)が形成され、(1)の領域で放電反応が起き、(2)の領域で水素発生反応が起きるので、水素が発生する。
帯状のマスクの幅、間隔、本数等、斑点状のマスクの大きさ、数等を適宜設定することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
マスキングの材料としてはエポキシ樹脂等の樹脂を使用することができる。
また、マスキングの手段としては、ガス拡散層への含浸、塗布、スクリーン印刷、シールの貼付等により簡便に行うことが可能である。
さらに、上記のようなマスキングだけではなく、ガス拡散層を疎密に形成したり、ガス拡散層を材質の異なるものを組み合わせたり、ガス拡散層の表面に凹凸を形成すること等の手段で、酸化極のガス拡散層を不均一にすることによっても、酸化極側に酸化剤の供給の不足する領域を設けることができる。
ガス拡散層としては、撥水処理を行ったカーボンペーパー等からなるものが好ましい。
燃料極触媒としては、任意のものを使用できるが、白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものが好ましい。
空気極触媒としては、任意のものを使用できるが、白金を炭素粉末に担持したものが好ましい。
開回路条件の場合には、実施例に示されるように、開回路電圧が400〜600mVで水素が発生しているから、この範囲で、開回路電圧を調整することにより、水素を含むガスの発生量を調整することができる。
また、上記以外に、放電条件の場合は、外部に取り出す電気エネルギーを調整すること(外部に取り出す電流を調整すること、さらには定電圧制御が可能な電源、いわゆるポテンショスタッドを用いることによって外部に取り出す電圧を調整すること)によって、充電条件の場合は、印加する電気エネルギーを調整すること(印加する電流を調整すること、さらには定電圧制御が可能な電源、いわゆるポテンショスタッドを用いることによって印加する電圧を調整すること)によって、運転電圧及び/又は水素を含むガスの発生量を調整することができる。
なお、100℃以上での運転が必要であった従来の改質技術では、水は水蒸気になり、有機物を含む燃料はガス化し、このような条件下で水素を発生させても、水素を分離する手段を別途用いる必要があるため、本発明は、この点において有利である。
しかし、有機物を含む燃料を100℃以上の温度で分解すると、上記のようなデメリットはあるが、本発明は、本発明の水素製造装置を100℃を若干超える温度で運転させることを否定するものではない。
なお、参考例1〜4、比較例1及び2は、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けたアクティブ型水素製造装置(燃料ポンプにより燃料を供給し、空気ブロアにより空気を供給する水素製造装置)を用いて開回路条件で水素を製造する例を示すものである。
水素製造セルを以下のように作製した。
すなわち、電解質にデュポン社製プロトン導電性電解質膜(ナフィオン115)を用い、空気極にはカーボンペーパー(東レ製)を5%濃度のポリテトラフルオロエチレン分散液に浸漬したのち、360℃で焼成して撥水処理し、その片面に空気極触媒(白金担持カーボン:田中貴金属製)とPTFE微粉末と5%ナフィオン溶液(アルドリッチ製)を混合して作製した空気極触媒ペーストを塗布して空気極触媒付きガス拡散層を構成した。ここで、空気極触媒、PTFE、ナフィオンの重量比は65%:15%:20%とした。このようにして作製した空気極の触媒量は白金換算で1mg/cm2であった。
作製したMEAの概略を図11に示す。
ガス発生量の測定には水中置換法を用いた。また、発生ガス中の水素濃度をガスクロマトグラフィーで分析し、水素生成速度を求めた。
その結果を表1に示す。
水素生成速度(水素発生量)は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧400〜600mVで水素が発生することが分かった。また、水素生成速度のピークは500mV付近で観察された。
MEAの燃料極ガス拡散層上のみにエポキシ樹脂を塗布することによって、図6及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本設けた以外は、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表2に示す。
MEAの燃料極及び空気極のガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図7及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本、同じ位置に対向するように設けた以外は、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表3に示す。
これは、前述したように、燃料極の水素発生領域がマスクされており、水素発生反応のためのメタノール拡散ができないためである。
MEAの燃料極及び空気極のガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図8及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で、燃料極に8本、空気極に6本、反対位置に対向しないように設けた以外は、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表4に示す。
これは、前述したように、燃料極の放電反応が生じるべき領域がマスクされており、放電反応のためのメタノール供給ができないためである。
別ロットで作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表5に示す。
水素生成速度(水素発生量)は開回路電圧に依存する傾向を示し、開回路電圧400〜600mVで水素が発生することが分かった。また、水素生成速度のピークは470mV付近で観察された。
MEAの燃料極及び空気極のガス拡散層上にエポキシ樹脂を塗布することによって、図9及び図10に示すように、幅5mmの帯状マスクを5mmの間隔で8本設け、マスクの一部のみが対向するように半分ずらすようにした以外は、参考例3と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表6に示す。
マスクをずらした場合には、前述したように、放電領域と水素発生領域が形成され、水素が発生する。
次に、ガス拡散層の一部にマスキングを行う代わりに、空気極のガス拡散層を異なる素材の組み合わせにより不均一にして、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた参考例を示す。
電解質膜の空気極側に、幅10mmのポリイミドシート(空気遮断層)と幅10mmのカーボンペーパー(空気透過層:空気極触媒付きガス拡散層)とを、図12に示すように、交互に配すると共に、電解質膜の燃料極側には、カーボンペーパー(燃料極触媒付きガス拡散層)を配して、140℃、10MPaでホットプレスすることによって接合した以外は、実施例1と同様にMEAを作製した。ポリイミドシートの厚さはプレス前後ともに130μm、カーボンペーパーの厚さはプレス前が280μm、プレス後が165μmであった(ポリイミドシートはプレスしても元に戻る)。プレス後の空気極及び燃料極の触媒層の厚さは、それぞれ、約30μmであった。
このようにして作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、参考例1と同様に燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表7に示す。
次に、ガス拡散層の一部にマスキングを行う代わりに、空気極のガス拡散層を疎密の組合せにより不均一にして、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた参考例を示す。
電解質膜の空気極側に、幅10mm、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)と幅10mm、厚さ335μmの厚いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)とを交互に並べると共に、電解質膜の燃料極側には、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(燃料極触媒付きガス拡散層)を配して、140℃、同じプレス圧(10MPa)でホットプレスすること(同時プレス)によって接合した以外は、実施例1と同様にMEAを作製した。空気極のガス拡散層であるカーボンペーパーのプレス前後の厚さは190μm→165μm、335μm→185μmであり、ほぼ同じ厚さになっていることから、図13に示すような疎密(薄いカーボンペーパー→疎、厚いカーボンペーパー→密)が組み合わされたカーボンペーパーになっている。プレス後の空気極及び燃料極の触媒層の厚さは、それぞれ、約30μmであった。
このようにして作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、空気極側に流す空気の流量を10〜90ml/分の範囲とした以外は、参考例1と同様の条件を採用して、燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表8に示す。
次に、ガス拡散層の一部にマスキングを行う代わりに、空気極のガス拡散層を表面の凹凸により不均一にして、空気極側に空気の供給の不足する領域を設けた参考例を示す。
電解質膜の空気極側に、幅10mm、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)を10mmの隙間を設けて並べると共に、電解質膜の燃料極側には、厚さ190μmの薄いカーボンペーパー(燃料極触媒付きガス拡散層)を全面に配して、140℃、10MPaのプレス圧でホットプレスした後、10mmの隙間に厚さ335μmの厚いカーボンペーパー(空気極触媒付きガス拡散層)を並べて、140℃、10MPaのプレス圧でホットプレスすること(二段階プレス)によって接合した以外は、実施例1と同様にMEAを作製した。空気極のガス拡散層であるカーボンペーパーのプレス前後の厚さは190μm→140μm、335μm→215μmであることから、図14に示すような凹凸(薄いカーボンペーパー→凹、厚いカーボンペーパー→凸)が形成されたカーボンペーパーになっている。プレス後の空気極及び燃料極の触媒層の厚さは、それぞれ、約30μmであった。
このようにして作製したMEAを用いて、参考例1と同様に水素製造セルを作製し、空気極側に流す空気の流量を10〜90ml/分の範囲とした以外は、参考例1と同様の条件を採用して、燃料極側で発生するガス発生量を測定した。
その結果を表9に示す。
その結果を図18に示す。
開回路電圧(オープン電圧)500mV付近で、セルの燃料極側から、水素の発生が確認された。
なお、空気を自然拡散させる図15及び図17に示すようなパッシブ型水素製造装置では、連続的に水素を発生させるのは困難であったが、空気はブロアで供給し、燃料は自然拡散させる図16に示すようなパッシブ型水素製造装置では、連続的に水素を発生させることができると考えられる。
本発明のパッシブ型水素製造装置は、図19に示されるように、パッシブ型固体高分子型燃料電池(22)と接続して、パッシブ型固体高分子型燃料電池の燃料極(24)にパッシブ型水素製造装置で製造した水素を含むガスを供給することにより、パッケージ型燃料電池発電装置とすることができる。パッシブ型固体高分子型燃料電池(22)としては、隔膜(23)の一方の面に燃料極(24)を設け、隔膜(23)の他方の面に空気極(25)を設けた従来のものを採用することができる。
11 隔膜
12 燃料極
12M 燃料極のガス拡散層の一部に設けたマスク
13 有機物と水を含む燃料(メタノール水溶液)を燃料極12に供給するための流路
14 酸化極(空気極)
14M 酸化極(空気極)のガス拡散層の一部に設けたマスク
15 酸化剤(空気)を酸化極(空気極)14に供給するための流路
16 燃料カートリッジ
17 毛管材料(多孔体)からなる部材
18 空気取り入れ口
19 調整バルブ
20 スライド部材
21 ファン
22 パッシブ型固体高分子型燃料電池
23 パッシブ型固体高分子型燃料電池の隔膜
24 パッシブ型固体高分子型燃料電池の燃料極
25 パッシブ型固体高分子型燃料電池の空気極
26 二酸化炭素吸収部
27 アクティブ型固体高分子型燃料電池
28 燃料ポンプ
29 空気ブロア
30 ラジエーター
Claims (35)
- 有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を毛管力又は重力落下によって供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤を供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、前記酸化極のガス拡散層及び/又は前記燃料極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記酸化極のガス拡散層を不均一にすることにより、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするパッシブ型水素製造装置。
- 有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤として空気を自然拡散又は自然対流によって供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、前記酸化極のガス拡散層及び/又は前記燃料極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記酸化極のガス拡散層を不均一にすることにより、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするパッシブ型水素製造装置。
- 前記空気を自然拡散又は自然対流によって供給する手段が、前記酸化極である空気極に面して空気取り入れ口を有し、前記空気取り入れ口に調整バルブを有するものであることを特徴とする請求項2に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記空気を自然拡散又は自然対流によって供給する手段が、前記酸化極である空気極に面してスライド式空気取り入れ口を有するものであることを特徴とする請求項2に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記空気の自然拡散又は自然対流を補助するためのファンを有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 有機物を含む燃料を分解し水素を含むガスを製造する水素製造装置において、隔膜、前記隔膜の一方の面に設けた燃料極、前記燃料極に有機物と水を含む燃料を供給する手段、前記隔膜の他方の面に設けた酸化極、前記酸化極に酸化剤として過酸化水素を含む液体を毛管力又は重力落下によって供給する手段、燃料極側から水素を含むガスを発生させて取り出す手段を備えてなり、かつ、前記酸化極のガス拡散層及び/又は前記燃料極のガス拡散層の一部にマスキングを行うこと、又は、前記酸化極のガス拡散層を不均一にすることにより、酸化極側に前記酸化剤の供給の不足する領域を設けたことを特徴とするパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層の一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記燃料極のガス拡散層のみの一部にマスキングを行うことによって設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極及び前記燃料極の両極のガス拡散層の一部にマスキングを行うとともに、その対向する両側のマスキングの少なくとも一部をずらして行うことによって設けたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記マスキングを帯状に行うことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記マスキングを斑点状に行うことを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記マスキングを前記ガス拡散層に樹脂を含浸または前記ガス拡散層の表面に樹脂を塗布することによって行うことを特徴とする請求項7〜11のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記マスキングをスクリーン印刷により行うことを特徴とする請求項7〜12のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化剤の供給の不足する領域を、前記酸化極のガス拡散層を不均一にして設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化極のガス拡散層を、疎密に形成するか、材質の異なるものを組み合わせることによって不均一にしたことを特徴とする請求項14に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化極のガス拡散層を、表面に凹凸を形成することによって不均一にしたことを特徴とする請求項14又は15に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 水素製造装置を構成する水素製造セルから外部に電気エネルギーを取り出す手段及び前記水素製造セルに外部から電気エネルギーを印加する手段を有しない開回路であることを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記燃料極を負極とし前記酸化極を正極として外部に電気エネルギーを取り出す手段を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記燃料極をカソードとし前記酸化極をアノードとして外部から電気エネルギーを印加する手段を有することを特徴とする請求項1〜16のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記燃料極と前記酸化極との間の電圧が400〜600mVであることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記燃料極と前記酸化極との間の電圧を調整することにより、前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜20のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化剤の供給量を調整することにより、前記燃料極と前記酸化極との間の電圧及び/又は前記水素を含むガスの発生量を調整することを特徴とする請求項1〜21のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 運転温度が100℃以下であることを特徴とする請求項1〜22のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記燃料極に供給する前記有機物がアルコール、アルデヒド、カルボン酸、及びエーテルよりなる群から選択される一種又は二種以上の有機物であることを特徴とする請求項1〜23のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記アルコールがメタノールであることを特徴とする請求項24に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記隔膜がプロトン導電性固体電解質膜であることを特徴とする請求項1〜25のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記プロトン導電性固体電解質膜がパーフルオロカーボンスルホン酸系固体電解質膜であることを特徴とする請求項26記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記燃料極の触媒が白金−ルテニウム合金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする請求項1〜27のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記酸化極の触媒が白金を炭素粉末に担持したものであることを特徴とする請求項1〜28のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記有機物を含む燃料の循環手段を設けたことを特徴とする請求項1〜29のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする請求項1〜30のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置。
- 請求項1〜31のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置をパッシブ型固体高分子型燃料電池と接続して、パッシブ型固体高分子型燃料電池の燃料極にパッシブ型水素製造装置で製造した前記水素を含むガスを供給することを特徴とするパッケージ型燃料電池発電装置。
- 請求項1〜31のいずれか一項に記載のパッシブ型水素製造装置をアクティブ型固体高分子型燃料電池と接続して、アクティブ型固体高分子型燃料電池の燃料極にパッシブ型水素製造装置で製造した前記水素を含むガスを供給することを特徴とするパッケージ型燃料電池発電装置。
- 前記水素を含むガスに含まれる二酸化炭素を吸収する二酸化炭素吸収部を設けたことを特徴とする請求項32又は33に記載のパッケージ型燃料電池発電装置。
- 前記二酸化炭素吸収部をパッシブ型固体高分子型燃料電池の燃料極の近傍に設けたことを特徴とする請求項34に記載のパッケージ型燃料電池発電装置。
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