JP4894316B2 - 膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法 - Google Patents

膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、原水に含まれる濁質や病原性原虫等の分離除去のために設置される浄水場の膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法に関する。
膜ろ過プロセスは、地下水や河川表流水などの原水を浄化する浄水施設等に設置され、原水に含まれる濁質や病原性原虫等(以下、濁質と総称する)を分離除去するろ過膜を内蔵した膜モジュールにより、清澄で、安全なろ過水を生成するプロセスのことをいう。膜ろ過プロセスでは、複数の膜モジュールを並列に接続するユニット方式や複数のユニットを並列に配置した系列方式など、浄水量の規模に応じた複数の膜モジュールが用いられる。
このような膜ろ過プロセスにおいては、ろ過,逆洗,薬品洗浄などの処理が繰返されるため、膜モジュール内のろ過膜が損傷・破損・破断(以下、損傷と称す)する場合がある。ろ過膜の損傷が生じると、その損傷部分から原水の濁質が流出して、浄化したろ過水に濁質が混入するため、安全性が損なわれる。膜ろ過装置では、膜破断の損傷が発生したことと、損傷が発生した膜モジュールを迅速に特定して早期対策を講じ、損傷していない正常な膜モジュールによるろ過により浄水能力を維持することが重要である。
膜の損傷検出方式としては、〔特許文献1〕に記載のように、ろ過水側に加圧空気を印加密閉後、原水側を開放して空気圧力降下で検出する方法、〔特許文献2〕に記載のように、空気を溶解させた加圧水を原水に供給して微細気泡を発生させ、ろ過水中の気泡を計測して検出する方法などの、気体注入方法がある。また、〔特許文献3〕に記載のように、無害な濁質(カオリン,珪藻土類)を原水に注入し、膜損傷時のろ過水濁度を高めて検知する方法や、〔特許文献4〕に記載のように、原水に逆洗排水やさらに微粒子,凝集剤を間欠混入させてろ過水の微粒子数や濁度で検出する方法などの濁質源注入方法がある。
特開2004−212230号公報 特開2003−112018号公報 特開平6−320157号公報 特開2005−87948号公報
〔特許文献1〕に記載の空気圧力降下で検出する方法は、加圧空気やその圧力を計測するなどの設備が新たに必要であり、ろ過,逆洗の処理工程の他に膜損傷検出工程を設けなければならず、浄水効率を低下させ、全体として大幅なコスト増加を招く。〔特許文献2〕に記載のろ過水中の気泡を計測して検出する方法は、原水側に空気溶解加圧水を供給して微細気泡を生成させるもので、ろ過運転中に検出を行うことができる。しかし、膜ろ過は一般に原水を加圧してろ過する方法であるため、加圧原水に空気溶解加圧水を供給する必要があるため、高い圧力での操作が必要であり、大幅なコスト増加を招くことになる。
膜ろ過を用いる浄水施設では膜両面の水圧差(以下、膜間差圧と称す),膜ろ過水の水量や濁度の監視が義務付けられている。〔特許文献3〕や〔特許文献4〕に記載の方法は、ろ過水濁度が所定値を越えた場合に膜損傷と判断する方法であり、常時設置した設備を必要とする方法である。〔特許文献3〕や〔特許文献4〕に記載の方法は、ろ過水の濁度を精度良く計測できる高感度濁度計を設置しても、地下水などの清澄な原水や、多数の膜で構成されるろ過水を対象とする場合、極一部の膜損傷によるろ過水濁度変化の把握が困難なため、原水側に濁質源を注入し、膜損傷時のろ過水濁度を高めて検出するものである。
しかしながら、〔特許文献3〕に記載の方法は、濁質源注入量の設定について全く考慮されておらず、濁質の過不足が発生する。注入量が過剰な場合は膜損傷を検知できるものの、注入コストが増加し、過剰な濁質による膜の目詰りが増大するので、逆洗及び薬洗の頻度の高くなり、運転コストの増加となり、膜の劣化を早める。又、注入量が不足すると、膜損傷の確実な検出が困難となる。
〔特許文献4〕には、濁質源となる洗浄排水やその濃縮水,微粒子,凝集剤の量は、原水を用いた実験的データを得て、洗浄排水やその濃縮水の濁度,処理水量,濁度計の感度等から総合的に判断して自動的に変更できることが望ましい、と記載されているが、注入量が具体的に設定できないという問題がある。
又、河川表流水など濁度変化が激しい原水では、濁質源を新たに注入する必要がない場合もある。〔特許文献4〕に記載の方法では、現状の原水濁度が考慮されておらず、濁質源の注入が不要な時にも注入操作が実施されるため、〔特許文献3〕に記載の方法と同様に注入コストの増加,目詰りが増大することによる逆洗及び薬洗の頻度が高くなり、運転コストの増大や膜の早期劣化をもたらす。又、濁質源の低減を図るため、ろ過水量を操作することについては配慮されていない。ここで、現状の原水濁度とは、濁質源を注入しない状態の原水の濁度のことである。
本発明の目的は、現状の原水濁度で膜損傷を検出できる操作条件で運転し、操作条件を変更しても検出ができない場合には、検出に必要な原水濁度に調節し、濁質源の注入量を極力少なくできるので、ろ過膜にも負担を与えず、低コストで膜損傷を確実に検出できる膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法は、原水供給圧力或いは膜間差圧で正常膜に対する損傷膜(部分)から流出する比率が変化し、正常膜と損傷膜のろ過特性の違いから膜損傷を検出できる操作条件、ろ過水濁度計の検出限界を考慮した原水濁度条件や運転操作条件を判定できる知見から、予め求めた正常膜のろ過特性式と任意損傷部の流出特性式に基づいて、現状のろ過流量で膜損傷を検出するのに必要な第1の原水濁度と、現状の原水濁度で膜損傷を検出するのに必要なろ過水量と、ろ過水量で膜損傷を検出するのに必要な第2の原水濁度を夫々求め、ろ過水量、及び/あるいは原水濁度の操作条件を判定し、この判定結果に基づいてろ過水量及び/あるいは原水濁度を調節して、万一膜損傷が発生した場合に濁度計で検出できるろ過水濁度にして膜損傷を確実に検出することを特徴とする。
判定手順は原水濁度が第1の必要原水濁度以上の場合は現状のろ過水量を維持し、原水濁度が第1の必要原水濁度より低く、必要なろ過水量がろ過水量所定値より高い場合は前記膜ろ過プロセスのろ過水量を必要なろ過水量に調節し、必要なろ過水量が所定のろ過水量より低い場合はろ過水量をろ過水量下限値に調整し、原水に濁質源を注入して原水濁度を第2の必要な原水濁度に調節するものである。
本発明によれば、現状の原水濁度で膜損傷を検出できるろ過水量の条件が存在すればそのろ過水量で運転し、現状の原水濁度ではろ過水量を変更しても膜損傷が検出できない場合には、ろ過水量を調節し、そのろ過水量で膜損傷を検出できる原水濁度とするために注入する濁質源量を極力少なくするようにして、現状の原水濁度条件を極力維持し、現状濁度で検出不能時には検出に必要となる濁質源を注入するので、ろ過膜にも負担を与えず、低コストで膜損傷を確実に検出できる。
以下、本発明の実施例1から実施例7を図1から図12により説明する。
本発明の実施例1を図1から図4により説明する。図1は、本実施例の膜ろ過プロセスの構成図である。本実施例の膜ろ過処理プロセスは、例えば、河川などの表流水である原水を浄化する浄化施設等に設置される。
図1に示すように、原水は原水取水管1から取水され、調整槽2に一時的に貯留される。調整槽2には送水装置7が接続され、送水装置7により一定量の原水が給水管3から膜ユニット4に供給水が送水される。膜ユニット4は、複数本の膜モジュール4a,4b…4mで構成されている。送水装置7にはポンプ等が具備されており、膜ユニット4のろ過水量(ろ過流束ともいう)を変更でき、膜ろ過プロセス全体のろ過水量を調節できるようになっている。送水装置7により供給水流量を増加させると、膜ユニット4の一次側圧力(供給側圧力ともいう)が高くなり、各膜モジュール4a〜4mから透過するろ過水量が増加する。逆に、送水装置7により供給水流量を低下させると、膜ユニット4の一次側圧力が低下し、透過するろ過水量も低下する。
各膜モジュール4a〜4mでは、膜面で原水に含有される濁質が分離除去された供給水が透過されて、清澄なろ過水が得られる。各膜モジュール4a〜4mのろ過水は合流され、膜ユニット4の合流ろ過水として送水管5で送水される。合流ろ過水は、図示していないが、塩素殺菌などの処理をされて浄水(水道水ともいう)となる。ここで、膜モジュールには、中空糸膜,管状膜,スパイラル膜,平膜などの形状を使用でき、又、膜種もMF膜(精密ろ過膜ともいう),UF膜(限外ろ過膜ともいう),NF膜(ナノ膜ともいう),RO膜(逆浸透膜ともいう)などを適用可能である。
ろ過処理をある期間継続すると、各膜モジュール4a〜4mの膜面には、分離除去された濁質が堆積し、膜を目詰り(ファウリングともいう)させるのでろ過水量が低下する。ろ過水量を維持させるには送水装置7の動力を高め、供給水の圧力を高くすることで対処できる。しかし、必要以上に圧力を高くすると、ろ過膜を損傷させるので、定期的あるいは設定された圧力に達した段階で、送水装置7を停止させて、図示していない逆流洗浄機構により、膜モジュールの二次側(透過側ともいう)から清澄水を逆流させて一次側の膜面に堆積した濁質を剥離除去して洗浄する。ここで、ろ過方法は、供給水の戻りがない全量ろ過方法や、供給水を原水或いは調整槽2に還流する循環ろ過方法が適用される。
本発明者らは、多数の中空糸膜が内蔵された膜モジュールを1本用いて、正常時と任意の中空糸1本を損傷させた場合のろ過特性、すなわちろ過圧力P(膜間差圧Pともいう)とろ過水量Qの関係を実験的に求めた。
図2は、その一例を模式的に示したものである。全ての中空糸膜が正常な場合は、ろ過圧力Pとろ過水量Qの関係は、直線Aで示すように、ろ過開始圧力ΔP以上になると比例関係になる。この膜モジュールをろ過処理や逆洗処理を繰返して長年使用した場合、ろ過特性は、直線Bで示すように、比例係数は低下するが同様に比例関係にある。比例係数の低下、すなわち、ろ過圧力に対するろ過水量が低下するのは、長年の膜モジュールの使用で、膜内部にも濁質が侵入して微小孔の閉塞や孔径が縮小化した結果と推測される。
一方、任意の中空糸1本を損傷させた場合は、直線Cで示すように、ろ過圧力Pとろ過水量Qは比例し、圧力Pに対するろ過水量Qは正常時よりも増加する。この損傷膜のろ過特性は使用初期と長年使用後で殆ど差がなかった。正常膜より損傷膜のろ過水量が多くなる傾向は膜モジュールが内圧型,外圧型でも同様であった。正常膜と損傷膜のろ過水量の差は、任意の中空糸1本の損傷部から一次側供給水が二次側ろ過水に直接漏出した漏出水量qである。ここで、漏出水量qは直線Cと直線Aとの差である。
使用初期と長年使用後で漏出水量qに変化がなかったことは、漏出水量の影響要因の1つである流路面積、例えば、本実験で用いた中空糸膜の内径は長年使用しても膜面に堆積した濁質での影響をうけず、殆ど変化しないことを示す。したがって、漏出水量qは膜モジュールの使用期間に係らず、ろ過圧力により予測できる。
ところで、使用初期時の漏出水量qと正常膜のろ過水量Qの比である漏出比率αは、曲線Dで示すように、ろ過圧力の低下、すなわち、ろ過水量を低下させる程増加する。この結果から、万一膜損傷が発生した場合、供給水の濁質濃度が同じであっても、ろ過水量を低下させて漏出比率αを高めれば、ろ過水の濁質濃度が上昇してろ過水濁度計での検出感度を高めることができることが分る。
以上のことから、予め想定する損傷、或いは事例の多い損傷を生じさせた損傷膜と、損傷のない正常膜のろ過特性を事前に把握して損傷部の漏出特性を求め、事前に把握した正常膜のろ過特性を現状のろ過特性に補正することにより、ろ過圧力或いはろ過水量に対応した正確な漏出比率が求められる。又、この漏出比率を用いることで、ろ過水濁度計で検知するのに必要な原水濁度や、現状の原水濁度において、ろ過水濁度計で検知するのに必要なろ過水量或いはろ過圧力を求めることができる。本実施例は、このような実験的知見によるもので、より少ない濁質源注入で、想定した損傷を確実に検出できる。
現状の原水濁度において、ろ過水濁度計で検知するのに必要なろ過水量に調節することによって、想定した損傷を確実に検出する方法を図1により説明する。
図1に示すように、原水取水管1には濁度計14が、給水管3には圧力計11が、送水管5には圧力計12,流量計13,ろ過水濁度計16が設けられており、濁度計14,
16,圧力計11,12,流量計13の検出信号は、制御装置10にフィードバックされ、送水装置7に制御信号を送信するようになっている。ここで、ろ過水濁度計16には、高感度濁度計が用いられる。制御装置10は、フィードバックされた計測情報から、膜ユニット4での膜損傷有無を判定評価し、送水装置7の制御信号を送信する。
次に、制御装置10の構成と膜損傷検出方法を説明する。制御装置10は、図3に示すように構成されている。データベース120には、上述した膜ろ過プロセスに設置された各種計測器からフィードバックされる運転情報と、入力工程110で入力された入力情報が記憶される。
入力工程110では、膜モジュールの仕様やモジュール本数M、事前に使用する膜モジュールの1本を用いて膜損傷のない正常な膜モジュールと、ろ過膜の一部を損傷させた膜モジュールのろ過特性から導出したろ過水量と圧力の特性式、合流ろ過水に設置した濁度計16の検出限界値或いはろ過水濁度設定値Tmが入力される。なお、膜ユニット4で使用している膜モジュール4a〜4mが全て同一仕様であれば、モジュール仕様の入力を省略できる。仕様が相違する場合はモジュール内の膜数や面積,有効長,膜断面寸法などが入力される。又、入力工程110では、ろ過水量の通常の設定値Qm及び下限値Ql,ろ過処理や逆洗処理,膜損傷感度向上処理など処理工程のタイミングや操作条件が入力される。
検出工程140では、ろ過水濁度設定値Tmと計測情報であるろ過水濁度計16の計測値Teを比較演算し、Te≧Tmであれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷なしと判断し、その結果を運転調整工程130に出力する。
運転調整工程130では、データベース120からのろ過処理や逆洗処理,膜損傷感度向上処理などの運転条件を演算処理工程150や制御工程170に出力する一方、現在の運転条件や検出工程140での判断結果を警報表示工程160に出力する。又、運転調整工程130は、通常は、ろ過水量を設定値Qmとするろ過と逆洗の繰返し処理を制御工程170に出力する。
検出工程140で膜損傷なしと判断された条件下で、演算処理工程150に実行信号を出力して膜損傷感度向上処理を行う。膜損傷感度向上処理の実行タイミングは、ろ過処理の時間帯に割り込ませる。
演算処理工程150は、運転調整工程130からの膜損傷感度向上処理の実行指令により、現状の原水濁度Tuにおいて、ろ過水の濁度計16で検知するのに必要なろ過水濁度Teが目標値Tm以上となるろ過水量Qnを演算・判定し、運転調整工程130に出力する。
図4は、演算処理工程150の構成例を示す図である。補正回路150Aでは、数1に示す入力工程110で入力された膜モジュール1本の正常時のろ過特性式を、数2で示す流量計13で計測された現状のろ過水量Qaとろ過圧力Paの関係に基づいた特性式に補正する。
(数1)
Q=k・(P−ΔP) (1)
(数2)
Q=k1・(P−ΔP)・M (2)
ここで、Q,Qaはろ過水量、k,k1は係数、Pはろ過圧力、ΔPはろ過開始圧力、Mはモジュール数である。
本発明者らの実験的な知見では、ろ過開始圧力ΔPは殆ど変化がなく、特性式の係数部を補正回路150Aで補正する。なお、ろ過圧力Pは膜間差圧であり、圧力計11と圧力計12との差を用いる。この補正により、現状の膜ファウリングを考慮したろ過特性が得られる。
演算回路150Bでは、補正回路150Aで求めたろ過特性補正式と、入力工程110で入力された数3で示す中空糸損傷部からの漏出特性式により必要なろ過水量Qnを数4により演算する。
(数3)
q=k2・P (3)
(数4)
Qn≦k1・(Pn−ΔP)・M (4)
ここで、Pnはろ過流量Qnとなるろ過圧力であり、数5に示すろ過特性補正式と漏出特性式、及び数6で示す予め設定したろ過水濁度の設定値Tmと現状の原水濁度Tuの比である濁度比αtを求める。
(数5)
Pn≦αt・k1・ΔP/(αt・k1・M−k2) (5)
(数6)
αt=Tm/Tu (6)
比較判定回路150Cでは、必要なろ過水量Qnと現状のろ過水量Qaを比較して、
Qn≧QaであればQaを、Qn<QaであればQnを制御量設定回路150Dに出力する。制御量設定回路150Dでは、膜損傷が万一発生している場合でも、比較判定回路からの入力値を、現状の原水濁度Tuにおいて、ろ過水濁度Teを目標値Tm以上にさせるろ過水量として設定し、その設定値を演算処理工程150の出力値として運転調整工程
130に出力する。
運転調整工程130では、演算処理工程150の出力値がQa(≒Qm)であれば現状のろ過水量を維持し、Qnであればろ過水量の目標値を一定時間tの間Qnとし、制御工程170に出力する。ここで、一定時間tは、例えばろ過時間の10%程度に設定する。この時間設定は入力工程110から膜損傷感度向上処理条件の1項目として入力される。
制御工程170では、データベース120から出力される流量計13のろ過水量実測値Qaとろ過水量目標値Qm或いはQnにより送水装置7を調節する。検出工程140は、ろ過水濁度設定値Tmと濁度計16の実測値Teを比較演算し、Te≧Tmであれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷なしと判断する。運転調整工程130は膜損傷発生した場合、送水装置7などを停止するとともに、警報表示する。
本実施例によれば、現状の原水濁度において、ろ過水の濁度計で検知するのに必要なろ過水量を調節することによって、想定した損傷を確実に検出することができる。また、設備フロー等を変更する必要がなく、コストやメンテナンス負荷を低減できる。
なお、本実施例において、ろ過水濁度計16の設定値Tmは濁度計の検出限界値に設定すれば、より低濁度の原水でも精度良く膜損傷を検出できる。
本発明の実施例2を図5,図6により説明する。本実施例では、原水への濁質注入手段を設け、現状のろ過水量において、ろ過水の濁度計で検知するのに必要な原水濁度に調節して任意の膜損傷を確実に検出するようにしている。
図5は、本実施例の膜ろ過プロセスの構成図である。本実施例は、図1に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、調整槽2に調整槽2の濁度を計測する濁度計
14,調整槽2に濁質を注入するための注入装置8,注入装置8に接続された濁質貯槽6が設置されている。濁度計14の計測値は制御装置10にフィードバックされ、制御装置10からの制御信号が注入装置8に送信されるようになっている。濁度計14で原水濁度Tuを、濁度計15で供給水の濁度Tsを計測し、これらの計測値は制御装置10にフィードバックされてデータベース120に記憶される。
制御工程170では、運転調整工程130からのろ過水量設定値Qmと流量計13の実測水量Qaにより送水装置7が調節される。演算処理工程150は、運転調整工程130からの実行指令により、現在のろ過水量Qaにおいて、ろ過水濁度が設定値Tm以上となるのに必要な原水濁度Tnを演算・判定し、その結果を運転調整工程130に出力する。
図6は、演算処理工程150の構成を示す図である。演算回路150Bでは、数7及び数8により必要な原水濁度Tnを演算する。
(数7)
Tn≧Tm・Qa/qa (7)
(数8)
qa=k2・Pa (8)
ここで、qaは現状のろ過圧力Paにおける漏出水量である。
比較判定回路150Cでは、必要な原水濁度Tnと現在の原水濁度Tuを比較し、Tn>TuであればTnを、Tn≦TuであればTuを制御量設定回路150Dに出力する。制御量設定回路150Dは、膜損傷が万一発生している場合でも、比較判定回路150Cからの入力値を、現状のろ過水量Qaで濁度計16のろ過水濁度Teが設定値Tm以上とさせる原水濁度として設定し、その値を演算処理工程150の出力値として運転調整工程130に出力する。
運転調整工程130では、演算処理工程150からの出力値がTuであれば濁質注入装置8を稼動させず、出力値がTnであれば供給水の濁度Tsの目標値をTnとして、制御工程170に出力する。制御工程170では、供給水の濁度計15の実測値Tsと目標値Tnに基づいて濁質注入装置8を調節する。濁質注入装置8の運転は、連続或いは間欠的に行われ、運転調整工程130で設定される。検出工程140は、ろ過水濁度設定値Tmと濁度計16の実測値Teを比較演算し、Te≧Tmであれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷なしと判断する。運転調整工程130は膜損傷発生した場合、送水装置7などを停止するとともに、警報表示する。
本実施例によれば、現状のろ過水量において、ろ過水濁度計で検知できるのに必要な原水濁度に調節することによって、想定した損傷を確実に検出することができる。必要な原水濁度の調節を定期的に間欠で実施すれば濁質源を低減でき、運転コスト増を抑制できる。又、本実施例によれば、送水装置7は水量調節機能が必要なく、コストやメンテナンス負荷を低減できる。
本発明の実施例3を図7により説明する。本実施例では、現状の原水濁度において、ろ過水の濁度計で検知できるろ過水量を演算・判定し、ろ過水量が操作限界であれば限界ろ過水量で必要となる原水濁度を求め、ろ過水量と原水濁度を調節して膜損傷を確実に検出するようになっている。
膜ろ過プロセスの構成は図5に示す構成、制御装置10の構成は図3に示す構成であり、演算処理工程150の構成は図4と同様の構成であるが、本実施例では、演算処理工程150が図7に示すように構成されている。
補正回路150Aでは、実施例1と同様に正常時のろ過特性式を補正する。図7に示す演算回路150Bの演算ステップB1では、数7,数8により、現状のろ過水量Qaで検出に必要となる原水濁度Tnを演算する。演算回路150Bの演算ステップB2では、数4により現状の原水濁度Tuで検出に必要となるろ過水量Qnを演算する。演算回路150Bの演算ステップB3では、予め設定したろ過水量の下限値QL において検出に必要となる第2の原水濁度TL を演算する。補正回路150Aの補正式からQL とするろ過圧力PL を数9により求め、数10により原水濁度TL を演算する。
(数9)
L=ΔP+QL/k1・M (9)
(数10)
L=Tm・QL/qL (10)
L=k2・PL
ここで、qL はろ過圧力PL での漏出水量である。ろ過水量下限値QL は送水装置7の調節精度、或いは供給水がろ過されて、そのろ過水が濁度計16に到達する時間を考慮して設定される。
比較判定回路150Cの判定ステップC1では、必要な原水濁度Tnと現在の原水濁度Tuを比較し、処理手順を判定し、判定ステップC2では、必要なろ過水量Qnとろ過水量下限値QL を比較し、処理手順を判定する。
判定ステップC1での判定結果がTn≦Tuであれば、ろ過水量を現状の目標値Qmと判定し、設定回路150Cの設定ステップD1で制御量設定回路150Dに出力する。判定ステップC1での判定結果がTn>Tuの場合は、判定ステップC2が実行され、QL≦Qnであれば、設定ステップD2でろ過水量の目標値をQnとし、制御量設定回路150Dに出力する。QL >Qnであれば、設定ステップD3で、ろ過水量の目標値をQL 、原水濁度の目標値をTL として、制御量設定回路150Dに出力する。
ここで、制御量設定回路150Dには、設定ステップD1からD3のいずれかのステップに比較判定回路150Cからの出力情報が入力されており、この入力結果を演算処理工程150の出力値として運転調整工程130に出力する。
運転調整工程130では、現状のろ過水量と原水濁度で膜損傷検出が可能である設定ステップD1が入力された場合は、ろ過水量目標値Qmを維持させ、濁質注入装置8を稼動させない情報を制御工程170に出力する。ろ過水量を調節すれば現状の原水濁度で検出可能であるとの設定ステップD2が入力された場合は、濁質注入装置8を稼動させず、ろ過水量目標値をQnとする情報を出力する。現状の原水濁度でろ過水量が下限値を下回り、検出不可あるいは検出に多大な時間を要する設定ステップD3が入力された場合、ろ過水量目標値をQL とし、供給水濁度目標値をTL とする情報を出力する。
制御工程170では、流量計13のろ過水量実測値Qaとろ過水量目標値QmあるいはQn,QL により送水装置7を調節する。又、供給水の濁度計15の実測値Tsと目標値
L により濁質注入装置8を調節する。検出工程140は、ろ過水濁度設定値Tmと濁度計16の実測値Teを比較演算し、Te≧Tmであれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷なしと判断する。運転調整工程130では、膜損傷が発生した場合、送水装置7などを停止するとともに、警報表示する。
本実施例によれば、現状の原水濁度において、極力膜損傷を検出し、検出が困難な場合には低ろ過水量で濁質源を供給することによって、ろ過膜にも負担を与えず、低コストで膜損傷を確実に検出できる。
本発明の実施例4を図8により説明する。本実施例では、必要な原水濁度に維持するための具体的な濁質源について説明する。濁質源には、正常時に膜を透過せず、損傷時には漏出する物質、例えば白陶土や活性炭などを適用できる。しかし、これらの物質を使用すると、運転コストは高くなる。
河川表流水を原水とする浄水場では膜ろ過プロセスの上流側に原水中の濁質を事前に除去する前処理プロセスを具備する場合がある。図8は、このような前処理プロセスなどの施設から排出される濁質を利用して必要な原水濁度に維持する構成例を示している。
本実施例は、図5に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、濁質貯層
6Aに膜ユニット4から逆洗排水を回収するための配管20,越流水を排出するための配管22,図示しない前処理プロセスから排出される濁質混合液を流入させるための配管
21,濁質を注入装置8Aに供給するための配管23が設けられている。
浄水場の前処理プロセスには除去濁質を重力で濃縮する重力濃縮槽が設備されており、重力濃縮槽からの濁質混合液は、配管21により濁質貯槽6Aに流入される。濁質貯槽
6Aは、重力で濃縮する貯槽であり、濁質分が重力沈降する。濁質貯槽6Aは、配管22により一定量を超える流入水を越流水として排水する越流水となっており、上澄液は越流水として前処理プロセスに還流され、沈降濁質は濃縮水として脱水・乾燥などの処理後、場外処分される。
濃縮水は高濃度の濁質を含むため、制御装置10から必要な原水濁度への注入指令が出力された場合、注入装置8Aは、濃縮水の一部を調整槽2に注入して、必要な原水濁度
Tn或いはTL に調整する。
膜ユニット4内の膜モジュールはろ過処理で膜面に濁質が堆積し、ろ過効率を低下させるため、ろ過処理を一旦停止し、逆流洗浄される。ろ過水が貯留される貯槽17には、膜ユニット4の逆洗を行うためにろ過水を膜ユニットに供給する送水装置18が設けられている。膜ユニット4の逆流洗浄時には、配管19によりろ過水が膜モジュールの二次側
(ろ過側)に供給され、膜モジュールの逆洗により一次側の膜に堆積している濁質が剥離し、一次側(供給)に透過され逆洗排水として排出される。逆洗排水は、配管20により濁質貯留6Aに流入し、回収される。ろ過処理及び逆洗処理の周期やタイミングは制御装置10の運転調整工程130で設定され、制御工程170で実行される。このように、逆洗排水を回収し、再利用しているので、濁質として使用でき、運転コスト低減となる。
本実施例によれば、前処理プロセスと膜ろ過プロセスで得られる濁質を濃縮処理し、濃縮された濁質の一部を膜損傷検出用の濁質として利用しているので、濁質注入によるコストを大幅に低減できる。又、既設施設を利用して、膜ろ過の逆洗排水分も含めて上澄み越流水を前処理プロセスに還流するので運転コストのみならず、イニシャルコストも低減できる。
本発明の実施例5を図9により説明する。本実施例は、実施例4と同様に、必要な原水濁度に維持するために濁質源を確保する例である。地下水や伏流水など原水の濁質濃度が希薄で、膜損傷時のろ過水濁度を設定値Tmに維持するには白陶土や活性炭など新たな濁質の注入が不可欠となる。これらの濁質の注入を可能な限り抑制できれば運転コストを低減できる。
本実施例は、濁質濃度が希薄な原水を対象とする膜ろ過プロセスにおいて、膜損傷検出に必要となる濁質源を確保し、この濁質を利用して必要な原水濁度に維持する例である。
本実施例は、図8に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、一時調整槽2と送水装置7との間の給水管3に混合器24が設置されており、混合器24には注入装置8が接続され、注入装置8には白陶土や活性炭など新たな濁質源を貯留している濁質貯槽6が接続されている。又、濁質貯槽6Aには濁質貯槽6A内の濁質界面位置を検出するための界面計27が設置され、濃縮水を引抜くための排出装置28が設置されている。
重力濃縮型の濁質貯槽6Aには、膜ユニット4の逆洗排水が流入して、逆洗排水中の濁質分が重力で沈降する。濁質分が除去され希薄となった上澄液は越流水として、原水取水管に還流する。界面計27で計測された濁質界面位置Hは、制御装置10に入力され、予め設定された界面位置Hmとなるように排出装置28を調節する。この界面調節は制御工程170で実行される。制御装置10から必要な原水濁度への注入指令が出力された場合、注入装置8Aは、濃縮水の一部を調整槽2に注入し、必要な原水濁度Tn或いはTL に調整する。濁質の界面設定位置Hmはろ過水量,調整槽2及び濁質貯槽6Aの容積,膜損傷検出処理工程の実行時間等を考慮して設定される。
濁質貯槽6Aから濁質源を注入しても、濃縮水の濁質濃度や調整槽2の容積の影響で必要な原水濁度を維持することが困難であり、時間遅れが発生する。調整槽2の供給水の濁度が必要な原水濁度Tn或いはTL に満たない場合には、注入装置8を運転して白陶土や活性炭などの濁質源が貯留された濁質貯槽6から必要な濁質を供給して必要な原水濁度に維持する。注入装置8から注入された濁質源は、給水管3に設置されたラインミキサなどの混合器24で混合され、時間遅れなく必要な原水濁度に維持できる。注入装置8では、例えば、数11に示すように、濁質源の流量Qtが調節される。
(数11)
Qt=(Tn−Ts)・Qa/Tb (11)
ここで、Tsは供給水濁度、Tn(あるいはTL )は必要な原水濁度、Tbは濁質貯槽6の濁質源濁度、Qaはろ過水量であり、濁質源濁度Tbは濁質の物質と貯留濃度から予め設定できる。
本実施例によれば、濁質濃度が希薄な原水で、近接施設等から排出される濁質も期待できない膜ろ過プロセスでは膜損傷用濁質を新たに注入する必要があるが、逆洗排水を濁質貯槽6Aに流入させて濁質を重力沈降させることで、既に注入した濁質並びに些少ではあるが原水に含まれる濁質も回収し、必要な原水濁度源として利用することができ、新たに注入する濁質源を大幅に削減できる。又、供給水の濁度を時間遅れなく必要濁度に維持できるので、膜損傷発生を迅速に把握できる。
本発明の実施例6を図10により説明する。本実施例は、実施例4と同様に、必要な原水濁度に維持するために濁質源を確保する例で、濃縮水の濁質を膜損傷検出用の濁質源に利用する前処理に関する例である。
濁質貯槽6Aには、膜ユニット4の逆洗排水と他の施設から排出された濁質混合液が流入する。浄水場の前処理プロセスや膜ろ過プロセスでは、クリプトスポリジウムやジアルジアなどの病原性原虫や大腸菌等の有害生物が分離除去される。これらの生物を含有する濁質混合液や逆洗排水が濁質貯槽6Aに流入するため、濃縮水には有害生物が濃縮されており、万一膜が損傷している場合には、大量の有害物質がろ過水に流出する危険性がある。
本実施例では、図10に示すように、濁質貯槽6Aと注入装置8Aの間の配管23Aには混合器27が設けられ、混合器27には注入装置26が接続され、注入装置26には消毒薬剤貯槽25が接続されている。注入装置26は、制御装置10からの指令により稼動する濁質注入装置8Aと連動して動作する。消毒薬剤には液体塩素,次亜塩素酸ソーダや二酸化塩素などの塩素系,オゾンや過酸化水素などの酸化剤,酸やアルカリが適用でき、複数の薬剤の組合せや紫外線との組合せでもよい。薬剤注入は予め定めた一定量、あるいは濁質量や流量に比例させる。
本実施例によれば、濃縮水の濁質を膜損傷検出用の濁質源に利用する場合に、濃縮水に有害生物が含有しても殺菌あるいは不活化状態で膜ろ過プロセスに利用されるため、万一膜が損傷した時に濁質が流出しても安全なろ過水、あるいは浄水を維持できる。また、消毒薬剤が溶解した供給水が膜ろ過プロセスに供給されるので、膜モジュール内での生物増殖を抑制でき、ファウリング低減による運転コストの削減,メンテナンスの軽減などの相乗効果がある。
本発明の実施例7を図11により説明する。本実施例の膜損傷検出方法は、膜損傷を検出するに際し、ろ過水濁度の感度向上に加えて、加圧空気の流出監視を組合せている。
本実施例は、図8に示す実施例と同様に構成されているが、本実施例では、図11に示すように、膜ユニット4には配管33により開閉弁34が接続され、送水管5には開閉弁32が設置されている。開閉弁32と膜ユニット4との間の送水管5には、配管31を介して加圧空気供給装置30が接続され、開閉弁34及び加圧空気供給装置30が制御装置10により制御されるようになっている。
加圧空気による膜損傷検出処理は、検出工程140でろ過水濁度感度向上処理も含めて行われ、ろ過水濁度によって膜損傷と判定された場合には、ろ過処理を停止した後に実施される。
ろ過処理工程で開状態の開閉弁32を閉にし、加圧空気供給装置30を稼動させて膜ユニット4の二次側(ろ過側)から加圧空気を供給し、圧力計12の圧力が設定値Pmに達した段階で加圧空気供給装置30を停止し、開閉弁34を開にする。これらの操作は制御装置10の運転調整工程130と制御工程170で実行される。
制御装置10の検出工程140では圧力計12の計測値により、最終的な膜損傷の発生有無を判定する。検出工程140では、開閉弁34を開にして特定の時間が経過後の圧力降下が予め設定した値以上であれば膜損傷発生と断定し、膜ろ過プロセスを完全停止させ警報表示工程にその旨出力する。圧力降下が設定値未満であっても圧力降下があれば、膜損傷の危険性大と判定し、手動操作などによる再評価を指示する。
再評価のための手動操作としては原水濁度や開閉弁34開時の空気初期圧力を高め、ろ過水濁度増加や圧力計12の圧力降下で再判定する。これは、原水濁度を高めたり、膜モジュールの逆洗後に膜が損傷していなくとも、ろ過水濁度が一時的に上昇する場合があり、その誤検出を防止するものである。なお、原水濁度を対象とした手動操作の再評価時には、図示していないが、ろ過水を原水側に循環させて、漏出物質の浄水への混入を防止する。
本実施例によれば、濁度による連続監視と、加圧空気による間欠監視により膜損傷有無を正確に把握できる。又、損傷のない正常な膜モジュールでの原水濁度増加や膜モジュールの逆洗後にろ過水濁度が一時的に上昇する現象発生時などの誤った判断を防止できる。なお、加圧空気の供給は、膜モジュールの逆洗時にエアースクラビングを実施する設備が付帯している場合、その設備を利用して上記膜損傷を判定できる。
図12は、実施例1のろ過水量操作によるろ過水濁度向上の適用効果を示す図である。膜モジュールはUF中空糸膜を用いた内圧型で、5m/dの流束の条件でろ過処理中に中空糸1本を損傷させ、さらに流束が1m/dとなるようにろ過水量低減操作を行った。原水濁度は0.022 度と一定に維持した。図12から分るように、ろ過水濁度は損傷後増加し、ろ過水量を低減させることによりさらに増加している。
損傷前後のろ過水量や損傷後のろ過水量変更によるろ過水濁度,漏出比率については、図2に示す結果が得られた。特に、漏出比率は水量基準と濁度基準で一致することを確認した。又、図示はしていないが、供給水の濁度を変化させた場合、同じ損傷であれば、ろ過水濁度は供給水濁度に比例する結果を得た。
これらの結果から、現状の原水濁度で必要なろ過水濁度となるろ過水量、並びに所定のろ過水量で必要なろ過水濁度を得るための原水濁度が演算でき、膜損傷を検出できることが実証された。
各実施例では検出頻度に関して特に説明していないが、必要な原水濁度による検出は連続でも定期的な間欠でもよい。膜のファウリングの観点からみれば間欠で実施するのがよい。必要あるいは設定されたろ過水量の調節は定期的に実施するのが良い。
また、必要なろ過水濁度となるろ過水量や原水濁度を演算値に設定するようにしているが、実際の調節量には係数を乗じて求めるようにしてもよい。この係数βは、調節量がろ過水量の場合には0.5<β<1 、原水濁度の場合には1<β<2の間で設定する。この設定により、ろ過水濁度はより増加し、膜損傷の検出を容易かつ迅速に行える。
ところで、濁度計を原水と供給水の2箇所に設けたが、濁質注入部の1箇所に設けるようにしても支障はない。又、濁質の濃縮・回収に重力沈降式の濁質貯槽を用いたが、空気曝気による洗浄機能を付加した膜濃縮式でも同様の濃縮水を得ることができる。各実施例を全量ろ過方式で説明したが、循環ろ過方式にも適用できる。この場合、膜モジュールの供給水出口にも圧力計を設置し、供給水側の平均圧力とろ過水側圧力の差を用いる。なお、全量ろ過方式でも供給水入口部と末端部に圧力計が設置されている場合は循環ろ過方式と同様なろ過圧力としてもよい。
本発明の実施例1である膜ろ過プロセスの構成図である。 ろ過特性の一例を模式的に示した図である。 本実施例の制御装置の構成図である。 本実施例の制御装置の演算処理工程を示す図である。 本発明を実施例2である膜ろ過プロセスの構成図である。 本実施例の制御装置の演算処理工程を示す図である。 本発明の実施例3である演算処理工程を示す図である。 本発明の実施例4である膜ろ過プロセスの構成図である。 本発明の実施例5である膜ろ過プロセスの構成図である。 本発明の実施例6である膜ろ過プロセスの構成図である。 本発明の実施例7である膜ろ過プロセスの構成図である。 実施例1の膜損傷検出方法におけるろ過水量操作の効果を示す図である。
符号の説明
1…原水取水管、2…調整槽、3…給水管、4…膜ユニット、5…送水管、6,6A…濁質貯槽、7…送水装置、8,8A…注入装置、10…制御装置、11,12…圧力計、13…流量計、14,15,16…濁度計、17…ろ過水貯槽、20,21…配管、25…消毒薬剤貯槽、30…加圧空気供給装置、32,34…開閉弁。



Claims (7)

  1. 複数の膜モジュールを有する膜ユニットで原水を膜ろ過して清澄なろ過水を得る膜ろ過プロセスにおいて、膜が損傷していない正常膜モジュールと膜が損傷している損傷膜モジュールの、膜間差圧とろ過水量の関係を示すろ過特性を事前に求め、正常膜モジュールのろ過特性を現状のろ過特性に補正して、前記事前に求めた損傷膜モジュールのろ過特性と、予め設定したろ過水濁度の設定値と現状の原水濁度の比である濁度比とから、濁度計で検出された現状の原水濁度において前記ろ過水濁度の設定値以上の値でろ過水濁度計で検出可能なろ過水量を演算し、該演算されたろ過水量と流量計で計測されたろ過水量実測値のうちより低い値にろ過水量を送水装置により調整し、前記ろ過水濁度計でのろ過水の計測値と設定値を比較して現状の原水濁度が前記ろ過水濁度の設定値以上であれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷はないとして損傷膜モジュールの有無を判定する膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
  2. 複数の膜モジュールを有する膜ユニットで原水を膜ろ過して清澄なろ過水を得る膜ろ過プロセスにおいて、膜が損傷していない正常膜モジュールと膜が損傷している損傷膜モジュールの、膜間差圧とろ過水量の関係を示すろ過特性を事前に求め、正常膜モジュールのろ過特性を現状のろ過特性に補正して、前記事前に求めた損傷膜モジュールのろ過特性と、予め設定したろ過水濁度の設定値と現状の原水濁度の比である濁度比とから、現状のろ過水量によりろ過水の濁度がろ過水濁度計で計測可能な値に維持するのに必要な原水濁度を演算し、該演算された必要な原水濁度が現状の原水濁度より高い場合には、ろ過水量を送水装置により調整し、濁質貯槽から注入装置により濁質源を原水に注入して必要な原水濁度を維持するように調節し、前記濁度計でのろ過水の計測値と設定値を比較して現状の原水濁度が前記ろ過水濁度の設定値以上であれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷はないとして損傷膜モジュールの有無を判定する膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
  3. 複数の膜モジュールを有する膜ユニットで原水を膜ろ過して清澄なろ過水を得る膜ろ過プロセスにおいて、膜が損傷していない正常膜モジュールと膜が損傷している損傷膜モジュールの、膜間差圧とろ過水量の関係を示すろ過特性を事前に求め、正常膜モジュールのろ過特性を現状のろ過特性に補正して、前記事前に求めた損傷膜モジュールのろ過特性と、予め設定したろ過水濁度の設定値と現状の原水濁度の比である濁度比とから、現状のろ過水量によりろ過水の濁度がろ過水濁度計で計測可能な値に維持するのに必要な原水濁度を演算し、現状の原水濁度が必要な原水濁度以上の場合は現状のろ過水量を維持し、現状の原水濁度が必要な原水濁度より低く、必要なろ過水量がろ過水量下限値より高い場合はろ過水量を必要なろ過水量に送水装置により調節し、必要なろ過水量がろ過水量下限値より低い場合はろ過水量をろ過水量下限値に送水装置により調整し、濁質貯槽から注入装置により原水に濁質源を注入して原水濁度を必要な原水濁度に調節し、前記濁度計でのろ過水の計測値と設定値を比較して現状の原水濁度が前記ろ過水濁度の設定値以上であれば膜損傷発生、それ以外は膜損傷はないとして損傷膜モジュールの有無を判定する膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
  4. 前記濁質貯槽が膜ろ過プロセスを含めた浄水プロセスから排出される濁質含有水を一時貯留して濃縮し、一定量の濃縮濁質を保有するものであって、該濃縮濁質の一部を原水に注入するものである請求項1からのいずれかに記載の膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
  5. 前記濁質貯槽が前記膜ろ過プロセスの洗浄排水を一時貯留して濃縮し、一定量の濃縮濁質を保有するものであって、該濃縮濁質の一部を原水に注入するものである請求項2に記載の膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
  6. 前記濁質貯槽の下流側に消毒剤貯槽に貯留された消毒剤を注入装置により混合器に注入して原水と混合し、原水に注入する濃縮濁質を消毒あるいは不活性化処理する請求項又はに記載の膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
  7. 前記膜ろ過プロセスがろ過水側から加圧空気を供給する加圧空気供給装置を具備するものであって、前記判定により損傷膜モジュールが有と判定された場合は、ろ過処理を停止して前記加圧空気供給装置により加圧空気を供給し、所定時間における加圧空気の圧力低下値と予め設定した値とにより膜損傷の発生を判定する請求項1からのいずれかに記載の膜ろ過プロセスの膜損傷検出方法。
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