JP4891498B2 - エアフィルタ用濾材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエアフィルタ用濾材、特に半導体、液晶、バイオ・食品工業関係のクリーンルーム、クリーンベンチ等あるいはビル空調エアフィルタ、空気清浄器等において気体の不純物を濾過するために使用されるエアフィルタ用濾材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気中のサブミクロン、あるいはミクロン単位の粒子を効率的に捕集するのにエアフィルタ用濾材が用いられている。濾材は性能により中性能フィルタ、HEPAフィルタ、ULPAフィルタに大別される。このうちHEPAフィルタについては米軍規格MIL-STDにおいて、有効面積100cm2の濾紙に面風速5.3cm/秒通風した時の圧力損失が40mmH2O以下、多分散DOP粒子を含む空気を面風速5.3cm/秒通風した時の0.3μmDOP捕集効率が99.97%以上と規定されている。ULPAフィルタについては明確な規定はないが、IESのRP-21において、面風速2.5cm/秒通風した時の0.1〜0.2μmのDOP捕集効率が99.999%以上と定義づけされている。
【0003】
エアフィルタ用濾材においては通常、主要構成物として平均繊維径がコンマ数μm〜数十μmオーダーのガラス繊維が用いられている。
【0004】
しかし、ガラス繊維にはそれ自体、一般紙に使用されるパルプ繊維のような自己接着力がなく、このままでは後加工や実使用の際の実用強度が無い、あるいは通風時にガラス繊維が飛散してしまうなどの問題が生じてしまう。従来、この問題を解決するためにガラス繊維基材に有機系のバインダーラテックスを付与する方法が用いられている。ここで、使用されるバインダーラテックスとしては、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン樹脂などである。
【0005】
しかしこの方法で濾材強度を上げようとするとバインダー付着量を増やす必要があるが、付着量を増やすとガラス繊維間にバインダーの水掻き状膜が増えるため、濾材の圧力損失が高くなり、しかも粒子捕集効率が低下するという問題が生じる。
【0006】
これを解決する手段として、シリコン樹脂を含有することでバインダーの表面張力を低下させ、バインダーの水掻き状膜を解消または減少させる方法(特開平2−41499号公報、特開平2−175997号公報)が提案されている。しかし近年、特に半導体分野においてシリコン樹脂に含有される微量の低分子シロキサンのクリーンルーム内への拡散がLSIチップの生産歩留りに影響を与えることが分かり、シリコン樹脂の使用自体が難しくなっている。
【0007】
また、本発明者らが過去に提案したフッ素系界面活性剤を添加してバインダーの表面張力を下げる方法(特開平10−156116号公報)もある。しかし、25℃純水中に0.1重量%添加した際の静的表面張力が20dyn/cm以下の場合は効果を発揮するが、バインダーの表面張力を下げ過ぎると濾材自体の濡れ性が高くなり、濾材の撥水性を低下させる。また、動的表面張力の低減効果が低いため、25℃純水中に0.1重量%添加した際の静的表面張力が20dyn/cm以上の場合では効果が薄い。
【0008】
一方、濾過性能面においては、クリーンルーム、クリーンベンチ等に使用される送風機のランニングコスト低減の目的で、濾材の低圧力損失化・高捕集効率化の要望が強まっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の第一の目的は、現行濾材に比べ、ガラス繊維間に形成されてしまうバインダーの水掻き状態をより少なくすることで、フィルタ特性の高効率化、特に低圧力損失化と高捕集効率化させ、なお且つ濾材の撥水性を維持したエアフィルタ用濾材を提供することである。
【0010】
本発明の第二の目的は、フィルタの低圧力損失化と高捕集効率化を実現しつつ、濾材の撥水性をさらに高めたエアフィルタ用濾材を提供することである。
【0011】
本発明の第三の目的は、使用するガラス繊維の種類を規定することにより、より一層の低圧力損失化と高捕集効率化をさせたエアフィルタ用濾材を提供することである。
【0012】
本発明の第四の目的は、本発明に係るエアフィルタ用濾材の効果的な製造方法を提供することであり、特にバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を混合液にして同時にガラス繊維表面へ付与形成すること及びその混合液の付着形成のタイミングを規定することにより、ガラス繊維間に形成されてしまうバインダーの水掻き状態をより少なくすることが可能なエアフィルタ用濾材の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の第五の目的は、ガラス繊維表面へのバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液の付着形成を確実に行うことができるエアフィルタ用濾材の製造方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るエアフィルタ濾材は、ガラス繊維を主体繊維とし、該ガラス繊維同士の交絡点をバインダーにて結着せしめた濾材において、該ガラス繊維の表面にバインダーとアセチレン系界面活性剤を付着形成させたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るエアフィルタ濾材は、ガラス繊維を主体繊維とし、該ガラス繊維同士の交絡点をバインダーにて結着せしめた濾材において、該ガラス繊維の表面にバインダーとアセチレン系界面活性剤と撥水剤を付着形成させたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係るエアフィルタ濾材では、前記ガラス繊維は、平均繊維径0.70μm以下の極細ガラス繊維と平均繊維径1.0μm以上6.0μm以下の極細ガラス繊維を含む2種類以上のガラス繊維で構成することが好ましい。さらに好ましくは、前記ガラス繊維は、平均繊維径0.55μm以下の極細ガラス繊維と平均繊維径1.0μm以上6.0μm以下の極細ガラス繊維を含む2種類以上のガラス繊維で構成する。
【0017】
本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法は、ガラス繊維を主とする原料繊維を分散させたスラリーを湿式抄紙することによって湿紙を形成させる工程と、前記ガラス繊維の表面にバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液を付着形成させた後に乾燥させる工程か、或いは前記湿紙を乾燥させた後に該ガラス繊維の表面にバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液を付着形成させる工程を有することを特徴とする。
【0018】
なお、本発明における紙の概念には、無機材料繊維を絡み合わせて、こう着させたものも含む。
【0019】
本発明に係るエアフィルタ用濾材の製造方法では、前記ガラス繊維の表面へのバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液の付着形成は、前記湿紙又は該湿紙を乾燥した紙を該混合液に浸透するか、或いは該湿紙又は該湿紙を乾燥した紙に該混合液をスプレーで吹き付けるか、或いは該湿紙又は該湿紙を乾燥した紙に該混合液を付着させたロールで該混合液を転写することにより行うことが好ましい。
【0020】
ここで、前記湿紙を乾燥させた後に該ガラス繊維の表面にバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液を付着形成させる工程を行うときは、該湿紙又は該湿紙を乾燥した紙に該混合液をスプレーで吹き付けるか、或いは該湿紙又は該湿紙を乾燥した紙に該混合液を付着させたロールで該混合液を転写することにより、付着形成を行うことが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るエアフィルタ用濾材とその製造方法について、詳細に説明するが、本発明は実施形態及び実施例に限定して解釈されない。
【0022】
本発明のエアフィルタ用濾材で用いられるアセチレン系界面活性剤は、アセチレン結合(−C≡C−)を持つことを特徴とするものである。例としてアセチレングリコール、アセチレンアルコールなどが挙げられるが、アセチレン結合を有し本発明の目的を達成できるものであるならば、使用についてその種類を限定するものではない。
【0023】
ガラス繊維間のバインダー水掻き状膜の形成は、製造工程におけるバインダー液の表面張力に大きく影響を受けることは既に知られている。即ち、製造工程中でバインダー液が濾材シートに付着する際、繊維同士で構成された広い空隙では、液は1本1本の繊維の表面あるいは交絡部分にしみ込むように広がるが、狭い空隙ではしみ込み難くなる。このバインダーが膜状になって広がると、空隙を塞いで圧力損失を増大させ、且つ狭い空隙を構成する特に繊維径の細い極細ガラス繊維をその膜内に埋めてしまうため粒子捕集効率を低下させてしまう。そこで、バインダーの表面張力を下げ、繊維への濡れ性を改善することにより、バインダー液は狭い空隙でもよりしみ込み易くなる。この結果、水掻き状膜は減少し、圧力損失の低減と捕集効率の向上をもたらすのであるが、バインダーの表面張力を下げ過ぎると濾材自体の濡れ性が高くなり、濾材の撥水性を低下させる。
【0024】
バインダー液表面張力の低下方法について鋭意検討した結果、アセチレン結合を持つ非イオン性であるアセチレン系界面活性剤を液に添加することで効果の得られることが分かった。また、フッ素系界面活性剤では25℃純水中に0.1重量%添加した際の静的表面張力が20dyn/cm以下でないと効果を発揮しないが、アセチレン系界面活性剤では静的表面張力が50dyn/cm以下であっても効果を発揮する。但し、静的表面張力を40dyn/cm以下とした方がより効果が高く、使用には好ましい。
【0025】
アセチレン系界面活性剤がフッ素系界面活性剤に比べ高い静的表面張力で効果を発揮する理由として、動的表面張力低下能が高いことが挙げられる。静的表面張力とは液面が静止し、安定した状態での表面張力の数値である。しかし、実際の製造工程においては、液面は攪拌され、常に静止していない。この動的な状態の表面張力の数値が動的表面張力であるが、これまでの検討で静的表面張力と動的表面張力の数値が必ずしも相関していないことが判明した。通常、表面張力は動的であるほど高くなる傾向があるが、アセチレン系界面活性剤は低分子量、コンパクトな構造であるため、静的と動的で表面張力の差が少ない。一方、フッ素系界面活性剤は、静的表面張力と動的表面張力の差が大きい。結果として、アセチレン系界面活性剤を添加したバインダーの動的表面張力は、フッ素系界面活性剤と同等かそれ以下となることを見出した。
【0026】
一方、濾材の撥水性においては、界面活性剤の静的表面張力と相関があることもこれまでの検討で判明した。バインダーの静的表面張力を下げ過ぎると濾材自体の濡れ性が高くなり、濾材の撥水性を低下させる。アセチレン系界面活性剤の静的表面張力と動的表面張力で差が少ない特徴が、より低圧力損失化・高捕集効率化し、なお且つ濾材の撥水性を維持したエアフィルタ用濾材とその製造法を提供することを可能としている。
【0027】
濾材をより低圧力損失化・高捕集効率化するために、ガラス原料配合を特定することで、さらに本発明の効果を高めることができる。濾過理論においては、繊維質のエアフィルタ用濾材では構成する繊維のうち、繊維径が細いものほど捕集効率が高くなると言われているが、細径繊維は同時に圧力損失を上昇させてしまう問題が生じる。この問題を解決するには、目付重量を低下させるが、配合方法での工夫が必要である。目付重量の低下は強度物性をも低下させてしまうため、実際には後者の方法が得策である。
【0028】
通常、濾材は、平均繊維径0.1〜20μmのガラス繊維を数種類ブレンドすることで構成されており、本発明の濾材を構成するガラス繊維もその平均繊維径を問うものでなく、アセチレン系界面活性剤を併用したバインダーを濾材に付着させることが重要である。しかし、さらに検討の結果、極細ガラス繊維の平均径が0.70μm以下のものと1.0μm以上のものを配合すること、より好ましくは、0.55μm以下のものと1.0μm以上のものを配合すること、すなわち繊維径差の大きい2種類以上のガラス繊維を配合することにより、より一層、低圧力損失化・高捕集効率化することが分かった。本発明でいう極細ガラス繊維は、概ね平均繊維径6μm以下のガラス繊維をいう。極細ガラス繊維の繊維長は種々の長さのものを用いることができる。なお、種々の繊維長を有するチョップドガラス繊維を適宜ブレンドすることができる。
【0029】
また、目的により、太径の有機繊維や無機繊維の配合も可能である。
【0030】
ただし、従来のアセチレン系界面活性剤を含まないバインダーを付着させると低圧力損失化・高捕集効率化の効果は薄れ、本発明のアセチレン系界面活性剤を併用したバインダーを濾材に付着させて初めてその効果が発揮される。撥水性の低下もない。フッ素系界面活性剤についてもこの効果は発揮するが、濾材の撥水性の低下が起る。このような現象は、従来のバインダーでは、細径繊維で構成される狭い空隙領域がバインダーの水掻き状膜で塞がれていることで繊維自体の効果が発揮されずにいたものが、表面張力を下げることにより水掻き状膜が減少して細径繊維が出現することにより効果が発揮されるためである。
【0031】
本発明のエアフィルタ用濾材は以下の製造方法で得ることができる。すなわち、パルパーなどを用いて、濾材を構成するガラス繊維を水中に分散させ、このスラリーを抄紙機で湿式抄紙して湿紙を得る。次にこの湿紙にアセチレン系界面活性剤を添加したバインダー液を付着させ、その後乾燥させる方法である。また、湿紙を乾燥させた後に該バインダー液を付与してもその効果は変わらない。
【0032】
原料繊維の分散工程では分散性を良くするために、硫酸酸性でpH2〜4の範囲で調整する方法をとるが、pH中性で分散剤などの界面活性剤を使用しても良い。バインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤は、それぞれ単独で付着させても効果はなく、これらを混合したバインダー液を同時付着させなければならない。また、耐水性あるいは難燃性を付与するため、バインダー液に撥水剤や難燃剤を添加しても支障はないが、表面張力を上昇させない範囲内で使用する必要がある。撥水剤を使用する場合は、撥水剤の種類としてフッ素系、シリコン系、ワックス系等があるが、フッ素系撥水剤は少量で撥水性が上がるため、フッ素系撥水剤の使用が好ましい。
【0033】
バインダー液の付与方法としては特に限定されるものではないが、湿紙又は乾燥した紙を付着液に浸透する方法、湿紙又は乾燥した紙にスプレーで吹き付ける方法、ロールに付着液を付着させ湿紙又は乾燥した紙に転写する方法などが挙げられる。乾燥方法としては、熱風乾燥機、赤外線乾燥機、ロールドライヤーなどを利用し、110〜160℃で乾燥することが望ましい。
【0034】
【実施例】
(実施例1)
平均繊維径0.65μmの極細ガラス繊維70重量%、平均繊維径2.70μmの極細ガラス繊維20重量%、平均繊維径6μmのチョップドガラス繊維10重量%を、濃度0.5重量%、硫酸酸性PH2.5で、パルパーで離解した。次いで抄紙機にて抄紙して湿紙を得た。次に、バインダー液組成としてアクリル系ラテックス1.50重量%(商品名:ボンコートAN-258、製造元:大日本インキ化学工業(株))、フッ素系撥水剤0.11重量%(商品名:ライトガードFRG-1、製造元:共栄社化学(株))、25℃純水中に0.1重量%添加した際の静的表面張力が32.6dyn/cmであるアセチレン系界面活性剤0.10重量%(商品名:オルフィンSTG、製造元:日信化学工業(株))に配合した、バインダー液を湿紙に付与し、目付70g/m2、バインダー付着量5.9重量%の湿紙を得た。
【0035】
(実施例2)
実施例1においてバインダー液組成のうち、アセチレン系界面活性剤を25℃純水中に0.1重量%添加した際の静的表面張力が26.0dyn/cmであるアセチレン系界面活性剤0.10重量%(商品名:ダイノール604、製造元:日信化学工業(株))とした以外は実施例1と同様にして目付70g/m2、バインダー付着量5.9重量%の濾材を得た。
【0036】
(実施例3)
実施例1において繊維配合を、平均繊維径0.50μmの極細ガラス繊維38重量%、平均繊維径2.70μmの極細ガラス繊維57重量%、平均繊維径6μmのチョップドガラス繊維5重量%とした以外は実施例1と同様にして目付70g/m2、バインダー付着量5.4重量%の濾材を得た。
【0037】
(比較例1)
実施例1においてバインダー液組成のうち、アセチレン系界面活性剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして目付70g/m2、バインダー付着量5.9重量%の濾材を得た。
【0038】
(比較例2)
実施例1においてバインダー液組成のうち、アセチレン系界面活性剤の代わりにフッ素系界面活性剤0.05重量%(商品名:メガファックF-120、製造元:大日本インキ化学工業(株))とした以外は実施例1と同様にして目付70g/m2バインダー付着量5.2重量%の濾材を得た。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例及び比較例の分析は下記の方法で行った。
▲1▼圧力損失
自製の装置を用い、有効面積100cm2の濾紙に風速5.3cm/秒で通過させ、そのときの差圧を微差圧計で測定した。
▲2▼DOP捕集効率
ラスキンノズルで発生させた多分散DOP粒子を含む空気を、有効面積100cm2の濾紙に面風速5.3cm/秒通風した時のDOP捕集効率をリオン(株)製レーザーパーティクルカウンターにて測定した。なお、対象粒径は0.3〜0.4μmで測定した。
▲3▼PF値
濾材の濾過性能の指標となるPF値は、▲1▼と▲2▼の測定に基づき式1より求めた。(PF値の高い方が同一圧力損失で高捕集効率を示す。)
【式1】
▲4▼表面張力
アセチレン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を25℃純水中に添加した際の界面活性剤静的表面張力、並びにバインダー液の静的表面張力を太平理化工業(株)製デニュイ氏法表面張力測定器で測定した。さらに、アセチレン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤を25℃純水中に添加した際の界面活性剤動的表面張力、並びにバインダー液の動的表面張力をケミダイン(株)製センサダイン5000表面張力計を用い、測定条件6Hz(6個泡/秒)で測定した。
▲5▼撥水性
MIL−STD−282に準拠し、有効面積20cm2の試料に、305mmH2O/分で水圧を加え、水が試験片を通過して反対側に認められたときの水圧を測定する。
【0041】
比較例1は、アセチレン系界面活性剤を添加しなかったので、バインダー液の静的表面張力が高く、且つ静的表面張力と動的表面張力との差が大きいため、実施例1〜3と比較して動的表面張力が高く、PF値が低い。
【0042】
比較例2は、アセチレン系界面活性剤を添加せず、代わりにフッ素系界面活性剤を添加して濾材を得たものであるが、界面活性剤の静的表面張力と動的表面張力の差が実施例1〜3と比較して大きく、バインダー液の静的表面張力と動的表面張力との差も実施例1〜3と比較して大きい。従って静的表面張力は低いが、動的表面張力はやや高い。そのためPF値は、実施例1〜3と比較してやや小さい程度であるが、撥水性は低い。
【0043】
一方、実施例1〜3は、界面活性剤の静的表面張力と動的表面張力の差及びバインダー液の静的表面張力と動的表面張力との差は小さく、PF値も大きい。さらに撥水性も大きいため、低圧力損失化と高捕集効率化を実現し、なお且つ濾材の撥水性を維持している。
【0044】
実施例2は、実施例1と比較して25℃純水中に0.1重量%添加した際の静的表面張力が小さいアセチレン系界面活性剤を添加した場合であるが、PF値が実施例1よりも大きくなった。しかし、撥水性は実施例1と比較すると小さくなった。但し、実使用に耐え得る撥水性である。
【0045】
また、実施例3では、ガラス繊維として、平均繊維径0.55μm以下の極細ガラス繊維と平均繊維径1.0μm以上の極細ガラス繊維を含む2種類以上のガラス繊維で構成したので、PF値が最も大きい。
【0046】
【発明の効果】
請求項1記載の発明により、現行濾材に比べ、ガラス繊維間に形成されてしまうバインダーの水掻き状態をより少なくして、フィルタ特性の高効率化、特に低圧力損失化と高捕集効率化させ、なお且つ濾材の撥水性を維持したエアフィルタ用濾材を提供することができた。
【0047】
請求項2記載の発明により、フィルタの低圧力損失化と高捕集効率化を実現しつつ、濾材の撥水性をさらに高めたエアフィルタ用濾材を提供することができた。
【0048】
請求項3記載の発明により、濾材を構成するガラス繊維のうち、極細ガラス繊維の平均径が0.70μm以下のものと1.0μm以上のものの2種類以上で構成することとして、より一層の低圧力損失化と高捕集効率化をさせたエアフィルタ用濾材を提供することができた。
【0049】
請求項4記載の発明により、バインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を混合液にして同時にガラス繊維表面へ付与し、またその混合液の付着形成のタイミングを規定して、ガラス繊維間に形成されてしまうバインダーの水掻き状態をより少なくすることが可能なエアフィルタ用濾材の製造方法を提供することができた。
【0050】
請求項5記載の発明により、ガラス繊維表面へのバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液の付着形成を確実に行うことができるエアフィルタ用濾材の製造方法を提供することができた。
Claims (5)
- ガラス繊維を主体繊維とし、該ガラス繊維同士の交絡点をバインダーにて結着せしめた濾材において、該ガラス繊維の表面にバインダーとアセチレン系界面活性剤を付着形成させたことを特徴とするエアフィルタ用濾材。
- ガラス繊維を主体繊維とし、該ガラス繊維同士の交絡点をバインダーにて結着せしめた濾材において、該ガラス繊維の表面にバインダーとアセチレン系界面活性剤と撥水剤を付着形成させたことを特徴とするエアフィルタ用濾材。
- 前記ガラス繊維は、平均繊維径0.70μm以下の極細ガラス繊維と平均繊維径1.0μm以上6.0μm以下の極細ガラス繊維を含む2種類以上のガラス繊維で構成することを特徴とする請求項1又は2記載のエアフィルタ用濾材。
- ガラス繊維を主とする原料繊維を分散させたスラリーを湿式抄紙することによって湿紙を形成させる工程と、
前記ガラス繊維の表面にバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液を付着形成させた後に乾燥させる工程か、或いは前記湿紙を乾燥させた後に該ガラス繊維の表面にバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液を付着形成させる工程を有することを特徴とするエアフィルタ用濾材の製造方法。 - 前記ガラス繊維の表面へのバインダーラテックスとアセチレン系界面活性剤を含む混合液の付着形成は、前記湿紙又は該湿紙を乾燥した紙を該混合液に浸透するか、或いは該湿紙又は該湿紙を乾燥した紙に該混合液をスプレーで吹き付けるか、或いは該湿紙又は該湿紙を乾燥した紙に該混合液を付着させたロールで該混合液を転写することにより行うことを特徴とする請求項4記載のエアフィルタ用濾材の製造方法。
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