以下、添付図面に従って、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
[本発明の原理]
本発明の原理について、図1を用いて説明する。
図1(A)に示すように、記録媒体16(「基材」ともいう)として、少なくとも一方の表面を所定の色に塗工した紙(以下「塗工紙」という)を用いる場合、その表面の塗工層70には、一般に、無数の細孔71が存在している。
本発明において、記録媒体16は塗工紙に限定されないが、以下では、説明の便宜上、記録媒体16が塗工紙であって特に白色塗工した板紙(以下「白板紙」という)である場合を例に説明する。
図1(B)に示すように、まず、第1液体81(「プライマー液」ともいう)を、記録媒体16の表面の塗工層70に付与する。
ここで、第1液体81は、重合性化合物からなる液滴82(以下「重合性液滴」という)と、記録媒体16の塗工層70に存在する細孔71の開口72を塞ぐ固体粒子83(以下「フィラー」という)とを、重合性液滴82が不可溶な液体溶媒84(例えば水)に分散させて成る。重合性液滴82を構成している重合性化合物は、紫外線、可視光線、電子線などの輻射線(以下「エネルギー線」という)が照射されると重合反応して硬化する性質を有する。
本発明において、重合性液滴82は、重合性化合物を含有していればよく、重合性化合物のみからなる場合に特に限定されないが、以下では、説明の便宜上、重合性液滴82が重合性化合物のみからなる場合を例に説明する。
また、第1液体81の付与態様は、打滴および塗布のいずれの態様であってもよい。前者の打滴によれば、後述する着色剤を含む第2液体(「インク」ともいう)の付与に必要な範囲のみに第1液体81の重合性液滴82からなる液体膜(図1(D)の85)を容易に形成し得る。また、塗布によると、第1液体81を付与可能な材料の粘度・表面張力範囲が打滴の場合よりも広がる点で好ましい。
第1液体81中の液体溶媒84が塗工層70の細孔71を介して記録媒体16中に浸透する一方で、図1(C)に示すように、第1液体81中のフィラー83が塗工層70の細孔71の開口72を塞ぐとともに、第1液体81中の重合性液滴82が塗工層70上に残留して、図1(D)に示すように、重合性液滴82からなる液体膜85が塗工層71上に形成される。
そして、図1(E)に示すように、塗工層70上の液体膜85が存在する領域内に、着色剤を含む第2液体の液滴86a、86b(以下「インク液滴」という)を打滴する。
ここで、複数のインク液滴86a、86bを互いに近傍となる位置に着弾させても、記録媒体16の表面にはすでに液体膜85が形成されているので、気体と液体の境界面(気液界面)が限定され、気液界面の面積変化が極小化される。もしも、液体膜85が記録媒体16の表面上に無い状態で、記録媒体16の表面に複数のインク液滴86a、86bを直接打滴した場合には、気液界面の表面積を小さくしようとして、すなわち表面エネルギーを最小化しようとして、複数のインク液滴86a、86b同士が合一するという着弾干渉が発生するが、本発明では、液体膜85に対してインク液滴86a、86bが打滴されるので、着弾干渉が防止される。
この場合、液体膜85の動的表面張力(表面寿命:Surface ageは100msec)が、インク液適の86a、86bのそれよりも低いことが好ましい。動的表面張力は最大泡圧法により簡便に測定が可能である。
液体膜85の粘度は、500mPa・sから50000mPa・sが好ましく、特に好ましくは5000mPa・sから20000mPa・sが特に好ましい。液体膜の表面張力や粘度は、第1液体81の揮発分(水性の場合は水)が蒸発した後の液体の物性により測定可能である。
次に、図1(F)に示すように着弾干渉なくインク液滴86a、86bの形状が液体膜81の内部で保たれている間(数百ミリ秒から5秒まで間)、すなわちドット形状が崩れないうちに、記録媒体16の表面に対して(すなわちインク液滴86a、86bを含む液体膜81に対して)、エネルギー線88を照射し、液体膜85を硬化させることにより、インク液滴86a、86bを記録媒体16の塗工層70の表面に定着させる。
なお、第1液体および第2液体の少なくとも何れか一方は、重合開始剤を含有している。また、第1液体のみでなく第2液体にも重合性化合物を含有させることも可能であり、この場合には、液体全体が硬化することになるので、さらに密着性を高めることができ、好ましい。
[液体に含有される物質]
以下、記録媒体に付与される液体中の物質について詳細に説明する。
本実施形態では、主として、重合性化合物(エネルギー線重合性の「モノマー」、「オリゴマー」)、重合開始剤、フィラー(固体粒子)、着色剤、及び、界面活性剤の中から選択された1又は複数種類の物質をそれぞれ含有する2種類以上の液体が用いられる。これら以外の物質を液体が含有していてもよい。
本発明において、第1液体(プライマー液)は、少なくとも、重合性化合物を含有する重合性液滴(液体粒子)と、フィラー(固体粒子)を含有する。なお、第1液体(プライマー液)に、重合性化合物およびフィラー以外の物質(重合開始剤、界面活性剤など)が含まれていてもよい。
また、本発明において、第2液体(インク)は、少なくとも着色剤を含有する。なお、第2液体に、着色剤以外の物質(例えば重合性化合物)が含まれていてもよい。
また、第1液体に少量(5質量%以下)の着色剤が含まれていてもよい。
<プライマー液の液体溶媒>
環境への影響が小さい点から、水が、好ましい。水以外には、「エチルアルコール」や「グリコールエーテル」類として、例えばジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレンプリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル」などが挙げられる。
<フィラー>(固体粒子)
フィラーは、記録媒体に存在する細孔(毛細管)の開口を塞ぐ固体粒子である。
記録媒体と、その一般的な細孔径(直径)と、フィラーの粒子径(直径)との対応関係は、以下の通りであれば本発明の効果を得られる。
記録媒体 細孔径 フィラーの粒子径
塗工紙(塗工アート紙) 0.1〜0.2μm 0.1〜0.2μm
上質紙または更紙 1.0〜1.5μm 1.0〜1.5μm
実際には記録媒体の細孔径(詳細には細孔の開口径)およびフィラーの粒子径には一般に分布が存在し、フィラーの粒子径の平均値(平均粒子径)が上記の範囲内であればよい。
なお、複数の一次粒子同士が凝集して二次粒子を形成し、この二次粒子がフィラーとして分散されている場合(一次粒子と二次粒子が混在している場合を含む)には、二次粒子の粒子径が上記の範囲内であればよい。一般に、2〜4個の一次粒子が凝集して二次粒子を構成している場合が多いので、一次粒子の直径の2倍が二次粒子の直径であるものとして換算し、その二次粒子の換算した直径が上記の範囲内であればよい。
フィラーの粒子径は、記録媒体の細孔径以上であることが、好ましい。フィラーの粒子径が記録媒体の細孔径と同一であっても、適切な効果が得られる。実際には記録媒体の細孔径およびフィラーの粒子径には分布が存在し、フィラーの平均粒子径が記録媒体の平均細孔径以上であればよい。あるいは、プライマー液中のフィラーのうちで、記録媒体の細孔径の平均値よりも大きなフィラーの個数が全体の個数の50%以上である場合であってもよい。
なお、複数の一次粒子同士が凝集して二次粒子を形成し、この二次粒子がフィラーとして分散されている場合(一次粒子と二次粒子が混在している場合を含む)には、二次粒子の粒子径(平均粒子径)が、記録媒体の細孔径(平均細孔径)以上であればよい。一般に、2〜4個の一次粒子が凝集して二次粒子を構成している場合が多いので、一次粒子の直径の2倍が二次粒子の直径であるものとして換算し、その二次粒子の換算した直径の平均値が記録媒体の細孔の直径の平均値以上であればよい。
無機フィラーの材料の例としては、アルミナ、カオリン、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、窒化硼素、マイカ、ガラス系ビーズ、シリカ系ビーズ、硼素系バルーン、などが挙げられる。無機フィラーのうちで、シリカ微粒子は、適切な粒径のものが安価に入手できる点で、好ましい。
有機高分子フィラーの例としては、架橋ポリスチレン、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリアクリル、架橋ウレタン、などが挙げられる。ガラス転移点(Tg)は、プライマー液付与からインク打滴までの期間の温度よりも、高いことが必要であるが、架橋した樹脂材料はガラス転移点が高いので、好ましい。有機フィラーのうちで、架橋ポリメタクリル酸メチル粒子は、適切な粒径のものが安価に入手できる点で、好ましい。
無機フィラーと有機高分子フィラーとを比較すると、高分子炭素水素化合物からなる有機フィラーは、無機フィラーと比較して比重が小さく、液体溶媒に分散させた状態で長時間保存しても、沈降せず貯蔵安定性が良いので、有機フィラーが好ましい。
プライマー液の液体溶媒が水の場合、比重が1.5よりも小さいフィラーを用いることにより、適切な効果が得られる。ここで、比重は、4℃の水に対する同一体積での質量の比である。
フィラーの分量の範囲については、プライマー液中で1質量%乃至10質量%が、好ましい。1質量%未満の場合には、細孔を塞ぐ効果が十分でないので好ましくなく、また、10質量%を超える場合には、記録媒体の表面の風合いがフィラーにより変化してしまうので好ましくない。
<重合性化合物>
本発明における重合性化合物は、後述する重合開始剤などから発生するラジカルなどの開始種により重合反応(もしくは架橋反応)を生起し、硬化する機能を有するものである。
重合性化合物としては、ラジカル重合反応、カチオン重合反応、二量化反応など公知の重合性化合物(以下、まとめて重合性材料という)を適用することができる。
本発明に用いられる重合性化合物は、何らかのエネルギー線付与により重合反応を生起し硬化する化合物であれば特に制限はなく、モノマー、オリゴマーの種を問わず使用することができるが、特に、所望により添加される重合開始剤から発生する開始種により重合反応を生起する、ラジカル重合性モノマーとして知られる各種公知の重合性のモノマーが好ましい。
重合性化合物は反応速度や、インク物性、硬化膜物性等を調整する目的で1種または複数を混合して用いることができる。また、重合性化合物は単官能化合物であっても、多官能化合物であってもよい。
(カチオン重合性モノマー)
本発明において重合性化合物として用いられる光カチオン重合性モノマーとしては、例えば、特開平6−9714号、特開2001−31892、同2001−40068、同2001−55507、同2001−310938、同2001−310937、同2001−220526などの各公報に記載されているエポキシ化合物、ビニルエーテル化合物、オキセタン化合物などが挙げられる。
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシド、脂環式エポキシドなどが挙げられる。
本発明に用いうる単官能エポキシ化合物の例としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブタジエンモノオキサイド、1,2−エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2−エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイド等が挙げられる。
また、多官能エポキシ化合物の例としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4−ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3−テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、1−メチル−4−(2−メチルオキシラニル)−7−オキサビシクロ[4.1.0]へプタン等があげられる。
これらのエポキシ化合物のなかでも、芳香族エポキシドおよび脂環式エポキシドが、硬化速度に優れるという観点から好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。
本発明に用いうる単官能ビニルエーテルの例としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、n−ノニルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルメチルビニルエーテル、4−メチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ジシクロペンテニルビニルエーテル、2−ジシクロペンテノキシエチルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ブトキシエチルビニルエーテル、メトキシエトキシエチルビニルエーテル、エトキシエトキシエチルビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールビニルエーテル、テトラヒドロフリフリルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシルメチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールビニルエーテル、クロルエチルビニルエーテル、クロルブチルビニルエーテル、クロルエトキシエチルビニルエーテル、フェニルエチルビニルエーテル、フェノキシポリエチレングリコールビニルエーテル等が挙げられる。
また、多官能ビニルエーテルの例としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキサイドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキサイドジビニルエーテルなどのジビニルエーテル類;トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、エチレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、プロピレンオキサイド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテルなどの多官能ビニルエーテル類等が挙げられる。
ビニルエーテル化合物としては、ジ又はトリビニルエーテル化合物が、重合性、被記録媒体との密着性、形成された画像の表面硬度などの観点から好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。
本発明におけるオキセタン化合物は、オキセタン環を有する化合物を指し、特開2001−220526号、同2001−310937号、同2003−341217号の各公報に記載される如き、公知オキセタン化合物を任意に選択して使用できる。
本発明のインク組成物に使用しうるオキセタン環を有する化合物としては、その構造内にオキセタン環を1〜4個有する化合物が好ましい。このような化合物を使用することで、インク組成物の粘度をハンドリング性の良好な範囲に維持することが容易となり、また、硬化後のインクの被記録媒体との高い密着性を得ることができる。
本発明で用いられる単官能オキセタンの例としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−(メタ)アリルオキシメチル−3−エチルオキセタン、(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4−フルオロ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、4−メトキシ−〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、〔1−(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)エチル〕フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチルヘキシル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−テトラブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−トリブロモフェノキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−ヒドロキシプロピル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ボルニル(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
多官能オキセタンの例としては、例えば、3,7−ビス(3−オキセタニル)−5−オキサ−ノナン、3,3’−(1,3−(2−メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス−(3−エチルオキセタン)、1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン、1,2−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニエル)]メチル}エーテル、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、1,4−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6−ビス(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールF(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等の多官能オキセタンが挙げられる。
このようなオキセタン環を有する化合物については、前記特開2003−341217公報、段落番号〔0021〕乃至〔0084〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物は本発明にも好適に使用しうる。
本発明で使用するオキセタン化合物のなかでも、インク組成物の粘度と粘着性の観点から、オキセタン環を1〜2個有する化合物を使用することが好ましい。
本発明のインク組成物には、これらの重合性化合物は、1種のみを用いても、2種以上を併用してもよいが、インク硬化時の収縮を効果的に抑制するといった観点からは、少なくとも1種のオキセタン化合物と、エポキシ化合物及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物とを併用することが好ましい。
(ラジカル重合性モノマー)
本発明においては、重合性化合物として光ラジカル開始剤から発生する開始種により重合反応を生じる各種公知のラジカル重合性モノマーを使用することも好ましい。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類、等が挙げられる。なお、本明細書において「アクリレート」、「メタクリレート」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリレート」と、「アクリル」、「メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合「(メタ)アクリル」と、それぞれ記載することがある。
本発明に用いられる(メタ)アクリレートとしては、例えば以下のものが挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、ヘキシル基(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、tert−オクチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−n−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エチヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、4−ブロモブチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ブトシキメチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、アルコキシメチル(メタ)アクリレート、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2,2,2−テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2Hパーフルオロデシル(メタ)アクリレート、4−ブチルフェニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2,4,5−テトラメチルフェニル(メタ)アクリレート、4−クロロフェニル(メタ)アクリレート、フェノキシメチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、トリメチルシリルプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシド(メタ)アクリレート、オリゴエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、オリゴプロピレンオキシドモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−メタクリロイロキシチルコハク酸、2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性−2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
二官能の(メタ)アクリレートの具体例として、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチルエチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンメタノールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、オリゴエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、オリゴプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
三官能の(メタ)アクリレートの具体例として、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ((メタ)アクリロイルオキシプロピル)エーテル、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリ((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ヒドロキシピバルアルデヒド変性ジメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート等を挙げることができる。
四官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
五官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
六官能の(メタ)アクリレートの具体例として、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプトラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
本発明に用いられる(メタ)アクリルアミド類の例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリンが挙げられる。
本発明に用いられる芳香族ビニル類の具体例としては、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルメチルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン、ジクロルスチレン、ブロムスチレン、ビニル安息香酸メチルエステル、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、3−プロピルスチレン、4−プロピルスチレン、3−ブチルスチレン、4−ブチルスチレン、3−ヘキシルスチレン、4−ヘキシルスチレン、3―オクチルスチレン、4−オクチルスチレン、3−(2−エチルヘキシル)スチレン、4−(2−エチルヘキシル)スチレン、アリルスチレン、イソプロペニルスチレン、ブテニルスチレン、オクテニルスチレン、4−t−ブトキシカルボニルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン等が挙げられる。
さらに本発明におけるラジカル重合性モノマーとしてはビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、ビニルエーテル[メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
これらのうち、本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては硬化速度の点から、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類が好ましく、特に硬化速度の点から4官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。さらに、第2の液体(インク)組成物の粘度の観点から上記多官能(メタ)アクリレート、と単官能もしくは2官能の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドを併用することが好ましい。
重合性材料は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合性材料の、第1の液体又は必要に応じて第2の液体中における含有量としては、各液滴の全固形分(質量)に対して、50〜99.6質量%の範囲が好ましく、70〜99.0質量%の範囲がより好ましく、80〜99.0質量%の範囲がさらに好ましい。
また、液滴中における含有量としては、各液滴の全質量に対して、20〜98質量%の範囲が好ましく、40〜95質量%の範囲がより好ましく、50〜90質量%の範囲が特に好ましい。
<重合開始剤>
第1液体及び第2液体は、重合開始剤の少なくとも一種を用いて好適に構成することができ、好ましくは少なくとも第2の液体に用いて構成される。この重合開始剤は、活性光、熱、あるいはその両方のエネルギーの付与によりラジカルなどの開始種を発生し、既述の重合性化合物の重合もしくは架橋反応を開始、促進させ、硬化する化合物である。
この重合開始剤は、第1液体並びに第2液体の保存安定性を確保する観点から、重合性材料とは別に含有させることが望ましく、本発明においては、第1液体が前記重合性化合物を含有し、第2の液体やそれ以外の液体が重合開始剤を含有する形態が好ましい。
重合性の態様において、ラジカル重合もしくはカチオン重合を起こさせる重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することが特に好ましい。
重合開始剤は、光の作用、又は増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカル、酸および塩基のうちの少なくともいずれか1種を生成する化合物であり、中でも、露光という簡便な手段で重合開始させることができるという観点から前記光ラジカル発生剤、又は光酸発生剤であることが好ましい。
光重合開始剤は、照射される活性光線、例えば、400〜200nmの紫外線、遠紫外線、g線、h線、i線、KrFエキシマレーザー光、ArFエキシマレーザー光、電子線、X線、分子線又はイオンビームなどに感度を有するものを適宜選択して使用することができる。
具体的な光重合開始剤は当業者間で公知のものを制限なく使用でき、具体的には、例えば、Bruce M. Monroeら著、Chemical Revue,93,435(1993).や、R.S.Davidson著、Journal of Photochemistry and biology A :Chemistry,73.81(1993).や、J.P.Faussier“Photoinitiated Polymerization−Theory and Applications”:Rapra Review vol.9,Report,Rapra Technology(1998).や、M.Tsunooka et al.,Prog.Polym.Sci.,21,1(1996).に多く、記載されている。また、(有機エレクトロニクス材料研究会編、「イメージング用有機材料」、ぶんしん出版(1993年)、187〜192ページ参照)に化学増幅型フォトレジストや光カチオン重合に利用される化合物が多く、記載されている。さらには、F.D.Saeva,Topics in Current Chemistry,156,59(1990).、G.G.Maslak,Topics in Current Chemistry,168,1(1993).、H.B.Shuster et al,JACS,112,6329(1990).、I.D.F.Eaton et al,JACS,102,3298(1980).等に記載の、増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、酸化的もしくは還元的に結合解裂を生じる化合物群も知られる。
好ましい光重合開始剤としては(a)芳香族ケトン類、(b)芳香族オニウム塩化合物、(c)有機過酸化物、(d)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(e)ケトオキシムエステル化合物、(f)ボレート化合物、(g)アジニウム化合物、(h)メタロセン化合物、(i)活性エステル化合物、(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物、等が挙げられる。
前記(a)芳香族ケトン類の好ましい例としては、「RADIATION CURING IN POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY」J.P.FOUASSIER J.F.RABEK (1993)、p77〜117記載のベンゾフェノン骨格或いはチオキサントン骨格を有する化合物等が挙げられる。より好ましい(a)芳香族ケトン類の例としては、特公昭47−6416号公報記載のα−チオベンゾフェノン化合物、特公昭47−3981号公報記載のベンゾインエーテル化合物、特公昭47−22326号公報記載のα−置換ベンゾイン化合物、特公昭47−23664号公報記載のベンゾイン誘導体、特開昭57−30704号公報記載のアロイルホスホン酸エステル、特公昭60−26483号公報記載のジアルコキシベンゾフェノン、特公昭60−26403号公報、特開昭62−81345号公報記載のベンゾインエーテル類、特公平1−34242号公報、米国特許第4,318,791号、ヨーロッパ特許0284561A1号記載のα−アミノベンゾフェノン類、特開平2−211452号公報記載のp−ジ(ジメチルアミノベンゾイル)ベンゼン、特開昭61−194062号公報記載のチオ置換芳香族ケトン、特公平2−9597号公報記載のアシルホスフィンスルフィド、特公平2−9596号公報記載のアシルホスフィン、特公昭63−61950号公報記載のチオキサントン類、特公昭59−42174号公報記載のクマリン類等を挙げることができる。
前記(b)芳香族オニウム塩化合物としては、周期律表の第V、VI及びVII族の元素、具体的にはN、P、As、Sb、Bi、O、S、Se、Te、またはIの芳香族オニウム塩が含まれる。例えば、欧州特許104143号明細書、米国特許4837124号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−96514号公報に記載されるヨードニウム塩類、欧州特許370693号、同233567号、同297443号、同297442号、同279210号、および同422570号各明細書、米国特許3902144号、同4933377号、同4760013号、同4734444号、および同2833827号各明細書に記載されるスルホニウム塩類、ジアゾニウム塩類(置換基を有してもよいベンゼンジアゾニウム等)、ジアゾニウム塩樹脂類(ジアゾジフェニルアミンのホルムアルデヒド樹脂等)、N−アルコキシピリジニウム塩類等(例えば、米国特許4,743,528号明細書、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、および特公昭46−42363号各公報等に記載されるもので、具体的には1−メトキシ−4−フェニルピリジニウム テトラフルオロボレート等)、さらには特公昭52−147277号、同52−14278号、および同52−14279号各公報記載の化合物が好適に使用される。活性種としてラジカルや酸を生成する。
前記(c)「有機過酸化物」としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれるが、その例としては、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系が好ましい。
前記(d)ヘキサアリールビイミダゾールとしては、特公昭45−37377号公報、特公昭44−17516号公報記載のロフィンダイマー類、例えば2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
前記(e)ケトオキシムエステルとしては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−p−トルエンスルホニルオキシイミノブタン−2−オン、2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン等が挙げられる。
前記(f)ボレート化合物の例としては、米国特許3,567,453号、同4,343,891号、ヨーロッパ特許109,772号、同109,773号に記載されている化合物が挙げられる。
前記(g)アジニウム塩化合物の例としては、特開昭63−138345号、特開昭63−142345号、特開昭63−142346号、特開昭63−143537号、並びに特公昭46−42363号の各公報に記載のN−O結合を有する化合物群を挙げることができる。
前記(h)メタロセン化合物の例としては、特開昭59−152396号、特開昭61−151197号、特開昭63−41484号、特開平2−249号、特開平2−4705号各公報記載のチタノセン化合物ならびに、特開平1−304453号、特開平1−152109号各公報記載の鉄−アレーン錯体を挙げることができる。
前記チタノセン化合物の具体例としては、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ジ−クロライド、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジフルオロフェニ−1−イル、ビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(ピリ−1−イル)フェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(メチルスルホンアミド)フェニル〕チタン、ビス(シクロペンタジエニル)ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(N−ブチルビアロイル−アミノ)フェニル〕チタン等を挙げることができる。
前記(i)活性エステル化合物の例としては、欧州特許0290750号、同046083号、同156153号、同271851号、および同0388343号各明細書、米国特許3901710号、および同4181531号各明細書、特開昭60−198538号、および特開昭53−133022号各公報に記載されるニトロベンズルエステル化合物、欧州特許0199672号、同84515号、同199672号、同044115号、および同0101122号各明細書、米国特許4618564号、同4371605号、および同4431774号各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、および特開平4−365048号各公報記載のイミノスルホネート化合物、特公昭62−6223号、特公昭63−14340号、および特開昭59−174831号各公報に記載される化合物等が挙げられる。
前記(j)炭素ハロゲン結合を有する化合物の好ましい例としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物等を挙げることができる。
また、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物等を挙げることができる。ドイツ特許第2641100号に記載されているような化合物、ドイツ特許第3333450号に記載されている化合物、ドイツ特許第3021590号に記載の化合物群、あるいはドイツ特許第3021599号に記載の化合物群、等を挙げることができる。
前記(a)〜(j)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
なお、重合開始剤は感度に優れるものが好ましいが、例えば、80℃以下の温度で熱分解を起こすものを用いることは保存安定性の観点から好ましくなく、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を選択することが好ましい。
重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、感度向上の目的で公知の増感剤を併用することもできる。
重合開始剤の第2の液体中における含有量としては、経時安定性と重合性、硬化速度との観点から、第1の液体、第2の液体を画像形成に必要な最大量を媒体上に打滴した場合、単位面積あたりに塗設された重合性材料に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%が更に好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。なお、含有量が多すぎる場合には、経時による析出や分離が生じたり、硬化後のインクの強度や擦り耐性などの性能が悪化したりすることがある。
なお、重合開始剤を第2の液体に含有すると共に第1の液体に含有させてもよく、この場合には、第1の液体の保存安定性を所望の程度に保持できる範囲で適宜選択して含有することができる。
また、重合開始剤は、第2の液体に含有せず既述の第1の液体に含有させるようにしてもよい。この場合は、第1の液滴中の含有量は、第1の液体中の重合性もしくは架橋性化合物に対して、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましい。
(増感色素)
本発明においては、光重合開始剤の感度を向上させる目的で、増感色素を添加してもよい。好ましい増感色素の例としては、以下の化合物類に属しており、かつ350nmから450nm域に吸収波長を有するものを挙げることができる。
多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えばチアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)、クマリン類(例えば、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン)。
より好ましい増感色素の例としては、下記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物が挙げられる。
式(IX)中、A1は硫黄原子またはNR50を表し、R50はアルキル基またはアリール基を表し、L2は隣接するA1及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R51、R52はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R51、R52は互いに結合して、色素の酸性核を形成してもよい。Wは酸素原子または硫黄原子を表す。
式(X)中、Ar1及びAr2はそれぞれ独立にアリール基を表し、−L3−による結合を介して連結している。ここでL3は−O−または−S−を表す。また、Wは一般式(IX)に示したものと同義である。
式(XI)中、A2は硫黄原子またはNR59を表し、L4は隣接するA2及び炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58はそれぞれ独立に一価の非金属原子団の基を表し、R59はアルキル基またはアリール基を表す。
式(XII)中、A3、A4はそれぞれ独立に−S−または−NR62−または−NR63−を表し、R62、R63はそれぞれ独立に置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基を表し、L5、L6はそれぞれ独立に、隣接するA3、A4及び隣接炭素原子と共同して色素の塩基性核を形成する非金属原子団を表し、R60、R61はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団であるか又は互いに結合して脂肪族性または芳香族性の環を形成することができる。
式(XIII)中、R66は置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環を表し、A5は酸素原子、硫黄原子または−NR67−を表す。R64、R65及びR67はそれぞれ独立に水素原子または一価の非金属原子団を表し、R67とR64、及びR65とR67はそれぞれ互いに脂肪族性または芳香族性の環を形成するため結合することができる。
前記一般式(IX)〜(XIII)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下に示す例示化合物(A−1)〜(A−20)などが挙げられる。
(共増感剤)
さらに、感度を一層向上させる、あるいは酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する公知の化合物を共増感剤として加えてもよい。
共増感剤の例としては、アミン類、例えばM.R.Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号公報、特開昭51−82102号公報、特開昭52−134692号公報、特開昭59−138205号公報、特開昭60−84305号公報、特開昭62−18537号公報、特開昭64−33104号公報、Research Disclosure 33825号記載の化合物等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等が挙げられる。
別の例としては、チオールおよびスルフィド類、例えば、特開昭53−702号公報、特公昭55−500806号公報、特開平5−142772号公報記載のチオール化合物、特開昭56−75643号公報のジスルフィド化合物等が挙げられ、具体的には、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾオキサゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、2−メルカプト−4(3H)−キナゾリン、β−メルカプトナフタレン等が挙げられる。
また別の例としては、アミノ酸化合物(例、N−フェニルグリシン等)、特公昭48−42965号公報記載の有機金属化合物(例、トリブチル錫アセテート等)、特公昭55−34414号公報記載の水素供与体、特開平6−308727号公報記載のイオウ化合物(例、トリチアン等)、特開平6−250387号公報記載のリン化合物(ジエチルホスファイト等)、特開平175779号公報記載のSi−H、Ge−H化合物等が挙げられる。
<着色剤(色材)>
着色剤には、例えば、顔料、染料がある。
本発明に用いられる着色剤には特に制限はなく、インクの使用目的に適合する色相、色濃度を達成できるものであれば、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料から適宜選択して用いることができる。なかでも、インクジェット記録用のインクを構成する液体は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しない液体がインク打滴安定性及び速乾性の観点から好ましく、そのような観点からは、非水溶性の液体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料や顔料を用いることが好ましい。
本発明に使用可能な油溶性染料には特に制限はなく、任意のものを使用することができる。着色剤として油溶性染料を用いる場合の染料の含有量は、固形分換算で0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜15質量%が更に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。
着色剤として顔料を用いる態様もまた、複数種の液体の混合時に凝集が生じやすいという観点から好ましい。
本発明において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、及び、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。
さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などから市販品としても入手可能である。
本発明における液体中に含まれる顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、30〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの測定装置により測定することができる。
着色剤として顔料を用いる場合の含有量は、光学濃度と噴射安定性の観点から、液体中において、固形分換算で0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
着色剤は1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、液体毎に異なった着色剤を用いても、同じであってもよい。
<界面活性剤>
本発明のインク液やプライマー液には界面活性剤を添加することができる。特に油層に対しても表面張力を低下させる能力がある界面活性剤の例としては、フッ素系のものやシリコーン系のものが好ましい。
市販されている界面活性剤の例としては、ビックケミー・ジャパン社製BYK-333,345,381などや、大日本インキ(株)社製 メガファックシリーズ F−443,435などが挙げられる。
<水性重合性液滴の分散物>
重合性化合物の水分散物として、いくつか市販されているものを使用することができる。たとえば、ダイセル・サイテックス社から、脂肪族ウレタンアクリレートのエマルジョンやディスパージョンとしてUCECOAT7177やUCECOAT7571、7770、UCECOAT7772、UCECOAT7773、UCECOAT7849等があげられる。インク滴の着弾干渉を避けるためには、基材上に残ったプライマー液(水分が吸収された後)の重合性液滴とフィラーからなるフィルムは、液体であることが必要である。重合性液滴のみ粘度は100〜2000cpが好ましく、さらに好ましくは500〜1000cpである。重合後の膜の柔軟性が高い特性からウレタンアクリレートの分散物が好ましい。
<貯蔵安定剤>
本発明においては、複数種の液体の保存中における好ましくない重合を抑制する目的で、貯蔵安定剤を添加することができる。貯蔵安定剤は、重合性化合物と同じ液体に共存させて用いることが好ましく、また、該液体或いは共存する他の成分に可溶性のものを用いることが好ましい。
貯蔵安定剤としては、4級アンモニウム塩、ヒドロキシアミン類、環状アミド類、ニトリル類、置換尿素類、複素環化合物、有機酸、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノエーテル類、有機ホスフィン類、銅化合物などが挙げられる。
貯蔵安定剤の添加量は、用いる重合開始剤の活性や重合性化合物の重合性、貯蔵安定剤の種類に基づいて適宜調整するのが好ましいが、保存安定性と液体混合時のインクの重合性とのバランスといった観点からは、液体中における固形分換算で0.005〜1質量%が好ましく、0.01〜0.5質量%がより好ましく、0.01〜0.2質量%がさらに好ましい。
[エネルギー線]
本発明において重合性化合物(エネルギー線硬化材料)の重合を進行させるためのエネルギー線としては、紫外線、可視光線などを使用することができる。また、光以外のエネルギー線、例えば、α線、γ線、X線、電子線などでエネルギー付与を行うこともできるが、これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。電子線による硬化の場合は、重合開始剤は不要である。重合反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般的には、1〜500mJ/cm2程度である。
[実施例]
実験に用いたプライマー液およびインク液の処方について、説明する。第101液〜第105液は比較例として用いたプライマー液であり、第106液〜第109液は、本発明に係る実施例としてのプライマー液である。
<第101液>(非エマルジョン型の重合性プライマー液)
ジプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック社) 96質量%
重合開始剤:IRGACURE1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第102液>(非エマルジョン型の重合性プライマー液+無機フィラー)
無機フィラー:コロイダルシリカ(日本エアロジル社、R711) 2質量%
ジプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・サイテック社) 94質量%
重合開始剤:DAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第103液>(スチレンアクリルラテックス)
スチレンアクリルラテックス水溶液(固形分47質量%、BASFジャパン、ジョンクリル775) 99質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第104液>(スチレンアクリルラテックス+無機フィラー)
無機フィラー:コロイダルシリカ(扶桑化学工業、PL-7(固形分20質量%)) 5質量%
スチレンアクリルラテックス水溶液(固形分47質量%、BASFジャパン、ジョンクリル775) 94質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第105液>(エマルジョン型の重合性プライマー液)
ウレタンアクリルディスパージョン(固形分40質量%、ダイセル・サイテック社、UCECOAT7772) 95質量%
重合開始剤:DAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第106液>(エマルジョン型の重合性プライマー液+無機フィラー)
無機フィラー:コロイダルシリカ(扶桑化学工業、PL-7(固形分20質量%)、2次粒子径120nm) 5質量%
ウレタンアクリルディスパージョン(固形分40質量%、ダイセル・サイテック社、UCECOAT7772) 91質量%
重合開始剤:DAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第107液>(エマルジョン型の重合性プライマー液+無機フィラー)
無機フィラー:軽質炭酸カルシウム(白石工業、Brriant-15) 5質量%
ウレタンアクリルディスパージョン(固形分40質量%、ダイセル・サイテック社、UCECOAT7772) 91質量%
重合開始剤:DAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第108液>(エマルジョン型の重合性プライマー液+樹脂フィラー)
有機フィラー:架橋ポリメタクリル酸メチル粒子(根上工業社、MD-240) 5質量%
ウレタンアクリルディスパージョン(固形分40質量%、ダイセル・サイテック社、UCECOAT7772) 91質量%
重合開始剤:DAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
<第109液>(エマルジョン型の重合性プライマー液+無機フィラー)
無機フィラー:コロイダルシリカ(扶桑化学工業、PL−20(固形分20質量%)、2次粒子径370nm) 5質量%
ウレタンアクリルディスパージョン(固形分40質量%、ダイセル・サイテック社、UCECOAT7772) 91質量%
重合開始剤:DAROCUR1173(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社) 3質量%
界面活性剤:BYK-333(ビックケミー社) 1質量%
なお、スチレンアクリルラテックス水溶液における「固形分××質量%」はそのラテックス水溶液全体を100質量%としたポリマー固形分の割合を示し、ウレタンアクリルディスパージョンにおける「固形分××質量%」はそのディスパージョン(エマルジョン)全体を100質量%とした重合性液滴成分の割合を示し、コロイダルシリカにおける「固形分××質量%」はディスパージョン(エマルジョン)全体を100質量%としたフィラー固形分の割合を示す。
<インク液:第201液>
重合性化合物:DPCA60(日本化薬株式会社製) 2.6質量%
色材:銅フタロシアニン顔料PB−15:3(IRGALITE BLUE GLO:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 5.0質量%
重合開始剤:Irg1870(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製) 6.0質量%
重合性化合物:1,6ヘキサンジオールアクリレート(HDDA:ダイセル・ユーピーシー製) 残部
上記を、ビーズミルで分散した。
[実験方法]
白色塗工された白板紙(北越板紙製、マリコート350GSM)の白色塗工層へ向けて、まず、プライマー液をグラビアコーターで塗布し、次に、インク液を液体吐出ヘッド(「打滴ヘッド」ともいう)から吐出することにより、連続したラインを白色塗工層上に印字して、そのラインを光学顕微鏡で拡大して撮影し、着弾干渉および白色度を評価した。
評価実験機は、後述で詳細を示すが、液体吐出ヘッドは、ピエゾ型で、液滴サイズ2pl、ノズル密度1200dpiのものを用いた。
着弾干渉については、ライン長さ方向に沿って10μm毎に合計1000箇所で、ライン幅を測定し、その平均自乗偏差値(RMS値)を算出し、プライマー液を白色塗工層に付与しない場合(以下「ブランク」と称する)の値を「100」とした相対値(以下「着弾干渉評価値」と称する)を求めた。着弾干渉がある場合には、図2(A)に示すように、ライン幅Lw1〜Lw4にバラツキが生じるので、着弾干渉評価値は大きくなって「100」に近づき、着弾干渉がない場合には、図2(B)に示すように、ライン幅Lw1〜Lw4が等しくなってくるので、着弾干渉評価値は小さくなる。
白色度については、プライマー液を塗布した部分(インクを打滴しない部分)について、JIS−P8123に規定されているハンター白色試験方法で測定し、プライマー液を白色塗工層に付与しない場合(ブランク)の値を「100」とした相対値(以下「白色度評価値」と称する)を求めた。値が「100」に近いほど好ましい。
[評価結果]
前述の実験方法による評価結果を図3に示す。
図3において、プライマー液の処方は、既に説明した通りである。「ブランク」(プライマー液を白色塗工層に付与しない場合)は、評価基準であり、第101液〜第105液は、比較例としてのプライマー液であり、第106液〜第109液は、本発明の実施例におけるプライマー液である。「着弾干渉評価値」および「白色度評価値」の測定方法は、既に説明した通りである。「膜厚換算値」は、白色塗工層上に形成される膜の乾燥時における膜厚の換算値である。例えば、第105液〜第109液では、白色塗工層上の主として重合性液滴およびインク液滴からなる膜のエネルギー線照射後の膜厚であり、白色塗工層上に付与する重合性液滴量およびインク液量と付与面積とに基づいて換算される。
「着弾干渉評価値」については、高画質化の観点から、「20」より小さい場合を「〇」、「20」以上を「×」と評価した。
「白色度評価値」については、高画質化の観点から、「90」を超える場合を「〇」、「90」乃至「80」である場合を「△」、「80」未満を「×」と評価した。
第101液(非エマルジョン型の重合性プライマー液)を用いた場合には、プライマー液中の重合性化合物が、白板紙の塗工層に存在する細孔の中まで浸透してしまうことにより、白板紙の塗工層が透明化して、付与膜厚2μm、4μmともに「白色度評価値」は「50」に低下した。
第101液(非エマルジョン型の重合性プライマー液)に無機フィラーを導入した第102液を用いた場合であっても、プライマー液中の重合性化合物が白板紙の塗工層に存在する細孔の中まで浸透してしまうことを防止することができないので、白板紙の塗工層が透明化して、「白色度評価値」は無機フィラーを導入しない第101液と同じように低下した。
また、プライマー液が細孔に浸透してしまうので、プライマー液からなる実際の液体膜の膜圧は換算値よりも薄くなってしまう。すなわち、インク打滴直前の液体膜の実際の厚さが薄くなるので、膜圧換算値が2μmの場合には、着弾干渉が生じた。なお、膜圧換算値が4μmの場合であっても、プライマー液が細孔に浸透することより、実際のインク打滴時には、着弾干渉が生じてしまう。
第103液(スチレンアクリルラテックス)および第104液(スチレンアクリルラテックス+無機フィラー)を用いた場合には、略固形の皮膜(フイルム)上にインク液が打滴されることになり、液体膜に対してインク液滴が打滴されるわけではないので、インク液滴の着弾干渉を防止できない。
なお、「ラテックス」は、平均分子量が1万を超えるポリマー粒子からなり、融着により略固形の皮膜が形成される。
第105液(エマルジョン型の重合性プライマー液)を用いた場合には、図9(C)に示したように、プライマー液91中の重合性液滴82が塗工層70の細孔71の中まで浸透してしまうことにより、塗工層70が透明化してしまう。膜厚4μmでは「白色度評価値」が「65」に低下し、膜厚2μmでも「白色度評価値」が「70」に低下した。
また、重合性液滴が細孔に浸透してしまうので、重合性液滴からなる実際の液体膜の膜厚は換算値よりも薄くなってしまう。すなわち、インク打滴直前の液体膜の実際の厚さが薄くなるので、膜圧換算値が2μmの場合には、着弾干渉が生じた。なお、膜圧換算値が4μmの場合であっても、重合性液滴が細孔に浸透することより、実際のインク打滴時には、着弾干渉が生じてしまう。
第105液(エマルジョン型の重合性プライマー液)にフィラーを導入した第106液、第107液、第108液および第109液では、フィラーと重合性液滴との相乗効果で、着弾干渉を防止しつつ、白板紙の塗工層の透明化を防止し、もって白色化の低下を防止できた。具体的には、膜厚が4μmであっても、それよりも更に薄い2μmであっても、「着弾干渉評価値」は「20」よりも小さく良好であり、且つ、「白色度評価値」は「90」以上であり、両評価値とも良好であった。
なお、第109液は、第106液と比較して、フィラー(コロイダルシリカ)の粒径が大きいが、フィラー全体の量(質量%)は同じにしてある。フィラーの全体量が大き過ぎると、塗工層上に形成する液体膜の膜厚が大きくなり過ぎたり、粘度が高くなり過ぎたりする。すなわち、第109液は、第106液と比較して、フィラーの個数が少ない。第109液が、第106液と比較して、「着弾干渉評価値」の数値が若干高く、「白色度評価値」の数値が若干低いのは、重合性液滴が塗工層に若干浸透したと考えられる。
以上の評価結果によれば、第102液のように非エマルジョンの紫外線重合性プライマー液に単にフィラーを混ぜただけではプライマー液中の重合性化合物が細孔に浸透することを塞ぎきることはできず、同様に、第105液のようにエマルジョン型のプライマー液を用いただけでもプライマー液中の重合性液滴が細孔に浸透することを塞ぎきることはできないが、エマルジョン型のプライマー液にフィラーを導入して初めて細孔への重合性材料の浸透を防ぐことができた(第106液〜第109液)。
インク液(第201液)を、富士フイルムセリコール社製UV硬化インクタイプEI(シアン)に変えて実験しても同様の効果を得た。
[画像形成装置の全体構成]
図4は、画像形成装置10の一例の全体構成図である。この画像形成装置10は、第1液体(プライマー液)および第2液体(インク)の少なくとも2種類の液体を、所定の記録媒体16に付与して、所望の画像を記録媒体16に形成するものである。
図4において、画像形成装置10は、第1液体をグラビアコーターで塗布により記録媒体16に付与する第1液体付与部11と、第2液体を打滴ヘッド(「液体吐出ヘッド」ともいう)で打滴により記録媒体16に付与する第2液体付与部12を備えている。
また、画像形成装置10は、第1液体付与部12に供給する第1液体を貯蔵しておく第1液体貯蔵/装填部13と、第2液体付与部12に供給する第2液体を貯蔵しておく第2液体貯蔵/装填部14と、紙などの記録媒体16を供給する給紙部18と、記録媒体16のカールを除去するデカール処理部20と、第1液体付与部11および第2液体付与部12の液体付与面に対向して配置され、記録媒体16の平面性を保持しながら記録媒体16を搬送するベルト搬送部22と、第2液体付与部12によるインクの打滴結果(インク液滴の着弾状態である)としての画像を読み取る画像検出部24と、記録済みの記録媒体を外部に排出する排紙部26を備えている。
図4においては、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)を給紙するものを示しているが、予めカットされているカット紙を給紙するものを用いてもよい。ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッタ28が設けられる。ところで、給紙部18から送り出される記録媒体16は一般に巻き癖が残りカールする。このカールを除去するために、デカール処理部20において巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録媒体16に熱を与える。デカール処理後、カット済の記録媒体16は、ベルト搬送部22へと送られる。
ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、第1液体付与部11および第2液体付与部12の液体付与面並びに画像検出部24のセンサ面に対向する部分が平面(フラット面)をなすように構成されている。ベルト33は、記録媒体16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(図示省略)が形成されている。ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において第1液体付与部11および第2液体付与部12の液体付与面並びに画像検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト上の記録媒体16が吸着保持される。ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図示省略)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図4において、反時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録媒体16は、図4の右から左へと搬送される。なお、縁無しプリント等を形成するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(記録領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。
以上、第1液体の付与をグラビアコーターで塗布により行う場合を例に説明したが、このような場合に本発明は限定されない。以下では、第1液体の付与を打滴ヘッドで打滴により行う場合を例に説明する。
画像形成装置10の第1液体付与部11、第2液体付与部12およびその周辺部分を、図5の平面図に示す。図5において、第1液体付与部11は、シングルパスで記録媒体16に第1液体を打滴する打滴ヘッド11Pによって構成されている。第2液体付与部12は、シングルパスで記録媒体16に第2液体を打滴する打滴ヘッド12Y、12C、12M、12Kによって構成されている。詳細には、記録媒体16の記録可能幅の全幅に対応した長さのライン型ヘッドを媒体搬送方向(図5中に矢印Sで示す副走査方向である)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。
本例の各打滴ヘッド11P、12Y、12C、12M、12Kは、本画像形成装置10が対象とする最大サイズの記録媒体16の最大記録幅(縁なし印刷を行う場合には記録媒体16の一辺の長さ)よりも大きな幅にわたって複数のノズル(液体吐出口)が配列されているフルラインヘッドである。
また、媒体搬送方向Sに沿って、上流側(図5の右側)から、第1液体(プライマー液:P)、第2液体としてのイエロ色のインク(Y)、シアン色のインク(C)、マゼンタ色のインク(M)および黒色のインク(K)の順に、各液体に対応した打滴ヘッド11P、12Y、12C、12M、12Kが配置されており、記録媒体16上にカラーの画像を形成し得る。
具体的には、まず、第1液体用の打滴ヘッド11Pから記録媒体16に向けて第1液体が打滴されることによって記録媒体16上に第1液体が付与され、この第1液体が液体膜として存在する領域に、次に、第2液体用の打滴ヘッド12Y、12M、12C、12Kから記録媒体16に向けて第2液体(インク)が打滴される。ここで、インク液滴を、記録媒体16上の第1液体からなる液体膜の内部に潜り込ませることにより、新たな気液界面を生じさせず、着弾干渉が回避される。
また、フルライン型の打滴ヘッドからなる液体付与部11、12によれば、媒体搬送方向(副走査方向)について記録媒体16と液体付与部11、12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで、記録媒体16の全面に画像を記録することができる。これにより、媒体搬送方向と直交する方向(主走査方向)に打滴ヘッドが往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速プリントが可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、主走査方向及び副走査方向とは、次に言うような意味で用いている。すなわち、記録媒体の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時、(1)全ノズルを同時に駆動するか、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動するか、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動するか、等のいずれかのノズルの駆動が行われ、記録媒体の幅方向(記録媒体の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)のプリントをするようなノズルの駆動を主走査と定義する。そして、この主走査によって記録される1ライン(帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向という。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)のプリントを繰り返し行うことを副走査と定義する。そして、副走査を行う方向を副走査方向という。結局、記録媒体の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
なお、本実施形態では、YMCKの標準色(4色)の構成を例示したが、インクの色数や色の組み合わせについては本実施形態に示す例には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクや、背景色用インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する打滴ヘッドや、白色インクを吐出する打滴ヘッドを追加する構成も可能である。
UV光源27は、記録媒体16に向けて紫外線を照射するものである。紫外線ランプとして、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、紫外LED、LDが使用できる。ラジカル重合性モノマーを使用する場合には、硬化プロセス部の酸素を遮断するため、窒素ブランケットを装備することもできる。
図4に示す第1液体貯蔵/装填部13は、第1液体を貯蔵するタンクを有し、図示を省略した管路を介して、第1液体付与部11に連通している。第2液体貯蔵/装填部14は、YMCK各色別にインクを貯蔵するインク用のタンクを有し、図示を省略した管路を介して、第2液体付与部12に連通している。
画像検出部24は、第2液体付与部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
画像が形成されたプリント物としての記録媒体16は、排紙部26から排出される。この画像形成装置10では、本画像のプリント物と、テストプリントのプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(図示省略)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテストプリントとを同時に並列に形成する場合は、カッタ(第2のカッタ)48によってテストプリントの部分を切り離す。カッタ48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテストプリントを行った場合に、本画像とテストプリント部を切断するものである。また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダ別に画像を集積するソータが設けられている。
[打滴ヘッドの構造]
図6(a)は、図5に示した打滴ヘッド11P、12Y、12C、12M、12Kを代表する打滴ヘッドに符号50を付して、その打滴ヘッド50の基本的な全体構造の一例を示す平面透視図である。
図6(a)に一例として示す打滴ヘッド50は、いわゆるフルライン型のヘッドであり、記録媒体16の搬送方向(図中に矢印Sで示す副走査方向)と直交する方向(図中に矢印Mで示す主走査方向)において、記録媒体16の幅Wm(本画像形成装置10における最大記録幅である)に対応する長さにわたり、記録媒体16に向けて液体を吐出する多数のノズル51(液体吐出口)を2次元的に配列させた構造を有している。
打滴ヘッド50は、ノズル51、ノズル51に連通する圧力室52、および、液体供給口53を含んでなる複数の圧力室ユニット54が、主走査方向Mおよび主走査方向Mに対して所定の鋭角θ(0度<θ<90度)をなす斜め方向の2方向に沿って配列されている。なお、図6(a)では、図示の便宜上、一部の圧力室ユニット54のみ描いている。
ノズル51は、具体的には、主走査方向Mに対して所定の鋭角θをなす斜め方向において、一定のピッチdで配列されており、これにより、主走査方向Mに沿った一直線上に「d×cosθ」の間隔で配列されたものと等価に取り扱うことができる。
打滴ヘッド50を構成する一吐出素子としての前述の圧力室ユニット54について、図6(a)中のb−b線に沿った断面図を図6(b)に示す。
図6(b)に示すように、各圧力室52は液体供給口53を介して共通液室55と連通している。共通液室55は図示を省略した液体供給源たるタンクと連通しており、そのタンクから供給される液体が共通液室55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成する振動板56の上には圧電体58aが配置され、この圧電体58aの上には個別電極57が配置されている。振動板56は、接地されており、共通電極として機能する。これらの振動板56、個別電極57および圧電体58aによって、液体吐出力を発生する手段としての圧電アクチュエータ58が構成されている。
圧電アクチュエータ58の個別電極57に所定の駆動電圧が印加されると、圧電体58aが変形して圧力室52の容積が変化し、これに伴う圧力室52内の圧力の変化によって、ノズル51から液体が吐出される。液体吐出後、圧力室52の容積が元に戻ると共通液室55から液体供給口53を通って新しい液体が圧力室52に供給される。
なお、図6(a)には、記録媒体16に高解像度の画像を高速で形成し得る構造として、複数のノズル51が2次元配列されている場合を例に示したが、本発明における打滴ヘッドは、複数のノズル51が2次元配列された構造に特に限定されるものではなく、複数のノズル51が1次元配列された構造であってもよい。また、打滴ヘッドを構成する吐出素子として図6(b)に示した圧力室ユニット54は、一例であって、このような場合に特に限定されない。例えば、圧力室52よりも下(すなわち圧力室52よりも吐出面510側)に共通液室55を配置する代りに、圧力室52よりも上(すなわち吐出面510とは反対側)に共通液室55を配置してもよい。また、例えば、圧電体58aを用いる代りに、発熱体を用いて、液体吐出力を発生するようにしてもよい。
なお、本発明においては、第1液体の記録媒体上への付与手段として、ノズルからの第1液体の吐出によるもののほかに、塗布等、他の手段を用いてもよい。
前記塗布に用いる装置としては特に制限はなく、公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。
[液体供給系の説明]
図7は、画像形成装置10における液体供給系統の構成を示した概要図である。
液体タンク60は、打滴ヘッド50に液体を供給するための基タンクである。液体タンク60と打滴ヘッド50を繋ぐ管路の途中には、液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を送液する液体供給ポンプ62が設けられている。
また、画像形成装置10には、長期の吐出休止期間におけるノズル51のメニスカスの乾燥を防止又はメニスカス近傍の粘度の上昇を防止する手段としてのキャップ64と、吐出面50aを清掃する手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらのキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、図示を省略した移動機構によって打滴ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から打滴ヘッド50の下方のメンテナンス位置に移動されるようになっている。
また、キャップ64は、図示しない昇降機構によって打滴ヘッド50に対して相対的に昇降される。昇降機構は、キャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、打滴ヘッド50に密着させることにより、吐出面50aの少なくともノズル領域をキャップ64で覆うようになっている。
また、好ましくは、キャップ64の内側が仕切壁によってノズル列に対応した複数のエリアに分割されており、これら仕切られた各エリアをセレクタ等によって選択的に吸引できる構成とする。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示を省略したクリーニングブレード用の移動機構により打滴ヘッド50の吐出面50aにおいて摺動可能である。吐出面50aに液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66を吐出面50aにおいて摺動させることで吐出面50aを拭き取り、吐出面50aを清浄するようになっている。
吸引ポンプ67は、打滴ヘッド50の吐出面50aをキャップ64が覆った状態で、その打滴ヘッド50のノズル51から液体を吸引し、吸引した液体を回収タンク68へ送液する。
このような吸引動作は、画像形成装置10に液体タンク60が装填されて液体タンク60から打滴ヘッド50へ液体を充填するとき(初期充填時)のほか、長時間停止して粘度が上昇した液体を除去するとき(長時間停止の使用開始時)にも行われる。
ここで、ノズル51からの吐出について整理しておくと、第1に、紙などの記録媒体に画像形成するために記録媒体に向けて行う通常の吐出があり、第2に、キャップ64を液体受けとしてそのキャップ64に向けて行うパージ(空吐出ともいう)がある。
また、打滴ヘッド50のノズル51や圧力室52内に気泡が混入したり、ノズル51内の粘度上昇があるレベルを超えたりすると、前述の空吐出では液体をノズル51から吐出できなくなるので、打滴ヘッド50の吐出面50aにキャップ64を当てて打滴ヘッド50の圧力室52内の気泡が混入した液体又は増粘した液体を吸引ポンプ67で吸引する動作が行われる。
液体の供給、クリーニングに使用する部材は、使用する液体に接液しても侵されない材料が選ばれる。
[制御系の説明]
図8は、画像形成装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。
図8において、画像形成装置10は、主として、液体付与部11、12、画像検出部24、UV光源27、通信インターフェース110、システムコントローラ112、メモリ114、152、搬送用のモータ116、モータドライバ118、ヒータ122、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、給液部142、給液ドライバ144、プリント制御部150、ヘッドドライバ154、および、光源ドライバ156を含んで構成されている。
なお、液体付与部11、12、画像検出部24、および、UV光源27については、それぞれ図4に記載したものと同一であり既に説明したので、ここでは説明を省略する。
通信インターフェース110は、ホストコンピュータ300から送信される画像データを受信する画像データ入力手段である。通信インターフェース110には、USB(Universal Serial Bus)、IEEE1394などの有線、又は、無線のインターフェースを適用することができる。この通信インターフェース110を介して画像形成装置10に入力された画像データは、画像データ記憶用の第1のメモリ114に一旦記憶される。
システムコントローラ112は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、第1のメモリ114に予め記憶された所定のプログラムに従って画像形成装置10の全体を制御する主制御手段である。すなわち、システムコントローラ112は、通信インターフェース110、モータドライバ118、ヒータドライバ124、媒体種別検出部132、インク種別検出部134、プリント制御部150等の各部を制御する。
搬送用のモータ116は、紙などの記録媒体を搬送するためのローラやベルト等に動力を与える。この搬送用モータ116によって、液体付与部11、12と記録媒体とが相対的に移動する。モータドライバ118は、システムコントローラ112からの指示に従って搬送用のモータ116を駆動する回路である。
ヒータ122は、図4の加熱ドラム30その他のヒータ122を駆動する回路である。ヒータドライバ124は、システムコントローラ112からの指示に従ってヒータ122を駆動する回路である。
媒体種別検出部132は、記録媒体の種別を検出するものである。記録媒体の種別の検出態様には各種ある。例えば、図4の給紙部18にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)またはその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
インク種別検出部134は、インクの種別を検出するものである。インクの種別の検出態様には各種ある。例えば、図4の第2液体貯蔵/装填部14にセンサを設けて検出する態様、ユーザの操作により入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力されるようにした態様、ホストコンピュータ300から入力された画像データ(例えば、解像度や色)またはその画像データの付加データを解析することにより自動で検出するようにした態様がある。
給液部142は、図7の液体タンク60から液体付与部11、12へ液体を流動させる管路及び給液ポンプ62などによって構成されている。
給液ドライバ144は、液体付与部11、12に液体が供給されるように、給液部142を構成する給液ポンプ62などを駆動する回路である。
プリント制御部150は、画像形成装置10に入力される画像データに基づいて、液体付与部12を構成する各打滴ヘッド50が記録媒体に向けて吐出(打滴)を行うために必要なデータ(打滴データ)を生成する。すなわち、プリント制御部150は、システムコントローラ112の制御に従い、第1のメモリ114内の画像データから打滴データを生成するための各種の加工、補正などの画像処理を行う画像処理手段として機能し、生成した打滴データをヘッドドライバ154へ供給する。
また、プリント制御部150は、媒体種別検出部132によって検出された媒体種別およびインク種別検出部134によって検出されたインク種別に基づいて、第1の液体によって記録媒体上に形成される液体膜の厚さを決定し、ヘッドドライバ154を用いて、第1の液体の打滴量を制御することにより、液体膜の厚さを切り換える。
プリント制御部150には第2のメモリ152が付随しており、プリント制御部150における画像処理時に打滴データ等が第2のメモリ152に一時的に格納される。
なお、図8において第2のメモリ152はプリント制御部150に付随する態様で示されているが、第1のメモリ114と兼用することも可能である。また、プリント制御部150とシステムコントローラ112とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ154は、プリント制御部150から与えられる打滴データ(実際には第2のメモリ152に記憶された打滴データである)に基づき、液体付与部12を構成する各打滴ヘッド50に対して吐出用駆動信号を出力する。このヘッドドライバ154から出力された吐出用駆動信号が各打滴ヘッド50(具体的には図6(b)に示すアクチュエータ58)に与えられることによって、打滴ヘッド50から記録媒体に向けて液体(液滴)が吐出される。
光源ドライバ156は、プリント制御部150からの指示に従ってUV光源27を駆動する回路である。
本発明は、本明細書において説明した例や図面に図示された例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の設計変更や改良を行ってよいのはもちろんである。
10…画像形成装置、11…第1液体付与部、12…第2液体付与部、50…液体吐出ヘッド、51…ノズル、70…記録媒体(基材)、71…細孔、81…第1液体(プライマー液)、82…重合性液滴、83…フィラー(固体粒子)、84…第1液体の液体溶媒、85…重合性液滴からなる液体膜、86(86a、86b)…インク液滴