以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
なお、以下の実施の形態では、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。
さらに、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示したときおよび原理的に明らかに特定の数に限定されるときを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップなどを含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合を除き、必ずしも必須のものではないことはいうまでもない。
また、その構成要素(ガス、元素、分子、材料等)は、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでない場合を除き、その他の要素を排除するものではない。従って、例えばウエハを処理するガス雰囲気について、エッチャントまたはエッチングガスとして特定のガスの組み合わせに言及して、その他のガスに言及しない場合においても、その他のエッチングガス、アルゴン、ヘリウムなどの希釈ガス、その他の添加、調整用ガスの存在を排除するものではない。
同様に、以下の実施の形態において、構成要素などの形状、位置関係などに言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合を除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
また、本願において半導体集積回路装置というときは、特に単結晶シリコン基板上に作られるものだけでなく、特にそうでない旨が明示された場合を除き、SOI(Silicon On Insulator)基板やTFT(Thin Film Transistor)液晶製造用基板などといった他の基板上に作られるものを含むものとする。また、ウエハとは半導体集積回路装置の製造に用いる単結晶シリコン基板(一般にほぼ円盤形)、SOS基板、ガラス基板その他の絶縁、半絶縁または半導体基板などやそれらを複合した基板をいう。
(実施の形態1)
本発明の実施の形態であるCMOS−LSIの製造方法を図1〜図15を用いて工程順に説明する。
本発明の実施の形態であるCMOS−LSIの製造方法を図1〜図15を用いて工程順に説明する。
まず、図1に示すように、例えば1〜10Ωcm程度の比抵抗を有するp型の単結晶シリコンからなる半導体基板(以下、基板またはウエハという)1に素子分離溝2を形成する。素子分離溝2を形成するには、素子分離領域の基板1をエッチングして溝を形成した後、溝の内部を含む基板1上にCVD法で酸化シリコン膜3を堆積し、続いて溝の外部の酸化シリコン膜3を化学機械的に研磨することによって除去する。
次に、基板1の一部にホウ素をイオン注入し、他の一部にリンをイオン注入することによって、p型ウエル4およびn型ウエル5を形成した後、基板1をスチーム酸化することによって、p型ウエル4およびn型ウエル5のそれぞれの表面にゲート酸化膜6を形成する。
次に、図2に示すように、p型ウエル4およびn型ウエル5のそれぞれの上部にゲート電極7を形成する。ゲート電極7を形成するには、例えばゲート酸化膜6の上部にCVD法で多結晶シリコン膜を堆積した後、p型ウエル4の上部の多結晶シリコン膜にリンをイオン注入し、n型ウエル5の上部の多結晶シリコン膜にホウ素をイオン注入した後、フォトレジスト膜をマスクにしたドライエッチングで多結晶シリコン膜をパターニングする。
次に、p型ウエル4にリンまたはヒ素をイオン注入することによって低不純物濃度のn-型半導体領域8を形成し、n型ウエル5にホウ素をイオン注入することによって低不純物濃度のp-型半導体領域9を形成する。
次に、図3に示すように、基板1上にCVD法で窒化シリコン膜を堆積し、続いてこの窒化シリコン膜を異方的にエッチングすることによって、ゲート電極7の側壁にサイドウォールスペーサ10を形成した後、p型ウエル4にリンまたはヒ素をイオン注入することによって高不純物濃度のn+型半導体領域11(ソース、ドレイン)を形成し、n型ウエル5にホウ素をイオン注入することによって高不純物濃度のp+型半導体領域12(ソース、ドレイン)を形成する。
次に、基板1の表面を洗浄した後、ゲート電極7、n+型半導体領域11(ソース、ドレイン)およびp+型半導体領域12(ソース、ドレイン)のそれぞれの表面にシリサイド層13を形成する。シリサイド層13を形成するには、基板1上にスパッタリング法でCo(コバルト)膜を堆積し、次いで窒素ガス雰囲気中で熱処理を行って基板1およびゲート電極7とCo膜とを反応させた後、未反応のCo膜をウェットエッチングで除去する。ここまでの工程で、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpが完成する。
次に、図4に示すように、基板1上にCVD法で窒化シリコン膜15および酸化シリコン膜16を堆積し、続いてn+型半導体領域11(ソース、ドレイン)およびp+型半導体領域12(ソース、ドレイン)のそれぞれの上部の酸化シリコン膜16および窒化シリコン膜15をドライエッチングしてコンタクトホール17を形成した後、コンタクトホール17の内部にメタルプラグ18を形成する。酸化シリコン膜16をエッチングするときは、下層の窒化シリコン膜15のエッチング速度を小さくするために、CF4、CHF3(炭素数が2以下の低炭素数の非環状フルオロカーボン、またはフッ素系エッチャント)、C4F8(炭素数が3以上の高炭素数の環状フルオロカーボン、環状フッ素系エッチャント、非環状フルオロカーボン、または鎖状フルオロカーボンフッ素系エッチャントなども使用可能である)などのハイドロフルオロカーボン系ガスまたはフルオロカーボン系ガスを使用する。また、窒化シリコン膜15をエッチングするときは、ハイドロフルオロカーボン系ガス(CHF3やCH2F2など)に酸素とAr(希釈ガス)とを加えた混合ガスを使用する。メタルプラグ18を形成するには、コンタクトホール17の内部を含む酸化シリコン膜16上にCVD法でTiN(窒化チタン)膜とW(タングステン)膜とを堆積し、続いて酸化シリコン膜16の上部の不要なTiN膜およびW膜を化学機械研磨(CMP)法またはエッチバック法によって除去する。なお、酸化シリコン膜16は、モノシラン(SiH4)をソースガスに用いた通常のCVD法で形成される酸化シリコン膜の他、BPSG(Boron-doped Phospho Silicate Glass)膜、あるいはスピン塗布法によって形成されるSOG(Spin On Glass)膜などで構成してもよい。
次に、図5に示すように、酸化シリコン膜16の上部に有機絶縁膜19および酸化シリコン14を堆積した後、フォトレジスト膜をマスクにして酸化シリコン膜14および有機絶縁膜19をドライエッチングすることにより、コンタクトホール17の上部に配線溝20を形成する。
有機絶縁膜19は、配線容量を低減するために、酸化シリコン(比誘電率=4.7)よりも比誘電率が小さい絶縁材料で構成する。このような低誘電率(Low−k)の絶縁材料としては、例えば「SiLK」(米国The Dow Chemical社製芳香族ポリマー:比誘電率=2.7)、あるいは「FLARE」(米国Honeywell Electronic Materials社製ポリアリルエーテル(PAE):比誘電率=2.8)など、スピン塗布法で成膜する有機塗布膜(完全有機型絶縁膜)が例示される。また、酸化シリコン14は、エッチングストッパ層として機能する。
次に、図6に示すように、配線溝20の内部に第1層目のCu配線21を形成する。Cu配線21は、バリアメタル膜とCu膜との積層膜で構成し、次のような方法で形成する。まず、配線溝20の内部を含む酸化シリコン膜14上にバリアメタル膜とCu膜とを堆積し、続いて非酸化性雰囲気(例えば水素雰囲気)中で熱処理(リフロー)を施してCu膜を配線溝20の内部に隙間なく埋め込んだ後、配線溝20の外部の不要なCu膜とバリアメタル膜とを化学機械研磨法で除去する。Cu膜とバリアメタル膜とを研磨するには、例えばアルミナなどの砥粒と過酸化水素水または硝酸第二鉄水溶液などの酸化剤とを主成分とし、これらを水に分散または溶解させた研磨スラリを使用する。
上記バリアメタル膜は、Cu配線21中のCuが有機絶縁膜19中に拡散するのを防止する機能、Cu配線21と有機絶縁膜19との接着性を向上させる機能および上記Cu膜をリフローする際の濡れ性を向上させる機能を有している。このような機能を持ったバリアメタル膜としては、例えばスパッタリング法で堆積したTiN膜、WN(窒化タングステン)膜、TaN(窒化タンタル)などの高融点金属窒化物からなる膜や、これらの積層膜などが例示される。
上記Cu膜は、スパッタリング法、CVD法、メッキ法(電解メッキ法または無電解メッキ法)のいずれかの方法で形成する。メッキ法でCu膜を形成する場合は、あらかじめバリアメタル膜の表面にスパッタリング法などを用いて薄いCu膜からなるシード層を形成し、次に、このシード層の表面にCu膜を成長させる。また、スパッタリング法でCu膜を形成する場合は、ロングスロースパッタリング法やコリメートスパッタリング法のような指向性の高いスパッタリング法を用いることが好ましい。Cu膜は、単体のCuの他、Cuを主成分として含むCu合金で構成してもよい。
次に、図7に示すように、Cu配線21の上部に炭化シリコン膜22、有機絶縁膜23、酸化シリコン膜24、有機絶縁膜25、酸化シリコン膜26および炭化シリコン膜27を順次堆積する。酸化シリコン膜24、26は、CVD法で堆積し、有機絶縁膜23、25は、配線容量を低減するために、前述した「SiLK」や「FLARE」のような、酸化シリコンよりも比誘電率が小さい絶縁材料をスピン塗布法で堆積する。炭化シリコン膜22、27は、例えば「BLOk」(米国Applied Materials社製炭化シリコン:比誘電率=4.3)を使用する。「BLOk」は、トリメチルエトキシシランと窒素の混合ガスをソースガスに用いたプラズマCVD法で堆積する。
Cu配線21と有機絶縁膜23との間に介在する炭化シリコン膜22は、Cu配線21中のCuが有機絶縁膜23中に拡散するのを防止する拡散バリア層として機能する。Cuの拡散を防ぐバリア層としては、窒化シリコン膜を使用することもできるが、窒化シリコン(比誘電率=7)に比べて比誘電率が小さい炭化シリコンを使用することにより、配線容量を低減することができる。酸化シリコン膜24、26は、有機絶縁膜23、25に配線溝を形成する際のエッチングストッパ層として機能する。また、最上層の炭化シリコン膜27は、酸化シリコン膜24をエッチングする際に上層の酸化シリコン膜26がエッチングされるのを防ぐハードマスクとして機能する。なお、上記エッチングストッパ層は、酸化シリコン膜24、26に代えて、後述するシロキサン(SiO)系の絶縁膜、あるいは炭化シリコン膜を使用することもできる。
次に、上記炭化シリコン膜27、酸化シリコン膜26、有機絶縁膜25、酸化シリコン膜24、有機絶縁膜23および炭化シリコン膜22からなる積層膜をドライエッチングして配線溝を形成し、続いてこの配線溝の内部に、第1層目のCu配線21と電気的に接続される第2層目のCu配線を形成する。
本発明者らは、上記積層膜をドライエッチングするに際して、次のような実験を行った。
まず、酸化シリコン膜のエッチングガスとしてC4F8とArと酸素の混合ガス、有機絶縁膜のエッチングガスとして窒素と水素を含む混合ガス、炭化シリコン膜のエッチングガスとしてCF4、CHF3、C4F8などのハイドロフルオロカーボン系ガス(またはフルオロカーボン系ガス)とArと酸素の混合ガスをそれぞれ用い、上記積層膜をドライエッチングしてCu配線21の上部に配線溝を形成することを試みた。
ところが、上記ハイドロフルオロカーボン系ガス(またはフルオロカーボン系ガス)とArと酸素の混合ガスを用いて最下層の炭化シリコン膜22をドライエッチングした際、配線溝の底部に露出したCu配線21の表面に絶縁性の反応物が付着すると共に、配線溝の側壁に露出した炭化シリコン膜22や有機絶縁膜23、25がサイドエッチングされるという不良が発生した。
Cu配線21の表面に付着した上記反応物は、Cuの酸化物が主成分であったことから、この反応物の生成は、エッチングガス中に含まれる酸素によってCu配線21の表面が酸化されたことが主な原因であると予測された。そこで次に、上記混合ガスから酸素を取り除いたガス、すなわちハイドロフルオロカーボン系ガス(またはフルオロカーボン系ガス)とArの混合ガスを用いて炭化シリコン膜22をドライエッチングしたところ、Cu配線21の酸化は防止できたが、配線溝の底部に露出したCu配線21の表面や配線溝の側壁にフルオロカーボン系の有機物を主成分とする堆積物が多量に付着した。
次に、本発明者らは、上記実験結果に基づいて、炭化シリコン膜のエッチングに最適なガス種の検討を行った。
Cu配線の表面を覆う炭化シリコン膜をドライエッチングする際に要求される条件としては、
(a)配線溝の側壁を異方的にエッチングできること、すなわち配線溝の側壁が垂直にエッチングされること、および、
(b)配線溝の底部に露出するCu配線の表面に堆積物や反応物が生じ難いことが挙げられる。
前述した実験から、Cu配線の表面に反応物が生じるのを防ぐためには、実質的に酸素を含まないエッチングガスを選択することが要求される。酸素を含んだエッチングガスは、Cu配線の表面を酸化して絶縁性の反応物を生じ、配線溝の内部に形成されるCu配線と下層のCu配線との接続不良を引き起こす。
また、配線溝の側壁を異方的にエッチングしたり、Cu配線の表面に堆積物が付着しないようにするためには、配線溝の側壁に堆積物を生成するガス種と、この側壁堆積物をエッチングするガス種とを共に含んだエッチングガスを選択することが要求される。すなわち、エッチングの過程で配線溝の側壁に堆積物が生成しない場合は、側壁に露出した有機絶縁膜や炭化シリコン膜がガスに曝されてサイドエッチングされるため、側壁の加工形状が垂直にならない。他方、側壁に堆積物が生成しても、この堆積物をエッチングするガスが存在しない場合は、エッチングの進行につれて堆積物の膜厚が厚くなるために、側壁の加工形状がテーパ状になったり、Cu配線の表面に堆積物が過剰に堆積したりする。
本発明者らは、多数のガス種について、その分解によって生じるイオンやラジカルの吸着特性を密度汎関数理論に基づく分子軌道計算によって算出した結果、SF6、HCl、HBr、Cl2、ClF3、CF4のうちの少なくとも一種からなる第1エッチングガスと、N2とH2の混合ガス、NH3、N2H4のうちの少なくとも一種からなる第2エッチングガスの混合ガスが、上記した条件(a)、(b)を満たすエッチングガスとして最適であるという結論を得た。
上記第1エッチングガスは、いずれも分子中にハロゲン(F、Cl、Br)を含んだガスである。このことから、これらのガスの分解によって生じるハロゲンイオンやハロゲンラジカルが炭化シリコン分子中のシリコンと結合して蒸気圧の低い化合物を生成したり、配線溝の側壁に付着する堆積物をエッチングしたりするものと想定される。一方、第2エッチングガスは、いずれも分子中に窒素と水素を含んでいることが特徴である。このことから、これらのガスの分解によって生じるイオンやラジカルが炭化シリコン分子中の炭素と結合して炭素、窒素、水素を含んだ有機系の化合物を生成し、これが配線溝の側壁に堆積物として付着するものと推定される。また、上記第1エッチングガスと第2エッチングガスの混合ガスは、酸素を含んでいないことから、Cu配線の表面に酸化物が形成される虞れもない。さらに、フルオロカーボンポリマーを生成するCF4、CHF3、C4F8などのハイドロフルオロカーボン系ガスやフルオロカーボン系ガスを含んでいないことから、配線溝の側壁やCu配線の表面に過剰の堆積物が形成される虞れもない。
上記第1エッチングガスのうち、SF6とCF4は、最も毒性が少ないので扱いが容易であるが、CF4は炭素を含んでいるので堆積物が生じやすい。従って、第1エッチングガスの中では、SF6が最も扱いやすい。HCl、HBr、Cl2、ClF3は、この順で毒性が弱くなる。一方、第2エッチングガスのうち、NH3はN2H4よりも毒性が弱く、扱いやすい。また、N2とH2の混合ガスは毒性はないが、H2に爆発性がある。従って、第2エッチングガスの中では、NH3が最も扱いやすい。以上のことから、Cu配線の表面を覆う炭化シリコン膜をドライエッチングする際に用いるガスとしては、SF6とNH3の混合ガスが最も取扱い易いといえる。
炭化シリコン膜をドライエッチングする際に用いるガスとしては、上記第1エッチングガスと第2エッチングガスの混合ガスに、前記条件(a)、(b)が満たされる範囲内で第3のガスを添加したものも含まれる。例えば上記第1エッチングガスと第2エッチングガスの混合ガスに、その濃度や流量などを調整する目的でArなどの不活性ガスを添加することも可能である。但し、この場合は、不活性ガスの添加量が増加するにつれてエッチング速度が低下する。また、第1エッチングガスと第2エッチングガスの混合ガスに水を添加すると、酸化シリコン膜に対する炭化シリコン膜のエッチング選択比が向上する効果がある。但し、この場合は、水分子に含まれる酸素がCu配線の表面を酸化する虞れがあるため、水の添加量は、Cu配線の表面を実質的に酸化しない程度の量とすることが好ましい。さらに、第2エッチングガスとしてNH3またはN2H4を使用する場合は、水素または窒素を添加することによって、NとHの流量比を微調整することも可能である。
次に、前記炭化シリコン膜27、酸化シリコン膜26、有機絶縁膜25、酸化シリコン膜24、有機絶縁膜23および炭化シリコン膜22からなる積層膜をドライエッチングして配線溝を形成する方法の具体例を説明する。
図8は、配線溝の形成に用いるドライエッチング装置100を示す概略図である。
高周波電源101から生成される300MHz〜900MHzの高周波は、アンテナ(対向電極)102を通じて処理室104内に導入される。この高周波は、アンテナ102とその近傍のアンテナアース103との間で共鳴し、効率よく処理室104内に伝播される。この高周波は、処理室104の周囲に配置されたソレノイドコイル105が生成するECR(Electron Cyclotron Resonance)またはそれ以上の軸方向磁界と相互作用し、高密度(1×1017/m3以上)のプラズマを0.3Pa程度の低圧力領域で生成する。
処理室104の中央に設置されたステージ106の上面には、図示しない静電チャック機構によってウエハ(基板)1が吸着、固定される。ステージ106の上面に固定されたウエハ1とアンテナ102との間隔は、20mm〜150mmの範囲内で任意に設定される。ステージ106には、第2の高周波電源107から生成される400kHz〜13.56MHzの高周波が印加され、プラズマの生成とは独立にウエハ1へのイオン入射エネルギーが制御される。エッチングガスは、ガス流量コントローラ108で流量が最適化された後、ガス導入口109を通じて処理室104内に導入され、前記プラズマによって分解される。また、排ガスは、排気ポンプ110によって処理室104の外部に排気される。処理室104の内部の圧力は、排気系に設置された調整バルブ111の開閉によって調整される。処理室104の内壁、ステージ106、ガス導入口109など、プラズマと接する各部の温度は、図示しない温調器によって制御される。
上記エッチング装置を用いて配線溝を形成するには、まず図9に示すように、フォトレジスト膜28をマスクに用いたドライエッチングで配線溝形成領域の炭化シリコン膜27を除去する。このとき、エッチングガスとしてSF6とNH3の混合ガスを用いることにより、炭化シリコン膜27が異方的にエッチングされると共に、下地の酸化シリコン膜26でエッチングが停止される。
次に、フォトレジスト膜28を除去した後、図10に示すように、フォトレジスト膜29をマスクに用いたドライエッチングで配線溝形成領域の一部の酸化シリコン膜26を除去する。このとき、エッチングガスとしてC4F8とArと酸素の混合ガスを用いることにより、酸化シリコン膜26が異方的にエッチングされると共に、下地の有機絶縁膜25でエッチングが停止される。
次に、図11に示すように、上記のエッチングで露出した有機絶縁膜25とフォトレジスト膜29とを同時にドライエッチングする。このとき、エッチングガスとしてNH3、N2H4またはN2とH2の混合ガスなど、窒素と水素を含んだガスを用いることにより、有機絶縁膜25が異方的にエッチングされると共に、有機絶縁膜25の下地の酸化シリコン膜24、およびフォトレジスト膜29の下地の炭化シリコン膜27、酸化シリコン膜26でエッチングが停止される。
次に、図12に示すように、上記のエッチングで露出した酸化シリコン膜24、26をドライエッチングする。このとき、エッチングガスとしてC4F8とArと酸素の混合ガスを用いることにより、酸化シリコン膜24、26が異方的にエッチングされると共に、有機絶縁膜23および炭化シリコン膜27でエッチングが停止される。
次に、図13に示すように、上記のエッチングで露出した有機絶縁膜25、23をドライエッチングする。このとき、エッチングガスとしてNH3、N2H4またはN2とH2の混合ガスなど、窒素と水素を含んだガスを用いることにより、有機絶縁膜25、23が異方的にエッチングされると共に、有機絶縁膜25の下地の酸化シリコン膜24、および有機絶縁膜23の下地の炭化シリコン膜22でエッチングが停止される。
次に、図14に示すように、上記のエッチングで露出した炭化シリコン膜22をドライエッチングしてCu配線21の一部を露出させることにより、Cu配線21の上部に配線溝30を形成する。また、最上層の炭化シリコン膜27を同時にドライエッチングして下層の酸化シリコン膜26を露出させる。
このとき、炭化シリコン膜22、27のドライエッチングに用いるエッチングガスは、前述したSF6とNH3の混合ガスであり、エッチング条件は、一例として、ガス圧力=4Pa、流量比=SF6/NH3:25/25(ml/分)、対向電極(102)に印加する高周波パワー=600W、ステージ(106)に印加する高周波パワー=200W、ステージ温度=30℃である。
上記の混合ガスを用いて炭化シリコン膜22、27をドライエッチングすることにより、配線溝30の側壁が垂直に加工されると共に、有機絶縁膜23および炭化シリコン膜27でエッチングが停止され、しかも配線溝30の底部に露出したCu配線21の表面に堆積物や反応物が付着する不具合も抑制された。
このように、炭化シリコン膜27、酸化シリコン膜26、有機絶縁膜25、酸化シリコン膜24、有機絶縁膜23および炭化シリコン膜22からなる積層膜をドライエッチングしてCu配線21の上部に配線溝30を形成する際、前述した第1エッチングガスと第2エッチングガスの混合ガスを使って炭化シリコン膜22、27をエッチングすることにより、配線溝30の側壁を異方的にエッチングできると共に、配線溝30の底部に露出するCu配線21の表面に堆積物や反応物が生じる不具合を抑制することができる。
なお、配線溝30の形成に使用するエッチング装置は、前記図8に示したドライエッチング装置100以外のもの、例えばマグネトロンから発振される2.45GHzのマイクロ波を利用したマイクロ波プラズマエッチング装置、高周波誘導を利用したTCP(Transfer Coupled Plasma)方式のドライエッチング装置、ヘリコン波を利用したヘリコン波プラズマエッチング装置など、前述した第1エッチングガスと第2エッチングガスの混合ガスをプラズマ分解することが可能な各種ドライエッチング装置を使用することができる。また、上記混合ガスの圧力、流量比、エッチング温度なども上記した条件に限定されるものではなく、使用する装置に応じて適宜最適化することはいうまでもない。
次に、図15に示すように、配線溝30の内部に第2層目のCu配線31を形成する。第2層目のCu配線31は、前述した第1層目のCu配線21の形成方法(図6参照)に準じて形成すればよい。
図示は省略するが、その後、前述した工程を繰り返し、第2層目のCu配線31の上部に複数層のCu配線を形成することにより、本実施形態のCMOS−LSIが完成する。
(実施の形態2)
本実施の形態では、層間絶縁膜材料としてシロキサン(SiO)系の低誘電率(Low−k)絶縁膜を使用し、拡散バリア層およびエッチングストッパ層として窒化シリコン膜を使用する場合について説明する。なお、ここでは、層間絶縁膜材料として比誘電率が3.5のSiOF膜を使用するが、その他の無機または有機シロキサン系材料(有機ガラス系絶縁膜)、例えばHSQ(hydrogen silsesquioxane)、MSQ(methyl silsesquioxane)、ポーラスHSQ、ポーラスMSQなどを使用することもできる。
HSQ系材料としては、例えば「OCD T−12」(東京応化工業製、比誘電率=3.4〜2.9)、「FOx」(米Dow Corning社製、比誘電率=2.9)、「OCL T−32」(東京応化工業製、比誘電率=2.5)などがあり、MSQ系材料としては、例えば「OCD T−9」(東京応化工業社製、比誘電率=2.7)、「LKD−T200」(JSR社製、比誘電率=2.7〜2.5)、「HOSP」(米Honeywell Electronic Materials社製、比誘電率=2.5)、「HSG−RZ25」(日立化成工業社製、比誘電率=2.5)、「OCL T−31」(東京応化工業社製、比誘電率=2.3)、「LKD−T400」(JSR社製、比誘電率=2.2〜2、耐熱温度=450℃)などがある。
ポーラスHSQ系材料としては、例えば「XLK」(米Dow Corning社製、比誘電率=2.5〜2)、「OCL T−72」(東京応化工業社製、比誘電率=2.2〜1.9)、「Nanoglass」(米Honeywell Electronic Materials社製、比誘電率=2.2〜1.8)、「MesoELK」(米Air Productsand Chemicals社製、比誘電率=2以下)などがあり、ポーラスMSQ系材料としては、例えば「HSG−6211X」(日立化成工業社製、比誘電率=2.4)、「ALCAP−S」(旭化成工業社製、比誘電率=2.3〜1.8)、「OCL T−77」(東京応化工業社製、比誘電率=2.2〜1.9)、「HSG−6210X」(日立化成工業社製、比誘電率=2.1)または「silica aerogel」(神戸製鋼所社製、比誘電率1.4〜1.1)などがある。
まず、図16に示すように、nチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpの上部に第1層目のCu配線21を形成する。ここまでの工程は、前記実施の形態1の図1〜図6に示した工程と同じである。
次に、図17に示すように、Cu配線21の上部にCVD法で窒化シリコン膜32、SiOF膜33、窒化シリコン膜34、SiOF膜35、窒化シリコン膜36を順次堆積する。
次に、上記窒化シリコン膜36、SiOF膜35、窒化シリコン膜34、SiOF膜33、窒化シリコン膜32を順次ドライエッチングして配線溝を形成するが、Cu配線21を覆う窒化シリコン膜32をドライエッチングする際に要求される条件は、前記実施の形態1と同様、
(a)配線溝の側壁を異方的にエッチングできること、すなわち配線溝の側壁が垂直にエッチングされること、および
(b)配線溝の底部に露出するCu配線の表面に堆積物や反応物が生じ難いことである。
本発明者らは、多数のガス種について、その分解によって生じるイオンやラジカルの吸着特性を密度汎関数理論に基づく分子軌道計算によって算出した結果、SF6とHBrとN2(またはN2に代えてNH3)の混合ガスが、上記した条件(a)、(b)を満たすエッチングガスとして最適であるという結論を得た。
上記混合ガスは、その分解によって生じるハロゲンイオンやハロゲンラジカルの一部が窒化シリコン分子中のシリコンと結合して配線溝の側壁に堆積物を生じると共に、他の一部がこの堆積物をエッチングし、N2(またはNH3)の分解によって生じるイオンやラジカルが窒化シリコン分子中の窒素と結合して窒素ガスを生成するものと推定される。また、この混合ガスは、酸素を含んでいないことから、Cu配線の表面に酸化物が形成される虞れもない。さらに、フルオロカーボンポリマーを生成するCF4、CHF3、C4F8などのハイドロフルオロカーボン系ガスやフルオロカーボン系ガスを含んでいないことから、配線溝の側壁やCu配線の表面に過剰の堆積物が形成される虞れもない。N2とNH3はいずれを使用してもよいが、N2は全く毒性がないという利点があるので、SF6とHBrとNH3の混合ガスよりは、SF6とHBrとN2の混合ガスの方が扱い易いといえる。
また、ドライエッチング装置は、前記図8に示したような装置や、マイクロ波プラズマエッチング装置、TCP方式のドライエッチング装置、ヘリコン波プラズマエッチング装置など、上記混合ガスをプラズマ分解することが可能な各種ドライエッチング装置を使用することができる。
例えば前記図8に示したドライエッチング装置を用いて配線溝を形成するには、まず図18に示すように、フォトレジスト膜37をマスクに用いたドライエッチングで配線溝形成領域の窒化シリコン膜36を除去する。このとき、エッチングガスとしてSF6とHBrとN2の混合ガスを用いることにより、窒化シリコン膜36が異方的にエッチングされると共に、下地のSiOF膜35でエッチングが停止される。
次に、フォトレジスト膜37を除去した後、図19に示すように、フォトレジスト膜38をマスクに用いたドライエッチングで配線溝形成領域の一部のSiOF膜35、窒化シリコン膜34、SiOF膜33を順次除去する。このとき、SiOF膜35、33のエッチングガスとしてC4F8とArと酸素の混合ガスを用いることにより、SiOF膜35、33が異方的にエッチングされると共に、下地の窒化シリコン膜34、32でエッチングが停止される。また、窒化シリコン膜34のエッチングガスとしてSF6とHBrとN2の混合ガスを用いることにより、窒化シリコン膜34が異方的にエッチングされると共に、下地のSiOF膜33でエッチングが停止される。
次に、フォトレジスト膜38を除去した後、図20に示すように、窒化シリコン膜36、34をマスクに用いたドライエッチングでSiOF膜35をエッチングする。SiOF膜35のエッチングガスは、前述したC4F8とArと酸素の混合ガスである。
次に、図21に示すように、SiOF膜35を覆う窒化シリコン膜36、SiOF膜33を覆う窒化シリコン膜34およびCu配線21を覆う窒化シリコン膜32をドライエッチングすることによって、Cu配線21の上部に配線溝40を形成する。
このとき、窒化シリコン膜36、34、32のドライエッチングに用いるエッチングガスは、前述したSF6とHBrとN2の混合ガスであり、エッチング条件は、一例として、ガス圧力=4Pa、流量比=SF6/HBr/N2:25/15/10(ml/分)、対向電極(102)に印加する高周波パワー=600W、ステージ(106)に印加する高周波パワー=200W、ステージ温度=30℃である。
上記の混合ガスを用いて窒化シリコン膜36、34、32をドライエッチングすることにより、配線溝40の側壁が垂直に加工されると共に、配線溝40の底部に露出したCu配線21の表面に堆積物や反応物が付着する不具合も抑制された。なお、上記混合ガスの圧力、流量比、エッチング温度などは、上記した条件に限定されるものではなく、使用する装置に応じて適宜最適化することはいうまでもない。
次に、図22に示すように、配線溝40の内部に第2層目のCu配線41を形成する。第2層目のCu配線41は、前述した第1層目のCu配線21の形成方法に準じて形成すればよい。図示は省略するが、その後、前述した工程を繰り返し、第2層目のCu配線41の上部に複数層のCu配線を形成する。
(実施の形態3)
本実施の形態によるCMOS−LSIの製造方法を図23〜図33を用いて工程順に説明する。
まず、図23に示すように、基板1上にnチャネル型MISFETQnおよびpチャネル型MISFETQpを形成した後、それらの上部に第1層目のCu配線21を形成する。ここまでの工程は、前記実施の形態1の図1〜図6に示した工程と同一である。
次に、図24に示すように、Cu配線21の上部に炭化窒化シリコン(SiCN)膜42、有機絶縁膜23、酸化シリコン膜24、有機絶縁膜25、酸化シリコン膜26および炭化窒化シリコン膜43を順次堆積する。酸化シリコン膜24、26は、CVD法で堆積し、有機絶縁膜23、25は、前述した「SiLK」や「FLARE」など、酸化シリコンよりも比誘電率が小さい絶縁材料をスピン塗布法で堆積する。炭化窒化シリコン膜22、27は、例えば「BLOk」(米国Applied Materials社製:比誘電率=4.3)を使用し、トリメチルシランとアンモニアの混合ガスをソースガスに用いたプラズマCVD法で堆積する。
Cu配線21と有機絶縁膜23との間に介在する炭化窒化シリコン膜42は、前記炭化シリコン膜22と同様、Cu配線21中のCuが有機絶縁膜23中に拡散するのを防止する拡散バリア層として機能する。また、最上層の炭化窒化シリコン膜43は、前記炭化シリコン膜27と同様、酸化シリコン膜24をエッチングする際に上層の酸化シリコン膜26がエッチングされるのを防ぐハードマスクとして機能する。
次に、上記炭化窒化シリコン膜43、酸化シリコン膜26、有機絶縁膜25、酸化シリコン膜24、有機絶縁膜23および炭化窒化シリコン膜42からなる積層膜をドライエッチングして配線溝を形成する。この積層膜をドライエッチングする方法は、最下層の炭化窒化シリコン膜42をエッチングする際に使用するガスを変更する以外は、前記実施の形態1の図9〜図14に示したドライエッチング方法と同じでよい。
すなわち、上記積層膜が堆積された基板1を前記図8に示すエッチング装置100の処理室104に搬入し、まず図25に示すように、フォトレジスト膜28をマスクに用いたドライエッチングで配線溝形成領域の炭化窒化シリコン膜43を除去する。このとき使用するエッチングガスは、前述したSF6、HCl、HBr、Cl2、ClF3、CF4のうちの少なくとも一種からなる第1エッチングガスと、N2とH2の混合ガス、NH3、N2H4のうちの少なくとも一種からなる第2エッチングガスの混合ガス、特にSF6とNH3の混合ガスである。この混合ガスを使用した炭化窒化シリコン膜43のエッチング条件は、炭化シリコン膜をエッチングするときの条件とほぼ同じである。
次に、フォトレジスト膜28を除去した後、図26に示すように、フォトレジスト膜29をマスクに用いたドライエッチングで配線溝形成領域の一部の酸化シリコン膜26を除去する。このとき使用するエッチングガスは、C4F8とArと酸素の混合ガスである。
次に、図27に示すように、上記のエッチングで露出した有機絶縁膜25とフォトレジスト膜29とを同時にドライエッチングする。このとき使用するエッチングガスは、NH3、N2H4またはN2とH2の混合ガスなど、窒素と水素を含んだガスである。
次に、図28に示すように、上記のエッチングで露出した酸化シリコン膜24、26をドライエッチングする。このとき使用するエッチングガスは、C4F8とArと酸素の混合ガスである。
次に、図29に示すように、上記のエッチングで露出した有機絶縁膜25、23をドライエッチングする。このとき、エッチングガスとしてNH3、N2H4またはN2とH2の混合ガスなど、窒素と水素を含んだガスを用いることにより、有機絶縁膜25、23が異方的にエッチングされると共に、有機絶縁膜25の下地の酸化シリコン膜24の表面、および有機絶縁膜23の下地の炭化窒化シリコン膜42の表面でエッチングが停止される。
次に、図30に示すように、上記のエッチングで露出した炭化窒化シリコン膜42をドライエッチングしてCu配線21の一部を露出させることにより、Cu配線21の上部に配線溝30を形成する。また、最上層の炭化窒化シリコン膜43を同時にドライエッチングして下層の酸化シリコン膜26を露出させる。
このとき、炭化窒化シリコン膜42、43のエッチングに使用するガスは、前記実施の形態1で炭化シリコン膜のエッチングに使用したSF6とNH3の混合ガスでもよいが、本実施の形態では、CHF3とN2の混合ガスを使用する。
前記実施の形態1で説明したように、CHF3のようなハイドロフルオロカーボン系ガスとArの混合ガスを使用して炭化シリコン膜をドライエッチングした場合は、Cu配線21の表面や配線溝の側壁にフルオロカーボン系の有機物を主成分とする堆積物が多量に付着した。従って、化学組成が炭化シリコン膜に類似した炭化窒化シリコン膜42、43のエッチングにCHF3とArの混合ガスを使用した場合は、Cu配線21の表面や配線溝の側壁にフルオロカーボン系の有機物を主成分とする堆積物が多量に付着することが予想される。
ところが、本発明者らの実験によると、CHF3とN2の混合ガス、およびこの混合ガスにさらにArを加えた混合ガスをそれぞれ使用して炭化窒化シリコン膜42、43をドライエッチングしたところ、配線溝の側壁を異方的にエッチングできること、すなわち配線溝の側壁が垂直にエッチングされること、および配線溝の底部に露出するCu配線21の表面に堆積物や反応物がほとんど生じないことが判明した。また、これらの混合ガスを使用して炭化シリコン膜をドライエッチングした場合も、Cu配線21の表面に堆積物や反応物がほとんど生じないことが判明した。さらに、これらの混合ガスは、酸素を含んでいないので、Cu配線21の表面が酸化されることもなかった。
また、CHF3とN2の混合ガスに代えてCH2F2とN2の混合ガス、およびCF4とN2の混合ガスをそれぞれ使用して炭化窒化シリコン膜および炭化シリコン膜をそれぞれドライエッチングしたところ、CH2F2とN2の混合ガスを使用した場合は、エッチングが途中で停止してしまった。これは、水素(H)の組成比が高いハイドロフルオロカーボン系ガスを使用すると、Cu配線21の表面に堆積物が多く生じるためと考えられる。一方、分子中に水素を含まないCF4とN2の混合ガスを使用した場合は、エッチングが速やかに進行し、Cu配線21の表面の堆積物も、CHF3とN2の混合ガスを使用した場合よりさらに少なかった。しかし、この混合ガスを使用した場合は、配線溝の側壁に付着する堆積物も減少するため、側壁に若干のサイドエッチングが生じた。
従って、Cu配線21を覆う炭化シリコン膜または炭化窒化シリコン膜をドライエッチングしてCu配線21の表面を露出させる際に使用できるエッチングガスのうち、ハイドロフルオロカーボン系ガス(またはフルオロカーボン系ガス)を含むエッチングガスとしては、CHF3とN2の混合ガスとCF4とN2の混合ガスを挙げることができ、特にCHF3とN2の混合ガスが使いやすさの面で優れている。また、CHF3とN2の混合ガスに適量のCF4を加えることによって、エッチング特性の微調整を行うこともできる。
さらに、CHF3やCF4のようなハイドロフルオロカーボン系ガス(またはフルオロカーボン系ガス)は、従来から広く使用されているエッチングガスであることから、CHF3とN2の混合ガスやCF4とN2の混合ガスを使用する場合は、新規の設備導入が必要ないという利点があり、かつ毒性がないので取り扱いも容易である。
CHF3とN2の混合ガスを使用して炭化窒化シリコン膜または炭化シリコン膜をドライエッチングする場合、CHF3とN2の適切な流量比は、CHF3:N2=1:0.1〜200の範囲であり、好ましくはCHF3:N2=1:0.2〜20の範囲、より好ましくはCHF3:N2=1:0.5〜10の範囲である。
また、この混合ガスに、その濃度や流量などを調整する目的でArなどの不活性ガスを添加することも可能である。例えば、排気能力が高いエッチング装置を使用する場合は、Arなどの不活性ガスで希釈した混合ガスを処理室内に多量に供給し、エッチングによって生成した反応生成物を速やかに排出してやることにより、基板1の表面に堆積物が付着し難くなる。
また、上記混合ガスは、Cu配線21の表面の酸化を防ぐために、酸素の含有量を実質的に0にしたものを処理室内に供給すべきである。ただし、処理室内に供給された混合ガスには、石英ガラス製の器材などから発生する微量の酸素が1〜2%程度混入することがある。しかし、この場合でも混合ガス中の酸素の含有率は、最大でも3%以下、好ましくは1.5%以下に抑える必要がある。
なお、Cuの拡散を防止する拡散バリア層およびエッチングストッパ層としては、上記炭化窒化シリコン膜や炭化シリコン膜の他、前記実施の形態2で使用した窒化シリコン膜がある。また、窒化シリコン膜より誘電率が小さい炭化酸化シリコン(SiOC)膜も一部で導入が検討されている。本実施の形態のエッチングガス(CHF3とN2の混合ガスおよびCF4とN2の混合ガス)は、Cuの拡散を防止する拡散バリア層およびエッチングストッパ層として、窒化シリコン膜または炭化酸化シリコン膜を使用する場合にも適用可能である。
図31は、上記の方法で形成した配線溝30の内部に第2層目のCu配線31を形成した状態を示している。Cu配線31は、前記実施の形態1と同様の方法で形成することができる。
図32は、第3層目のCu配線を形成するために、第2層目のCu配線31の上部に複数の絶縁膜からなる積層膜を形成し、続いてこの積層膜をドライエッチングして配線溝49を形成した状態を示している。
上記積層膜の最下層は、Cu配線31の拡散バリア層として機能する炭化窒化シリコン膜44である。Cu配線31の拡散バリア層は、炭化シリコン膜で構成してもよい。
炭化窒化シリコン膜44の上部には、層間絶縁膜である2層のSiOF膜45、47とエッチングストッパ層である2層の窒化シリコン膜46、48が形成されている。層間絶縁膜は、SiOF膜の他、前記実施の形態2で例示したHSQ、MSQなどの酸化シリコン系絶縁膜を使用することもできる。
配線溝49の形成方法は、積層膜をドライエッチングするガスの種類が異なる他は、下層の配線溝30の形成方法と同じである。SiOF膜45、47のエッチングには、前記実施の形態2で使用したC4F8とArと酸素の混合ガスを使用し、窒化シリコン膜46、48のエッチングには、同じく前記実施の形態2で使用したSF6とHBrとN2の混合ガスを使用する。
Cu配線31の拡散バリア層である炭化窒化シリコン膜44のエッチングには、下層の炭化窒化シリコン膜42をエッチングする際に使用したCHF3とN2の混合ガスやCF4とN2の混合ガスを使用することもできるが、これらの混合ガスは、炭素(C)を含んでいるために、酸化シリコン系のSiOF膜45、47に対する選択比を確保することが難しい。すなわち、配線溝49の側壁にSiOF膜45、47が露出した状態で上記混合ガスを使用して炭化窒化シリコン膜42をエッチングすると、混合ガスに含まれる炭素(C)とSiOF膜45、47に含まれる酸素(O)が反応し、一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO2)として排出されるため、配線溝49の側壁がサイドエッチングされる。
従って、層間絶縁膜が酸化シリコン系絶縁膜で構成されている場合、Cu配線31の拡散バリア層である炭化窒化シリコン膜44のエッチングには、前記実施の形態1で使用したSF6とNH3の混合ガスを使用する方がよい。
図33は、上記の方法で形成した配線溝49の内部に第3層目のCu配線50を形成した状態を示している。Cu配線50は、前記実施の形態1と同様の方法で形成することができる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。