JP4883768B2 - 圧電センサ - Google Patents

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Description

本発明は、内燃機関のエンジン内部や、原子力発電所等のプラント内部のような高温環境下で、アコースティックエミッションや、振動、加速度といった物理量を、圧電性セラミックス薄膜素子によって検出する圧電センサに関するものである。
原子力発電所などのプラントにおける配管やバルブ、または内燃機関のエンジンなどの高温雰囲気を生じる構造物の異常探知を行うために、構造物の内部にセンサを設置している。例えば、構造物に亀裂や割れが生じる時に発生する弾性波であるアコースティックエミッションを検出するアコースティックエミッションセンサや、異常振動、加速度の情報を検出する圧電型の振動センサが用いられており、これらには、圧縮型、片持ち梁型、ダイアフラム型、せん断型等種々の形式のものが知られている。
この中で、圧縮型の薄膜型圧電センサは、特許文献1に記載されているように(図1に示すように)、台座、台座側電極、圧電体、荷重体側電極、及び荷重体を順次積層した積層体からなり、その台座の下面を構造物に取り付けて使用されるものである。構造物に振動が発生すると、その振動がセンサの台座側に伝達される。そして、センサの台座側に伝達された振動が圧電体に伝達され、圧電体に振動加速度に比例した圧縮応力、または引張応力が発生する。そして、その応力に比例した電気信号(電荷)が圧電体の両面に発生し、圧電体両側に配設された上記2枚の電極がその電荷を取り出す。その取り出された電荷を測定することによって構造物の振動の大きさや加速度を検出することができる。
従来、このような圧電型のセンサに用いられる圧電体としては、表1に示すような種々のものが使用されている。
特許文献1および2には、圧電体としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)やポリフッ化ビニリデン(PVDF)を使用した圧電センサの一例が開示されている。ところが、これらの圧電体はキュリー温度が低く、その適用限界温度は最高でも300℃程度である。これに対して、構造物の内部は高い燃焼温度(500℃前後)となる。そのため、その内部に設置される圧電センサの圧電体は、かなりの高温(400℃前後)となり、キュリー温度に達してしまう。圧電体がキュリー温度を超える高温になると、圧電特性が劣化し使用に耐え得ないものとなる。そのため、上記のようなキュリー温度の低い圧電体を使用する場合には、特許文献3に記載されているように、圧電体を適温に維持するための冷却手段を別途設ける必要がある。しかしながら、冷却手段を設けることによって圧電センサは、その構造が複雑化し、コストが増大化してしまうという問題が生じる。
そこで、上記の問題を解決するために、キュリー温度が高い圧電体を高温環境下で使用する方法が考えられる。特許文献4には、キュリー温度の高いニオブ酸リチウム(LiNbO)を使用する方法が開示されている。ニオブ酸リチウムは、表1に示すように、キュリー温度が約1210℃であり、冷却手段を用いることなく高温環境下での使用が可能である。ところが、ニオブ酸リチウムは加工性に劣り、薄膜化が困難であり、また単結晶体の状態でなければ圧電特性が得られないという問題点がある。さらに、作製や加工が困難でコストがかかるという問題点もある。
また、圧電体に水晶を使用した場合にも、上記と同様に薄膜化が困難であるという問題点がある。
そこで、これらの問題点を解決する方法の一例が特許文献5に開示されている。上記特許文献5の圧電センサは、キュリー温度が存在しない圧電体、例えば、窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)を利用したものである。具体的には、上記圧電センサは、金属ダイアフラム上に、下地層、圧電薄膜層(窒化アルミニウム)、および上部電極がこの順に積層して形成されており、圧電薄膜層から発生する電荷を取り出す上部電極に信号出力棒が圧着固定されている。そして、金属ダイアフラムが外部から受けた圧力が圧電薄膜層に伝達され、その圧力に応じて圧電薄膜層が電荷を発生する。この電荷を信号出力棒を介して測定することによって前記圧力を検出するものである。これにより、小型で耐熱性に優れた低価格の圧電センサを実現することができる。
特開平6−148011号公報(公開日1994年5月27日) 特開平10−206399号公報(公開日1998年8月7日) 特開平5−203665号公報(公開日1993年8月10日) 特開平5−34230号公報(公開日1993年2月9日) 特開2004−156991号公報(公開日2004年6月3日)
ところが、上記従来の構成では、圧電素子の圧電体として、表1に示すような圧電定数d33の小さい窒化アルミニウムを用いているため、外部からの圧力に応じた電荷を十分に発生することができない。また、この圧電素子が信号出力棒に密着固定されているため、外部からの圧力による圧電素子の変形量が制限されてしまう。圧電素子は外部からの圧力により変形し、その内部に生じる応力に応じて電荷を発生するものであるため、圧電素子の変形量が小さいと外部からの圧力に応じた電荷を正確に発生することができない。したがって、このような圧電素子を使用した圧電センサは感度が低いという問題点がある。特に、構造物の異常を検出するためのセンサは、僅かな異常をも検出する必要があるため、その感度は重要な問題である。また、表1に示す圧電定数d33が大きい他の圧電体は、上述した問題が生じるため高温環境下での使用には適さない。
ここで、上記圧電定数d33とは、圧電体に加えられる圧力に対して該圧電体から発生する電荷量を表す値である。つまり、圧電定数d33の値が大きければ発生する電荷量が多いということである。そして、発生する電荷量が多い程、加えられる圧力が僅かでもその圧力に応じた電荷を発生させることができる。したがって、この電荷量の多さは圧電素子の感度に影響を与えるものである。
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、感度の低い圧電素子を使用して、高感度が得られる圧電センサを提供することである。
本発明に係る圧電センサは、上記の課題を解決するために、第1の面にて圧力を受け、その圧力により電荷を発生する圧電素子を備えた圧電センサにおいて、前記第1の面とは反対の第2の面が臨む領域に空間が形成されていることを特徴としている。
圧電素子は、外部から力を受けて変形すると、その内部に圧縮応力および引張応力が発生し、この応力に応じた電荷を発生する。したがって、変形量が大きければその内部に発生する応力も大きくなり、より多くの電荷を発生する。
上記の構成によれば、圧電素子の第1の面とは反対の第2の面が臨む領域に空間が形成されているので、圧力を受けた圧電素子は、圧力の方向つまり空間の方向へ、その圧力に応じて撓むことができる。このように、圧力を受ける面とは反対の面に空間を形成することによって、圧電素子は妨害されることなく空間の方向へ撓むことができる。これにより、外部で発生する圧力が僅かでも、圧電素子を撓ませることができるため、圧電素子はその圧力に応じた電荷を正確に発生することができる。したがって、感度の低い圧電素子を使用した場合であっても高感度の圧電センサを得ることができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子の前記第2の面に導電部材をさらに備えており、前記導電部材が、前記圧電素子と電気的に接続されている接続面が前記圧電素子の前記第2の面における外周側の領域のみと接していることが好ましい。
上記の構成によれば、導電部材は、圧電素子の圧力を受ける面とは反対の電荷を発生する面における外周側の領域のみと接しているので、圧電素子における電荷が発生する側には、空間が形成されている。そのため圧力を受け取った圧電素子は、圧力の方向つまり空間の方向へ撓むことができ、その内部に発生する応力に応じて電荷を発生する。そして、圧電素子から発生した電荷を導電部材が取り出すことによって圧電素子に加えられた圧力を検出することができる。このように、圧電素子は、電荷を取り出す導電部材に妨害されることなく空間の方向へ撓むことができるため、その圧力に応じた電荷を正確に発生することができる。したがって、感度の低い圧電素子を使用した場合であっても高感度の圧電センサを得ることができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記導電部材は、導電性の棒状部材であって軸方向の一端面が前記接続面となり、この接続面の中央部寄りの位置に凹部が形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、導電部材における、導電部材と圧電素子との接続面の中央部寄りの位置に凹部が形成されている。これにより、圧電素子の圧力を受ける面とは反対の面側には空間が形成されることになる。したがって、圧電素子が外部から圧力を受けると、その圧力に応じて圧力の方向、つまり、導電部材の凹部の内部方向に導電部材に妨害されることなく撓むことができる。そして、圧電素子の撓みに応じた応力が圧電素子の内部に発生し、その応力に応じた電荷が発生する。このように、導電部材に凹部を形成することによって圧電素子は撓むことができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子を装着するための筐体をさらに備えており、前記筐体の前端壁に形成される開口部が前記第1の面に位置し、前記第2の面に配置された前記棒状部材により前記圧電素子が前記前端壁と前記棒状部材との間に固定されていることが好ましい。
上記の構成によれば、圧電素子を装着するための筐体の前端壁に開口部が形成されており、その開口部は前記第1の面に位置している。そして、前記第2の面に配置された棒状部材により圧電素子が前記前端壁と棒状部材との間に固定されている。
これにより、圧電素子は、その圧力を受ける面(第1の面)が開口部から露出した状態で、開口部が形成される筐体の前端壁と棒状部材との間に固定される。したがって、圧電素子は、外部からの圧力を受け、その圧力の方向にのみ撓むことができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子は、該圧電素子から発生する電荷を取り出す上部電極を備えており、前記上部電極は、前記圧力が作用して前記圧電素子の内部に生じる圧縮応力または引張応力によって発生する電荷を取り出すように設けられていることが好ましい。
圧電素子は、撓みが作用してその内部に圧縮応力と引張応力とが発生する。具体的には、圧電素子に圧力が加わり撓みが発生したとき、圧電素子の中央付近は両端方向へ引っ張られる。これにより、圧電素子の中央付近には引張応力が発生する。一方、圧電素子の両端付近は収縮方向へ圧縮される。これにより、圧電素子の両端付近には圧縮応力が発生する。
ところで、圧電素子において圧縮応力によって発生する電荷と引張応力によって発生する電荷とは、その極性が異なる。そのため、電極層によって両応力により発生する電荷を取り出すと、互いに相殺されてしまい十分な電荷を取り出すことができない。
上記の構成によれば、上部電極が、圧電素子の圧縮応力または引張応力によって発生する電荷を取り出すように設けられている。
これにより、例えば、上部電極は、圧縮応力によって発生した電荷を引張応力によって発生した電荷に相殺されることなく、圧電素子から取り出すことができる。したがって、上部電極は、圧電素子から十分な量の電荷を取り出すことができる。これにより、圧電素子に加わる圧力が僅かでも、圧電素子からより多くの電荷を取り出すことができるため、外部で発生した僅かな圧力をも検出することができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子は、圧力を受けて電荷を発生する圧電薄膜層と前記圧電薄膜層から発生する電荷を取り出す上部電極とを備えており、前記上部電極は前記圧電薄膜層の前記第2の面における外周側の領域のみと接していることが好ましい。
上記の構成によれば、上部電極は、圧電薄膜層の圧力を受ける面とは反対の電荷を発生する面における外周側の領域のみと接しているので、圧電薄膜層における電荷が発生する側には、空間が形成されている。そのため、圧力を受け取った圧電薄膜層は、圧力の方向つまり空間の方向へ撓むことができ、その内部に発生する応力に応じて電荷を発生する。そして、圧電薄膜層から発生した電荷を上部電極が取り出すことによって圧電素子に加えられた圧力を検出することができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子を装着するための筐体を備えており、前記圧電素子は、圧力を受けて電荷を発生する圧電薄膜層を備えており、前記圧電薄膜層は前記筐体の前端壁に形成され、この前端壁における前記圧電薄膜層が形成されている部分はダイアフラムとして機能するように加工されていることが好ましい。具体的には、圧電薄膜層が形成される前端壁の厚さを0.005mm以上10mm以下とすることが好ましい。
上記の構成によれば、圧力を受けて電荷を発生する圧電薄膜層が筐体の前端壁に直接形成されている。そして、圧電薄膜層が形成されている前端壁はダイアフラムとして機能するように加工されている。ここで、ダイアフラムとは、加えられる圧力に応じて変形する膜状体を言う。
これにより、圧力を受ける前端壁は圧力の方向に撓むことができ、この撓みに付随して圧電薄膜層も撓むことができる。このように、圧電薄膜層は筐体に直接形成されても撓むことができるため、圧電素子の構成を簡略化できる。したがって、小型でコストの低い高感度の圧電センサを得ることができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子を装着するための筐体を備えており、前記圧電素子は、前記第1の面側に位置する圧力伝達部材と、前記第2の面側に位置する、圧力を受けて電荷を発生する圧電薄膜層と、前記圧電薄膜層から発生する電荷を取り出す上部電極とを備えており、前記筐体は開口部を有し、前記圧力伝達部材は、前記圧電薄膜層と前記上部電極とが前記筐体内部に収容され、かつ前記圧力伝達部材の外周側の領域のみが前記開口部の周囲の領域と接するように前記開口部に設けられていることが好ましい。
上記の構成によれば、圧力を受ける圧力伝達部材は、圧電薄膜層と上部電極とを収容する筐体における開口部の周囲の領域と接するように前記開口部に設けられている。
これにより、筐体と圧力伝達部材とは、外周側の領域以外つまり中央側の領域において接することがない。すなわち、筐体の内部方向、つまり圧電薄膜層における電荷が発生する側には空間が形成されている。そのため圧力を受け取った圧力伝達部材は、圧力の方向つまり空間の方向へ撓むことができ、その撓みに付随して圧電薄膜層も撓むことができる。このように、圧力を受ける面とは反対の面に空間を形成することによって、圧電素子は妨害されることなく空間の方向へ撓むことができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記上部電極に導線が接続されていることが好ましい。
上記の構成によれば、上部電極に導線が接続されているので、圧電薄膜層から発生した電荷は導線にて取り出される。そして、取り出された電荷を検出することによって、圧力伝達手段に加えられた圧力を検出することができる。
本発明に係る圧電センサでは、上部電極は、円環状部材であって一面が前記圧電薄膜層と接続する接続面となり、この接続面が前記圧電薄膜層の前記第2の面における外周側の領域のみと接していることが好ましい。
上記の構成によれば、円環状の上部電極は、圧電薄膜層の第2の面における外周側の領域のみと接しているので上部電極の内部は中空空間が形成されている。したがって、圧電薄膜層は上部電極の空間方向に撓むことができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子は、該圧電素子から発生する電荷を取り出す上部電極を備えており、前記上部電極は、前記圧力が作用して前記圧電素子の内部に生じる圧縮応力によって発生する電荷および引張応力によって発生する電荷を、それぞれ個別に取り出すように設けられていることが好ましい。
圧電素子は、外部からの圧力により生じる撓みが作用して、その内部に圧縮応力および引張応力が発生する。しかしながら、圧電素子において圧縮応力によって発生する電荷と引張応力によって発生する電荷とは、その極性が異なるため、電極層によって両応力により発生する電荷を取り出すと、互いに相殺されてしまい十分な電荷を取り出すことができない。
これに対して、上記の構成によれば、上部電極は、圧縮応力によって発生する電荷および引張応力によって発生する電荷を、それぞれ個別に取り出すように設けられている。
これにより、圧縮応力によって発生した電荷と、引張応力によって発生した電荷とを別々に取り出せるため、両者を足し合わせた十分な量の電荷を検出することができる。なお、両者を足し合わせて、増幅した電荷(出力)を得るためには、一方の電荷の極性を反転させることにより可能となる。これにより、圧電素子に加わる圧力が僅かでも、圧電素子全体からより多くの電荷を取り出すことができるため、外部で発生した僅かな圧力をも検出することができる。すなわち、圧電センサの感度をより向上させることができる。
本発明に係る圧電センサでは、前記圧電素子は、圧力を受けて電荷を発生する圧電薄膜層と前記圧電薄膜層から発生する電荷を取り出す上部電極とを備えており、前記上部電極は、前記圧電薄膜層の前記第2の面における、外周側の領域および中央部寄りの領域にそれぞれ個別に設けられていることが好ましい。
ここで、圧電素子は、外部からの圧力により生じる撓みが作用して、前記第2の面における外周側の領域には圧縮応力が発生し、前記第2の面における中央部寄りの領域には引張応力が発生する。
上記の構成によれば、上部電極は、圧電薄膜層の圧力を受ける面とは反対の電荷を発生する面における、外周側の領域および中央部寄りの領域にそれぞれ個別に設けられるため、圧縮応力によって発生する電荷および引張応力によって発生する電荷を、それぞれ個別に取り出すことが可能となる。
したがって、いずれか一方の電荷の極性を反転させる方法等により、圧縮応力および引張応力によって発生した電荷を足し合わせた十分な量の電荷を検出することができる。これにより、圧電素子に加わる圧力が僅かでも、圧電素子からより多くの電荷を取り出すことができるため、外部で発生した僅かな圧力をも検出することができる。すなわち、圧電センサの感度をより向上させることができる。
本発明に係る圧電センサは、以上のように、第1の面にて圧力を受け、その圧力により電荷を発生する圧電素子を備えた圧電センサにおいて、前記第1の面とは反対の第2の面が臨む領域に空間が形成されている構成である。
これにより、外部で発生する圧力に応じて圧電素子を空間内部に撓ませることができ、この撓みに応じた電荷を正確に発生させることができる。したがって、感度の低い圧電素子を使用して、高感度が得られる圧電センサを提供することができるという効果を奏する。
本発明の実施の一形態について図1〜図13に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態では、圧電センサを内燃機関に適用した場合を例にとって説明する。
図1は、本実施の形態にかかる、圧電センサの概略構成を示す断面図である。
圧電センサ1は、内燃機関シリンダ内から発生する圧力を検知することによって、当該シリンダ内の異常を検出するものである。圧電センサ1は、信号伝達部2および圧電素子10を備えている。
圧電素子10は、上記シリンダ内で発生する圧力を受けて、該圧力に応じた電荷を発生するものである。なお、圧電素子10の詳細については後述する。
信号伝達部2は、筐体20、信号出力棒(導電部材、電極層)30および電気絶縁環柱40を備えている。信号伝達部2は、圧電素子10から発生された電荷を信号出力棒30を介して信号搬送用ケーブル(図示せず)に検出信号として伝達するものである。
筐体20は、前部筐体22と後部筐体21とを軸方向の前後に備え、その内部には前端から後端まで貫通した軸孔50が形成されている。なお、筐体20は、高温となる内燃機関に備えられるため、耐熱性金属により構成されていることが好ましい。
後部筐体21は、大径部21aと小径部21bとを軸方向の前後に備えており、当該大径部21aは内径および外径が小径部21bのそれらよりも大きくなっている。大径部21aの内部には、図示しない信号搬送用ケーブルを取り付けるためのコネクタが挿嵌される。
前部筐体22は、外径が大きい大径部22aと外径が小さい小径部22bとを軸方向の前後に備えている。前部筐体22の内部には上記軸孔50の一部を構成する大径孔51が形成され、大径部22aの大径孔51には後部筐体21の小径部21bが例えば螺合により嵌合されている。
小径部22bの前端壁22dには、外部からの圧力を取り入れるために、大径孔51よりも小径の開口部53が形成されている。さらに、上記前端壁22dの内面における開口部53の周りには、圧電素子10を載置するための段部22cが形成されている。
軸孔50は、小径部22b側の径の大きな大径孔51と、小径部21b側の径の小さな小径孔52との連接孔である。大径孔51には、当該大径孔51の孔径よりも僅かに小さい外径を有する筒状の電気絶縁環柱40が挿嵌されており、電気絶縁環柱40の貫通孔には金属製の信号出力棒30が設置されている。
信号出力棒30は、丸棒状であり、その前端側の外径が他の部分よりも大きく、段部31を備えている。また、信号出力棒30の前端面には、凹部32が形成されている。したがって、信号出力棒30の前端面はリング状の円環状面となっている。なお、凹部32の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、円柱状、角柱状、円錐状、角錐状などを適宜選択することができる。
また、信号出力棒30の後端部は、後部筐体21の小径部21bにおける小径孔52を貫通して大径部21aの内部まで達し、図示しない信号搬送ケーブルと接続される。また、信号出力棒30の前端面には金属製の電極33が設けられており、電極33は前部筐体22の小径部22bの段部22cにおいて圧電素子10と接触できる構成である。
開口部53はシリンダ内部に位置しており、シリンダ内部で発生する圧力は開口部53から進入し、圧電素子10に到達する。また、信号出力棒30は、軸孔50において圧電素子10および電気絶縁環柱40とのみ接触しており、筐体20からは電気的に絶縁されている。
圧電センサ1は以上のような構成である。ここで、圧電センサ1の組立方法について以下に説明する。
まず、圧電素子10は前部筐体22の段部22cに載置される。このとき、圧電素子10の前端面(第1の面)は、前部筐体22の開口部53から露出した状態となる。次に、信号出力棒30が前部筐体22内に挿入され、圧電素子10の後端面(第2の面)と接触し固定される。次に、電気絶縁環柱40が、その内部に信号出力棒30を嵌通させながら前部筐体22内に挿入され、信号出力棒30の前端の段部31と接触し固定される。その後、後部筐体21の小径部21bが前部筐体22の大径部22a内に挿入され、後部筐体21の前端壁が電気絶縁環柱40の後端壁を押し込む。そして、圧電素子10と信号出力棒30と電気絶縁環柱40とが、前部筐体22の内部で圧着した状態で固定される。以上の方法によって、圧電センサ1を形成することができる。
次に、図2を用いて圧電素子10について詳細に説明する。図2は、本実施の形態にかかる圧電素子10を示す断面図である。
圧電素子10は、金属ダイアフラム(圧力伝達部材)11上に、下地層12、圧電薄膜層13および上部電極14がこの順に成膜されてなるものである。
それぞれの成膜には、物理気相成長法(PVD)法、すなわち、物理的方法で物質を蒸発させ、成膜する部材上で凝縮させて薄膜を形成する方法を用いることができる。具体的には、例えば、抵抗加熱蒸着または電子ビーム加熱蒸着等の真空蒸着法、DCスパッタリング、高周波スパッタリング、RFプラズマ支援スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、ECRスパッタリングまたはイオンビームスパッタリング等の各種スパッタリング方法、高周波イオンプレーティング法、活性化蒸着またはアークイオンプレーティング等の各種イオンプレーティング法、分子線エピタキシー法、レーザアプレーション法、イオンクラスタビーム蒸着法、並びにイオンビーム蒸着法などの方法である。
金属ダイアフラム11は、圧力が発生するシリンダ内の空間と接しており、開口部53から進入してきた該シリンダ内で発生した圧力を受ける。そして、金属ダイアフラム11は、上記圧力を下地層12を介して圧電薄膜層13に伝達するものである。また、金属ダイアフラム11は、圧電素子10を支える基板としての機能も有している。なお、ダイアフラムとは、加えられる圧力に応じて変形する膜状体を言う。したがって、金属ダイアフラム11は、外部から圧力を受けることによって撓みが発生するものである。
なお、金属ダイアフラム11は、高温となる内燃機関シリンダ内に設置されるため耐熱性を有している必要がある。そのため、金属ダイアフラム11は、例えば、インコネルまたはSUS630相当の耐熱金属材料を使用するのが好ましい。また、金属ダイアフラム11における、圧電薄膜層13を形成する側の表面は、圧電薄膜層13のひびや剥がれを防ぐため、また、結晶軸の配向性を高めるために、研磨や化学的な方法によって鏡面加工していることが好ましい。
下地層12は、金属ダイアフラム11と当該下地層12上に成膜される圧電薄膜層13との緩衝層である。また、下地層12は、圧電薄膜層13の極性の配向、結晶軸の配向および金属ダイアフラム11との濡れ性の改善などの役割を有している。さらに、下地層12は下部電極としての機能を有している。
なお、下地層12の材料としては、TiN、MoSi2、Si3N4、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、Ta、Ti、Zn、Zr、W、Pt、Al、Ni、Cu、Pd、Rh、Ir、Ru、AuまたはAgを用いることができ、単層または複数の材料を用いた2層以上の複層とすることができる。
圧電薄膜層13は、圧電特性を有するものであり、外部からの圧力を受けることによって電荷を発生するものである。具体的には、圧電薄膜層13には、金属ダイアフラム11に生じた撓みに付随して、撓みが発生する。そして、圧電薄膜層13の撓みに応じて、圧電薄膜層13の内部に圧縮応力および引張応力が発生する。そして、この内部応力の働きによって、圧電薄膜層13から電荷が発生する。このように、圧電薄膜層13は、圧力を受けることによって、その圧力に応じた電荷を発生する。なお、圧電薄膜層13は、窒化アルミニウム(AlN)または酸化亜鉛(ZnO)を、スパッタリング法で成膜することが好ましい。
上部電極14は、金属ダイアフラム11が受けた圧力によって圧電薄膜層13から発生された電荷を下地層12と共に取り出すものである。そして、取り出された電荷は、上部電極14と接触している信号出力棒30を介して図示しない信号搬送ケーブルに検出信号として伝達される。なお、上部電極14の材料は、下地層12と同様の材料を用いることができるが、同一のものである必要はなく、圧電薄膜層13や電極33との相性によって適時選択すれば良く、またその構造は単層であっても複層であっても良い。
次に、図3を用いて圧電素子10と信号出力棒30との構成について説明する。
上述のように、圧電素子10の上部電極14と接触する信号出力棒30の前端部には、凹部32が形成されているため、圧電素子10と信号出力棒30との間には、空間が形成される。これにより、圧電素子10は、外部から圧力を受けた際に、信号出力棒30に妨害されることなく上記空間の方向へ撓むことができる。
なお、本実施の形態では、信号出力棒30における凹部32の形状は、図4(a)および図4(b)に示すようにリング状の円環状面としているが、これに限定されるものではない。他の形状として例えば、図4(c)に示すように、半球形状としても良い。また、図4(d)に示すように、信号出力棒30における凹部32の横断面が角形状であっても良い。また、凹部32の深さは、0.01mm以上10mm以下であることが好ましい。
また、本実施の形態では、信号出力棒30は凹部32を有する棒状部材としているが、円環状の電極層であっても良い。これにより、前記電極層の内部は中空空間が形成されているので、圧電素子10は前記電極層の空間方向に撓むことができる。
次に、圧電センサ1の動作について図3に基づいて説明する。
まず、金属ダイアフラム11は、内燃機関シリンダ内部で振動等によって発生する圧力を受ける。上記圧力を受け取った金属ダイアフラム11には、圧力が加わる方向つまり信号出力棒30の凹部32の空間方向に、その圧力に応じた撓みが発生する。そして、金属ダイアフラム11の撓みに付随して、下地層12および圧電薄膜層13にも同様に凹部32の内部方向に撓みが発生する。圧電薄膜層13に撓みが発生することによって、圧電薄膜層13の内部には応力が発生する。そして、圧電薄膜層13内部で発生した応力に応じた電荷が、圧電薄膜層13から発生する。次に、圧電薄膜層13の両面に配設された下地層12および上部電極14が、圧電薄膜層13で発生した上記電荷を取り出す。そして、取り出された電荷が電極33に伝達され信号出力棒30を介して、図示しない信号搬送ケーブルに検出信号として伝達される。この検出信号を測定することによって、内燃機関シリンダ内部で発生した圧力を検出することができる。以上のように、本実施の形態にかかる圧電センサ1は、圧電素子10の撓み効果を利用して、外部で発生する圧力を検出する構成である。
このように、本実施の形態の圧電素子10は、信号出力棒30に妨害されることなく凹部32の空間方向へ撓むことができる。これにより、外部で発生する圧力が僅かでも、圧電素子10を撓ませることができ、この撓みに応じて発生した電荷に基づいて上記圧力を検出することができる。したがって、感度の低い圧電素子を使用した場合にも、圧電素子の撓み効果を利用することによって、高感度の圧電センサを得ることができる。
ここで、圧電薄膜層13から発生する電荷を信号出力棒30に代えて導線を用いて取り出す構成について説明する。図5は、圧電薄膜層13から発生する電荷を導線により取り出す圧電センサ1の概略構成を示す断面図である。
本構成における筐体20は、一端面のみが解放された円筒状部材であることが好ましい。そして、前記一端面が金属ダイアフラム11と接続されている。したがって、筐体20の内部には、密閉された空間が形成される。また、金属ダイアフラム11の前記空間側の面には、圧電薄膜層13と上部電極14とがこの順に成膜されており、上部電極14には導線60が電気的に接続されている。
これにより、外部からの圧力を受けることによって、圧電素子10は上記空間の方向に撓み、電荷を発生する。そして、この電荷は上部電極14にて取り出され、導線を介して信号搬送ケーブルに検出信号として伝達される。このように、筐体20と圧電素子10との間に空間を形成することによって圧力を受ける面と反対の面側、つまり空間の方向に圧電素子10が撓むことができる。したがって、圧電素子10の撓み効果を利用して十分な電荷を得ることができる。
ここで、金属ダイアフラム11の厚みと圧電薄膜層13から発生する電荷量との関係について以下に説明する。
例えば、金属ダイアフラム11の厚みを薄くした場合には、その撓み量は大きくなる。そのため、圧電薄膜層13からは、より多くの電荷が発生する。また、金属ダイアフラム11の厚みを厚くした場合には、その撓み量は小さくなる。そのため、圧電薄膜層13から発生する電荷量は少なくなる。このように、金属ダイアフラム11の厚みを変化させることによって、圧電薄膜層13から発生される電荷量を変化させることができる。つまり、金属ダイアフラム11の厚みを任意に設定することによって、圧電センサ1の感度を変化させることができる。
ここで、上部電極14が、圧電薄膜層13に生じる圧縮応力または引張応力によって発生する電荷を取り出すように形成されていても良い。
本実施の形態では、上部電極14が、圧電薄膜層13に生じる圧縮応力によって発生する電荷を取り出す構成について説明する。図6は、上部電極14を圧電薄膜層13の外周側の領域のみに成膜した圧電素子10の断面図である。
圧電薄膜層13は、金属ダイアフラム11に生じる撓みに付随して撓みを発生することによって、その内部に圧縮応力と引張応力とが発生する。具体的には、図7に示すように、圧電薄膜層13の中央付近10aは、金属ダイアフラム11の撓みにより両端方向へ引っ張られる。これにより、圧電薄膜層13の中央付近10aには引張応力が発生する。また、圧電薄膜層13の両端付近10bは、収縮方向へ圧縮される。これにより、圧電薄膜層13の両端付近10bには圧縮応力が発生する。
ところで、圧縮応力によって発生する電荷と引張応力によって発生する電荷とは、その極性が異なる。そのため、上部電極14によって両応力により発生する電荷を取り出すと、互いに相殺されてしまい十分な電荷を取り出すことができない。そこで、上部電極14を圧電薄膜層13の圧縮応力が生じる範囲のみに成膜する。
上記の構成によれば、上部電極14は、圧縮応力によって発生した電荷のみを引張応力によって発生した電荷に相殺されることなく、圧電薄膜層13から取り出すことができる。したがって、上部電極14は、圧電薄膜層13から十分な量の電荷を取り出すことができる。これにより、金属ダイアフラム11に伝達される外部からの圧力が僅かでも、圧電薄膜層13からより多くの電荷を取り出すことができるため、内燃機関のシリンダ内部で発生した僅かな圧力をも検出することができる。すなわち、検出感度をさらに向上させた圧電センサ1を実現することができる。
また、上部電極14は、圧力が作用して圧電薄膜層13の内部に生じる圧縮応力によって発生する電荷および引張応力によって発生する電荷を、それぞれ個別に取り出すように設けられていてもよい。具体的には、図8(a)および図8(b)に示すように、上部電極14が、圧電薄膜層13の外周側の領域および中央部寄りの領域にそれぞれ個別に設けられている構成である。同図8(a)(b)では、上記外周側の領域に設けられる電極を外部電極14bとして、上記中央部寄りの領域に設けられる電極を中心電極14aとして図示している。なお、圧電薄膜層13から発生する電荷を取り出すために、下部電極なる下地層12を圧電薄膜層13の下面に設けてもよく、また、図8(a)(b)に示すように金属ダイアフラム11の任意の位置に電極14cを設けてもよい。上述の電極14a・14b・14cには、それぞれ電気配線(図示せず)が接続されている。
これにより、圧電薄膜層13の外周側の領域に作用する圧縮応力によって発生する電荷を外部電極14bにより、また、圧電薄膜層13の中央部寄りの領域に作用する引張応力によって発生する電荷を中心電極14aにより、それぞれ個別に取り出すことができる。
そのため、それぞれ個別に取り出した電荷を足し合わせることにより、十分な量の電荷を検出することができる。なお、両者を足し合わせて、増幅した電荷(出力)を得るためには、一方の電荷の極性を反転させることにより可能となる。これにより、圧電センサ1の感度をより向上させることができる。
なお、上部電極14を圧電薄膜層13の圧縮応力が発生する範囲に形成するために、上部電極14の形状を円環状に形成した構成としても良く、また、2個以上に分割した構成としても良い。
なお、上記の構成では、圧電薄膜層13の両端に上部電極14を設けているため、上部電極14間に空間が形成される。これにより、圧電薄膜層13は、圧力を受けたとき信号出力棒30の方向へ撓むことができる。したがって、信号出力棒30に凹部32を設けることなく、圧電薄膜層13の撓みを利用して電荷を発生させることができる。
さらに、上部電極14を圧電薄膜層13の引張応力が発生する範囲のみに成膜する構成としても良い。これにより、上部電極14は、引張応力によって圧電薄膜層13から発生した電荷のみを取り出すことができる。これにより、上述した圧縮応力により発生した電荷のみを取り出す場合と同様の効果を得ることができる。
また、図9(a)および図9(b)に示すように、圧電薄膜層13を圧縮応力と引張応力とが発生する範囲それぞれに分割して金属ダイアフラム11に成膜し、分割した圧電薄膜層13に対応して中心電極14aと外部電極14bとを成膜する構成としても良い。そして、圧縮応力によって発生する電荷または引張応力によって発生する電荷のいずれか一方の電荷の極性を反転させる構成とする。これにより、圧縮応力によって発生した電荷と引張応力によって発生した電荷とを合算させた電荷を取り出すことができる。したがって、圧電薄膜層13から取り出すことのできる電荷をさらに増加させることができるため、さらに高感度の圧電センサ1を実現することができる。
また、本実施の形態では、上部電極14を圧電薄膜層13に成膜する構成としているが、特に限定されるものではなく、上部電極14と圧電薄膜層13とを信号線によって接続する構成としても良い。これにより、圧電薄膜層13に生じる圧縮応力または引張応力によって発生する電荷を信号線を介して検出することができる。
ここで、図10に示すように、金属ダイアフラム11において圧縮応力が発生する範囲のみに圧電薄膜層13を成膜する構成としても良い。これにより、圧電薄膜層13には圧縮応力のみが働くため、上部電極14は、圧縮応力によって発生する電荷のみを圧電薄膜層13から取り出すことができる。したがって、上記と同様、金属ダイアフラム11に伝達される外部からの圧力が僅かでも上部電極14は圧電薄膜層13からより多くの電荷を取り出すことができる。すなわち、高感度の圧電センサ1を実現することができる。なお、圧電薄膜層13の形状は環状に形成した構成としても良く、また、2個以上に分割した構成としても良い。また、圧電薄膜層13を引張応力が発生する範囲のみに成膜する構成としても良い。
ここで、図11および図12に示すように、圧電薄膜層13を前部筐体22の前端壁22dに直接成膜し、前端壁22dにおける圧電薄膜層13が成膜される部分をダイアフラム加工する構成としても良い。これにより、外部からの圧力を受ける前端壁22dの撓みに付随して、圧電薄膜層13が信号出力棒30に形成された凹部32の内部方向へ撓むことができる。そして、圧電薄膜層13の撓みに応じて電荷が発生する。このように、圧電素子10を装着するための筐体20が金属ダイアフラム11としての機能を兼ねることができるため、金属ダイアフラム11が不要になる。そのため、圧電素子10の構成を簡略化できるので、圧電センサを小型化することができ、コストを低減することができる。
なお、上記ダイアフラムの加工方法としては、例えば、機械加工、化学エッチング、放電加工、レーザ加工等が挙げられる。そして、上記加工により、前端壁22dにおける圧電薄膜層13が成膜される部分の厚みを0.005mm以上10mm以下とすることが好ましい。
また、図13に示すように、圧電薄膜層13を成膜した前部筐体22の前端壁22dに凹部22eを設け、凹部22e内のエッジ部22fの上方にのみ上部電極14を設けた構成としても良い。これにより、凹部22e内の上面に形成される圧力受部22gが圧力を受け、撓みが発生したとき、エッジ部22fの上方に位置する圧電薄膜層13には、圧縮応力が生じ電荷が発生する。そして、この圧縮応力により発生した電荷を上部電極14が取り出すことができる。このように、金属ダイアフラム11を使用することなく、筐体20の撓みを利用して十分な電荷を取り出すことができる。したがって、簡易な構成により高感度の圧電センサ1を実現することができる。
なお、上述ように、上部電極14の間には空間が形成されるので、圧電薄膜層13は、圧力を受けたとき信号出力棒30の方向へ撓むことができる。したがって、信号出力棒30に凹部32を設けない構成としても良い。
また、圧電薄膜層13を成膜する前端壁22dは、シリコン等の半導体によって形成されていても良い。シリコンを用いることにより、大量生産が可能となり安価で小型の圧電センサ1を実現することができる。図14は、図13に示した前端壁22dをシリコンにより形成した場合の圧電センサ1の概略構成を示す断面図である。
ここで、本実施の形態では、圧電薄膜層13を下地層12に成膜する構成としているが、圧電薄膜層13を金属ダイアフラム11に直接成膜する構成としても良い。なお、本実施の形態のように下地層12を設けた場合には、ダイアフラムは金属に限定されるものではなく、例えば、高分子や金属酸化物、金属窒化物、シリコン等の半導体を用いても良い。
また、本実施の形態に用いる圧電薄膜層13の材料は、窒化アルミニウム(AIN)を用いることが好ましい。その理由としては、窒化アルミニウムは、高温下でも安定した圧電特性を有し、また鉛等の重金属を使用していないため環境に影響も少ないことである。なお、圧電薄膜層13は、キュリー温度の存在しない圧電材料であれば他の材料を用いても良い。この「キュリー温度の存在しない圧電材料」とは、圧電特性を有し、かつ温度の上昇に伴った極性転位を起こさない材料であり、例えばウルツ鉱構造の結晶構造をもつ物質が挙げられる。ウルツ鉱構造の結晶構造をもつ物質としては、具体的には、窒化アルミニウム(AlN)や酸化亜鉛(ZnO)等が挙げられる。
このような圧電材料は、結晶が融解あるいは昇華するまで圧電特性を失うことがない。また、ウルツ鉱構造の結晶構造をもつ物質は、結晶に対称性が存在しないため圧電特性を備えており、また強誘電体ではないのでキュリー温度が存在しない。そのため、上記圧電材料からなる圧電素子は、耐熱性に優れ、圧電特性が劣化することがなく、内燃機関のシリンダ内部のように500℃近い高温中に曝されたとしても、その圧電素子としての機能を失うことがない。したがって、圧電素子の冷却装置を使用することなく、内燃機関シリンダ内での使用が可能となる。このように、上記圧電材料からなる圧電素子は、耐熱性に優れ、高温でも圧電特性が劣化することがない。また、加工性に優れ、薄膜化を図る上でも適している。
ここで、キュリー温度が存在しない圧電材料の薄膜を形成する方法については、公知の技術を用いて実現することができる。具体的には、酸化物系、炭素系、窒素系またはホウ化物系セラミックスの焼結体や石英ガラスからなる絶縁性の基板や、インコネル又はSUS630相当のような耐熱性金属材料からなる導電性基板上に圧電性セラミックスを極性制御しながら単結晶状に成長させることによって薄膜を形成することができる。
また、本発明の圧電センサ1の圧電薄膜層13の厚さは、0.1μmから100μmの範囲とすることが好ましい。また、0.5μm以上20μm以下とすることがより好ましく、1μm以上10μm以下とすることがさらに好ましい。圧電薄膜層13の厚さが、0.1μmより薄いと下地層12と上部電極14との間で短絡が発生しやすく、100μmより厚いと成膜時間が長時間になってしまう。
また、圧電薄膜層13は、良好な圧電特性を保つために、その双極子配向度を75%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがさらに好ましい。この双極子配向度とは、電気双極子をなす結晶柱の薄膜表面の極性が正あるいは負の、同一方向のものが占める割合である。もし、結晶柱の極性の方向が完全にランダムであれば、それぞれの結晶柱の圧電性は互いに打ち消しあって、薄膜全体では圧電性が消滅してしまう。圧電薄膜層13の双極子配向度が75%より小さいと、見かけ上の圧電定数d33が双極子配向度100%のときの半分以下になってしまい、圧電薄膜層13の圧電特性が劣化し、良好に圧力を検出できなくなるためである。双極子配向度が75%以上であれば、十分な圧電特性を確保することができる。
上記双極子配向度を75%以上とするためには、結晶柱が成長する際に最初の原子をそろい易くする必要があり、下地層12の材料は圧電薄膜層13の材料と同じ成分の金属、例えば、圧電薄膜層13にAlNを用いる場合には下地層12をAl、圧電薄膜層13にZnOを用いる場合には下地層12をZnとすることが好ましい。また、下地層12を複層とする場合には、最上層、つまり圧電薄膜層13と接する層を圧電薄膜層13の材料と同じ成分の金属を材料とするのが好ましい。
また、本実施の形態では、圧力伝達部材として金属ダイアフラム11を用いたが、金属ダイアフラム11から圧力伝達棒等の他の部材を介して、圧電薄膜層13に圧力を伝達する構成であっても、耐熱性に優れ、冷却手段が不要な圧電センサ1を実現することができる。
また、圧力伝達部材は、金属ダイアフラム11に限定されるものではなく、例えば、ガラス基板などのセラミックスであってもよい。具体的なセラミックスとしては、酸化アルミ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニア、 酸化チタン、酸化イットリウム、酸化ケイ素などの酸化物系セラミックスや、窒化アルミ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウムなどの窒化物系セラミックスや、炭化ケイ素、炭化タングステンなどの炭化物系セラミックスや、二ケイ化モリブデンなどのケイ化物系セラミックスなどが挙げられる。これにより、金属と比較して、耐腐食性、耐熱性および耐圧性などが向上する。なお、ガラス基板を用いたときの圧電センサの特性を調べた実験結果については後述する。
本実施の形態にかかる圧電センサ1について、圧電素子10に加えられる圧力に対する圧電素子10から発生される電荷量を測定する実験を行った。
図15は、本実験に用いた測定系を示すものである。具体的には、圧電素子10を円筒状のガラス管で覆い、その内部に大気圧と等しい密封空間を作る。そして、圧電素子10の上部電極14とアンプとをローノイズ同軸ケーブルにより接続し、アンプはオシロスコープと接続する。なお、本実験では、スパッタリング法により、厚さ0.2mmのインコネル601の金属ダイアフラム11上に厚さ200nmの上部電極14と厚さ1μmの窒化アルミニウム(圧電薄膜層13)とを成膜したAタイプと、上記金属ダイアフラム11上に上記窒化アルミニウムを成膜したBタイプの2種類の圧電素子10を用いた。
上記測定系において、密封空間の大気圧を一気に抜き急減圧させる。このとき、圧電素子10の金属ダイアフラム11は、この急減圧に伴い密封空間の方向へ力を受け撓みが発生する。そして、金属ダイアフラム11の撓みに付随して圧電薄膜層13が撓み、その内部に応力が発生する。そして、圧電薄膜層13内部に発生した応力によって、圧電薄膜層13から電荷が発生する。このとき発生した電荷を上部電極14が取り出し、オシロスコープによって測定することができる。
図16は、上記密封空間を急減圧させたときの圧電素子10から取り出された電荷量を測定した波形図である。また、図17は、圧電素子10に加えられる力と図16の波形図に示す信号振幅から求めた電荷量との関係を示したグラフであり、図18は、上記力と上記電荷量とから換算した、圧力と出力電圧との関係を示したグラフである。
図17の結果より、金属ダイアフラム11に加えられる力と上部電極14から取り出される電荷量とは比例関係となることが分かった。そして、この比例関係を示す直線の傾きは、見かけ上の圧電定数d33(pC/N)、つまり圧電素子10の圧電定数を示している。ここで、圧電素子10の撓み効果を利用しない従来の構成では、その圧電定数d33は、d33=2であった。これに対して、本実施の形態における圧電素子10の撓み効果を利用した場合には、圧電素子10の圧電定数d33は、上記Aタイプでd33=30.808、上記Bタイプでd33=22.305であった。このように、圧電素子10の撓み効果を利用することによって、圧電素子10の圧電定数d33の値が大幅に増加することが分かった。
次に、図8(a)(b)に示す構成、つまり圧電薄膜層13の上面における外周側の領域に外部電極14b、中央部寄りの領域に中央電極14aをそれぞれ個別に設け、金属ダイアフラム11の任意の位置に電極14cを設けた構成において、圧電素子10に加えられる圧力に対する圧電素子10(圧電薄膜層13)から出力される電圧を測定する実験を行った。
図19は、本実験に用いた測定系を示すものである。この測定系は、上述した図15の測定系と同等であり、厚さ0.2mmのインコネル601の金属ダイアフラム11上に厚さ1μmの窒化アルミニウム(圧電薄膜層13)を成膜し、その上に厚さ0.05〜0.3μmの中央電極14aおよび外部電極14bを設けた圧電素子を使用している。なお、金属ダイアフラムの一端には、厚さ0.05〜0.3μmの電極14cを設けている。そして、外部電極14bと電極14cとをローノイズ同軸ケーブルを介してアンプ1に接続すると共に、中央電極14aと電極14cとをローノイズ同軸ケーブルを介してアンプ2に接続し、アンプ1,2はそれぞれオシロスコープと接続する。
図20は、上記測定系において、圧電素子10に圧力を印加したときの圧電薄膜層13から出力される圧力の波形を示すグラフである。なお、上記測定系では、圧電素子10の出力特性を容易に得られるように、本来、圧電素子10に印加される方向とは反対側の方向から圧力を印加している。
図20に示すように、アンプ1に接続される外部電極14bおよびアンプ2に接続される中央電極14aから、同時に出力信号を検出できることが分かった。このように、複数の電極を用いた場合でも、それぞれにおいて同時に出力信号を検出できることが分かった。これにより、出力信号の極性を合わせることにより、個別に検出された出力信号を足し合わせることが可能となる。したがって、外部から印加される圧力が僅かでも、より大きな出力を得ることができるため、圧電センサの感度を向上させることができる。
次に、本実施の形態にかかる圧電センサ1における温度特性および周波数特性を調べる実験を行った。
図21は、圧電センサ1の温度変化に対する圧電応答性の変化を測定したグラフである。なお、圧電応答性は、1ニュートン(N)当たりの電荷量、すなわち圧電定数を測定することにより考察できる。図21に示すように、圧電センサ1は、600℃まで安定した圧電特性を維持できることが分かった。これにより、本実施形態における圧電センサ1によれば、構造物内部等の500℃程度の高温環境下において、安定した測定が可能となる。
また、図22は、圧電センサ1における周波数特性を示すグラフである。図22に示すように、0.3Hz〜100Hzまで測定可能であることが分かった。
次に、本実施の形態にかかる圧電センサ1において、圧力伝達部材にガラス基板11aを用いた場合の圧電素子10に加えられる圧力に対する圧電素子10(圧電薄膜層13)から発生される電荷量を測定する実験を行った。
図23(a)は、圧電センサ1において、圧力伝達部材にガラス基板11aを用いた場合の圧電素子10の概略構成を示す平面図であり、図23(b)は、本実験に用いた測定系を示すものである。この測定系では、厚さ1mmのガラス基板11a上に、厚さ1μmの窒化アルミニウム(圧電薄膜層13)を成膜し、その上に厚さ0.05〜0.3μmの上部電極14を設けた圧電素子を使用している。なお、ガラス基板11aと圧電薄膜層13との間には下部電極12を設けている。そして、下部電極12および上部電極14とアンプとをそれぞれローノイズ同軸ケーブルにより接続し、アンプはオシロスコープと接続する。
図24は、上記測定系において、圧電素子10に圧力を印加したときの圧電薄膜層13から発生する電荷量を示すグラフである。図の結果より、ガラス基板11aに加えられる力と圧電薄膜層13から取り出される電荷量とは比例関係となることが分かった。そして、この比例関係を示す直線の傾きから圧電応答性すなわち圧電定数d33(pC/N)を算出すると、d33=75.4となった。ここで、窒化アルミニウムを用いた従来の構成では、上述のようにd33=2であった。このように、圧力伝達部材にガラス基板を用いた場合でも、圧電素子10の撓み効果を利用することによって、圧電素子10の圧電定数d33の値が大幅に増加することが分かった。
本発明の圧電センサは、高温環境下において被測定物の振動、圧力等を検出することができるため、原子力発電所等のプラントにおけるパイプやタンク内の高温高圧流体の圧力変動計測等へも適用できる。
本発明の一実施形態を示すものであり、圧電センサの概略構成を示す断面図である。 図1に示した圧電センサにおける圧電素子を示す断面図である。 図1に示した圧電センサにおける圧電素子と信号出力棒との関係を示す断面図である。 図4(a)は円柱状の凹部を有する信号出力棒の縦断面図であり、図4(b)は円柱状の凹部を有する信号出力棒の横断面図であり、図4(c)は半球状の凹部を有する信号出力棒の縦断面図であり、図4(d)は角柱状の凹部を有する信号出力棒の横断面図である。 導線を使用して圧電素子から発生する電荷を取り出す圧電センサの概略構成を示す断面図である。 図1に示した圧電センサにおいて上部電極を圧電薄膜層の外周側の領域のみに成膜した圧電素子の断面図である。 図1に示した圧電センサにおいて圧電素子に撓みが発生したときの断面図である。 図8(a)は図1に示した圧電センサにおいて上部電極を圧電薄膜層の外周側の領域および中央部寄りの領域にそれぞれ個別に設けた場合の圧電素子の平面図であり、図8(b)は当該圧電素子のa−a断面図である。 図9(a)は図1に示した圧電センサにおいて圧電薄膜層と上部電極とを分割して成膜した圧電素子の断面図であり、図9(b)は当該上部電極の平面図である。 図1に示した圧電センサにおいて圧電薄膜層を外周側の領域のみに成膜した圧電素子の断面図である。 図1に示した圧電薄膜層を筐体の前端壁に直接成膜した場合の圧電センサの概略構成を示す断面図である。 図1に示した圧電薄膜層を筐体の前端壁に直接成膜した場合の筐体を拡大した断面図である。 図1に示した圧電薄膜層を成膜した筐体の前端壁に凹部を設け場合の圧電センサの概略構成を示す断面図である。 図13に示した凹部を有する前端壁をシリコンにより形成した場合の圧電センサの概略構成を示す断面図である。 本実施形態にかかる圧電センサについて圧電素子に加えられる圧力に対する圧電素子から発生される電荷量を測定するための測定系を示す断面図である。 上記測定系において圧電素子から取り出された電荷量をオシロスコープによって測定した結果を示す波形図である。 上記測定系において圧電素子に加えられる力とオシロスコープによって測定された波形図に示す信号振幅から求めた電荷量との関係を示したグラフである。 上記測定系において圧電素子に加えられる力とオシロスコープによって測定された波形図に示す信号振幅から求めた電荷量とから換算した圧力と出力電圧との関係を示したグラフである。 図8(a)および図8(b)に示す圧電素子に加えられる圧力に対する当該圧電素子から発生される電荷量を測定するための測定系を示す断面図である。 図19に示す測定系において圧電素子に圧力が印加されたときの、当該圧電素子から出力される電圧の波形を示したグラフである。 本実施形態にかかる圧電センサの温度変化に対する圧電応答性の変化を測定したグラフである。 本実施形態にかかる圧電センサにおける周波数特性を示すグラフである。 図23(a)は、本実施の形態にかかる圧電センサにおいて、圧力伝達部材にガラス基板を用いた場合の圧電素子の概略構成を示す平面図であり、図23(b)は、当該圧電素子に加えられる圧力に対する当該圧電素子から発生される電荷量を測定するための測定系を示す断面図である。 図23(b)に示す測定系において、圧電素子に圧力を印加したときの圧電薄膜層から発生する電荷量を示すグラフである。
符号の説明
1 圧電センサ
2 信号伝達部
10 圧電素子
10a 中央付近
10b 両端付近
11 金属ダイアフラム(圧力伝達部材)
12 下地層
13 圧電薄膜層
14 上部電極
20 筐体
21 後部筐体
22 前部筐体
22d 前端壁
30 信号出力棒(導電部材、電極層)
32 凹部
40 電気絶縁環柱
53 開口部
60 導線

Claims (3)

  1. 第1の面にて圧力を受け、その圧力により電荷を発生する圧電素子を備えた圧電センサにおいて、
    前記圧電素子は、圧力を受けて電荷を発生する圧電薄膜層と前記圧電薄膜層から発生する電荷を取り出す上部電極とを備えており、
    前記上部電極は、前記圧電薄膜層の前記第1の面とは反対の第2の面における外周側の領域のみと接しており、
    前記圧電素子の前記第2の面に設けられた、導電性の棒状部材であって軸方向の一端面に凹部のない導電部材が、該端面で前記上部電極と接していることによって、前記導電部材と前記圧電素子とが電気的に接続されていると共に、前記第2の面と前記導電部材との間に空間が形成されていることを特徴とする圧電センサ。
  2. 記上部電極は、前記圧力が作用して前記圧電素子の内部に生じる圧縮応力によって発生する電荷を取り出すように設けられていることを特徴とする請求項に記載の圧電センサ。
  3. 前記圧電素子を装着するための筐体を備えており
    記圧電薄膜層は前記筐体の前端壁に形成され、この前端壁における前記圧電薄膜層が形成されている部分はダイアフラムとして機能するように加工されていることを特徴とする請求項に記載の圧電センサ。
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