JP4883720B2 - 教材提示装置、教材提示方法、教材提示プログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents
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清水智公、中村純一、吉田尚史、服部隆志、萩野達也:"個人の知識に応じた教材の自動構成システムの実現"、情報処理学会研究報告、2002-CE-65、情報処理学会コンピュータと教育研究会、(2002)、pp.41-48
図1は、本発明の実施形態に係る教材提示装置の構成を示すブロック図である。教材提示装置1は、学習時に提示すべき教材を予測する予め構築されたモデルのパラメータと、ユーザが教材とは別に予め受けた学習前テストの結果とに基づいて、複数の教材の中から所定の教材を選択し、ユーザに提示するものである。ここで、教材は、難易度および関連性が未定義である。また、学習時に提示すべき教材を予測するモデルは、教材を学習する予め定められた全ユーザの事前テスト結果に基づいて構築される。この教材提示装置1は、図1に示すように、演算手段2と、入力手段3と、記憶手段4と、出力手段5とを備えている。各手段2〜5はバスライン11に接続されている。
入力データ43は、予め定められた複数の教材の中から、学習時にユーザに提示すべき教材を予測するモデルを構築するためのテスト(このためのテストのことを事前テストという)のデータと、その事前テストに際してユーザに提示された教材とに関するデータを示す。ここで、「学習」とは、ユーザに「教材(問題)」が提示され、ユーザが、提示された教材を活用することである。また、「テスト(問題)」とは、ユーザの理解度を測るために実施されるものである。本明細書では、単に「教材」という場合には、「学習時」に提示される問題のことを指す。また、「事前テスト」は、「学習時」に提示される教材とは異なる「問(問題)」が出題されるだけではなく、モデルを構築する前に実施するテストを指す。また、単に「テスト」という場合には、既にモデルが構築された後に、「学習前」または「学習後」に出題される「問(問題)」であって、「学習時」に提示される教材とは異なる「問(問題)」であるものとする。なお、単なる「テスト」の問(問題)と、「事前テスト」の問(問題)とは、同じであってもよい。
図2は、図1に示した教材提示装置の処理の概要を示す説明図である。まず、教材提示装置1は、前処理として、モデル構築部21によって、全ユーザに関する入力データ43を読み込み、本処理で用いるモデルを構築し、構築したモデルの各パラメータをモデルパラメータ44として記憶手段4に格納する(モデル構築ステップ)。続いて、教材提示装置1は、本処理として、提示部22によって、モデルパラメータ44を読み込むと共に、テスト履歴45から提示対象とする個別のユーザのテスト結果を読み込む。そして、教材提示装置1は、提示部22によって、当該ユーザの学習効果を最大化する教材を、教材46から選択して提示する(提示ステップ)。
次に、演算手段2の各部の構成の詳細を説明する。
モデル構築部(モデル構築手段)21は、入力データ43を用いて、提示すべき教材を予測するための全ユーザについての正解化モデルを構築し、構築したモデルの各パラメータを記憶手段4に格納するものである。ここで、正解化モデルとは、ユーザが学習前テストの所定の問について解いたときに不正解が得られ、かつ、教材を学習後に当該問について解いたときに正解が得られた場合の当該教材を予測するためのモデルである。本実施形態では、正解化モデルは、あるユーザが学習前にある問題を解いて不正解となったときに、そのユーザがその問題を解いて正解を得る事象が生じる確率を表す。
正解化モデルを定式化するために、まず入力データ43を次のように定式化する。
学習前テストおよび学習後テストで出題する問題(問)の集合を、問題集合Vと表記する。また、テストの各問題(問)をiと表記する。問題iは、教材とは異なる。学習前テストにおいて、ユーザnが問題i∈Vを解いたときの正誤xniを式(1)で表す。学習後テストにおいて、ユーザnが問題i∈Vを解いたときの正誤yniを式(2)で表す。
正解化モデルを定式化するために、ユーザnに学習時において提示された教材(問題)をベクトル(提示問題ベクトル)znで式(5)のように定式化する。この提示問題ベクトルは、複数の教材を教材提示対象とするユーザに対して提示することを示すベクトルであって、複数の教材の個数だけベクトルの要素を有し、ベクトルの要素の値として各教材を提示したか否かを2値で示すベクトルである。本実施形態では、一例として、教材をまだ提示していない場合には該当する要素の値を「0」とし、教材を提示した場合には該当する要素の値を「1」とする。式(5)において、提示された問題(教材)をjと表記する。問題jは、学習前後のテストの問題(問)iとは異なる。また、式(5)において、Mは、学習で提示される問題候補の集合を表す。ここで、ユーザには、問題候補の集合Mのうちの一部の問題が提示されるように構成することができる。
は未知パラメータである。μiは、問題i(学習前後のテスト問題)を正解にすることの容易度を表し、θijは、問題i(学習後テスト問題)を正解にすることに対する問題j(学習時の教材)の提示の影響度を表す。
は、ユーザnが学習前にテスト問題「i」を解いたときに不正解であって、学習時にユーザnに提示された問題が「zn」であるときに、ユーザnは学習後にもテスト問題「i」を解いたときに不正解であるような事象が生じる確率を表す。つまり、この確率は、式(9)のように式変形できる。
図3は、図1に示したモデル構築部の構成を示す機能ブロック図である。図3を参照しながら、モデル構築部21の構成について説明する。図3に示すように、モデル構築部21は、前記した式(8)の計算をするために、入力データ読込部211と、モデルパラメータ推定部212と、モデルパラメータ書込部213とを備えている。
提示部(提示手段)22は、記憶手段4から、モデルパラメータ44と、教材提示対象とする個別のユーザのテスト履歴45とを読み出し、当該ユーザに関して期待上昇得点が最大化するように教材を選択してユーザに提示するものである。ここで、期待上昇得点は、学習前テストの得点と、学習後テストの得点との差の期待値を表す。つまり、本実施形態では、学習によって、学習前に「不正解であった問題」について、学習後には、できるだけ「正解」になるような学習効果が最も高い問題を提示する。
期待上昇得点、すなわち、学習時にユーザnに提示された問題が「zn」であるときのユーザnの得点上昇の期待値En(zn)は、前記した式(7)の正解化モデルを用いて式(10)で表される。
は、提示された問題がznのときのユーザnの不正解であった問題iが、正解になる確率を表す。また、式(10)において、I(X)は指示関数を表す。ここで、Xが真ならばI(X)=1、偽ならばI(X)=0となる。なお、式(10)の期待値En(zn)では、簡単のため、各問題の持ち点を一様に1点と仮定した。
を次に提示する。
は、現在までの提示問題znのj番目の要素の値を「1」としたベクトルを表す。また、「j:zn j=0」は、提示問題ベクトルの値が「0」である要素の識別番号を「j」とすることを意味する。
図4は、図1に示した提示部の構成を示す機能ブロック図である。図4を参照しながら、提示部22の構成について説明する。図4に示すように、提示部22は、大別して、テスト履歴読込部221と、モデルパラメータ読込部222と、提示出力部223とを備えている。
図1に示した教材提示装置1が、前記した式(7)に示した正解化モデルを構築した後に、個別のユーザに問題を提示する段階における提示動作について、図5を参照(適宜図1ないし図4参照)して説明する。図5は、図1に示した提示部の動作を示すフローチャートである。ここでは、提示部22の提示出力部223の動作を説明する。
で示される。ここで、ユーザnに提示される予定の問題数が「5」であって、3番目の問題が提示されたときの提示問題ベクトルは、式(13)のように更新される。
<実験設定>
教材とテストとに、TOEIC(登録商標)などで利用される「短文穴埋め問題」を用いた。「短文穴埋め問題」とは、不完全な英文を完成させるために、4つの選択肢から最も適当なものを選ぶ問題である。
教材提示装置1には、正解化モデルを構築する段階と、個別のユーザに問題(教材)を提示する段階とが存在する。まず、前記した式(7)に示すロジスティック回帰に基づく正解化モデルを、他の2つのモデルと比較することで評価する。これら3つのモデルを用いて、ユーザ52人に対して、学習時に、所定の複数の問題(教材)の中からランダムに選択した問題を提示する実験を行った。また、ロジスティック回帰に基づく正解化モデルと比較するモデルは、1)「二項分布」モデル、2)「正誤依存ロジスティック回帰」モデルとした。
「二項分布」モデルは、学習後テストの得点と、学習前テストの得点とから求められる得点上昇が、提示問題には依存しないものと考えるモデルである。この「二項分布」モデルの最尤推定値は、式(14)で与えられる。式(14)の右辺の分母は、学習前テストで、問題iを不正解したユーザ数を示す。また、その分子は、学習前テストで、問題iを不正解し、かつ、学習後テストで問題iを正解したユーザ数となっている。
「正誤依存ロジスティック回帰」モデルでは、学習後テストの得点と、学習前テストの得点とから求められる得点上昇が、「提示問題の正誤」に依存すると考えるモデルである。つまり、前記した式(7)に示すロジスティック回帰に基づく正解化モデルで用いられる特徴量z(提示問題ベクトル)の代わりに、式(15)および式(16)のwを要素に持つ2|M|次元ベクトルwを用いる。このとき「正誤依存ロジスティック回帰」モデルは、式(17)で示される。なお、式(7)に示すロジスティック回帰に基づく正解化モデルは、得点上昇が「提示問題」に依存すると考える。
ユーザが学習前テストである問題を解いたときに不正解であった場合に、そのユーザが学習後テストで、同じ問題を解いたときに正解になるか否かを予測する問題の予測精度により3つのモデルを比較した。なお、学習前および学習後のテストにおいて、ユーザには正解が知らされない。予測精度の比較において、leave-one-out交差検定を用いた。つまり、52人のユーザのうち、51人を学習データ、残り1人をテストデータとして1つの評価用セットとし、テストデータとするユーザを変え、全52評価用セットを作成した。
次に、個別のユーザに問題(教材)を提示する段階について、本実施形態の教材提示装置1により提示された問題で学習したときの学習効果(実施例)を評価した。比較例は、ランダムに選択した問題を提示する手法(ランダム提示:比較例)とした。比較例のランダム提示では、38ユーザで実験(実験A)を行った。実施例では、48ユーザで実験(実験B)を行った。各実験の実験結果として、ユーザの学習後テストの得点と、学習前テストの得点とから求められる得点上昇の平均(平均上昇得点)を図6に示す。
2 演算手段
3 入力手段
4 記憶手段
5 出力手段
11 バスライン
21 モデル構築部(モデル構築手段)
22 提示部(提示手段)
23 メモリ
41 モデル構築プログラム
42 提示プログラム
43 入力データ
44 モデルパラメータ
45 テスト履歴(学習前テストの結果)
46 教材
211 入力データ読込部
212 モデルパラメータ推定部
213 モデルパラメータ書込部
221 テスト履歴読込部
222 モデルパラメータ読込部
223 提示出力部
224 提示問題ベクトル初期化部(提示問題ベクトル初期化手段)
225 提示問題探索部(提示問題探索手段)
226 問題出力部(問題出力手段)
227 提示問題ベクトル更新部(提示問題ベクトル更新手段)
228 提示問題決定処理部(提示問題決定処理手段)
Claims (6)
- 難易度および関連性が未定義である複数の教材を学習する予め定められた全ユーザの事前テスト結果に基づいて学習時に提示すべき教材を予測する予め構築されたモデルのパラメータと、教材提示対象とする個別のユーザが前記教材とは別に予め受けた学習前テストの結果とに基づいて、前記複数の教材の中から所定の教材を選択し、前記選択された教材を前記教材提示対象とするユーザに提示する教材提示装置であって、
前記モデルを構築するための事前テストのデータとして、前記ユーザが前記教材を学習する前に前記教材とは別に予め受けた学習前テストの各問の正誤と、前記ユーザが前記学習前テストの各問の正誤を知らされずに前記教材の学習の後に前記学習前テストと同一の問から成る学習後テストを受けた場合の当該学習後テストの各問の正誤と、前記学習後テストを受ける前に前記ユーザに提示された教材とに関するデータを示す入力データと、前記構築されたモデルの各パラメータと、ユーザ別の前記学習前テストの結果と、教材とを記憶する記憶手段と、
前記入力データを用いて、前記ユーザが前記学習前テストの所定の問について解いたときに不正解が得られ、かつ、教材を学習後に前記所定の問について解いたときに正解が得られた場合の当該教材を予測するための前記全ユーザについての正解化モデルを構築し、構築したモデルの各パラメータを前記記憶手段に格納するモデル構築手段と、
前記記憶手段から、前記構築されたモデルのパラメータと、教材提示対象とする個別のユーザが前記教材とは別に予め受けた学習前テストの結果とを読み出し、当該ユーザに関して、前記学習前テストの得点と、前記学習後テストの得点との差の期待値を表す期待上昇得点が最大化するように前記教材を選択して前記ユーザに提示する提示手段と、
を備えることを特徴とする教材提示装置。 - 前記提示手段は、
前記複数の教材を前記教材提示対象とするユーザに対して提示することを示すベクトルであって、前記複数の教材の個数だけベクトルの要素を有し、前記ベクトルの要素の値として前記各教材を提示したか否かを2値で示すベクトルである提示問題ベクトルの各要素に、初期値として前記すべての教材を提示していないことを示す予め定められた値を設定する提示問題ベクトル初期化手段と、
前記教材提示対象とするユーザに対して未提示の教材の中で、提示したときに、前記期待上昇得点が最大になる教材を探索する提示問題探索手段と、
前記探索された教材を出力する問題出力手段と、
前記提示問題ベクトルの要素のうち前記出力された教材を示す要素について前記教材を提示したことを示す値を設定する提示問題ベクトル更新手段と、
前記教材提示対象とするユーザに対して次に提示する教材の探索と、前記提示問題ベクトルの更新とを、所定の終了条件が満たされるまで繰り返す提示問題決定制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の教材提示装置。 - 難易度および関連性が未定義である複数の教材を学習する予め定められた全ユーザの事前テスト結果に基づいて学習時に提示すべき教材を予測する予め構築されたモデルのパラメータと、教材提示対象とする個別のユーザが前記教材とは別に予め受けた学習前テストの結果とに基づいて、前記複数の教材の中から所定の教材を選択し、前記選択された教材を前記教材提示対象とするユーザに提示するために、
前記モデルを構築するための事前テストのデータとして、前記ユーザが前記教材を学習する前に前記教材とは別に予め受けた学習前テストの各問の正誤と、前記ユーザが前記学習前テストの各問の正誤を知らされずに前記教材の学習の後に前記学習前テストと同一の問から成る学習後テストを受けた場合の当該学習後テストの各問の正誤と、前記学習後テストを受ける前に前記ユーザに提示された教材とに関するデータを示す入力データと、前記構築されたモデルの各パラメータと、ユーザ別の前記学習前テストの結果と、教材とを記憶する記憶手段と、モデル構築手段と、提示手段とを有した教材提示装置の教材提示方法であって、
前記教材提示装置は、
前記モデル構築手段によって、前記入力データを用いて、前記ユーザが前記学習前テストの所定の問について解いたときに不正解が得られ、かつ、教材を学習後に前記所定の問について解いたときに正解が得られた場合の当該教材を予測するための前記全ユーザについての正解化モデルを構築し、構築したモデルの各パラメータを前記記憶手段に格納するモデル構築ステップと、
前記提示手段によって、前記記憶手段から、前記構築されたモデルのパラメータと、教材提示対象とする個別のユーザが前記教材とは別に予め受けた学習前テストの結果とを読み出し、当該ユーザに関して、前記学習前テストの得点と、前記学習後テストの得点との差の期待値を表す期待上昇得点が最大化するように前記教材を選択して前記ユーザに提示する提示ステップと、
を実行することを特徴とする教材提示方法。 - 前記提示手段は、提示問題ベクトル初期化手段と、提示問題探索手段と、問題出力手段と、提示問題ベクトル更新手段と、提示問題決定制御手段とを備え、
前記教材提示装置は、前記提示ステップにて、
前記提示問題ベクトル初期化手段によって、前記複数の教材を前記教材提示対象とするユーザに対して提示することを示すベクトルであって、前記複数の教材の個数だけベクトルの要素を有し、前記ベクトルの要素の値として前記各教材を提示したか否かを2値で示すベクトルである提示問題ベクトルの各要素に、初期値として前記すべての教材を提示していないことを示す予め定められた値を設定する提示問題ベクトル初期化ステップと、
前記提示問題探索手段によって、前記教材提示対象とするユーザに対して未提示の教材の中で、提示したときに、前記期待上昇得点が最大になる教材を探索する提示問題探索ステップと、
前記問題出力手段によって、前記探索された教材を出力する問題出力ステップと、
前記提示問題ベクトル更新手段によって、前記提示問題ベクトルの要素のうち前記出力された教材を示す要素について前記教材を提示したことを示す値を設定する提示問題ベクトル更新ステップと、
前記提示問題決定制御手段によって、前記教材提示対象とするユーザに対して次に提示する教材の探索と、前記提示問題ベクトルの更新とを、所定の終了条件が満たされるまで繰り返す提示問題決定制御ステップと、
を実行することを特徴とする請求項3に記載の教材提示方法。 - 請求項1または請求項2に記載の教材提示装置を構成する各手段として、コンピュータを機能させるための教材提示プログラム。
- 請求項5に記載の教材提示プログラムが記録されたことを特徴とするコンピュータに読み取り可能な記録媒体。
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