以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示装置の構成を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光カラーディスプレイ装置などとして用いられるものであり、例えば、ガラス,シリコン(Si)ウェハあるいは樹脂などよりなる基板11の上に、後述する複数の有機発光素子10R,10G,10Bがマトリクス状に配置されてなる表示領域110が形成されると共に、この表示領域110の周辺に、映像表示用のドライバである信号線駆動回路120および走査線駆動回路130が形成されたものである。
表示領域110内には画素駆動回路140が形成されている。図2は、画素駆動回路140の一例を表したものである。この画素駆動回路140は、後述する第1電極13の下層に形成され、駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2と、その間のキャパシタ(保持容量)Csと、第1の電源ライン(Vcc)および第2の電源ライン(GND)の間において駆動トランジスタTr1に直列に接続された有機発光素子10R(または10G,10B)とを有するアクティブ型の駆動回路である。駆動トランジスタTr1および書き込みトランジスタTr2は、一般的な薄膜トランジスタ(TFT(Thin Film Transistor))により構成され、その構成は例えば逆スタガー構造(いわゆるボトムゲート型)でもよいしスタガー構造(トップゲート型)でもよく特に限定されない。
画素駆動回路140において、列方向には信号線120Aが複数配置され、行方向には走査線130Aが複数配置されている。各信号線120Aと各走査線130Aとの交差点が、有機発光素子10R,10G,10Bのいずれか一つ(サブピクセル)に対応している。各信号線120Aは、信号線駆動回路120に接続され、この信号線駆動回路120から信号線120Aを介して書き込みトランジスタTr2のソース電極に画像信号が供給されるようになっている。各走査線130Aは走査線駆動回路130に接続され、この走査線駆動回路130から走査線130Aを介して書き込みトランジスタTr2のゲート電極に走査信号が順次供給されるようになっている。
図3は、表示領域110の断面構成を表したものである。表示領域110には、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に形成されている。なお、有機発光素子10R,10G,10Bは短冊形の平面形状を有し、隣り合う有機発光素子10R,10G,10Bの組み合わせが一つの画素(ピクセル)を構成している。
有機発光素子10R,10G,10Bは、それぞれ、基板11の側から、上述した画素駆動回路140の駆動トランジスタTr1、平坦化層12、陽極としての第1電極13、絶縁膜14、後述する発光層を含む有機層15、および陰極としての第2電極16がこの順に積層された構成を有している。
このような有機発光素子10R,10G,10Bは、必要に応じて、窒化ケイ素(SiN)または酸化ケイ素(SiO)などの保護膜17により被覆され、更にこの保護膜17上に、熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂などの接着層20を間にしてガラスなどよりなる封止用基板31が全面にわたって貼り合わされることにより封止されている。封止用基板31には、必要に応じてカラーフィルタ32およびブラックマトリクスとしての光遮蔽膜(図示せず)が設けられていてもよい。
駆動トランジスタTr1は、平坦化層12に設けられた接続孔12Aを介して第1電極13に電気的に接続されている。
平坦化層12は、画素駆動回路140が形成された基板11の表面を平坦化するためのものであり、微細な接続孔12Aが形成されるためパターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化層12の構成材料としては、例えば、ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2 )などの無機材料が挙げられる。
第1電極13は、有機発光素子10R,10G,10Bの各々に対応して形成され、例えば、金属よりなる第1層13Aと、第2層13Bとを順に含む積層構造を有している。第1電極13は、第1層13Aと平坦化層12との間に、第3層13Cを有していてもよい。
第1層13Aは、発光層で発生した光を反射させる反射電極としての機能を有しており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。そのため、第1層13Aは、例えば、厚みが100nm以上1000nm以下、具体的には200nm程度であり、高反射率導電体、具体的には、アルミニウム(Al)あるいはアルミニウム(Al)を含む合金、または、銀(Ag)あるいは銀(Ag)を含む合金により構成されている。アルミニウム合金としては、エッチング・洗浄・レジスト剥離工程などでの発生が懸念される腐蝕対策として、インジウム合金と標準電極電位の近いものであることが好ましく、例えば、アルミニウム−ニッケル合金,アルミニウム−白金合金などが挙げられる。
第2層13Bは、有機層15への正孔注入効率を高めるという仕事関数調整層としての機能も有しており、第1層13Aよりも仕事関数の高い材料により構成されていることが好ましい。また、図4に示したように、第1電極13の上には絶縁膜14が設けられ、この絶縁膜14によって、第2層13Bの平面形状における一部が覆われている。第2層13Bのうち絶縁膜14から露出した表面露出部13Dは、酸化物導電体膜13B1である。一方、第2層13Bのうち絶縁膜14で覆われている表面被覆部13Eは、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)またはカドミウム(Cd)など、酸化物が導電性を示す金属よりなる金属膜13B2である。これにより、この表示装置では、後述する製造工程においてスパッタリングターゲットに起因するパーティクルを低減し、第1層13Aと第2層13Bとの間で良好な通電特性を得ることができるようになっている。
酸化物導電体膜13B1は、具体的には、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)およびカドミウム(Cd)からなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む酸化物導電体により構成されていることが好ましい。例えば、インジウム(In)とスズ(Sn)と酸素(O)とを含む化合物(ITO;Indium Tin Oxide),インジウム(In)と亜鉛(Zn)と酸素(O)とを含む化合物(IZO;Indium Zinc Oxide ),酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO),酸化カドミウム(CdO)からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられる。
第2層13Bの厚みは、例えば、0.5nm(5Å)以上3nm(30Å)以下であることが好ましい。0.5nmよりも薄いとホール注入効率の向上効果が得られず、また、3nmよりも厚いと後述する製造工程において表面酸化処理により十分な透明性を有した酸化物導電体膜13B1を形成することが困難となるからである。
第3層13Cは、第1層13Aが平坦化層12から剥離するのを防止する、ソース・ドレイン電極層201との接触抵抗を低減する、または第1電極13をパターニングする際の形状制御を容易にする、などの目的で挿入するものであり、例えば、厚みが5nm以上200nm以下、好ましくは10nm以上50nmであり、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)またはカドミウム(Cd)により構成されている。また、第3層13Cは、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)およびカドミウム(Cd)からなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む酸化物導電体により構成されていてもよい。具体的には、ITO,IZO,酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO),酸化カドミウム(CdO)からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられる。なお、第3層13Cは、第2層13Bと同じ材料、またはその酸化物である必要はない。また、第3層13Cは、必ずしも設ける必要はない。
このような第1電極13は、後述するように、基板11に、第3層13Cと、第1層13Aと、第2層13Bとを順に含む積層構造を形成したのち、表面酸化処理を行うことにより第2層13Bの表面露出部13Dを酸化物導電体膜13B1に改質したものである。
絶縁膜14は、第1電極13と第2電極16との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものであり、導電性を有しないと共に耐酸化性を有する材料により構成されていることが好ましい。後述する製造工程において表面酸化処理による絶縁膜14のアッシングを抑えることができるからである。具体的には、例えば、感光性のアクリル,ポリイミド,ポリベンズオキサゾールなどの有機材料、シリコン酸化物,シリコン窒化物,シリコン酸窒化物などの無機絶縁材料、またはそれらの複合膜が挙げられる。絶縁膜14は、第1電極13の上に設けられると共に、第1電極13の発光領域に対応して開口部14Aを有しており、この開口部14A内の領域が、第2層13Bの表面露出部13D、すなわち酸化物導電体膜13B1となっている。なお、有機層15および第2電極16は、発光領域だけでなく絶縁膜14の上にも連続して設けられていてもよいが、発光が生じるのは絶縁膜14の開口部14Aだけである。
有機層15は、例えば、第1電極13の側から順に、正孔注入層,正孔輸送層,発光層および電子輸送層(いずれも図示せず)を積層した構成を有するが、これらのうち発光層以外の層は必要に応じて設ければよい。また、有機層15は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によってそれぞれ構成が異なっていてもよい。正孔注入層は、ホール注入効率を高めるためのものであると共に、リークを防止するためのバッファ層である。正孔輸送層は、発光層へのホール輸送効率を高めるためのものである。発光層は、電界をかけることにより電子とホールとの再結合が起こり、光を発生するものである。電子輸送層は、発光層への電子輸送効率を高めるためのものである。なお、電子輸送層と第2電極16との間には、LiF,Li2 Oなどよりなる電子注入層(図示せず)を設けてもよい。
有機発光素子10Rの正孔注入層の構成材料としては、例えば、4,4’,4”−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)あるいは4,4’,4”−トリス(2−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(2−TNATA)が挙げられる。有機発光素子10Rの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)が挙げられる。有機発光素子10Rの発光層の構成材料としては、例えば、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )に2,6−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)−N−フェニル]アミノスチリル]ナフタレン−1,5−ジカルボニトリル(BSN−BCN)を40体積%混合したものが挙げられる。有機発光素子10Rの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
有機発光素子10Gの正孔注入層の構成材料としては、例えば、m−MTDATAあるいは2−TNATAが挙げられる。有機発光素子10Gの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられる。有機発光素子10Gの発光層の構成材料としては、例えば、Alq3 にクマリン6(Coumarin6)を3体積%混合したものが挙げられる。有機発光素子10Gの電子輸送層の構成材料としては、例えば、Alq3 が挙げられる。
有機発光素子10Bの正孔注入層の構成材料としては、例えば、m−MTDATAあるいは2−TNATAが挙げられる。有機発光素子10Bの正孔輸送層の構成材料としては、例えば、α−NPDが挙げられる。有機発光素子10Bの発光層の構成材料としては、例えば、スピロ6Φ(spiro6Φ)が挙げられる。有機発光素子10Bの電子輸送層の構成材料としては、例えば、厚みが5nm以上300nm以下であり、Alq3 が挙げられる。
第2電極16は、有機発光素子10R,10G,10Bの共通電極として形成され、例えば、厚みが5nm以上50nm以下であり、アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属元素の単体または合金により構成されている。中でも、マグネシウムと銀との合金(MgAg合金)、またはアルミニウム(Al)とリチウム(Li)との合金(AlLi合金)が好ましい。また、第2電極16は、ITO,IZO,酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO),酸化カドミウム(CdO)からなる群のうちの少なくとも1種により構成されていてもよい。
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
図5ないし図8は、この表示装置の製造方法を工程順に表すものである。まず、図5(A)に示したように、上述した材料よりなる基板11の上に駆動トランジスタTr1を含む画素駆動回路140を形成する。次いで、同じく図5(A)に示したように、例えば、基板11の全面に感光性樹脂を塗布し、露光および現像することにより、平坦化層12および接続孔12Aを形成し、焼成する。
続いて、同じく図5(A)に示したように、例えばスパッタ法により、上述した厚みおよび材料よりなる第3層13Cを形成する。
そののち、図5(B)に示したように、例えばスパッタ法により、上述した厚みおよび材料よりなる第1層13Aを形成する。
第1層13Aを形成したのち、図5(C)に示したように、例えばスパッタ法により、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)またはカドミウム(Cd)など、酸化物が導電性を示す金属よりなる第2層13Bを、上述した厚みで形成する。このとき、スパッタリングターゲットとして、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)またはカドミウム(Cd)などの金属ターゲットを用いることができるので、分割の必要のない大型一体型ターゲットにより、パーティクルの少ない成膜が可能となり、非発光欠陥の原因となる層間ショート欠陥の発生が抑えられる。
なお、第3層13Cまたは第2層13Bを形成する際には、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)またはカドミウム(Cd)などの金属ターゲットを用い、アルゴン(Ar)等の不活性スパッタリングガスに加えて酸素を使用して酸化しつつスパッタする反応性スパッタリングの手法を用いることも可能である。この場合、第3層13Cまたは第2層13Bは、インジウム(In),スズ(Sn),亜鉛(Zn)およびカドミウム(Cd)からなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む酸化物導電体よりなるものとなる。具体的には、例えば、ITO,IZO,酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO),酸化カドミウム(CdO)からなる群のうちの少なくとも1種が挙げられる。反応性スパッタリングでは多少のパーティクルの増加が懸念されるものの、金属ターゲットを用いることにより、分割された酸化物導電体ターゲットを用いる場合に比べてパーティクルの影響は抑えられる。
第2層13Bを形成したのち、図6(A)に示したように、第2層13Bの上にフォトレジストよりなるマスク41を形成し、例えばリソグラフィ技術を用いて露光および現像し、所定の形状にパターニングする。続いて、図6(B)に示したように、マスク41を用いて第2層13B,第1層13Aおよび第3層13Cをエッチングしたのち、図7(A)に示したように、マスク41を除去する。
そののち、基板11の全面にわたり感光性樹脂を塗布し、露光および現像処理を行い、焼成する。これにより、図7(B)に示したように、第3層13C,第1層13Aおよび第2層13Bの積層構造の上に、開口部14Aを有する絶縁膜14を形成する。開口部14A内の領域は、第2層13Bが絶縁膜14から露出した表面露出部13Dとなる。
絶縁膜14を形成したのち、表面露出部13Dに対して表面酸化処理を行うことにより、図8に示したように、表面露出部13Dに、上述した材料よりなる酸化物導電体膜13B1を形成する。一方、第2層13Bのうち絶縁膜14で覆われている表面被覆部13Eは、表面酸化処理を行わない領域となり、上述した材料よりなる金属膜13B2が残る。表面酸化処理としては、例えば高濃度オゾン水,酸素(またはN2O)プラズマ処理、酸素雰囲気下での高温アニール、あるいはその混合プロセスを使用することができる。この工程は先の焼成工程と兼ねてもよいし、第2層13Bを形成後のどの工程で行われてもよい。
このとき、実際には、第2層13Bのみを酸化するような酸化制御は困難であり、酸化が弱ければ、第2層13Bの表面露出部13Dは、厚み方向の一部のみが酸化物導電体膜13B1となり、厚み方向の残部には酸化されない金属膜が残り、第1電極13の反射率を低下させる可能性がある。しかしながら、仮に厚み1nm程度の金属膜が残った場合でも、光はこれを透過することができ、光利用効率への影響はほとんどないものと考えられる。よって、酸化物導電体膜13B1は、第2層13Bのうち厚み方向の少なくとも一部に形成されていればよい。
一方、強い酸化条件下では、図9に示したように、第1層13Aの表層すなわち第2層13Bとの界面に、良好な絶縁体よりなる酸化膜13A1が形成される場合がある。しかし、第2層13Bのうち絶縁膜14で覆われた表面被覆部13Eには、金属膜13B2が残っているので、第1層13Aから第2層13Bの酸化物導電体膜13B1までが、金属膜13B2を介して低いコンタクト抵抗で接続され、良好な通電特性が実現可能となる。
そののち、例えば蒸着法により、上述した材料よりなる有機層15および第2電極16を成膜する。以上により、有機発光素子10R,10G,10Bが形成される。続いて、有機発光素子10R,10G,10Bを、上述した材料よりなる保護膜17で覆い、この保護膜17の上に、接着層20を形成する。続いて、カラーフィルタ32が設けられ、上述した材料よりなる封止用基板31を用意し、有機発光素子10R,10G,10Bが形成された基板11と封止用基板31とを接着層20を間にして貼り合わせる。以上により、図1ないし図4に示した表示装置が完成する。
この表示装置では、各画素に対して走査線駆動回路130から書き込みトランジスタTr2のゲート電極を介して走査信号が供給されると共に、信号線駆動回路120から画像信号が書き込みトランジスタTr2を介して保持容量Csに保持される。すなわち、この保持容量Csに保持された信号に応じて駆動トランジスタTr1がオンオフ制御され、これにより、各有機発光素子10R,10G,10Bに駆動電流Idが注入されることにより、正孔と電子とが再結合して発光が起こる。この光は、第2電極16,カラーフィルタ32および封止用基板31を透過して取り出される。ここでは、第1電極13が、基板11に、金属よりなる第1層13Aと、酸化物が導電性を示す金属よりなる第2層13Bとを順に含む積層構造を形成したのち、表面酸化処理を行うことにより第2層13Bの厚み方向の少なくとも一部に酸化物導電体膜13B1を形成することにより形成されているので、第2層13Bを成膜する際のスパッタリングターゲットに起因するパーティクルが低減されている。よって、層間ショート欠陥による滅点不良が抑制され、表示品質が向上する。
また、第2層13Bの絶縁膜14から露出した表面露出部13Dは酸化物導電体膜13B1であり、第2層13Bの絶縁膜14で覆われている表面被覆部13Eは、酸化物が導電性を示す金属よりなる金属膜13B2であるので、第1層13Aの表層に酸化膜13A1が形成されてしまった場合にも、第1層13Aから酸化物導電体膜13B1までが、金属膜13B2を介した経路Pにより、低いコンタクト抵抗で接続され、第1層13Aと第2層13Bとの間で良好な通電特性を得ることが可能となる。
このように本実施の形態では、第1電極13を形成する工程において、基板11に、金属よりなる第1層13Aと、酸化物が導電性を示す金属よりなる第2層13Bとを順に含む積層構造を形成したのち、表面酸化処理を行うことにより第2層13Bの厚み方向の少なくとも一部に酸化物導電体膜13B1を形成するようにしたので、第2層13Bを成膜する際のスパッタリングターゲットに起因するパーティクルを低減することができる。よって、層間ショート欠陥による滅点不良を抑制することができる。
なお、液晶表示装置の場合、第2層13Bの平面形状における全部に対して表面酸化処理を行い、酸化物導電体膜13B1を形成することができる。すなわち、上記実施の形態のように第2層13Bの平面形状における一部に表面露出部13Dを形成し、この表面露出部13Dだけに対して表面酸化処理を行う必要はない。
なお、上述した実施の形態では、本発明を有機EL表示装置に適用した場合について説明したが、本発明は、例えば図10に示したような反射型液晶表示装置にも適用可能である。この反射型液晶表示装置は、例えば、ガラスよりなる基板61に、TFT62,平坦化層63,画素電極としての上述した第1電極13および配向膜64を形成すると共に、ガラスよりなる基板71に、共通電極72および配向膜73を形成し、両者の間に液晶層80を設けたものである。液晶表示装置の場合には、第2層13Bは、例えば、第1層13Aに含まれるアルミニウム等により液晶が汚染されるのを抑える保護層としての機能も有している。
なお、液晶表示装置の場合、第2層13の平面形状における全部に対して表面酸化処理を行い、酸化物導電体膜13B1を形成することができる。すなわち、上記実施の形態のように第2層13Bの平面形状における一部に表面露出部13Dを形成し、この表面露出部13Dだけに対して表面酸化処理を行う必要はない。
また、液晶表示装置の場合には、第1層13Aの表面に酸化膜13A1が形成されていてもよい。液晶表示装置の場合は、画素電極(第1電極13)は液晶層80の電界制御の目的で用いられるものであり、画素電極の表面からのホール注入効果は必要ないからである。
(モジュールおよび適用例)
以下、上記実施の形態で説明した表示装置の適用例について説明する。上記実施の形態の表示装置は、テレビジョン装置,デジタルカメラ,ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。
(モジュール)
上記実施の形態の表示装置は、例えば、図11に示したようなモジュールとして、後述する適用例1〜5などの種々の電子機器に組み込まれる。このモジュールは、例えば、基板11の一辺に、封止用基板31および接着層20から露出した領域210を設け、この露出した領域210に、信号線駆動回路120および走査線駆動回路130の配線を延長して外部接続端子(図示せず)を形成したものである。外部接続端子には、信号の入出力のためのフレキシブルプリント配線基板(FPC;Flexible Printed Circuit)220が設けられていてもよい。
(適用例1)
図12は、上記実施の形態の表示装置が適用されるテレビジョン装置の外観を表したものである。このテレビジョン装置は、例えば、フロントパネル310およびフィルターガラス320を含む映像表示画面部300を有しており、この映像表示画面部300は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
(適用例2)
図13は、上記実施の形態の表示装置が適用されるデジタルカメラの外観を表したものである。このデジタルカメラは、例えば、フラッシュ用の発光部410、表示部420、メニュースイッチ430およびシャッターボタン440を有しており、その表示部420は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
(適用例3)
図14は、上記実施の形態の表示装置が適用されるノート型パーソナルコンピュータの外観を表したものである。このノート型パーソナルコンピュータは、例えば、本体510,文字等の入力操作のためのキーボード520および画像を表示する表示部530を有しており、その表示部530は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
(適用例4)
図15は、上記実施の形態の表示装置が適用されるビデオカメラの外観を表したものである。このビデオカメラは、例えば、本体部610,この本体部610の前方側面に設けられた被写体撮影用のレンズ620,撮影時のスタート/ストップスイッチ630および表示部640を有しており、その表示部640は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
(適用例5)
図16は、上記実施の形態の表示装置が適用される携帯電話機の外観を表したものである。この携帯電話機は、例えば、上側筐体710と下側筐体720とを連結部(ヒンジ部)730で連結したものであり、ディスプレイ740,サブディスプレイ750,ピクチャーライト760およびカメラ770を有している。そのディスプレイ740またはサブディスプレイ750は、上記各実施の形態に係る表示装置により構成されている。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および厚み、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および厚みとしてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。例えば、上記実施の形態では、第2層13Bの平面形状における一部を絶縁膜14で覆って表面酸化処理を行うようにしたが、絶縁膜14の代わりに、マスクを用いて第2層13Bの平面形状における一部を覆うようにしてもよい。
また、上記実施の形態では、有機発光素子10R,10B,10Gの構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。例えば、上記実施の形態では、第1電極13が、平坦化層12を間にして画素駆動回路140の上層に形成されている場合について説明したが、第1電極13は、画素駆動回路140と同層に形成されていてもよい。または、TFTのソース・ドレイン電極と第1電極13とを共用するようにしてもよい。
更に、上記実施の形態では、アクティブマトリクス型の表示装置の場合について説明したが、本発明はパッシブマトリクス型の表示装置への適用も可能である。加えて、上記実施の形態では、発光層で発生した光を第2電極16側から取り出すトップエミッション方式の電極形成方法として説明したが、本発明は、発光層で発生した光を第1電極13側から取り出すボトムエミッション方式の電極形成にも応用が可能である。更にまた、アクティブマトリクス駆動のための画素駆動回路の構成は、上記実施の形態で説明したものに限られず、必要に応じて容量素子やトランジスタを追加してもよい。その場合、画素駆動回路の変更に応じて、上述した信号線駆動回路120や走査線駆動回路130のほかに、必要な駆動回路を追加してもよい。
更に、本発明は、上記実施の形態で説明した有機EL表示装置または液晶表示装置に限らず、無機EL表示装置などの他の表示装置にも適用可能である。