JP4882252B2 - 振動波モータ - Google Patents
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Description
この摩擦接触面は、潤滑油等を用いることにより、磨耗を低減することは可能であるが、モータのトルク(摩擦係数×加圧力に比例)が小さくなるので、非流体力学的な潤滑、いわゆる境界潤滑が主とならざるを得ない。
しかし、いずれの手法も、磨耗は低減されるが、摩擦駆動時に不快な異音が発生するという問題があった。また、特許文献2に開示された手法は、加工工程が増えるため生産コストがかかるという問題があった。
例えば、摩擦駆動面の一方に、フッ素樹脂とニッケル−リン(Ni−P)とを複合メッキ化して用いることにより、異音を低減できる。しかし、フッ素樹脂の添加量等によっては、相手側の摩擦接触面からの攻撃を受けてフッ素樹脂がNi−Pメッキから脱落したり、フッ素樹脂が抜け出た孔によるμm〜サブμmオーダーの凹凸が刃のような働きをして相手側の摩擦接触面を攻撃したり、フッ素樹脂が抜け出ることによりメッキ自身の破断強度が小さくなったりするため、異音を低減できても磨耗量が大きくなってしまう。
従って、磨耗と異音との双方を同時に低減することは困難であった。
請求項1の発明は、電気機械変換素子(11)の励振により、弾性体(12)に振動を発生する振動子(11,12)と、前記振動により、その振動子との間で相対運動を行う相対運動部材(13)と、前記振動子と前記相対運動部材とを加圧接触させる加圧部材(12)と、を備える振動波モータにおいて、前記振動子と前記相対運動部材との摩擦接触面を含む部分の少なくとも一方は、遷移金属及び自己潤滑性物質により形成された複合皮膜層(17)であり、他方は、多孔質酸化皮膜層(18)であり、前記複合皮膜層及び前記多孔質酸化皮膜層は、ともにビッカース硬度が250以上であり、かつ、そのビッカース硬度の差が100以下であること、前記複合皮膜層(17))は、無電解ニッケル−リン及びフッ素樹脂により形成された複合メッキ層であること、及び、前記多孔質酸化皮膜層(18)は、アルミニウム又はアルミニウム合金表面に陽極酸化処理を施してその表面に酸化皮膜を形成した層であること、を特徴とする振動波モータである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の振動波モータにおいて、前記多孔質酸化皮膜層の膜厚は、80μm以下であること、を特徴とする振動波モータである。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の振動波モータにおいて、前記複合皮膜層の膜厚は、40μm以下であること、を特徴とする振動波モータである。
請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動波モータにおいて、前記複合皮膜層は前記振動子に形成されており、前記多孔質酸化皮膜層は前記相対運動部材に形成されていること、を特徴とする振動波モータである。
(1)振動子と相対運動部材との摩擦接触面を含む部分の少なくとも一方は、遷移金属及び自己潤滑性物質により形成された複合皮膜層であり、他方は、多孔質酸化皮膜層であり、複合皮膜層及び多孔質酸化皮膜層は、ともにビッカース硬度が250以上であり、かつ、そのビッカース硬度の差が100以下であるので、摩擦接触面の磨耗を低減し、長時間に渡り安定した駆動を実現でき、振動波モータを長寿命化できる。
(2)複合皮膜層は、無電解ニッケル−リン及びフッ素樹脂により形成された複合メッキ層であり、摩擦係数が小さく、自己潤滑性を有するフッ素樹脂を含むので、摩擦接触面の磨耗を低減でき、摺動時の異音を小さくすることができる。
(3)多孔質酸化皮膜層は、アルミニウム又はアルミニウム合金表面に陽極酸化処理を施してその表面に酸化皮膜を形成した層であるので、通常の室内環境において、腐食の発生がなく、安定して使用できる。
図1は、本発明による振動波モータの実施例を示す図である。
この振動波モータ10は、振動子を構成する圧電体11、弾性体12を備え、この振動子が移動体13に加圧接触するアクチュエータである。
弾性体12は、導電性を有する接着剤等により圧電体11と接着され、圧電体11の励振により進行性振動波を発生させるものである。弾性体12は、金属材料、例えば、黄銅や、ステンレス材料,インバー材料等の鉄合金から形成される。
移動体13は、弾性体12に加圧接触され、進行性振動波により摩擦駆動される相対運動部材である。
フレキシブルプリント基板14は、圧電体11に駆動信号を供給するためのものであり、圧電体11の所定の電極部と電気的に接続されている。
弾性体12は、移動体13との摩擦接触面上に、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17が設けられている。
移動体13は、アルミニウム合金材料により形成され、弾性体12との摩擦接触面上に、多孔質酸化皮膜層であるアルマイト皮膜層18が設けられている。
従って、弾性体12(振動子)と移動体13との摩擦接触面は、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17と、アルマイト皮膜層18とが接触する形態となっている。
弾性体12は、ステンレス(SUS304)により形成され、移動体13との摩擦接触面に形成された無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17は、無電解ニッケル−リン及びフッ素樹脂により形成された複合皮膜層である。この無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17は、その膜厚が40μm以下に形成されていることが好ましい。圧電体11は、エポキシ系接着剤等により、この弾性体12の底面(振動体13側とは反対側の面)に接着される。
実際に駆動した各実施例及び各比較例の振動波モータは、略同一の形状であるが、図3に示すように、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17及びアルマイト皮膜層18のビッカース硬度、そのビッカース硬度の差が異なる。
本発明による実施例1から実施例6までの振動波モータは、図3に示すように、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17及びアルマイト皮膜層18のビッカース硬度はともに250以上であり、かつ、そのビッカース硬度の差は100以下である。
比較例1から比較例3までの振動波モータは、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17及びアルマイト皮膜層18は、ともにビッカース硬度が250以上である。しかし、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17は、加熱硬化処理が施されており、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17とアルマイト皮膜層18とのビッカース硬度の差は、100を超えている。
比較例4及び比較例5の振動波モータは、図3に示すように、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17とアルマイト皮膜層18とのビッカース硬度の差は100以下である。しかし、比較例4の振動波モータは、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17のビッカース硬度が250未満であり、比較例5の振動波モータは、アルマイト皮膜層18のビッカース硬度が250未満である。
耐久性については、実施例1から実施例6までの振動波モータは、良好であった。
しかし、図3に示すように、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17とアルマイト皮膜層18とのビッカース硬度の差が100を超える比較例1から比較例3までの振動波モータは、耐久性が劣るという結果が得られた。
また、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17又はアルマイト皮膜層18のどちらか一方のビッカース硬度が250未満である比較例4、比較例5の振動波モータも、耐久性が劣るという結果が得られた。
また、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17は、膜厚が40μmを超える場合、その製作過程上に発生するPTFEが偏析している部分が顕著に現れ、アルマイト皮膜層18及び無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17の磨耗が著しく増加した。
さらに、アルマイト皮膜層18又は無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17のビッカース硬度を250よりも小さくすると、磨耗粉の発生が著しく増加した。
(1)摩擦接触面の磨耗量が極めて小さく、長時間にわたって安定した摩擦駆動ができる。
(2)弾性体12と移動体13との加圧によって生じる駆動トルクが大きい。
(3)摩擦駆動時に発生する異音が小さい。
(4)長時間の駆動により、経時劣化が少なく、安定した駆動が得られる。
このシビアーマイルド遷移とは、一般的になじみ現象と呼ばれるものである。この組合せの場合、激しい磨耗(シビアー磨耗)が直線的に進行するのではなく、一定距離を摩擦した後には、摩擦接触面上に摩擦材両者(アルミニウム、ニッケル)の混合層及びその酸化物層が生じ、それが表面保護層となって、マイルドな磨耗へと遷移が生じるので、長時間安定した駆動ができる。
以上説明した実施例に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。
(1)本実施例において、弾性体12側に無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17が設けられ、移動体13側にアルマイト皮膜層18が設けられる例を示したが、これに限らず、これとは逆に、弾性体12をアルミニウム又はアルミニウム合金により形成し、その移動体13側にアルマイト皮膜層18を設け、移動体13の弾性体側12側に、無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層17を設けてもよい。
また、アルマイト皮膜層18は、硫酸アルマイトである例を示したが、これに限らず、例えば、シュウ酸系アルマイト、混酸系アルマイト等でもよい。
11 圧電体
12 弾性体
13 移動体
14 フレキシブルプリント基板
15 振動吸収材
16 支持体
17 無電解Ni−P/PTFE複合メッキ皮膜層
18 アルマイト皮膜層
Claims (4)
- 電気機械変換素子の励振により、弾性体に振動を発生する振動子と、
前記振動により、その振動子との間で相対運動を行う相対運動部材と、
前記振動子と前記相対運動部材とを加圧接触させる加圧部材と、
を備える振動波モータにおいて、
前記振動子と前記相対運動部材との摩擦接触面を含む部分の少なくとも一方は、遷移金属及び自己潤滑性物質により形成された複合皮膜層であり、他方は、多孔質酸化皮膜層であり、
前記複合皮膜層及び前記多孔質酸化皮膜層は、ともにビッカース硬度が250以上であり、かつ、そのビッカース硬度の差が100以下であること、
前記複合皮膜層は、無電解ニッケルーリン及びフッ素樹脂により形成された複合メッキ層であること、及び、
前記多孔質酸化皮膜層は、アルミニウム又はアルミニウム合金表面に陽極酸化処理を施してその表面に酸化皮膜を形成した層であること、
を特徴とする振動波モータ。 - 請求項1に記載の振動波モータにおいて、
前記多孔質酸化皮膜層の膜厚は、80μm以下であること、
を特徴とする振動波モータ。 - 請求項1又は請求項2に記載の振動波モータにおいて、
前記複合皮膜層の膜厚は、40μm以下であること、
を特徴とする振動波モータ。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動波モータにおいて、
前記複合皮膜層は前記振動子に形成されており、前記多孔質酸化皮膜層は前記相対運動部材に形成されていること、
を特徴とする振動波モータ。
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