JP4876891B2 - 物質分級装置及び物質分級方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶液中の微粒子や不純物の捕集又は検出に用いられ、特に細胞やバクテリア、生体高分子(例えば、タンパクやDNA)等の生体物質をサイズ分級するのに好適な物質分級装置及び物質分級方法に関する。
溶液中の物質を分級するための技術として、例えば特許文献1〜3に示す技術が知られている。特許文献1では、マイクロ流路中に収容したサイズの異なる粒子に、交流電場を与えることにより粒子を選別している。また、特許文献2には、マイクロ流路に電極を配列し、粒子の電荷特性により粒子を選別する方法が記載されている。また、特許文献3には、サイズの異なる粒子を含む溶液の流路に、粒子のサイズに応じて異なる層流を形成することで、粒子を分級する方法が記載されている。
特開2004−243238号公報 特開平5−126796号公報 特開2005−205387号公報
しかしながら、電界を利用する特許文献1及び2の方法では、流路に電界を形成するための電極を設ける必要がある他、分級が粒子の電荷特性に依存して行われるため、サイズによる分級を目的とする場合は精度の良い結果が得られなかった。また、分級できる物質が荷電粒子に限定されるという問題もあった。
また、特許文献3に開示されているような方法では、流路構造が複雑になるほか、送流を形成させるため流体の供給源(ポンプ)が2系統必要であり、かつ、流速や流量の厳密な制御を行う必要がある。
本発明は、上述のような問題点に鑑みてなされたものであり、簡便な構成でかつ精度の高いサイズ分級が可能な物質分級装置及び物質分級方法を提供することをその目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の請求項1による物質捕集装置は、表面に沿って延びる凹状の流路を形成した流路基板と、前記流路基板に重ねられ、前記流路の流路方向の一部を覆う板と、を備え、前記流路は下流側に向かうに従って浅くなっており、前記板と前記流路の底面との間に前記流路中を流れる物質の捕集空間を形成する物質分級装置であって、流路方向に沿って付され、前記物質が捕集される流路方向の位置に対応して当該物質のサイズを特定可能な目盛を備え、前記板を流路方向に沿ってスライド可能にするスライド機構を備えることを特徴とする。
このような構成の物質分級装置においては、溶液中の物質の径が、板と流路の底面との間の距離(以下、「ギャップ」と記す。)とほぼ同等の大きさであると捕集される。ギャップは、流路方向の位置に応じた大きさとなることから、物質が捕集された流路方向の位置によって捕集される物質のサイズを特定できる。物質のサイズに直接相関するのはギャップの大きさであるが、流路方向に沿って目盛を付す方が、流路基板を水平に配置する場合に見やすくなり、また、多くの場合、ギャップの大きさよりも捕集空間の流路方向の長さの方が大きくなるので、サイズを判別する精度が高くなる。
本発明の請求項2による物質分級装置は、請求項1において、前記流路は、底面が前記流路基板の基板面に対し傾斜面として形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項3による物質分級装置は、請求項1又は2において、前記目盛は、前記流路の下流側端部を基準とした流路方向の任意の位置に付されていることを特徴とする。
本発明の請求項4による物質分級装置は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記目盛を前記板又は前記流路基板に付したことを特徴とする。
発明の請求項による物質分級装置は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記スライド機構は、前記流路方向に沿って前記板を駆動する駆動装置を備えることを特徴とする。
本発明の請求項による物質分級装置は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記スライド機構は、前記流路方向に沿って前記板を案内する案内部を備えることを特徴とする。
発明の請求項による物質分級方法は、表面に沿って延びる凹状の流路を形成した流路基板と、前記流路基板に重ねられ、前記流路の流路方向の一部を覆う板と、を備え、前記流路は下流側に向かうに従って浅くなっており、前記板と前記流路の底面との間に前記流路中を流れる物質の捕集空間を形成する物質分級装置を用いた物質分級方法であって、前記物質が捕集された流路方向の位置に基づいて、その捕集された物質のサイズを特定し、前記捕集空間に物質を捕集後、捕集された目的の物質を解放する位置まで前記板を上流側にスライドさせて、前記目的の物質を回収することを特徴と
する。
本発明によれば、簡便な装置によって、精度の高いサイズ分級を行うことができる。
次に、図面を参照して本発明の実施の形態である実施例1〜実施例3について説明する。
[第1実施例]
(構成)
図1(a)は第1実施例の物質捕集装置Aの側面図、(b)は平面図であり、図2は物質捕集装置Aに流路2を形成する方法を示す図、図3は流路2の構造を説明するための図である。
図1に示す物質捕集装置Aは、流路2を形成したガラス板(10×20mm、厚さ1mm)1に、カバーガラス3を重ねて形成した。このガラス板1が本発明の流路基板に相当し、カバーガラス3が本発明の板に相当する。
流路2は、図2に示すようにして作製した。まず、ガラス板1の長手方向片側端部の裏面側に厚さ500μmのSiウエハを敷き、ガラス板1を水平面に対して傾斜させた状態で固定した。このとき、ガラス板1は約1.43°(=Tan(0.5/20))の傾斜勾配で固定されていることになる。この後、ダイシングソーを用いて、Siウエハを敷いた側から300μmの切り込み量でガラスの長手方向へ幅100μmの直線の溝を形成した。これにより、ガラス板1表面に、底面が流路方向に沿って約1.43°傾斜した直線溝状の流路2が約12mmの長さで形成される。
カバーガラス3には、市販のカバーガラス(8×12mm、厚さ0.12〜0.17mm)を用い、流路2の流路終端2a(流路2の底が浅くなる方の端部)から上流側に0.2mmの位置で固定した。流路2底面の傾斜が約1.43°の場合、流路2の深さと流路終端2aからの距離とは表1に示す関係にある。このため、流路2の底面とカバーガラス3の下流側端部間のギャップGは、約5μm(=0.2×(Tan1.43°))となる(図3参照)。また、このカバーガラス3には、流路方向に沿って所定間隔(例えば、1.5mm間隔)で目盛線m〜mを付した。
Figure 0004876891
流路始端2b側へ、サンプル溶液を導入するためのチューブ5(外径約300μm)を固定し、サンプル溶液が漏れない様、チューブ5の周辺をPDMS(polydimethylsiloxane)でシールした。また、ガラス板1上の流路終端2a側に、流路終端2aをPDMSにより作製した側壁4aで取り囲み、廃液を回収する回収用チャンバ4を形成した。
(作用及び効果)
次に、上記構成の物質捕集装置Aの使用方法や作用効果について説明する。
物質捕集装置Aの使用時には、流路始端2bからポンプによってサンプル溶液を流路2に送り出す。流路2の途中、カバーガラス3の固定部分では、サンプル溶液中の物質のうち、カバーガラス3と流路2の底面間のギャップGと略同径の物質が挟まれ、捕集される。ギャップGの大きさは、流路2の深さに相当し、流路2底面の傾斜により下流側に向かうに従って小さくなっているため、サイズの小さな物質ほど下流側で捕集されることとなり、表1に示すように流路方向の位置と捕集物質のサイズが相関する。したがって、図1(a)及び(b)に示すように種々のサイズの物質を流した場合には、捕集物質sがそのサイズに応じて流路方向に分布し、その物質のサイズは、流路方向に沿って所定間隔に付されたカバーガラス3の目盛線によって知ることができる。例えば、表1に示す関係にある場合、流路終端2aから3.2mmの位置に付された目盛線m付近にある物質は、外径が80μm前後であることが確認できる。
サンプル溶液を流し終わった後は、ガラス板1やカバーガラス3が透明部材であるので、ガラス板1にカバーガラス3を被せたまま目的のサイズの物質を顕微鏡で観察することもできるし、捕集物質sの中から目的のサイズの物質sを取り出してもよい。目的の物質sを取り出す場合には、ポンプからの送液を停止し、カバーガラス3を取り外す。このとき、ガラス板1とカバーガラス3の間に残った溶液を下流側からスポイトなどで吸い取り、除去した後に、カバーガラス3を取り外すと、取り外し時に下流側の捕集物質sが上流側に流れ出したりするのを防止でき、捕集時の状態を保存したまま、目的の物質を取り出すことができる。また、ガラス板1を裏返すなどして残液を除去すると、図1(c)に示すように捕集時の状態を維持して、目盛線mが付されたカバーガラス3の側に捕集物質sを取り出すことができるので、サイズを正確に特定した状態で取り出すことができる。
なお、ギャップGよりも外径が小さな物質は、流路終端2aまで流されて、回収用チャンバ4内に回収される。
以上のように、カバーガラス3の流路方向に沿って流路方向の位置に応じた目盛線を付すことで、捕集物質のサイズを特定できるので、種々の物質の混合溶液をサイズ分級したり、目的の物質のサイズを特定したり、目的サイズの物質を分離したりすることができる。物質のサイズに直接相関するのはギャップの大きさであるが、このように、流路方向に沿って目盛を付す方が、流路基板を水平に配置するので見やすく、また、ギャップの大きさよりも捕集空間の流路方向の長さの方が大きいので、サイズを判別する精度が高くなる。
なお、第1実施例では、流路方向に沿って所定間隔で目盛線m〜mを付したが、これに限らず、例えば、目的の物質のサイズに応じた流路方向位置にのみ目盛線を付してもよい。また、第1実施例では、目盛線を付しているだけだが、目盛線と併せて、当該目盛線の位置により特定される物質の外径サイズの数値を付したりしてもよい。
[第2実施例]
次に、第2実施例について説明する。
図4に、第2実施例の物質捕集装置Aを示す(図4(a)は側面図、(b)は(a)の物質捕集装置Aのカバーガラス3を上流側へスライドさせた場合の平面図である)。第2実施例の物質捕集装置Aは、第1実施例とほぼ同様の構成であるが、本発明の駆動装置である圧電素子をカバーガラス3に接続し、カバーガラス3を流路方向に沿ってスライド可能にした点が異なっている。以下、この異なる点を中心に説明し、その他の部分は説明を省略する。
図4の物質捕集装置Aでは、ガラス板1の板厚方向に突出するリブ6が、当該ガラス板1の表面側の周囲に沿って形成されている。なお、リブ6は、ガラス板1の短手方向の一端側であって、流路2の上流側では未形成となっている。また、反対の端部側に形成され部分は、流路終端2aから流出する溶液の回収用チャンバ4を形成する。カバーガラス3は、上記のように圧電素子に接続された状態でガラス板1の表面に重ねられており、リブ6に案内され、流路方向に沿ってスライド可能になっている。リブ6は、本発明の案内部に相当し、例えば、樹脂材料、金属材料やガラスで形成できる。リブ6と圧電素子によって本発明のスライド機構が構成されている。なお、流路2の構造や形成方法、ガラス板1及びカバーガラス3の材質や大きさ、カバーガラス3に所定間隔の目盛線が付されている点等は、第1実施例と同じである。
次に、上記構成の物質捕集装置Aの使用方法や作用効果について説明する。
物質捕集装置Aの使用時には、カバーガラス3を駆動して、目的物質のサイズに応じ当該物質を捕集できる位置にカバーガラス3の位置を設定する。つまり、第2実施例では、カバーガラス3の位置を変更することで、1つの物質捕集装置Aで種々のサイズの物質の捕集に対応できる。カバーガラス3の位置を設定したら、サンプル溶液をポンプで送り出す。これにより、第1実施例と同様に、ギャップとほぼ同径の物質sが、カバーガラス3と流路2の底面との間に捕集される(図4(a)参照)。捕集物質sのサイズは、カバーガラス3に付された目盛線m〜mによって確認できる。なお、第2実施例では、カバーガラス3の位置を調整することで、流路終端2aからの位置が変わるので、カバーガラス3の調整後に流路終端2aからの位置を確認しておく必要がある。
サンプル溶液を流し終わった後は、ガラス板1やカバーガラス3が透明部材であるので、ガラス板1にカバーガラス3を被せたまま目的のサイズの物質を顕微鏡で観察することもできるし、捕集物質sの中から目的のサイズの物質sを取り出してもよい。
目的の物質sを取り出す場合には、ポンプからの送液を停止し、圧電素子で駆動し、目的の捕集物質sを解放する位置までカバーガラス3をスライドさせる。これを図4(b)により具体的に説明する。図4(b)は、あらかじめサイズが特定された目的物質をサンプル溶液から捕集する例である。この場合、サンプル溶液を流す前に、目的物質s1(図中の黒塗りの丸)がカバーガラス3の下流側端部付近で捕集されるようにカバーガラス3の位置を設定する。サンプル溶液を流し終わった後、捕集された目的物質s1を解放する位置までカバーガラス3をスライドさせ、そのままの状態でポンプから再び送液すると、解放した部分の目的物質s1のみが回収用チャンバ4に送り出される。これにより、回収用チャンバ4から目的物質s1を回収できる。なお、上流側からポンプで送液する代わりに、スポイトやポンプでなどで下流側から溶液を吸引し、目的物質s1を回収してもよい。
以上のように、カバーガラス3を流路方向に沿ってスライド可能にすることで、種々のサイズの物質を捕集でき、さらに、捕集した物質の中から目的のサイズの物質を容易に回収できる。
なお、第2実施例では、捕集物質s1のみを回収する場合について説明したが、上記操作を繰り返せば、サイズの小さなものから大きなものへ捕集物質s2〜s4を順次回収することができる。
また、カバーガラスのスライド方法としては、圧電素子に限らず、目的物質のサイズ(スライド距離)に応じた方法(アクチュエータ)が利用できる。
[第3実施例]
次に、第3実施例について説明する。
図5に、第3実施例の物質捕集装置Aを示す(図5(a)は側面図、(b)は(a)の物質捕集装置Aのカバーガラス3を上流側へスライドさせた場合の平面図、(c)はカバーガラス3を取り外した状態の平面図である。)。第3実施例の物質捕集装置Aは、目盛線m〜mをカバーガラス3でなく、ガラス板1の方に付した点が第2実施例と異なっている。この目盛線m〜mは、印刷やエッチングなどの方法でガラス板1の裏面側に、流路終端2aから所定距離に付されている。この目盛線m〜mは、ガラス板1及びカバーガラス3が透明であるので、表側からでも確認できる。なお、その他の部分は第2実施例と同様であるので説明を省略する。
以上のように、目盛線m〜mをガラス板1側に付すと、サンプル溶液を流し終わった後、カバーガラス3をスライドさせても目盛線m〜mが移動しないので、目的のサイズを正確に把握して、捕集物質s1を回収できる(図5(b)参照)。
なお、流路2に残った溶液を下流側からスポイトなどで吸い取り、除去すれば、図5(c)に示すようにカバーガラス3を完全に取り外してもサイズ分級した状態を維持できるので、この状態から目的物質を回収してもよい。
また、図6に示すように、目盛線が付された台座7をガラス板1の下に敷いて、サイズの判定を行ったりしてもよい。
(a)は本実施形態の物質捕集装置の側面図、(b)は平面図である。 物質捕集装置に流路を形成する方法を示す図である。 流路2の構造を説明するための図である。 (a)は第2実施例の物質捕集装置の側面図、(b)は(a)の物質捕集装置のカバーガラスを上流側へスライドさせた場合の平面図である。 (a)は第3実施例の物質捕集装置の側面図、(b)は(a)の物質捕集装置のカバーガラス3を上流側へスライドさせた場合の平面図、(c)は(a)の物質捕集装置のカバーガラスを取り外した状態の平面図である。 目盛線付きの台座の使用状態を説明するための図である。
符号の説明
1 ガラス板
2 流路
2a 流路終端
2b 流路始端
3 カバーガラス
4 回収用チャンバ
4a 側壁
5 チューブ
6 リブ
A 物質捕集装置
G ギャップ
m 目盛線

Claims (7)

  1. 表面に沿って延びる凹状の流路を形成した流路基板と、
    前記流路基板に重ねられ、前記流路の流路方向の一部を覆う板と、を備え、
    前記流路は下流側に向かうに従って浅くなっており、前記板と前記流路の底面との間に前記流路中を流れる物質の捕集空間を形成する物質分級装置であって、
    流路方向に沿って付され、前記物質が捕集される流路方向の位置に対応して当該物質のサイズを特定可能な目盛を備え
    前記板を流路方向に沿ってスライド可能にするスライド機構を備えることを特徴とする物質分級装置。
  2. 前記流路は、底面が前記流路基板の基板面に対し傾斜面として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の物質分級装置。
  3. 前記目盛は、前記流路の下流側端部を基準とした流路方向の任意の位置に付されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の物質分級装置。
  4. 前記目盛を、前記板又は前記流路基板に付したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の物質分級装置。
  5. 前記スライド機構は、前記流路方向に沿って前記板を駆動する駆動装置を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の物質分級装置。
  6. 前記スライド機構は、前記流路方向に沿って前記板を案内する案内部を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の物質分級装置。
  7. 表面に沿って延びる凹状の流路を形成した流路基板と、
    前記流路基板に重ねられ、前記流路の流路方向の一部を覆う板と、を備え、
    前記流路は下流側に向かうに従って浅くなっており、前記板と前記流路の底面との間に前記流路中を流れる物質の捕集空間を形成する物質分級装置を用いた物質分級方法であって、
    前記物質が捕集された流路方向の位置に基づいて、その捕集された物質のサイズを特定し、
    前記捕集空間に物質を捕集後、捕集された目的の物質を解放する位置まで前記板を上流側にスライドさせて、前記目的の物質を回収することを特徴とする物質分級方法。
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