JP4876780B2 - タービン発電機 - Google Patents

Description

本発明は、タービン発電機に関するものである。

一般的に、タービン発電機は、回転磁界を発生させるロータと、ロータの外周側に設置されスロットが形成される固定子鉄心とスロットに配置される固定子コイルとを有する固定子と、を備えており、ロータの回転磁界によって、固定子鉄心の固定子コイルに誘起電圧が生じ電流が流れる。

固定子コイルは、直線部分が固定子鉄心のスロットに配置されているが、固定子コイル端部は、固定子鉄心からタービン発電機の軸方向に突出し、巻き返されている。

固定子コイル端部は、固定子鉄心から突出しているので、運転中、静的な電磁力と、電源周波数の２倍程度の周波数で変動する電磁力とが作用し、これら電磁力により励起される円環振動モードによって変形を生じる恐れがある。

このような課題に対して、特許文献１には、概略裁頭円錐殻形状である固定子コイル端部の剛性を確保する構造として、固定子コイル端部の外周に数箇所設置されて、固定子コイル端部の径方向移動を抑制するバインドリング、及び固定子鉄心の押さえ板に径方向に拘束となる滑り結合機構で結合されるバインドリング支持板を有し、これらが互いにバインド部材で緊縛されるような構造が開示されている。

また、特許文献２には、固定子コイル端部の外周側に設置して、例えば樹脂含浸材料等からなる帯等で固定子コイル端部を固着する複数のバインドと、複数のバインドを機械的に接続する少なくとも２つのバインドリングと、を備えたコイル支持部と、複数のバインドの間にギャップ（隙間）が形成されるように、外周側に設置した複数のブラケットを固定子鉄心に固定した構造が開示されている。

また、特許文献３には、固定子コイル端部の外周側に絶縁リングを、内周側に押さえリングを設置して、固定子コイル端部の周囲に、エポキシ樹脂に変性脂肪族ポリアミンを硬化剤として混合した組成物で形成されたエポキシコンパウンドを加圧充填し、硬化させ、これらを一体化した構造が開示されている。

また、特許文献４には、内周側に複数のスロットを備えたコーン部材に、ステータコアのスロットから突出した巻き返し部を収納配置し、さらにその内側にコーン形状の押さえリング部材を配置した固定子コイル端部の支持構造が開示されている。

特開平５−１３７２８７号公報 特開平８−０６５９３８号公報 特開２００２−０２７６９７号公報 特開２００４−１２９３２４号公報

従来の技術では、長期運転後はバインド部材による緊縛が緩むことで固定子コイル端部の剛性が低下し、円環振動モードの固有振動数が変動電磁力の周波数に一致して共振が起こる恐れがある。部品数と製作工程数が多いという懸念もある。

また、固定子コイルに流れる電流のエネルギー損失により発生した熱が、固定子コイルの周囲に蓄積し易く、１５５℃以上の高温が生じた場合には、固定子コイルに巻き付けられた絶縁物及びエポキシコンパウンドが劣化して絶縁機能や耐久性が低下する恐れがある。さらに、固定子コイルの破損や固定子コイルに巻き付けられた絶縁物の劣化等の部分的な修理・交換は、エポキシコンパウンドを取り除く必要がある。

また、製作・組立が難しく、製造技術や製作コストに課題が残る場合もある。

そこで、本発明は、蓄熱による耐久性低下が無く、長期運転後における固定子コイル端部の剛性低下を調整可能とすることができるタービン発電機の固定子コイル端部の支持構造を提供することにある。

本発明のタービン発電機は、回転磁界を発生させるロータと、ロータの外周側に設置される固定子と、を有し、固定子は、スロットが形成される固定子鉄心とスロットに配置される固定子コイルとを有し、固定子コイルは、前記固定子鉄心から軸方向に突出し、巻き返される固定子コイル端部を有し、固定子コイル端部の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材を有することを特徴とする。

また、固定子鉄心を押さえ、軸方向に突出した突出部を具備する固定子鉄心押さえ板を有する。また、固定子コイル端部の内周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の内周側裁頭円錐殻状部材を有する。また、固定子鉄心押さえ板の突出部の形状に沿って形成されるシールド板を有する。また、巻き返される固定子コイル端部の間に形成される絶縁材料製スペーサを有する。

また、固定子鉄心押さえ板の突出部と外周側裁頭円錐殻状部材との間に形成される滑り結合機構を有する。なお、シールド板が形成される場合には、シールド板と外周側裁頭円錐殻状部材との間に形成される内周側滑り結合機構を有する。

また、外周側裁頭円錐殻状部材と固定子コイル端部との間に形成される絶縁材料製の外周側弾性シートを有する。なお、内周側裁頭円錐殻状部材が形成される場合には、内周側裁頭円錐殻状部材と固定子コイル端部との間に形成される絶縁材料製の内周側弾性シートを有する。

また、外周側裁頭円錐殻状部材と固定子コイル端部とを張力調整可能に緊縛する張力調整機構を有する。なお、内周側裁頭円錐殻状部材が形成される場合は、外周側裁頭円錐殻状部材と内周側裁頭円錐殻状部材とを張力調整可能に緊縛する張力調整機構を有する。

本発明によって、蓄熱による耐久性低下が無く、長期運転後における固定子コイル端部の剛性低下を調整可能とすることができるタービン発電機の固定子コイル端部の支持構造を提供することができる。

以下、本形態におけるタービン発電機の固定子コイル端部の支持構造を、図１及び図２を用いて説明する。

図１は、本形態に関する実施例であり、タービン発電機の固定子コイル端部の支持構造の上側半分について、軸方向に切断した断面図である。

タービン発電機は、回転磁界を発生させるロータと、ロータの外周側に設置される固定子と、を有する。固定子は、スロットが形成される固定子鉄心１とスロットに配置される固定子コイルとを有する。固定子コイルは、固定子鉄心１から軸方向に突出し、巻き返される固定子コイル端部２を有する。

さらに、固定子鉄心１を押さえ、軸方向に突出した突出部３１を有する固定子鉄心押さえ板３と、固定子コイル端部２の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材４と、固定子コイル端部２の内周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の内周側裁頭円錐殻状部材５と、固定子鉄心押さえ板３の突出部３１の形状に沿って形成されるシールド板６と、シールド板６と外周側裁頭円錐殻状部材４との間に形成される内周側滑り結合機構７と、巻き返される固定子コイル端部２の間に形成される絶縁材料製スペーサ８と、外周側裁頭円錐殻状部材４と固定子コイル端部２との間に形成される絶縁材料製の外周側弾性シート９と、内周側裁頭円錐殻状部材５と固定子コイル端部２との間に形成される絶縁材料製の内周側弾性シート１０と、を有する。

なお、固定子鉄心１と固定子鉄心押さえ板３との間には、固定子鉄心１を固定する外側間隔部材１１が形成される。また、固定子鉄心押さえ板３には、突出部３１を補強するリブ１２が形成される。

また、固定子コイル端部２の軸方向の先端部は、外周側固定子コイル端部２１と内周側固定子コイル端部２２とが電気的に接続される構造を有し、その表面にはキャップ１３が形成される。

また、外周側裁頭円錐殻状部材４と内周側裁頭円錐殻状部材５とを張力調整可能に緊縛する張力調整機構１４を有する。

また、絶縁材料製スペーサ８の設置される部位には、バインド部材１５が形成される。

固定子鉄心１は珪素鋼板を積層したものであり、固定子コイル端部２は銅で形成される。そして、固定子コイル端部２は、別のスロットに巻き返される構造を有する。つまり、固定子コイルは、固定子鉄心１から軸方向に突出した後、斜めに形成され、別のスロットに巻き返されることになる。

固定子鉄心押さえ板３は鉄系金属で形成される。

また、固定子コイル端部２の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材４や固定子コイル端部２の内周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の内周側裁頭円錐殻状部材５は、エポキシ系樹脂で形成される。

シールド板６は銅で形成される。内周側滑り結合機構７は、フッ素系樹脂で形成される。

外周側裁頭円錐殻状部材４と固定子コイル端部２との間に形成される絶縁材料製の外周側弾性シート９や内周側裁頭円錐殻状部材５と固定子コイル端部２との間に形成される絶縁材料製の内周側弾性シート１０は、シリコン系の耐熱性ゴムシートで形成される。

なお、外側間隔部材１１には、鉄系金属が用いられる。

また、固定子コイル端部２の軸方向の先端部は、外周側固定子コイル端部２１と内周側固定子コイル端部２２とが銅により接続される。キャップ１３はエポキシ樹脂で形成される。

また、外周側裁頭円錐殻状部材４と内周側裁頭円錐殻状部材５とを張力調整可能に緊縛する張力調整機構１４は、ガラス繊維で形成される。バインド部材１５もガラス繊維が用いられる。

また、固定子コイル端部２の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材４は、軸方向の中央部付近よりも軸方向の先端部が、径方向に厚く形成されている。これは、剛性を向上させるためである。

また、さらに、外周側裁頭円錐殻状部材４の先端部は、内周側に厚く形成されるが、その厚みは、外周側裁頭円錐殻状部材４と固定子コイル端部２との間に形成される絶縁材料製の外周側弾性シート９の厚みよりは薄く形成される。つまり、内周側に厚く形成される外周側裁頭円錐殻状部材４の先端部と外周側固定子コイル端部２１またはキャップ１３との間に若干の間隙１６を形成する。これは、張力調整機構１４により調整の自由度を確保するためである。

また、張力調整機構１４が２箇所に設置され、部分的に張力を調整することができる構成となっている。

また、さらに、外周側裁頭円錐殻状部材４の根元部は、外周側に厚く形成され、この部分の厚みはシールド板６に平行になるように調整される。なお、シールド板６が形成されない場合は、固定子鉄心押さえ板３の突出部３１に平行になるように、この部分の厚みが調整される。

本形態によれば、固定子コイル端部の支持構造の剛性を長期運転後にも確保し、さらに向上させると共に、部品数と製作工程数とを大幅に減少させることができる。

また、本形態に用いられるタービン発電機を図３に示す。

タービン発電機は、回転磁界を発生させるロータ(以下、「回転子」と称して説明する)１０１と、この回転子１０１の外周側に設けられた円筒状の固定子１０２，固定子１０２の外側に設けられて固定子１０２を保持する固定子フレーム１０３，固定子１０２の両端部に設けられ、固定子フレーム１０３に取り付けられたエンドカバー１０４、そして、エンドカバー１０４の中央部に配設されて回転子１０１を軸止する軸受け１０５などで構成されている。

固定子１０２は、薄い珪素鋼板を重ねて形成される固定子鉄心１と、固定子鉄心１に形成された複数のスロットに収納された複数の固定子コイルから構成され、回転子１０１の回転磁界によって、固定子鉄心１のスロットに収納された固定子コイルに誘起電圧が生じ、電流が流れる。

これらの固定子コイルは、その直線部分が固定子鉄心１のスロットに収納されているが、固定子コイルが、両端側で巻き返す固定子コイル端部は、固定子鉄心の外に突出している。

本形態で説明したタービン発電機の固定子コイル端部の支持構造は、このようなタービン発電機に適用することができる。

図２も、本形態に関する実施例であり、タービン発電機の固定子コイル端部の支持構造の上側半分について、軸方向に切断した断面図である。

本形態におけるタービン発電機も、回転磁界を発生させるロータと、ロータの外周側に設置される固定子と、を有する。固定子は、スロットが形成される固定子鉄心１とスロットに配置される固定子コイルとを有する。固定子コイルは、固定子鉄心１から軸方向に突出し、巻き返される固定子コイル端部２を有するものである。

また、その他の符号も、図１に示した形態と同様である。

図１に示した形態と本形態との相違は、本形態の場合、固定子コイル端部２の内周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の内周側裁頭円錐殻状部材５及び内周側裁頭円錐殻状部材５と固定子コイル端部２との間に形成される絶縁材料製の内周側弾性シート１０が形成されていない点にある。

本形態の場合、張力調整機構１４は、外周側裁頭円錐殻状部材４と内周側固定子コイル端部２２とを緊縛することになる。

本形態によっても、固定子コイル端部の支持構造の剛性を長期運転後にも確保し、さらに向上させると共に、部品数と製作工程数とを大幅に減少させることができる。

本発明は、特に、タービン発電機の固定子コイル端部の支持構造に関するものであり、発電プラントに使用されるタービン発電機に利用されるものである。

本発明の第１の実施例を示すタービン発電機の固定子コイル端部の支持構造の上側半分について、軸方向に切断した断面図。 本発明の第２の実施例を示すタービン発電機の固定子コイル端部の支持構造の上側半分について、軸方向に切断した断面図。 タービン発電機の概略構成図。

符号の説明

１…固定子鉄心、２…固定子コイル端部、３…固定子鉄心押さえ板、４…外周側裁頭円錐殻状部材、５…内周側裁頭円錐殻状部材、６…シールド板、７…内周側滑り結合機構、８…絶縁材料製スペーサ、９…外周側弾性シート、１０…内周側弾性シート、１１…外側間隔部材、１２…リブ、１３…キャップ、１４…張力調整機構、１５…バインド部材。

Claims (3)

1. 回転磁界を発生させるロータと、このロータの外周側に設置される固定子と、を有し、
   前記固定子は、スロットが形成される固定子鉄心と前記スロットに配置される固定子コイルとを有し、
   前記固定子コイルは、前記固定子鉄心から軸方向に突出し、巻き返される固定子コイル端部を有し、
   前記固定子コイル端部の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材を有するタービン発電機において、
   前記外周側裁頭円錐殻状部材と前記固定子コイル端部との間に形成される絶縁材料製の外周側弾性シートを有することを特徴とするタービン発電機。
2. 回転磁界を発生させるロータと、このロータの外周側に設置される固定子と、を有し、
   前記固定子は、スロットが形成される固定子鉄心と前記スロットに配置される固定子コイルとを有し、
   前記固定子コイルは、前記固定子鉄心から軸方向に突出し、巻き返される固定子コイル端部を有し、
   前記固定子コイル端部の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材を有し、
   前記固定子コイル端部の内周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の内周側裁頭円錐殻状部材を有するタービン発電機において、
   前記内周側裁頭円錐殻状部材と前記固定子コイル端部との間に形成される絶縁材料製の内周側弾性シートを有することを特徴とするタービン発電機。
3. 回転磁界を発生させるロータと、このロータの外周側に設置される固定子と、を有し、
   前記固定子は、スロットが形成される固定子鉄心と前記スロットに配置される固定子コイルとを有し、
   前記固定子コイルは、前記固定子鉄心から軸方向に突出し、巻き返される固定子コイル端部を有し、
   前記固定子鉄心を押さえ、軸方向に突出した突出部を有する固定子鉄心押さえ板と、
   前記固定子コイル端部の外周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の外周側裁頭円錐殻状部材と、
   前記固定子コイル端部の内周側の少なくとも一部に形成される絶縁材料製の内周側裁頭円錐殻状部材と、
   前記固定子鉄心押さえ板の突出部の形状に沿って形成される内周側滑り結合機構と、
   巻き返される前記固定子コイル端部の間に形成される絶縁材料製スペーサと、
   前記外周側裁頭円錐殻状部材と前記固定子コイル端部との間に形成される絶縁材料製の外周側弾性シートと、
   前記内周側裁頭円錐殻状部材と前記固定子コイル端部との間に形成される絶縁材料製の内周側弾性シートと、
   を有することを特徴とするタービン発電機。

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