JP4874430B1 - 吊下ろし栽培装置および栽培方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】吊下げ軸体の外周面に、その長さ方向へ所定ピッチで巻き回された多数本の左誘引紐および右誘引紐を1つ置きに振り分けるので、つる植物の茎の密集を防ぎ、茎間の通気性、透光性を高めて果実の成長環境を改善できる。各左誘引紐は左ガイドワイヤに掛けて垂し、各右誘引紐は右ガイドワイヤに掛けて垂らすため、これらの誘引紐から吊下げ軸体に作用する力の水平成分が相殺され、かつ両ガイドワイヤがこれらの誘引紐の力の一部を受ける。そのため、これらの誘引紐を介して吊下げ軸体に作用する力は小さく、吊下げ軸体を従来品より小径で軽量なものにでき、装置の小型化およびコスト低減も可能となる。
【選択図】図1
Description
また、栽培床の各株からは多数本のトマトの茎が成長し、これらの茎は、栽培床の真上からこの列に沿って所定ピッチで垂れた多数本の誘引紐にそれぞれ掛止されていた。そのため、斜め上方へ誘引された各茎は密集し易く、その結果、茎間の通風性が低下し、定期的に散布される消毒液などが全てのトマトに充分に行き渡らないおそれがあった。
吊下げ軸体および1対の左ガイドワイヤおよび右ガイドワイヤは、例えば、栽培床の周囲に立設された複数の門形の支柱間に架け渡すことができる。その他、温室内に設置する場合には、これらを温室の骨組間に架け渡してもよい。温室の骨組としては、支柱、横梁、垂木、棟木などが挙げられる。吊下げ軸体が架設されるのは、例えば骨組の支柱間、横梁間などである。
つる植物としては、例えばトマト、キュウリ、ナスなどを採用することができる。
栽培床とは、つる植物が列(畝)状に栽植されたもので、水耕栽培の場合を含む。所定の幅で実質的に直線状に延びている。栽培床は、地面と平行または地面から所定高さ位置で水平に、かつ直線状に設けられる。
吊下げ軸体としては、中空のパイプ軸、中実軸を採用することができる。吊下げ軸体が長尺な場合には、隣接する吊下げ軸体の連結側の端部をねじ止め、ボルト止めなどにより連結してもよい。吊下げ軸体は、その軸線が実質的に水平であることが望ましい。ただし、若干傾斜してもよい。
「吊下げ軸体が実質的に水平である」とは、吊下げ軸体の軸線が水平であるか、地面(栽培床)と平行であることをいう。なお、吊下げ軸体はその軸線が若干傾斜してもよい。
「左ガイドワイヤおよび右ガイドワイヤが、吊り下げ軸体と実質的に平行に延びる」とは、緊張状態の左ガイドワイヤおよび右ガイドワイヤが、吊り下げ軸体の軸線に対して平行か、若干傾いている状態をいう。
1対の左ガイドワイヤおよび右ガイドワイヤの高さ位置は、吊下げ軸体の高さ位置を基準として、これより下方位置、これと同一高さ位置、これより上方位置のうちの何れでもよい。ただし、下方位置とした方が、例えば両ガイドワイヤが錆びたときに問題となる、ワイヤ表面への各誘引紐の摩擦の増大に伴う両ガイドワイヤの延びや断線の発生を防止することができて好ましい。
これに対して、両ガイドワイヤの高さ位置を吊下げ軸体の高さ位置より下方位置とした場合には、各誘引紐の両ガイドワイヤとの接触部分における屈曲角度は鈍角となる。その結果、両ガイドワイヤと各誘引紐との接触長さは前記直角または鋭角の場合に比べて短くなり、かつ両ガイドワイヤをその長さ方向に直交する面で切断したとき、その断面の略一側部のみに前記果実付のつる植物の荷重が作用することとなる。すなわち、両ガイドワイヤの外周面のうち、その断面の上部に該当する部分にはこの荷重が作用しないことで、仮に両ガイドワイヤに錆が発生しても、各誘引紐に作用するつる植物からの荷重は、その一部が吊下げ軸体によって負担され易くなる。その結果、両ガイドワイヤへの前記荷重の全負担を原因とした両ガイドワイヤの延びや断線のおそれは少なくなる。
吊下げ軸体から各ガイドワイヤまでの離間距離は、10cm以上、好ましくは20〜300cmである。
左誘引紐および右誘引紐としては、例えば、ポリプロピレンなどの各種の合成樹脂紐の他、各種の天然紐を採用することができる。多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐は、1本置きに交互に左右方向へ振り分けられている。多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐は、側面から全体視したとき、それぞれを構成する誘引紐が互いに重なり合うように振り分けても、互いに重ならないように振り分けてもよい。
つる植物の栽培床から成長した各茎を左誘引紐および右誘引紐に掛止する方法としては、例えば、クリップ、紐、針金、ベルトなどによる掛止法を採用することができる。例えばクリップは茎を固定するものではなく、茎の成育を可能とするように保持する構造である。
吊下げ軸体をその軸線を中心として回転させるもの(回転手段)としては、例えばハンドル回転させる手動式のもの、電動モータなどの各種のアクチュエータを駆動源とする自動式のものなどを採用することができる。
このように、各左誘引紐および各右誘引紐を、吊り下げ軸体に対して同じ方向に巻き回した場合には、各左誘引紐および各右誘引紐を吊下げ軸体から1本置きに左右に振り分けたとき、各左誘引紐および各右誘引紐は、巻き付けられた吊下げ軸体を中心にして、各左誘引紐を左右の一方へ引っ張るとともに各右誘引紐を左右の他方へ引っ張ることにより、必然的に、各左誘引紐は吊下げ軸体の上部または下部の一方から導出され、かつ右誘引紐は吊下げ軸体の上部または下部の他方から導出されることになる。ここでいう「吊下げ軸体の上部」、「吊下げ軸体の下部」とは、吊下げ軸体をその長さ方向に直交する平面(断面)で切断したとき、その吊下げ軸体の断面の上部に該当する部分、または、その断面の下部に該当する部分をいう。吊下げ軸体の上部から対応する誘引紐が引き出された場合、その誘引紐の引出し初めは吊下げ軸体の外周面から上向きに引き出される。また、吊下げ軸体の下部から対応する誘引紐が引き出された場合、その誘引紐の引出し初めは吊下げ軸体から下向きに引き出される。
また、多数本の右誘引紐および左誘引紐は、吊下げ軸体の右側方および左側方にそれぞれ配置された左右1対のガイドワイヤにそれぞれがいったん引っ掛けられてから垂直に垂らされる。そのため、これらの左誘引紐および右誘引紐により吊下げ軸体に対して作用する外力(茎を支持する誘引紐が垂直に引っ張られることにより誘引紐を介して作用する例えば斜め下方への外力)のうち、水平成分の力が略釣り合って相殺され、かつ両ガイドワイヤがこれらの左誘引紐および右誘引紐からの力(垂直方向の外力)の一部をそれぞれ受け止めることとなる。これにより、多数本の左誘引紐および右誘引紐を介して吊下げ軸体自体に作用する力(軸回りのねじりモーメントおよび軸に対する曲げモーメント)は、従来品の場合よりきわめて小さくなる。その結果、吊下げ軸体を従来品より低強度となる小径で軽量なものとすることができ、これに伴い、吊下げ軸体の軸受および例えばこれを回転させるウォーム減速機などの小型化もそれぞれ図れて、かつ装置のコスト低減も可能となる。同時に、吊り下げ軸体自体を長尺化(ロングスパン構造)とすることもでき、栽培床の長さを従来に比して長くすることにもつながる。
温室11の地面には、温室11の長さ方向へそれぞれ延びた複数の栽培床13が、温室11の幅方向へ所定ピッチで配設されている。栽培床13には、茎12aの長さが8〜10mまで達するトマト(果実)12が、栽培床13の長さ方向へ直列に植えられる。栽培床13は畝などの土壌である。ただし、栽培床13は養液を収容する水耕栽培用の容器でもよい。
温室11の骨組は、温室11の四隅と各側壁とに離間状態で配置された多数本の支柱と、支柱間に架け渡された多数本の横梁と、温室11の上部の骨組を構成する多数本の垂木と、温室11の屋根の中央部に配置された棟木とを有している。これらは、亜鉛メッキされた直線状または所定形状に湾曲した鋼管からなる。
図1および図2に示すように、多数本の誘引紐16A,16Bは、平面視して千鳥足状となるように、吊下げ軸体14から1本置きに左右方向へ振り分けられている。そのうち、各左誘引紐16Aは、左ガイドワイヤ15Aに引っ掛けられて垂直に垂らされている。また、多数本の右誘引紐16Bは、右ガイドワイヤ15Bに引っ掛けて垂直に垂らされている。このとき、多数本の左誘引紐16Aは、吊下げ軸体14の下部から吊下げ軸体14の外周面に左回りに巻き付けており、右誘引紐16Bは、吊下げ軸体14の上部から吊下げ軸体14の外周面に同じく左回りに巻き付けている(図5)。その結果、吊下げ軸体14を左回りに回転させることで、各左誘引紐16Aおよび各右誘引紐16Bは、同時に吊下げ軸体14の外周面に巻き取られる。一方、吊下げ軸体14を右回りに回転させることで、各左誘引紐16Aおよび各右誘引紐16Bは、同時に吊下げ軸体14から引き出される(繰り出される)。
図1および図6に示すように、トマト12の多数本の左誘引紐16Aおよび右誘引紐16Bへの掛止作業時には、トマト12の栽培床13から成長した多数本の茎12aが、それぞれ斜め上方へ向かって成長するように、各茎12aを多数本の誘引紐16A,16Bの所定高さ位置に、多数個のトマトクリップ(株式会社アルト製)Cを用いて掛止する。具体的には、まず茎12aの根元部に最も近い誘引紐16Aまたは16Bの下端部に、茎12aの根元部をトマトクリップCにより掛止する。その後、この根元部が掛止された誘引紐16Aまたは16Bを基準にして、これから1本、2本、3本と誘引紐16Aまたは16Bが離れる程、トマトクリップCによる茎12aの掛止位置の高さが高まるように、茎12aをそれぞれの誘引紐16Aまたは16Bに掛止して行く。
さらに、各左誘引紐16Aは、吊下げ軸体14を中心にしてその左側方に配置した左ガイドワイヤ15Aにいったん引っ掛けた後、左ガイドワイヤ15Aの直下へ垂らすとともに、各右誘引紐16Bは、吊下げ軸体14を中心にしてその右側方に配置した右ガイドワイヤ15Bにいったん引っ掛けた後、右ガイドワイヤ15Bの直下へ垂らす構成としている。そのため、各誘引紐16A,16Bから吊下げ軸体14に作用する力のうち、水平成分の力が略釣り合って相殺され、かつ両ガイドワイヤ15A,15Bが対応する各誘引紐16A,16Bの力の一部をそれぞれ受ける(図5)。これにより、多数本の誘引紐16A,16Bを介して吊下げ軸体14に作用する力(ねじりモーメントおよび曲げモーメント)は、従来品の場合より小さくなる。その結果、吊下げ軸体14を従来品より低強度となる小径で軽量なものとすることができる。これに伴い、軸受20およびウォーム減速機17の小型化もそれぞれ図れ、かつ装置のコスト低減も可能となる。
また、両ガイドワイヤ15A,15Bが吊下げ軸体14より下方に配置されているため、両ガイドワイヤ15A,15Bを吊下げ軸体14と同一高さ位置またはそれ以上の高さ位置に配置した場合に問題となる、各誘引紐16A,16Bに作用する荷重の略全てが両ガイドワイヤ15A,15Bのみ(吊下げ軸体14が荷重を分担しない)に作用し、その結果、両ガイドワイヤ15A,15Bに延びや断線といった不都合が発生するおそれが解消される。
12 トマト(つる植物)、
12a 茎、
13 栽培床、
14 吊下げ軸体、
15A 左ガイドワイヤ、
15B 右ガイドワイヤ、
16A 左誘引紐、
16B 右誘引紐。
Claims (2)
- つる植物が植裁された直線的に延びる栽培床の上方でその延在方向に沿って延び、実質的に水平でかつ回転自在に設けられた吊り下げ軸体と、
それぞれがこの吊り下げ軸体から左右両側に一定距離だけ離れることによりこの吊り下げ軸体を挟むように設けられ、この吊り下げ軸体と実質的に平行に延びる1対の左ガイドワイヤおよび右ガイドワイヤと、
上記吊り下げ軸体にその軸方向に一定間隔を有して交互に巻き回された多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐と、を備え、
上記吊り下げ軸体を回転させることにより、上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐を同時に降下させる吊り下ろし栽培装置であって、
上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐は、上記吊り下げ軸体に対して同じ方向に巻き回され、
上記吊り下げ軸体から上記多数本の左誘引紐を上記左ガイドワイヤに向かって引き出し、引き出した上記多数本の左誘引紐を上記左ガイドワイヤから吊り下げ、
上記吊り下げ軸体から上記多数本の右誘引紐を上記右ガイドワイヤに向かって引き出し、引き出した上記多数本の右誘引紐を上記右ガイドワイヤから吊り下げるとともに、
吊り下げられた上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐に対して上記栽培床に植裁した上記つる植物の茎がその斜め上方に向かって成長するように保持された吊り下ろし栽培装置。 - つる植物が植裁された直線的に延びる栽培床の上方に、その延在方向に沿って延び、かつ実質的に水平な吊り下げ軸体を回転自在に設け、
それぞれがこの吊り下げ軸体から左右両側に一定距離だけ離れ、かつこの吊り下げ軸体と実質的に平行に延びた1対の左ガイドワイヤおよび右ガイドワイヤを、この吊り下げ軸体を挟むように設け、
上記吊り下げ軸体にその軸方向に一定間隔を有して、多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐を交互に巻き回し、
上記吊り下げ軸体を回転させることにより、上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐を同時に降下させる吊り下ろし栽培方法であって、
上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐は、上記吊り下げ軸体に対して同じ方向に巻き回され、
該吊り下げ軸体から上記多数本の左誘引紐を上記左ガイドワイヤに向かって引き出し、引き出した上記多数本の左誘引紐を上記左ガイドワイヤから吊り下げ、
上記吊り下げ軸体から上記多数本の右誘引紐を上記右ガイドワイヤに向かって引き出し、引き出した上記多数本の右誘引紐を上記右ガイドワイヤから吊り下げるとともに、
吊り下げられた上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐に対して上記栽培床に植裁した上記つる植物の茎がその斜め上方に向かって成長するように保持され、
上記つる植物の果実の収穫時には、上記茎の根元部分に生った果実を収穫後、上記吊下げ軸体を上記多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐の引出し方向へ回転させて、これらの多数本の左誘引紐および多数本の右誘引紐を同時に所定長さだけ引き出し、上記茎のさらに高い位置に生った果実を下ろして収穫する吊り下ろし栽培方法。
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