JP4873786B2 - パルス電流供給用ケーブル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はパルス電流供給用ケーブルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
岩石の爆破法の一つとしてプラズマ爆破法が知られている(特開平4-222794号公報)。これは、図9に示すように、爆破対象の岩石20内に穴21を形成し、穴内に粘性の高い電解液22を充填すると共に、この電解液内に爆破用の同軸電極23を浸漬する。次に、電極23に1×100万分の1秒当たりに少なくとも100×100万ワットの電気エネルギーを放出する。これにより、同軸電極間の電解液22に絶縁破壊を起こさせてプラズマを発生し、このプラズマの圧力に伴う衝撃波Sにより爆破を行うと言うものである。電気エネルギーの供給には、電力供給源24に接続されたコンデンサバンク25を用いる。コンデンサバンク25はスイッチ26と接続され、引き金装置27を遠隔引き金28で起動してスイッチ26を動作させ、同軸電力ケーブル29を通じて電力供給を行う。
【0003】
このような同軸電力ケーブルの一例を図10に示す。この電力ケーブルは、中心から順に、内部導体1、内部半導電層2、絶縁層3、外部半導電層4、外部導体5、防食層6、補強層7を具えている。内部導体1は、一般により線で構成されて、同軸電極の一方に接続され、外部導体5は同軸電極の他方に接続されている。この電力ケーブルの内部導体1には短時間に大容量のパルス電流が流され、外部導体5には内部導体1とは逆方向のリターン電流が流される。そのため、両導体1、5間には反発力が作用して外部導体5が外周方向に僅かに動いてずれを生じることがある。補強層7は、この外部導体5のずれや膨らみを押さえる。
【0004】
そして、特開平4-222794号公報には、このような同軸電力ケーブルは、強い衝撃波ができてエネルギーを岩石の中に速やかに放出することを確実にするため、最小のインダクタンスと抵抗となるよう設計することが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の公報では具体的に最小のインダクタンスと抵抗となる設計手段、構造が開示されていない。
【0006】
一般にケーブルの抵抗は断面積が大きいほど抵抗が小さくなる。しかし、高周波となると、この概念が通用しなくなることはよく知られている。また、ケーブルのインダクタンスは、卯本重郎「電磁気学」昭晃堂p279-280の計算式(数式1)によると、内部導体の径が大きく、絶縁体の厚みが小さいほどインダクタンスLは小さくなる。
【0007】
【数1】
【0008】
ここで、内部導体の径を大きくすると、通常の内部導体は中心まで導体で満たされるため、重量が大きく、可撓性が損なわれて取り扱いしにくくなるという問題があった。
【0009】
さらに、電流の表皮効果により、実際の電流は導体の表面にしか流れず、内部導体の中心部は電流を負担することがなく、有効に使われていない。
【0010】
従って、本発明の主目的は、ケーブルのインダクタンスを極力小さくし、かつ電流を効率的に流すことができるパルス電流供給用ケーブルを提供することにある。また、本発明の他の目的は、軽量で、かつ可撓性を損なうことのないパルス電流供給用ケーブルを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、主に内部導体の構造に工夫を施すことで上記の目的を達成する。
【0012】
すなわち、本発明パルス電流供給用ケーブルは、内部導体、絶縁層および外部導体を具えるケーブルであって、前記内部導体は、芯材の外周に形成された金属層であることを特徴とする。
【0013】
同軸ケーブルの内部導体を芯材の外周に形成された金属層として、中心部分には導体を使用しない構造としても、電気的な抵抗値は上げずに小さなインダクタンスを持ったケーブルを軽く製作できる。また、内部導体の径が大きくなると、同じ電流値であれば周囲の磁場が小さくなり、内部−外部導体間に働く反発力も小さくなり、外部導体のずれや膨らみに対する対策が容易になる。
【0014】
芯材は、内部導体の材料よりも軽量の材料が好適である。また、芯材はケーブル全体としての曲げ特性を考慮して、可撓性に優れる材料が好適である。一般に、導体には銅や銅合金又はアルミが用いられるため、これらよりも比重の小さい材料または可撓性に優れる材料で芯材を構成することが好ましい。さらに、高周波を流す場合、内部導体には表皮効果により表面部にしか電流が流れない。そのため、芯材は低導電性材料や絶縁材料でも何ら問題ない。以上の要件を満たす具体例としては、麻紐などの天然繊維、プラスチック、ゴムが挙げられる。
【0015】
内部導体の具体例としては、芯材の外周に次の構成を具えるものが挙げられる。
▲1▼導電性テープを巻き付ける。
▲2▼素線を螺旋状に巻き付けて一層又は複数層の撚り線層を形成する。
▲3▼導電性テープと撚り線とを複合する。
▲4▼編組体を具える。
【0016】
導電性テープには、銅テープ、アルミなどの金属テープが好適である。撚り線に用いる素線は銅線、アルミ線など導電性に優れた金属線が利用できる。編組体は導電性材料が編み込まれた構成であれば、編組の構造は問わない。
【0017】
撚り線のみで内部導体を構成する場合、撚り線を複数層とし、その少なくとも一層を他の層とは異なる方向に巻き付けることが好適である。より好ましくは、各層ごとに撚り方向を変えればよい。これにより、電流がケーブル長手方向に沿って流れやすい状態とする。電流が撚りに沿って流れると、撚り線がソレノイドと等価に機能し、大きなインダクタンスを持つことになるからである。
【0018】
導電性テープと撚り線とを複合したり、芯材の外周に編組体を設けるのも、各素線間での導通を確実にし、電流流路がソレノイド状になることを回避するためである。導電性テープと撚り線とを複合する場合、導電性テープに隣接して撚り線を設けることが好ましい。すなわち、導電性テープの直上または直下に撚り線を設ける。
【0019】
内部導体の厚みは、通電するパルス電流の最初の山の全幅を半周期とする正弦波の周波数に対応した表皮厚さ以下を選択すればよい。
【0020】
一般に、導体表面の電流をI0、表面から深さZのところの電流をIzとすると、浸透厚δに関して次式の関係がある。
【0021】
【数2】
【0022】
また、浸透厚δは導体の抵抗率ρ、透磁率μで違ってくるが、一般には次式のように周波数fの平方根に反比例する。
【0023】
【数3】
【0024】
しかし、パルス電流は、周波数成分が定まらないため、本発明では周波数の定め方を規定する。例えば、図5に示す形のパルス電流では、その周波数成分は図6に示すようにDCから高周波にわたって広く分布している。そのため、DCから低周波も通すことになり、結局、中空の導体ではなく中実の導体にならざるを得ない。そこで、図7に示すように、パルス電流の最初の山の全幅Tを周波数とする正弦波の周波数fを用いて浸透圧を求めることとした。「最初の山の全幅」と言うのは、パルス電流が図8に示すように振動を伴う場合も第1波の全幅を基準とすることを意味する。
【0025】
従って、上記数式3を参考に、パルス電流の第一の山の全幅を半周期とする正弦波の周波数を用いて内部導体の厚さを選択すれば、用いた導体の断面積を無駄なく電流流路として利用することができる。内部導体の厚みを通電電流の周波数の表皮厚み程度以上としても構わないが、その場合は重量増加に対して抵抗の低下が少なく、効果が小さい。
【0026】
一方、外部導体についても電流流路がソレノイド状になることを回避するため、内部導体と同様の構成を採ることが好ましい。すなわち、▲1▼多層の撚り線構造とする、▲2▼導電性テープと撚り線とを複合する、▲3▼編組体を用いる、などの構成を採用する。
【0027】
また、外部導体では、ある厚みを持つ導体の内側に電流は集中する。そのため、内側導体と同様に、外部導体の厚さは通電電流の周波数に対応した表皮厚さを基準とすることが好ましい。この外部導体の厚さの設計も前記内部導体の場合と同様にパルス電流の最初の山の全幅を半周期とする正弦波の周波数を用いて行えば良い。表皮厚さ以上の外部導体を設けても構わないが、重量増となるだけで効果が薄い。
なお、本発明ケーブルは100A/mm2以上のピーク電流密度で使用するパルス電流の供給に好適である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
(実施例1)
本発明ケーブルは、中心から順に芯材、内部導体、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、接地用電極層、外部導体、防食層、補強層を具える。各層のサイズの一例は、内部導体外径:20mm、内部導体厚さ:1.6mm、絶縁層厚さ:3mm、接地用電極層厚さ:0.2mm、外部導体厚さ:2mmである。
【0029】
芯材には、撚り合わせた麻紐上にクロロプレンゴムを被覆したものを用いた。芯材は、特にこれらの材質に限定されるわけではなく、次の工程で内部導体を形成する際の芯となるだけの役割であり、電気的な絶縁性能は要求されない。
【0030】
この芯材10の外周に銅線11と銅テープ12で内部導体を形成する(図1)。まず芯材10上に円形断面の銅線11を複数本撚り合わせ、一層の導体層を設ける。各銅線の径は通電電流の周波数に対応した表皮厚さ程度とする。この周波数は、パルス電流の最初の山の全幅を半周期とする正弦波の周波数とする。導体層の外側に銅テープ12を巻き、銅線11間の電流乗り移りを容易にし、電流がスパイラル状に流れて結果として長いソレノイドのような状況になることを防ぐ。
【0031】
次に、内部導体の外側には半導電テープを巻いて内部半導電層を形成し、さらに絶縁ゴムによる絶縁層、半導電テープによる外部半導電層を設ける。
【0032】
さらに、外部半導電層の上にステンレステープを巻き付ける。これは、外部導体の絶縁層への突き刺さりを防止するものである。このステンレステープの上に外部導体を設ける。本例では、表皮厚み程度の銅線からなる編組体を用いた。蓋部導体の厚みも通電電流の周波数に対応した表皮厚さ程度とする。この周波数も、パルス電流の最初の山の全幅を半周期とする正弦波の周波数とする。
【0033】
編組体の上に、ゴム引き帆布で簡単な絶縁・保護をして防食層を形成し、その上に鋼線の編組体による補強層が設けられる。パルスパワーケーブルでは数百kAもの大きな電流が同軸線路を往復するため、その外部導体には大きな広がり力(内圧)が働く。この内圧を抑えるために鋼線補強を行う。鋼線の編組体による補強以外に、ステンレステープの巻回による補強も有効である。
【0034】
この鋼線やステンレステープによる補強以外に、編組体そのものを補強する方法も考えられる。補強の方法としては2種類考えられる。一つは、電流を流すための銅線と強度を増すための鋼線を共巻きにする方法である。もう一つは、鋼線を芯にして周囲を銅で覆った被覆線(例えばスミデュエット(商標))を用いる方法である。いずれの場合も強度の高い編組線を実現することができるため、さらに外装を設けて鋼線補強をする必要がなくなる。
【0035】
(実施例2)
実施例1とは異なる構成の内部導体を具える電力ケーブルを図2に示す。これは、芯材10上に円形断面の銅線11、13を2層撚り合わせ、下層の銅線11と上層の銅線13の撚り方向を逆にしたものである。上下層の銅線11、13の撚り方向を逆にすることで、銅線間の電流乗り移りを容易にし、電流がスパイラル状に流れて結果として長いソレノイドのような状況になることを防ぐ。内部導体以外の構成は基本的に実施例1と共通である。この点は、以下の実施例3、4においても同じである。
【0036】
(実施例3)
さらに別構成の内部導体を具える電力ケーブルを図3に示す。これは、芯材10上に銅テープ14を螺旋状に一層巻回したものである。銅テープ14の厚みを通電電流の周波数に対応した表皮厚さ程度とする。この周波数は、パルス電流の最初の山の全幅を半周期とする正弦波の周波数とする。
【0037】
(実施例4)
さらに別構成の内部導体を具える電力ケーブルを図4に示す。これは、芯材10上に銅線を編み込んだ編組体15を被せたものである。内部導体を編組体15とすることで、電流がスパイラル状に流れて結果として長いソレノイドのような状況になることを防ぐ。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明パルス電流供給用ケーブルによれば、同軸ケーブルにおける内部導体を芯材の周囲に形成された金属層とすることで、電気的な抵抗値は上げずに小さなインダクタンスを持ったケーブルを軽く製作できる。
【0039】
また、内部導体が大きくなると、同じ電流値であれば周囲の磁場が小さくなり、内部−外部導体間に働く反発力も小さくなり、外部導体のずれや膨らみに対する対策が容易になる。
【0040】
従って、本発明ケーブルは、プラズマ爆破法など、パルスパワーが供給される電力ケーブルとしての利用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明ケーブルにおいて、銅テープと銅線を用いた内部導体の構造を示す斜視図である。
【図2】本発明ケーブルにおいて、銅線を2層撚り合わせた内部導体の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明ケーブルにおいて、銅テープを用いた内部導体の構造を示す斜視図である。
【図4】本発明ケーブルにおいて、編組体を用いた内部導体の構造を示す斜視図である。
【図5】パルス波形の模式図である。
【図6】パルス電流の周波数成分を示すグラフである。
【図7】本発明におけるパルス電流の周波数を決定する方法の説明図である。
【図8】振動を伴うパルス波形の模式図である。
【図9】プラズマ爆破法の説明図である。
【図10】従来の同軸ケーブルを示す断面図である。
【符号の説明】
1 内部導体
2 内部半導電層
3 絶縁層
4 外部半導電層
5 外部導体
6 防食層
7 補強層
10 芯材
11 銅線
12 銅テープ
13 銅線
14 銅テープ
15 編組体
20 岩石
21 穴
22 電解液
23 電極
23 同軸電極
24 電力供給源
25 コンデンサバンク
26 スイッチ
27 引き金装置
28 遠隔引き金
29 同軸電力ケーブル
Claims (8)
芯材と、
芯材の外周に形成された金属層からなる内部導体と、
内部導体の外周に形成される絶縁体と、
絶縁体の外周に内部導体と同軸状に形成される外部導体とを具え、
前記芯材は、内部導体の材料よりも比重が小さくかつ可撓性に優れる材料で構成されていることを特徴とするパルス電流供給用ケーブル。
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