JP4873784B2 - 膜結合能を有する可溶性ペプチド化合物の複合体を含有する器官移植用溶液 - Google Patents
膜結合能を有する可溶性ペプチド化合物の複合体を含有する器官移植用溶液 Download PDFInfo
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Description
(技術分野)
本発明は免疫系または凝血系の阻害剤または調節剤として作用し、器官移植にて有用であるポリペプチドおよびその誘導体の処方に関する。本発明は、例えば、移植前に器官を灌流して修飾し、または移植前に器官を貯蔵して薬物を器官に集中させるのに用いることのできる修飾された分子形態のT−またはB−リンパ球機能の補体阻害剤または調節剤を含む溶液を提供する。本発明はまた本発明の処方の製法に、およびその製造された処方の使用に関する。法律的に許容されるならば、本発明はまた、器官の移植の前、中または後に、炎症、不当な補体活性化または凝血もしくは血栓プロセスの不当な活性化に伴う疾患または障害を防止、治療または改良する方法に関する。例えば、本発明は、(特に以前に移植された器官により感受的になっている個体の)腎臓、心臓、肝臓または肺などの移植器官の激症および急性同種異系拒絶反応、移植器官における虚血−再灌流障害、異種移植拒絶反応および角膜移植拒絶反応を防止、治療または改良する方法を提供する。
【0002】
(従来技術)
移植なる語は、ヒトまたはヒト以外の動物患者の、器官、例えば、心臓、腎臓または肺の交換を意味する。それはまた、例えば、重度の火傷の後に必要とされる可能性のある皮膚移植を包含する。移植の目的は、宿主において病んでいる器官または組織を取り出し、それとドナーからの健康な器官または組織を取り換えることである。そのドナーは新しい死体、健康なボランティアまたは他の動物種とすることができる。ドナーとレシピエントが同じ種類である場合、移植は同種移植として知られている。ドナーとレシピエントが異なる種である場合、移植は異種移植として知られている。移植に必要な技法は様々であり、移植される器官の種類に応じて大きく変化する。その技法は、過去20ないし30年にわたって、十分に開発されており、今日ではヒトにおける移植はホスピタルセッティングにおける通常の活動である。外科手術は今では慣用的操作として記載されているが、移植の治療法としての成功は可能性のある生理学的成果の数に依存する。例えば、宿主は抗体依存性激症拒絶反応機構、細胞媒介急性拒絶反応または慢性変性プロセスを介して新たな器官を拒絶するかもしれない。これらの破壊プロセスはすべてある程度まで補体の活性化が関与している可能性がある。加えて、十分な血管生存能を維持している新たな器官を移植することは、例えば、仮にドナーから摘出した後の貯蔵の間にその器官の品質が低下したとすれば、できない可能性がある。
【0003】
人工膀胱を移植臓器として使用することも報告されている(Oberpenningら、1999、Nature Biotechnology、17、149)。この場合、実験室で培養した個々の腎臓細胞から人工腎臓を増殖させ、ついでその細胞を人工支持体上で増殖させた。その「新しい」腎臓が十分に成長したとみなされたならば、それをイヌに移植した。
【0004】
補体系は免疫系が異種抗原に対して応答するのに重要な30種を越える様々な蛋白からなっている。補体系はその主成分が切断された場合に活性化され、生成物が単独であるいは他の蛋白と一緒になって蛋白分解カスケードにおいて生成される付加的な補体蛋白を活性化する。補体系の活性化は、血管浸透性の増加、食細胞の化学走性、炎症性細胞の活性化、異種粒子のオプソニン化、細胞の直接的死亡および組織損傷を含め、種々の応答をもたらす。補体系の活性化は、抗原−抗体複合体によるか(伝統的経路)、または例えば、病原菌の細胞壁に存在するリポ多糖類により(別の経路)作動する可能性がある。
補体活性化は、虚血症および再灌流障害に伴うプロセスを含め、多種の急性炎症プロセスにて起こることが知られている(Rossenら、1985、Circ.Res.、57、119;Morgan B.P.、1990、The biological effects of complement activation.In 'Complement,Clinical Aspects and Relevance to Disease'(Academic Press,London)。
【0005】
不利な補体活性化と移植および/またはグラフトの失敗の関係がいくつか記載されている。マウスからラットへの心臓の異種移植の実験において、補体活性化の一時抑制が長期生存を誘発すると結論付けられた(Koyamadaら、1998、Transplantation、65、1210−5)。ブタから霊長類への異種移植における肺機能もまた補体調整剤を実験動物において使用した場合に改良された(Yeatmanら、1998、Transplantation、65、1084−93)。SheerinおよびSacks(Curr.Opin.Nephrol.Hypertens.、1998、7、305−10)は、実験を行って、とりわけ、移植操作による腎障害の発生病理における補体の役割を明らかにし;局所的補体合成が補体ベースの療法の標的となる可能性があるという見解に達した。この考えは、Johnson(Transplantation、1997、6、120−7)も共有しており、血液透析ならびに異種移植の間に補体活性化が起こること、および補体阻害剤が補体活性化に付随する炎症の制御に用いることができるという事実を指摘する。不利な補体活性化は異種移植域に限定されることなく、HLA−同一適合個体を含む、同種移植においても観察される。すなわち、移植された腎臓の10%が免疫学的機構、主として補体媒介機構により拒絶されると報告されている(Brasileら、1987、Transplant Proc.、19、894−5)。移植の間の補体の活性化はまた、内皮細胞の活性化により作動する可能性のある血栓プロセスに関係しているかもしれない(Bachら、1994、Immunol Rev.、141、5−30)。
【0006】
1型補体受容体(CR1)は赤血球、単球/マクロファージ、顆粒球、B細胞、ある種のT細胞、脾臓小胞樹状細胞および糸球足細胞の膜上に存在することが明らかにされた。CR1は補体成分C3bおよびC4bと結合し、C3b/C4b受容体とも称される。CR1の1のアロタイプの構造および一次配列は公知である(Klicksteinら、1987、J.Exp.Med.、165:1095−1112、Klicksteinら、1988、J.Exp.Med.、168:1699−1717;Hourcadeら、1988、J.Exp.Med.、168:1255−1270、WO89/09220、WO91/05047)。これは30個のショートコンセンサス繰返し配列(SCR)からなり、その各々は約60−70個のアミノ酸を含有している。各SCRにおいて、平均65個のアミノ酸のうち約29個が保存されている。各SCRはジスルフィド結合において第3および第1ならびに第4および第2のハーフシスチンとのジスルフィド連結を介して三次元三重ループ構造を形成すると提案されている。CR1はさらに各7個のSCRの4個の長相同性繰返し配列(LHR)として配列している。リーダー配列に続いて、CR1分子はN−末端LHR−A、その次の2個の繰返し配列、LHR−BおよびLHR−C、ならびにC末端LHR−D、つづいて2個の付加的なSCR、25残基の推定膜貫通領域および43残基の細胞質尾部からなる。
【0007】
予想されるN−末端グルタミン残基を有する成熟CR1分子(以下、残基1と示す)に基づいて、LHR−Aの最初の3個のSCRドメイン(本明細書中、SCR1、SCR2およびSCR3という)は、各々、成熟CR1の残基2−58、63−120および125−191からなる。
Hourcadeら、1988、J.Exp.Med.、168:1255−1270は、CR1の分泌形態を産生すると予想されるヒトCR1転写単位中に交互のポリアデニル化部位を観察した。この切断配列によりコードされるmRNAはCR1の最初の8.5SCRを含み、C4b結合ドメインを含むと提案されていた約80kDaの蛋白をコードする。この切断配列に対応するcDNAをCOS細胞中にトランスフェクトし、発現させると、これは予想されるC4b結合活性を示すが、C3bと結合しなかった(Krychら、1989、FASEB J.3:A368;Krychら、Proc.Nat.Acad.Sci.、1991、88、4353−7)。Krychらはまた、いくつかのヒト細胞系において予想されるものと類似したmRNAを観察し、このようなC4b結合活性を有するCR1の切断可溶性形態はヒトにおいて合成することができると仮定した。
【0008】
加えて、Makridesら(1992、J.Biol.Chem.、267、34、24754−61)は、CHO細胞中にて膜結合蛋白としてLHR−AのSCR1+2および1+2+3+4を発現させた。その上、CR1のショートコンセンサス繰返し配列8ないし11および崩壊促進因子のホスファチジルアンカーが、ブタの内皮細胞系にて膜結合安定発現構築物として合成された(Mikata S.ら、Transplant Immunol、1998、2、107−10)。米国特許第5847082号は、補体阻害剤CD59の一部と、親CD59分子の補体阻害剤特性をなおも保持しながらも、キメラ蛋白の細胞膜へのアンカーに供する膜貫通ドメインを含む、キメラ補体阻害剤を記載する。米国特許第5843778号は、ワクシニア補体制御蛋白の一部と、膜貫通ドメインならびに他の関連する融合蛋白を含有するキメラ蛋白を記載する。これらのすべてのケースにおいて、補体阻害剤の細胞表面への送達は、関連するその細胞にトランスフェクトされた遺伝子の発現に依存しており、通常トランスジェニック動物に関連して生じる。
【0009】
CR1の数個の可溶性フラグメントはまた、発現させるDNAより膜貫通領域を排除することにより組換えDNA技法を介して生成される(WO89/09220、WO91/05047)。その可溶性CR1フラグメントは、機能的に活性であり、C3bおよび/またはC4bに結合し、それらを含む領域に応じてファクターIコファクター活性を示した。かかる構築物は、インビトロにおける補体に関連する機能、例えば、好中球酸化バースト、補体媒介溶血現象、ならびにC3aおよびC5a産生を阻害した。ある種の可溶性構築物、sCR1/pBSCR1cもまた、逆受動アルチュス型反応にてインビボ活性を示し(WO89/09220、WO91/05047;Yehら、1991、J.Immunol.、146:250)、虚血後心筋炎症および壊死を抑制し(WO89/09220、WO91/05047;Weismanら、Science、1990、249:146−1511;Dupe,R.ら、Thrombosis&Haemostasis、(1991)65(6)695)、さらに抗体媒介の骨髄を除去する実験性アレルギー性脳脊髄炎(ADEAE)にてCNS炎症、脱髄および補体成分の析出を遮断した(Piddlesdenら、1994、J.Immunol.、152、5477)。
【0010】
可溶性CR1が種々の移植実験における補体媒介の拒絶反応プロセスを阻害することが明らかにされた(Pruitt&Bollinger、1991、J.Surg.Res. 50:350;Pruittら、1991、Transplantation 52;868、Pruittら、1994、Transplantation 57、363−370)。この物質はまたラットの腎臓同種移植反応において血管損傷および毛細血管血栓を軽減することが明らかにされた(Prattら、1996、Am.J.Pathol. 149.2055−2066;Prattら、1997、Eur.J.Immunol. 27、2848−2853)。
【0011】
移植拒絶反応における活性化Tリンパ球の役割は完全に確立されており、移植片拒絶反応を遅らすのに有用であることが公知のいくつかの免疫抑制治療法の基礎を形成する。これらは、シクロフィリンまたはイムノフィリンと称される受容体の対するリガンドであり、カルシニューリンのホスファターゼ活性を阻害することで細胞シグナル化経路に介在する、シクロスポリン、FK506およびラパマイシンなどの薬物を包含する(例えば、Hoら、1996、Clin.Immunopathol.、80、S40−5)。
【0012】
CD3−陽性T−細胞を排除し、かつ阻害することのできる、抗CD−3モノクローナル抗体OKT3の使用もまた関係している。モノクローナル抗体OKT3で処理した腎同種患者は、その抗体をボーラス注入よりもむしろ2時間注入として投与した場合に、ほとんど副作用を有さず、また補体活性化を示さないため、該方法それ自体が補体活性化に関連している可能性がある。したがって、補体活性化は最初のOKT3の投与後に副作用を生じさせることに一の役割があるようだと結論付けられた(Buysmannら、1997、Transplantation、64、1620−3)。
WO98/02454は、2またはそれ以上の異種膜結合成分を含有するポリペプチドであって、その各々の成分は外細胞膜の成分に対して比較的低い親和力しか有しないが、結合して高い親和力および異なる細胞型の外膜に対して相対選択性を付与する、ポリペプチドの水溶性誘導体を記載する。
【0013】
(発明の開示)
本発明の好ましい誘導体は、以下の構造式:
[P]−{L−[W]}n−X
[式中:
Pは可溶性ポリペプチドであり、
Lは、各々独立して、柔軟なリンカー基であり、
Wは、各々独立して、ペプチド膜結合成分であり、
nは1またはそれ以上の整数であり、
Xは、いずれかのWに共有結合しうる、ペプチドまたは非ペプチド膜結合体である]
で示される。
【0014】
ペプチド膜結合成分は、好ましくは、可溶性ポリペプチドのNまたはC末端のいずれかに続いて位置しており、8ないし20個の長さのアミノ酸であることが好ましい。アミノ酸配列は相互におよびリンカー基により可溶性ペプチドに連結されており、そのリンカー基は4ないし20個のアミノ酸の親水性および/または柔軟なアミノ酸配列、線状親水性合成ポリマーおよび化学架橋基から選択されることが好ましい。
【0015】
この度、例えば、免疫または凝血系の阻害剤または調節剤として作用する可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体であり、そのポリペプチドまたは誘導体がWO98/02454に従って修飾されている(特定の新規な膜結合成分に関連する修飾)、薬物の新規な処方で灌流した器官は上記した薬物を吸収し、かかる器官は長期間にわたって上記した薬物を保持するであろうことが見出された。かくして、その灌流薬物は、トランスジェニック動物にて保護分子を発現させることなくあるいは遺伝子療法を介することなく、腎臓または改変した組織などの器官を補体攻撃から保護する能力を有する。
【0016】
本発明によれば、器官の移植または貯蔵前に器官を灌流するための調製物であって、ポリペプチドと低い膜親和性で共有的に結合した2またはそれ以上の異種膜結合エレメントを含む、ここで該エレメントは、独立し、かつ熱力学的に付加して、細胞外灌流流体に曝されている器官の膜成分との相互作用能を有する、可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体と、生理学的に許容されるフラッシュ貯蔵溶液とを含む器官の灌流用調製物が提供される。
【0017】
「異種」とは、可溶性蛋白を誘導することのできる、天然の全長蛋白に見られないエレメントを意味する。
「可溶性ポリペプチド」とは、天然の膜結合能を欠く全長蛋白の切断誘導体および/または水性媒体中の溶解度が>100μg/mlのポリペプチドを意味する。
「低い膜親和性での膜結合エレメント」とは、エレメントが膜に対してほんの中程度の親和性を有し、解離定数が0.1μMよりも大きく、好ましくは1μM−1mMであるものを意味する。エレメントは大きさが<5kDaであることが好ましい。
【0018】
誘導体は誘導体に特異的膜に対して高い(好ましくは0.01−10nM解離定数)親和性をもたらすために膜成分に対して低い親和性を有する十分なエレメントを組み込むべきである。エレメントは全体として特定の標的膜に対して高い親和性を創製するように組み合わせるが、その組み合わせは他の蛋白に対してかかる高い親和性を欠いており、そのための単一エレメントは(低い親和性)リガンドとすることができる。
エレメントは、医薬処方媒体に有用な可溶性、好ましくは、>100μg/mlを保持するように選択しなければならない。好ましくは、少なくとも1つのエレメントは親水性である。
【0019】
ポリペプチドは抗凝血、抗血栓または免疫調節活性を有していることが好ましい。免疫調節活性を有するポリペプチドの例として、補体阻害活性を有するポリペプチドがある。そのポリペプチドはCR1ポリペプチドフラグメントであることが好ましい。抗血栓または抗凝血活性を有する好ましいポリペプチドの例は活性化蛋白Cおよびヒルジンおよびその類似物である。
さらに、本発明に従えば、本発明に係る調製物の製法であって、組換え宿主細胞にて誘導体のポリペプチド部をコードするDNAを発現させ、該ポリペプチドを翻訳後に修飾し、膜結合エレメントを化学的に導入して誘導体を形成させ、その誘導体を回収し、その誘導体をフラッシュ貯蔵溶液と混合する、ことを特徴とする方法が提供される。
【0020】
本発明に係る方法は、さらに、組換え宿主細胞にてポリペプチドをコードするDNAの発現能を有する複製可能な発現ベクターを調製し、組換え宿主細胞を該ベクターで形質転換させ、その形質転換した宿主細胞を、DNAポリマーの発現を可能とする条件下で培養し、ポリペプチドを生成することを含んでいてもよい。
また、本発明によれば、器官の移植または貯蔵前に器官を調製する方法であって、本発明に係る調製物を製造し、その器官を上記した調製物で灌流する、ことを特徴とする方法が提供される。
【0021】
さらに、本発明によれば、器官の移植または貯蔵の前、中または後に、器官の炎症、不当な補体活性化または凝血もしくは血栓プロセスの不当な活性化に伴う疾患または障害を防止、治療または改良する方法であって、本発明に係る調製物を製造し、器官をその調製物で灌流する、ことを特徴とする方法が提供される。
さらに、本発明によれば、器官の移植の前、中または後に、炎症、不当な補体活性化または凝血もしくは血栓プロセスの不当な活性化に伴う疾患または障害を防止、治療または改良する方法であって、本発明に係る器官を調製し、灌流した器官をその器官の移植を必要とする個体に移植する、ことを特徴とする方法が提供される。
また、本発明によれば、器官の移植または貯蔵の前、中または後に、炎症、不当な補体活性化または凝血もしくは血栓プロセスの不当な活性化に伴う疾患または障害の防止、治療または改良における、本発明に係る調製物の使用が提供される。
【0022】
本発明は治療薬を灌流によりアクセスされる器官の細胞膜に留め、それにより限定されるものではないが、補体活性化の阻害、細胞毒性Tリンパ球機能の阻害を含め、治療的に有利である可能性のある、1またはそれ以上の生物学的に有意な効果を提供するものである。
フラッシュ貯蔵溶液は移植組織片を調製するために移植する前に器官をフラッシュするのに使用される。その溶液は器官の長期貯蔵に伴う認識されている問題を解決するのに設計されている。フラッシュ貯蔵溶液は、器官と適合しうるpH、容量オスモル濃度およびイオン組成の滅菌水溶液を含み、貯蔵の間の器官の代謝活性およびアデニンヌクレオチド含量を考慮している。
【0023】
種々の化学組成物を有する多くの市販されているフラッシュ貯蔵溶液がある。ホスピタルセッティングにて使用されている主たるものに、ドイツのFersenius AGにより生産されている「Euro‐Collins(ユーロ−コリンス)」、Du Pont Chemical Companyにより製造されている「VIASPAN.RTM」およびBaxter Healthcare Ltd.,UKにより製造されている「Soltran(ソルトラン)」腎臓灌流溶液がある。加えて、記載されているフラッシュ貯蔵溶液であって、ホスピタルセッティングにて将来のある時点で使用することのできる多くの溶液がある。これらの溶液は、特定された付加成分および米国特許第5693462号に記載の成分を含み、別の成分、特にアミロライド含有化合物を含有する、基本哺乳動物細胞培養基を基礎とする、米国特許第5702881号に記載されている溶液を包含する。
【0024】
Baxter・Healthcare・Ltd由来のソルトランは、以下の成分を(溶液1Lにつき)含む。:
クエン酸カリウム8.6g
クエン酸ナトリウム8.2g
マンニトール33.8g
硫酸マグネシウム10.0g
【0025】
該溶液は7.1のpHおよび486mOsm/Lのオスモル濃度を有する。
等張に近い塩水溶液(0.145M)を、単純なフラッシュ貯蔵溶液として用いることができる。
フラッシュ貯蔵溶液への種々の添加物が、器官の生存率を改良し、再潅流障害を減少させると報告されている。これらは、ペントキシフィルライン(Okabayashiら、1994, Ann. Thorac. Surg. 58, 416-420)、トリメタジジン(Hauetら、1997, Tranplantation, 64, 1082-1086)およびニトロプルシド(Fujinoら、1997, J. Heart Lung Transplant 16, 1073-1080)を包含する。これら全ての場合において、その添加はフラッシュ貯蔵溶液に対してなされ、移植操作には添加薬をレシピエントに移送することが含まれる。
【0026】
誘導体がフラッシュ貯蔵溶液中で不安定な場合は、該誘導体は、安定な形態でフラッシュ貯蔵溶液から分けて貯蔵し、器官を該調製物で潅流する直前にフラッシュ貯蔵溶液と混合してもよい。
本明細書中に定義する、可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体のいずれも、いずれのフラッシュ貯蔵溶液を用いても調製することができる。
本発明の好ましい具体例においては、米国特許第5833989号およびWO98/39433に開示される可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体を、ソルトラン腎臓潅流溶液に希釈する。さらに本発明の好ましい態様では、WO98/02454に開示される可溶性誘導体を、ソルトラン腎臓潅流溶液で希釈する。
【0027】
本発明のさらに好ましい態様では、WO98/02454と以下に定義する「ミリストイル静電気スイッチ」配列を含む、WO98/02454およびWO98/39433に記載される可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体を、ソルトラン腎臓潅流溶液に希釈する。膜結合は、酸性リン脂質頭部基と相互作用し、および、目標たる膜結合への追加エネルギーを提供し得る蛋白配列中の塩基性アミノ酸の一群と化合させた場合の、脂肪アシル基を用いた限定的(単一部位)変更と関連していることが見出されている。効果のこの組み合わせは、「ミリストイル-静電気スイッチ」と名づけられている(S. McLaughlin and A. Aderem, TIBS, 20, 272-276, 1994; J. F. Hancock et al, Cell, 63, 133-139, 1990)。また、適当な膜結合成分のさらなる例は、配列内のセリン残基の可逆的リン酸化および、純陽性電荷の付随的中和により電子安定性「スイッチ」を媒介するRadおよびMARCKS(ミリストイル化アラニンリッチのC-キナーゼ基質、P. J. Blackshear, J. Biol. Chem., 268, 1501-1504, 1993)のような蛋白に見出されるような塩基性アミノ酸配列である。そのような配列には、制限されるものではないが、nが3から10、好ましくは4から7である(Lys)nのようなリジンまたはアルギニンの連続配列が含まれる。
【0028】
塩基性アミノ酸を含むアミノ酸配列の適当な例には、
(i)DGPKKKKKKSPSKSSG
(ii)GSSKSPSKKKKKKPGD
(iii)SPSNETPKKKKKRFSFKKSG
(iv)DGPKKKKKKSPSKSSK
(v)SKDGKKKKKKSKTK
(左がN末端)
が含まれる。
配列(i)から(v)は、電子安定性スイッチ配列の例である。
【0029】
本発明のより好ましい態様では、WO98/02454中配列番号8に対応する(および、本明細書中、配列番号1として引用することにより提供される)可溶性誘導体を、ソルトラン腎臓潅流溶液に希釈する。
本発明のさらにいっそう好ましい態様では、配列番号2に対応する可溶性有誘導体をソルトラン腎臓潅流溶液に希釈する。
本発明のさらにいっそう好ましい態様では、配列番号3に対応する可溶性有誘導体をソルトラン腎臓潅流溶液に希釈する。
【0030】
本発明のさらなる態様では、新規ペプチド膜結合エレメントが組み込まれるポリペプチド誘導体は、標的器官に見出される細胞型に対して高い親和力を与える。そのような細胞型の例には、ヒトの腎臓の糸球体上皮および内皮細胞が含まれる。これらのペプチド膜結合エレメントWは、特定器官または組織のためのマーカーとして作用する細胞表面蛋白に対するリガンドである。
【0031】
異なる蛋白を、前に例示したものと異なるフラッシュ貯蔵溶液を用いて調製することができることが当業者には明らかであろう。例えば、WO98/02454およびWO98/39433には、ソルトラン希釈液中で可溶性誘導体を形成させるべく変更し、および調製することができるいくつかの新規な補体阻害剤が開示されている。加えて、ソルトラン希釈液は、前記のVIASPAN.RTMまたはEuro-Collinsフラッシュ貯蔵溶液で置き換えることもできる。
【0032】
本発明の製剤は、(特に前もって移植された器官で感受性とされた個体の、)腎臓、心臓、肝臓または肺のような、移植を受けた組織の超急性および急性同種移植片拒絶、移植を受けた器官の虚血性再潅流障害、異種移植片拒絶および核膜移植片拒絶を含む、多くの補体媒介性、あるいは補体関連性疾患の予防、治療または改善に有用である。
【0033】
本発明を実施例によりさらに開示する。
実施例中で用いる一般方法。
(i)硫酸ナトリウムドデシルポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS・PAGE)
SDS・PAGEを製造業者の指示に従い、Novexシステム(Novex,ドイツ)を一般に用いて行った。アクリルアミド濃度4-20%の予め包装したゲルを最も頻繁に用いた。蛋白分子量基準を含む電気泳動のためのサンプル(例えばLMWキット、PharmaciaまたはNovex・Mark12)を、1%(w/v)SDS-含有バッファー(5%(v/v)2-メルカプトエタノールを含む、あるいは含まない)中に通常希釈し、ゲルへ適用する前、約0.5時間室温に置いた。
【0034】
(ii)蛋白におけるジスルフィドの還元およびチオールの変更
標題の目的を達成するのに、多くの方法がある。ジスルフィドの選択的還元を行うことが必要である理由は、再度の折りたたみ中に、ジスルフィド対合に不適当な多くのチオール蛋白の濃縮およびさらなる精製が生じる可能性があることである。加えて、正確なジスルフィド対合が起こらない場合でさえ、蛋白中の遊離システインが還元剤、例えばグルタチオンを用いてブロックされ得る可能性がある。これらの誘導体は、概して非常に安定である。それらをより反応性のあるものにするために、例えば他の官能基へのその後の結合のために、それらを、例えばジチオトレイトール(DTT)またはトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンHCl(TCEP)を用いて選択的に還元し、次いで適度に不安定である官能基を用いて任意に変更する必要がある。後者の例は、混合ジスルフィドを提供するEllmans試薬(DTNB)である。DTNBを用いた処置を省略する場合、確実に遊離性チオール含有蛋白の二量化を最少に抑えるのに、実験設計に対して入念な注意が必要である。先の「選択的に還元される」の用語の引用は、例えば、反応物の存続時間、温度、モル比を、蛋白本来の構造の範囲内でジスルフィド架橋が減じないように注意深く制御しなければならないことを意味する。全試薬は、例えばSigmaまたはPierceから市販入手可能である。
【0035】
以下の一般例は、遊離チオールの形成およびその任意の変更に用いてよい条件のタイプおよび、有用な条件のタイプを示す。最適のチオールの還元および/または変更を達成するための特定の反応条件は、各蛋白バッチに関して決定する。
【0036】
TCEPは、50mMのヘペス(pH約4.5)中20mMの溶液として調製し、−40℃で貯蔵してよい。DTTはリン酸ナトリウムpH7.0中10mMで調製してよく、−40℃で保存してよい。DTNBは、リン酸ナトリウムpH7.0中10mMで調製してよく、−40℃で保存してよい。前記全試薬は典型的には、正確な濃度を理想的には実験的に確認したモル等量またはモル過剰量で用いる。反応の継続時間および温度を同様に実験的に測定する。概して、継続時間は1から24時間の範囲内であり、温度は2から30℃の範囲内である。過剰の試薬は、例えばSephadex・G25を用いるバッファー交換により適切に除去してよい。適当なバッファーは、0.1Mリン酸ナトリウムpH7.0である。
【0037】
(iii)ヒツジの赤血球の標準経路媒介性溶血により測定する抗補体活性
補体阻害剤の機能活性を、ウサギ抗体(Diamedix Corporation, Miami, USA)を用いて感作させたヒツジの赤血球の補体媒介性分解阻害を測定することにより評価した。アッセイは、補体活性化の標準経路に特異的となるべく設計する。0.1Mヘペス/0.15M・NaCl・0.1%ゼラチンpH7.4中1:100(アッセイ混合物中の最終濃度)に希釈したヒト血清を、補体源として用いた。血清は、Dacie & Lewis, 1975に本質的に記載されるように、ボランティアのプールから調製した。簡単には、血液を37℃まで5分間温め、血餅を除去し、残存している血清を遠心分離により浄化した。血清フラクションを少量ずつ分量し、−196℃または−80℃で貯蔵した。分量部を所望のように解凍し、使用直前にヘペスバッファーに希釈した。
【0038】
感作したヒツジ赤血球の補体媒介性分解の阻害を、常套の溶血アッセイを用い、v-底マイクロタイタープレートフォーマットを用いて以下のように測定した。
ヘペスバッファー中に希釈した、50μlの範囲の濃度の阻害剤を50μlの希釈血清および100μlの感作ヒツジ赤血球と混合し、次いで1時間、37℃でインキュベートした。サンプルを1600rpmで、室温で3分間回転させた後、150μlの上清を平底マイクロタイタープレートに移し、吸収を405または410nmで測定した。最大の溶解(Amax)を、赤血球を含む、いずれの阻害剤も含まない血清をインキュベートすることにより測定した。バックグラウンド分解(Ao)を、いずれの血清または阻害剤も存在しない条件下で赤血球をインキュベートすることにより測定した。阻害を全細胞分解の分数として表し、IH50は、溶解の50%阻害を与えるのに必要とされる阻害剤の濃度を表す。
%阻害=[1−[(A−Ao)/(Amax−Ao)]x100
【0039】
(iv)モルモット赤血球の別の経路媒介性溶血により測定する抗補体活性
補体阻害剤の機能活性を、Scesney, S. M. et al (1996) J. Immunol. 26 1729-1735に本質的に記載されるように、モルモットの赤血球の補体媒介性溶解阻害を測定することにより評価した。アッセイは、補体の活性化の別経路に特異的となるべく設計する。Dacie & Lewis, 1975に本質的に記載されるように、ボランティアのプールから調製したヒト血清を、補体源として使用した。簡単には、血液を37℃まで5分間温め、血餅を除去し、残存している血清を遠心分離により浄化した。血清フラクションを少量部分へ分量し、−196℃で貯蔵した。少量部分を所望のように解凍し、使用直前に、0.1Mヘペス/0.15M・NaCl/0.1%ゼラチン/8mM・EGTA/5mM・MgCl2pH7.4(バッファーA)に希釈した。
【0040】
アルセバー液としてモルモット赤血球をTCSマイクロバイオロジーから購入し、+4℃で貯蔵した。それらを2週間以内に使用した。
バッファーA中、v−底マイクロタイタープレート中に希釈した、50μlの範囲の濃度の阻害剤を、まず、1:3(バッファーA中)に希釈した100μlの血清と、および第二に、50μlのモルモット赤血球(バッファーA中1:49に希釈した)中に希釈し、1時間37℃でインキュベートした。プレートを1600rpmで3分間回転させた後、各上清の150μlを平底マイクロタイタープレートに移し、各試験溶液中での溶解量を反映する405nmでの吸収を測定した。最大溶解量(Amax)を、血清を赤血球と共に、いずれの阻害剤も存在しない条件下でインキュベートすることにより決定した。バックグラウンド溶解(Ao)を、赤血球を、いずれの血清または阻害剤も存在しない状況下でインキュベートすることにより決定した。阻害剤自体が溶解に影響を持つかどうかを調べるために、赤血球を阻害剤のみとインキュベートし、化合物はいずれも、赤血球細胞の分解にいずれの直接的な影響も持たなかった。アッセイに使用した血清の最終希釈液は、405nmで吸収したが、吸収のレベル(Amaxのおよそ10%)は、全てのアッセイ結果にわずかな影響しか持たないと考えられ、算定では無視した。阻害を全細胞分解の係数として表し、IH50は、溶解の50%阻害を与えるのに要求される阻害剤の濃度を表す。
%阻害=[1−[(A−Ao)/Amax−Ao)]x100
【0041】
実施例1. 膜標的補体阻害剤配列番号1の合成および単離(引用:WO98/02454、実施例8)
a)さらなる精製のための別の方法
WO98/02454、実施例6に記載のように、精製SCR1-3/cyc蛋白(リン酸緩衝塩水(PBS)中約90マイクロモル;87ml)をトリカルボキシエチルホスフィン(50mMのヘペスpH4.5中50mMストックの0.315ml)を、18時間25℃で用いて処置した。エタノールアミンを該溶液に、0.26mlの非希釈ストック試薬(16.6Mと考えられる)の添加により添加した。MSWP-1(WO98/02454の実施例2)(0.1Mのリン酸ナトリウムpH7.0中10mMストックの2.35ml)を添加し、溶液をさらに3時間25℃でインキュベートし、次いで氷上に15分間置いた。洗浄し、吸引乾燥させた40gのトヨピアルブチル(Toyopeal Butyl)を添加し、混合液を攪拌し、5分間氷上に置いた。混合液を再び攪拌し、i.d.41mmのガラスジャケットに注ぎ、基質を通常のクロマトグラフィー同様、全て約4℃で展開させた。カラムをまず0.1Mのリン酸ナトリウムバッファーで、次いで0.3Mのエタノールアミンで展開した。主要A280ピークを、エタノールアミンバッファーを用いて基質から溶離した。単一のフラクション(40ml)として集め、PBSで平衡化したSephadex・G25カラム(Vt160ml)に適用した。フラクションを平衡化させたバッファーを用いて流し取った。Voフラクション(70ml)を生成物とみなし、−40℃で貯蔵した。SDS・PAGEの後、クーマシーブリリアントブルーを用いた染色により、Voフラクションは、約24000の分子量を有する、推定純度>90%の単一主要ポリペプチドを含んだ。
【0042】
b)別の精製法II
該方法は、Sephadex・G25段階のためのバッファーが、PBS/50mgml-1マンニトールUSP/0.1ML-アルギニンBPpH7.4である以外は、本質的に前記a)に記載と同様であった。pHの調製は、pHが7.4に達するまで溶液にHClを添加することにより行った。
【0043】
実施例2 2つのペプチド膜結合エレメントを取り込むミリストイル/静電スイッチペプチド試薬(配列番号3)の合成
N−(ミリストイル)-Gly-Ser-Pro-Ser-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Pro-Gly-Leu-Ser-Ser-Arg-Leu-Asp-Ala-(S-2-チオピリジル)Cys-NH2
ペプチド:
Gly-Ser-Pro-Ser-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Pro-Gly-Leu-Ser-Ser-Arg-Leu-Asp-Ala-Cys-NH2(配列番号4)
は、シェパードおよびアサトン(E. Atherton and R. C. Sheppard, Solid Phase Synthesis, IRL Press, Oxford, 1989)により開発された一般的Fmoc/tBuストラテジーによって固相合成法を用いて調製した。固体支持体としてキーゼルグール支持ポリジメチルアクリルアミド樹脂(Macrosorb 100)を使用し、エチレンジアミンで誘導体化した。
【0044】
ブロモフェノールブルーモニターリングをしながら、N,N'−ジイソプロピルカルボジイミド/N−ヒドロキシベンゾトリアゾール(4倍モル過剰)で前活性化したN−α−Fmoc保護試薬を使用してカップリング反応を行なった。Fmoc開裂には、DMF中20%ピペリジンを使用した。ペプチド鎖を構築するための反応を、最終開裂にてC末端アミドを生じるように設計された修飾Rink結合試薬(p−[(R,S)−α−[1−(9H−フルオレニル−9−イル−メトキシホルムアミド]−2,4−ジメトキシベンジル]−フェノキシ酢酸)の結合を含むカップリングおよび脱保護の反復サイクルにより行なった。個々のアミノ酸の側鎖官能基を以下のとおり保護した:
Ser(tブチル)、Lys(Boc)、Asp(O-tブチル)、Cys(トリチル)。
【0045】
ペプチド構築が完了し、ペプチドがまだ樹脂に結合したままで、同様の活性化法によるミリスチン酸の直接カップリング法によりミリストイル基をN末端グリシンのアミノ基に結合させた。次いで、この修飾ペプチドを樹脂から開裂させ、2.5%水および2.5%トリイソプロピルシランを含有するトリフルオロ酢酸による処理により側鎖保護基を同時に除去した。
【0046】
粗製生成物を、pH8〜9の0.01M酢酸アンモニウム溶液中、2,2'−ジチオピリジンで約2時間処理し、次いで、酢酸で酸性化し、勾配成分として0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)/水および0.1%TFA/アセトニトリルを用いて分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により精製した。凍結乾燥後、該ペプチドは、ジメチルスルホキシドに少なくとも10mg/mlまで可溶性の白色の非晶質粉末であった。高速原子衝撃質量分析法により、ペプチドのモノプロトン化およびモノナトリウム化分子イオンに相当するm/e 2433.6ダルトンおよび2455.6ダルトンで主ピークが得られた。該ペプチドを0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.0)中0.02mMまで溶解し、0.003mlを1mMジチオトレイトール(1.0ml)を添加して還元することにより該ペプチドの2−チオピリジル含有量を測定した。343nmでの光学密度の変化を用い、この波長での吸光係数8080cm−1M−1を使用して遊離したピリジン2−チオンの量を算出した。これにより、ペプチド含量が乾燥重量の約47%であったことが判明した。この分子中の2つのペプチド膜結合エレメントは、カチオン配列Pro-Ser-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Lys-Pro[配列番号5]および細胞結合配列Leu-Ser-Ser-Arg-Leu-Asp-Ala[配列番号6]に相当する。
【0047】
実施例3 2つのペプチド膜結合エレメントを取り込む補体阻害蛋白[配列番号2]の合成および単離
a)SCR1−3/cysの合成および単離は、以前に、WO 98/02454の実施例6において詳述されている。別の精製蛋白単離法を行なった。変更は、主に、再生プロセスに関するものであり、本実施例のb)(下記)に記載する。
【0048】
b)イー・コリ(E. coli)封入体からのSCR1−3/cysの単離は、細胞ペレットの可溶化、それに続く、カチオン交換マトリックス、例えば、Macroprep High S上でのクロマトグラフィーを包含する。上記a)において言及した別の再生プロセスは、以下のとおりであった:
【0049】
イオン交換カラムからの生成物(1ml当たりの総蛋白約3mg;400ml)を、室温で、セファデック(Sephadex)G25培地を使用して0.3Mエタノールアミン/1mM EDTA/1mM L−システイン/1mM L−シスチン・2HCl(pH調節は必要としない)にバッファー交換し、Vo容量600mlを回収した。次いで、Vo溶出液を冷再生バッファーでさらに希釈して、G25カラムに添加した原容量の10倍量の最終希釈液を得た。3時間目に、さらに1mM L−シスチン・2HClを添加し、該溶液を約2〜3℃で3日間静置した。(後の反復実験は、1mMずつ2回に分けて添加せずに2mM L−シスチン・2HCl濃度をそのまま使用した)。
【0050】
次いで、該溶液をYM10膜を使用して最終未透過容量が約200mlになるまで限外濾過し、室温で9容量倍の0.1M NaH2PO4/1M (NH4)2SO4(pH7.0)(バッファーA)と混合し、すぐに3000rpmで20分間遠心分離した。次いで、室温で、遠心分離からの上清をToyopearl Butyl 650M上でクロマトグラフィーに付し、バッファーAから0.1Mリン酸ナトリウム(pH7.0)までの勾配液(1支持床容量を超えて展開した)を使用して目的蛋白を溶離した。勾配溶離の間、1つの主要A280ピークが明らかであり、これを分離回収し、生成物とみなした。
【0051】
c)SCR1−3/cysおよびMSWP試薬の結合
コンジュゲートの合成は、実施例2に記載したMSWP試薬を使用した以外は、例えば、上記実施例1に記載したような、別のMSWP試薬を使用する類似のコンジュゲートについて従前に記載されたと同様の方法に従った。該合成は、SDS PAGE、次いで、クーマシーブリリアントブルーでの蛋白の染色による反応後試料の分析に基づいて成功したかを判断し、これは、1:1モル比でのMSWP試薬の付加と一致する、SCR1−3/cys(見掛分子量22000)からわずかに高い分子量(24000)への移動性のシフトを示した。該反応生成物は、塩酸でpH7に調節した、PBS/50mg/mlのマンニトール/0.1M L−アルギニン・HClへのバッファー交換により処方された。該生成物は、A280およびモル吸光係数30000に基づいて、2.3mg/mlの蛋白濃度を有していた。該生成物は、インビトロでの古典的経路(IH50=0.3nM)および別の経路(IC50=100nM)溶血アッセイにおいて抗溶血活性を示した。2つの溶血アッセイの詳細は、従前に記載されており、一般的な方法の項に記載する。
【0052】
d)さらなる精製およびPBS/マンニトール/アルギニンバッファー中への初期処方
バッファー交換しない以外は上記c)に記載したと同様の方法で合成した目的蛋白(63mg)を0.1Mリン酸ナトリウム/1Mリン酸アンモニウム(pH7.0)で20倍に希釈した(合計容量700ml)。次いで、該溶液を4℃で減圧乾燥Macroprep Methyl 35gとバッチ式で混合し、次いで、ガラスジャケット中に直接注ぎ、該マトリックスを標準クロマトグラフィーとして展開した。該マトリックスを0.1Mリン酸ナトリウム/1M硫酸アンモニウム(pH7.0)でベースラインが安定化するまで洗浄し、次いで、0.3Mエタノールアミンを使用して目的蛋白を溶離した。該蛋白を含有するA280ピークを回収し、すぐに、セファデックスG25を使用して、塩酸でpH7に調節した、PBS/50mg/mlのマンニトール(USP)/0.1M L−アルギニン(USP)にバッファー交換した。該生成物は、A280およびモル吸光係数30000に基づいて0.3mg/mlの蛋白濃度を有した。G25カラムのVoフラクションを類似の生成物と一緒にプールし、約15倍濃度まで限外濾過した(YM10膜;アミコン(Amicon))。次いで、未透過物を0.2ミクロンフィルター(Sartorius、NMWL)に通し、濾液をアリコート化し、冷凍させた。この物質を生成物とみなした。該生成物は、A280およびモル吸光係数30000に基づいて4.0mg/mlの蛋白濃度を有した。非還元SDS PAGE、それに続く、クーマシーブリリアントブルーを使用する蛋白の染色により測定した純度は、染色可能な蛋白の約95%が約23000の見掛分子量を有したことを示した。これは、目的の修飾蛋白であった。可視の混入物は、見掛分子量約37000の蛋白二量体および見掛分子量約21000の未修飾蛋白を包含していた。該生成物は、インビトロにおいて古典的な経路(IH50=0.1nM)および別の経路(IC50=100nM)の溶血アッセイにおいて抗溶血活性を示した。2つの溶血アッセイの詳細は、従前に記載されており、一般的な方法に記載する。
【0053】
実施例4 Soltran腎臓灌流溶液における実施例1の補体阻害剤の処方
上記実施例1b)の記載に従って調製した物質を、上記実施例3dに記載したPBS/マンニトール/アルギニンバッファーから凍結乾燥した。それを水に再可溶化して原容量にし、次いで、Soltran灌流液で希釈して約200μg/mlの濃度(〜8μM)の溶液を得た。該溶液をすぐに使用した。
【0054】
実施例5 Soltran腎臓灌流溶液における実施例3の補体阻害剤の処方
上記実施例3cの記載に従って調製した物質(0.01ml)をSoltran灌流液(0.99ml)で希釈した。約0.02mg/mlの濃度(0.87μM)の溶液を得た。次いで、該溶液を−40℃で冷凍貯蔵した。5日後、解凍し、古典的経路溶血アッセイ(一般的な方法No.3)においてアッセイした;それは、0.2nMのIH50を示し、これにより、それが完全な活性を保持していたことが判明した。
【0055】
実施例6 本発明の補体阻害剤を用いる腎臓の灌流方法
標準的な麻酔および手術法を使用してドナーラット腎臓を該動物から単離および摘出した。該器官を全腎動脈および前端部で結紮した以外は無傷の大動脈の一部と一緒に取り出した。腎静脈は、次なる移植工程用に適当な箇所で切断した。次いで、上記のとおり担体溶液で希釈した補体阻害剤(約2ml)を、大動脈の管腔中にゆっくりと注入することにより単離器官中に投与した。この工程の間、気泡が器官血管系に送達されないように注意した。このようにして投与された溶液は、腎臓の中を灌流し、腎静脈から出てきた。
【0056】
実施例7 腎臓の移植方法および免疫蛍光検査法による補体阻害剤の保持の実験的評価
レシピエントラットの腎臓を取り出し、実施例6におけると同様に調製したドナー腎臓をその場所に置いた。該器官の灌流を容易にするために使用した大動脈のセグメント取り出し、腎動脈を適当な長さに切断した。次いで、標準的な微小血管手術技法によりドナーおよびレシピエント動脈、静脈および尿管の端と端とを繋ぎ、血流をドナー器官に戻し、尿ドレナージさせた。器官内での補体阻害剤の保持を評価するために、灌流した移植器官を移植後の様々な時点で取り出し、すぐに−196℃で冷凍した。かかる組織から4μm厚冷凍切片を調製し、適当な容量の、細菌にて発現したヒトCR1の最初の3つの短いコンセンサス反復体に対して引き起こされた蛍光標識ネズミモノクローナル抗体(リン酸緩衝生理食塩水中0.47mg/mlのC−3結合3E10)と一緒に4℃で1時間インキュベートした。紫外線下での切片の顕微鏡写真は、ラット腎臓の上記実施例3およびWO98/02454の実施例8などの化合物への曝露により該器官の血管構造および実質構造が免疫蛍光的に描写されること、および該腎臓がレシピエント動物に移植された場合にこの標識化は持続したことを明らかにした。
【0057】
実施例8 腎臓の移植方法および移植後の第1週目における補体阻害剤の作用の実験的評価
レシピエントラットの腎臓を取り出し、実施例6におけると同様に調製したドナー腎臓をその場所に置いた。器官の灌流を容易にするために使用した大動脈のセグメントを取り出し、腎動脈を適当な長さに切断した。次いで、標準的な微小血管手術技法によりドナーおよびレシピエント動脈、静脈および尿管の端と端とを繋ぎ、尿ドレナージさせた。器官内での上記実施例1におけると同様の化合物の作用を評価するために、灌流した移植器官を移植後の様々な時点で取り出し、その一部を−196℃で冷凍するか、または、生理食塩水中4%ホルムアルデヒド溶液中で固定化した。冷凍組織の4μm厚切片をマウス抗ラットC5b−9新抗原抗体(米国シアトルのユニバーシティ・オブ・ワシントン(University of Washington)のW. Couser 博士からの寄贈品;Nangaku M. Pippin J. Couser WG. Journal of the American Society of Nephrology, 10(11):2323-31, 1999 Nov.にて発表)で染色し、FITC(Dako)に結合した抗マウスIg抗体で可視化した。標準的な方法を使用して、ホルムアルデヒド/生理食塩水固定組織を処理し、パラフィンワックスブロック中に包埋した。標準的な方法(Theory and Practice of Histological Techniques, Ed. John D. Bancroft and Alan Stevens, 3rd Edition, Churchill Livingstone, London, 1990)を使用して、これらの組織の2μm厚切片をヘモトキシリンおよびエオシンならびに過ヨウ素酸シッフ染色により染色した。かかる染色により、実施例6の灌流方法および上記実施例7の移植法を使用して40μg/mlの濃度の実施例1の化合物で灌流した器官は、補体活性化の膜標的阻害剤で灌流しなかった器官と比較して、補体活性化が低下しており、組織損傷が減少していたということが組織病理学的に証明された。移植後、毎日、灌流および移植ドナー腎臓のレシピエントの尾の先端から採血した血液試料を、市販のキット(イギリス国のシグマ(Sigma))を使用して腎機能のマーカーとしての尿素窒素含有量について分析した。かかる試料の分析により得られたデータから、実施例1の化合物で灌流した器官は、移植後第1週目の間、移植後の腎機能が改良されたことが証明された。
【0058】
実施例9 腎臓の移植方法および移植後20週間にわたる補体阻害剤の作用の実験的評価
レシピエントラットの第1の腎臓を取り出し、実施例6におけると同様に調製したドナー腎臓をその場所に置いた。該器官の灌流を容易にするために使用した大動脈セグメントを取り出し、腎動脈を適当な長さに切断した。次いで、標準的な微小血管手術技法によりドナーおよびレシピエント動脈、静脈および尿管の端と端とを繋ぎ、血流をドナー器官に戻し、尿ドレナージさせた。1回目の移植後7日目に、レシピエントラットの第1の腎臓を取り出し、かくして、レシピエントを腎機能について移植した試験器官に依存させた。該器官内での実施例1の化合物の作用を評価するために、灌流した移植器官を移植後20週目に取り出し、その一部を生理食塩水中4%ホルムアルデヒドロ溶液中で固定化した。標準的な方法を使用して、ホルムアルデヒド/生理食塩水固定組織を処理し、パラフィンワックスブロック中に包埋した。実施例8に記載した標準的な方法を使用して、これらの組織の2μm厚切片をヘマトキシリンおよびエオシンならびに過ヨウ素酸シッフ染色により染色した。かかる染色により、実施例1の化合物で灌流し、上記実施例6および7におけると同様に移植した器官は、膜標的補体阻害剤を欠く溶液で灌流した器官と比較して組織損傷が低下したことが証明された。移植後20週間にわたって一定の時間間隔で灌流および移植したドナー腎臓のレシピエントから採血した血液試料を、市販のキット(イギリス国のシグマ)を使用して腎機能のマーカーとしての尿素窒素含有量について分析した。かかる試料の分析により得られたデータから、実施例1の化合物で灌流した器官が移植後20週間にわたって移植後の腎機能を改善したことが証明された。
【0059】
上記記載において、言及が先行刊行物、発行された特許、および特許出願に対してなされた場合、その記載内容は、出典明示により本願明細書の記載とする。
【0060】
配列情報
SCR構築物(配列番号1ないし2)について以下に示すアミノ酸番号付けは、(イー・コリ発現の場合に使用される)N‐末端メチオニンがM1であるとしている。これはM0を用いる実施例における番号付けと対照をなしている。したがって、以下に示す配列の番号付けに関しては、その番号から「1」を引けば、実施例と対合する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 移植2週間後の、DA-DA腎臓同系移植レシピエント(n=6)における血中尿素窒素(BUN)データを示す。対照群は、正常群と有意に異なっており(p<0.0001)、一方、処置群は正常群とそれほど違わない(p=0.0530)。データは、本発明の化合物で潅流した器官が、移植後第1週の間に、移植後の腎臓機能を改善したことを示す。
【配列表】
Claims (11)
- ポリペプチドと低い膜親和性で共有的に結合した2またはそれ以上の異種膜結合エレメントを含む可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体(ここで該エレメントは、独立し、かつ熱力学的に付加して、細胞外灌流流体に曝されている器官の膜成分との相互作用能を有する)および
生理学的に許容されるフラッシュ貯蔵溶液
を含む、器官の移植または貯蔵前に器官を灌流するための虚血性再灌流障害防止用調製物であって、
該可溶性ポリペプチドの可溶性誘導体が、ミリストイルおよび塩基性アミノ酸配列と結合したCR1のフラグメントである最初の3つのショートコンセンサス繰返し配列(SCR1−3)からなる配列番号1で示される誘導体であり、
該生理学的に許容されるフラッシュ貯蔵溶液がソルトランである(ここで、ソルトランは、溶液1Lにつきクエン酸カリウム8.6g、クエン酸ナトリウム8.2g、マンニトール33.8g、硫酸マグネシウム10.0gを含んでおり、pHが7.1であり、オスモル濃度が486mOsm/Lである)
ことを特徴とする、調製物。 - ポリペプチドが免疫調節活性を有する、請求項1記載の調製物。
- ポリペプチドが補体阻害剤活性を有する、請求項1または請求項2記載の調製物。
- ポリペプチドが抗凝血活性または抗血栓活性を有する、請求項1記載の調製物。
- 誘導体を貯蔵溶液に溶かした、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の調製物。
- 請求項1ないし5のいずれかに記載の調製物の製法であって、
組換え宿主細胞にて誘導体のポリペプチド部をコードするDNAを発現させ、
該ポリペプチドを翻訳後に修飾し、膜結合エレメントを化学的に導入して誘導体を形成させ、
その誘導体を回収し、
その誘導体をフラッシュ貯蔵溶液と混合する
ことを特徴とする方法。 - さらに、
組換え宿主細胞にてポリペプチドをコードするDNAの発現能を有する複製可能な発現ベクターを調製し、
その組換え宿主細胞を該ベクターで形質転換させ、
その形質転換した宿主細胞を、DNAポリマーの発現を可能とする条件下で培養し、ポリペプチドを産生させる
ことを特徴とする請求項6記載の方法。 - 請求項1ないし5のいずれかに記載の調製物の製法であって、該誘導体をフラッシュ貯蔵溶液と混合することを含むことを特徴とする方法。
- 器官の移植または貯蔵前に器官をインビトロで調製する方法であって、
請求項1ないし5のいずれかに記載の調製物を製造し、
器官を上記した調製物で灌流する
ことを特徴とする調製法。 - 器官の移植または貯蔵前に器官を調製するための薬剤の製造における請求項1ないし5のいずれかに記載の調製物の使用。
- 貯蔵の前、中もしくは後または移植の前もしくは中の器官の炎症または不当な補体活性化に伴う虚血性再灌流障害を防止、治療または改良するための薬剤の製造における、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の調製物の使用。
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