JP4870884B2 - 心臓負担評価装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置に関し、より詳細には、コンピュータのソフトウェア処理によって、人の作業動作を簡易な操作及び形式で記述した入力データに基づいて、人間の形態等の特性を模擬したコンピュータ上の仮想人間であるコンピュータマネキンにその作業動作を模擬させるべく、その作業動作を複数の行為に分解して、各行為の動作を所定の合成アルゴリズムによって合成して、つまり、コンピュータマネキンの行動を生成し、コンピュータ画面上の仮想空間内に可視化するための行動生成システムにおいて、コンピュータマネキンの模擬動作に対する心臓負担評価を行う心臓負担評価装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のコンピュータマネキンの行動生成システムでは、所定の空間配置や動作の対象となる対象物に対してコンピュータマネキンの取る目標姿勢を予めマウス等のコンピュータの入力装置を用いてコンピュータ画面上で作成しておき、各目標姿勢間の動作を、例えばインバースキネマティクス等の動作合成アルゴリズムで生成し、別途入力した動作時間でコンピュータマネキンをコンピュータ画面上の仮想空間内で動作させるべく可視化(アニメーション)を行うという手順が取られていた。
【0003】
更に、マウス等で目標姿勢を作成する代わりに、動作の対象物の名称、位置座標、操作の種類等を指定して、その対象物に対する動作をコマンド入力することで、その対象物に対する動作が、所定の合成アルゴリズムで自動的に生成されるようにした行動生成システムも開発されている。例えば、石井等の「アフォーダンス概念に基づく人体モーション合成システムの開発」(ヒューマンインターフェース学会研究報告集 Vol.2 No.3 第73頁〜第78頁)に開示されているものがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の行動生成システムでは、コンピュータマネキンをコンピュータ画面上の仮想空間内で動作させる可視化は実現されているが、かかる動作に対する生理的負担(血圧変動・心拍変動等)の評価まで行えるものはなかった。従って、行動生成システムを用いてコンピュータマネキンに特定作業動作を行わせたとしても、可視化された画面からは、コンピュータマネキンの模擬する例えば急激な心臓の上下移動や激しい運動を伴う作業動作に対する危険性の評価や予測ができず、工場や住宅等の空間設計時の行動シミュレーションにおいて人体の生理的負担を考慮した総合的な評価に行動生成システムを使用するのに問題があった。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、上記問題点を解消すべく、複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する動作を定義して、行為コマンドで特定されるコンピュータマネキンの動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、人体の動作に対する心臓負担評価を客観的且つ簡易に行える心臓負担評価装置を提供する点にある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するための本発明に係る心臓負担評価装置の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項1に記載した如く、人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置であって、前記人体の動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する一連の動作によって定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの前記動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の動作時間情報をPTS法により算出する動作時間算出手段と、前記行為コマンドを運動強度指数に変換する第1変換テーブルを備え、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の運動強度指標を前記第1変換テーブルに基づいて導出する運動強度特定手段と、前記行為コマンドを運動タイプに変換する第2変換テーブルを備え、前記行動生成システムから入力される前記行為コマンドで特定される各動作に対して、前記第2変換テーブルに基づいて血液循環作用に与える影響が相異なる複数の運動タイプの内の少なくとも一つを割り当てる運動タイプ特定手段と、前記動作時間算出手段で算出された前記動作時間情報と、前記運動強度特定手段で特定された運動強度指標と、前記運動タイプ特定手段で割り当てられた運動タイプと、前記コンピュータマネキンの模擬対象となる人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報とを少なくとも入力データとして受け付け、前記入力データに基づく予め設定された演算処理を時間単位毎に実行することにより、前記行為コマンドで特定される動作に伴う血圧及び心拍数の少なくとも何れか一方を時系列に沿って算出可能な心臓循環器系モデルとを備えてなる点にある。
【0008】
同第二の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項2に記載した如く、上記第一の特徴構成に加えて、前記複数の運動タイプが、等尺性収縮運動、等張性収縮運動、及び、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の少なくとも3タイプを備えてなる点にある。
【0010】
同第三の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項3に記載した如く、人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置であって、前記動作の運動強度指標の時系列データと、等尺性収縮運動と等張性収縮運動を含む前記動作の運動タイプの時系列データと、血液循環作用に影響を与える個人特性情報とを入力データとして受け付け、前記動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出可能な心臓循環器系モデルを備えてなり、前記心臓循環器系モデルが、前記運動強度指標から基準血圧を時系列に沿って算出する基準血圧算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段とを有し、前記心拍数算出手段が、1時間単位前の前記血圧算出手段が算出した血圧と前記基準血圧の差分に基づいて予め設定された算出式により血圧変動の圧刺激による心拍数補正量を算出し、前記心拍数算出手段が算出した1時間単位前の心拍数に前記心拍数補正量を加算して心拍数を算出し、前記血圧算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した前記心拍数と、前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報に基づいて予め設定された算出式により算出される心拍1回当りの心拍出量と、を乗じて心拍出量を算出し、また、前記運動強度指標に基づいて予め設定された算出式により算出される必要酸素摂取量と前記運動タイプとに基づいて予め設定された算出式により血管抵抗を算出し、さらに、前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報とに基づいて予め設定された算出式により血圧変動を算出し、前記心拍出量に前記血管抵抗を乗算したものに前記血圧変動を加算して血圧を算出する点にある。
【0011】
同第四の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項4に記載した如く、上記第三の特徴構成に加えて、前記心臓循環器系モデルが、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動を含む前記動作の運動タイプの時系列データを入力データとして受け付け、入力データとして受け付けた前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報の年齢とに基づいて、予め設定された算出処理を単位時間毎に実行することにより前記上下移動運動に伴う血圧変動を時系列に沿って算出する血圧変動算出手段を備え、前記血圧算出手段が算出した血圧に対し、前記血圧変動算出手段が算出した血圧変動を付加する点にある。
【0012】
同第五の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項5に記載した如く、上記第三または第四の特徴構成に加えて、前記動作の運動強度指標から求まる必要酸素摂取量に対する不足酸素量を補うための心拍数補正量を、前記心拍数算出手段が算出した心拍数に基づいて予め設定された算出式により酸素摂取量を算出し、前記必要酸素摂取量から前記酸素摂取量を差し引いて前記不足酸素量を算出し、前記不足酸素量に所定の係数を乗じたものとして、一定時間遅れで算出する化学受容器モデルを備え、前記心拍数算出手段が前記心拍数の算出に前記心拍数補正量を付加する点にある。
【0013】
同第六の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項6に記載した如く、上記第三、第四または第五の特徴構成に加えて、前記人体の動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する一連の動作によって定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの前記動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の動作時間情報をPTS法により算出する動作時間算出手段と、前記行為コマンドを運動強度指数に変換する第1変換テーブルを備え、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の運動強度指標を前記第1変換テーブルに基づいて導出する運動強度特定手段と、前記行為コマンドを運動タイプに変換する第2変換テーブルを備え、前記行動生成システムから入力される前記行為コマンドで特定される各動作に対して、血液循環作用に与える影響が相異なる複数の運動タイプの内の少なくとも一つを前記第2変換テーブルに基づいて割り当てる運動タイプ特定手段とを備え、前記心臓循環器系モデルが、前記動作時間算出手段で算出された前記動作時間情報、前記運動強度特定手段で特定された運動強度指標、前記運動タイプ、及び、前記コンピュータマネキンの模擬対象となる人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を少なくとも入力データとして受け付け、受け付けた入力データから単位時間毎に前記行為コマンドで特定される動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出する点にある。
【0014】
本発明に係る心臓負担評価プログラムの特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項7に記載した如く、人体の動作に対する心臓負担評価を所定のコンピュータ上で実行するための心臓負担評価プログラムであって、上記第一乃至第六の特徴構成の何れか一つを備えた前記臓負担評価装置における前記各手段及び前記各モデルの機能を前記コンピュータに実現させるためのプログラムステップを含む点にある。
【0015】
この目的を達成するための本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体の特徴構成は、特許請求の範囲の欄の請求項8に記載した如く、上記特徴構成を備えたコンピュータマネキンの心臓負担評価プログラムを記録した点にある。
【0016】
以下に上記特徴構成の作用並びに効果を説明する。
本発明に係る心臓負担評価装置の第一の特徴構成によれば、動作時間算出手段によってコンピュータマネキンの一連の動作を定義する行為コマンドの時系列データの各行為コマンドに対応した各動作の動作時間情報(動作時間や動作速度)が、人手で入力せずとも一定の算出基準に則って客観的且つ自動的に算出され、運動強度特定手段によって各行為コマンドで対応した各動作の運動強度指標が導出され、これら動作時間情報と運動強度指標が心臓循環器系モデルの入力データとして受け付けられることから、心臓循環器系モデルは運動強度指標の時系列データ、つまり、運動強度指標の時間的変化を得ることができ、当該運動強度指標の時間的変化に基づいて血圧及び心拍数の少なくとも何れか一方を時系列に沿って算出することができる。ここで、運動強度指標は、RMR(RelativeMetabolic Rate、エネルギ代謝率)やMETS(Metabolic Equivalent、代謝当量)等の運動強度を表す指標であり、RMRやMETSは運動に伴う酸素摂取量の変化によって表すことができる。従って、本願発明者は適当な心臓循環器系モデルを設定することで、運動強度指標の時系列データに基づいて血圧及び心拍数の時系列に沿った計算が可能と判断し、時系列で組み合わされる各行為コマンドに対して動作時間情報と運動強度指標を求めれば運動強度指標の時系列データが得られるので、これらを心臓循環器系モデルに入力することで行動生成システムに対してコンピュータマネキンの動作に伴う心臓負担評価が実行できる構成としたものである。以上の結果、コンピュータマネキンを用いた空間設計時の行動シミュレーションにおいて、寸法適合性や関節トルク評価等に加えて、高齢者の負担評価等に重要な血圧・心拍の変動も予測可能となる。これにより、例えば立ち眩み等の危険予知が可能となり、人間と空間の適合性評価の精度が向上する。
【0017】
また、行為コマンドで特定される各動作に対して、血液循環作用に与える影響が異なる運動タイプの別を考慮したより精度の高い心臓負担評価が実行できる。また、運動タイプの別を考慮する場合に、運動タイプ別に心臓循環器系モデルを準備する必要が無い。従って、運動タイプの異なる行為コマンドの組み合わせで規定される一連の動作に対して、かかる運動タイプの違いを反映した高精度の心臓負担評価が実行できる。
さらに、血液循環作用に影響を与える個人特性情報を考慮したより精度の高い心臓負担評価が実行できる。また、個人特性情報を考慮する場合に、例えば、年齢や性別等の個人属性毎に異なる心臓循環器系モデルを準備する必要が無く、例えば、幅広い年齢層の人間の行動シミュレーションに応用できる。
【0018】
同第二の特徴構成によれば、心臓循環器系モデルの実行する処理において、等尺性収縮運動と等張性収縮運動の血管抵抗に対する作用の違いを考慮することができ、更に、等張性収縮運動を含む動作であっても、一部に心臓位置の急激な上下移動を伴う場合は、等尺性収縮運動と等張性収縮運動とは異なるメカニズムで血液循環作用に影響を与えることを考慮することができ、運動タイプの異なる行為コマンドの組み合わせで規定される一連の動作に対して、かかる運動タイプの違いを反映した高精度の心臓負担評価が実行できる。
【0020】
同第三の特徴構成によれば、心臓循環器系モデルの基準血圧算出手段が入力された運動強度指標の時系列データに基づいて基準血圧を時系列に沿って算出することにより運動強度指標の時間的変化に追従して変化する基準血圧が求まり、心臓循環器系モデルの心拍数算出手段が、1時間単位前の血圧算出手段が算出した血圧とこの基準血圧の差分に基づいて予め設定された算出式により血圧変動の圧刺激による心拍数補正量を算出し、前記心拍数算出手段が算出した1時間単位前の心拍数に前記心拍数補正量を加算して心拍数を算出することにより当該差分を小さくする方向に働く人体の神経応答系及び血圧と心拍数間のフィードバックループ系を適切にモデル化して運動強度指標及び血圧の時間的変化に追従して変化する心拍数を高精度に算出でき、心臓循環器系モデルの血圧算出手段が前記心拍数算出手段が算出した前記心拍数と、前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報に基づいて予め設定された算出式により算出される心拍1回当りの心拍出量と、を乗じて心拍出量を算出し、また、前記運動強度指標に基づいて予め設定された算出式により算出される必要酸素摂取量と前記運動タイプとに基づいて予め設定された算出式により血管抵抗を算出し、さらに、前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報とに基づいて予め設定された算出式により血圧変動を算出し、前記心拍出量に前記血管抵抗を乗算したものに前記血管変動を加算して血圧を算出することにより、等尺性収縮運動と等張性収縮運動の違い及び個人特性を反映した運動強度指標及び心拍数の時間的変化に追従して変化する血圧を高精度に算出できる。この結果、動作の運動強度指標の時系列データと、等尺性収縮運動と等張性収縮運動を含む動作の運動タイプの時系列データと、血液循環作用に影響を与える個人特性情報とを入力データとして受け付け、血圧及び心拍数の時間的変化で表される心臓負担評価が高精度に行うことができる。
【0021】
更に、運動強度指標及び運動タイプの時系列データを入力データとして取り扱うことができるため、行動生成システムが生成する行為コマンドの時系列データから、これら入力データを抽出することで、コンピュータマネキンの動作に対して心臓負担評価を実行することが可能となる。
【0022】
同第四の特徴構成によれば、立ち上がり時やしゃがみ時等の心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動時の血圧変動を考慮した高精度の心臓負担評価が可能となる。より詳細には、立ち上がりやしゃがむ動作は膝関節が動いて筋肉の収縮を伴うため、等張性収縮運動と見なせば筋ポンプ作用により血液が流れ易くなり血管抵抗が下がって血圧が低下する傾向にあるが、実際は、心臓位置の急激な上下移動を伴うために血管がバッファタンクの役割を果たし血圧・心拍数が逆に上昇する傾向にあるという等尺性収縮運動と等張性収縮運動とは異なるメカニズムで血液循環作用に影響を考慮することができる。
【0023】
同第五の特徴構成によれば、化学受容器モデルが運動強度指標から求まる必要酸素摂取量に対する不足酸素量を補うように心拍数補正量を算出することにより、酸素摂取量の過不足を考慮した長期的な血圧と心拍数間のフィードバックループ系を適切にモデル化して血圧及び心拍数の時間的変化を高精度に算出することができる。
【0024】
同第六の特徴構成によれば、動作時間算出手段によってコンピュータマネキンの一連の動作を定義する行為コマンドの時系列データの各行為コマンドに対応した各動作の動作時間情報(動作時間や動作速度)が、人手で入力せずとも一定の算出基準に則って客観的且つ自動的に算出され、運動強度特定手段によって各行為コマンドで対応した各動作の運動強度指標が導出され、運動タイプ特定手段によって行為コマンドで特定される各動作に対して運動タイプが割り当てられ、これら動作時間情報、運動強度指標及び運動タイプ、更に、個人特性情報が上記第三乃至第五の特徴構成を備えた心臓循環器系モデルの入力データとして受け付けられることから、行動生成システムに対してコンピュータマネキンの動作に伴う心臓負担評価を上記第三乃至第五の特徴構成の作用効果を発揮して高精度に実行できるようになる。
【0025】
本発明に係る心臓負担評価プログラムの特徴構成によれば、その心臓負担評価プログラムを所定のコンピュータにインストールすることで、上記第一乃至第六の特徴構成の心臓負担評価装置を当該コンピュータに実現させることができる。
【0026】
更に、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体の特徴構成によれば、上記特徴構成の心臓負担評価プログラムが所定のコンピュータが読み取り可能な状態で記録されているので、当該コンピュータにそのプログラムをインストール可能であり、上記第一乃至第六の特徴構成の心臓負担評価装置を当該コンピュータに実現させることができる。また、本発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体が直接当該コンピュータからアクセス可能である場合は、そのまま上記特徴構成の心臓負担評価プログラムが実行可能であり、同様に上記第一乃至第六の特徴構成の心臓負担評価装置を当該コンピュータに実現させることができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
本発明に係る心臓負担評価装置(以下、適宜「本発明装置」という。)の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0028】
本発明装置1は、コンピュータ処理によって、人の作業動作を簡易な操作及び形式で記述した入力データに基づいて、コンピュータマネキンにその作業動作を模擬させるべく、コンピュータマネキンの対象物に対する動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせて定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの動作を所定の合成アルゴリズムによって合成して、つまり、コンピュータマネキンの行動を生成し、コンピュータ画面上の仮想空間内に可視化するための行動生成システム10において、各行為コマンドで特定される動作に対して血圧及び心拍数の時間的変化を算出することにより当該動作の心臓負担を評価する心臓負担評価装置である。
【0029】
本発明装置1は、図1に示すように、動作時間算出手段2、運動強度特定手段3、運動タイプ特定手段4、個人特性入力手段5、及び、心臓循環器系モデル6を備えて構成される。より具体的には、本発明装置1は、行動生成システム10を構成するコンピュータ、或いは、別のコンピュータ上で、当該コンピュータのコンピュータシステムのハードウェア資源を利用しながら本発明に係る心臓負担評価プログラム(以下、「本発明プログラム」という。)を実行することにより、動作時間算出手段2、運動強度特定手段3、運動タイプ特定手段4、及び、心臓循環器系モデル6を実現する。
【0030】
動作時間算出手段2は、行動生成システム10から出力される行為コマンドの時系列データから各行為コマンドで特定される動作に要する動作時間や動作速度等の動作時間情報を時系列に沿って算出する。動作時間算出手段2は、図2に示すように、入力部11、デフォルト値設定部12、PTS適用部13、動作時間情報導出部14、及び、動作時間情報変更部15を備えて構成される。更に、PTS適用部13はMOD値導出部16を備え、MOD値導出部16は移動動作判定部17と歩数計算部18を備える。より具体的には、動作時間算出手段2は、本発明装置1を構成するコンピュータ上で、当該コンピュータのコンピュータシステムのハードウェア資源を利用しながら本発明プログラムの動作時間算出手段2に係る動作時間算出ステップを実行することにより、入力部11、デフォルト値設定部12、PTS適用部13、動作時間情報導出部14、及び、動作時間情報変更部15を実現する。
【0031】
入力部11は、所定の作業を記述した行為コマンドの時系列データと、その時系列データで特定される動作における動作時間情報と無関係に決定されるコンピュータマネキンの所定人体部位の変位情報を、行動生成システム10から入力する。具体的には、入力部11は、図3に示す本発明プログラムの動作時間算出ステップに含まれる第1入力ステップと第2入力ステップを夫々前記コンピュータ上で実行することにより実現される。ここで、第1入力ステップは行動生成システム10から行為コマンドの時系列データを入力し、前記コンピュータシステムの記憶装置に格納する処理を実行し、第2入力ステップは、行動生成システム10から、その時系列データで特定される動作における動作時間情報と無関係に決定されるコンピュータマネキンの所定人体部位の変位情報を入力し、前記コンピュータシステムの記憶装置に格納する処理を実行する。
【0032】
尚、所定人体部位とは、頭、首、肩、背中、腰、重心位置、手足の各関節等の各部位である。また、それらの変位情報とは、高さ、移動距離、回転角等の情報であり、変位には、基準位置や基準姿勢からの変位と、特定動作の前後での変位が有り得る。
【0033】
行為コマンドの種類及び機能は、対象となる行動生成システム10により異なるが、本実施形態では、「Reach」、「握る」、「移動」、「離す」、「姿勢」、「見る」、「引く」、「置く」、「点火」という九つの行為コマンドを用いて一連の作業を記述する。
【0034】
次に、各行為コマンドの動作内容について簡単に説明する。「Reach」コマンドは、コンピュータマネキンの所定人体部位を対象物に向けて移動させる行為で、本実施形態では所定人体部位である「手」を対象物に届くように伸ばす等の移動させる行為を実行する。また、「Reach」コマンドは、コンピュータマネキンの特性と対象物の特性との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、条件によって、把持物を持ち替える等の準備動作、歩行動作、体を捻る・しゃがむ等の姿勢変更を伴う場合がある。「握る」コマンドは、「Reach」コマンドで対象物に届いた手で対象物を把持する行為を実行する。「移動」コマンドは、「握る」コマンドで把持した対象物を移動する行為を実行する。「離す」コマンドは、「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を解放する行為を実行する。「姿勢」コマンドは、コンピュータマネキンの姿勢を変更する行為を実行する。具体的には、登録されている姿勢に変更することにより実行する。「見る」コマンドは、コンピュータマネキンの正面方向と見る対象物との位置関係に応じてコンピュータマネキンの頭部を回転させながら対象物に視線を合わせる行為を実行する。「引く」コマンドは、「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を体に引き寄せる行為を実行する。「置く」コマンドは、「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を指定された位置まで移動させて置く行為を実行する。また、「置く」コマンドは、「Reach」コマンドと同様に、コンピュータマネキンの特性と指定位置との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、条件によって、準備動作、歩行動作、姿勢変更を伴う場合がある。「点火」コマンドは、家事作業を模擬する場合に特有のコマンドで、コンロを点火する行為を実行する。「点火」コマンドは、コンピュータマネキンの特性と対象物(点火スイッチ)の位置との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、条件によって姿勢変更を伴う場合がある。
【0035】
デフォルト値設定部12は、図3に示す動作時間算出ステップに含まれるデフォルト値設定ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。デフォルト値設定ステップにおいて、第1入力ステップで入力部11に入力した行為コマンドの時系列データの動作時間情報に、所定のデフォルト値が設定される。尚、デフォルト値設定部12は、行動生成システム10側の一機能として設けても構わない。また、行動生成システム10がデフォルト値設定機能を予め具備している場合は、動作時間算出ステップ2側に別途同機能を設ける必要はない。かかる場合は、デフォルト値設定ステップは、本発明プログラムの実行前に処理されても構わない。
【0036】
行動生成システム10側では、動作時間情報にデフォルト値が設定されると、そのデフォルト状態の時系列データに基づいて所定の合成アルゴリズムによってコンピュータマネキンの動作を合成し、その合成された動作からコンピュータマネキンの所定人体部位の変位情報を抽出し、第2入力ステップにおいて、抽出された変位情報が入力部11に入力する。
【0037】
本実施形態では、行動生成システム10側に本発明装置1に必要な変位情報を抽出する機能が一般的な機能として具備されている場合を想定しているが、行動生成システム10側に当該変位情報抽出機能がない場合は、行動生成システム10の外部に、例えば、動作時間算出手段2内に設けても構わない。この点については、別実施形態において詳述する。
【0038】
PTS適用部13は、図3に示す動作時間算出ステップに含まれるPTS適用ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。PTS適用ステップにおいて、入力部11に入力された時系列データと変位情報に基づいて、時系列データ中の各行為コマンドにPTS法で規定された要素動作を割り付ける。本実施形態では、PTS法としてMODAPTS法を用いる。要素動作を割り付けるにあたり、行為コマンド毎に特定されるMODAPTS法で規定される要素動作の種別を決定し、その各要素動作の所要時間値に相当するMOD値を決定する。
【0039】
ここで、PTSとは、Predetermined Time Standardの略称であり、人間の行う一連の作業をPTS法で規定される要素動作の組み合わせで構成し、予めPTS法で定められた時間標準の値を用いて各要素動作の時間値を定め、これを集計することによって一連の作業に要する時間を客観的に求める手法の総称である。PTS法としては、要素動作の種類や個数、各要素動作の時間値の時間決定因子や時間標準の違いによって、種々のものが提案されており、代表的なものとして、MODAPTS法、MTM−II法、MSD法、MTA法、BMT法、MTM法、WF法等がある。
【0040】
また、MODAPTS法とは、Modular Arrangement of Predetermined Time Standardsを基礎として開発されたPTS法で、オーストラリアのPTS協会が、アメリカの工業会で発達した作業動作時間測定法であるMTM(Methods Time Measurement)を改良して作り上げた極めて簡便な評価法である。
【0041】
尚、MODAPTS法で規定された要素動作は、指、手、腕の移動動作と、移動動作の終わりになされる指、手、腕の終局動作と、移動動作と終局動作の何れにも含まれない補助動作の三つに分類される。移動動作はMxで表され、xMODの移動動作を行う。xはMOD値で要素動作の所要時間値を表し、MODは人間の動作の最小単位を意味しており、1MODは0.129秒の動作時間に相当する。尚、Mは「Move」の略称である。また、終局動作は、対象物に手を伸ばした後、それを掴む動作Gxと、対象物を移動させた後、それを目的の場所に置く動作Pxの2種類があり、xはMOD値である。Gは「Get」の略称、Pは「Put」の略称である。Gx、PxはxMODの終局動作を行うが、Gxの場合、掴みの難易度に応じてG0、G1またはG3となり、Pxの場合、置く際の難易度に応じてP0、P2またはP5となる。
【0042】
補助動作は、L1、E2、R2、D3、F3、A4、C4、W5、B17、S30の10種類がある。尚、各数字はMOD値であり、各補助動作を行うときの所要時間値に相当する。L1は移動動作に対する重量補正で、重量物を移動する場合に、片手の実際にかかる重量が2〜6kgまでの場合にはL1で置く動作Pxの補正を行う。つまり、所要時間値として1MODが加算される。また、重量が6kgを超える場合は、4kg毎に1MODを加算する。Lは「Load Factor」の略称である。E2は視線移動と焦点合わせ動作である。Eは「Eye Use」の略称である。R2は物の掴み直し動作である。Rは「Regrasp」の略称である。D3は瞬間的判断とそれに伴う指の動作である。Dは「Decide and React」の略称である。F3は足首の動作で、踵を床につけたままでの1回のペダル操作である。Fは「Foot Action」の略称である。A4は指や手での加圧操作である。Aは「Apply Pressure」の略称である。C4は手または腕の1回転のクランク動作である。Cは「Crank」の略称である。W5は1歩当りの歩行動作である。Wは「Walk」の略称である。B17は立ち姿勢から体を屈めて元の姿勢に戻る、或いは、屈んだ姿勢から立ち上がって元の姿勢に戻る動作。Bは「Bend and Arise」の略称である。S30は立ち姿勢から椅子に座って再び立つ、或いは、椅子に座った姿勢から立ち上がって再び座る動作である。Sは「Stand Arise」の略称である。
【0043】
このように、MODAPTS法が極めて簡易なPTS法であり、要素動作及びその時間値の規定数が他のPTS法に比べて少なく、且つ、時間決定基準が簡単であるので、行為コマンドや変位情報から各要素動作の所要時間値を決定するルールが簡単化でき、また、必要な変位情報も簡単化できるため、PTS適用部13や入力部11の構成を簡単化できる。
【0044】
次に、PTS適用部13の具体的な動作、つまりPTS適用ステップについて説明する。PTS適用部13は、入力部11に入力された時系列データの各行為コマンドに対して、各別にMODAPTS法の要素動作を割り付ける。行為コマンド毎に割り付けられる要素動作の候補は予め決まっていて、その選択とMOD値を行為コマンドの詳細データとその行為コマンドに対応する動作に係る変位情報から求める。MOD値はMOD値導出部16が決めるが、MOD値そのものを決める場合と、予めMOD値の決まった要素動作を何回繰り返すかの繰り返し回数を決める場合がある。1回の要素動作の所要時間値を求めるか、一連の同じ要素動作の所要時間値を求めるかの違いである。以下、行為コマンド別に説明する。
【0045】
「Reach」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々要素コマンドを割り付ける。把持物を持ち替える等の準備動作については、当該準備動作が存在する場合に、移動動作のMxを割り付け、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報からMOD値xを特定する。具体的には、表1に示す判定表に基づいて決定する。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の見かたは、表中の「0」がその人体部位の関節動作または回転動作が無い場合、「1」が有る場合を意味し、「2」は肩関節の回転角度が別途定義する第1の閾値以上となる関節動作が有る場合、「3」は肩関節の回転角度が別途定義する第2の閾値以上となる関節動作が有る場合を意味する。「−」はその人体部位の回転動作の有無を考慮しないことを意味する。これより、例えば、手首、肘、肩、胴または腰の何れも変位しない場合は、要素動作がM1となりMOD値xは1となる。また、肩と胴または腰は変位しないが肘が曲がる場合は、要素動作がM3となりMOD値xは3となる。
【0048】
「Reach」コマンドに歩行動作が存在する場合には、補助動作のW5を割り付け、そのW5動作を歩数回繰り返すようにする。MOD値導出部16の歩数計算部18は、補助動作のW5が割り付けられると、コンピュータマネキンのその歩行動作における重心の移動距離と歩幅を変位情報から求め、或いは、変位情報として入力された重心の移動距離と歩幅を用いて、重心の移動距離を歩幅で除して歩数を算出する。
【0049】
「Reach」コマンドは、最終的に対象物に手を届くまでの動作であり、何らかの姿勢変更を伴う。姿勢変更の種類には、コンピュータマネキンと対象物との相対的な位置関係によって、手首、肘、肩の関節動作以外にしゃがむ動作や体の捻り動作を含む場合があり、しゃがむ動作を伴う場合には、補助動作のB17を割り当てる。尚、B17動作は1往復の動作であるので、この場合は繰り返し回数として0.5を割り当てる。最終的に手を対象物に触れるまでの動作には、移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩の関節動作或いは回転動作の変位情報からMOD値xを特定する。具体的には、手首、肘、肩の関節動作と体の捻り動作を考慮して、表1の判定表に基づいて判定する。
【0050】
「握る」コマンドの場合、PTS適用部13は終局動作のG1を割り当てる。この場合、MOD値は1で固定である。
【0051】
「移動」コマンドの場合、PTS適用部13は移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報からMOD値xを特定する。具体的には、「Reach」コマンドの準備動作や姿勢変更と同様に、表1の判定表に基づいて判定する。
【0052】
「離す」コマンドの場合、PTS適用部13は移動動作のM1を割り当てる。「離す」コマンドは「握る」コマンドによってコンピュータマネキンの手が把持した対象物を解放する行為であるので、手首関節の回転動作を伴うとして、MOD値として1を一意的に割り当てている。
【0053】
「姿勢」コマンドの場合、PTS適用部13は補助動作のB17と移動動作のMxの少なくとも何れか一方を割り当てる。具体的には、腰のZ座標(高さ)が50cm以上変化する姿勢変更の場合に、B17が割り当てられる。但し、B17動作は1往復の動作であるので、この場合は繰り返し回数として0.5を一意的に割り当てる。その他の姿勢変更の場合には、移動動作のMxが割り当てられ、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報から表1の判定表に基づいてMOD値xを特定する。
【0054】
「見る」コマンドの場合、PTS適用部13は補助動作のE2を割り当てて、その繰り返し回数をMOD値導出部16が算出する。具体的には、MOD値導出部16は変位情報として入力された頭部の回転角度を30度で除して、繰り返し回数を求める。つまり、頭部の回転角度が30度当り1回のE2動作を割り当てる。
【0055】
「引く」コマンドの場合、PTS適用部13は移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部16の移動動作判定部17がそのときの手首、肘、肩、胴または腰の関節動作或いは回転動作の変位情報から表1の判定表に基づいてMOD値xを特定する。
【0056】
「置く」コマンドの場合、「Reach」コマンドと同様に、条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々要素コマンドを割り付ける。具体的な処理方法も実質的に「Reach」コマンドと同様である。相違点としては、姿勢変更の最後に終局動作のP0を追加する点であるが、これはMOD値が0であるので、所要時間値の計算には影響を与えない。
【0057】
「点火」コマンドの場合、点火状態(コンロの火炎)の確認の為に体を捻りながら点火動作をする場合があるので、PTS適用部13は、当該捻りが有る場合には、M7とP0を割り当て、当該捻りが無い場合にはP0を割り当てる。また、当該捻りの有無は入力部11に入力された胴または腰部の変位情報である回転の有無により判定する。
【0058】
尚、MOD値導出部16の移動動作判定部17における判定基準(表1の判定表)、歩数計算部18における計算式、及び、MOD値導出部16の他の計算式等は、本発明装置1を構成するコンピュータシステムの記憶装置に格納されている。
【0059】
動作時間情報導出部14は、図3に示す動作時間算出ステップに含まれる動作時間情報導出ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。動作時間情報導出ステップにおいて、PTS適用部13が時系列データの各行為コマンドに割り付けた要素動作の各MOD値を合計して、各行為コマンドの動作時間を算出する。ここで、同じ要素動作が複数回繰り返されている場合や、半分だけの場合は、その要素動作のMOD値にそれらの繰り返し回数を乗じて合計を求める。尚、行為コマンドが条件判断付きコマンドの場合には、準備動作、歩行動作、姿勢変更の夫々の有無に応じて各別に要素動作の各MOD値を合計して動作時間を算出する。また、動作時間に代えて動作速度を設定する行為コマンドの場合は、MOD値及びMOD値の決定に使用したコンピュータマネキンの重心移動距離等の変位情報から動作速度を算出する。例えば、「Reach」コマンドの歩行動作において、歩行速度を入力するように設定されている場合が相当する。
【0060】
動作時間情報変更部15は、図3に示す動作時間算出ステップに含まれる動作時間情報変更ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。動作時間情報変更ステップにおいて、入力部11に入力された時系列データの各行為コマンドに対して動作時間や動作速度等の動作時間情報を、デフォルト値設定部12が設定したデフォルト値から、動作時間情報導出部14が算出した動作時間情報に変更して、行動生成システム10及び心臓循環器系モデル6に出力する。この結果、行動生成システム10は、人手によって当該動作時間情報を入力することなく、動作時間算出手段2によって算出された動作時間情報によって行為コマンドの時系列データを処理して、コンピュータマネキンの行動を生成し、コンピュータ画面上の仮想空間内にその行動を可視化することができる。更に、心臓循環器系モデル6は後述する要領で、行動生成システム10で生成されるコンピュータマネキンの行動に対する血圧及び心拍数の時間的変化を算出することにより当該行動の心臓負担評価を行うことができる。
【0061】
次に、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4の構成について説明する。運動強度特定手段3は、行動生成システム10が出力する行為コマンドの時系列データ及び変位情報を入力し、その行為コマンドの時系列データで特定される動作の運動強度指標を導出する。また、運動タイプ特定手段4は、行動生成システム10が出力する行為コマンドの時系列データを入力し、その行為コマンドの時系列データから各行為コマンドで特定される動作に対して、等尺性収縮運動(Isometric Exercize)、等張性収縮運動(IsotonicExercize)、及び、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動(Rapid Change)の3タイプからなる運動タイプの少なくとも一つを割り当てる。運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4は夫々、行為コマンドから運動強度指標への第1変換テーブル、行為コマンドから運動タイプへの第2変換テーブルを備えて構成される。具体的には、本発明プログラムの運動強度特定ステップと運動タイプ特定ステップを各変換テーブルを用いて夫々前記コンピュータ上で実行することにより実現される。
【0062】
尚、本実施形態では、運動強度指標としてMETS(Metabolic Equivalent、代謝当量)を用いる。METSは作業時酸素代謝量を安静時酸素代謝量で除した値であり、1METは安静時代謝量を表しており、酸素摂取量にして3.5ml/kg/分に相当する。
【0063】
以下、上記行為コマンドから運動強度指標(MET値)への変換、及び、行為コマンドから運動タイプへ変換の手順について、表2及び表3を参照しながら行為コマンド別に説明する。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
「Reach」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々、表2の変換テーブル(第1変換テーブルの一部と第2変換テーブル)に従って、MET値及び運動タイプが割り当てられる。把持物を持ち替える等の準備動作については、当該準備動作が存在する場合に、運動強度指標として1MET、運動タイプとして等張性収縮運動が夫々割り当てられる。歩行動作が存在する場合は、運動強度指標として3MET、運動タイプとして等張性収縮運動が夫々割り当てられる。また、姿勢変更にしゃがむ動作が含まれている場合は、運動強度指標として1MET、運動タイプとして上下移動運動が夫々割り当てられる。尚、「Reach」コマンドが準備動作や歩行動作を伴うか否かは、前述のPTS適用部13でのMOD値導出時の条件判断結果を利用してもよく、また、独自に同様の判断を変位情報に基づいて行ってもよい。
【0067】
「握る」、「移動」、「離す」及び「見る」コマンドの場合、表2の変換テーブルに基づいて、運動強度指標として1MET、運動タイプとして等張性収縮運動が夫々割り当てられる。
【0068】
「姿勢」コマンドの場合、前述のPTS適用部13でのMOD値導出時と同様に、腰の高さが50cm以上変化するか否かの判定を行い、表2の変換テーブルに基づいて、当該変化を伴う場合は、運動強度指標として1MET、運動タイプとして上下移動運動が夫々割り当てられ、当該変化を伴わない場合は、運動強度指標として1MET、運動タイプとして等張性収縮運動が夫々割り当てられる。尚、「姿勢」コマンドが当該変化を伴うか否かは、前述のPTS適用部13でのMOD値導出時の条件判断結果を利用してもよく、また、独自に同様の判断を変位情報に基づいて行ってもよい。
【0069】
「引く」コマンドの場合、運動強度指標としてのMET値は表3に基づいて決定され、運動タイプとして等張性収縮運動が割り当てられる。表3によるMET値の割り当ては、「引く」コマンド動作の対象物の重さと、前述のPTS適用部13での表1の判定表に基づくMOD値(Mx)の導出結果との両方に基づいて行う。表3では、対象物の重さが重いほど、また、MOD値xが大きい(動作時間が長い)ほどMET値(運動強度指標)が大きくなるように規定されている。尚、表3適用におけるMOD値(Mx)は前述のPTS適用部13での表1の判定表に基づくMOD値(Mx)の導出結果を利用するが、別途独自に表1の判定表を適用してMOD値(Mx)を導出しても構わない。
【0070】
「置く」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々、表2と表3の変換テーブルに従って、MET値及び運動タイプが割り当てられる。把持物を持ち替える等の準備動作については、当該準備動作が存在する場合に、運動強度指標としてのMET値は表3に基づいて決定され、運動タイプとして等張性収縮運動が割り当てられる。尚、表3の適用は「引く」コマンドの場合と同様である。歩行動作が存在する場合は、運動強度指標として3MET、運動タイプとして等張性収縮運動が夫々割り当てられる。また、姿勢変更にしゃがむ動作が含まれている場合は、運動強度指標として1MET、運動タイプとして上下移動運動が夫々割り当てられる。尚、「置く」コマンドが準備動作や歩行動作を伴うか否かは、前述のPTS適用部13でのMOD値導出時の条件判断結果を利用してもよく、また、独自に同様の判断を変位情報に基づいて行ってもよい。
【0071】
「点火」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、点火状態(コンロの火炎)の確認の為に体を捻りながら点火動作をする場合があるので、当該捻りが有る場合には、運動強度指標として3MET、運動タイプとして等尺性収縮運動が夫々割り当てられ、当該捻りが無い場合には、運動強度指標として2MET、運動タイプとして等尺性収縮運動が夫々割り当てられる。尚、「点火」コマンド動作は、基本的に指先または手先だけの動作であるので、運動タイプとして等尺性収縮運動が夫々割り当てられている。
【0072】
ところで、上述の運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4において、行動生成システム10から変位情報を入力し、動作時間算出手段2からは一部の判断結果を入力する構成としているが、実際のコンピュータのプログラム処理においては、行動生成システム10から変位情報の入力を受けずに、変位情報に基づく必要な判断は、全て動作時間算出手段2で行われる同様の判断結果を利用するのが好ましい。
【0073】
次に、個人特性入力手段5について簡単に説明する。個人特性入力手段5は、心臓循環器系モデル6の入力データの一部として、コンピュータマネキンで生成する動作の模擬対象となる人間の個人特性を入力手段で、人手によるキーボード等の入力支援装置からのマニュアル入力を受け付け、或いは、個人特性情報を格納したデータベースから特定個人の情報を検索して、心臓循環器系モデル6に当該入力データを提供する手段であり、既知の技術を用いて構成される。尚、本実施形態では、個人特性情報として、年齢、安静時血圧、及び、安静時心拍数を入力する。また、個人特性情報として体重を入力する場合もある。
【0074】
次に、心臓循環器系モデル6の構成及び動作について説明する。
心臓循環器系モデル6は、行為コマンドによって相互に対応づけられた動作時間情報と運動強度指標と運動タイプ、及び、個人特性入力手段5から入力された個人特性情報を入力データとして受け付け、行為コマンドの時系列データによって規定されるコンピュータマネキンの動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出可能に構成され、具体的には、図4に示すように、入力部20、基準血圧算出部21、圧受容器部22、神経応答部23、心拍数算出部24、心拍出量算出部25、1回拍出量算出部26、血管抵抗算出部27、血圧変動算出部28、血圧算出部29、酸素摂取量算出部30、必要酸素摂取量算出部31、化学受容器部32、及び、化学受容器遅延部33を備えて構成されている。
【0075】
入力部20は、動作時間算出手段2、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4によって算出または導出された、行為コマンドの時系列データにおける各行為コマンドの動作時間情報と運動強度指標(MET値)と運動タイプが行為コマンド毎に時系列に相互に関連付けられて、また、個人特性入力手段5によって入力された個人特性情報が、夫々入力されると、各部に必要なデータを提供する。ここで、各行為コマンドの動作時間情報と運動強度指標と運動タイプが行為コマンド毎に時系列に相互に関連付けられるて入力されるので、行為コマンド毎の運動強度指標と運動タイプが、夫々の経過時間が動作時間情報の動作時間で与えられる時系列データとして認識される。
【0076】
基準血圧算出部21は、入力部20に入力された運動強度指標(MET値)と個人特性情報の安静時血圧に基づいて、基準血圧を以下の数1で表される算出式により算出する。但し、各血圧の単位は「mmHg」である。尚、数1の算出式は、被験者実験より安静時血圧に対して運動強度指標が1MET増す毎に基準血圧が15mmHg増えると仮定して導出されている。ここで、基準血圧は、上記仮定のもとに、血圧に影響を与える他の因子を排除して運動強度指標と一定の相関関係をもって変化する血圧シミュレーションの基準値として設定したものである。
【0077】
【数1】
基準血圧=(MET値−1)×15+安静時血圧
【0078】
圧受容器部22は、血圧変動を刺激として受容して応答する人体の感覚器官(圧受容器)を模擬したもので、ここでは、心臓循環器系モデル6内部の演算処理で使用する単位時間にして1時間単位前に血圧算出部29で算出された血圧を基準血圧算出部21で算出された現時点における基準血圧から引いた差を圧刺激として算出する。
【0079】
そして、神経応答部23は、前記圧受容器の圧刺激に対する応答部分を模擬したもので、圧受容器部22が出力する血圧差(mmHg)に0.4を乗じた値を心拍数補正量(回/分)として出力する。ここでは、被験者実験より、血圧を1mmHg増やすために心拍数が0.4回/分増えると仮定している。
【0080】
心拍数算出部24は、心拍数算出部24が出力した1時間単位前の心拍数に、神経応答部23と化学受容器遅延部33が夫々出力する各心拍数補正量を足した値を新たな心拍数として出力する。尚、心拍数の単位は「回/分」である。
【0081】
心拍出量算出部25は、心拍数算出部24が算出した心拍数(回/分)と1回拍出量算出部26が算出した心拍1回当りの血液の拍出量(ml/回)を乗じて1分間当りの心拍出量(ml/分)を算出する。
【0082】
1回拍出量算出部26は、入力部20に入力された運動強度指標(MET値)と運動タイプと個人特性情報の年齢及び安静時心拍数に基づいて、心拍1回当りの血液の拍出量(ml/回)を数2に示す算出式により算出する。
【0083】
【数2】
A=148−安静時心拍数×0.935
B=A−8.34+酸素摂取量比
【0084】
ここで、Aは運動タイプが等尺性収縮運動の場合の1回拍出量で、Bは運動タイプが等張性収縮運動の場合の1回拍出量である。酸素摂取量比は、(酸素摂取量/最大酸素摂取量)×100で与えられる。体重1kg当りの毎分の酸素摂取量(ml/kg/分)は(3.5×MET値)で与えられ、体重1kg当りの毎分の最大酸素摂取量(ml/kg/分)は、年齢25歳以下では、定数46.2で与えられ、年齢26以上では、(57.7−0.46×年齢)で与えられる。
【0085】
血管抵抗算出部27は、入力部20に入力された運動タイプと必要酸素摂取量算出部31で算出された必要酸素摂取量(ml/分)に基づいて、血管抵抗(mmHg・分/ml)を算出する。運動タイプが等尺性収縮運動の場合は、血管抵抗は定数0.0196で与えられ、運動タイプが等張性収縮運動の場合は、血管抵抗は(0.0196−必要酸素摂取量×0.000002)で与えられる。
【0086】
血圧変動算出部28は、入力部20に入力された運動強度指標(MET値)と運動タイプと個人特性情報の年齢に基づいて、数3または数4より血圧変動(mmHg)を算出する。具体的には、行為コマンドの「Reach」、「置く」、「姿勢」において、運動タイプとして上下移動運動が含まれている場合に、血圧変動算出部28が起動される。尚、上下移動運動が立ち上がり動作の場合は数3が適用され、しゃがみ動作の場合は数4が適用される。
【0087】
【数3】
血圧変動=(2C/t0)×t (0≦t≦t0/2)
血圧変動=−(2C/t0)×t+2C (t0/2<t≦t0)
C=−(5V+35)
t0=20+0.1×年齢
【0088】
【数4】
血圧変動=(2D/t0)×t (0≦t≦t0/2)
血圧変動=−(2D/t0)×t+2D (t0/2<t≦t0)
D=(5V+35)
t0=20+0.1×年齢
【0089】
数3及び数4において、Vは立ち上がり或いはしゃがみ速度(m/秒)で、動作時間情報から与えられる。また、tは立ち上がり或いはしゃがみ動作を開始してからの経過時間(秒)であり、t0は血圧変動の回復時間(秒)で、C及びDは夫々回復時間の中間点での血圧変動(mmHg)である。数3の場合、つまり、立ち上がり時は、血圧変動は回復時間の中間点まで直線的に減少し、その中間点から直線的に回復する三角波形で表される。数4の場合、つまり、しゃがみ時はその逆である。
【0090】
血圧算出部29は、心拍出量算出部25が算出した心拍出量(ml/分)と血管抵抗算出部27が算出した血管抵抗(mmHg・分/ml)と、血圧変動算出部28が算出した血圧変動(mmHg)とに基づいて、数5により血圧を算出する。ここで、運動タイプが等尺性収縮運動または等張性収縮運動の場合は、血圧変動算出部28は起動されないので、血圧変動は0である。
【0091】
【数5】
血圧=心拍出量×血管抵抗+血圧変動
【0092】
酸素摂取量算出部30は、心拍出量算出部25が算出した心拍出量(ml/分)に基づいて酸素摂取量(ml/分)を算出する。具体的には、酸素摂取量は(0.185×心拍出量−452)で与えられる。
【0093】
必要酸素摂取量算出部31は、入力部20に入力された運動強度指標(MET値)に基づいて、各行為コマンドで規定される動作に必要な1分間当りの必要酸素摂取量(ml/分)を算出する。具体的には、必要酸素摂取量は(3.5×MET値×体重)で与えられる。ここで、体重(kg)は予め設定された標準体重を使用するか、或いは、個人特性情報の一つとして入力部20に入力されたものを使用する。
【0094】
化学受容器部32と化学受容器遅延部33は、化学刺激を受容して応答する人体の感覚器官(化学受容器)を模擬したもので、ここでは、必要酸素摂取量算出部31が算出した必要酸素摂取量に対する不足酸素量を化学刺激として受容し、その反応として一定の時間遅れでその不足酸素量を補うように心拍数を補正すると仮定する。具体的には、化学受容器部32が必要酸素摂取量から必要酸素摂取量が算出した酸素摂取量を差し引いて不足酸素量を算出し、化学受容器遅延部33が、その不足酸素量に係数0.01を乗じて心拍数補正量(回/分)を求め、それを一定時間(本実施形態では5秒)遅れで出力する。
【0095】
心臓循環器系モデル6は、上記した各部20〜33の演算処理を前記コンピュータに実行させる各プログラムステップにより構成され、具体的には、当該各プログラムステップを前記入力データに基づいて前記時間単位毎に循環的に実行させることにより、血圧及び心拍数を時系列に沿って算出することができる。
【0096】
ところで、本発明プログラムは、CD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体やインターネット等のデータ伝送媒体を介して、本発明装置1をハードウェア的に構成するコンピュータがアクセス可能な記録装置内にインストールされて実用に供される。具体的には、インストールされた当該プログラムが当該記憶装置からコンピュータが実行可能な主記憶上へ読み込まれて実行される。
【0097】
次に、本発明装置1を用いた血圧及び心拍変動のシミュレーション結果を説明する。心臓循環器系モデル6の精度確認のために、3種類の基本動作について実験データと比較を行った。比較結果を図5〜7に示す。
【0098】
図5は椅子から立ち上がる動作を60秒時点で開始した場合、図6は腕を肘から先を水平方向(90度)に伸ばして4kgの重りを保持する動作を300秒時点で開始した場合(MET値が1から1.7に変化)した場合、図7は歩行動作を300秒時点で開始した場合(MET値が1.5から3に変化)した場合のシミュレーション結果と実験結果を夫々示している。尚、図6のシミュレーションにおける運動タイプは等尺性収縮運動、図7のシミュレーションにおける運動タイプは等張性収縮運動である。
【0099】
次に、本発明装置1の理解を容易にする為に、本実施形態で想定される行動生成システム10について説明する。図8に示すように、行動生成システム10は、作業記述部41、行為選択部42、一つまたは複数の行為ファイル43、人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46、姿勢データベース47、及び、可視化部48の各部で構成されている。
【0100】
尚、行動生成システム10は、従来の技術の項で説明した既存のコンピュータマネキンの行動生成システム(コンピュータマネキンの取る目標姿勢を予めマウス等のコンピュータの入力装置を用いてコンピュータ画面上で作成しておき、各目標姿勢間の動作を、例えばインバースキネマティクス等の動作合成アルゴリズムで生成し、別途入力した動作時間でコンピュータマネキンをコンピュータ画面上の仮想空間内で動作させるべく可視化(アニメーション)を行う)をベースに、作業動作入力の簡易化、それを実現するための行為コマンド、特に条件判断付き行為コマンドの導入を図り、行為コマンドの実行に必要な人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46等を新たに構成しているものを想定する。但し、行動生成システム10として、条件判断付き行為コマンドを使用しないシステムであっても構わない。
【0101】
作業記述部41は、コンピュータマネキンにさせる作業動作を入力する入力手段である。機能としては、作業記述用のGUI(グラフィカルユーザインターフェース)をコンピュータ画面上に提供し、オペレータのマウス操作やキー入力操作等により「ヒューマン」、「場所」、「目標物」、「目的」が順に指定されると、一連の作業動作を自動的に定義して、コンピュータマネキンの対象物に対する動作の概略を規定した入力データを生成する。
【0102】
ここで、「ヒューマン」はコンピュータマネキンの名称を指定するもので、具体的には、フィギュアファイル名を指定する。コンピュータマネキンの「目的」は、コンピュータマネキンにさせる作業動作の種別を規定するものであり、「目標物」は、指定された目的で特定される動作の直接の対象物である。また、「場所」は、指定された目的で特定される動作を、指定された目標物に対して行う「場所」であり、当該目的動作に付随する一連の動作に含まれる行為において、直接の対象物となる場合がある。例えば、「場所」が「冷蔵庫の上段」であり、「目的」が「取り出す」である場合に、「取り出す」という目的動作に付随する後述する各種行為の対象物が「冷蔵庫の上扉」であることが、「場所」によって定義づけられる。従って、コンピュータマネキンの動作の対象となる対象物として、「目標物」と「場所」が指定される。
【0103】
尚、指定された「ヒューマン」、「場所」の特性を人データベース44、物データベース45から参照し、図9に示すように、指定されたヒューマンが持っている物、及び、指定された場所にある物を「目標物」の候補として自動的にリストアップするように構成され、「目標物」の指定の簡易化が図られている。更に、図9に示すように、「目的」の指定も、指定された目標物の特性の一つとして設定されているアフォード動作を物データベース45から参照し、その目標物に適した「目的」動作を自動的にリストアップするように構成され、「目的」の指定の簡易化が図られている。ここで、アフォードとはJ.ギブソンが提唱した認知科学や人工知能分野で注目されているアフォーダンス理論(知覚理論)における概念で、物体がその物体に作用する主体に対して行為を引き出すことを意味している。
【0104】
行為選択部42は、作業記述部41で生成された入力データの「目的」で特定される動作を、9種類の「行為」の中から選択された複数の「行為」を組み合わせて定義する。ここで、9種類の「行為」は、「Reach」、「握る」、「移動」、「離す」、「姿勢」、「見る」、「引く」、「置く」、「点火」という九つの行為コマンドを用いて選択される。各行為コマンドの概略は既に説明した通りである。
【0105】
ここで、各行為コマンドの動作主体たるコンピュータマネキンは、入力データの「ヒューマン」で指定されたコンピュータマネキンであり、入力データの「目標物」で直接的に指定された対象物或いは入力データの「場所」で間接的に指定された対象物が、各行為コマンドで特定される行為の対象物となる。つまり、各行為コマンドにおいて、「ヒューマン」で指定されたコンピュータマネキンの所定人体部位がその対象物に対して所定の動作を実行することになる。
【0106】
「Reach」コマンドは、上述のように、コンピュータマネキンの特性と対象物の特性との間の関係によって行為の詳細動作が変化する条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に分解されるので、行為選択部42は、動作決定ルール46を参照して、コンピュータマネキンの特性と対象物の特性との間の関係を判断して、「Reach」行為の詳細動作を決定する。以下、その処理手順及び動作決定ルール46について説明する。
【0107】
先ず、使用できる手の判断を動作決定ルール46の以下の持ち方判定基準に基づいて決定する。具体的には、人データベース44からコンピュータマネキンの利き腕情報を読み出すとともに、物データベース45から、「Reach」行為の対象物と現在少なくとも左右何れかの手に何か物を持っている場合にはその把持物の特性(持ち方の制約)を読み出す。次に、図10に示す持ち方判定表に従い、現在の手の状況(何も持っていない(free)、利き手で持っている、逆手で持っている、両手で持っている)と対象物の持ち方の制約に基づいて、対象物の持ち方、または、必要な準備動作を決定する。準備動作として、「置くor持ち替えるor離す」が選択された場合であって、把持物の持ち方の制約が、利き手のみで且つ軌道規則がない場合は「置く」動作を、どちらの手でもよく且つ軌道規則がない場合は「持ち替える」を、そして、軌道規則がある場合は「離す」動作を、夫々準備動作とする。
【0108】
上記要領で決定された準備動作が、「置く」の場合はエラーメッセージを表示しプログラムを終了する。また、「持ち替える」の場合は、例えば、右手から左手に持ち替える場合は、把持物と左手をコンピュータマネキンの背中のサイトから所定距離オフセットした位置まで移動(後述する行為コマンドの一つ)させる。このとき背中のサイトから所定距離オフセットした位置には仮想物体(座標系のみ存在して見えない物体)を用意しておき、その仮想物体に対して左手を移動させる。次に左手を握り(後述する行為コマンドの一つ)、右手を離す(後述する行為コマンドの一つ)という動作を実行する。また「離す」の場合は、単に把持物を持っている方の手を離す。
【0109】
上記持ち方判定及び準備動作の決定が終わると、コンピュータマネキンの移動または姿勢変更の有無の判断及び姿勢変更の内容を、動作決定ルール46の以下の移動・姿勢変更判定基準に基づいて決定する。以下の判定で使用するコンピュータマネキンの特性及び対象物の特性は人データベース44と物データベース45から夫々予め或いは適時に読み出される。
【0110】
先ず、対象物の特性の一つである移動可能性が否の場合、例えば、対象物が冷蔵庫等の一般に固定状態の重量物である場合(但し、冷蔵庫を移動させる作業の場合では移動可能性は可となる)について説明する。
【0111】
対象物の特性の一つである立ち位置サイトのグローバルXY座標が、コンピュータマネキンの特性の一つである重心サイトのグローバルXY座標と一致していない場合は、当該座標が一致するまでコンピュータマネキンを移動し、一致している場合は当該移動を行わない。ここで、グローバルとは仮想空間内の絶対座標であり、XYは仮想空間内の水平面内の位置座標であり、Zは垂直方向の座標つまり高さである。更に、対象物の特性の一つである握り点Z座標がコンピュータマネキンの特性の一つである腰サイトZ座標より大きければ姿勢変更を行わず、前記握り点Z座標がマネキンの特性の一つである膝サイトZ座標より大きく、前記腰サイトZ座標以下であれば、コンピュータマネキンの背中を10°曲げる姿勢変更を決定し、前記握り点Z座標が膝サイトZ座標以下であれば、コンピュータマネキンの背中を90°曲げるとともに腰高さを起立時より6分の1下げる姿勢変更を決定する。
【0112】
次に、対象物の特性の一つである移動可能性が可の場合、例えば、対象物がコップ、鍋、缶等の可搬物である場合について説明する。
先ず、図11に示す移動・姿勢判定表を参照して、移動・姿勢変更の有無及び姿勢変更内容を決定する。図11の縦軸は対象物の握り点とコンピュータマネキンの身体部位との高さ位置関係を示し、横軸は対象物の握り点までの距離とコンピュータマネキンの腕の長さとの関係を示している。また、表中の数字は、姿勢変更がある場合の内容を示しており、上段が背中の曲げ角度で、下段が起立時の腰高さを1とした時の腰高さの変更割合を示す負号は腰高さを下げる場合、正号は腰高さを上げる場合を意味している。
【0113】
また、図11に示す移動・姿勢判定表の腕の長さは、肩口から掌までの長さを掌サイトと肘サイトの差で求まる長さと肩サイトと肘サイトの差で求まる長さの和に対して、図12に示す腕の長さ補正係数mを乗じて求める。図12において、筋力レベルは腕の筋力レベルを意味し、コンピュータマネキンの特性の一つである。また、質量は対象物の特性の一つである。
【0114】
この補正係数mを導入することで、筋力の強いコンピュータマネキンが手を伸ばして掴む物でも、筋力の弱いコンピュータマネキンは一度移動して対象物に近づいてから対象物を掴むというように、筋力レベルに応じた動作の変化が現れる。また、対象物が軽ければ、コンピュータマネキンが手を伸ばして掴む物でも、対象物が重ければ、コンピュータマネキンは一度移動して対象物に近づいてから対象物を掴むというように、対象物の重さ(質量)に応じた動作の変化が現れる。更に、対象物が重くても筋力が強ければ手を伸ばすだけの動作が、対象物が重くなくても筋力が弱ければコンピュータマネキンは一度移動して対象物に近づいてから対象物を掴むというように、対象物の重さ(質量)とコンピュータマネキンの筋力レベルとの相対的な関係で動作の変化が現れる。
【0115】
ここで、移動・姿勢判定表による判定結果が「移動」である場合、対象物との距離が腕の長さの半分になるまでコンピュータマネキンを移動する。そして、対象物の握り点Z座標がコンピュータマネキンの腰サイトZ座標より大きければ姿勢変更は行わない。また、前記握り点Z座標がコンピュータマネキンの膝サイトZ座標より大きく且つコンピュータマネキンの腰サイトZ座標以下の場合は、コンピュータマネキンの背中を10°曲げる姿勢変更を決定し、前記握り点Z座標が膝サイトZ座標以下であれば、コンピュータマネキンの背中を90°曲げるとともに腰高さを起立時より6分の1下げる姿勢変更を決定する。更に、移動・姿勢判定表による判定結果が「姿勢変更」有りの場合は、コンピュータマネキンの移動は行わずに表中の姿勢変更の内容に従い、判定結果が「変更無し」の場合は移動も姿勢変更も行わない。
【0116】
姿勢変更の内容としては、背中の曲げと腰高さの変更に加えて、腰の捻りと体全体の回転があり、右手の場合は図13に示す捻りの有無の判定図に基づいて姿勢変更有無及び変更内容(腰の捻りまたは体全体の回転角度)を決定する。具体的には、コンピュータマネキンの重心サイトを基準にコンピュータマネキンの正面方向を0°として右回転を正方向、左回転を負方向として対象物の握り点までの必要回転角度に基づいて、姿勢変更有無及び変更内容が決定される。以下、右手の場合について説明する。左手の場合は極性が正負反転する。
【0117】
先ず、コンピュータマネキンのXYグローバル座標及び方向と対象物のXYグローバル座標から必要回転角度を算出する。この必要回転角度が−45°より大きく90°以下の場合は、捻り及び体全体の回転は行わない。必要回転角度が90°より大きく135°以下の場合は、(必要回転角度−90°)だけ腰を捻る。つまり、必要回転角度が90°になるように腰を捻ることになる。必要回転角度が−90°より大きく−45°以下の場合は、(必要回転角度+45°)だけ腰を捻る。つまり、必要回転角度が−45°になるように腰を捻ることになる。必要回転角度が−180°より大きく−90°以下の場合は、(必要回転角度+45°)だけ体全体を回転させるとともに、腰を左に45°捻る。つまり、必要回転角度が−45°になるように体全体を回転させ腰を捻ることになる。必要回転角度が135°より大きく180°以下の場合は、(必要回転角度−90°)だけ体全体を回転させるとともに、腰を右に90°捻る。つまり、必要回転角度が90°になるように体全体を回転させ腰を捻ることになる。
【0118】
以上、「Reach」コマンド及びその条件判断に用いられる動作決定ルール46の説明を行ったが、「置く」コマンドについては全く同様の動作決定ルール46が適用される。また、「点火」コマンドについては、腰の捻りと体全体の回転を伴う姿勢変更だけが上記要領で判定される。「Reach」、「置く」及び「点火」コマンド以外の六つの行為コマンドは条件判断を伴わないコマンドであり、動作決定ルール46は使用されない。
【0119】
「握る」コマンドは、具体的には、対象物の特性の一つである対象物の握り方と関連付けられた手の形を変更する。次に、対象物の特性の有する一変数で、手に持たれているか否かを示す把持オブジェクト変数を把持状態に設定する。尚、手の形は、後述する姿勢データベース47に登録されてあり、対象物の握り方で検索可能となっている。
【0120】
「移動」コマンドは、実際には、対象物を移動させることで、その対象物を把持する手を、対象物の移動軌跡に沿って同時に移動させ、あたかもコンピュータマネキンの手が対象物を把持しながら移動させているように見せる。具体的には、対象物を把持する手とその対象物との間の連結に係る拘束条件をオンにする。これにより手が対象物に追従して移動することになる。次に、対象物の位置変更、或いは、対象物のジョイント角度の変更(例えば、冷蔵庫の扉等の場合)を行い、前記連結の拘束条件をオフにする。
【0121】
「引く」コマンドは、「移動」コマンドとほぼ同様の処理を実行する。相違点は、対象物の位置変更先が、「引く」コマンドでは、コンピュータマネキンの背中サイトからオフセットした位置に限定される点である。
【0122】
「離す」コマンドは、具体的には、手の形を「握る」コマンド実行前のものに変更し、把持オブジェクト変数を解放状態に設定する。
【0123】
「姿勢」コマンドは、具体的には、コンピュータマネキンの全ての拘束条件をオフにし、姿勢を所定の姿勢名のものに変更し、全ての拘束条件をオンにする。このコマンドは、他の行為コマンドではコンピュータマネキンの動作が決定できない場合や、中間姿勢を指定する場合等に使用する。尚、姿勢名と姿勢ファイルとの関連は後述する姿勢データベース47に登録されてあり、姿勢名で検索可能となっている。
【0124】
「見る」コマンドは、具体的には、視点オブジェクトを見る対象物まで位置変更し、視点オブジェクトの拘束条件をオンにし、更に、コンピュータマネキンの視点(正面方向)の視点オブジェクトに対する拘束条件をオンにする。このようにして、見る対象物の移動に対して視線を追従させることができる。
【0125】
行為選択部42は、作業記述部41で生成された入力データで特定される動作を、上述した九つの行為コマンドを用いて定義し、行為ファイル43として行動生成システム10に付属する所定の記憶装置内に保存する。行為ファイル43を構成するデータ項目として、入力データで特定される目的動作、場所、目標物の他、時系列に並べられた各行為コマンドについて、実行順序を示す番号、行為コマンド名、各行為の動作対象となる対象物(一般には場所または目標物の何れか)、動作時間を夫々一組にして入力される。但し、「Reach」コマンド、「置く」コマンドの動作時間は、準備動作、歩行、姿勢変更に分割して指定する。また、動作時間に代えて動作速度を指定するようにしても構わない。これらの動作時間や動作速度等の動作時間情報は、動作時間算出手段2の動作時間情報変更部15によって変更された動作時間情報が行為選択部42に入力される。尚、行為ファイル43として最終的に保存される前の段階では、動作時間算出手段2に対して変位情報を提供するために、動作時間情報として、動作時間算出手段2のデフォルト値設定部12によって設定されたデフォルト値が入力される。
【0126】
このように生成された行為ファイル43を順次前記記憶装置内に蓄積することで、登録済みの行為ファイル43に合致する入力データが作業記述部41で生成された場合に、行為選択部42は当該行為ファイル43を読み出して、その行為ファイル中の各行為コマンドを逐次実行すれば良く、シミュレーション時間の低減が図られる。
【0127】
人データベース44は、行為選択部42の処理において必要なコンピュータマネキンの特性に関するデータを定義する。人データベース44を構成するデータ項目は、例えば、名称、各人体部位の寸法(身長、手足の長さ等)、各人体部位の位置(重心等)筋力レベル、利き腕(利き手)等である。名称は入力データのヒューマンで指定されたコンピュータマネキンの名称に対応し、フィギュアファイル名を指定する。筋力レベルは、コンピュータマネキンの腕の筋力レベルを規定するもので、本実施形態の場合は、例えば弱い、普通、強いの三段階で規定し、夫々に数字の1,2,3が割り当てられている。利き腕は、コンピュータマネキンの利き腕が左右何れであるかを指定するもので、本実施形態の場合は、右に0、左に1を割り当てている。
【0128】
物データベース45は、行為選択部42の処理において必要な対象物(目標物、場所)の特性に関するデータを定義する。物データベース45を構成するデータ項目は、例えば、名称、位置、置く可能性、質量、軌道規則、持ち方、移動可能性、握り方、状況等である。
【0129】
名称は目標物や場所で指定される対象物のフィギュアファイル名を指定する。位置は、対象物のどの面が下面かを指定する接地面、接触点(握り点)、立ち位置等の位置関係を指定する。置く可能性は、その対象物がどこかに置かれる可能性の有無を指定する。軌道規則はその対象物が移動する時の軌道規則の有無を指定する。持ち方はその対象物が左右何れの手で持つべきかを指定する。例えば、どちらの手でも構わない場合は0、利き手に限定される場合は1、逆手に限定される場合は2、両手に限定される場合は3のように四通りに区分する。更に、右手或いは左手に限定する場合を加えても構わない。移動可能性はその対象物が移動可能か否かを指定する。握り方はその対象物の握り方を定義するもので、その対象物を把持するときの手の形を表すデータを姿勢データベース47から検索可能な握り方名を指定する。状況は対象物の状態を表すもので対象物に応じて設定される。例えば、対象物がコップの場合では液体の有無、また、対象物が冷蔵庫の場合では扉の開閉状態等が設定できる。
【0130】
更に、物データベース45は、オプションとして対象物がアフォードする動作を設定できる。例えば、缶の場合に「取り出す」等を指定すると、作業記述部41で「目標物」に缶が指定されると、「目的」の候補として「取り出す」がリストアップされる。また、上記以外にもアフォード動作を設定することで、動作の記述の簡易化が図れる。
【0131】
姿勢データベース47は、行為選択部42の処理において利用される、握り方名と手の形との関連、及び、姿勢名と姿勢ファイルとの関連を定義する。
【0132】
可視化部48は行為選択部42で定義された一連の動作のアニメーションを作成する。つまり、作業記述部41で指定されたコンピュータマネキンの動作を、行為選択部42で定義された行為コマンドの時系列の組み合わせに従って、或いは、登録された行為ファイル43に記述されている行為コマンドの時系列の組み合わせに従って、具体的な動作動作を所定の合成アルゴリズムによって合成してコンピュータ画面上の仮想空間内に表示させる。具体的な動作の合成処理は既存の行動生成システムの機能を使用するので、詳細な説明は割愛する。
【0133】
可視化部48は、アニメーションを作成する前に各行為の所要時間を指定するように構成されており、指定された行為所要時間に基づいてアニメーションを作成する。
【0134】
行動生成システム10は、ハードウェアとしては、高解像度モニタを備えた3次元コンピュータグラフィックス描画機能の有するコンピュータシステム上で動作する。人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46、姿勢データベース47は、行動生成システム10に付属する所定の記憶装置に格納されている。ソフトウェアとしては、ベースに一般的なOS(オペレーティングシステム)とベースとなる行動生成システム及び動作合成アルゴリズムが存在し、作業記述部41、行為選択部42、可視化部48が上記コンピュータ上でソフトウェア処理によって実現される。具体的には、上記で説明した各部42,8の処理を、人データベース44、物データベース45、動作決定ルール46、姿勢データベース47等を必要に応じて読み書きしながら実行する本発明に係るコンピュータマネキン用の行動生成用プログラムの各処理に対応するプログラムステップが、上記コンピュータによって適時実行されることで、作業記述部41、行為選択部42、可視化部48が構成される。
【0135】
以下に別実施形態を説明する。
〈1〉上記実施形態では、運動タイプ特定手段4は、各行為コマンド、条件判断付きコマンドの場合は各要素コマンド、に対して一つの運動タイプを割り当てていたが、人体を上肢下肢に分けて、または、上肢を更に左右に分けて、変位情報に基づいて部位毎に運動タイプを割り当てるようにして精度の向上を図るようにするのも好ましい。この場合、心臓循環器系モデル6の1回拍出量算出部26、血管抵抗算出部27、血圧変動算出部28、血圧算出部29が夫々の出力値を計算する場合に、分割した人体部位毎に異なる運動タイプで算出した結果を加重平均する等の処理を行うようにするのも好ましい。更に、運動タイプとして、上記3タイプに限定されるものではない。
【0136】
〈2〉心臓循環器系モデル6は、必ずしも上記実施形態の構成に限定されるものではない。心臓循環器系モデル6の各構成要素の一部または全部が異なってもよく、また、各部の入出力関係が異なっても、更に、各構成要素の算出式が異なっていても構わない。
【0137】
〈3〉上記実施形態では、運動強度特定手段3は表2及び表3に基づいてMET値を割り当てる場合を示したが、表2及び表3中の各MET値は、適宜変更可能である。更に、上記実施形態では、運動強度指標としてMETSを用いたが、RMR等の他の運動強度指標を用いても構わない。この場合、使用する心臓循環器系モデル6は入力データとしてRMR等を受け付けるモデルに変更する必要がある。
【0138】
〈4〉上記実施形態(「第1実施形態」という。)では、動作時間算出手段2のPTS適用部13、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4で用いられる変位情報は、行動生成システム10側で抽出された変位情報が動作時間算出手段2の入力部11、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4に入力されて利用されていたが、この場合、各行為コマンドに対して動作時間情報のデフォルト値を用いて行動生成システム10側で一旦コンピュータマネキンの動作を合成してかかる変位情報を抽出していた。これに対し、行動生成システム10側で動作の合成を実行することなく、行為コマンドの時系列データから直接、変位情報を抽出して、その変位情報をPTS適用部13、運動強度特定手段3及び運動タイプ特定手段4で用いるようにしても構わない。
【0139】
具体的には、本別実施形態(「第2実施形態」という。)の動作時間算出手段50は、図14に示すように、入力部51、変位情報抽出部52、PTS適用部53、及び、動作時間情報導出部54を備えて構成される。更に、PTS適用部53はMOD値導出部55を備え、MOD値導出部55は移動動作判定部56と歩数計算部57を備える。各手段51〜57が、当該コンピュータのコンピュータシステムのハードウェア資源を利用しながら第2実施形態に係る本発明プログラムの動作時間算出ステップを実行することにより実現される点は、第1実施形態の場合と同様である。
【0140】
入力部51は、行為コマンドの時系列データを、行動生成システム10から入力する点は、第1実施形態の入力部11と同じであるが、行動生成システム10から変位情報の入力は行わない。具体的には、入力部51は、図15に示す動作時間算出ステップに含まれる入力ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。ここで、入力ステップは行動生成システム10から行為コマンドの時系列データを入力し、前記コンピュータシステムの記憶装置に格納する処理を実行する。
【0141】
変位情報抽出部52は、入力部51に入力された時系列データの各行為コマンドから直接、PTS適用部53で使用する変位情報を抽出する。具体的には、変位情報抽出部52は、図15に示す動作時間算出ステップに含まれる変位情報抽出ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。ここで、抽出される変位情報は、第1実施形態で入力部11に入力される変位情報とは異なる。そのため、PTS適用部53のMOD値導出部55、移動動作判定部56、歩数計算部57の各アルゴリズムも第1実施形態のものと一部において異なる。従って、具体的にどのような変位情報が抽出されるかについては、後述のPTS適用部53の動作説明において合わせて説明する。尚、変位情報抽出ステップは、後述のPTS適用ステップで各行為コマンド毎に変位情報が必要となる度に、各別に実行しても、PTS適用ステップの前に予め必要な全ての変位情報を抽出するようにしても構わない。
【0142】
PTS適用部53は、図15に示す動作時間算出ステップに含まれるPTS適用ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。PTS適用ステップにおいて、入力部51に入力された時系列データと変位情報抽出部52が抽出した変位情報に基づいて、時系列データ中の各行為コマンドにPTS法で規定された要素動作を割り付ける。本第2実施形態も、PTS法としてMODAPTS法を用いる。要素動作を割り付けるにあたり、行為コマンド毎に特定されるMODAPTS法で規定される要素動作の種別を決定し、その各要素動作の所要時間値に相当するMOD値を決定する。
【0143】
次に、PTS適用部53の具体的な動作、つまりPTS適用ステップについて説明する。PTS適用部53は、入力部51に入力された時系列データの各行為コマンドに対して、各別にMODAPTS法の要素動作を割り付ける。行為コマンド毎に割り付けられる要素動作の候補は予め決まっていて、その選択とMOD値を行為コマンドの詳細データとその行為コマンドに対応する動作に係る変位情報から求める。MOD値はMOD値導出部55が決めるが、MOD値そのものを決める場合と、予めMOD値の決まった要素動作を何回繰り返すかの繰り返し回数を決める場合がある。1回の要素動作の所要時間値を求めるか、一連の同じ要素動作の所要時間値を求めるかの違いである。以下、行為コマンド別に説明する。PTS適用部53は、MODAPTS法を適用するので、行為コマンド毎に割り付けられる要素動作の種別は第1実施形態の場合と同じであるが、その要素動作の各MOD値の決定方法が一部の行為コマンドにおいて第1実施形態と異なる。
【0144】
「Reach」コマンドの場合は、条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々要素コマンドを割り付ける。把持物を持ち替える等の準備動作については、当該準備動作が存在する場合に、移動動作のMxを割り付け、MOD値導出部55の移動動作判定部56が、変位情報抽出部52がそのときの手のサイト原点と対象物の握り点のサイト原点から計算した変位情報である手の移動距離から、MOD値xを特定する。具体的には、表4に示す判定表に基づいて決定する。
【0145】
【表4】
【0146】
「Reach」コマンドに歩行動作が存在する場合には、補助動作のW5を割り付け、そのW5動作を歩数回繰り返すようにする。MOD値導出部55の歩数計算部57は、補助動作のW5が割り付けられると、変位情報抽出部52が現在の重心位置と移動後の立ち位置から計算した変位情報であるコンピュータマネキンのその歩行動作における重心の移動距離と、予め設定した歩幅(例えば80cm)を用いて、重心の移動距離を歩幅で除して歩数を算出する。尚、歩幅データはコンピュータマネキンに合わせて変更可能である。例えば、高齢者の場合は歩幅を80cmより短く設定する。
【0147】
「Reach」コマンドは、何らかの姿勢変更を伴う。姿勢変更の種類には、コンピュータマネキンと対象物との相対的な位置関係によって、手首、肘、肩の関節動作以外にしゃがむ動作や体の捻り動作を含む場合があり、しゃがむ動作を伴う場合には、補助動作のB17を割り当てる。尚、B17動作は1往復の動作であるので、この場合は繰り返し回数として0.5を割り当てる。最終的に手を対象物に触れるまでの動作には、移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部55の移動動作判定部56が、変位情報である手の移動距離からMOD値xを特定する。具体的には、変位情報抽出部52がそのときの手のサイト原点と対象物の握り点のサイト原点から計算した変位情報である手の移動距離から、表3の判定表に基づいて判定する。但し、しゃがむ動作を伴う場合には、補助動作のB17が別途割り当てられるので、この分の動作時間を補正すべく、変位情報抽出部52は、手のサイト原点をしゃがむ動作での腰の移動距離だけ垂直方向に移動した後に手の移動距離を計算する。
【0148】
「握る」コマンドの場合、PTS適用部53は終局動作のG1を割り当てる。この場合、MOD値は1で固定である。第1実施形態と同じである。
【0149】
「移動」コマンドの場合、PTS適用部53は移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部55の移動動作判定部56が変位情報であるそのときの手の移動距離からMOD値xを特定する。具体的には、「Reach」コマンドの準備動作や姿勢変更と同様に、表4の判定表に基づいて判定する。
【0150】
「離す」コマンドの場合、PTS適用部53は移動動作のM1を割り当てる。第1実施形態と同じである。
【0151】
「姿勢」コマンドの場合、PTS適用部53は補助動作のB17と移動動作のMxの少なくとも何れか一方を割り当てる。具体的には、変位情報抽出部52が「姿勢」コマンド実行前の膝関節の角度から「姿勢」コマンド実行後の膝関節の角度への変位量を変位情報として計算し、その変位量(膝関節の角度変化)が例えば45度以下の場合は、しゃがみ動作なしと判定してB17を割り当てず、その変位量が45度を越える場合はB17を割り当てる。但し、B17動作は1往復の動作であるので、この場合は繰り返し回数として0.5を一意的に割り当てる。その他の姿勢変更の場合には、移動動作のMxが割り当てられ、変位情報抽出部52が「姿勢」コマンド実行前の手首、肘、肩、胴または腰の関節角度から「姿勢」コマンド実行後の各関節の関節角度への変位量を変位情報として計算し、MOD値導出部55の移動動作判定部56が、その変位量から各関節の回転動作の有無を計算し、表1の判定表に基づいてMOD値xを特定する。表1の判定表の見方は第1実施形態と同じである。
【0152】
「見る」コマンドの場合、PTS適用部53は補助動作のE2を割り当てて、その繰り返し回数をMOD値導出部55が算出する。具体的には、変位情報抽出部52が頭の正面方向を基準に現在の頭のサイト原点と対象物のサイト原点との成す角度を変位情報として抽出し、MOD値導出部55はその変位情報(頭部の回転角度に相当)を30度で除して、繰り返し回数を求める。つまり、頭部の回転角度が30度当り1回のE2動作を割り当てる。
【0153】
「引く」コマンドの場合、PTS適用部53は移動動作のMxを割り当てて、MOD値導出部55の移動動作判定部56が、変位情報抽出部52がそのときの手のサイト原点と対象物の握り点のサイト原点から計算した変位情報である手の移動距離から、表4の判定表に基づいてMOD値xを特定する。
【0154】
「置く」コマンドの場合、「Reach」コマンドと同様に、条件判断付きコマンドであり、準備動作、歩行動作、姿勢変更に対して夫々要素コマンドを割り付ける。具体的な処理方法も実質的に「Reach」コマンドと同様である。相違点としては、姿勢変更の最後に終局動作のP0を追加する点であるが、これはMOD値が0であるので、所要時間値の計算には影響を与えない。
【0155】
「点火」コマンドの場合、点火状態(コンロの火炎)の確認の為に体を捻りながら点火動作をする場合があるので、PTS適用部53は、当該捻りが有る場合には、M7とP0を割り当て、当該捻りが無い場合にはP0を割り当てる。また、当該捻りの有無は「点火」コマンドの条件判断式の中の捻り動作の有無により判定する。
【0156】
尚、MOD値導出部55の移動動作判定部56における判定基準(表1及び表4の判定表)、歩数計算部57における計算式、及び、MOD値導出部55の他の計算式等は、動作時間算出手段50を構成するコンピュータシステムの記憶装置に格納されている。
【0157】
動作時間情報導出部54は、図15に示す動作時間算出ステップに含まれる動作時間情報導出ステップを前記コンピュータ上で実行することにより実現される。動作時間情報導出ステップにおいて、PTS適用部53が時系列データの各行為コマンドに割り付けた要素動作の各MOD値を合計して、各行為コマンドの動作時間等の動作時間情報を算出する。第1実施形態の場合と同様である。本第2実施形態では、動作時間情報導出部54が算出した動作時間情報を行動生成システム10に出力する。
【0158】
〈5〉上記各実施形態では、PTS法としてMODAPTS法を用いたが、MTM法等の他のPTS法を用いても構わない。この場合、要素動作は使用するPTS法に規定された使用することになり、所要時間値の算出手法もそのPTS法に準拠して行うことになり、PTS適用部13、53のMOD値導出部16、55の具体的な構成は、当該PTS法の算出基準に合わせて変更する。
【0159】
〈6〉上記各実施形態では、動作時間算出手段2、50の動作時間算出の対象となる行為コマンドは、行動生成システム10の行為コマンドを想定したが、コンピュータマネキンの一連の作業を記述可能なコマンドであれば、上記実施形態で例示した行為コマンドに限定されるものではない。
【0160】
〈7〉MOD値導出部16、55におけるMOD値導出のための判定基準、つまり、変位情報とMOD値の関係は、上記各実施形態のものに限定されるものではない。例えば、MOD値として、MODAPTS法で規定された整数値に限らず、小数点以下の値を含むようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るコンピュータマネキンの心臓負担評価装置の一実施形態を示すブロック構成図
【図2】動作時間算出手段の一実施形態を示すブロック構成図
【図3】本発明に係る心臓負担評価プログラムの動作時間情報算出ステップの処理手順を示す流れ図
【図4】心臓循環器系モデルの一実施形態を示すブロック構成図
【図5】心臓循環器系モデル6によるシミュレーション結果と実験結果を示す第一の血圧及び心拍波形図
【図6】心臓循環器系モデル6によるシミュレーション結果と実験結果を示す第二の血圧及び心拍波形図
【図7】心臓循環器系モデル6によるシミュレーション結果と実験結果を示す第三の血圧及び心拍波形図
【図8】行動生成システムの一実施形態を示すブロック構成図
【図9】作業記述用の入力データの入力項目を説明する説明図
【図10】動作決定ルールの一部を構成する持ち方判定表
【図11】動作決定ルールの一部を構成する移動・姿勢判定表
【図12】移動・姿勢判定表における腕の長さ算出に使用する補正係数mと、コンピュータマネキンの筋力レベル及び対象物の質量との関係を示す表
【図13】動作決定ルールの一部を構成する捻り・体全体の回転の有無及び変更内容を説明する判定図
【図14】動作時間算出手段の別実施形態を示すブロック構成図
【図15】本発明に係る心臓負担評価プログラムの動作時間情報算出ステップの別実施形態における処理手順を示す流れ図
【符号の説明】
1: 本発明に係る心臓負担評価装置
2、50: 動作時間算出手段
3: 運動強度特定手段
4: 運動タイプ特定手段
5: 個人特性入力手段
6: 心臓循環器系モデル
10: 行動生成システム
11、51: 入力部
12: デフォルト値設定部
52: 変位情報抽出部
13、53: PTS適用部
14、54: 動作時間情報導出部
15: 動作時間情報変更部
16、55: MOD値導出部
17、56: 移動動作判定部
18、57: 歩数計算部
20: 入力部
21: 基準血圧算出部
22: 圧受容器部
23: 神経応答部
24: 心拍数算出部
25: 心拍出量算出部
26: 1回拍出量算出部
27: 血管抵抗算出部
28: 血圧変動算出部
29: 血圧算出部
30: 酸素摂取量算出部
31: 必要酸素摂取量算出部
32: 化学受容器部
33: 化学受容器遅延部
41: 作業記述部
42: 行為選択部
43: 行為ファイル
44: 人データベース
45: 物データベース
46: 動作決定ルール
47: 姿勢データベース
48: 可視化部
Claims (8)
- 人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置であって、
前記人体の動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する一連の動作によって定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの前記動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の動作時間情報をPTS法により算出する動作時間算出手段と、
前記行為コマンドを運動強度指数に変換する第1変換テーブルを備え、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の運動強度指標を前記第1変換テーブルに基づいて導出する運動強度特定手段と、
前記行為コマンドを運動タイプに変換する第2変換テーブルを備え、前記行動生成システムから入力される前記行為コマンドで特定される各動作に対して、前記第2変換テーブルに基づいて血液循環作用に与える影響が相異なる複数の運動タイプの内の少なくとも一つを割り当てる運動タイプ特定手段と、
前記動作時間算出手段で算出された前記動作時間情報と、前記運動強度特定手段で特定された運動強度指標と、前記運動タイプ特定手段で割り当てられた運動タイプと、前記コンピュータマネキンの模擬対象となる人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報とを少なくとも入力データとして受け付け、前記入力データに基づく予め設定された演算処理を時間単位毎に実行することにより、前記行為コマンドで特定される動作に伴う血圧及び心拍数の少なくとも何れか一方を時系列に沿って算出可能な心臓循環器系モデルと、を備えてなる心臓負担評価装置。 - 前記複数の運動タイプが、等尺性収縮運動、等張性収縮運動、及び、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動の少なくとも3タイプを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の心臓負担評価装置。
- 人体の動作に対する心臓負担評価をコンピュータ処理によって行う心臓負担評価装置であって、
前記動作の運動強度指標の時系列データと、等尺性収縮運動と等張性収縮運動を含む前記動作の運動タイプの時系列データと、血液循環作用に影響を与える個人特性情報とを入力データとして受け付け、前記動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出可能な心臓循環器系モデルを備えてなり、
前記心臓循環器系モデルが、前記運動強度指標から基準血圧を時系列に沿って算出する基準血圧算出手段と、血圧を時系列に沿って算出する血圧算出手段と、心拍数を時系列に沿って算出する心拍数算出手段とを有し、
前記心拍数算出手段が、1時間単位前の前記血圧算出手段が算出した血圧と前記基準血圧の差分に基づいて予め設定された算出式により血圧変動の圧刺激による心拍数補正量を算出し、前記心拍数算出手段が算出した1時間単位前の心拍数に前記心拍数補正量を加算して心拍数を算出し、
前記血圧算出手段が、前記心拍数算出手段が算出した前記心拍数と、前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報に基づいて予め設定された算出式により算出される心拍1回当りの心拍出量と、を乗じて心拍出量を算出し、
また、前記運動強度指標に基づいて予め設定された算出式により算出される必要酸素摂取量と前記運動タイプとに基づいて予め設定された算出式により血管抵抗を算出し、
さらに、前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報とに基づいて予め設定された算出式により血圧変動を算出し、
前記心拍出量に前記血管抵抗を乗算したものに前記血圧変動を加算して血圧を算出することを特徴とする心臓負担評価装置。 - 前記心臓循環器系モデルが、心臓位置の急激な上下移動を伴う上下移動運動を含む前記動作の運動タイプの時系列データを入力データとして受け付け、
入力データとして受け付けた前記運動強度指標と前記運動タイプと前記個人特性情報の年齢とに基づいて、予め設定された算出処理を時間単位毎に実行することにより前記上下移動運動に伴う血圧変動を時系列に沿って算出する血圧変動算出手段を備え、
前記血圧算出手段が算出した血圧に対し、前記血圧変動算出手段が算出した血圧変動を付加することを特徴とする請求項3に記載の心臓負担評価装置。 - 前記動作の運動強度指標から求まる必要酸素摂取量に対する不足酸素量を補うための心拍数補正量を、前記心拍数算出手段が算出した心拍数に基づいて予め設定された算出式により酸素摂取量を算出し、前記必要酸素摂取量から前記酸素摂取量を差し引いて前記不足酸素量を算出し、前記不足酸素量に所定の係数を乗じたものとして、一定時間遅れで算出する化学受容器モデルを備え、
前記心拍数算出手段が前記心拍数の算出に前記心拍数補正量を付加することを特徴とする請求項3又は4に記載の心臓負担評価装置。 - 前記人体の動作を複数種の行為コマンドを時系列で組み合わせてコンピュータマネキンの対象物に対する一連の動作によって定義して、前記行為コマンドで特定される前記コンピュータマネキンの前記動作をコンピュータ仮想空間上で可視化する行動生成システムに対して、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の動作時間情報をPTS法により算出する動作時間算出手段と、
前記行為コマンドを運動強度指数に変換する第1変換テーブルを備え、前記行動生成システムから時系列データとして入力される前記行為コマンドで特定される各動作の運動強度指標を前記第1変換テーブルに基づいて導出する運動強度特定手段と、
前記行為コマンドを運動タイプに変換する第2変換テーブルを備え、前記行動生成システムから入力される前記行為コマンドで特定される各動作に対して、血液循環作用に与える影響が相異なる複数の運動タイプの内の少なくとも一つを前記第2変換テーブルに基づいて割り当てる運動タイプ特定手段とを備え、
前記心臓循環器系モデルが、前記動作時間算出手段で算出された前記動作時間情報、前記運動強度特定手段で特定された運動強度指標、前記運動タイプ、及び、前記コンピュータマネキンの模擬対象となる人体の血液循環作用に影響を与える個人特性情報を少なくとも入力データとして受け付け、受け付けた入力データから時間単位毎に前記行為コマンドで特定される動作に伴う血圧及び心拍数を時系列に沿って算出することを特徴とする請求項3〜5の何れか一項に記載の心臓負担評価装置。 - 人体の動作に対する心臓負担評価を所定のコンピュータ上で実行するための心臓負担評価プログラムであって、
請求項1〜6の何れか一項に記載の前記心臓負担評価装置における前記各手段及び前記各モデルの機能を前記コンピュータに実現させるためのプログラムステップを含む心臓負担評価プログラム。 - 請求項7に記載のコンピュータマネキンの心臓負担評価プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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