JP4869451B1 - 色素増感型太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】光電変換率を高めることが可能となる色素増感型太陽電池を提供する。
【解決手段】金属酸化物層(酸化チタン層)が設けられ当該金属酸化物層(酸化チタン層)に有機色素が付着された透明電極1を有し、この透明電極1と対極2との間に、電解質層3が設けられている。電解質層3に隣接して炭素素材層7a,7bが設けられている。この炭素素材層7a,7bは、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、色素増感型太陽電池に関する。
近年、エネルギー問題に対する意識の向上から太陽光発電に対する期待が高まっており、太陽電池の需要が増加している。このような需要の増加に伴って、光電変換率の高い太陽電池の技術開発が進められている。
太陽電池には、シリコン型太陽電池の他、色素増感型太陽電池があり、色素増感型太陽電池は一般的に、色素電極、電解質層及び対極の三つの部分を備えている(例えば、特許文献1参照)。
色素電極は、増感色素を結合させた金属酸化物層を導電性ガラス等の電極基板上に形成したものであり、対極は、導電性ガラス等の電極基板上に白金等の触媒層を形成したものである。そして、電解質層は、電解質の溶液であり色素電極と対極との間に挟まれて設けられている。
このような色素増感型太陽電池における光電変換のメカニズムは、次のとおりである。色素電極に光を当てると、増感色素が光励起し金属酸化物層へ電子が注入され、増感色素は酸化する。電子を失った増感色素は、電解質から電子を奪い還元され、電子が奪われた電解質は対極から電子を受け取る。以上のような電子の移動が継続的に行われることにより、色素電極と対極との間で電流が流れる。
特開2008−130537号公報(図1参照)
色素増感型太陽電池は、シリコン型太陽電池に比べると低コストで製造可能であることが知られているが、従来の色素増感型太陽電池は、光電変換率がおよそ11%〜12%程度であり、今後もさらに優れた光電変換率を有する色素増感型太陽電池の開発が望まれている。
そこで、本発明は、光電変換率を高めることが可能となる色素増感型太陽電池を提供することを目的とする。
(1)前記目的を達成するため、本発明は、電極基板と、対極とを有し、これら電極基板と対極との間に、少なくとも電解質層が設けられている色素増感型太陽電池であって、前記電極基板側から順に、色素を付着させた金属酸化物層、天然セルロース系の材料である綿を炭化した炭化物シートからなる炭素素材層、及び、前記電解質層を積層して構成される積層体を一組とし、二組又は三組の前記積層体が、前記電極基板と前記対極との間に設けられていることを特徴とする。
本発明によれば、電極基板側に光を当てると、色素が光励起し金属酸化物層へ電子が注入され、色素は酸化する。電子を失った色素は、電解質中から電子を奪い還元され、電子が奪われた電解質は対極側から電子を受け取る。以上のような電子の移動が継続的に行われることにより、電極と対極との間で電流が流れる。
そして、天然セルロース系の材料である綿を炭化した炭化物シートからなる炭素素材層は、炭素原子が共有結合して大きな分子構造を有することができると推測され、このような炭素素材層を電解質層に隣接して設けることで、光電変換における還元速度を速めることができるという知見を、発明者は得ることができた。そこで、この知見に基づいて、光電変換率を向上させることが可能となる構成を見出すことができた。
つまり、色素を付着させた金属酸化物層、天然セルロース系の材料である綿を炭化した炭化物シートからなる炭素素材層、及び、電解質層が積層されて一組として構成される積層体を、二組又は三組について、電極基板と対極との間に設けることによって、特に光電変換率の高い色素増感型太陽電池を得ることができる。
(2)また、本発明は、金属酸化物層が設けられ当該金属酸化物層に色素が付着された電極を有し、この電極と対極との間に、少なくとも電解質層が設けられている色素増感型太陽電池であって、前記電解質層に隣接して設けられている炭素素材層を備え、前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなることを特徴とする。
本発明によれば、色素が付着された電極に光を当てると、光励起し金属酸化物層へ電子が注入され、色素は酸化する。電子を失った色素は、電解質中から電子を奪い還元され、電子が奪われた電解質は対極から電子を受け取る。以上のような電子の移動が継続的に行われることにより、電極と対極との間で電流が流れる。
そして、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層は、炭素原子が共有結合して大きな分子構造を有することができると推測され、このような炭素素材層を電解質層に隣接して設けることで、光電変換における還元速度を速めることができるという知見を、発明者は得ることができた。そこで、この知見に基づいて、光電変換率を向上させることが可能となる構成を見出すことができた。
また、前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料である、和紙糸、麻及び綿のいずれかを炭化した炭化物からなるのが好ましい。
この場合、安価な材料により、太陽電池の性能を高めることが可能となる。
特に、前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料である、和紙糸、麻及び綿のいずれかによる織物地又は編物地を炭化した炭化物シートからなるのが好ましい。
この場合、炭化物シートを設ければよく、製造が容易となる。
その中でも、前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料である、綿を炭化した炭化物シートからなるのが好ましい。
また、前記炭素素材層は、前記金属酸化物層と前記電解質層との間に設けられているのが好ましい。
この場合、還元速度をより速めることができる。
また、前記色素増感型太陽電池は、前記電解質層に隣接して設けられている炭素素材層を、複数層備えているのが好ましい。
この場合、光電変換率をさらに向上させることが可能となる。
(3)また、本発明は、金属酸化物層が設けられ当該金属酸化物層に色素が付着された電極を有し、この電極と対極との間に、少なくとも電解質層が設けられている色素増感型太陽電池であって、前記電極側から順に、第1の電解質層、第1の炭素素材層、第1の金属酸化物層、第2の炭素素材層、第2の金属酸化物層、第2の電解質層、ルテニウムの色素を吸着させた導電性基板、及び、前記対極が設けられおり、前記炭素素材層それぞれは、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなることを特徴とする。
本発明によれば、色素が付着された電極に光を当てると、光励起し金属酸化物層へ電子が注入され、色素は酸化する。電子を失った色素は、電解質中から電子を奪い還元され、電子が奪われた電解質は、各層を通じて、対極側から電子を受け取る。以上のような電子の移動が継続的に行われることにより、電極と対極との間で電流が流れる。
そして、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層は、炭素原子が共有結合して大きな分子構造を有することができると推測され、このような炭素素材層を電解質層に隣接して設けることで、光電変換における還元速度を速めることができるという知見を、発明者は得ることができた。そこで、この知見に基づいて、光電変換率を向上させることが可能となる構成を見出すことができた。
また、前記各色素増感型太陽電池において、前記電解質層は、ヨウ素溶液層であるのが好ましい。
ヨウ素は反応性が非常に高い元素であることから、光電変換を活発に行わせることができる。
また、前記各色素増感型太陽電池において、前記金属酸化物層は、酸化チタンからなる微粒子からなるのが好ましい。
色素が付着された電極に光を当てると、光励起し金属酸化物層へ電子が注入されるが、この金属酸化物層を酸化チタンからなる微粒子とすることにより、電子は酸化チタンの高エネルギー軌道体を経由して電極に達することができる。
本発明の色素増感型太陽電池によれば、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層が、電解質層に隣接して設けられていることで、光電変換における還元速度を速めることができ、光電変換率を向上させることが可能となる。
本発明の色素増感型太陽電池の第一の実施形態を示す説明図である。 色素増感型太陽電池の光電変換を説明する説明図である。 本発明の色素増感型太陽電池の第二の実施形態を示す説明図である。 色素増感型太陽電池の構成を説明する説明図である。 本発明の色素増感型太陽電池の光電変換率を測定した結果を示している図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔1. 第一の実施形態〕
図1は、本発明の色素増感型太陽電池の第一の実施形態を示す説明図である。この色素増感型太陽電池(以下、単に太陽電池ともいう)では、透明電極(第1電極)1と対極(第2電極)2との間に、電解質層3が設けられている。透明電極1が負極となり、対極2が正極となる。
各層の詳細については後にも説明するが、本実施形態では、透明電極1は、光透過性を有している導電性ガラス板からなる電極基板5に、金属酸化物として酸化チタン(TiO)からなる微粒子が層状に固定されたものであり、また、この酸化チタンからなる微粒子には、有機色素が付着されている。対極2は、導電性ガラス等の電極基板8からなり、この電極基板8上には例えば白金等の触媒層が形成されている。また、電解質層3は、ヨウ素溶液による電解質層である。
そして、この太陽電池では、電解質層3に隣接して炭素素材層7が設けられており、本実施形態では、電解質層3を挟んで両側に炭素素材層7a,7bが設けられている。なお、図1に示している各層の厚さは、実際の厚さと異なっており、説明をわかりやすくするために、各層の厚さを実際と変えて表現している。
図2は、本発明の太陽電池の光電変換を説明する説明図である。
光が透明電極1に照射されると、この光は前記有機色素に注がれる。この有機色素では、低エネルギー軌道の電子が光エネルギーを受け取り、高エネルギー軌道に移動し、この電子は、酸化チタン(TiO)の高エネルギー軌道を経由して透明電極1の電極基板5(負極)に到達する。その後、電子は導線Lを通じて対極2の電極基板8(正極)に到達する。そして、前記電子は、電解質層3を経由して元の有機色素の低エネルギー軌道に戻る。これにより、電子が一巡し、電流が発生したこととなる。
〔2. 各部の構成について〕
図1において、前記透明電極1は、光透過性を有する導電性ガラス板からなる電極基板5に、金属酸化物として酸化チタン(TiO)からなる微粒子(粉末)を焼き付けて固定したものである。これにより、電極基板5に、酸化チタンの微粒子からなる金属酸化物層6が形成される。そして、この金属酸化物層6の前記微粒子に、有機色素を付着させている。本実施形態では、有機色素をルテニウムとしている。ルテニウムは、8族の元素であり、遷移金属の一種であって反応を敏速にすることができる。
前記電解質層3は、従来の色素増感型太陽電池に採用されているものとすることができ、本実施形態では、ヨウ素溶液による電解質層である。ヨウ素(元素番号53)は、17族の元素でハロゲン元素であり、このハロゲン元素では、最外殻の電子が1個だけ欠けているので、1個の電子を取り入れて1価のハロゲン陰イオンを作る傾向が強く、また、反応性が非常に高い元素である。このように、ヨウ素は反応性が非常に高い元素であることから、光電変換を活発に行わせることができる。また、ヨウ素は、多くの有機溶媒に溶けやすく昇華しやすいため、本実施形態では、電解質層3をヨウ素溶液による電解質層としている。
また、太陽電池を実用化するためには、様々な環境下で用いられる必要があることから、電解質層3におけるヨウ素の不純物を最小に抑える必要があり、高濃度に濃縮するのが好ましい。そこで、ヨウ素溶液の濃度は70〜90%とするのが好ましく、本実施形態では、濃度を86%としている。
そして、この太陽電池では、前記のとおり、電解質層3に隣接して炭素素材層7a,7bが設けられている。炭素素材層7a,7bそれぞれは、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる。具体的に説明すると、炭素素材層7a,7bは、天然セルロース系の材料である、和紙糸、麻及び綿のいずれかを炭化した炭化物からなる。
前記炭素素材層7(7a,7b)について説明する。
本実施形態では、炭素素材層7はシート状である。なお、シート状の基材表面に、天然セルロース系の材料を炭化して得た粉炭を散着したものや、バインダーに前記粉炭又は粒炭を混合したものを薄く展伸してシート状としたもの等のように、他の材料に炭が混入しているものであってもよいが、炭のみでシート状としたものが好ましい。
例えば、天然セルロース系の材料を撚って糸状としたもの(和紙糸、麻糸又は綿糸)を製織して織物地とし、この織物地を炭化して炭としたシートを、炭素素材層7としている。または、天然セルロース系の材料を撚って糸状としたもの(和紙糸、麻糸又は綿糸)を編んで編物地とし、この編物地を炭化して炭としたシートを、炭素素材層7としてもよい。以下、このように炭化して炭としたシートを、炭化物シートという。
天然セルロース系の材料として和紙糸を用いた場合を説明すると、前記炭化物シートは、和紙糸で製織した織物地を炭化して炭としたものや、和紙糸で編んだ編物地を炭化して炭としたりしたものである。和紙はコウゾ、ミツマタ、ガンビ等の植物を原料としたものであって、木質材であり、この和紙を撚って糸状としたものが和紙糸となる。そして、この和紙糸で製織した織物地又は編んだ編物地は木材と同様に、炭化すれば炭となり、織物地又は編物地の形態からなるシート状の炭(炭化物シート)を得ることができる。
この場合、製織又は編んでいるため、形態の維持力が強く、また、炭化しても構成する糸が離散するおそれもない。更に糸間に空隙を有しており、また、シート状であるため、体積に比較して、前記電解質層3及び前記金属酸化物6(前記有機色素)等との接触面を広くすることができる。
和紙糸は和紙を適当巾に裁断して撚って糸状としたものであって、任意の太さに設定できる。そして、織物地又は編物地を炭化することによって、撚った和紙糸は多少収縮するが、格別に太い糸として製織する必要はなく、ごく普通に用いられる範囲の太さの糸であればよい。
また、製織における組織は、様々な態様を採用することができ、基本的な平織でよく、これにより、炭化した後の組織をそのまま維持することができる。
なお、麻及び綿を用いる場合も、和紙糸の場合と同様に糸及びシートとすればよい。
炭化は処理一般に行われている方法を採用することができ、800℃〜1200℃の温度で加熱することにより、前記炭化物シートを得ることができる。
加熱時間は、24〜26時間であり、加熱後、48時間程度の時間をかけて自然冷却を行う。加熱は、例えば電気炉(高温度処理炉)によって行われる。
以上の実施形態に係る太陽電池によれば、透明電極1側において、光を、透明である電極基板5を通じて、有機色素を付着した酸化チタンの微粒子からなる金属酸化物層6に当てると、有機色素は光励起し前記酸化チタンへ電子が注入され、当該有機色素は酸化する。電子を失った有機色素は、電解質層3(ヨウ素溶液層)中から電子を奪い還元され、電子が奪われた電解質層3は対極2から電子を受け取る。以上のような電子の移動が継続的に行われることにより、透明電極1と対極2との間で電流が流れる。以上より光電変換が行われる。
そして、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層7a,7bは、炭素原子が共有結合して大きな分子構造(例えばフラーレン)を有することができると推測され、このような炭素素材層7a,7bが電解質層3に隣接して設けられているので、前記光電変換における還元速度を速めることができ、光電変換率を向上させることが可能となる。
特に、図1において、第1の炭素素材層7aは、電解質層3と金属酸化物(酸化チタン)の微粒子からなる金属酸化物層6との間に設けられていることから、還元速度をより速めることができ、光電変換率の向上に寄与することができる。
また、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層7a,7bを介在させることで、安価な構成により、従来の色素増感型太陽電池よりも光電変換率を向上させることが可能となる。
さらに、図1において、対極2側の炭素素材層7bを省略してもよいが、本実施形態(図1)では、電解質層(ヨウ素溶液層)3に隣接して設けられている炭素素材層を、複数層(7a,7b)備えていることから、光電変換率をさらに向上させることが可能となる。
〔3. 第二の実施形態〕
図3は、本発明の太陽電池の第二の実施形態の説明図である。この太陽電池も、基本構成は、前記実施形態(図1)と同じであり、金属酸化物層としての酸化チタンからなる微粒子が固定された透明電極51と、対極52との間に、ヨウ素溶液層からなる電解質層(53a,53b)が設けられている色素増感型太陽電池である。そして、この酸化チタンからなる微粒子に有機色素が付着されている。
前記透明電極51では、透明である電極基板55に、酸化チタンからなる微粒子が固定されて、当該微粒子により金属酸化物層56aが形成されている。
そして、この第二実施形態では、前記透明電極51側から順に、第1の電解質層53a、第1の炭素素材層57a、第1の金属酸化物層56b、第2の炭素素材層57b、第2の金属酸化物層56c、第2の電解質層53b、ルテニウムの色素を吸着させた導電性基板59、及び、対極52が設けられている。
透明電極51及び対極52は、前記実施形態と同じである。また、第1の電解質層53a及び第2の電解質層53bも、前記実施形態と同じであり、ヨウ素溶液による電解質層である。第1の炭素素材層57a及び第2の炭素素材層57bそれぞれは、前記実施形態と同じ炭素素材層であり、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物(炭化物シート)からなる。
前記第1の金属酸化物層56bは、第1の炭素素材層57aの片面に固定して形成されている。つまり、第1の金属酸化物層56bは、金属酸化物である酸化チタン(TiO)からなる微粒子を炭素素材層57aに付着させることにより、形成されている。
また、第2の金属酸化物層56cは、第2の炭素素材層57bの片面に固定して形成されている。つまり、第2の金属酸化物層56cは、金属酸化物である酸化チタン(TiO)からなる微粒子を炭素素材層57bに付着させることにより、形成されている。第1の金属酸化物層56b、及び、第2の金属酸化物層56cそれぞれにおいて、酸化チタンからなる微粒子に有機色素が付着されていてもよい。
この第二の実施形態にかかる太陽電池によれば、透明電極51側において、光を、透明である電極基板55を通じて、有機色素を付着した酸化チタンの微粒子からなる金属酸化物層56aに当てると、有機色素は光励起し前記酸化チタンへ電子が注入され、当該有機色素は酸化する。電子を失った前記有機色素は、第1の電解質層(ヨウ素溶液層)53a中から電子を奪い還元され、電子が奪われた第1の電解質層53aは、各層を通じて、対極52側から電子を受け取る。以上のような電子の移動が継続的に行われることにより、透明電極51と対極52との間で電流が流れる。以上より光電変換が行われる。
そして、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層57a,57bは、炭素原子が共有結合して大きな分子構造(例えばフラーレン)を有することができると推測され、前記光電変換における還元速度を速めることができ、光電変換率を向上させることが可能となる。
また、前記各実施形態の太陽電池は、接着剤等を用いて各層同士を接着するのではなく、厚さ方向の圧力を全体に付与して圧着させる。これにより、各層を密着させた状態とする。そして、例えば光透過性を有する樹脂シートで全体を覆い、一体化させることで製造される。
〔4. 実験結果〕
本発明の色素増感型太陽電池について、前記炭素素材層(前記炭化物シート)の層の数を増やした場合の光電変換率の測定結果を説明する。なお、この太陽電池は、図4に示しているように、透明電極1の電極基板5と、対極2との間に、酸化チタン(TiO)からなる微粒子が固定されかつ当該微粒子に有機色素としてルテニウムを付着した金属酸化物層(TiO層)6、炭素素材層(前記炭化物シート)7、及び、ヨウ素溶液層からなる電解質層3が設けられている。なお、ここで使用した炭化物シート7は、綿を炭化した炭化物からなる。そして、電極基板5、対極2、金属酸化物層6、電解質層3は、図1により説明したものと同じである。
ここで、金属酸化物層(TiO層)6と、炭素素材層(炭化物シート)7と、ヨウ素溶液層からなる電解質層3とを備えたシート体を一つの組Gとしている。そして、この組Gの数を1〜6まで変えて、電極基板5と対極2との間に、シート体(組G)を介在させた場合における、太陽電池の光電変換率を測定した結果を、図5に示している。なお、図5では、組Gが1つの場合を1層とし、組Gが6つの場合を6層としている。また、各組Gにおいて、金属酸化物層(TiO層)6と、炭素素材層(炭化物シート)7と、ヨウ素溶液層からなる電解質層3とは、この順で、電極基板5側から対極2側へと配置される。
図5において、1層の場合、変換率は16.7%であり、従来の色素増感型太陽電池の変換率(11%から12%)よりも高くなっている。さらに、層の数を2〜5と増加させることにより、1層の場合よりも高い変換率が得られる。しかし、6層になると、1層の場合より僅かに劣り、図示していないが、7層以上とすると、さらに変換率は低下する。
したがって、本発明では、層の数、つまり、前記組Gの数は1〜6層が好ましい。より好ましくは1層から5層であり、特に2層から4層とするのが好ましく、変換率が20%を超える2層又は3層とするのがさらに好ましい。
この実験で使用した炭化物シート7は、綿を炭化した炭化物からなるものであり、上記のとおり、従来に比べて高い変換率を得ることができ、特に2層及び3層の場合に、20%を超える変換率を得ることができる。
すなわち、電極基板5側から順に、有機色素としてルテニウムを付着させた金属酸化物層(TiO層)6、天然セルロース系の材料である綿を炭化した炭化物シートからなる炭素素材層7、及び、ヨウ素溶液層からなる電解質層3が積層されて一組として構成される積層体が、二組又は三組について、電極基板5と対極2との間に設けられた色素増感型太陽電池とするのが好ましい。
なお、炭化物シート(炭素素材層7)を、天然セルロース系の材料として、和紙糸とした場合、又は、麻とした場合であっても、綿とした場合と同等の変換率を得ることが可能となる。
以上のように、前記各実施形態の太陽電池によれば、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなる炭素素材層を備えており、この炭素素材層は、炭素原子が共有結合して大きな分子構造を有することができる。そして、この炭素素材層が電解質層に隣接して設けられているので、光電変換における還元速度を速めることができ、光電変換率を向上させることが可能となる。
また、従来では、シリコン半導体を使用することから結晶成長に時間を要し、コスト高となっていた。しかし、前記各実施形態の太陽電池によれば、シリコン半導体を使用しておらず、炭素素材層を介在さればよく、簡単な構造によって変換率を高め、しかも、コストダウンが可能となる。
また、従来の太陽電池は、いずれの電極でも負の過電圧が大きい。近似的にはバトラー、フォールマーの理論による関係が成立すると考えられるため、ターフェルプロットの勾配より移動係数αcを直線のη=0への補外により交換電流密度j0を求めることができる。そこで、本発明では、光電変換における還元速度が速くするために、エネルギー変換率が高いヨウ素からなる電解質層に炭素素材層を組み合わせることにより、高い光電変換率を有する太陽電池が得られる。
また、本発明の太陽電池は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。例えば、前記各実施形態では、炭素素材層を、天然セルロース系の材料を撚って糸状としたものを製織して織物地とした炭化物シート、又は、天然セルロース系の材料を撚って糸状としたものを編んで編物地とした炭化物シートとしたが、これ以外として、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物を粉状とし、この粉体を各層の間に設けてもよい。
1:透明電極(電極)
2:対極
3:電解質層
5:電極基板
6:金属酸化物層
7,7a,7b:炭素素材層
8:電極基板
51:透明電極(電極)
52:対極
53a,53b:電解質層
55:電極基板
56a,56b,56c:金属酸化物層
57,57a,57b:炭素素材層
58:電極基板
59:ルテニウムの色素を吸着させた導電性基板

Claims (10)

  1. 電極基板と、対極とを有し、これら電極基板と対極との間に、少なくとも電解質層が設けられている色素増感型太陽電池であって、
    前記電極基板側から順に、色素を付着させた金属酸化物層、天然セルロース系の材料である綿を炭化した炭化物シートからなる炭素素材層、及び、前記電解質層を積層して構成される積層体を一組とし
    二組又は三組の前記積層体が、前記電極基板と前記対極との間に設けられていることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  2. 金属酸化物層が設けられ当該金属酸化物層に色素が付着された電極を有し、この電極と対極との間に、少なくとも電解質層が設けられている色素増感型太陽電池であって、
    前記電解質層に隣接して設けられている炭素素材層を備え、
    前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  3. 前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料である、和紙糸、麻及び綿のいずれかを炭化した炭化物からなる請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
  4. 前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料である、和紙糸、麻及び綿のいずれかによる織物地又は編物地を炭化した炭化物シートからなる請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
  5. 前記炭素素材層は、天然セルロース系の材料である、綿を炭化した炭化物シートからなる請求項2に記載の色素増感型太陽電池。
  6. 前記炭素素材層は、前記金属酸化物層と前記電解質層との間に設けられている請求項2から5のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
  7. 前記電解質層に隣接して設けられている炭素素材層を、複数層備えている請求項2から6のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
  8. 金属酸化物層が設けられ当該金属酸化物層に色素が付着された電極を有し、この電極と対極との間に、少なくとも電解質層が設けられている色素増感型太陽電池であって、
    前記電極側から順に、第1の電解質層、第1の炭素素材層、第1の金属酸化物層、第2の炭素素材層、第2の金属酸化物層、第2の電解質層、ルテニウムの色素を吸着させた導電性基板、及び、前記対極が設けられおり、
    前記炭素素材層それぞれは、天然セルロース系の材料を炭化した炭化物からなることを特徴とする色素増感型太陽電池。
  9. 前記電解質層は、ヨウ素溶液層である請求項1から8のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
  10. 前記金属酸化物層は、酸化チタンの微粒子からなる請求項1から9のいずれか一項に記載の色素増感型太陽電池。
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