JP4868555B2 - フローティングナット - Google Patents

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本発明は、ナット部材及びリテイナー部材を組み合わせてなるフローティングナットに関するものである。

ウェルディングナットに比べてナット部材の位置に自由度があり、固着対象物の精密な位置調整に対応可能なことから、フローティングナットがそのような用途に選択使用されている。特許文献1の第5図及び第6図に示された従来のフローティングナットは、ナット部材とリテイナー部材の2部品で構成され、前記ナット部材は、略正方形の基板部中央に筒部を突設し、該筒部の中心線上にボルトねじ込まれる雌ねじ部を貫通して設けたものである。前記リテイナー部材は、ナット部材の前記基板部を前後左右に移動可能に可動に収容する薄箱形状の本体部分と、該本体部分の一対の側面に折り返し形成した腕部分とからなり、前記本体部分の上面板部の中央にはナット部材の前記筒部が前後左右に移動可能に挿入される筒部挿入孔が形成され、前記本体部分の下面開口部は前記一対の腕部分と面一にある折り返し裏板部によって閉鎖されており、前記裏板部の中央にはボルト挿入孔を形成してある。

この形状構造のフローティングナットの使用に当たっては、固着対象物の支持板部材の裏面にリテイナー部材の前記本体部分の裏板部及び前記腕部分を突き当て、固着対象物と前記支持板部材の各ボルト挿入孔に挿入した固着用ボルトを、前記裏板部のボルト挿入孔を通して前記筒部の雌ねじ部にねじ込む。固着対象物を設計通りの位置に来るように前後左右に移動調整した後、前記固着用ボルトが所定強さに締め付けられる。

このフローティングナットでは、前記ナット部材がリテイナー部材の前記本体部分内において移動することによって固着対象物の固着位置が精密に調整されるのであるが、使用操作上において二つの問題点がある。

第一の問題点は、フローティングナットのリテイナー部材を前記支持板部材に突き当てたあと、作業員が指先でリテイナー部材の装着状態を確保しなければ、リテイナー部材が支持板部材から脱離してしまうことである。第二の問題点は、固着用ボルトとナット部材の雌ねじ部との芯合わせをしても、固着用ボルトの締め込みを開始する前にナット部材がリテイナー部材の本体部分内において勝手に移動してしまうことである。これらの問題点のため、固着作業に手間がかかることになった。第一の問題点を解決するように工夫された製品も別に提供されているが、リテイナー部材の定着用孔が四角形孔であるため、現場での修正が困難である。

実開平3−59510号公報

本発明の課題は、支持板部材に対するリテイナー部材の装着状態を確保できるとともに、ナット部材を任意の位置に停止保持することができるため、固着作業の操作性に優れたフローティングナットを提供することである。

請求項1の発明のフローティングナットは、基板部に突設した筒部に雌ねじ部を設けたナット部材と、ナット部材の前記基板部を前後左右に移動可能に可動に収容する本体部分を有するリテイナー部材とからなり、
リテイナー部材の前記本体部分の平面板部にナット部材の前記筒部が前後左右に移動可能な開口部を形成し、前記本体部分の左右一側の側面板部を裏面方向に延長してその先端部に、前記平面板部と平行状にクリップ板部を形成し、前記本体部分の前後の側面板部の先端部には、ナット部材の前記基板部の裏面に当接する裏面板部を形成し、リテイナー部材の前記平面板部とナット部材の前記基板部との間にバネ部材を挿入してある。
請求項2の発明のフローティングナットでは、請求項1の発明の前記構成に加えて、前記クリップ板部に逆止め舌片部を支持板部材側に斜めに突設し、当該逆止め舌片部の先端を前記支持板部材のボルト挿入孔の内壁面に係合可能に配置してある。
請求項3の発明のフローティングナットでは、請求項1または請求項2の発明の前記構成に加えて、前記リテイナー部材の前記本体部分の平面板部に形成した前記開口部の縁部を、前記クリップ板部を形成した側である前記本体部分の左右一側の側面板部の中間部まで溝状に切欠いて開放部を形成してある。
請求項4の発明のフローティングナットでは、請求項3の発明の前記構成に加えて、前記リテイナー部材の前記本体部分の平面板部に形成した前記開口部と前記開放部の幅員を越えるバネ受板を前記ナット部材の前記筒部に嵌め合わせ、前記バネ部材を前記ナット部材の前記基板部と前記バネ受板の間に挿入してある。
請求項1の発明のフローティングナットでは、リテイナー部材の前記本体部分の左右一側の側面板部を裏面方向に延長してその先端部に、前記本体部分の平面板部と平行状にクリップ板部を形成し、前記本体部分の裏面板部の裏面に当接する前記クリップ板部に逆止め舌片部を支持板部材側に斜めに突設し、当該逆止め舌片部の先端が前記支持板部材のボルト挿入孔の内壁面に係合可能に配置し、前記本体部分の前後の側面板部の先端部には、ナット部材の前記基板部の裏面に当接する裏面板部を形成してあるため、固着対象物の支持板部材のエッジ部に前記リテイナー部材を装着したとき、前記裏面板部と前記クリップ板部がリテイナー部材の固有の弾性によって前記支持板部材を表裏両側から挟みこむため、前記リテイナー部材は所定の装着位置に安定に確保される。
また、リテイナー部材の前記本体部分の前後の側面板部の先端部には、ナット部材の前記基板部の裏面に当接する裏面板部を形成してあり、リテイナー部材の前記平面板部とナット部材の前記基板部との間にバネ部材を挿入してあるため、バネ部材の弾力によって前記ナット部材は任意の位置に停止保持させることができる。そのため、このフローティングナットの操作性は優れており、固着対象物を支持板部材に固着する作業には能率良く進められる。
請求項2の発明のフローティングナットでは、前記クリップ板部に逆止め舌片部を支持板部材側に斜めに突設し、当該逆止め舌片部の先端を前記支持板部材のボルト挿入孔の内壁面に係合可能に配置してあるため、一旦、前記支持板部材に装着して逆止め舌片部の先端を前記支持板部材のボルト挿入孔の内壁面に係合させたときには、前記リテイナー部材を前記支持板部材から離脱させることは不可能になる。このようにリテイナー部材と前記支持板部材との結合が強固であるため、リテイナー部材の位置ずれなどを懸念することなく、固着作業が能率良く行なえる。
請求項3の発明のフローティングナットでは、リテイナー部材の前記本体部分の平面板部に形成した前記開口部の縁部を、前記クリップ板部を形成した側である前記本体部分の左右一側の側面板部の中間部まで溝状に切欠いて開放部を形成してあるため、前記ナット部材の位置の確認作業、そして必要に応じての前記ナット部材の移動操作を、前記開放部を通して的確に行なうことができる。
請求項4の発明のフローティングナットでは、前記リテイナー部材の前記本体部分の平面板部に形成した前記開口部と前記開放部の幅員を越えるバネ受板を前記ナット部材の前記筒部に嵌め合わせ、前記バネ部材を前記ナット部材の前記基板部と前記バネ受板の間に挿入してあるため、前記バネ部材の弾力が偏りなく、前記本体部分の平面板部とナット部材の前記基板部とに作用し、ナット部材をより安定的に所要の位置に停止保持させることができる。
図1は本発明の一実施例に係るフローティングナットの平面図である。 図2は図1のフローティングナットの正面図である。 図3は図1のフローティングナットの左側面図である。 図4は図1のフローティングナットの底面図である。 図5は図1のフローティングナットの使用状態の縦断面図である。 固着対象物が固着される支持板部材の平面図である。 図7は図6の支持板部材の縦断面図である。
図示の実施例では、フローティングナット1はナット部材2とリテイナー部材3とからなり、ナット部材2の基板部4の中央部には円筒形の筒部5を突設してあり、筒部5の中心線上には雌ねじ部6を貫通して形成してある。リテイナー部材3の略薄箱状の本体部分7の平面板部8の中央部には、ナット部材2の筒部5よりも径の大きい円形開口部9が形成され、開口部9と筒部5の径の差分だけ、ナット部材2はリテイナー部材3の本体部分7の内部空間で前後左右に移動可能である。
リテイナー部材3の本体部分7の左側の側面板部10は、裏面方向に支持板部材11のほぼ板厚相当分だけ延長され、当該延長部分の先端部には、平面板部8と平行状にクリップ板部12が本体部分7の平面板部8の長さ相当分だけ形成されている。本体部分7の右側の側面板部13の先端部には、外向きに開いた傾斜曲げ板部14が形成されている。この傾斜曲げ板部14は、リテイナー部材3を支持板部材11のエッジ部に端面方向から嵌め合わせ装着する際に、有効なガイド手段となる。また、リテイナー部材3を支持板部材11に装着した後には、傾斜曲げ板部14の稜線部15は、支持板部材11の上面と圧接し、リテイナー部材3の保持手段となる。
リテイナー部材3の本体部分7の前後の側面板部16,17の先端部には、ナット部材2の基板部4の裏面に当接する裏面板部17,18を本体部分7の平面板部8と平行状に形成してある。リテイナー部材3のクリップ板部12には、左右方向に長い逆止め舌片部19が形成されている。逆止め舌片部19は、右側から左側に向かうほど母材のクリップ板部12から離れるように傾斜して形成されている。図示の実施例では、逆止め舌片部19の中に小舌片部20がさらに形成されている。リテイナー部材3が支持板部材11のエッジ部に嵌め合わせ装着されるとき、逆止め舌片部19と小舌片部20は支持板部材11の裏面に押されてクリップ板部12に向かって対没し、リテイナー部材3が正規位置まで嵌められたとき、逆止め舌片部19と小舌片部20は弾性復元する。
小舌片部20の先端部が支持板部材11のボルト挿入孔21の内壁面に係合する一方、逆止め舌片部19の先端部がボルト挿入孔21の裏面側縁部22に係合することによって、リテイナー部材3は、支持板部材11から抜けるのを的確に阻止される。
リテイナー部材3の本体部分7の開口部9の縁部は溝状に切欠き開放され、この開放部23は本体部分7の左側の側面板部10の中間部まで到達している。ナット部材2の筒部5には、開口部9と開放部23の幅員を越えるバネ受板24を嵌め合わせてある。板バネよりなるバネ部材25は、バネ受板24とナット部材2の基板部4との間に撓められ、バネ受板24をリテイナー部材3の本体部分7の平面板部8に圧接させ、ナット部材2の基板部4をリテイナー部材3の本体部分7の裏面板部17,18に圧接させる。
バネ受板24は、リテイナー部材3の本体部分7の左側の側面板部10、右側の側面板部13、前側の側面板部16、後側の側面板部16に当接することによって、ナット部材2の前後左右に移動限界を定めている。
裏面板部17,18にはボルト挿通部26が形成され、固着対象物27にはボルト挿入孔28が形成され、クリップ板部12の小舌片部20には、ボルト挿入孔29が形成されている。リテイナー部材3はプレス加工によって成形されている。本例では、固着用ボルト30は、支持板部材11の裏面側からねじ込まれている。これは上下反対でもよく、方向性は問わない。また、クリップ板部12の逆止め舌片部19などの弾性変形によって支持板部材の一定範囲内の板厚変更にも対応することができる。
1 フローティングナット
2 ナット部材
3 リテイナー部材
4 ナット部材の基板部
5 ナット部材の筒部
6 筒部の雌ねじ部
7 リテイナー部材の本体部分
8 本体部分の平面板部
9 平面板部の開口部
10 本体部分の左側の側面板部
11 固着対象物の支持板部材
12 リテイナー部材のクリップ板部
13 本体部分の右側の側面板部
14 本体部分の傾斜曲げ板部
15 傾斜曲げ板部の稜線部
16 本体部分の前側の側面板部
17 本体部分の後側の側面板部
18 本体部分の裏面板部
19 クリップ板部の逆止め舌片部
20 クリップ板部の小舌片部
21 支持板部材のボルト挿入孔
22 支持板部材のボルト挿入孔の裏面側縁部
23 リテイナー部材の本体部分の開放部
24 バネ受板
25 バネ部材
26 本体部分の裏面板部のボルト挿通部
27 固着対象物
28 固着対象物のボルト挿入孔
29 クリップ板部のボルト挿入孔
30 固着用ボルト

Claims (4)

  1. 基板部に突設した筒部に雌ねじ部を設けたナット部材と、ナット部材の前記基板部を前後左右に移動可能に可動に収容する本体部分を有するリテイナー部材とからなり、
    リテイナー部材の前記本体部分の平面板部にナット部材の前記筒部が前後左右に移動可能な開口部を形成し、前記本体部分の左右一側の側面板部を裏面方向に延長してその先端部に、前記平面板部と平行状にクリップ板部を形成し、前記本体部分の前後の側面板部の先端部には、ナット部材の前記基板部の裏面に当接する裏面板部を形成し、リテイナー部材の前記平面板部とナット部材の前記基板部との間にバネ部材を挿入したフローティングナット。
  2. 前記クリップ板部に逆止め舌片部を支持板部材側に斜めに突設し、当該逆止め舌片部の先端を前記支持板部材のボルト挿入孔の内壁面に係合可能に配置したことを特徴とする請求項1に記載のフローティングナット。
  3. 前記リテイナー部材の前記本体部分の平面板部に形成した前記開口部の縁部を、前記クリップ板部を形成した側である前記本体部分の左右一側の側面板部の中間部まで溝状に切欠いて開放部を形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフローティングナット。
  4. 前記リテイナー部材の前記本体部分の平面板部に形成した前記開口部と前記開放部の幅員を越えるバネ受板を前記ナット部材の前記筒部に嵌め合わせ、前記バネ部材を前記ナット部材の前記基板部と前記バネ受板の間に挿入したことを特徴とする請求項3に記載のフローティングナット。
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