JP4867635B2 - スターリングエンジン用体積変動部材 - Google Patents
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スターリングエンジンはその理論熱効率が熱機関の理論上の限界値であるカルノー機関の熱効率に等しくなるため、高い熱効率を持つ原動機を実現するべく多くの学者や研究機関によって研究開発がなされてきた。しかしながらその結果は必ずしも成功したものとは言えず、ピストンやロッド等の摺動部分からの作動ガスの漏洩、ラジエータからの過大な放熱と予期に反した低い熱効率、高度の加工技術を要する複雑な熱交換器、加速減速性能不足等、未解決の問題が数多く残っている。これらの中でもとりわけ大きな問題は摺動部分からの作動ガスの漏洩と低い熱効率に関するものである。
ピストンやロッド等の摺動部分からの作動ガスの漏洩に関しては〔特許文献1〕及び〔特許文献2〕においてベローズを使用する方法が開示されている。しかしながら〔特許文献1〕の方法は中間の空気室が一種の死空間として働き出力の低下が懸念されるものであり、〔特許文献2〕の方法はベローズに耐圧の高いものが必要でコスト高になることや内部加熱がやり難い等、いずれも実用化する上で問題の大きいものである。
本発明においては一般的なレシプロエンジンのピストンを嵌合したシリンダのように、体積を変動させる機能を持つ構成部材を体積変動部材と称するものとする。またシリンダにピストンを嵌合させて一体となしたものをピストン・シリンダと称するものとする。
上記ベローズ・ピストンのベローズの内部には水素ガス或いはヘリウムガスを作動ガスとして封入する。作動ガスの封入圧力はエンジン出力によって異なり0.1メガパスカルから20メガパスカル程度である。この作動ガスとしては若干性能は劣るが空気或いは窒素ガスを使用することも可能である。
このベローズ・ピストンの働きは、作動ガスをベローズ内に納めて作動ガスが漏れないようにすると共に、ベローズ内に封入された作動ガスの膨張によるベローズの伸長の動きを液封室内の液体充填物質を介してピストンに伝達してピストンを押し出し、逆に外部からピストンを押し込む圧縮力が働いた場合にはこの力を液体充填物質を介してベローズに伝達してベローズ内の封入ガスを圧縮するようにするものである。
このようにベローズ・ピストンは、ベローズの動きをピストンに、或いはピストンの動きをベローズに伝達するがそれを媒介するのは液体である。液体は気体と異なり圧力の変化に対して体積は殆んど変化しないため、ピストンからベローズ或いはベローズからピストンへの変位の伝達は瞬間的に行われ、しかもピストンの変位量とベローズの変位量は体積で見ると同じであるという特徴をもっている。
これによって出力を低下させることなく作動ガスが摺動部分に触れる状態を排除し作動ガスの漏洩をなくすことが可能となる。この場合、作動ガスの圧力はピストンとシリンダが担うのでベローズ自体はそれ程耐圧は必要ではなく、前記の二つの課題を解決できる。後程詳述するが、これら以外にもその効果として等温膨張、等温圧縮による熱効率の上昇が期待できるものである。
(1)作動ガスはベローズ内にありピストンやロッド等の外気につながった摺動部分に接触することはない。したがってピストンやロッド等の摺動部分から作動ガスが漏洩することはない。
(2)液体は圧力が変化しても体積は殆んど変化しないという性質があり、ピストン・シリンダ内に充填された液体の体積は作動ガスの圧力が変化しても殆んど変化せず、ベローズ内の作動ガスの圧力変化を直ちにピストン及びこれにつながる駆動装置に伝達できる。従って死空間の増加はなく出力が低下することはない。
(3)ベローズは液体を充填したピストン・シリンダ内に納められているため、ベローズの内圧にほぼ等しい圧力がシリンダ内部に発生して圧力が相殺されるので、作動ガスの圧力が高い場合でもベローズの耐圧はそれ程高くなくて良い。このためベローズは薄い金属で作ることが出来る。このことはベローズの熱抵抗が小さくなることを意味している。
(4)充填液に油を使用した場合には、ピストンとシリンダとの摺動部分は油潤滑されることになるため、ピストンの潤滑が良くなりサイドスラスト問題が解消される。このため駆動装置にロンビック機構やクロスヘッド機構、スコッチヨーク機構等の複雑な仕組みを使用する必要がなくなり、通常のエンジンに使われているクランク機構が使用できる。勿論従来使われてきた上記の諸機構も使用可能である。
(5)ベローズの周囲の液封室に充填する液体を外部に設けた熱交換器に送って循環させることで、等温圧縮、等温膨張式スターリングエンジンが簡単に実現できる。これにより熱効率の向上が期待出来るので冒頭で述べた“ラジエータからの過大な放熱と低い熱効率”という問題が解決出来ることになる。この場合ベローズの襞によって伝熱面積が大きくなるため伝熱性能の向上が期待できる。
(6)熱交換器には液体だけが流れ作動ガスは流れて行かないため熱交換器のために死空間が増大するということはない。このため熱伝達係数が低い燃焼ガスに対しては伝熱面積の大きい大型の熱交換器を使用して熱交換性能を良くすることが出来る。
(7)動力損失が大きいロッドシールやメカニカルシールが不要なため熱効率が向上する。
従来のスターリングエンジンでは圧縮された作動ガスを加熱する際、作動ガスが高温熱交換器や再生熱交換器を通る前に低温熱交換器を通る構造になっており、断熱圧縮がなされると断熱圧縮で温度が上がった作動ガスが持つ熱を低温熱交換器で冷却して捨てることになるからである。断熱膨張の場合には熱の損失はないが、断熱膨張で温度が下がった作動ガスを加熱してから再生熱交換器に送ることになるわけで、余分な熱を再生熱交換器に貯えなければならないことになり、再生熱交換器の容量を大きくしなければならないという問題が発生する。
これらの問題を解決するためにスターリングエンジンの基本に戻り、作動ガスの等温膨張、等温圧縮を実現することが必要になるわけである。
本機は公知のベータ型スターリングエンジンと比較して、ベローズ・ピストンで動力を発生させベローズ・ピストン内で作動ガスを冷却している点が異なっているが、スターリングエンジンとしての作動原理等は公知のベータ型スターリングエンジンと同じである。駆動装置は公知のロンビック機構等が使用出来るが本発明の対象ではないので省略する。以下、本機の構造について図面に沿って説明する。
シリンダ111とパワーピストン113によってつくられる空間には薄いステンレス鋼板で造った外ベローズ101と内ベローズ102が納められており、外ベローズ101とシリンダ111の内面との間の液封室115には粘度の低いスピンドル油等の機械油を充填液として充填し、外ベローズ101と内ベローズ102との間の低温空間116にはヘリウムガス又は水素ガスを封入する。低温空間116と高温空間117は後述するようにつながっておりこのガスは同時に高温空間にも封入されることになる。このガスはスターリングエンジンの作動ガスとして機能するものであり、性能を若干犠牲にしてもよければ空気や窒素ガスを使用してもよい。
高温の作動ガスがディスプレーサピストン110に押されて低温空間116に向かうときには作動ガスが持っている熱をディスプレーサピストン110に与え、逆に低温の作動ガスがディスプレーサピストン110に押されて高温空間117に向かうときには与えた熱をディスプレーサピストン101から受け取るようになっている。このようにディスプレーサピストン110の内部に作動ガスを通す方法は〔非特許文献1〕にも記されており公知のものである。
本機は作動ガスに対しては摺動面がなくシールは不用であるが、シリンダ111とパワーピストン113との摺動面及びパワーピストンロッド114とディスプレーサピストンロッド118との摺動面についてはシールが必要である。しかしこのシールは液漏れを防ぐためのものでよく、水素ガスやヘリウムガスに対するオイルレスシールに比べると非常に簡単である。
作動ガスがディスプレーサピストン110によって高温空間117に送り込まれることによって作動ガスの圧力が高くなりベローズ下面103を押し下げるが、この動きは直ちに液封室115に充填された充填液に伝わりパワーピストン113を押し下げ、パワーピストンロッド114を通して駆動装置(図示せず)に伝わり、駆動装置から出力として取り出される訳であるが、これらは公知のスターリングエンジンと同じである。
シリンダ211とピストン213によってつくられる空間には薄いステンレス鋼板で造ったベローズ201が納められ、ベローズ201内部のガス空間216にはヘリウムガスを封入する。ベローズ201とシリンダ211の内面との間の液封室215に充填する液体については段落番号〔0010〕で述べたとおりである。
このベローズ・ピストンは別に設けた熱交換器で充填液の加熱或いは冷却を行うが、作動ガスの加熱或いは冷却は体積変動部材の内部で行っているため、これを使用したスターリングエンジンは動作的には内部加熱冷却型である。
基本的には〔実施例2〕と同じであり、ベローズ301、シリンダ311、ピストン313、液封室315、ガス空間316で構成されている。充填液は圧力と熱を伝達するだけであり循環のための液出口、液戻り口は付いていない。充填液が循環されないため伝熱性能は少し劣るが、ピストンの上下運動で充填液が揺動されるためある程度の伝熱性は確保できる。充填液は〔実施例2〕と同じく使用温度によって変更する必要がある。
このベローズ・ピストンではシリンダ311の外壁を直接加熱或いは冷却するが、作動ガスは充填液を介して体積変動部材内部で加熱或いは冷却されることになるため、これを使用したスターリングエンジンは〔実施例2〕と同じく動作的には内部加熱冷却型である。
作動ガスは外部に設けられた熱交換器によって加熱冷却されることになるため、これを使用したスターリングエンジンは外部加熱冷却型となる。
この例では外部に取り付けるのは再生熱交換器だけであり作動ガスの加熱冷却はベローズ内部で行っており内部加熱冷却型アルファ型スターリングエンジンである。作動ガスを体積変動部材の内部で加熱冷却することが出来るため、等温膨張、等温圧縮となる。
この図ではベローズ・ピストンはフィン型になっており、高温側ベローズ・ピストン501は外部高温熱源511によって加熱され、低温側ベローズ・ピストン502は外部低温熱源513によって冷却されているが、図2に示した循環型ベローズ・ピストンを使用して別に設けた熱交換器によって充填液を加熱或いは冷却することも出来る。高温側ベローズ・ピストン501と低温側ベローズ・ピストンは再生熱交換器512を間に入れて連結されている。充填液を介して体積変動部材内部に存在する作動ガスを加熱冷却するためこの方式のスターリングエンジンは内部加熱冷却型となる。
高温側ベローズ・ピストン501及び低温側ベローズ・ピストン502はコネクティングロッド531によってクランクシャフト532に連結されフライホイール533を駆動する。高温側ベローズ・ピストン501の位相が低温側ベローズ・ピストン502の位相に対して90°進むように設定されている。
高温側ベローズ・ピストン601は図4に示したフィンが付いていないタイプのものを使用する。図3に示したフィン付きの物を使用すると高温側のベローズ・ピストンではフィンから熱が放散されて熱効率が低下する。
ベローズ・ピストンをピストン・シリンダに置き換えると通常のスターリングエンジンと同じである。駆動装置は〔実施例5〕と同じであり、高温側ベローズ・ピストンの位相は低温側ベローズ・ピストンに対して90°進ませてある。
高温側ベローズ・ピストン701と低温側ベローズ・ピストン702は、高温熱交換器711、再生熱交換器712、低温熱交換器713を間に入れて連結されている。出力用ベローズ・ピストン703は図7のように低温側ベローズ・ピストン702と並列になるように接続されている。高温側ベローズ・ピストン701と低温側ベローズ・ピストン702とは180°の位相差がありコンプリメンタリな関係にある。出力用ベローズ・ピストン703の位相は高温側ベローズ・ピストン701に対して90°遅らせてある。これらはクランクシャフトで実現しているがクランクシャフト自体は公知の技術であり詳細は省略する。
本例は〔実施例6〕のアルファ型スターリングエンジンに更に1個のベローズ・ピストンを加えたものと構造的には同じである。
回転斜板式複動4気筒型スターリングエンジンに相当するスターリングエンジンは、回転斜板の片側に4個の高温側ベローズ・ピストンを等間隔に配備し、回転斜板の反対側にこれと向き合うように4個の低温側ベローズ・ピストンを配備することで構成することが出来る。それぞれの高温側ベローズ・ピストンは再生熱交換器を間に入れて隣に位置する低温側ベローズ・ピストンに連結する。右隣、左隣の何れの側に連結していっても良いが連結を逆にすると回転は逆になる。これらのベローズ・ピストンは、循環型、フィン型、外部加熱冷却型の何れでもよいが、図4に示す外部加熱冷却型を使用する場合には当然のことながら再生熱交換器の前後に高温熱交換器と低温熱交換器を取り付ける必要がある。また循環型とする場合には、それぞれのベローズ・ピストン毎に温度或いは圧力変動パターンが異なるため、それぞれのベローズ・ピストン毎に循環ポンプと熱交換器が必要であり循環ポンプや熱交換器を共用することは出来ない。
110 ディスプレーサピストン 111 シリンダ 112 フィン
113 パワーピストン 114 パワーピストンロッド 115 液封室
116 低温空間 117 高温空間 118 ディスプレーサピストンロッド
120 液出口 121 液戻り口 201 ベローズ 203 ベローズ下面
210 通気口 211 シリンダ 213 ピストン
214 ピストンロッド 215 液封室 216 ガス空間 220 液出口
221 液戻り口 301 ベローズ 311 シリンダ 312 フィン
313 ピストン 315 液封室 316 ガス空間 401 ベローズ
411 シリンダ 413 ピストン 415 液封室 416 ガス空間
501 高温側ベローズ・ピストン 502 低温側ベローズ・ピストン
511 外部高温熱源 512 再生熱交換器 513 外部低温熱源
531 コネクティングロッド 532 クランクシャフト
533 フライホイール 601 高温側ベローズ・ピストン
602 低温側ベローズ・ピストン 611 高温熱交換器
612 再生熱交換器 613 低温熱交換器
701 高温側ベローズ・ピストン 702 低温側ベローズ・ピストン
703 出力ピストン 711 高温熱交換器 712 再生熱交換器
713 低温熱交換器
Claims (1)
- ピストンを嵌合したシリンダ内にベローズを納め、該ベローズの壁面と該シリンダ内面及び該ピストン上面によって形成される領域全体にわたって使用条件下において液体である物質を充填し該ベローズの内部に作動ガスを封入している構造からなり、該ベローズの内部に封入された該作動ガスの膨張による該ベローズの伸長の動きを該液体充填物質を介して該ピストンに伝達して該ピストンを押し出し、外部からの該ピストンを押し込む圧縮力を該液体充填物質を介して該ベローズに伝達して該ベローズ内に封入された該作動ガスを圧縮する一連のサイクルを構成し、該作動ガスの膨張の際に得られる仕事量と該作動ガスの圧縮の際に要する仕事量との差を出力として取り出すスターリングエンジンに使用する体積変動部材であって、ピストンを嵌合したシリンダ内に納められたベローズの壁面と該シリンダ内面及び該ピストン上面によって形成される領域全体にわたって充填された使用条件下で液体である物質を、該領域と該シリンダの外部に設けられた高温熱交換器又は低温熱交換器との間を循環させることによって、該ベローズ内に封入された作動ガスを加熱又は冷却するようにしたスターリングエンジンに使用する体積変動部材。
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