JP4866634B2 - 含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体の製造方法 - Google Patents

含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、含フッ素化合物の製造方法に関し、詳しくは含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体の製造方法に関する。
含フッ素化合物は特異的な化学的安定性、低誘電率、低屈折率、潤滑性、撥水撥油性、非粘着性を有し、フッ素ゴム、プレナムケーブル、光ファイバー、反射防止膜、ペリクル材料等、さまざまな材料に応用されている。そのため、含フッ素モノマーの開発が近年活発に行われている。含フッ素モノマーの一つに、アセタール型含フッ素ジエンCF2=CF−O−CF2−O−CF=CF2がある(特許文献1参照)。このモノマーはゲル化することなく環化重合し、得られるポリマーは透明性、溶剤溶解性、化学安定性、熱安定性に優れていることが報告されている。
しかし、このモノマーの製造には、爆発性のOF結合を有するCF2(OF)2を用いるため、安全性に問題があった。さらに、CF2(OF)2とアルケンとの反応において、極度の低温を必要とし(−50℃〜−90℃)、かつ選択性がかなり低く低収率であるため、製造適性に乏しかった。また、特許文献1記載の製造方法では、酸素原子に挟まれた部分が−CF2−である化合物しか合成できず、合成できる含フッ素モノマーの種類が制限されるという問題点もあった。
米国特許第5,589,557号明細書
従って、本発明の目的は、CF2=CF−O−CF2−O−CF=CF2を含めた含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体の安全かつ効率的な製造方法を提供することにある。また、本発明は、CF2=CF−O−CF2−O−CF=CF2以外の含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため種々検討を重ねた結果、下記手段により達成されることを見出した。
(1)下記の<工程1>、<工程2>及び<工程3−1>を経由することを特徴とする下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
<工程1>下記一般式(I)で表される化合物をフッ素化して下記一般式(II)で表される化合物を得る工程。
<工程2>下記一般式(II)で表される化合物の熱分解又は/及び加水分解により、下記の一般式(III−A)又は一般式(III−B)で表される化合物を得る工程。
<工程3−1>下記の一般式(III−A)又は一般式(III−B)で表される化合物の熱分解により下記一般式(IV)で表される化合物を得る工程。
Figure 0004866634
(一般式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基を表す。R及びRは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。Yはアルコキシカルボニル基又は−CHOCOR(Rはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す)を表す。)
Figure 0004866634
(一般式(II)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。X1Fはハロゲン原子を表す。Yは含フッ素アルコキシカルボニル基又は−CFOCOR3F(R3Fは含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基を表す)を表す。<工程1>の前後で、一般式(I)中のX、Y、R及びRが変化しない場合、X1F、Y、R1F及びR2Fは一般式(I)中のX、Y、R及びRと同義である。)
Figure 0004866634
(一般式(III−A)中、X1F、R1F及びR2Fは一般式(II)中のX1F、R1F及びR2Fと同義であり、X1Fはハロゲン原子を表し、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。X2Fは、ハロゲン原子を表す。)
Figure 0004866634
(一般式(III−B)中、X1F、R1F及びR2Fは一般式(II)中のX1F、R1F及びR2Fと同義であり、X1Fはハロゲン原子を表し、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Mは金属化合物を表す。)
Figure 0004866634
(一般式(IV)中、R1F及びR2Fは一般式(II)中のR1F及びR2Fと同義であり、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
(2)下記の<工程1>及び<工程3−2>を経由することを特徴とする下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
<工程1>下記一般式(I)で表される化合物をフッ素化して下記一般式(II)で表される化合物を得る工程。
<工程3−2>下記の一般式(II)で表される化合物の熱分解により下記一般式(IV)で表される化合物を得る工程。
Figure 0004866634
(一般式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基を表す。R及びRは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。Yはアルコキシカルボニル基又は−CHOCOR(Rはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す)を表す。)
Figure 0004866634
(一般式(II)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。X1Fはハロゲン原子を表す。Yは含フッ素アルコキシカルボニル基又は−CFOCOR3F(R3Fは含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基を表す)を表す。<工程1>の前後で、一般式(I)中のX、Y、R及びRが変化しない場合、X1F、Y、R1F及びR2Fは一般式(I)中のX、Y、R及びRと同義である。)
Figure 0004866634
(一般式(IV)中、R1F及びR2Fは一般式(II)中のR1F及びR2Fと同義であり、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
(3下記一般式(VI−1)又は(VI−2)の少なくとも一方で表される繰返し単位を含むポリマーの製造方法であって、該ポリマーの重量平均分子量が1000〜100000であり、前記(1)又は(2)に記載の製造方法製造された前記一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を重合させることを特徴とする下記一般式(VI−1)又は(VI−2)の少なくとも一方で表される繰返し単位を含むポリマーの製造方法
Figure 0004866634
(一般式(VI−1)及び(VI−2)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明の製造方法によれば、前記一般式(IV)で表される含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体化合物を安価かつ効率的に製造することができる。また、前記一般式(IV)において酸素原子に挟まれた部分が−CF2−である化合物以外の種々の含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体を提供することができる。
本発明の製造方法で製造された含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体はゲル化することなく環化重合させることができ、この化合物を原料として得られるポリマーは透明性、溶剤溶解性、化学安定性、熱安定性に優れる。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
ここで、一般式(IVa)で表される化合物は、以下の化合物である。
Figure 0004866634
(一般式(IVa)中、R 1F 及びR 2F は、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R 1F 及びR 2F は、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。ただし、R 1F 及びR 2F がともにフッ素原子であることはない。)
まず、前記一般式(I)、(II)、(III−A)、(III−B)、(IV)又は(IVa)のいずれかで表される化合物についてそれぞれ詳細に述べる。
1及びR2におけるアルキル基は、直鎖又は分岐のアルキル基であり、無置換のアルキル基であっても、置換基を有するアルキル基であっても良い。該アルキル基は、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が1〜30のアルキル基が好ましく、炭素原子数1〜20のアルキル基がさらに好ましく、炭素原子数1〜10のアルキル基が特に好ましい。アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどが含まれる。
置換基を有するアルキル基の該置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル又はアリールスルフィニル基、アルキル又はアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール又はヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、シリル基などが挙げられる。
置換基を有するアルキル基の上記置換基を以下に、さらに詳細に説明する。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルキル基で、好ましくは炭素数1〜30のアルキル基であり、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチルが挙げられ、多シクロアルキル基、例えば、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基で、例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)やトリシクロアルキル基等の多環構造の基が挙げられる。好ましくは単環のシクロアルキル基、ビシクロアルキル基であり、単環のシクロアルキル基が特に好ましい。)、
アルケニル基(直鎖または分岐の置換もしくは無置換のアルケニル基で、好ましくは炭素数2〜30のアルケニル基であり、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基で、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イルが挙げられ、多シクロアルケニル基、例えば、ビシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基で、例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)やトリシクロアルケニル基であり、単環のシクロアルケニル基が特に好ましい。)アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、
アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基で、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5〜7員の置換もしくは無置換、飽和もしくは不飽和、芳香族もしくは非芳香族、単環もしくは縮環のヘテロ環基であり、より好ましくは、環構成原子が炭素原子、窒素原子および硫黄原子から選択され、かつ窒素原子、酸素原子および硫黄原子のいずれかのヘテロ原子を少なくとも一個有するヘテロ環基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、
アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基で、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、2,4−ジ−t−アミルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、
アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基であり、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基で、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、炭素数0〜30のヘテロ環アミノ基であり、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ、N−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基であり、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ基、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチル−メトキシカルボニルアミノ)、
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基で、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル又はアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基であり、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、
アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基で、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基で、ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましく、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基で、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、
アルキル又はアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基であり、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル又はアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基であり、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であり、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、
アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール又はヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基(ヘテロ環部は前述のヘテロ環基で説明されたヘテロ環部が好ましい)、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のイミド基で、例えばN−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基で、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基で、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基で、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基で、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
上記の官能基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去り更に上記のいずれかの基で置換されていてもよい。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられ、具体的には、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
1及びR2におけるシクロアルキル基には、置換基を有するシクロアルキル基及び無置換のシクロアルキル基が含まれる。前記シクロアルキル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基が好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが含まれる。これらシクロアルキル基が有しても良い置換基の例は、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものがあげられる。
1及びR2におけるアルケニル基には、置換基を有するアルケニル基及び無置換のアルケニル基が含まれる。前記アルケニル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が2〜30のアルケニル基が好ましい。アルケニル基の例には、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイルなどが含まれる。これらアルケニル基が有しても良い置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
1及びR2におけるアルキニル基には、置換基を有するアルキニル基及び無置換のアルキニル基が含まれる。置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が2〜30のアルキニル基が好ましい。アルキニル基の例には、エチニル、プロパルギルなどが含まれる。これらアルキニル基が有しても良い置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
1及びR2におけるアリール基には、置換基を有するアリール基及び無置換のアリール基が含まれる。アリール基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が6〜30のアリール基が好ましい。アリール基の例には、フェニル、p−トリル、ナフチルなどが含まれる。これらアリール基が有しても良い置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
1及びR2におけるアルコキシカルボニル基には、置換基を有するアルコキシカルボニル基及び無置換のアルコキシカルボニル基が含まれる。アルコキシカルボニル基としては、置換基の炭素原子を除いた炭素原子数が2〜30のアルコキシカルボニル基が好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニルなどが含まれる。これらアルコキシカルボニル基が有しても良い置換基の例には、前記アルキル基の置換基の例として挙げたものが挙げられる。
上記のうち、R1及びR2は、水素原子、置換基を除いた炭素数1〜5の直鎖又は分岐のアルキル基、置換基を除いた炭素数3〜8のシクロアルキル基、置換基を除いた炭素数2〜5のアルケニル基、及び置換基を除いた炭素数2〜5のアルコキシカルボニル基が好ましく、水素原子、置換基を除いた炭素数1〜5のアルキル基及び置換基を除いた炭素数3〜8のシクロアルキル基が最も好ましい。
1は水素原子又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)を表す。これらのうち、水素原子、フッ素原子及び塩素原子が好ましく、水素原子が最も好ましい。
Yはアルコキシカルボニル基又は−CH2OCOR3を表す。Yにおけるアルコキシカルボニル基の例としては、前記のR1及びR2で挙げたアルコキシカルボニル基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。−CH2OCOR3中、R3はアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。R3におけるアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基の例としては、それぞれ、前記のR1及びR2で挙げたアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
一般式(II)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。R1F及びR2Fにおける含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基とは、R1及びR2におけるアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基の水素原子、不飽和結合、及びその他の反応点をフッ素で置換したものである。R1F及びR2Fのうち、フッ素原子、直鎖及び分岐の含フッ素アルキル基、置換基を除いた炭素数3〜8の含フッ素シクロアルキル基及び置換基を除いた炭素数1〜5の含フッ素アルコキシ基が好ましく、水素原子、置換基を除いた炭素数1〜5の含フッ素アルキル基及び置換基を除いた炭素数3〜8の含フッ素シクロアルキル基が最も好ましい。
1Fはハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)を表す。これらのうち、フッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
Fは含フッ素アルコキシカルボニル基又は−CF2OCOR3Fを表す。YFにおける含フッ素アルコキシカルボニル基の例としては、前記のR1及びR2で挙げた含フッ素アルコキシカルボニル基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。YFにおける−CF2OCOR3F中、R3Fは含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基を表す。R3Fにおける含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基は、前記のR1及びR2で挙げた含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基が挙げられ、好ましい範囲も同様である。なお、<工程1>の前後で、一般式(I)中のX1、Y、R1及びR2が変化しない場合、X1F、YF、R1F及びR2Fは一般式(I)中のX1、Y、R1及びR2と同義である。
一般式(III−A)中、X1F、R1F及びR2Fは一般式(II)中のX1F、R1F及びR2Fと同義であり、好ましい範囲も同様である。X2Fは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子)を表す。ハロゲン原子のうち、フッ素原子及び塩素原子が好ましく、フッ素原子が最も好ましい。
一般式(III−B)中、X1F、R1F及びR2Fは一般式(II)中のX1F、R1F及びR2Fと同義であり、好ましい範囲も同様である。Mは金属化合物を表す。金属化合物には、金属原子及び錯体が含まれる。これら金属化合物に含まれる金属の例としては、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs及びFr)、アルカリ土類金属(Be、Mg、Ca、Sr、Ba及びRa)、Cu、Ag、Au、Al、Ti等が挙げられる。金属原子の価数が二価以上の場合、金属原子が他の配位子を有して錯体化していることが好ましい。例えば、Mgの場合、Mg中心に一般式(III−B)のカルボキシル基がキレート状に配位しているか、MgBrのように他の原子を有していることが好ましい。
一般式(IV)及び(IVa)中、R1F及びR2Fは一般式(II)中のR1F及びR2Fと同義であり、好ましい範囲も同様である。
以下に、前記一般式(I)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 0004866634
以下に、前記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 0004866634
以下に、前記一般式(III−A)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 0004866634
以下に、前記一般式(III−B)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 0004866634
以下に、前記一般式(IV)又は(IVa)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明が限定されるものではない。
Figure 0004866634
次に、前記一般式(I)、(II)、(III−A)、(III−B)、(IV)又は(IVa)のいずれかで表される化合物の合成法について、詳細に述べる。
前記一般式(I)で表される化合物は、下記一般式(V)で表される化合物を以下の(方法1−1)、及び必要により(方法1−2)で処理することによって合成することが可能である。
Figure 0004866634
一般式(V)中、X1及びYは一般式(I)中のX1及びYと同義であり、好ましい範囲も同様である。
Figure 0004866634
(方法1−1)一般式(V)で表される化合物(例えば、乳酸エステル又は1−カルボキシ−2−プロパノール等)をアセタール化する方法。
(方法1−2)一般式(V)で表される化合物(例えば、乳酸エステル等)をアセタール化し、その後、還元、エステル化を経由する方法。
前記(方法1−1)により、前記一般式(V)で表される化合物から前記一般式(I)で表される化合物を得ることができる。また、前記(方法1−2)により、前記一般式(I)におけるYがアルコキシカルボニル基である化合物から前記一般式(I)におけるYが−CH2OCOR(Rはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す)である化合物を得ることができる。
(方法1−1)及び(方法1−2)におけるアセタール化について述べる。アセタール化は、任意の方法を用いることができ、例えば、酸存在下、アルコールとカルボニル化合物及びその等価体と反応させる方法や、アルコールとチオホスゲンを反応させた後、塩素と反応させ、必要によりフッ化アンチモンと反応させる方法などが挙げられる。これらのうち、酸存在下、アルコールとカルボニル化合物及びその等価体と反応させる方法が好ましく、特に、カルボニル化合物及びその等価体が、アセタール化合物であることが最も好ましい。酸としては任意の酸を用いることができ、硫酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、Nafion(商標名)等が挙げられるが、硫酸、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩が好ましく、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩が最も好ましい。p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩は、反応系内で、p−トルエンスルホン酸とピリジンを混合して発生させても良い。反応は、副生するアルコールを除去しながら行うのが好ましい。アルコールの除去の方法として、ディーンスターク管を用いて留去する方法、モレキュラーシーブ等の吸着剤を用いて除去する方法、分離膜を用いて除去する方法等が挙げられるが、ディーンスターク管を用いて留去する方法が好ましい。溶媒には、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、ハロゲン系溶媒(例えば、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等)が挙げられる。これらのうち、エステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類が好ましく、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタンが最も好ましい。溶媒の使用量は、特に制限されないが、一般式(V)で表される化合物に対し、体積にして0.01倍以上100倍以下の量を用いることが好ましく、0.1倍以上50倍以下がより好ましい。
反応温度は、溶媒又は副生するアルコールの沸点以上であることが好ましく、溶媒の沸点〜溶媒の沸点+20℃が好ましい。反応終了はNMR、GLC、HPLC、TLC、GC−MASS、その他の方法によって確認することができる。通常、本反応に要する時間は、反応条件に左右されるので一義的には決まらないが、約1〜24時間である。
反応終了後、反応溶液に水又は炭酸水素ナトリウム水溶液を添加し、抽出操作によって水洗することが好ましい。抽出操作に用いる有機溶媒は生成物を反応溶液から取り出すことが出来れば特に制限なく使用できるが、アルカン系溶媒(ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン等)、アリール系溶媒(トルエン、キシレン、メシチレン等)、エステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸ブチル等)が好ましく、さらにヘキサン、トルエン、キシレン、酢酸エチルが特に好ましい。抽出操作に用いる有機溶媒の量は、生成した一般式(I)で表される化合物に対して、体積にして0.01倍以上100倍以下の量を用いることが好ましく、0.1倍以上50倍以下がより好ましい。
次に、(方法1−2)における還元について詳しく述べる。還元は、エステル部を還元できる方法であれば、特に制限ないが、特に、LiAlH4を用いる方法が好ましい。LiAlH4を用いる場合、その使用量は、Yがアルコキシカルボニル基である一般式(I)で表される化合物に対して1.0〜4.0モル当量用いることが好ましく、1.0〜2.0モル当量用いることが最も好ましい。反応温度は、−20〜50℃であることが好ましく、−10℃〜35℃であることが最も好ましい。反応溶媒は、脱水されたエーテル系溶媒(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等)が好ましく、ジエチルエーテル及びテトラヒドロフランが最も好ましい。反応は、不活性ガス雰囲気下、溶媒で希釈された一般式(I)におけるYがアルコキシカルボニル基である化合物を、テトラヒドロフランとLiAlH4の混合溶液に滴下するのが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウム等が挙げられるが、窒素が経済的で最も好ましい。
次に、(方法1−2)におけるエステル化について詳しく述べる。エステル化は任意の方法を用いることができ、例えば、酸ハライドを用いる方法、エステルとのエステル交換する方法、カルボン酸と縮合剤を用いる方法等が挙げられ、特に酸ハライドを用いる方法が簡便で好ましい。酸ハライドは、Yがアルコキシカルボニル基である一般式(I)で表される化合物に対して、2.0〜5.0モル当量用いることが好ましく、2.0〜3.0モル当量用いることが最も好ましい。反応は、塩基存在下で行うことが好ましい。塩基としては、ピリジン系化合物(ピリジン、α−ピコリン、γ−ピコリン、2,3−ルチジン、2,4−ルチジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン等)、アミン系化合物(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、イソプロピルジエチルアミン等)、炭酸塩(例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム等)等が挙げられるが、ピリジン系化合物、アミン系化合物が好ましく、特に、ピリジン、トリエチルアミンが最も好ましい。これら塩基は、単独で用いても、混合して用いても良い。塩基の使用量は、Yがアルコキシカルボニル基である一般式(I)で表される化合物に対して、2.0〜5.0モル当量用いることが好ましく、2.0〜3.0モル当量用いることが最も好ましい。反応温度は、−20〜50℃であることが好ましく、−10℃〜35℃であることが最も好ましい。反応終了はNMR、GLC、HPLC、TLC、GC−MASS、その他の方法によって確認することができる。通常、本反応に要する時間は、反応条件に左右されるので一義的には決まらないが、約1〜24時間である。
次に、一般式(II)で表される化合物の合成法について詳細に述べる。一般式(II)で表される化合物は、前記<工程1>(一般式(I)で表される化合物のフッ素化)を経由して合成することができる。フッ素化剤は、炭素−水素結合と反応して炭素−フッ素結合に変換できるものなら特に制限なく用いることができる。このようなフッ素化剤の例としては、フッ素ガス、XeF2、CoF3等が挙げられるが、フッ素ガスが経済的な観点から特に好ましい。フッ素化の方法としては、特に制限がないが、次の二つの方法が考えられる。
(方法2−1)基質を含む系にフッ素化剤を添加していく方法。
(方法2−2)溶媒に、基質を含む系とフッ素化剤を同時に添加して反応させる方法。
これらのうち、(方法2−2)が収率や効率の点から最も好ましい。フッ素化剤の使用量は、基質の反応点に対し、1.0〜5.0モル当量であることが好ましく、1.0〜2.0モル当量であることが最も好ましい。フッ素化の反応温度は、−50〜100℃で行うことが好ましく、−10℃〜50℃で行うのが最も好ましい。
溶媒は、オゾン層を破壊することがなく、かつ実質的にフッ素と反応しない溶媒であることが好ましい。それらの例として、ペルフルオロアルカン(構造異性体混合物であっても良い。例としてはペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン)、ペルフルオロシクロアルカン(構造異性体であっても良い。例としては、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロシクロヘプタン、ペルフルオロシクロオクタン)、ペルフルオロエーテル(構造異性体であっても良い。例としては、FluorinertTM FC−75(商品名、スリーエム社製)、KrytoxTM(商品名、デュポン社製))、ペルフルオロアルキルアミン(構造異性体混合物であっても良い。例としてはペルフルオロトリブチルアミン)、ペルフルオロ酸フルオリド(構造異性体混合物であっても良い。例としては、ペルフルオロ(2−メチル−3−オキサヘキサノイル)フルオリド、ペルフルオロ(2,5,8−トリメチル−3,6,9−トリオキサドデカノイル)フルオリドなど)、フッ化水素、水、トリフルオロ酢酸、超臨界二酸化炭素、アセトニトリルなどが挙げられる。上記に挙げた溶媒のうち、一部のフッ素を水素に置き換えたもの(例えば、6H−トリデカフルオロヘキサン、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロピオニルフルオリドなど)や、一部のフッ素をハロゲンに置き換えたもの(例えば、ペルフルオロオクチルヨージド、ペルフルオロヘキシルブロミドなど)などといった、部分的にフッ素と反応する箇所を有する溶媒も、場合により用いることが可能である。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いても良い。上記にあげた溶媒のうち、ペルフルオロアルカン、ペルフルオロシクロアルカン、ペルフルオロエーテル、ペルフルオロアルキルアミン及びペルフルオロ酸フルオリドが最も好ましい。用いる溶媒の量としては、好ましくは注入する基質体積の0.1〜500倍の体積であり、より好ましくは1〜300倍の体積であり、さらに好ましくは3〜200倍である。
フッ素化反応が進行しにくい場合は、単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質の存在下で反応を行うと、フッ素化反応を促進することができる。単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質とは、フッ素と容易に反応できる箇所を多く有している化合物をいう。それらの例として、フッ素原子、酸素原子および不飽和結合を含んでもよい炭素数5〜30の直鎖、分岐鎖、または環状の炭化水素化合物(但し、分子内に一つ以上の不飽和結合または一つ以上のC−H結合を有している)であり、具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘキセン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、ヘキサフルオロイソプロピルメチルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエチルエーテル、ベンゼン、トルエン、フルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、4-フルオロトリメチルベンゼン、ヘキサフルオロベンゼンを挙げることができる。これらの化合物は、溶媒に可溶であっても不溶であっても、反応を加速することができれば特に制限なく使用することができるが、溶媒に可溶であることが好ましい。単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質は、固体や溶融した含フッ素ポリマーに混合したり、含フッ素ポリマー溶液に添加する方法がある。
本発明においてはフッ素ガスを希釈せずそのまま用いても良いが、不活性ガスと混合して用いる方が安全である。不活性ガスとしては窒素ガスまたはヘリウムガスが好ましく、経済的観点から窒素ガスが好ましい。不活性ガス中のフッ素ガスの濃度としては、好ましくは10〜50体積%であり、より好ましくは20〜30体積%である。
反応終了後、フッ素化が完全に進行していない場合は、前記の単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質をフッ素化剤と同時に反応系に添加することによって反応を終了させることができる。単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質の使用量は、反応基質の反応性に依存するため、一概には決定できないが、概ね、基質の反応点に対し、単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質の反応点が0.010〜1.0モル当量になるように用いることが好ましく、0.10〜0.50モル当量になるように用いることが最も好ましい。単独ですみやかにフッ素化反応が進行する基質の導入方法は、溶媒に溶解もしくは分散させて導入してもよく、ニートで導入しても良い。
次に、一般式(III−A)及び一般式(III−B)で表される化合物の合成法について詳細に述べる。
一般式(III−A)及び一般式(III−B)で表される化合物は、<工程2>(一般式(II)で表される化合物を熱分解又は/及び加水分解する方法)を経て合成することができる。まず、一般式(II)で表される化合物の熱分解による一般式(III−A)で表される化合物の合成法について述べる。
熱分解は、基質をそのまま加熱する方法、及び、金属フッ化物存在下、加熱する方法が挙げられる。基質をそのまま加熱して熱分解する方法は任意の方法を用いることができ、例えば公知例(J.Am.Chem.Soc.1998,120,7117.に記載された方法)を用いることができる。つまり、外温を200℃以上で分解した後、蒸留操作により反応生成物を取り出すという方法である。金属フッ化物存在下、加熱する方法は任意の方法を用いることができ、例えば公知例(J.Fluorine.Chem.2001,112,109.に記載された方法)を用いることができる。この方法は、金属フッ化物を用いることにより、100〜150℃付近で熱分解させるという方法である。用いる金属フッ化物としては、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化セシウムが挙げられ、特に、フッ化ナトリウムがコスト的な観点から最も好ましい。触媒の使用量は、一般式(II)で表される化合物に対し、0.010〜1.0モル当量が好ましく、0.10〜0.50モル当量が最も好ましい。また、触媒に他のハロゲン化金属(塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム等)を用いることにより、酸クロリド、酸ブロミド及び酸ヨージドが得られる可能性がある。反応時間は、基質の反応性や反応条件によるため、一概に決めることはできないが、概ね、0.5〜10時間である。
次に、一般式(II)で表される化合物の加水分解による一般式(III−B)で表される化合物の合成法について述べる。加水分解の方法としては任意の方法を用いることができ、例えば、一般式(II)で表される化合物とアルカリ水溶液を混合する方法、一般式(II)で表される化合物とアルコールを反応させてエステル化した後、アルカリ水溶液を混合する方法、一般式(II)で表される化合物を熱分解して一般式(III−A)で表される化合物に変換後、アルカリ水溶液を混合する方法等が考えられる。これらのうち、一般式(II)で表される化合物とアルコールを反応させてエステル化した後、アルカリ水溶液を混合する方法、一般式(II)で表される化合物を熱分解して一般式(III−A)で表される化合物に変換後、アルカリ水溶液を混合する方法が、一般式(III−B)で表される化合物を高純度で合成できることから好ましい。用いるアルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液及び水酸化セシウム水溶液が上げられ、特に水酸化カリウム水溶液が好ましい。アルカリ水溶液は、指示薬(フェノールフタレイン溶液など)がアルカリ性を示す直前まで添加するのが好ましく、それ以上添加すると、後の熱分解工程に影響を及ぼす可能性がある。加水分解後、溶媒を揮発させることにより一般式(III−B)で表される化合物を得ることができる。
次に、一般式(IV)又は(IVa)で表される化合物の合成法について詳細に述べる。一般式(IV)で表される化合物は、<工程3−1>(一般式(III−A)又は一般式(III−B)で表される化合物を熱分解する工程)または<工程3−2>(一般式(II)で表される化合物を熱分解する工程)を経由して合成することができる。まず、一般式(II)又は一般式(III−A)で表される化合物の熱分解について詳細に説明する。
一般式(II)又は一般式(III−A)で表される化合物の熱分解は、気相反応又は液相反応で行うことが好ましく、特に気相反応で熱分解を行うことが好ましい。反応は、不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。不活性ガスは、一般式(II)又は一般式(III−A)で表される化合物に対して0.01〜50体積当量用いることが好ましい。気相反応は、管型反応器を用いて、連続的に行うことが好ましい。反応温度は、一般式(II)又は一般式(III−A)で表される化合物の構造により左右されるため、一概に決定できないが、150〜500℃が好ましく、200〜450℃が最も好ましい。管型反応器を用いる場合、滞留時間は、空塔基準で0.1秒〜10分が好ましい。反応圧力は、特に制限がないが、0.01〜1.0MPaの範囲内で行うことが好ましい。また、管型反応器での熱分解は、反応管中にガラスや金属塩等を充填させて行うのが、反応促進の観点から好ましい。金属塩としては、特に、炭酸塩(例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム等)、金属ハロゲン化物(例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等)が挙げられ、特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムが最も好ましい。これら充填剤の粒径は、10〜1000μmが好ましく、100〜500μmが最も好ましい。充填剤は、あらかじめ反応温度付近で、不活性ガスを流すなどして脱水処理を行っておくことが反応の選択性を向上させる点から好ましい。熱分解して生成した一般式(IV)又は(IVa)で表される化合物は、反応器の出口付近で冷却することによって回収することができる。
次に、一般式(III−B)で表される化合物の熱分解について詳細に説明する。
一般式(III−B)で表される化合物の熱分解は、一般式(III−B)で表される化合物の固体を加熱することによって達成することができる。この際、加熱は攪拌しながら行うことが好ましい。反応温度は、反応温度は、一般式(III−B)で表される化合物の構造により左右されるため、一概に決定できないが、150〜500℃が好ましく、200〜450℃が最も好ましい。反応は、不活性ガス存在下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、前記の不活性ガスを挙げることができる。反応時間は、反応条件により左右されるが、概ね0.1〜10時間である。反応器は、生成した一般式(IV)又は(IVa)で表される化合物を連続的に回収できるように、反応器の出口付近に冷却装置を有するものが好ましい。
上記の方法により、前記一般式(IV)又は(IVa)で表される含フッ素3,5−オキソ−1,6−ヘプタジエン誘導体化合物を安価かつ効率的に製造することができる。
次に、本発明のポリマーについて説明する。
本発明のポリマーは、前記の製法により得られた一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を重合させて得られる、前記一般式(VI−1)又は(VI−2)の少なくとも一方で表される繰返し単位を含むポリマーである。当該ポリマーは、前記一般式(IV)で表される化合物の単独重合体であってもよく、前記一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を含む共重合体であってもよい。当該ポリマーの分子量は、重量平均分子量で1000〜100000であることが好ましく、5000〜50000であることがより好ましい。なお、分子量については、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)(装置:東ソー社製SEC HLC−8020(商品名)、分子量換算用標準試料 ポリメタクリル酸メチル)により測定することができる。
本発明のポリマーの製造方法について説明する。
本発明における重合反応は、特に限定されないが、ラジカル重合で行うことが特に好ましい。ラジカル重合には、光を照射して行う方法及び重合開始剤を用いる方法等があるが、重合開始剤を用いて行うのが好ましい。重合開始剤は、一般的なラジカル重合用のラジカル開始剤を用いることができ、例えば有機過酸化物(例えば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、過酸化tert−ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、(C37COO−)2、(C49COO−)2、(C65COO−)2、(C613COO−)2、((CF3)3CO−)2等)、無機過酸化物(例えば、K228、Na228、(NH4)228等)アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸−2−ペルフルオロオクチルエチル)等)、金属−過酸化物系(例えば、鉄(II)イオン−過酸化水素等)が好ましい。
重合方法としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合等が挙げられ、特に限定されることなく用いることができる。重合反応に溶媒を用いる場合、溶媒としては、水、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル等)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン等)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、メシチレン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオンニトリル等)、アミド類(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等)、カルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸等)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、3−メチルブタノール等)、フッ素系溶媒(例えば、ペルフルオロアルカン(構造異性体混合物であっても良い。例えばペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン等)、ペルフルオロシクロアルカン(構造異性体であっても良い。例えば、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロシクロヘプタン、ペルフルオロシクロオクタン)、ペルフルオロエーテル(構造異性体であっても良い。例えば、FluorinertTM FC−75(商品名、スリーエム社製)、KrytoxTM(商品名、デュポン社製))、ペルフルオロアルキルアミン(構造異性体混合物であっても良い。例えばペルフルオロトリブチルアミン)等が挙げられる。重合反応に用いる溶媒は、単独で用いても二種類以上を混合して用いても良い。
重合反応における温度は、特に制限はないが、−30℃〜200℃で重合を行うことが好ましく、0℃〜150℃が最も好ましい。また、重合反応における圧力(内圧)は、特に制限はないが、常圧〜5MPaが好ましく、常圧〜2MPaが最も好ましい。重合反応には、単独重合(一種類の一般式(I)で表される化合物のみの重合)か共重合(二種類以上のモノマーが存在する系での重合)がある。一般式(I)で表される化合物を共重合させる場合、他方のモノマーとしては、その他の一般式(I)で表される化合物、及び、炭化水素系モノマー(例えば、オレフィン系(例えば、エチレン、プロピレン等)、ビニル系(例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル等)、共役エステル系(例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等)、環状オレフィン系(例えば、2−ノルボルネン、シクロペンテン等)、共役ジエン系(ブタジエン、イソブテン等)、アセチレン系(アセチレン、アセチレンジカルボン酸ジメチル等))、含フッ素系モノマー(例えば、含フッ素オレフィン系(例えば、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン等)、含フッ素アルキルビニルエーテル系(例えば、ペルフルオロプロピルビニルエーテル等)、環状オレフィン系(例えばペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソノール)等))等が挙げられる。これらのうち、特にオレフィン系、環状オレフィン系、含フッ素オレフィン系、含フッ素環状オレフィン系が特に好ましい。共重合させる場合、他方のモノマーは単独でも二種類以上であっても良い。共重合でのモノマー組成比は、使用モノマーのモル比、反応条件等で調節することができる。
以下に本発明の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1
例示化合物(IV−2)の調製
Figure 0004866634
(1−1)例示化合物(I−2)の調製
ジムロート冷却管及びディーンスターク管を装着した反応器に、パラトルエンスルホン酸一水和物21.5g(0.113mol)、ピリジン9.1mL(0.113mol)、ヘキサン400mLを加え、外温140℃で1時間加熱した。その際、水が約2.0mL除去できた。混合液を放冷後、乳酸エチル490g(4.15mol)、1,1−ジエトキシエタン133.5g(1.13mol)を加え、外温100℃で10時間加熱した。その際、反応系にヘキサンを添加しながら、揮発した反応溶液を抜き出した。この操作で、計3.0Lのヘキサンを用いた。反応終了後、炭酸水素ナトリウム9.5g(0.113mol)加えた。その後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液200mLを加え、有機層を洗浄した。さらに、水200mLで8回洗浄した。得られた有機層を濃縮後、減圧蒸留することにより、例示化合物(I−2)が114.8g(0.438mol、収率39%)で得られた。
例示化合物(I−2)の化合物データを以下に記す。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ1.24−1.44(m,15H)、4.14−4.25(m,4H)、4.31−4.40(m,1H)、4.14−4.25、4.51−4.59(m,1H)、4.81−4.94(m,1H)
沸点 94℃/3mmHg
(1−2)例示化合物(I−6)の調製
テトラヒドロフラン20mLに、窒素雰囲気下、LiAlH4(1.08g、28.5mmol)を加えた。その後、内温を0〜10℃に保ちながら、例示化合物(I−2)(5.0g、19.0mmol)とテトラヒドロフラン10mLの混合溶液を滴下した。滴下終了後、内温を20〜30℃にし、1時間攪拌をした。その後、水3.3mL(183mmol)を滴下し、その後、硫酸ナトリウムを1.25g(8.8mmol)加えた。攪拌を10分した後、メタノールを20mL加え、さらに攪拌を10分行った。得られた反応溶液を、セライトを用いてろ過し、ろ液を濃縮することで、化合物Aの未精製物が3.86g得られた。
化合物Aの化合物データを以下に示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ1.08−1.21(m,6H)、1.36−1.41(m,3H)、3.41−3.61(m,4H)、3.78−3.92(m,2H)、4.66−4.73、4.83−4.90、4.93−4.99(m,1H)
次に、得られた化合物Aの未精製物(3.86g)にテトラヒドロフラン20mL、ピリジン4.6mL(57mmol)を加えた。次に、内温を0−10℃に保ちながら、C37OCF(CF3)COF 15.1g(45.6mmol)を滴下した。滴下終了後、内温を20〜30℃にし、1時間攪拌をした。次に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液50mLを滴下し、酢酸エチル50mLを加えて分液操作を行った。その後、濃縮操作を行うことで、例示化合物(I−6)が13.6g(16.9mmol、89%)得られた。
例示化合物(I−6)の化合物データを以下に示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ1.18−1.31(m,9H)、3.90−4.09(m,2H)、4.14−4.49(m,4H)、4.78−4.90(m,1H)
19F NMR(282.4MHz、CDCl3):δ−131.85(m,2F)、−129.75(s,2F)、−86.64(m,2F)、−86.11(m,2F)、−82.17、−82.09(s(二本),3F)、−81.40(s,3F)、−80.33(m,2F)、−79.79(m,2F)
(1−3)例示化合物(II−6)の調製
FC−72(商品名、スリーエム社製)175mLを反応器に入れた。反応容器の出口には、NaFペレット充填層、および−40℃に保持した冷却器を直列に設置し、冷却器で凝集した液体は返送ラインを通して反応器に戻せるようにした。20mL/minの速度でヘリウムガスを30分吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、単にフッ素ガスと呼ぶ)を30mL/minの速度で1時間吹き込んだ。次に、フッ素ガスの流速を150ml/minにし、例示化合物(I−6)(5.0mmol、4.01g)をFC−72に溶解させた溶液25mLを流速15.0ml/hで導入した。その後、ヘキサフルオロベンゼン(1.50g、9.67mmol)をFC−72に溶解させた溶液10mLを速度10mL/hで注入した。反応後、GLC測定で、例示化合物(II−6)のピークが観測された。フッ素ガスを止め、ヘリウムガスを20mL/minの速度で1時間吹き込んだあと、溶媒を濃縮し、蒸留することによって例示化合物(II−6)が3.64g(3.34mmol、収率66%)で得られた。
例示化合物(II−6)の化合物データを以下に示す。
19F NMR(282.4MHz、CDCl3):δ−145.5(brs,2F)、−131.40(s,2F)、−129.85(s,4F)、−87.20〜−85.91(m,3F)、−84.87(s,2F)、−83.72,−83.46(s(二本),2F)、−81.86〜−80.78(m,15F)、−80.43〜−80.11、−79.89〜−79.42(m,8F)
沸点 115℃/10mmHg
(1−4)例示化合物(III−B−2)の調製
例示化合物(II−6)3.64g(3.34mmol)を脱水MeOH10mLにゆっくり加えていった。発生するフッ化水素は窒素を反応液にバブリングすることによって、反応系から排出し、アルカリ水溶液トラップにて捕集した。攪拌を1時時間した後、反応液を濃縮し、減圧蒸留することで、化合物Bが1.02g(2.26mmol、収率68%)で得られた。
化合物Bの化合物データを以下に示す。
1H NMR(300MHz、CDCl3):δ3.97、3.98(s(2本),6H)
19F NMR(282.4MHz、CDCl3):δ−132.25〜−132.10、−131.50〜−131.35、−130.57〜−130.51、−129.38〜−129.23(m(4本),2F)、−96.11〜−96.00、−91.36〜−91.26、−89.31〜−89.21(t(3本)、1F)、−82.50〜−82.44、−84.42〜−84.32(m(2本),3F)、−82.50〜−82.44、−82.33〜−82.30、−82.02〜−81.98(m(3本),6F)
沸点 93℃/30mmHg
化合物B(1.02g、2.26mmol)をメタノール10mLに溶解させた。これに、フェノールフタレイン溶液を1滴加え、20%水酸化カリウム水溶液を滴下したところ、1.30mL加えたところでフェノールフタレイン溶液が薄い赤色に変化した。反応液を濃縮し、得られた固体を24時間真空乾燥したところ、例示化合物(III−B−2)が1.10g(2.21mmol、収率98%)で得られた。
(1−5)例示化合物(IV−2)の調製
例示化合物(III−B−2)1.10g(2.21mmol)を反応器に入れた。スターラーで攪拌し、50mmHgに減圧した。その後、240℃で1時間反応させた。反応生成物はドライアイスメタノールトラップにて捕集した。この反応生成物を蒸留することにより、例示化合物(IV−2)が0.40g(1.36mmol、収率62%)得られた。
実施例2
例示化合物(IV−2)の調製(実施例1とは別法)
(2−1)例示化合物(III−B−2)の調製
例示化合物(II−6)3.04g(2.78mmol)にフッ化カリウム(スプレードライ品)0.20g(3.4mmol)を加え、100℃で5時間加熱した。放冷後、反応器に蒸留装置を取り付け蒸留することで、例示化合物(III−A−5)が0.54g(1.26mmol、収率45%)で得られた。
次に、例示化合物(III−A−5)0.54g(1.26mmol)をメタノール10mLに溶解させた。これに、フェノールフタレイン溶液を1滴加え、20%水酸化カリウム水溶液をゆっくり加えたところ、0.80mL加えたところでフェノールフタレイン溶液が薄い赤色に変化した。反応液を濃縮し、得られた固体を24時間真空乾燥したところ、例示化合物(III−B−2)が0.50g(1.04mmol、収率83%)で得られた。
(2−2)例示化合物(IV−2)の調製
例示化合物(III−B−2)0.50g(1.04mmol)を反応器に入れた。スターラーで攪拌し、50mmHgに減圧した。その後、240℃で1時間反応させた。反応生成物はドライアイスメタノールトラップにて捕集した。この反応生成物を蒸留することにより、例示化合物(IV−2)が0.13g(0.44mmol、収率42%)得られた。
実施例3
重合体の調製
例示化合物(IV−2)0.35g(1.20mmol)にペルフルオロプロピオニルパーオキシド溶液(0.012mmol)を添加し、液体窒素で−196℃に冷却し、減圧後室温に戻し窒素を加えた。この操作を合計3回行った。その後、反応温度を50℃にし、36時間加熱を行い、重合体0.20gを得た。この重合体は、GPC測定により、Mw18500であることが分かった。

Claims (3)

  1. 下記の<工程1>、<工程2>及び<工程3−1>を経由することを特徴とする下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
    <工程1>下記一般式(I)で表される化合物をフッ素化して下記一般式(II)で表される化合物を得る工程。
    <工程2>下記一般式(II)で表される化合物の熱分解又は/及び加水分解により、下記の一般式(III−A)又は一般式(III−B)で表される化合物を得る工程。
    <工程3−1>下記の一般式(III−A)又は一般式(III−B)で表される化合物の熱分解により下記一般式(IV)で表される化合物を得る工程。
    Figure 0004866634
    (一般式(I)中、R1及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基を表す。R及びRは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。Yはアルコキシカルボニル基又は−CHOCOR(Rはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す)を表す。)
    Figure 0004866634
    (一般式(II)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。X1Fはハロゲン原子を表す。Yは含フッ素アルコキシカルボニル基又は−CFOCOR3F(R3Fは含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基を表す)を表す。<工程1>の前後で、一般式(I)中のX、Y、R及びRが変化しない場合、X1F、Y、R1F及びR2Fは一般式(I)中のX、Y、R及びRと同義である。)
    Figure 0004866634
    (一般式(III−A)中、X1F、R1F及びR2Fは一般式(II)中のX1F、R1F及びR2Fと同義であり、X1Fはハロゲン原子を表し、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。X2Fは、ハロゲン原子を表す。)
    Figure 0004866634
    (一般式(III−B)中、X1F、R1F及びR2Fは一般式(II)中のX1F、R1F及びR2Fと同義であり、X1Fはハロゲン原子を表し、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Mは金属化合物を表す。)
    Figure 0004866634
    (一般式(IV)中、R1F及びR2Fは一般式(II)中のR1F及びR2Fと同義であり、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
  2. 下記の<工程1>及び<工程3−2>を経由することを特徴とする下記一般式(IV)で表される化合物の製造方法。
    <工程1>下記一般式(I)で表される化合物をフッ素化して下記一般式(II)で表される化合物を得る工程。
    <工程3−2>下記の一般式(II)で表される化合物の熱分解により下記一般式(IV)で表される化合物を得る工程。
    Figure 0004866634
    (一般式(I)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基又はアルコキシカルボニル基を表す。R及びRは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。Xは水素原子又はハロゲン原子を表す。Yはアルコキシカルボニル基又は−CHOCOR(Rはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す)を表す。)
    Figure 0004866634
    (一般式(II)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。X1Fはハロゲン原子を表す。Yは含フッ素アルコキシカルボニル基又は−CFOCOR3F(R3Fは含フッ素アルキル基又は含フッ素シクロアルキル基を表す)を表す。<工程1>の前後で、一般式(I)中のX、Y、R及びRが変化しない場合、X1F、Y、R1F及びR2Fは一般式(I)中のX、Y、R及びRと同義である。)
    Figure 0004866634
    (一般式(IV)中、R1F及びR2Fは一般式(II)中のR1F及びR2Fと同義であり、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表し、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
  3. 下記一般式(VI−1)又は(VI−2)の少なくとも一方で表される繰返し単位を含むポリマーの製造方法であって、該ポリマーの重量平均分子量が1000〜100000であり、請求項1又は2に記載の製造方法製造された前記一般式(IV)で表される化合物の少なくとも1種を重合させることを特徴とする下記一般式(VI−1)又は(VI−2)の少なくとも一方で表される繰返し単位を含むポリマーの製造方法
    Figure 0004866634
    (一般式(VI−1)及び(VI−2)中、R1F及びR2Fは、各々独立に、ハロゲン原子、含フッ素アルキル基、含フッ素シクロアルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。R1F及びR2Fは、各々同じでも異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。)
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