JP4858666B2 - 電極装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電極装置に関する。本発明は、化学溶液、特に、廃水処理や鍍金などの用途に使用される電気分解反応用の電極装置に係る。
【0002】
【従来の技術】
廃水処理や鍍金などの用途に使用される電気分解反応用電極としては、フェライト電極板と、金属電極とが知られている。
【0003】
このうち、フェライト電極板は、電解反応時に電極に印加される電圧が、例えば200V程度の高電圧であっても、十分に耐えられるという点で、金属電極よりも優れている。また、フェライト電極板は化学的安定性に優れているという長所も有している。
【0004】
しかし、フェライト電極板はセラミック製であることから、弾性に乏しく、特に薄い平板状の形態を取る場合は、曲げ方向の力が加わると割れ易いという性質があり、電解面積の大きな平板状の電極を形成することが難しい。
【0005】
また、フェライト電極板は、成型した後に焼成を行う工程を経て製造されるので、面積の大きな平板状の形態を確保することは、コストの増加を招く。このため、フェライト電極板単体で大面積の平板状電極を形成することは、その取り扱いにおいても、コストの面においても、様々な障害があった。
【0006】
そこで、フェライト電極板をパイプ状に形成し、内部に導体を挿入した丸棒形状の形態の電極を並べることで、見かけ上、平板状の電極面としての電解面積を増大するなどの手法を採用していた。
【0007】
しかし、丸棒形状のフェライト電極板を並べて使用する方法は、一定の面積を確保するために必要となる電極数量が増加することから、コストの増加を招く。また、丸棒を並べるだけの構造であるため、電極表面の凹凸が大きくなり、極間距離が狭い場合には、平板状とは言い難いなどの不具合があった。
【0008】
次に、金属電極においては、大きな電解面積を必要とする用途に対しては、チタニウムなどの金属板表面に貴金族のコーティングを行う等の手段を採用することができる。
【0009】
しかし、コーティング層自体が薄く剥離しやすいことに加え、廃水処理などの用途に使用した場合、電極表面への付着現象が起きやすく、これによる電解効率の低下や、不特定多数の化学物質が混在する溶液中で使用することによる電極寿命の短縮など、多くの問題があった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、電解面積の大きな電極装置を提供することである。
【0011】
本発明のもう1つの課題は、化学的安定性及び耐久性に優れた電極装置を提供することである。
【0012】
本発明の更にもう一つの課題は、製造の容易な電極装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電極装置は、金属電極板と、複数の平板状フェライト電極板とを含む。前記複数の平板状フェライト電極板は、前記金属電極板の主面上に配列されている。
【0014】
本発明に係る電極装置において、金属電極板の主面上に、複数のフェライト電極板を配列しているから、フェライト電極板の化学的安定性を利用し、化学的安定性に優れた電極装置を実現できる。このため、電着処理、塗装処理、電気メッキ処理、電漬処理、陽極酸化処理、浄水処理等の広範な用途に対応し得る電極装置が提供できることになる。
【0015】
また、本発明に係る電極装置は、金属電極板と、複数の平板状フェライト電極板とを有し、複数のフェライト電極板は金属電極板上に配列されるから、金属電極板を大型化し、金属電極板の主面上に配列される平板状フェライトの数を増加することにより、電解面積の大きな電極装置を得ることができる。
【0016】
電解面積の大型化のために、金属電極板の平面積を増大させた場合でも、平板状フェライト電極板は、小面積でよく、その複数枚を、大型化された金属電極板の主面に配列することにより、大面積の電極装置を得ることができる。このため、個々の平板状フェライト電極板の寸法を、フェライト焼成工程を経ても歪みが発生しない限度で任意に設定できる。また、フェライト電極板の割れ等も生じにくくなるので、電解面積の大きな電極装置を、容易に製造することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
図1は本発明に係る電極装置の斜視図、図2は図1に示した電極装置の平面図、図3は図1に示した電極装置の底面図、図4は図2の4ー4線に沿った断面図、図5は図1乃至図4に示した電極装置の組立構造を示す一部拡大側面図である。
【0018】
図示実施例の電極装置は、金属電極板1と、複数のフェライト電極板2とを含む。金属電極板1は、板あつ方向において対向する2つの主面11、12を有する。フェライト電極板2は、金属電極板1の対向する2つの主面11、12の少なくとも1主面に配列されている。実施例では、フェライト電極板2は、主面11、12の両面に配列されている。
【0019】
実施例に示された、金属電極板1は複数の取付孔100を有し、フェライト電極板2は複数の取付孔200を有する。取付孔100、200の数量及び設置位置は、相互に一致している。図1乃至図5に図示するように、フェライト電極板2は、ビス4及びナット5を使用して金属電極板1に搭載されている。
【0020】
金属電極板1は延長部3を含み、延長部3は鉤状部30を有する。鉤状部30は金属電極板1を電解液等の溶液を満たしたタンクや電解処理槽に吊り下げ、または、装着する際に用いられる。
【0021】
本発明では、フェライト電極板2のそれぞれは平板形状であり、その複数枚を、金属電極板1の面11、12上に配列する構成を採用するので、焼成工程を経ても歪みが発生しない限度で、個々のフェライト電極板2の寸法を任意に、且、容易に設定することができる。
【0022】
本発明に係る電極装置において、金属電極板1の主面11、12上に、複数のフェライト電極板2を配列しているから、フェライト電極板2の化学的安定性を利用し、化学的安定性に優れた電極装置を実現できる。このため、電着処理、塗装処理、電気メッキ処理、電漬処理、陽極酸化処理、浄水処理等の広範な用途に対応し得る電極装置が提供できることになる。
【0023】
また、本発明に係る電極装置は、金属電極板1と、複数のフェライト電極板2とを有し、複数のフェライト電極板2は金属電極板1上に配列されるから、金属電極板1を大型化し、それに合わせて、フェライト電極板2の数を増加することにより、電解面積の大きな電極装置を得ることができる。
【0024】
電解面積の大型化のために、金属電極板1の平面積を増大させた場合でも、フェライト電極板2は、小面積でよい。このため、個々のフェライト電極板2の寸法を、フェライト焼成工程を経ても歪みが発生しない限度で任意に設定できる。また、フェライト電極板2の割れ等も生じにくくなる。このため、電解面積の大きな電極装置を、容易に製造することができる。
【0025】
実施例に示す電極装置を組立てるには、図5に示すように、金属電極板1に設けた取付孔100及びフェライト電極板2に設けた取付孔200に対し、例えばビス4を通し、ビス4にナット5を結合させて、金属電極板1上にフェライト電極板2を締め付ければよい。
【0026】
フェライト電極板2は、一般にフェライトと呼ばれる材料の中から、用途に応じて、任意に選択して用いることができる。
【0027】
一般に、フェライト電極板2は、例えばFe2O3換算で53〜95モル%の酸化鉄と、MO換算(但し、MはMn、Ni、Co、Mg、Cu、Zn)で47〜5モル%の酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化亜鉛からなる、スピネル結晶構造を持つフェライト焼結体である。これらは、優れた耐食性、電気伝導率、スポーリング強度等を有する。このような構造を持つフェライト電極板2は、例えば次のように製造することができる。
【0028】
まず、Fe2O3 55〜75モル%と前記のMOに換算して45〜25モル%の金属酸化物、例えば酸化ニッケル又は酸化マグネシウムとを、ボールミル中で十分に混合したのち、空気中で800〜1400℃において1〜3時間加熱し、冷却し、粉砕して微粉末とする。
【0029】
その際、原料のFe2O3の代わりにFe2O3に換算して55〜75モル%に相当するFeとFe2O3との混合物や、これらとFe2O3との混合物を用いることもできる。また、金属酸化物の代わりに、加熱によってこれらの酸化物に変化しうる化合物、例えば炭酸塩、水酸化物又は、シュウ酸塩を用いることもできる。
【0030】
次に、このようにして得た微粉末を加圧成形、押し出し成形、射出成形、流し込み成形などにより所定の形状に成形し、焼成温度1100〜1400℃で2〜12時間焼成した後、徐冷して所望のフェライト電極板2を得るものである。
【0031】
金属電極板1は、好ましくは、バルブ金属、例えばチタニウムなどを用いる。更に好ましくは、バルブ金属でなる金属電極板1の表面に貴金族、例えば白金のコーティング層を施した構造とする。この場合、通常の金属電極で用いられているコーティング層よりも薄い極薄コーティング層でも十分に効果がある。コーティング層の存在は、フェライト電極板2を直に金属電極板1の表面に貼り付た場合の接触抵抗を下げる効果となり、電流値が大きい場合の発熱や、これに伴うフェライト電極板2の破損を防止することに結びつく。また、コーティング層は、連続運転時に生じやすいチタニウム表面に形成される酸化物被膜による導通不良を解消するのにも有効である。
【0032】
金属電極板1として使用できる金属としては、導電性を持つことが重要であるため、特に限定しなくてもよいが、電解反応により消耗や変質する金属を用いる場合、特にバルブ金属以外の金属を使用する場合、さらにバルブ金属の場合でも、高い電圧を印加する場合などには、被覆等の処理を施し電解液に触れぬよう金属電極板1を被覆する必要がある。
【0033】
フェライト電極板2と金属電極板1の接合方法としては、ビス4、ナット5等を用いた機械的結合の他、接着剤による接着、またはそれらを組み合わせなど、自由な方法を取ることができる。これらの方法の内、接着による方法では、さらに接着剤に導電性を持たせた導電性の接着剤を用いることは有効である。但し、導電性の接着剤は接着剤に含まれる導電性物質が電解により溶出するため、電解液と接触しないような対策を必要する。
【0034】
図6は導電性接着剤による接着と、ビス及びナットによる機械的結合との組み合わせに係る結合構造を取る場合の具体例を示している。図6において、図5に現れた構成部分と同一の構成部分については、同一の参照符号を付し、重複説明は省略する。フェライト電極板2は、金属電極板1の主面11、12に導電性接着剤110、120によって接着され、且、ビス4及びナット5によって機械的に結合されている。
【0035】
導電性接着剤110、120については、発泡性の導電性接着剤が、特に有効である。発泡性の導電性接着剤によれば、弾性を持つ金属電極板1と、弾性に乏しく、比較的脆いフェライト電極板2との間で、衝撃を吸収する効果を期待することができ、フェライト電極板2の強度を改善する上で有効である。
【0036】
図7は本発明に係る電極装置をメッキ用電極として用いた使用態様を示す図である。図示では、メッキ槽7は、メッキ液8で満たされている。電極装置61、62と、被メッキ物9には、電源装置10が接続されている。本発明に係る電極装置は、メッキの他、電着処理、塗装処理、電漬処理、陽極酸化処理、浄水処理等広範な用途で活用することができる。
【0037】
次に、本発明に係る電極装置について、実施例を挙げて具体例について説明する。
【0038】
<実施例1>
まず、個々のフェライト電極板2を100mm×100mm×4mmの大きさとした。フェライト電極板2としてはニッケルフェライトを使用した。
【0039】
金属電極板1としてチタニウムを用い、その表面に白金のコーティング層を設けた。チタニウムの板の表面に、白金のコーティングを施す場合、その方法に多種の方法があるが、本実施例では、白金を含む溶液をチタニウム表面に塗布し、その後350℃から600℃の温度で焼成し、コーティング膜を形成した。
【0040】
このようにして得られた金属電極板1にフェライト電極板2を貼り付けるにあたり、図6に示したように、発泡性導電接着剤110、120と、ビス4及びナット5とを用いた。導電性接着剤110、120が電解液に触れないよう、全体をパッキンを用いてシールする構造とした。
【0041】
導電性接着剤を硬化させるため加熱処理を行うが、この温度は150℃前後であるため、パッキンやビスはこの温度に充分耐えるものを選定する必要がある。
【0042】
ビス4については、耐薬品性、耐熱性を持つ樹脂、もしくは金属電極板1と同じものを使用するか、十分に被覆する必要がある。
【0043】
また、パッキンにも同様に耐薬品性と耐熱性が要求されるため、最適な素材、例えばフッ素系ゴムなどを選定する必要がある。フェライト電極板2は、金属電極板1の一面に8枚貼り付け、8dm2の電解面積とした。金属電極板1の大きさは200mm×400mm×2mmとした。
【0044】
<実施例2>
導電性接着剤を省略した。他は、実施例1と同じ条件とした。
【0045】
<実施例3>
発泡性導電性樹脂に代えて、発泡性ではない導電性接着剤を用いた。他は、実施例1と同じ条件とした。
【0046】
<電解試験>
上述した実施例1〜3について、電解試験を行った。実施例1〜3の電極装置を電解液中に置いて陽極として用い、陰極に金属電極を配置して電解試験を行った。電解試験条件、確認項目及び結果は次の通りである。
【0047】
1.電解条件
電解液;20% H2SO4溶液
電流密度;5A/dm2、20A/dm2
電解時間;500Hr
2.確認項目
(a)電極の消耗状況
(b)試験前後の導通抵抗
(c)強度試験
(d)曲げ試験
曲げ試験に当っては、400mm方向の両端を固定して、中央部に加重した。加重は1kg、2kg、3kgの3種とした。
曲げ試験の確認項目
フェライト電極板2の破損状況
試験前後の導通特性
【0048】
3.試験結果
試験結果を総括するに、フェライト電極板2は平均的に消耗しており、電流の局部的集中が見られなかったことから、十分な電気的接合を得られていることが解った。
【0049】
また、接着剤の劣化など導通不良に起因する悪影響も見られず、シール方法に問題がないことも確認できた。
【0050】
電解試験前後の導通抵抗にも、20A/dm2、及び、3kg加重の場合を除けば、変化はなく、安定した電解反応を確保できることが判明した。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)電解面積の大きな電極装置を提供することができる。
(b)化学的安定性及び耐久性に優れた電極装置を提供することができる。
(c)製造の容易な電極装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電極装置の斜視図である。
【図2】図1に示した電極装置の平面図である。
【図3】図1に示した電極装置の底面図である。
【図4】図2の4ー4線に沿った断面図である。
【図5】図1乃至図4に示した電極装置の組立構造を示す一部拡大側面図である。
【図6】本発明に係る電極装置の別の組立構造を示す一部拡大側面図である。
【図7】本発明に係る電極装置の使用態様を示す図である。
【符号の説明】
1 金属電極板
11、12 金属電極板の主面
100、200 取付孔
2 フェライト電極板
Claims (3)
- 金属電極板と、複数の平板状フェライト電極板と、導電性接着層と、ビスと、ナットと、パッキンとを含む電極装置であって、
前記金属電極板は、第1の貫通孔と、板あつ方向にあらわれる2つの平板状主面とを有しており、
前記第1の貫通孔は、前記2つの平板状主面のそれぞれに開口しており、
前記複数の平板状フェライト電極板は、前記第1の貫通孔と一致する位置に第2の貫通孔を有し、前記2つの平板状主面上に配列され、前記導電性接着層によって前記平板状主面に接着されており、
前記ビスは、前記平板状主面の一方側に取り付けられた前記フェライト電極板の前記第2の貫通孔と、前記平板状主面の他方側に取り付けられた前記フェライト電極板の前記第2の貫通孔と、前記第1の貫通孔とに挿通され、前記ナットと結合され、2つの前記フェライト電極板を前記金属電極板に機械的に結合しており、
前記パッキンは、前記導電性接着層が電解液に触れないようシールしている、
電極装置。 - 請求項1に記載された電極装置であって、前記金属電極板は、バブル金属からなる電極装置。
- 請求項2に記載された電極装置であって、前記金属電極板は、表面に白金族の層を有する電極装置。
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