JP4857013B2 - 接合構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、溶融アルミニウムめっきされた鋼材にアルミニウム又はアルミニウム合金材(以下、アルミニウム材という)をミグ溶接にて重ね隅肉溶接した接合構造体に関し、特に、アルミニウム材料の優れた軽量性及び耐食性と鋼材の優れた機械強度とを兼ね備えた鋼/アルミニウムの接合構造体に関する。
アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム材料は、軽量で耐食性に優れていることを活用し、種々の分野で使用されているが、強度が要求される用途では厚肉化によって要求強度を満足させている。しかし、厚肉化はアルミニウム材料の長所である軽量性が損なわれ、コンパクトな設計に対応する構造部材としても適当でない。機械強度の良好な鋼材をアルミニウム材料と接合するとき、厚肉化の要なく必要強度がえられる。
従前、アルミニウム材と鋼材との接合には、ボルトナット、リベット、嵌め合わせなどの機械的接合法が採用されてきたが、機械的接合法では優れた強度の継手を得にくく、生産性も低い。これに対し、アルミニウム材/鋼材の溶接接合が可能になると、機械的接合法に比較して生産性が格段に高く、良好な特性を持つ鋼材/アルミニウム材の接合構造体が得られる。ところが、通常の溶融接合法で鋼材とアルミニウム材とを接合すると、非常に脆弱な金属間化合物が接合界面に多量生成し接合強度が著しく低下する。
金属間化合物は、鋼材と、アルミニウム材の原子が界面で相互拡散反応することにより生成する。特許文献1では、拡散反応を律則する反応温度及び時間等を摩擦溶接時に適正管理することによりその生成を抑制している。しかし、摩擦溶接による接合であることから、継手設計に工夫を要し、接合工程を簡略化する上では改善の余地がある。
そこで、スポット溶接及びミグ溶接の適用も検討されており、特許文献2では溶融アルミニウムめっき鋼板をアルミニウム材に抵抗溶接する方法を、特許文献3ではミグ溶接する方法を提案している。
特開2003−33885号公報 特開平6−39588号公報 特開2003−211270号公報 特開2003−145278号公報 WO2005/030424号公報
溶融アルミニウムめっき鋼板は、表層に溶融アルミニウムめっき層があることから接合時にアルミニウム材と同様な挙動を示すと考えられがちである。しかし、接合界面はミグ溶接時のアーク熱によりAlの融点(660℃)を超える高温に加熱される。高温加熱で生成した溶融Alに下地鋼/めっき層界面のAl−Fe−Si三元合金層からFe,Siなどが拡散するが、溶接時の冷却過程でFeが再析出し、拡散係数の大きなSiはめっき層全体に分散される。その結果、冷却後の接合界面を観察すると接合界面全域に脆弱なAl−Fe二元合金層が生成した溶接金属が検出され、接合強度も著しく低い。
接合強度に及ぼすAl−Fe二元合金層の悪影響を抑制するため、特許文献4では接合界面に占める金属間化合物の割合を規制している。金属間化合物の生成抑制には、溶融アルミめっき鋼板を正極側、アルミニウム材料を負極側にしてスポット溶接時の発熱を溶融アルミめっき鋼板に偏らせる方法を採用しており、また特許文献3ではパルスミグ溶接を用いて鋼材側への溶け込みを抑制したりするなどがあるが、依然として金属間化合物の多量生成が避けられない。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、ミグ溶接時に、冷却後の接合界面に脆弱なAl−Fe二元合金層が生成することを抑制し、接合強度を向上させた鋼/アルミニウムの接合構造体を提供することを目的とする。
本発明に係る接合構造体は、溶融アルミニウムめっきされた鋼材にアルミニウム又はアルミニウム合金材をミグ溶接にて開先角度が0°の重ね隅肉溶接した接合構造体であり、前記鋼材の溶融アルミニウムめっき層がSi:3乃至12質量%、Fe:0.5乃至5質量%、残部がAl及び不可避的不純物の組成を有し、鋼材と溶接金属部との接合界面に占めるAl−Fe二元合金層の割合が面積比95%以下であり、前記溶融アルミニウムめっき鋼材がN:0.002乃至0.020質量%を含む鋼材を下地鋼材とし、下地鋼材と溶融アルミニウムめっき層との界面にN:3.0原子%以上のN濃縮層が形成されており、下地鋼材と溶融アルミニウムめっき層との界面に生じているAl−Fe−Si三元合金層と前記接合界面のFe−Al二元合金層との間に溶接金属部が下地鋼に直接密着した合金層消失域が存在していることを特徴とする。
更に、前記アルミニウム又はアルミニウム合金材のFe含有量が1.0質量%以下であることが好ましい。
更にまた、前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は、Mg:0.1乃至6.0質量%、Si:3.0%以下を含有するアルミニウム合金であることが好ましい。
本願発明者等が、ミグ溶接時の高温加熱で溶融したAlに拡散し、再析出するFe,Siの挙動を調査・検討した結果、溶融アルミニウムめっき層のFe,Si濃度を適正に管理することにより、Al−Fe二元合金層の悪影響を抑制し、接合強度が高い鋼/アルミニウムの接合構造体を得ることができることを見出した。本発明は、このような観点にたって完成されたものである。
本発明によれば、鋼材とアルミニウム材との接合界面全域に脆弱なAl−Fe二元合金層が生成してしまうことを防止でき、脚長方向中央部の接合界面に局部的に生成するAl−Fe二元合金層の脚長方向両側には合金層消失域を形成することができ、この合金層消失域にてアルミニウム材と鋼材とを直接接合することができる。例えば、接合界面に占めるAl−Fe二元合金層の割合を面積比で95%以下に抑制することができる。このため、鋼材とアルミニウム材とをAl−Fe二元合金層を介することなく直接接合されるので、鋼材とアルミニウム材とを強固に接合することができる。
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して説明する。図1(b)は、本実施形態において、鋼板5の表面に溶融アルミニウムめっき層4が形成された溶融アルミニウムめっき鋼板1とアルミニウム板2とをMIG(ミグ)溶接により重ね隅肉溶接した場合の溶接部近傍を示す断面図、図1(a)は鋼板5とアルミニウム板2とをミグ溶接した場合の溶接部近傍を示す断面図である。溶融アルミニウムめっき鋼板1とアルミニウム板とのミグ溶接に際しては、溶融アルミニウムめっき鋼板1と、アルミニウム板2とをある重ね代をもって重ね合わせ、その隅肉開先部を、例えば、溶接電流50A、溶接電圧10V、溶接速度50cm/分の条件で連続的に線接合する。これにより、アーク熱で、接合部のアルミニウム板2及び溶融アルミニウムめっき層4が溶融し、相互拡散によって融合した後、固化して接合される。
下地鋼板5とめっき層4との界面に生成しているAl−Fe−Si三元合金層6から溶融AlにFe,Siが溶け込み、接合界面ではAl−Fe−Si三元合金層6が消失する。そして、下地鋼5から溶融Alに溶け込むFeもある。この溶け込んだFeは溶接時の冷却過程で再析出し、脆弱なAl−Fe二元合金層7が接合界面に生成されがちである。このとき、鋼板5とアルミニウム2との接合にみられるように、接合強度が極端に低下する脆弱なAl−Fe二元合金層7が形成される(図1(a))。他方、Al−Fe二元合金層7が脚長8の全域まで成長しておらず、溶接金属部3が下地鋼5に直接密着した合金層消失域9が存在すると、この部分で接合状態が保たれる(図1(b))。合金層消失域9が広がるほど、接合強度が高くなる。
本発明者等は、図1(b)のような接合界面が得られる条件を種々調査検討した結果、被接合材である溶融アルミニウムめっき鋼板1のめっき層4の組成が接合界面のAl−Fe二元合金層7の生成に大きな影響を及ぼしていることを見出した。即ち、Si:3〜12質量%、Fe:0.5〜5質量%を含む溶融アルミニウムめっき層が形成されている溶融アルミニウムめっき鋼板をアルミニウム材にミグ溶接する場合、合金層消失域9のある接合界面が生成され、接合強度が向上する。
溶融アルミニウムめっき層4のSi,Fe濃度がAl−Fe二元合金層7の生成に及ぼす影響は、次のように推察される。
Al−Fe二元合金層7は、ミグ溶接時の高温のアーク熱で生成した溶融Alに、溶け込んだFeが冷却過程で再析出した結果である。溶融Alに対するFeの溶け込み量は、下地鋼板5とめっき層4におけるFeの濃度勾配に影響され、濃度勾配が大きいほど、換言すれば、めっき層のFe濃度が低いほど、多くなる。溶出したFeは、拡散係数が比較的小さいことから、下地鋼の近傍に存在し、冷却過程で多量のAl−Fe二元合金層7となって接合界面に再析出する。そこで、めっき層4のFe濃度を予め高くしておくと、下地鋼板5からめっき層4に溶け込むFeが少なくなり、結果としてAl−Fe二元合金層7の生成が抑制される。
実際、めっき層4のFe濃度が0.5質量%以上になると、後述の実施例でも見られるように、脚長方向の接合界面中心部ではAl−Fe二元合金層7が生成するものの、中心部に比較して温度の低い周辺部ではFeの溶け込みが抑えられ、合金層消失域9が形成される。しかし、Fe濃度が5質量%を超えると、かえって接合強度が低下し、耐食性及び加工性等の溶融アルミニウムめっき層4の本来の特性にも悪影響を及ぼすので好ましくない。
めっき層4に含まれるSiは、Feに比較して拡散係数が大きく、ミグ溶接時の高温加熱でAl−Fe−Si三元合金層6から溶融Alに容易に移行し、めっき層4の全体に分散される。そこで、めっき層4のSi濃度を3〜12質量%と高めに設定することにより、Al−Fe−Si三元合金層6から溶融AlへのSi拡散を遅延させ、接合界面を除く箇所で下地鋼板5に対するめっき層4の密着性を確保する。また、Si濃度の増加に応じてAl−Fe二元合金層7が減少する傾向が現れ、結果として接合強度も向上する。
下地鋼板5から溶融AlへのFe拡散は、下地鋼板5とめっき層4との界面にFe拡散防止層を形成することによっても抑えられる。Fe拡散防止層としては、本出願人が出願(特許文献5)した抵抗スポット溶接構造体としてのアルミニウムめっき鋼板のN濃縮層が有効である。N濃縮層によって下地鋼板5から溶融Alに溶け込むFeが少なくなるので、接合界面に生成する脆弱なAl−Fe二元合金層7が一層減少し、接合強度が高い接合構造体が得られる。
次に、溶融アルミニウムめっきについて説明する。めっき原板には低炭素鋼、中炭素鋼、低合金鋼等があり、用途に応じてSi,Mn,Cr,Ni,Al等を添加した鋼種が使用される。なかでも、Al−Feの相互拡散作用を抑制するNを0.002〜0.020質量%添加しためっき原板が好ましい。N添加鋼をめっき原板に使用する場合、有効N量を確保するため、Al含有量を0.03質量%以下に規制する。
めっき原板を溶融アルミニウムめっき浴に浸漬して引き上げると、めっき原板に随伴してめっき浴から持ち上げられた溶融めっき金属が凝固し、溶融アルミニウムめっき層を形成する。溶融アルミニウムめっき層の厚さは、引き上げ直後の鋼帯に対するワイピングガスの吹き付け等の付着量制御によって調整され、厚膜にするほどAl−Fe二元合金層の成長が遅延されるが、良好な加工性を確保する上で、溶融アルミニム合金めっき層の厚さは5〜50μmの範囲で選定することが好ましい。接合強度が高い鋼板とアルミニウム材との接合構造体を得るためには、溶融アルミニウムめっき層4に含まれるSi,Feの含有量を夫々Si:3乃至12質量%、Fe:0.5乃至5質量%に規制する。ここでいうSi及びFeの含有量は、下地鋼板5と溶融アルミニウムめっき層4の界面に形成されるAl−Fe−Si三元合金層6を含まない部分の含有量である。
N:0.002乃至0.020質量%を含む鋼板5をめっき原板として溶融アルミニウムめっき層4を形成した後、特定条件下で加熱処理すると、溶融めっき時に生成したAl−Fe−Si合金層6と下地鋼板5との界面にN濃縮層が生成する。濃縮層のN含有量が3.0原子%以上になるとAl−Feの相互拡散が著しく抑制され、鋼/アルミニウムの接合構造体として好適な溶融アルミニウムめっき鋼板1が得られる。N濃縮層によるAl−Feの相互拡散抑制作用は、溶融めっき後の加熱処理条件を一定にすると、下地鋼板5のN含有量が多くなるほど向上する。しかし、鋼板5が0.02質量%を超える過剰量のNを含む場合、めっき原板自体の製造性が低下する。
相手材のアルミニウム2及び適用するアルミニウム溶加材は、材質に特段の制約が加わるものではないが、展伸材である限り大半のアルミニウム又はアルミニウム合金を使用できる。アルミニウム2に含まれるFeも、溶融アルミニウムめっき層4と同様にAl−Fe二元合金層7の生成・成長を抑制する作用を呈するが、下地鋼板5と溶融アルミニウムめっき層4との界面反応であるAl−Fe二元合金層7の生成・成長に関しては溶融アルミニウムめっき層4中のFeに比較して遥かに少ない。従って、アルミニウム材自体の耐食性及び加工性等を考慮してアルミニウム材のFe濃度を1.0質量%以下に規制することが好ましい。また、溶加材の影響はAl−Fe2元合金層7の生成・成長に影響無しとしないが、その影響はめっき層自体と比較すると、少ない。
被接合材であるアルミニウム2は、3.0質量%以下、特に1質量%前後のSi及び0.1乃至1.5質量%のMgを添加し、時効処理等の熱処理で微細なMgSiを析出させると、必要強度が付与されるため好ましい。MgSi析出による強度向上を図る上では、Si含有量の下限を0.1質量%に設定することが好ましい。また、1.5乃至6質量%のMgを添加すると、固溶体強化によっても高い強度が得られる。このような効果は、0.1乃至6.0質量%のMg、及び3.0質量%以下のSiを含有するアルミニウム2でみられ、要求強度に応じてMg,Si含有量が定められる。しかし、6質量%を超える過剰量のMgが含まれると、ミグ溶接時に欠陥が発生しやすくなり、3質量%を超える過剰量のSiが含まれると、アルミニウムマトリックスに粗大な析出物又は晶出物が生成して接合強度が低下する場合がある。
接合構造体は、所定サイズに裁断された溶融アルミニウムめっき鋼板1及びアルミニウム2を重ね、その端部の隅肉開先をミグ溶接することにより製造される。溶接電流、アーク電圧及び溶接速度等により溶接条件が定められるが、例えば、直径が1.2mmの溶加材で、溶接電流50A,溶接電圧10V,及び溶接速度50cm/分で溶接すると、概略200N/mm以上の良好な引張せん断強度が得られる。
次に、本発明の効果を実証するための実施例・比較例について説明する。C:0.04質量%、Si:0.01質量%、Mn:0.20質量%、P:0.01質量%、S:0.007質量%、Al:0.010質量%、N:120ppmを含み、板厚が1.0mmの冷延鋼板に、Si:9.2質量%、Fe:1.8質量%を含み、板厚が20μmの溶融アルミニウムめっき層を形成した後、450℃に15時間のポスト加熱で、下地鋼板5とめっき層4との界面に、Nを5原子%濃化させた溶融アルミニウムめっき鋼板1を一方の被接合材に使用した。溶融アルミニウムめっき鋼板1では、Al−10.9質量%Si−35.8質量%FeのAl−Fe−Si三元合金層6が下地鋼板5とめっき層4との界面に生成していた。
相手材には、Si:0.11質量%、Fe:0.25質量%、Mg:5.52質量%、Cu:0.35質量%、Cr:0.02質量%、Zn:0.01質量%、残部Al及び不可避的不純物で、板厚が1.0mmのアルミニウム合金板を使用した。
溶融アルミニウムめっき鋼板1及びアルミニウム合金板2から切出した試験片を、脱脂・洗浄した後、重ねてその隅肉開先部をA5554WY−1.2mm直径の溶加材を用いて、溶接電流50A,溶接電圧10V,溶接速度50cm/分でミグ溶接した。
鋼板5とアルミニウム2との接合界面部の脚長方向の端部及び中央部に観察点をとって観察し、接合界面にある合金層をSEM(走査型電子顕微鏡)・EDX(840A、日本電子株式会社製)で定量した。
図2及び図3の観察結果に見られるように、溶接入熱量の少ない溶接速度が100cm/分の場合の断面には、Al−Fe−Si三元合金層6は、脚長中央部及び端部のいずれにおいてもその一部が溶融Alに拡散していた。Al−Fe−Si三元合金層6のSi濃度は脚長端部で3.2質量%、中央部で1.4質量%に低下し、Fe濃度は端部では殆ど変わらず、中央部で若干増加していた。
通常、一般の溶接入熱量となる溶接速度50cm/分の場合の断面には、端部のAl−Fe−Si三元合金層6がほぼ完全に消失しており、溶融AlにAl−Fe−Si三元合金層6が溶出したことがわかる。他方、中央部では、Al−Fe二元系合金層7が検出された。このAl−Fe二元系合金層7は、Si濃度が0.7質量%と低く、Fe濃度が42.0質量%と高いことから、Al−Fe−Si三元合金層6が消失した後に、新たに生成したAl−Fe二元合金層7である。
通常よりやや多目の溶接入熱量となる溶接速度25cm/分の場合では、脚長方向端部の接合界面に合金層は殆ど検出されなかったが、中央部の接合界面にはSi濃度0.5質量%、Fe濃度47質量%のAl−Fe二元合金層が厚く成長していた。
ミグ溶接で形成された接合部は、その接合界面の端部にAl−Fe二元合金層7がないため、ミグ溶接で形成された接合部は、中央部のAl−Fe二元合金層7を合金層消失域で挟み込み、更にその外側をAl−Fe−Si三元合金層6で挟み込んだ接合界面を持つ継手となる。
接合界面における脚長量、Al−Fe二元合金層の幅、合金層消失域の幅は、高速度溶接による極端な低入熱条件でない通常の条件では、入熱の増加にともなって、脚長量、Al−Fe二元合金層ともに増加するので、合金層消失域はほぼ安定的に存在することになる。従って、引張せん断試験で評価した接合強度も、200N/mm以上の高い引張せん断強度であり、アルミニウム材同士の継手強度と同等又はそれ以上の満足できる値が得られた。
継手の接合評価には引張せん断強度が通常用いられるが、剥離方向に弱い金属間化合物が接合界面に発生しやすい異種金属接合継手では、剥離方向に沿った接合強度を測定することにより継手としての工業的な適用可能性を判断できる。図4に示すピール剥離試験により剥離方向に沿った接合強度を調査すると、20N/mm以上の剥離強度がられ、アルミニウム材料同士を接合した継手と同等以上の値が得られた。
比較のため、Fe濃度が0.3質量%と少ないめっき層を形成した溶融アルミニウムめっき鋼板を同様な条件下でアルミニウム材にミグ溶接したところ、接合界面全域にわたってAl−Fe二元合金層7が生成した。そのため、引張せん断強度が100N/mmと著しく低く、ピール強度も5N/mm程度の低い値しか得られず、実用に供し得ない接合構造体であった。Fe濃度が6.1質量%と多いめっき層を形成した溶融アルミニウムめっき鋼板1を被接合材に使用した場合でも、引張せん断強度200N/mm以上、ピール剥離強度20N/mm以上の接合界面を形成できなかった。
C:0.05質量%、Si:0.1質量%、Mn:0.25質量%、P:0.012質量%、S:0.006質量%、Al:0.006質量%の冷延鋼板を溶融アルミニウムめっきした。溶融アルミニウムめっきでは、めっき層のSi含有量が:1.8質量%、3.5質量%、9.2質量%、15.6質量%の4水準、Fe含有量が0.2〜0.3質量%、0.7〜0.9質量%、1.8〜2.3質量%、3.9〜4.5質量%,5.5〜6.1質量%の5水準となるように溶融めっき浴の組成及びめっき条件を調整した。
相手材のアルミニウム材には、Si:0.10質量%、Fe:0.22質量%、Mg:2.67質量%、Cu:0.01質量%、Cr:0.19質量%、Mn:0.02質量%、Zn:0.01質量%、残部Al及び不可避的不純物で、板厚1.0mmのアルミニウム合金板と、Si:0.9質量%、Fe:0.08質量%、Mg:0.55質量%、Cu:0.01質量%、Cr:0.01質量%、Mn:0.02質量%、Zn:0.01質量%、残部Al及び不可避的不純物で板厚1.0mmのアルミニウム合金板の2種類を使用した。
溶融アルミニウムめっき鋼板、アルミニウム合金板から切出した試験片を脱脂・洗浄した後、重ねてその隅肉開先部をA5554WY−1.2mm直径及びA4043WY−1.2mm直径の2種類の溶加材を用いて、溶接電流50A,溶接電圧10V,溶接速度50cm/分でミグ溶接した。
ミグ溶接で作製された鋼/アルミニウムの接合構造体を引張せん断試験、ピール剥離試験に供し、接合強度を測定した。
下記表1は測定結果を示す。表1に示すように、溶融アルミニウムめっき層のSi,Fe濃度が適正範囲(Si:3〜12質量%、Fe:0.5〜5質量%)に維持されていると引張せん断強度:200N/mm以上、ピール剥離強度:20N/mm以上の高い接合強度が得られた。
これに対し、Si,Fe濃度が低いと、Al−Fe二元合金層の占有面積率が大きくなり、引張せん断強度:200N/mm以上、ピール剥離強度:20N/mmに達しなかった。引張試験で破断した接合界面を観察すると、合金層間に連続的な割れが発生しており、Al−Fe二元合金層が接合強度を低下させていることがわかった。
他方、Si,Fe濃度が高すぎると、Al−Fe二元合金層の占有面積率は小さいものの、接合強度は低い値を示した。この場合の接合強度の低下は、溶接部のSi,Fe濃度が高すぎることにより脆性的な破壊が生じた結果と推定される。
Figure 0004857013
相手材として、Mg,Si,Al含有量が種々異なるアルミニウム合金板を使用する以外は、実施例1と同じ条件下でSi:9.2質量%、Fe:4.1質量%の溶融アルミニウムめっき層が形成されためっき鋼板とミグ溶接した。得られた鋼板とアルミニウム材との接合構造体を引張せん断試験、ピール剥離試験に供し、接合強度を測定した。
下記表2は測定結果を示す。表2にみられるように、Mg,Si含有量を夫々0.1〜6.0質量%,3.0質量%以下の範囲に維持したアルミニウム合金板を使用したとき、引張せん断強度、ピール剥離強度が一層高い接合構造体であった。接合構造体の接合強度はアルミニウム合金板のFe含有量にも影響され、Fe含有量を1.0質量%以下に規制することによって、引張せん断強度:200N/mm以上、ピール剥離強度:20N/mm以上が確保された。
Figure 0004857013
以上に説明したように、本発明の接合構造体は、鋼材とアルミニウム材とが強固に接合され、アルミニウム材と鋼材の長所を活かした接合構造体として、車両構造体及び熱交換器等、種々の構造部材に使用される。
(a)はミグ溶接した普通鋼鋼板/アルミニウム合金板、(b)は溶融アルミニウムめっき鋼板とアルミニウム合金板との接合界面に生成するAl−Fe二元合金層を対比した模式図である。 脚長と、合金層消失域の長さと、Al−Fe二元合金層の長さとの溶接速度による変化を示すグラフ図である。 下地鋼板とめっき層との界面にN濃縮層がある溶融アルミニウムめっき鋼板をアルミニウム合金板にミグ溶接したときに形成される接合界面における溶接金属部断面を溶接速度との関係で模式的に示した図である。 ピール剥離試験方法を示す図である。
符号の説明
1:溶融アルミニウムめっき鋼板
2:アルミニウム
3:溶接金属部
4:溶融アルミニウムめっき層
5:下地鋼板
6:Al−Fe−Si三元合金層
7:Al−Fe二元合金層
8:脚長
9:合金層消失域

Claims (3)

  1. 溶融アルミニウムめっきされた鋼材にアルミニウム又はアルミニウム合金材をミグ溶接にて開先角度が0°の重ね隅肉溶接した接合構造体であり、前記鋼材の溶融アルミニウムめっき層がSi:3乃至12質量%、Fe:0.5乃至5質量%、残部がAl及び不可避的不純物の組成を有し、鋼材と溶接金属部との接合界面に占めるAl−Fe二元合金層の割合が面積比95%以下であり、前記溶融アルミニウムめっき鋼材がN:0.002乃至0.020質量%を含む鋼材を下地鋼材とし、下地鋼材と溶融アルミニウムめっき層との界面にN:3.0原子%以上のN濃縮層が形成されており、
    下地鋼材と溶融アルミニウムめっき層との界面に生じているAl−Fe−Si三元合金層と前記接合界面のFe−Al二元合金層との間に溶接金属部が下地鋼に直接密着した合金層消失域が存在していることを特徴とする接合構造体。
  2. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材のFe含有量が1.0質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の接合構造体。
  3. 前記アルミニウム又はアルミニウム合金材は、Mg:0.1乃至6.0質量%、Si:3.0%以下を含有するアルミニウム合金であることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合構造体。
JP2006109220A 2006-04-11 2006-04-11 接合構造体 Active JP4857013B2 (ja)

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