JP4856860B2 - 内外二重筒体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、例えば燃料電池用改質器等に用いる内外二重筒体の製造方法に関する。
燃料電池は、酸素と水素とを電気化学的に反応させて発電を行うもので、実用的には上記の酸素としては空気を用い、水素としては天然ガスやメタノ−ル等の炭化水素系ガス原料を改質した水素リッチな改質ガスが多く用いられている。その改質ガスは、一般に改質器を用いて生成するもので、例えば下記特許文献1,2に記載のように円筒状の改質器本体内に上記の炭化水素系ガス原料を順次供給して水蒸気と混合したのち改質用の触媒と反応させて生成する。
上記の触媒反応は、通常バーナ等を用いて800〜900℃程度の高温下でなされ、上記改質器本体の周囲には断熱層が設けられる。その断熱層は、例えば上記特許文献1,2に記載のように内外二重の筒体間にカオウール等の断熱材を介在させるか、或いは上記筒体間の空間を真空にして熱伝導を抑制する。その場合、上記内外二重の筒体は、それぞれ別々に形成して両端部にリング状の端板を溶接して塞ぐのが一般的であるが、作業が面倒であると共に、溶接箇所が変質したり歪み等が生じる等の不具合がある。
そこで、例えば下記特許文献3のように1本の円筒状金属管を、その一端側から該金属管の内側もしくは外側に折り返すように反転させる(逆絞りする)ことによって、上記のような内外二重の筒体を形成することが考えられるが、前述のような高温の断熱層に用いるためには、耐高温酸化特性を有する金属筒体、例えばSUS310系のステンレス鋼材等よりなる筒体を用いなければならない。ところが、上記のような耐高温酸化特性を有する金属筒体は一般に加工性が悪く、上記のような反転加工を施すと、表面に微細なしわや亀裂もしくは座屈が生じ、例えば真空断熱等に使用する場合には上記の亀裂もしくは座屈箇所から外気が浸入して真空度が低下する等のおそれがある。
特開2003−146611号公報 特開2003−151607号公報 特許2866002号公報
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、高耐熱性を有し、しかも表面に微細なしわや亀裂もしくは座屈が生じることなく上記の反転加工により容易に内外二重筒体を製造することのできる製造方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明による内外二重筒体の製造方法は、以下の構成としたものである。すなわち、耐高温酸化特性を有する第1の金属筒体の一端に、前記第1の金属筒体と同一径、且つ前記第1の金属筒体よりも加工性のよい第2の金属筒体を突き合わせ溶接し、前記第2の金属筒体を、その自由端側から前記第1の金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転加工させて内外二重の筒体を製造することを特徴とする。
上記のように耐高温酸化特性を有する金属筒体の一端に、それよりも加工性のよい金属筒体を突合せ溶接し、その加工性のよい金属筒体の自由端部を該金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転させて内外二重の筒体を製造するようにしたので、その内外二重筒体の少なくとも一方は耐高温酸化特性を有する金属筒体による充分な耐熱性を確保した上で、加工性のよい金属筒体を反転加工することによって前記のような微細なしわや亀裂もしくは座屈が表面に生じることなく内外二重筒体を容易に製造することが可能となる。
以下、燃料電池用改質器の断熱層を製造する場合を例にして本発明による内外二重筒体の製造方法を具体的に説明する。
図1は本発明による内外二重筒体の製造方法によって製造した内外二重筒体を用いて燃料電池用改質器の断熱層を構成した例を示すもので、特に本例の断熱層Aは内外二重の金属筒体1,2間の空間Sを真空にして真空断熱層としたものである。また上記内外二重筒体1,2は、耐高温酸化特性および高温強度を有する金属筒体1の一端に、それよりも加工性のよい金属筒体2を突合せ溶接W1し、その加工性のよい金属筒体2の自由端部を該金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転させて内外二重に形成したものである。
図中、3,4は上記筒体1,2の一端側に溶接等で一体的に設けた各筒体1,2の端部を塞ぐ端板で、その一方の端板3は、本実施形態においては椀形に形成され、本出願人が先に提案した突合せ溶接方法(特許第2928737号公報参照)によって上記筒体1の端部に溶接接合したものである。すなわち、その筒体1と上記端板3との突合せ部にはテーパ状のフレアリング加工が施こされ、その突合せ部の一部をカッタ等で周方向に切除したのち互いに突き合わせて、その全周をプラズマ溶接やTIG溶接等で溶接W2した構成である。
また上記他方の端板4は、その周縁部に短筒状のフランジ4aを形成して、筒体2の端部の内方に嵌合すると共に、その嵌合部の外端側をTIG溶接やレーザーシーム溶接等で溶接W3した構成である。上記端板4の中心部には円形の開口部4bを設けると共に、その開口部4bを塞ぐ円板状の蓋体5が溶接等で固着され、その蓋体5の内面側に支持パット6等を介して金属材料などよりなるゲッター材料7を設けた構成である。
上記の内外筒体1,2間の空間Sを真空にする場合は、例えば端板4と蓋体5の近傍部にNiろう材(ニッケルろう材)等を配設して、真空加熱処理炉内を例えば1050℃以下で且つ10−5torr以下に真空排気した状態において、Niろう材を溶融させ、真空炉内に窒素またはアルゴンガス等の不活性ガスを噴霧急冷させることにより、Niろう材を凝固して閉塞させる。また高温時ゲッター材料を活性化させることにより、真空排気後にSUS(ステンレス)材から放出する水素ガス等をゲッター材料が吸着して真空度を長期間安定に維持させることができるものである。
上記のように構成した断熱層Aの内側の筒体1の内方には、図に省略した改質器本体を収容するもので、その改質器本体内は、前記のように高温下で触媒反応させるためにバーナ等で800〜900℃程度に加熱されるが、上記の改質器本体を取り囲むように真空の断熱層Aが設けられることによって、燃料消費量の削減または再起動時間の短縮化が可能になる。
なお上記筒体1,2には、必要に応じて輻射熱防止用のメッキ等の表面処理を施してもよく、本実施形態においては内側の筒体1の外面(外筒2側の面)と外側の筒体2の内面(内筒1側の面)とに銅メッキを施こしたもので、それによって上記の筒体1内に配置される改質器本体からの熱が上記の銅メッキで反射されて、それよりも外方への輻射熱が低減され、それによって断熱効果を更に向上させることが可能となる。
上記のような断熱層Aを製造するに当たっては、先ず前記のように反転加工によって形成される内外二重の筒体1,2を製造するもので、その筒体1,2の材質としては耐熱性および耐食性のよい金属、例えばステンレス鋼材等を用いるのが望ましい。特に改質器本体に近い内側の筒体1については、耐熱温度が高い耐高温酸化特性および高温強度を有するステンレス鋼材を用いるのが望ましい。なお、本実施形態では、耐熱温度とは連続で使用できる温度である。
また外側の筒体2についても、耐高温酸化特性および高温強度を有するステンレス鋼材が望ましいが、一般に耐高温酸化特性を有するステンレス鋼材は前述のように加工性が悪く、前記のような反転加工を施すと、表面に微細なしわや亀裂もしくは座屈が生じ、例えば真空断熱等に使用する場合には上記の亀裂もしくは座屈箇所から外気が浸入して真空度が低下する等のおそれがある。一方、外側の筒体2内側の筒体1よりも改質器本体に遠いので、内側の筒体1よりも耐熱温度が多少低くても充分に使用可能である。
そこで、本実施形態においては外側の筒体2を反転加工によって形成することとして、外側の筒体2には耐熱温度は多少劣るが加工性のよいステンレス鋼材を用い、内側の筒体1には耐高温酸化特性および高温強度を有するステンレス鋼材を用いるようにしたものである。その耐高温酸化特性および高温強度を有するステンレス鋼材としては、例えば耐熱温度が900℃以上のものを用いるとよく、また加工性のよいステンレス鋼材としては、例えば伸び率が45%以上のものを用いるのが望ましい。
なお、耐熱温度が900℃以上の耐高温酸化特性および高温強度を有するステンレスとしては、例えばSUS310Sまたは同等の耐熱特性を有する材料が使用可能であるが、本実施形態の内側の筒体1としてはSUS310Sが用いられ、また伸び率が45%以上の加工性のよいステンレスとしては、例えばSUS304,SUS304L等があるが、本実施形態の外側の筒体2としてはSUS304が用いられている。
上記両筒体1,2は、図2(a)のように互いに連結する前の各々単品の状態でシーム部のビード潰しや内外面の傷チェック等を行った後、同図(b)のように各筒体1,2の両端部を軸線方向と直角に精度よく切断する。次いで、各筒体1,2を洗浄した後、同図()のようにTIG溶接やプラズマ溶接もしくはレーザー溶接等による溶接W1で両者を突合せ接合することによって、上記両筒体1,2を同心状に連続した状態に形成する。
次に、上記筒体1,2の真円度を高めるために真円フォーム加工を施した後、筒体1の自由端側(筒体2と反対側)に前記の椀形の端板3を溶接する。その溶接方法は適宜であるが、本実施形態においては前記のように特許第2928737号による突合せ溶接方法によって接合したもので、先ず図3(a)のように上記筒体1と端板3との突合せ部にテーパ状のフレアリング加工を施し、その各端部の一部をカッタ等で周方向に切除したのち同図(b)のように突き合わせて、その全周を溶接接合した構成である。
上記のようにして同心状に連続した筒体1,2の端部に端板3を溶接した後は、ヘリウムリーク検査をして上記溶接部に接合不良やピンホール等がないか確認する。次いで、必要に応じて上記一連の筒体1,2の表面に輻射熱防止用のメッキを施すもので、本実施形態においては上記筒体2の筒体1と反対側の端部たとえば10mm程度を除く、上記筒体1,2および端板3の外周面のほぼ全面に銅メッキが施されている。なお上記のように筒体2の筒体1と反対側の端部を除いたのは、その端部にメッキを施すと後述する端板4を溶接する際にピンホール等が発生するのを防止するためである。
そして上記一連の筒体1,2を、その一端側(本実施形態においては筒体2の自由端側)から他端側に向かって上記筒体1,2の内側もしくは外側に順次反転させることによって図3(c)に示すように内外二重に形成するもので、本実施形態においては加工性のよいステンレス鋼材よりなる金属筒体2を、耐高温酸化特性および高温強度を有するステンレス鋼材よりなる金属筒体1の外側に順次反転させて内外二重に形成したものである。
図5は上記反転加工の具体的構成例を示すもので、同図(a)のように一連の筒体1,2を上下方向に且つ端板3を上にして受け治具11の上方に配置し、上記端板3の上方から押し込み治具12により上記筒体1,2を受け治具11に向かって押し込むことによって、下側の筒体2の下端部を上記受け治具11に形成した断面略半円形の環状溝11aで順次外側に反転させていく。そして上記押し込み治具12が図5(b)の所定位置まで下降させると、筒体1の外側に筒体2が反転した状態で略同心状に位置して内外二重に形成される。図中、13は上記の反転した端部を上方に案内するガイドリング、14は弾性ストッパである。
上記のようにして内外二重に形成したところで、図4(a)のように外側の筒体2の端部2aは、上記反転加工開始時の加工歪み等が生じ勝ちであるので切除する。次いで、上記筒体2の端部内方に、前記のフランジ4a付きの端板4を嵌合してシーム溶接W3等で接合する。その際、上記端板4には予め蓋体5を固着しておくと共に、その蓋体5の内面側に支持パット6等を介してゲッター材料7を設けておく。
そして前記のように内外の筒体1,2間の空間Sを真空にする場合には、前述のように例えば端板4と蓋体5の近傍部にNiろう材(ニッケルろう材)等を配設して、真空加熱処理炉内を例えば1050℃以下で且つ10−5torr以下に真空排気した状態において、Niろう材を溶融させ、真空炉内に窒素またはアルゴンガス等の不活性ガスを噴霧急冷させることにより、Niろう材を凝固して閉塞させる。また高温時ゲッター材料を活性化させることによって、真空排気後にSUS(ステンレス)材から放出する水素ガス等をゲッター材料に吸着させて真空度を維持させるものである。
上記のように本発明においては燃料電池用改質器の断熱層等を製造する場合に、耐高温酸化特性を有する金属筒体の一端に、それよりも加工性のよい金属筒体を突合せ溶接し、その加工性のよい金属筒体の自由端部を該金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転させて内外二重の筒体を製造するようにしたから、例えば上記筒体を各々別々に形成する場合に比べ、内外二重の筒体を容易・安価に製造することが可能となる。特に上記の耐高温酸化特性および高温強度を有する金属筒体として、耐熱温度が900℃以上のステンレス鋼材を、また前記の加工性のよい金属筒体として、伸び率が45%以上のステンレス鋼材を、それぞれ用いると、極力耐熱性および耐食性のよい金属を使用した上で信頼性および耐久性のよい二重筒体を提供することが可能となる。
なお上記実施形態は、内側の筒体1に耐高温酸化特性および高温強度を有する金属(ステンレス鋼材)を、外側の筒体2に加工性のよい金属(ステンレス鋼材)を用いて筒体1の外側に筒体2を反転加工により形成するようにしたが、外側の筒体2に耐高温酸化特性および高温強度を有する金属(ステンレス鋼材)を、内側の筒体1に加工性のよい金属(ステンレス鋼材)を用いて筒体2の内側に筒体1を反転加工により形成することもできる。
また上記実施形態は、内外筒体1,2間の空間Sを真空にする真空断熱層を例にして説明したが、上記空間S内にアルミナファイバー等の断熱材を充填するものにも適用可能であり、また燃料電池用改質器の断熱層に限らず各種機器の断熱層や中空二重容器、その他の内外二重筒体にも適用できる。
以上のように本発明による内外二重筒体の製造方法は、前記の構成であるから内外二重の筒体を容易・安価に製造することが可能となるもので、内外二重筒体を製造する場合の製法の選択の自由度を増大させることができる。
本発明を適用した燃料電池用改質器の断熱層の一例を示す縦断面図。 (a)〜(c)は内外二重筒体の製造プロセスの一例を示す説明図。 (a)〜(c)は内外二重筒体の製造プロセスの一例を示す説明図。 (a)〜(c)は内外二重筒体の製造プロセスの一例を示す説明図。 (a)および(b)は反転加工プロセスの説明図。
符号の説明
A 断熱層
1、2 筒体
3、4 端板
5 蓋体
6 支持パット
7 ゲッター材料

Claims (5)

  1. 耐高温酸化特性を有する第1の金属筒体の一端に、前記第1の金属筒体と同一径、且つ前記第1の金属筒体よりも加工性のよい第2の金属筒体を突き合わせ溶接し、前記第2の金属筒体を、その自由端側から前記第1の金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転加工させて内外二重の筒体を製造することを特徴とする内外二重筒体の製造方法。
  2. 耐高温酸化特性を有する第1の金属筒体の一端に、前記第1の金属筒体と同一径、且つ前記第1の金属筒体よりも加工性のよい第2の金属筒体を突き合わせ溶接し、前記第2の金属筒体を、受け治具に配置し、前記第1の金属筒体の上方から前記受け治具に向かって押し込むことにより第2の金属筒体の自由端を前記第1の金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転加工させて内外二重の筒体を製造することを特徴とする内外二重筒体の製造方法。
  3. 前記第1の金属筒体として、耐熱温度が900℃以上のステンレス鋼材を、前記第2の金属筒体として、伸び率が45%以上のステンレス鋼材を、それぞれ用いる請求項1又は請求項2記載の内外二重筒体の製造方法。
  4. 耐高温酸化特性を有する第1の金属筒体と前記第1の金属筒体と同一径、且つ前記第1の金属筒体よりも加工性のよい第2の金属筒体を有する内外二重筒体であって、前記第1の金属筒体の一端に前記第2の金属筒体の一端が突き合わせ溶接され、前記第2の金属筒体の他端である自由端側は前記第1の金属筒体の内面側もしくは外面側に順次反転加工されて内外二重の筒体が形成される内外二重筒体。
  5. 前記反転加工は、前記第2の金属筒体の自由端側を受け治具に配置して前記第1の金属筒体の上方から前記受け治具に向かって押し込むことにより形成される請求項4記載の内外二重筒体。
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