(1)卵巣と卵子の説明
図11は卵巣A10と卵子A05と子宮などを示す。卵巣A10の中で卵胞A01は徐々に成長して、卵胞A01内の卵子A05が排卵され、この後卵胞A01は黄体A07となっていく。
図8に示すように、この卵胞A01の内壁の一部に内方に突出している部分があり、これが卵丘A04であり、卵胞A01内の卵丘A04以外の球状の部分が卵胞腔A02であり、この卵胞A01の外殻が顆粒膜層A03である。この卵丘A04の中に卵子A05が包含されており、この卵子A05の周囲の卵丘A04内には放射冠A06が存在する。
公知ではない事前実験では、超音波画像装置によって投影すると、画像の上では、卵胞腔A02と顆粒膜層A03及び卵巣A01とは映像濃度/濃淡の差があり、さらに卵丘A04及び放射冠A06と卵胞腔A02とは映像濃度/濃淡の差があり、さらに卵子A05と卵丘A04及び放射冠A06と映像濃度/濃淡の差がある。
これは照射した超音波の反射量、反射角度、照射体における超音波の共振量及び反射周波数などに基づくと考えられる。これらは、画面に、一方が白く表示されると、他方は黒く表示される。むろん、カラー表示によって、白/黒以外の色彩表示にすることも可能である。
このような各画素の白/黒の濃度データ/濃淡データは、実験の結果、卵胞A01/卵胞腔A02/顆粒膜層A03/卵丘A04/卵子A05/放射冠A06の各密度に応じて変化し、当該濃度データ/濃淡データはこれらの密度を表している。したがって、これら白/黒の濃度データ/濃淡データは各組織の密度データとなる。
(2)卵子診断/検査装置などの全体回路/全体システム
図1は卵子診断/検査装置、卵子診断/検査方法が実行される装置、卵子診断/検査のためのコンピュータプログラムが記憶実行される装置の全体回路/全体システムを示す。この卵子診断/検査装置は、超音波検査/診断装置または超音波画像装置も含む。
この全体回路には、中央処理演算装置であるCPU(コントローラ)1が付加備えられ、アドレス信号及びデータ信号が双方向に伝達されるアドレス/データバスライン2を介して入力部3、出力部4、内部記憶部5、外部記憶部8、インターフェース部6、タイミング発生部7等と電気的に接続されて構成されている。
入力部3は、経膣の超音波探索体11を有していて、この超音波探索体11にはさらに卵子吸引針12が装着されている。入力部3は、さらに音声認識装置又はキーボート等の入力装置と、マウス、デジタイザ、タッチパネルなどのポインティングデバイス、画像認識装置、電話の操作ボタンの認識装置等とから構成されており、コンピュータ装置(全体回路)への処理命令の入力に活用される。
上記超音波探索体11は検査/診断する部位に当てられて超音波が照射され、この超音波の反射エコーが超音波探索体11に随時受信されて取り込まれ、画像データに随時変換されて、上記内部記憶部5に随時書き込まれ記憶される。
出力部13は、ディスプレイ、プリンタ、または可聴音を発する音声合成部(音声処理ボード、サウンドカード)、電話回線モデムなどから構成されており、上記内部記憶部5の超音波エコー画像データが出力されてディスプレイに表示されたり、プリンタに印刷されたりする。
上記インターフェース部6通じて外部装置との間で、データまたはプログラムの送受信が実行される。このディスプレイ画面には、表示画像の倍率、縮尺スケール、成熟卵子の数、卵子の良好度、推奨する卵子の優先順位なども表示出力される。
タイミング発生部7からは、本卵子診断装置全体(全体回路)の同期を取るためのタイミングコントロール信号が各回路(入力部3、出力部4、内部記憶部5、外部記憶部8、インターフェース部7等)に出力される。
このタイミングコントロール信号は、基本周期のクロック信号のほか、このクロック信号を分周または倍加した信号等が含まれる。また、このタイミング発生部7には時計回路も内蔵化され、現在の年月日及び時刻が計時され、上記超音波エコー画像データのログイン/ロード/コピー、ログアウト/セーブ/更新、またはログアウトの年月日時刻、各卵子を識別する識別情報、卵子A05卵胞A01の画像、卵子A05の大きさ、密度及び真円率並びに各卵子A05の成熟度または良好度、卵子A05の画像データ、この画像データの画面上の表示座標データとなどもリンクしてソートされて入力・記憶される。
内部記憶部5(内部記憶媒体/手段)は、ROM、RAM、フラッシュメモリ、EEPROM、EPROM、ハードディスク等の不揮発性メモリまたは一時記憶メモリなどからなっている。
そして、内部記憶部5のROMには本卵子診断装置(全体回路)で実行されるプログラムや各種処理に使用される汎用データが記憶される。このプログラムは後述するフローチャートに対応している。また、内部記憶部5の一時記憶メモリには、プログラム処理中のデータの一時的な蓄積等、つまりワーキングメモリ若しくはキャッシュメモリとして用いられる。
また、内部記憶部5とデータ/プログラムが送受される外部記憶部8(外部記憶補助媒体/手段、補助記憶媒体)は、光/磁気/ICカード、光/磁気/メモリディスク/ドラム/テープ、MO、CD−ROM/ROM、DVD(デジタルビデオディスク)−ROM/RAMなどの大量情報記憶/保存メディアとそれらのメディアへの情報書き込み/読み出し装置等(ドライブ装置、インターフェイス回路)から構成されている。
なお、場合によって、本卵子診断/検査装置(全体回路)は、内部記憶部5のROM内に予め記憶されたプログラムによって単一の処理が行われる専用装置とされ、外部記憶部8に保存されたプログラムが、適宜、内部記憶部5のRAM内に呼び込まれて(起動)される汎用のコンピュータ装置とされる。この場合は、内部記憶部5のROM内には、CPU1によって実行される基本ソフト(オペレーティングソフト)、システムソフト、応用プログラムを含む各プログラムが保存される。
そして、本卵子診断/検査装置(全体回路)の電源立ち上げ時または新たなプログラムの起動時等において、外部記憶部8から上記プログラムが読み出され、内部記憶部5のRAM等に一時的に保存され、当該プログラムがCPU1によって実行される。つまり、本診断/検査装置(全体回路)によって実行されるプログラムが、外部記憶部8に保存されており、適宜読み出されてCPU1によって実行される。
この場合、古いプログラムから新たなプログラムへの変更は、外部記憶部8内に保存されているプログラム自体が置き換えられるか、若しくはプログラムの保存されている光/磁気/ICカード、光/磁気/メモリディスク/ドラム/テープ、MO、CD−ROM/ROM、DVD−ROM/RAM等が交換される(インストール/転送される)ことで行われる。
また、内部記憶部5に保存されたプログラムを専用に実行するコンピュータ装置の場合には、同じように、光/磁気/ICカード、光/磁気/メモリディスク/ドラム/テープ、MO、CD−ROM/ROM、DVD−ROM/RAM等が交換される(インストール/転送される)ことに呼応して内部記憶部5等の書き換えが行われるか、または内部記憶部5自体の交換によって達成される。
なお、このプログラムの新規置き換えは、場合によって、インターネット通信回線、公衆回線若しくはLANを介して接続されている他のコンピュータなどの外部装置から送られてくる。つまり、コンピュータ装置(全体回路)で実行されるプログラムが、インターフェース部6を通じて、内部記憶部5に対して直接的に交換されたり、インターネットなどの通信網を介して外部装置から送られてきたもので交換されたりする。
したがって、場合によって、本卵子診断/検査装置(全体回路)において実行されるプログラムが、起動の度毎に、外部装置から送られてくる。つまり、装置(全体回路)の内部記憶部5に応用プログラムが保存されておらず、外部装置から送られてくるプログラムを実行する端末装置の役目のみが、本発明の卵子診断/検査装置(全体回路)に与えられる。
さらには、外部装置からプログラムとそのプログラムによって処理されるデータが共に送られてきて、そのプログラムによってデータ処理がなされた後、その結果が外部装置に送り返される。逆に、外部装置からデータが送られてきて、本卵子診断/検査装置内のプログラムに基づいて処理された後、その結果が外部装置に送り返される。
また、コンピュータ装置で実行されるプログラムは、場合によって、OSなどの基本プログラムを基に、応用プログラムが実行されるような、一般的なコンピュータシステムによるプログラムであり、OSを含む統一化された一つのプログラムのみが実行される専用のコンピュータシステムである。よって、それらの統一化されたプログラムが外部装置から与えられるし、応用プログラム、基本プログラムまたはプログラムの一部のみが外部装置から送られてきて実行される。
なお、場合によって、本卵子診断/検査装置に予め別のオペレーティングシステム、システムプログラム(OS)、その他のプログラムが記憶され、上記プログラムはこれらのOS、その他のプログラムとともに実行される。このプログラムは本装置(コンピュータ本体)にインストールされ実行されるときに、別のプログラムとともにまたは単独で請求項(特許請求の範囲、補正後も含む)または末尾の他の発明の効果の各請求項に記載された処理・機能を実行させる。
また、場合によって、このプログラムの一部または全部が本装置以外の1つ以上の別装置に記憶されて実行され、本装置と別装置との間には通信手段を介して、これから処理するデータ/既に処理されたデータ/プログラムが送受され、本装置及び別装置全体として、本発明が実行される。これらの通信手段はインターネット通信システムなどである。
(3)超音波探索体11及び卵子吸引針12
図2は、超音波探索体(超音波ブローブ)11及び卵子吸引針12とその使用状態を示す。細長い棒状の超音波探索体11内には超音波振動子が内蔵され、超音波探索体11の先端から超音波が発振出力される。
この超音波探索体11は、生体の膣内に挿入され卵巣/卵胞/卵子が診断/検査される。この生体は人間であるが、場合によって、家畜、その他の哺乳類、鳥類、その他の動物などであってもよい。また、この生体は、成熟卵子を採取できるのであれば、生死は問わない。
この超音波探索体11からの超音波は、卵巣/卵胞/卵子に照射され、この超音波の反射エコーが超音波探索体11に随時受信されて取り込まれ、画像データに随時変換されて、上記内部記憶部5に随時書き込まれ記憶される。超音波探索体11の横に備えられた卵子吸引針12は、膣内から卵巣の卵胞内に挿入され、成熟卵子が吸引/採取される。
上記超音波探索体11によって探索されて形成される画像の範囲内に、上記卵子吸引針12が入り込む位置に、当該卵子吸引針12が配置される。したがって、超音波エコー画像を見ながら、当該画面で成熟卵子と吸引針12とを確認しながら、成熟卵子を吸引/採取することができる。
この画像範囲は、画像の倍率を上げても/高倍率にしても/ズームしても/画像拡大しても、卵子吸引針12が写る位置に配置される。具体的には撮影画角が10度スコープで超音波探索体11の先5cmにおいて吸引針12が写るように配置される。この10度の撮影スコープ角度及び5cmの撮影可能距離は生体によっては任意であり変更可能である。
上記吸引針12はパイプ13及びチューブ14を介して吸引器15につながり、吸引器15を吸引させると、成熟卵子が吸引器15に吸引/採取される。この採取された成熟卵子に予め採取しておいた精液が加えられ、培養器に中で保管されて、受精が行われ(媒精)、受精確認後、この受精卵C01は子宮に戻される。これにより、体外受精胚移植が行われる。
(4)卵子診断/検査処理
図3及び図4は、上記CPU1によって実行される、卵子診断/検査処理のフローチャートを示し、図5〜図9はこの処理に対応する卵子A05等の状態を示す。この処理は、画面上に表示されたアイコンをクリックするまたはコマンド入力などの所定の操作によって開始される。成熟卵子は通常は1つほどしか見つからないが、排卵誘発剤を使った場合や、多産系の家畜などでは成熟卵子及びその卵胞は複数発見され、この場合卵胞は画像の上では重なって見える。
まず、超音波エコー画像の倍率が低倍率、例えば約2.5〜1倍にされ(ステップ01)、卵巣A10全体が投影される。この卵巣A10全体の画像がスキャン/検索され、卵胞A01または卵胞腔A02の有無が判別される。卵胞A01または卵胞腔A02が検出/識別されなければ(ステップ02)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図5)。
この卵巣A10全体の画像がスキャン/検索では、画像の濃淡が識別されてデジタル2値化され、2値化された濃い画像または淡い画像が「島」のように孤立しているかどうかが識別される。この場合、図5に示すように、1つの濃いまたは淡い画素の周囲の画素の濃淡を識別して同じ濃淡の画素のつながりが判別されていき、これらの同じ濃淡の画素のつながりが画面の「端」まで達していなければ上記「島」になる。
この「島画像」が発見されなければ卵胞A01または卵胞腔A02が存在しないことになる。なお、上記ステップ01で卵巣A10を撮影するときには、各卵胞A01が画面からはみ出ないように、倍率及び超音波探索体11の探索方向が選択される。
次いで、卵胞A01または卵胞腔A02があれば(ステップ02)、上記卵胞A01または卵胞腔A02の大きさが求められ(ステップ03)、所定値以上か否かが判別される(ステップ04)。この大きさ算出では、上記卵胞A01または卵胞腔A02の「島画像」の各縦方向の画素数と各横方向の画素数とが求められ、いちばん長い縦と横の画素数がそれぞれ選び出される。
これに上記画像の倍率が乗算/演算されて卵胞A01または卵胞腔A02の縦の長さ/径と横の長さ/径が求められ、両長さ/径の合計が所定値18〜20mm以上であれば、上記所定値以上とされる。この所定値以上で成熟していなければ(ステップ04)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図6)。
実験の結果、上記の卵胞A01または卵胞腔A02の検出/識別では、超音波エコー画像上、卵胞A01の外側殻である顆粒膜層A03と卵巣A10の細胞とは区別がつきにくく、卵胞腔A02と顆粒膜層A03及び卵胞腔A02と卵巣A10の細胞とは区別がつきやすく、上記濃淡の大きな差となってあらわれる。
したがって、上記の卵胞A01の検査/識別では、卵胞腔A02の検査/識別にて行うことが望ましい。しかし、濃淡に関して緻密な画像処理を行えば、顆粒膜層A03と卵巣A10の細胞との境界を識別して、卵胞A01を検出/識別することはできる。以上の実験は公知ではない。
上記卵胞腔A02の大きさが所定値以上であれば(ステップ04)、上記検出/識別された卵胞A01または卵胞腔(antrum)A02の形状が求められ(ステップ05)、この形状が真円に近いかどうか判別される(ステップ06)。この形状判別では、図6(2)に示すように、卵胞腔A02の形が円形/球形に近ければ成熟とされ、図6(1)に示すように三日月形またはその他の形に近ければ未熟とされる。
これによって、実際には、卵胞腔A02の直径が約10〜20mmまで至り、末梢血中エラトラジーオールが1つの卵胞当たり200〜300pg/mlに達した場合を成熟とし、これ未満の大きさの卵胞は未熟とされる。
この形状判別では、上記「島画像」のいちばん長い縦と横の画素数がそれぞれ選び出されて、これに上記画像の倍率が乗算/演算されて卵胞の縦の長さ/径と横の長さ/径が求められ、両長さ/径の差が所定値5mm以上で真円に近くなければ、未熟とされ、両長さ/径の差が所定値5mm未満で真円に近ければ、成熟とされる。この所定値以上で成熟していなければ(ステップ06)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図6)。
この真円率の判定では、超音波エコー画像を所定角度ずつ回転し、それぞれにおける縦の長さ/径と横の長さ/径の差が求められ、これらの中でいちばん大きい差を採用してもよいし、各差の平均値を採用してもよい。このような真円率の判定は、後述するステップ19などでも同様に実行されてもよい。
なお、この形状識別では、上記ステップ03の卵胞A01または卵胞腔A02の大きさ判別と同じ処理が行われてもよい。また、卵胞A01または卵胞腔A02の大きさ判別では、「島画像」の全画素数(つまり面積)が求められ、これが予め内部記憶部5に記憶されていた成熟卵胞の大きさに応じた画素数(面積)より多いか少ないかによって判別がなされてもよい。
そして、上記所定値未満で真円に近ければ(ステップ06)、上記検出/識別された卵胞腔A02の1つが選択され、この選択された卵胞腔A02に対して、超音波エコー画像の倍率がさらに上げられて、例えば約10〜2.5倍にされ(ステップ07)、円形または楕円形の「仮想切取り線B01」が図6(3)に示すように表示される(ステップ08)。
操作者は、この「仮想切取り線B01」の大きさ、形及び表示位置を、マウスを使いながら画面上で調整して、上記卵胞腔A02の外形にほぼ一致させ、画面上に表示されたアイコンをクリックするまたはコマンド入力などの所定の操作をする。
この場合、例えば仮想切取り線B01の中の任意の位置のマウスのドラッグで仮想切取り線B01の位置が移動され、仮想切取り線B01の線上の任意の位置のマウスのドラッグで仮想切取り線B01が部分的に膨らんだり凹んだりして形状が変更され、マウスの左クリックで仮想切取り線B01の全体が徐々に外へ膨らんで大きくなり、マウスの右クリックで仮想切取り線B01の全体が徐々に内へ縮んで小さくなる。
そうすると、この「仮想切取り線B01」内の、画像の濃淡が識別されて2値化され、2値化された濃い画像の画素数/面積と、淡い画像の画素数/面積が求められる(ステップ09)。これらの濃淡の画素はいずれか一方が卵胞腔A02を示し他方が卵丘A04を示し、各画素数は卵胞腔A02の面積及び卵丘A04の面積を示す。実験では、卵胞腔A02と卵丘A04とでは超音波エコー画像上濃淡の差となってあらわれたからである。この実験は公知ではない。
次いで、卵丘A04の画素数/面積が卵胞腔A02の画素数/面積に対する相対的比率が所定値「0.75%〜1.5%」未満であれば(ステップ10)、図7(1)に示すように卵胞A01が大きくても当該卵丘A04の大きさが小さく未熟ということになり、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図7)。
また、上記相対的比率が例えば所定値「0.75%〜1.5%」以上であって、図7(2)に示すように卵胞A01が大きくて卵丘A04が大きければ(ステップ10)、上記卵丘A04に対して、超音波エコー画像の倍率がさらに上げられて、例えば約100〜50倍にされ(ステップ11)、上記求めた卵丘A04の画素数/面積が当該倍率に応じて補正され(ステップ12)、この卵丘A04内の卵子A05の画素数/面積が求められる(ステップ13)。
この場合、卵丘A04における画像の濃淡が識別されて2値化され、2値化された濃い画像の画素数/面積と、淡い画像の画素数/面積が求められる(ステップ13)。これらの濃淡の画素はいずれか一方が卵丘A04または放射冠A06を示し他方が卵子A05を示し、各画素数は卵丘04または放射冠A06の面積及び卵子A05の面積を示す。実験では、卵丘A04または放射冠A06と卵子A05とでは超音波エコー画像上濃淡の差となってあらわれたからである。この実験は公知ではない。
なお、卵丘A04または放射冠A06の画素数/面積は、上記ステップ13にて、卵子A05を除外した画素の数として求められてもよい。しかし、状況によっては、上記ステップ09で求められた卵丘A04の画素数からすでに卵子A05の画素数が除外される場合がある。卵胞腔A02の画像濃淡と卵子A05の画像濃淡とは同じだからである。
そして、卵子A05を除いた卵丘A04の画素数/面積が卵子A05の画素数/面積に対する相対的比率が例えば所定値「8%〜40%」以上であれば(ステップ14)、図8(1)に示すように、当該卵子A05の周囲の放射冠A06の大きさが小さく成熟していないことになり、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図8)。
また、上記相対的比率が例えば所定値「8%〜40%」未満で、図8(2)に示すように、放射冠A06の大きさが大きく卵子A05が成熟していれば(ステップ14)、上記放射冠A06/卵丘A04の各画素の濃淡のレベルデータの平均値と、上記卵子A05の各画素の濃淡のレベルデータの平均値との相対的比率が求められる(ステップ15)。この濃度データの相対的比率は、放射冠A06/卵丘A04と卵子A05との密度の相対的比率を表す。
この密度の相対的比率が「1」より離れて、卵子A05の密度に対して放射冠A06の密度が離れ、放射冠A06/卵丘A04と卵子A05との密度の差が小さく、卵子が成熟していなければ(ステップ16)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図9)。
また、密度の相対的比率が「1」に近くて、卵子A05の密度に対して放射冠A06の密度が近く、放射冠A06/卵丘A04と卵子A05との密度の差が大きく、卵子が成熟していれば(ステップ16)、上記卵子A05の画素数/面積が予め内部記憶部5に記憶された成熟卵子としての画素数/面積より大きいか否か判別される(ステップ17)。
上記卵子A05の画素数/面積が予め記憶された成熟卵子としての画素数/面積より小さく成熟してなければ(ステップ17)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する。
また、上記卵子A05の画素数/面積が予め記憶された成熟卵子としての画素数/面積より大きく成熟していないとき(ステップ17)、卵子A05の各画素の濃淡のレベルデータの平均値が、予め記憶された成熟卵子としての濃度データより濃く密度が高くて成熟していなければ(ステップ18)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する。
次いで、卵子A05の密度が低く成熟していないとき(ステップ18)、上記卵子A05の各画素のうち、いちばん長い縦と横の画素数がそれぞれ選び出されて、これに上記画像の倍率が乗算/演算されて卵胞の縦の長さ/径と横の長さ/径が求められ、両長さ/径の差が所定値20μm以上で真円に近くなければ、未熟とされ、両長さ/径の差が所定値20μm以上未満で真円に近ければ、成熟とされる。この所定値以上で成熟していなければ(ステップ19)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する。
そして、この所定値未満で卵子A05が真円に近いとき(ステップ19)、図9(1)に示すように卵核(germinal vesicle)A08があって成熟していなければ(ステップ20)、ステップ23へ飛んで他の卵胞についての卵子診断/検査処理に移行する(図9)。
また、卵核A08がなくて図9(2)に示すように第1極体A09があるとき(ステップ20)、当該卵子A05に対して、「成熟卵子」である旨が画面に表示され(ステップ21)、上述の卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04、放射冠A06、卵子A05、卵核A08、第1極体A09それぞれの画像データ、この画像の表示座標データ、大きさ、密度、真円率のデータなどが、当該卵子を識別する識別情報にリンクされて、内部記憶部5に入力され書き込まれる(ステップ22)。これにより、後述するように、この成熟卵子の吸引が可能となる。
このような卵核A08または第1極体A09の検出/判別も、上記超音波エコー画像に基づいて行われ、卵子A05と卵核A08と第1極体A09の画像濃度はそれぞれ異なる。卵子A05が白いと、卵核A05は黒くなり、第1極体A09はこれらの中間のやや黒っぽい白となる。このような濃度データ/濃淡データを上述の判定と同様に判定することにより、これらの検出/判別を行うことができる。
以上のステップ03〜19までの処理を、他の卵胞A01及び卵胞腔A02についても繰り返す(ステップ22)。この場合、必要に応じて超音波探索体11の向きが操作者によって変更され、これに応じて表示画像もシフトされ、シフト前の画像とシフト後の画像とが連結され、表示座標データも連結される。以上のようにして成熟卵子とされた複数の卵子A05につき、その成熟度及び良好度を演算してその内容に応じて、序列を付ける(ステップ23)。
この序列では、例えば、卵子A05の大きさの順番に配列し、上記密度が理想的成熟卵子の密度に対して濃い割合を1/20に小さくして、当該大きさに乗算/演算し、上記真円率つまり上記長い径と短い径との割合を1/10に小さくして、やはり当該大きさに乗算/演算し、この演算修正された大きさの順番に各卵子A05を配列することになる。この演算修正された大きさが、成熟度または良好度の情報となり、この成熟度または良好度の値の大きさの順番が序列データとなる。
これらの序列は出力部4の画面に表示出力される。これにより、成熟卵子の数、卵子A05の良好度の序列、推奨する卵子の優先順位などが判明する。このような卵子A05の成熟度/良好度とともに、各卵子A05の大きさ、密度または真円率の情報、各卵子A05の画像データ、この画像データの表示画面上の表示座標データなどが、各卵子を識別する識別情報にリンクかつソートされて内部記憶部5に書き込まれる。
この後、画面を見ながら卵子吸引針12をそれぞれの成熟卵子に接近させ、吸引器15でこの成熟卵子を吸引することになる。なお、この成熟卵子の吸引は、これらの各卵子A05の序列づけの前に行ってもよい。
また、図6乃至図8では、卵子A05を含む卵丘A04は、顆粒膜層A03に付着していたが、実際には図2に示すように、卵子A05を含む卵丘A04が卵胞腔A02内を浮遊していることもある。このような場合でも、上述の卵子診断/検査処理は可能である。
(5)卵子診断情報/卵子情報/序列情報
図10は、上記ステップ22、24でリンク/ソート/書き込みされた、卵子診断情報/卵子情報/序列情報の情報構造/データ構造を示す。卵子A05の識別情報は、上記ステップ01〜22の卵子診断/検査処理がなされた順番を示す。この診断/検査の順番は、この情報の番地/アドレスとも一致している。
図10(1)に示すように、これら卵子診断情報/卵子情報/序列情報の各番地には、当該各卵子A05に対応する卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04、放射冠A06、卵子A05、卵核A08及び/または第1極体A09それぞれの画像データ、この画像の表示座標データ、大きさ、密度、真円率のデータ、成熟度または良好度、序列データなどが記憶される。さらに、卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04、放射冠A06、卵子A05、卵核A08及び/または第1極体A09の大きさ、密度及び/または真円率の間の相対的比率(÷)もあわせて記憶される。
これらの卵子情報/序列情報は、「序列」のアイコンのマウスクリックなどによって所定の指示がなされると、図10(2)に示すように、上記序列データの順番に並び替えられ/ソートされ、別メモリエリアに書き込まれ記憶される。
このようなソートされた情報は、上記出力部4の画面に一覧表の形で一部または全部が表示出力される。この一覧表示された卵子診断情報/卵子情報/序列情報の特定の卵子の欄に対して、マウスクリックなどによって指定すると、その表示座標データに基づいて、画面に表示されている複数の卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04、放射冠A06、卵子A05、卵核A08及び/または第1極体A09の画像近辺に、当該序列データが「序列番号」に変換して上書き表示される。
また、画面に表示されている複数の卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04、放射冠A06、卵子A05、卵核A08及び/または第1極体A09の画像に対して、マウスクリックなどによって指定すると、その表示座表示データに基づいて、一覧表示された卵子情報/序列情報の対応する卵子の欄のみが色を変えるなどして対応する卵子の大きさなどの卵子情報が判明する。
したがって、序列化された各卵子A05を間違えないで、卵子A05を採取していくことができる。例えば、上述のように各卵子の表示画像と卵子A05の大きさなどの序列情報とがリンクされているので、卵子A05の序列の順番に画像を確認しながら、吸引針12と当該卵子A05とを画面上で見て、序列の順番に卵子A05を採取していくことができる。
なお、上記表示画像データは、卵子診断情報/卵子情報/序列情報とは別の番地に記憶され、この記憶番地のアドレスデータが当該卵子診断情報/卵子情報/序列情報に代わりに記憶されてもよい。
(6)卵観察装置の培養室28(インキュベーター)
図12、図13、図14及び図15は卵観察装置を示す。図12及び図13は培養室28(インキュベーター)を示し、この培養室28内には複数のマイクロシャーレ20と超音波探索体11とのセットが収容され、マイクロシャーレ20には受精卵C01が収納・保管・生育される。
この培養室28には複数段の可動プレート36…が、左右に2列、上下に3段、合計6枚設けられている。この可動プレート36…には複数の穴が形成され、上下に通気可能となっている。この各可動プレート36…には歯車機構などを介して上下動つまみ37…と前後左右動つまみ38…とがそれぞれ連結されている。
この上下動つまみ37と前後左右動つまみ38とは、培養室28の外に設けられ、培養室28の外から可動プレート36を上下動、前後または左右に移動若しくは回転させて動かして調整できるようになっている。これら上下動つまみ37…、前後左右動つまみ38…、歯車機構及び可動プレート36…によって移動機構が構成される。
この培養室28は二重構造になっていて密閉性が高く、二酸化炭素ボンベまたは窒素ボンベ(図示せず)から培養室28内に二酸化炭素又は窒素が供給/充満され、脱酸素剤などが内蔵されて、培養室28から酸素が除去される。受精卵C01は酸素によって生育が妨げられ死滅してしまうこともある。このような脱酸素機能のある培養室28によって、受精卵C01は酸素の悪影響から守られる。
また、受精卵C01の観察では、培養室28の外の上下動つまみ37と前後左右動つまみ38によって受精卵C01を移動調整でき、ドア39をあける必要がないため、酸素の流入を防ぐことができる。受精卵C01を培養室28に収納するときはドア39をあけるが、迅速に行うので酸素及び可視光線の悪影響を最低限におさえることができる。
上記のようなマイクロシャーレ20及び超音波探索体11のセットは、可動プレート36…ごとに、1つずつ、または複数ずつ、例えば2つずつが、載置される。この培養室28は小型金庫から冷蔵庫ぐらいの大きさで、ヒーター及び温度センサーが内蔵されて、36度〜38度ほどの体温と同じ温度に維持される。また、この培養室28は、光が遮断されていて暗室状態である。
したがって、採取・生育・培養されている上記受精卵C01に可視光線・紫外線などが当たることがなく、受精卵C01の生育を妨げたり、受精卵C01を死滅させたりすることがない。超音波は受精卵C01に当たってもこのような悪影響・傷害を与えることがない。そして、可視光線・紫外線を当てないで、超音波を随時当てながら、受精卵C01の生育状態をリアルタイムで観察することができる。
(7)マイクロシャーレ20(収納体)と超音波探索体11
図14は上記マイクロシャーレ20(収納体)と超音波探索体11とを示す。マイクロシャーレ20はガラスでできた直径4〜5cmほど、高さ1cmほどの円盤形の容器であり、底容器21と上蓋22とからなっている。この各マイクロシャーレ20は、上記可動プレート36…上に形成されたシャーレ凹部42…内に動かないよう収納される。
この底容器21には超音波ファントム23(充填体)が充填されていて、この超音波ファントム23は、超音波に対して卵子と異なる反射性を持つ、超音波に対して反射しない性質をもつ、または超音波に対して人体の皮膚や組織と同じ音速を持ち同等の反応をする、親水性のウレタンゴムやゲル基材からなっている。この超音波ファントム23は超音波に対して受精卵・卵子とは異なる反射性または音速をもつ。なお底容器21と上蓋22とは一体でもよいし別体でもよい。
この超音波ファントム23の中央はすり鉢状に凹んで大凹部24が形成されている。この大凹部24の中央には小凹部25がさらに形成され、この小凹部25のなかには上述のように採取した卵子が採取された精子とともに収納される。この小凹部25から大凹部24へかけて培養液26が充填され、卵が生育可能とされる。この収納・生育される卵としては、成熟卵子でもよいし、未成熟卵子でもよいし、受精卵でもよいし、未受精卵でもよい。
上記マイクロシャーレ20の上蓋22の中央には蓋穴27が形成され、この蓋穴27には上記超音波探索体11が挿通され、この超音波探索体11の先端は、上記培養液26の中に浸っている。なお、この上蓋22と蓋穴27は省略されてもよい。この超音波探索体11からは超音波が照射され、この超音波の反射エコーが超音波探索体11に随時受信されて取り込まれ、画像データに随時変換されて、上記内部記憶部5に随時書き込まれ記憶され、受精卵C01の超音波映像が取り込まれる。この場合、超音波画像の焦点・撮影可能範囲・画角があうように可動プレート36が上下動される。
この場合、超音波探索体11の先端の太さ・幅・大きさは上記大凹部24の幅・内径・大きさより大きく、超音波探索体11の先端は大凹部24内に収納される。この場合、超音波探索体11の先端は、上記大凹部24の底に当接していてもよい。これにより、小凹部25の深さを超音波探索体11の超音波映像の焦点距離に対応したものに一律に設定させておけば、超音波探索体11の先端を上記大凹部24の底に当接させるだけで、焦点が自動的に合わせられる。この焦点距離はだいたい4mm〜10mmほどであり、最長50mmほどである。
上記培養室28の天井及び上記可動プレート36の下面に上記超音波探索体11は吊下げられて動かないように固定される。したがって、超音波探索体11の振動が防止され、超音波画像が鮮明になる。この場合、可動プレート36の上記シャーレ凹部42は省略されてもよく、そうすると可動プレート36が動いてマイクロシャーレ20が超音波探索体11に当接すると、マイクロシャーレ20は超音波探索体11に引きずられて可動プレート36上を移動することになる。
上記マクロシャーレ20の上蓋22の蓋穴27の幅・内径・大きさは、超音波探索体11の幅・太さ・大きさより大きく、超音波探索体11の幅・太さ・大きさの1.2倍ないし2倍であり、「遊び」があり、大凹部24の幅・内径・大きさは蓋穴27の幅・内径・大きさとほぼ同じであるので、可能プレート36が前後又は左右に動くと、超音波探索体11は受精卵C01に対して水平に動くことができる。これにより、超音波探索体11先端の超音波画像を取り込むことのできる範囲(撮影可能範囲)画角に受精卵C01を取り込むことができ、超音波画像の中心などの画像の最適な位置に受精卵画像を映すことができる。
受精卵C01は小凹部25内で保護されるほか、前後左右などに動かないようにされ、回転もされないようにされる。したがって、所定時間経過ごとまたは所定時間にわたる受精卵C01の観察において、受精卵C01の位置や向きが変化せず、受精卵C01の生育状態を正確に把握することができる。
なお、上記超音波探索体11は以下のように揺動可能なようにしても良い。すなわち、培養室28の天井及び上記可動プレート36の下面には係止フック40が2つずつ設けられ、一方上記超音波探索体11の根元に吊下フック41が設けられ、この吊下フック41は係止フック40に係合吊下げられ、上記超音波探索体11は逆さまで吊り下げられる。これにより、超音波探索体11は前後または左右に揺動可能に保持される。
上記可動プレート36が前後左右に動かされまたは回転されて、超音波探索体11先端が大凹部24の内壁または上蓋22と蓋穴27の内縁に当接すると、これに応じて超音波探索体11は前後左右に揺動され、超音波探索体11の先端がマイクロシャーレ20内の受精卵C01からずれないようにされ、超音波探索体11による超音波画像スコープが受精卵C01からずれないようにされる。そして、超音波画像の焦点があうように可動プレート36が上下動される。
可動プレート36が上動して、超音波探索体11の先端下面が大凹部24の底に当接しても、小凹部25の幅・内径・大きさは超音波探索体11の幅・太さ・大きさより小さく、小凹部25の幅・内径・大きさは大凹部24の幅・内径・大きさより小さく、小凹部25は大凹部24の下に形成され、小凹部25の深さは受精卵C01の大きさより大きいので、超音波探索体11の先端下面が小凹部25内の受精卵C01を押圧してしまうことがない。さらに、超音波探索体11は吊下げられているので、大凹部24の底が超音波探索体11を押し上げることも可能となり、受精卵C01が保護される。
(8)超音波映像の取り込む回路
図15は、超音波探索体11…からの超音波映像を切り換えて取り込む回路を示す。上記の複数の超音波探索体11…からのコード29…はコードセレクタ31に差し込まれる。このコードセレクタ31は上記入力部3に含まれ、コードセレクタ31では、複数の超音波探索体11…からの各映像信号のうちいずれか1つが選択され、上記内部記憶部5に書き込まれる。
このコードセレクタ31はCPU(コントローラ)1によって切り換えられ、各超音波探索体11…からの各受精卵C01の映像が順次取り込まれ、上記内部記憶部5に順次書き込まれる。この内部記憶部5には、上記マイクロシャーレ20及び超音波探索体11のセットに対応した数の画像メモリエリアが形成されており、各超音波探索体11からの画像データが、対応する各画像メモリエリアに書き込まれる。
この画像メモリエリアのそれぞれは、上記出力部4に画像出力される複数領域(表示画面領域・印刷紙面領域)に個々対応しており、画像メモリエリアの画像データは出力部4の対応する領域(表示画面領域・印刷紙面領域)に出力される。
これにより、培養室28内の各受精卵C01の配置関係に対応して、出力部4にこの各受精卵C01の画像が合成されて表示される。例えば、培養室28内の各受精卵C01が2列×3段で配置されれば、出力部4にこの各受精卵C01の画像が2列×3段で表示される。むろん、各受精卵C01の画像が切り換えられて1つずつ個別に表示されてもよい。
このようにして取り込まれた各受精卵C01の各画像データにつき、上記図3及び図4の卵子診断/検査処理のフローチャートに示すプログラムがそれぞれ実行され、図10に示すデータの加工・ソート処理が実行されて、これら複数の受精卵C01の中からいちばん成熟した受精卵C01が選択される。
この場合、採取された卵子は、図8及び図9において、卵子A05、放射冠A06、卵核A08、第1極体A09、場合によって卵丘A04の部分までであって、図6〜図8において、卵胞A01、顆粒膜層A03、卵胞腔A02、場合によって卵丘A04までは、含まれない。
この採取された卵子には精子が振り掛けられ/添加されて受精され、この受精卵C01の生育が観察される。受精卵C01には、受精から2時間ほどで第2極体などが現れ、受精から5〜6時間ほどで小さな前核などが現れ、受精から15〜18時間ほどで雌核、雄核などがはっきり現れ、さらに卵割が進んで、受精から5日ほどで胚盤胞に至る。
したがって、図3、図4及び図10の卵子診断/検査処理においては、これらの卵子A05、放射冠A06、卵核A08、第1極体A09、場合によって卵丘A04の各画像についてのみ処理が実行され、もっとも成熟した卵子が選ばれる。
同様にして、上記各時間経過ごとに、上記卵の第2極体、前核、雌核または雄核の有無、発生状態、均一性または左右対称性、その後の胚盤胞への発育、若しくは胚盤胞の発育状態、大きさまたは形状についても、図3、図4及び図10の卵子診断/検査処理が実行され、もっとも生育した受精卵C01が選ばれる。
この場合、胚盤胞の発育状態、大きさ、形状については、あらかじめ設定された値との差が所定値未満であれば、当該受精卵C01の受精後の生育が良好であると判断される。この培養室28で観察される卵は受精された成熟卵子のほか、受精前の成熟卵子、未受精の成熟卵子、未受精の未熟卵子でもよく、このような卵がマイクロシャーレ20の中で培養液から栄養を与えられて生育されていく。
(9)他の実施の形態
本発明は、上記実施例に限定されず、種々変更可能である。例えば、マイクロシャーレ20(収納体)の底容器21及び/または上蓋22は、超音波ファントム23(充填体)と同じ素材で構成されても良く、マイクロシャーレ20(収納体)と超音波ファントム23(充填体)とが一体化・同一化されていてもよい。
マイクロシャーレ20(収納体)の中の超音波ファントム23(充填体)が省略され、マイクロシャーレ20(収納体)の中には培養液と受精卵C01のみが収納されていても良い。上記大凹部24は省略されて小凹部25のみとしてもよく、この場合上記上蓋22の蓋穴27が、大凹部24の役目を果たす。
超音波ファントム23(充填体)は、超音波に対して卵子と異なる反射性を持つ、超音波に対して反射しない性質をもつ、または超音波に対して人体の皮膚や組織と同じ音速を持ち同等の反応をすれば、どのような材質でも良い。超音波探索体11は超音波を発して受信し超音波画像を結像できればどのようなものでもよく、超音波の発信媒体と超音波の受信媒体が別体でもよい。
可動プレート36は、各マイクロシャーレ20(収納体)に対して個別に設けられるのではなく、1つの可動プレート36に複数のマイクロシャーレ20(収納体)が設置されてもよい。この場合、1つの受精卵C01に焦点を合わせたら、他の受精卵C01に同時に焦点を合わせることはできなくなるが、各受精卵C01の映像を1つずつ撮影して記憶していくことになる。可動プレート36の枚数は6枚ではなく、7枚以上でもよいし、5枚以下、例えば3枚でも2枚でも1枚でもよい。
超音波探索体11の焦点・撮影可能範囲・画角を合わせるのに、超音波探索体11が吊下げられている上の可動プレート36の方を上下動つまみ37または/及び前後左右動つまみ38によって動かして、マイクロシャーレ20(収納体)の方ではなく、超音波探索体11の方を動かして調整してもよい。
このような上下動つまみ37または/及び前後左右動つまみ38による可動プレート36の可動スケールは、超音波画像の縮尺/スケールの切り換えに応じて、切り換えられてもよい。例えば、超音波画像が拡大されれば、上下動つまみ37または/及び前後左右動つまみ38を動かした量に応じた、マイクロシャーレ20(収納体)または超音波探索体11の移動量は小さくなる。
可動プレート36または上下動つまみ37及び前後左右動つまみ38にストッパが設けられ、マイクロシャーレ20(収納体)の大凹部24の内壁または上蓋22の蓋穴27の内縁が超音波探索体11に当接しないようにしてもよい。
超音波探索体11の形状は円柱状のほか、円盤状、角柱状、立方体、直方体、球形、楕円球形、テーパ状、平板状などどのような形状でもよく、これに応じて大凹部24の形状も円柱状、角柱状、半球形、半楕円球形、テーパ状、半平板状となる。小凹部25は円柱状のほか、角柱状、半球形、半楕円球形、テーパ状、半平板状でもよい。
上記超音波探索体11の周囲には可撓性を有するゴムキャップが巻回され、このゴムキャップによってマイクロシャーレ20の上蓋22の穴に蓋がされて、マイクロシャーレ20が密封され、受精卵C01の保護が多重になってもよい。これにより、超音波探索体11が揺動可能なように吊下げられたときでも、超音波探索体11の振動が防止され、超音波画像が鮮明になる。
上記図3及び図4のフローチャートのステップ02、04、06、10、14、16、17、18、19でNOであって、未熟卵子であったときでも、卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04、放射冠A06、卵子A05それぞれの画像データ、この画像の表示座標データ、大きさ、密度、真円率のデータ、成熟度または良好度、序列データなどが、同様にソートされリンクされて記憶されても良く、この未熟卵子についても上記ステップ23の序列化がされてもよい。
上記超音波エコー画像の倍率を上げたり解像度を上げるには、照射する超音波の周波数を上げたり、取り込まれた画像そのもののデジタルデータの各画素を補間すること等により、画像データそのものを拡大したりする。倍率または解像度を上げるのはどのような手法によってもよい。
超音波エコー画像の倍率を上げたり解像度を上げたりすると、場合によって各画素の上記濃度データが変化するので、上記濃度データ/濃淡データ、理想的な成熟卵子の密度データ、上記密度の相対的比率データまたは密度の相対的比率データが対比される基準データも修正されることがある。この場合、この上記濃度データ/濃淡データ、理想的な成熟卵子の密度データ、上記密度の相対的比率データまたは密度の相対的比率データが対比される基準データも倍率、解像度または超音波の周波数に応じて修正される。
上述の卵子診断/検査処理において、ステップ01〜02、03〜04、05〜06、07〜10、11〜14、15〜16、17、18、19それぞれの処理のいずれか1つまたは複数が省略されてもよい。
成熟と判定された卵子A05を採取可能とするのは、ステップ21の成熟卵子の表示のほか、音声出力、その旨のデータ出力、卵子A05の上記画像への未熟または成熟など重ね表示、各卵子A05の各識別情報を未熟グループと成熟グループとに分けて表示する、ロボットなどによって卵子吸引針12を接近させて吸引させてもよい。
上記ステップ09〜10、13〜14の相対的大きさ、ステップ15〜16の相対的密度の判定では、予め内部記憶部5に記憶された理想的な成熟した卵子A05、放射冠A06、卵胞A01、卵胞腔A02の大きさ、密度と対比して、これらの差が所定値未満であれば、当該卵胞内の卵子を生体の外へ採取可能(ステップ21、24)としてもよい。
上記ステップ06、19の真円率の識別は、絶対的なものではなく、卵子A05、放射冠A06、卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04それぞれの真円率が求められ、これらが相互に対比されて、これらの対比結果が所定値未満であれば、当該卵胞内の卵子を生体の外へ採取可能(ステップ21、24)としてもよい。これにより、卵子A05、放射冠A06、卵胞A01、卵胞腔A02、卵丘A04が相似形で形状が近いものを選び出すことができる。
また、このような相対的比率の判定では、卵胞A01、卵胞腔A02、顆粒膜層A03、卵丘A04、卵子A05、放射冠A06、卵核A08、第1極体A09のうち、いずれか2つまたは3つ以上の組織の大きさ、密度または/及び真円率につき、対比判定が行われてもよい。
さらに、上記判定では、卵胞A01、卵胞腔A02、顆粒膜層A03、卵丘A04、卵子A05、放射冠A06、卵核A08、第1極体A09のうち、いずれか2つまたは3つ以上の組織につき、理想的な成熟したこれらの組織の大きさ、密度または/及び真円率を予め記憶しておき、これらの理想値と実際の測定値との間で絶対的な対比判定が行われてもよい。
上記超音波エコー画像を上記デジタル2値化すれば、白と黒との中間色は消滅し、白または黒のいずれかになる。しかし、アナログ画像状態で、コントラストを上げても白と黒との中間色は消滅し、白または黒のいずれかになる。コントラストを下げると、中間色が現れ、図6〜図9に示すような光学的な画像に近くなる。
(10)他の発明の効果
[1]酸素及び可視光線が遮蔽される培養室内に設置され、卵が収納される収納体と、 この収納体を培養室内において前後、左右または上下に移動させる若しくは回転させる移動機構と、 上記培養室内に、この収納体に対して設置される超音波探索体と、 上記収納体に充填され、超音波探索体からの超音波に対して卵子と異なる反射性を持つ、超音波に対して反射しない性質をもつ、または超音波に対して人体の皮膚や組織と同じ音速を持ち同等の反応をする充填体と、 この充填体に形成された上記卵が収容される小凹部と、同充填体に形成された上記超音波探索体が収容される大凹部とであって、この小凹部は当該超音波探索体より小さく、当該小凹部は上記大凹部より小さく、当該小凹部は上記大凹部の下に形成され、小凹部の深さは卵の大きさより大きく、 上記超音波探索体からの超音波画像を映す映像手段とを備えたことを特徴とする卵観察装置。これにより、小凹部内で卵を保護・守りながら、卵を超音波画像で観察することができる。また、小凹部内で卵が動かないようにされ、受精卵の観察で生育状態を正確に把握することができる。
[2]酸素及び可視光線が遮蔽される培養室内に設置され、卵が収納される収納体と、 この収納体を培養室内において前後、左右または上下に移動させる若しくは回転させる移動機構と、 上記培養室内に、この収納体に対して揺動可能に設置され、当該収納体の上記移動に応じて揺動される超音波探索体と、 この超音波探索体からの超音波画像を映す映像手段とを備えたことを特徴とする卵観察装置。これにより、収納体が超音波探索体に当接しても、超音波探索体が揺動して、収納体を保護・守ることができ、超音波探索体の向きを変えて、卵への焦点・撮影可能範囲・画角を維持できる。
[3]上記収納体及び上記超音波探索体は複数用意され、この各収納体はそれぞれ独立に前後、左右または上下に移動される若しくは回転されることを特徴とする請求項1または2記載の卵観察装置。これにより、各卵ごとに焦点・撮影可能範囲・画角を合わせることができる。
[4]上記収納体及び上記超音波探索体は複数用意され、上記映像手段は複数の収納体の各卵の超音波画像を切り換えてまたは合成して映すことを特徴とする請求項1、2または3記載の卵観察装置。これにより、各卵の画像を容易に対比することができる。
[5]上記卵の第2極体、前核、雌核または雄核の有無、発生状態、均一性または左右対称性、その後の胚盤胞への発育、若しくは胚盤胞の発育状態、大きさまたは形状について、あらかじめ設定された値との差が所定値未満であれば、当該卵を受精後の生育が良好であるとすることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の卵観察装置。これにより、生育の良い受精卵を容易に選ぶことができる。
[6]CPUが卵子診断装置に対して、 超音波画像装置によって生体の卵巣の中の卵子の大きさを画像上で識別させ、 同じく超音波画像装置によって当該卵子の周囲にある放射冠の大きさを画像上で識別させ、 これら識別された卵子の大きさに対する放射冠の大きさの相対的比率を求めさせ、 この求められた相対的比率に基づき、卵子に対して放射冠が相対的に大きければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とさせることを特徴とする卵子診断方法。これにより、成熟卵子を未熟卵子から区別して採取することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[7]上記卵子の密度と放射冠の密度とを上記超音波診断装置による画像上で識別し、この識別された密度の相対的比率を求め、この求められた相対的比率に基づき、卵子の密度に対して放射冠の密度が近ければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項6記載の卵子診断方法。これにより、成熟卵子を未熟卵子からより正確に区別して採取することができる。また、超音波エコー画像の上で画像の濃淡の差で、成熟卵子と未熟卵子とを確実に区別することができる。
[8]予め記憶された成熟卵子の大きさ、密度、真円にどれだけ近いかを表す真円率、同成熟卵子の放射冠の大きさ、密度、真円率と、上記識別された卵子の大きさ、密度、真円率、上記識別された放射冠の大きさ、密度、真円率とを対比して、これらの差が所定値未満であれば、当該卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項6または7記載の卵子診断方法。これにより、成熟卵子を未熟卵子からより正確に区別して採取することができる。また、判断にあたっての対比対象も収集しておく必要がない。
[9]上記卵子及び放射冠を内包する卵丘の大きさと、この卵丘を内包する卵胞または卵胞内の卵胞腔(antrum)の大きさとを上記超音波画像装置による画像の上で識別し、この識別された大きさの相対的比率を求め、この求められた相対的比率に基づき、卵胞の大きさに対して卵丘の大きさが大きければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項6、7または8記載の卵子診断方法。これにより、卵胞が成熟並に大きくても卵丘/卵子が小さいものを除外することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[10]予め記憶された成熟した卵胞または卵胞腔の大きさ、密度、真円にどれだけ近いかを表す真円率、予め記憶された成熟した卵丘の大きさ、密度と、識別された卵胞または卵胞腔の大きさ、密度、真円率、識別された卵丘の大きさ、密度とを対比して、これらの差が所定値未満であれば、当該卵胞内の卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項6、7、8または9記載の卵子診断方法。これにより、卵胞が成熟並に大きくても卵丘/卵子が小さいものを除外することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[11]上記卵子に第1極体があるかどうか、または卵核(germinal vesicle)があるかどうか判別され、第1極体があれば当該卵子を生体の外へ採取可能とし、卵核があれば当該卵子を生体の外へ採取不可能とすることを特徴とする請求項6、7、8、9または10記載の卵子診断方法。これにより、卵核または第1極体の有無に基づいても成熟卵子を識別できる。
[21]CPUが卵子診断装置に対して、 超音波画像装置によって生体の卵巣の中の卵子の大きさを画像上で識別させ、 同じく超音波画像装置によって当該卵子の周囲にある放射冠の大きさを画像上で識別させ、 これら識別された卵子の大きさに対する放射冠の大きさの相対的比率を求めさせ、 この求められた相対的比率に基づき、卵子に対して放射冠が相対的に大きければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とさせることを特徴とする卵子診断方法。これにより、成熟卵子を未熟卵子から区別して採取することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[22]超音波画像装置によって生体の卵巣の中の卵子の大きさを画像上で識別させる処理、 同じく超音波画像装置によって当該卵子の周囲にある放射冠の大きさを画像上で識別させる処理、 これら識別された卵子の大きさに対する放射冠の大きさの相対的比率を求めさせる処理、 この求められた相対的比率に基づき、卵子に対して放射冠が相対的に大きければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とさせる処理とを、コンピュータに対して実行させること特徴とする卵子診断のためのコンピュータプログラム。これにより、成熟卵子を未熟卵子から区別して採取することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[23]超音波画像装置によって生体の卵巣の中の卵子の大きさを画像上で識別する手段と、 同じく超音波画像装置によって当該卵子の周囲にある放射冠の大きさを画像上で識別する手段と、 これら識別された卵子の大きさに対する放射冠の大きさの相対的比率を求める手段と、 この求められた相対的比率に基づき、卵子に対して放射冠が相対的に大きければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とする手段とを備えたことを特徴とする卵子診断装置。これにより、成熟卵子を未熟卵子から区別して採取することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[24]上記卵子の密度と放射冠の密度とを上記超音波診断装置による画像上で識別し、この識別された密度の相対的比率を求め、この求められた相対的比率に基づき、卵子の密度に対して放射冠の密度が近ければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項23記載の卵子診断装置。これにより、成熟卵子を未熟卵子からより正確に区別して採取することができる。また、超音波エコー画像の上で画像の濃淡の差で、成熟卵子と未熟卵子とを確実に区別することができる。
[25]予め記憶された成熟卵子の大きさ、密度、真円にどれだけ近いかを表す真円率、同成熟卵子の放射冠の大きさ、密度、真円率と、上記識別された卵子の大きさ、密度、真円率、上記識別された放射冠の大きさ、密度、真円率とを対比して、これらの差が所定値未満であれば、当該卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項23または24記載の卵子診断装置。これにより、成熟卵子を未熟卵子からより正確に区別して採取することができる。また、判断にあたっての対比対象も収集しておく必要がない。
[26]上記卵子及び放射冠を内包する卵丘の大きさと、この卵丘を内包する卵胞または卵胞内の卵胞腔(antrum)の大きさとを上記超音波画像装置による画像の上で識別し、この識別された大きさの相対的比率を求め、この求められた相対的比率に基づき、卵胞の大きさに対して卵丘の大きさが大きければ、当該卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項23、24または25記載の卵子診断装置。これにより、卵胞が成熟並に大きくても卵丘/卵子が小さいものを除外することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[27]予め記憶された成熟した卵胞または卵胞腔の大きさ、密度、真円にどれだけ近いかを表す真円率、予め記憶された成熟した卵丘の大きさ、密度と、識別された卵胞または卵胞腔の大きさ、密度、真円率、識別された卵丘の大きさ、密度とを対比して、これらの差が所定値未満であれば、当該卵胞内の卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項23、24、25または26記載の卵子診断装置。これにより、卵胞が成熟並に大きくても卵丘/卵子が小さいものを除外することができるし、成熟卵子の情報を予め用意しなくてもよい。
[28]上記卵子に第1極体があるかどうか、または卵核(germinal vesicle)があるかどうか判別され、第1極体があれば当該卵子を生体の外へ採取可能とし、卵核があれば当該卵子を生体の外へ採取不可能とすることを特徴とする請求項23、24、25、26、27または28記載の卵子診断装置。これにより、卵核または第1極体の有無に基づいても成熟卵子を識別できる。
[29]上記超音波画像装置は経膣の超音波探索体を有しており、この超音波探索体は卵子吸引針を有しており、超音波探索体が探索して画像が形成される範囲内に、卵子吸引針が入り込むことを特徴とする請求項23、24、25、26、27または28記載の卵子診断装置。これにより、超音波エコー画像で卵子と卵子吸引針とを確認しながら、卵子を採取できる。
[30]上記請求項23、24、25、26、27、28または29における卵子の複数につき、その卵子の大きさ、密度または真円率を求め、これらの大きさ、密度または真円率に基づいて、各卵子の成熟度または良好度を演算し、これら各卵子を識別する識別情報と、大きさ、密度または真円率の情報と、成熟度または良好度の情報と、各卵子の画像またはこの画像の表示座標データとを各卵子ごとにリンクしてソートしたことを特徴とする卵子診断情報の情報構造。これにより、卵子または卵子の周囲の組織との画像と、大きさ、密度または真円率とを見比べながら、成熟卵子を判定できるし、卵子を成熟度または良好度に応じて序列化できる。
[31]上記各卵子の画像が表示画面に表示されたときの各画像と、各卵子の成熟度または良好度、大きさ、密度または真円率とは、リンクされ、一方の1つを指定すると他方が他の卵子から区別して表示され、他方の1つを指定すると一方が他の卵子から区別して表示されることを特徴とする請求項30記載の卵子診断情報の情報構造。これにより、見ている卵子または卵子の周囲の組織との画像から、大きさ、密度または真円率を直ちに知ることができるし、見ている大きさ、密度または真円率から、卵子または卵子の周囲の組織との画像を直ちに知ることができる。
[32]卵胞の大きさと、この卵胞内の卵胞腔(antrum)の大きさとを上記超音波画像装置による画像の上で識別し、この識別された大きさの相対的比率を求め、この求められた相対的比率に基づき、卵胞の大きさに対して卵胞腔の大きさが大きければ、当該卵胞内の卵子を生体の外へ採取可能とすることを特徴とする請求項23、24、25、26、27、28または29記載の卵子診断装置。これにより、卵胞と卵胞腔とに基づいて、成熟卵子を判定できる。
(11)超音波顕微鏡の不妊検査・治療への応用(本件発明の背景説明)
現在不妊症の検査を行ったり治療を行なったりする際、人の排卵を肉眼でとらえる事は不可能である。その為、不妊症々例に対してその排卵の有無を調べる方法は、以下の2通りみである。
1)経膣式超音波検査で卵胞(卵子が入っていると考えられる水胞)の発育を調べその破裂を確認する事と、末梢血液中のエストラジオールの値を検査する事によりその成熟性を予想する。
2)体外受精治療で卵胞に針を穿刺し卵胞内容を吸引の上、取り出し、光学顕微鏡で卵子を確認する。
また、体外受精治療の際にも、その採卵(卵子を体外へとり出す事)の時期決定に関して、同様に卵胞の発育・血中エストラジオールの値を参考にしているに過ぎず、実際、卵胞内卵子の有無・成熟性について全く解からぬまま採卵を行なっているのが現状である。もし、卵胞内卵子の存在・成熟性が肉眼で確認する事が出来る様になれば、不妊症の検査として現在不可能とされる。
1)卵胞内に卵子の発育しない不妊症
2)卵胞内卵子の発育の悪い不妊症
3)卵胞内卵子は発育するがそれが卵胞外へ排卵されない不妊症の診断が可能になる。
それに加え、体外受精治療に関しても、今迄は闇雲に卵胞に針を穿刺し吸引するといった、患者に対して観血的な侵襲の強い治療を行なって初めて卵子の存在が判明したわけであるが、その採卵時期の決定を簡潔にするのみでなく、卵子の存在もはっきり肉眼でとらえられる為、採卵の不必要な症例はその中止も容易に可能になると考える。
故に、超音波顕微鏡を応用する事によって今迄に不可能であった不妊症検査が可能になり現不妊治療にとって必要不可欠な機器であると考える。その超音波顕微鏡を不妊超音波断層電脳生体顕微鏡(ST‐TOMKO Bio Microscope)または不妊超音波生体顕微鏡(ST‐TOMCO Bio Microscope)、またその超音波プローブを(TOMKO Probe)または(TOMCO Probe)と命名する。
ST:sterility、TOM:tomograph、KO(CO):computerのそれぞれの略である。
(12)不妊超音波断層電脳生体顕微鏡(ST‐TOMKO Bio Microscope)または不妊超音波生体顕微鏡(ST‐TOMCO Bio Microscope)の開発(本件発明の背景説明)
既存の超音波診断装置の周波数・分解能については、5〜7.5MHzで約2〜3mm、35〜50MHzで0.3〜0.6mm、100MHzで約0.05〜0.1mmである。つまり、5〜100MHz、40〜60MHzまたは5〜7.5MHzの超音波プローブで0.05mm〜3mmである。
微少な物体をより明確に超音波画像でとらえる為には、高周波数のリニアタイプまたは振動端子式の超音波装置(周波数5〜100MHz、40〜60MHzまたは7.5〜9.0MHz)を使用し、そのプローブの走査線の数を増やす必要がある。スキャンした画像はコンピュータで解析し増幅拡大し、高品位画面または、写真による画像処理をする事により約100倍まで拡大する事が出来る。その結果、約0.05mm(50μm)の物体を肉眼で識別する事が出来ると考えられる。
それを医療面に応用する事によって今迄肉眼で認識出来なかった現象・病変を超音波画像でとらえる事が可能になる。
ヒトの卵巣卵胞内で発育し排卵直前の卵子は図2及び図11の如く、卵胞内の卵丘の中にある。
卵丘の構造は図8の如くである。
成熟卵胞は約20mmの液体の入った球である。その中に卵丘が中に突出した形となっている。超音波検査の特性として、水の中に一部分が突出した形の物はコントラストがつけ易くとらえ易い。しかし、従来の超音波検査では、排卵とは、卵胞が発育し、それが破裂する現象しか認識出来ない。
従来の超音波診断装置では、卵胞内腔に突出した部分が見える事もあるが、それが現在の超音波画像からは卵丘かどうかは不明である。卵丘とは、図8(約100倍拡大の組織像)の如くであり、卵丘細胞が卵子をかこむ様に存在する。卵子その物は約100μmの球であるがそのまわりの組織を含めると卵丘は300μm以上のかたまりと考えられる。
体外受精の際採卵された卵子は、成熟するに従い卵子自体も増大し卵子の周囲にある卵丘細胞が規則的放射状に配列し卵子の周囲で放射冠を形成する為その成熟度を見分ける事が出来る。超音波断層検査では、物体の粗・密を認識する事が、その主たる目的である。
未熟な卵子は中にGerminal Vesicle(卵核)が存在し、大きさが小さく形もいびつで透明性に欠ける。その上、卵丘細胞は不均一で密に卵子に付着している為、超音波顕微鏡画像(非公知)では小さく明るく(白く)造影される。卵子が成熟するに従い、卵子の中のGerminal Vesicle(卵核)が消失し卵子自体が大きく透明になり 卵丘細胞は粗になり放射冠が均一に形成される為、全体に大きく暗く(黒く)造影される。放射冠はそのまま放射状に描出される。これら明るく(白く)と暗く(黒く)とは処理画像の白黒反転によって入れ替わる。
その結果超音波顕微鏡では、それぞれその想像図8の如く描写される。約100倍の画像を得る事により、卵胞内卵子の存在及び成熟度は診断が可能になる。
(13)TOMKO受精卵診断装置についての考察
上述した本件発明の卵観察装置/卵子診断装置(受精卵診断装置)は、TOMKO受精卵診断装置またはTOMCO受精卵診断装置と呼ぶことにする。
受精卵の診断について、培養室(インキュベーター)内で培養器(マイクロシャーレ)の中に卵子と精子を入れて媒精し、その受精発育の有無、良し悪しを判断する為に、従来は胚培養士がその都度培養器を培養室外に出し、光学顕微鏡下で観察する必要があった。その際必ず受精卵は、卵にとって有害とされる酸素及び可視光線等によって悪影響を受けていた。その為、受精卵を観察する機会は制約を受けており充分な観察が行なえずにいたのが現状である。それがリアルタイムで受精卵に対して無害な状態で観察出来る装置が開発された事により体外受精治療の中で以下の点が改良される事となる。
1)不妊症の中で卵子、または精子を原因とする受精障害が原因と考えられる不妊症々例の未受精を防ぐ目的で早期の顕微授精(レスキューICSI)を行なう事が可能となる。
2)異常受精卵を早期に判定する事が可能となる。
3)受精卵の発育の状態がリアルタイムで観察する事が出来る為、受精卵の発育の良し悪し、速度等も判定し易くなり最良の受精卵を子宮内に移植する事が容易となる。
4)胚盤胞から内細胞塊(=胎児)が孵化して来る際、透明帯を破る事が出来ない卵の存在も早期に判定が出来る為、胚培養士による早期の受動的な孵化(AHA)により生殖補助が可能になる。
(14)不妊超音波断層電脳生体顕微鏡(ST‐TOMKO Bio Microscope)または不妊超音波生体顕微鏡(ST‐TOMCO Bio Microscope)の使用法
1)卵胞内卵子のスキャン
i)ST‐TOMKO Bio Microscope またはST‐TOMCO Bio MicroscopeのTOMKO Probeまたは TOMCO Probeを、経膣的に卵胞に合わせる。(図2)
卵胞のスキャンをする
卵胞内壁を動画で卵胞内に突入した部分を探したり、コンピュータスキャナーを用いて卵丘と思われる突出部に合わせたりする。(図6、図7)
ii)再スキャン→×20、×40とコンピュータで拡大する。
iii)画像処理をする。(図8)