JP4854801B1 - 電気擦弦楽器および電気撥弦楽器−電気擦弦楽器変換キット - Google Patents
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Abstract
【課題】 電気擦弦楽器として擦弦楽器で得られる長所を持ちつつ、フレット利用楽器で可能な和音演奏を可能とする電気擦弦楽器を提供する。
【解決手段】 電気擦弦楽器100は、ボディ本体110とネック120とヘッド130と複数本の弦140の部位を備えている。弦140はブリッジ112により弦面が凸曲面となるように支持されている。ネック120の上面には指板121と音程を決めるフレット122が設けられている。ネック120のローポジション120aでは、指板121と弦140の弦面が略平面に形成されるとともにフレット122が略平面に植設され、フレット122を用いてフレット利用単音擦弦奏法に加えてフレット利用和音擦弦奏法により和音を出すことも可能となっている。一方、ネック120のハイポジション120bでは、指板121と弦140の弦面が凸曲面に形成されるとともにフレット122を植設せず、フレット無し擦弦奏法が可能となっている。
【選択図】 図1
Description
撥弦楽器:ギター、ウクレレ、三味線など
擦弦楽器:バイオリン、チェロ、胡弓、ビオラ・ダ・ガンバ、アルペジョーネなど
打弦楽器:ピアノ、楊琴など
ここで、撥弦楽器は、弦をピックまたは指で弾いて演奏するフレットまたはそれに類する指標とボディ本体およびネックを備えた楽器であり、擦弦楽器は、弓で弦を擦って演奏する共鳴胴とネックを備え、フレットを備えていない楽器(ただし、ビオラ・ダ・ガンバ、アルペジョーネはフレットを備えている楽器)であり、打弦楽器は、弦を打弦手段によって打撃して演奏する共鳴板を備えた楽器である。
一方、撥弦楽器や打弦楽器は、弦を弾いたり打撃したりして弦を振動させた後は次第に減衰してゆくので持続音を発音させることができず、擦弦楽器のような発音開始後の音量の強弱の表現ができない。また、従来のフレット利用撥弦楽器は音程を定めるためのフレットがあるがために従来のフレット無し擦弦楽器では可能な音程の微妙なゆれを表現するビブラート奏法等の無音階での演奏表現ができない。
つまり、各々の弦楽器はそれぞれ特徴を持って発展してきた経緯があり、擦弦楽器と撥弦楽器の長所を兼ね備えたような弦楽器は現在のところ存在していない。
バイオリンなどの擦弦楽器では、むしろ、確実に単弦を擦弦して他の弦には触れないようにするため、ネック先端の糸巻き部とボディ本体のテイルピースの間に、上面が凸曲面となっているブリッジを立てることにより、弦面が凸曲面となるように工夫していた。つまり、従来のアコースティックバイオリンおよびエレクトリックバイオリンのいずれにおいても、凸曲面のブリッジを立てることにより弦面を凸曲面とし、一本一本の弦を確実に単独で擦弦するものとなっていた。なお、弦面は、ブリッジに近いハイポジション(ボディ本体近くの弦の位置)のみならず、ネック先端に近いローポジション(ネック先端近くの弦の位置)においても凸曲面となっている。この点は、上記の特開2003−150164号公報、特開2005−283732号公報、米国特許7230174号に開示されたエレクトリックバイオリンも同様である。
つまり、(1)フレット付撥弦楽器のように、複数の弦を指で一度に押さえて演奏する和音演奏ができるとともに、(2)擦弦楽器のように、擦弦開始後も発音が持続して音量の強弱の表現ができ、(3)フレット付擦弦楽器でありながらも、従来のフレット無し擦弦楽器では可能である単弦のみを選択的に擦弦して音程の微妙なゆれを表現するビブラート奏法等の無音階での演奏表現ができるという、従来の擦弦楽器の長所、従来の撥弦楽器の長所を併せ持ったものが好ましい。
つまり、電気擦弦楽器として、フレット無し楽器同様に擦弦するフレット無し奏法を可能としつつ、フレット利用楽器同様に複数の弦を同時に擦弦して振動させるフレット利用和音奏法ができれば、従来にはない全く新しい演奏音を創出することができる電気擦弦楽器が得られることとなる。
なお、ここで、弦面とは、ネックの幅方向における各弦の並びが形成する仮想的な曲面を意味する。
このように、ピックアップ装置が個々のピックアップ部材の高さを可変とする構造を備えることにより、個々の前記弦と個々の前記ピックアップ部材との距離を調整することによりバランスの取れた音量の出力が可能となる。
上記本発明の電気擦弦楽器は、左手(右利きの場合。以下、左利きの場合は逆の右手となる)によりいわゆるエレクトリックギターのような運指を行い、かつ、右手(右利きの場合。以下、左利きの場合は逆の左手となる)は弓による擦弦動作を行うため、抱え方に特徴がある。まず、左手の運指に関してはいわゆるエレクトリックギターのような和音演奏を可能とするため、いわゆるエレクトリックギターのように楽器全体を肩から吊り下げて腰前で構える。一方、右手による弓の擦弦動作を伴うため、楽器の重心位置と擦弦位置がずれている場合、回転モーメントが生じて楽器が擦弦動作につれて揺動してしまうことを抑えるため、腰に対して固定させる必要がある。そこで、本発明者は以下のストラップを開発した。
電気撥弦楽器−電気擦弦楽器変換キットの構成は、従来の電気撥弦楽器のネックに対して貼り付ける指板と、前記指板上に設けられたフレットと、従来の電気撥弦楽器のボディ本体に取り付けるブリッジとを含むものである。ここで、前記従来の電気撥弦楽器のネックのナットが弦が形成する弦面を平面に形成する形状であり、前記ブリッジが前記弦が形成する弦面を凸曲面に形成する形状であり、前記弦面を前記ネックのローポジションからハイポジションにかけて平面から凸曲面まで滑らかに変化させるものであり、前記指板が、前記弦面の変化に合わせて平面から凸曲面まで滑らかに変化する形状であり、前記フレットが、前記ネックのローポジションからミドルローポジションにおいて前記指板上に植設され、前記ネックのミドルハイポジションからハイポジションにおいて前記指板上に植設されず、植設された前記フレットの形状を前記弦面の凸曲面の変化に応じて平面から凸曲面形状まで滑らかに変化するものとしたことを特徴とするものである。
このような電気撥弦楽器−電気擦弦楽器変換キットを提供することにより、従来の電気撥弦楽器として広く普及しているエレクトリックギターを基に、電気撥弦楽器−電気擦弦楽器変換キットの指板の貼り付けやブリッジの取り付けにより、簡単に本発明の電気擦弦楽器を製作することができる。
つまり、一台の擦弦楽器でありながらポジションによって、フレット利用楽器としての奏法とフレット無し楽器としての奏法が可能となり、ローポジションでは、複数の弦を指で一度に押さえて演奏する「フレット利用和音擦弦演奏」や「フレット利用単音擦弦演奏」ができるとともに、ハイポジションでは、擦弦を持続しつつ音程の微妙なゆれを表現するビブラート奏法等の無音階での演奏表現などの「フレット無し擦弦奏法」ができる。
図1は、本発明の電気擦弦楽器100の構成例を模式的に示す図である。上側の図は平面図、下側の図は側面図となっている。この例では6弦の例となっている。
図1に示すように、本発明の電気擦弦楽器100は、ボディ本体110、ネック120、ヘッド130、弦140(弦140a〜140f)の各パーツを備えている。また、擦弦するための弓200(図1には図示せず)がある。ボディ本体110には、テイルピース111、ブリッジ112、ピックアップ装置113、音量調節ツマミ114、出力端子115が設けられており、ネック120には、指板121、フレット122、ナット123が設けられており、ヘッド130には糸巻き部131が設けられている。
図2は、テイルピース111における各弦140a〜140fの固定位置を模式的に示した図である。図1におけるA−A線断面図となっている。図2に示すように、各弦140a〜140fの高さは略同一であり、水平に等間隔で並べられて固定されているものとなっている。
このように、本発明の電気擦弦楽器100はブリッジ112を備えることにより、単音での擦弦演奏が可能となっている。
ピックアップ装置113は、ボディ本体110内に組み込まれている楽音を生成する信号処理回路(図示せず)に接続されており、電気信号が処理される。
出力端子115は、外部機器に接続するための部分であり、スタジオでレコーディング機器に接続して録音したり、アンプスピーカーに接続してコンサート等において大音量で演奏したりすることができるようになる。
ネック120は、奏者が指で弦140(この例では140a〜140f)を押さえる部分であり、この構成例では、後述するように、フレットを利用して指で複数弦を同時に押さえる「フレット利用和音擦弦奏法」と、フレットを利用して一本の弦に指を立てて押さえる「フレット利用単音擦弦奏法」、フレットを利用せずに演奏する「フレット無し擦弦奏法」を選択的に行うことができるものとなっている。
ネック120の上面には指板121が貼り合わされ、指板121の上の所定箇所には各弦140の音程を決めるフレット122が設けられ、ネック120の先端でヘッド130との境界付近にナット123が設けられている。フレット122は弦140と直交するように指板121の長手方向に所要の間隔をおいて植設されている。各フレット122の上面は、指板121の表面から上方に突出している。
指板121の上面は、ハイポジション付近では凸曲面、つまり、幅方向において、中央付近が最も高く、両端が最も低くなるように凸曲面に湾曲し、ローポジションに向かって行くほど徐々に凸曲面の曲率が小さくつまり山が低くなってゆき、ミドルローポジション付近では略平面近くになり、ローポジションでは平面になるように、ハイポジションからローポジションにかけて緩やかかつ滑らかに変化する形状となっている。
まず、図5は、指板121の後端付近であるいわゆるハイポジション付近における指板121の形状と各弦140a〜140fの張設位置を模式的に示した図である。図1におけるD−D線断面図となっている。図5に示すように、各弦140a〜140fの高さは両端にある弦140a、弦140fが低く、中央にある弦140c、弦140dが最も高く、弦面が凸曲面を形成するように張設されているが、擦弦箇所であった図4に示した張設位置より若干低くなっている。また、指板121の上面も凸曲面となっており、弦140a〜140fの弦面の凸曲面に応じた凸曲面となっており、各弦140a〜140fと指板121間の距離は概ね等しくなっており、どの弦140a〜140fも容易に指を立てて押さえる「単音擦弦奏法」に適していることが分かる。また、ハイポジション付近における指板121上にはフレット122が設けられていない。このように、ハイポジション付近ではフレット122が設けられておらず、従来のバイオリンと同様の「フレット無し擦弦奏法」に適した構造となっており、ビブラート奏法等の無音階での演奏表現などができる。
また、このミドルハイポジション付近における指板121上にもフレット122が設けられておらず、従来のバイオリンと同様の「フレット無し擦弦奏法」に適した構造となっており、ビブラート奏法等の無音階での演奏表現などができる。
図9は、本発明の電気擦弦楽器100を演者が抱えるためのストラップ300を併せて示した図である。ストラップ300は、一方をネック120先端またはヘッド130付近に取り付け、他方をボディ本体の後端付近に取り付けた第1のストラップ310と、一方をボディ本体110の先端付近に取り付け、他方をボディ本体110の後端付近に取り付けた第2のストラップ320を備えたものとなっている。
図10は、電気擦弦楽器100の擦弦位置を示す図である。弓200により擦弦する場合、弓200を弓先から弓元へ運ぶアップボウ、弓元から弓先へ引くダウンボウの擦弦動作が繰り返される。弦140と弓200の擦弦により摩擦力が生じるが、アップボウのときに生じる摩擦力のベクトルと、ダウンボウのときに生じる摩擦力のベクトルが異なるため、アップボウ動作、ダウンボウ動作に応じて擦弦楽器100が揺動してしまう。また、擦弦楽器にも物理的な重心が存在しており、擦弦楽器が吊り下げられた状態で擦弦される場合、その重心位置と擦弦位置が概ね合致しておれば、擦弦という動作により左右に揺動する回転モーメントは小さいが、擦弦位置と重心位置がずれていれば回転モーメントが生じて左右に揺動しやすくなる。従来のバイオリンなどでは、たとえ擦弦位置と重心位置がずれていて回転モーメントが生じても、バイオリン全体を首と運指を行う指の2点で支えることによってこの回転モーメントによりバイオリンが揺動する問題は生じない。しかし、本発明の電気擦弦楽器100では、第1のストラップで首から吊り下げる状態であるので、擦弦位置と重心位置がずれていて回転モーメントが生じると左右に揺動することとなる。そこで、本発明の電機擦弦楽器100では第2のストラップ320を腰に巻き付けることにより、擦弦演奏時に生じる電気擦弦楽器100全体の左右揺動を抑制する。
図11は、図6に示したミドルハイポジションにおいて、弦140eに対して指を立てて押さえつつ弓200で弦140eのみを擦弦している様子を、(a)ミドルハイポジションに対応する図1のE−E線断面図において示した図と、(b)弓200での擦弦箇所に対応する図1のC−C線断面図において示した図である。
この状態において、図11(b)に示すように、弓200は擦弦箇所において弦140eのみが擦弦されて音が発せされている。なお、フレットが設けられていないので、運指を細かく揺らすいわゆるビブラート奏法等の無音階での演奏表現が可能となる。このように、ハイポジションからミドルハイポジションにおいて「フレット無し擦弦奏法」を行うことができる。
図12は、図8に示したローポジションにおいて、すべての弦140a〜弦140fに対して指で押さえつつ弓200で弦140a〜弦140fを滑らかに擦弦している様子を、(a)ローポジションに対応する図1のG−G線断面図において示した図と、(b)弓200での擦弦箇所に対応する図1のC−C線断面図において示した図である。
なお、ミドルローポジションからローポジションにおいても、単弦を演奏するいわゆる「フレット利用単音擦弦奏法」も可能である。
110 ボディ本体
111 テイルピース
1110 ブリッジサドル位置調節ネジ
112 ブリッジ
1120 ブリッジサドル高さ調節ネジ
113 ピックアップ装置
114 音量調節ツマミ
115 出力端子
120 ネック
121 指板
122 フレット
123 ナット
130 ヘッド
131 糸巻き部
140 弦
200 弓
300 ストラップ
310 第1のストラップ
320 第2のストラップ
Claims (7)
- ボディ本体と、前記ボディ本体に連設されたネックおよびヘッドと、前記ボディ本体と前記ヘッド間に張設された複数本の弦と、前記ネックの上面に接合された指板と、前記指板上の一部の領域に植設された音程を決めるフレットと、前記ボディ本体上に設置され前記弦の弦面を凸曲面に支持するブリッジと、前記ネック上に設置され前記弦の弦面を平面に支持するナットと、前記弦の振動を検出し電気信号に変換するピックアップ装置と、電気信号を外部音響機器に出力する出力端子を備え、
前記ネックのローポジションのナットにおいて、前記弦が形成する弦面を平面に形成するとともに、前記ブリッジにおいて、前記弦が形成する弦面を凸曲面に形成することによって前記弦面を前記ネックのローポジションからハイポジションにかけて平面から凸曲面まで滑らかに変化させ、前記指板を前記弦面の変化に合わせた形に平面から凸曲面まで滑らかに変化させるとともに、前記ネックのローポジションからミドルローポジションにおいて前記フレットを植設し、前記ネックのミドルハイポジションからハイポジションにおいて前記フレットを植設せず、植設された前記フレットの形状を前記弦面の凸曲面の変化に応じて平面から凸曲面形状まで滑らかに変化するものとしたことを特徴とする電気擦弦楽器。 - 前記ネックのローポジションにおいて、前記弦面に合わせた形に湾曲した前記フレットを用いたフレット利用和音擦弦奏法およびフレット利用単音擦弦奏法を可能とし、
前記ネックのハイポジションにおいて、前記フレットを用いないフレット無し擦弦奏法を可能としたことを特徴とする請求項1に記載の電気擦弦楽器。 - 一方を前記ネック先端付近またはヘッド付近に取り付け、他方を前記ボディ本体の後端付近に取り付けた第1のストラップと、一方を前記ボディ本体の先端付近に取り付け、他方を前記ボディ本体の後端付近に取り付けた第2のストラップを備え、
前記第1のストラップを肩から吊り下げることにより楽器全体の重量を支えるとともに、前記第2のストラップを腰に巻き付けることにより、楽器重心位置と擦弦位置とのずれにより演奏時に生じる楽器の左右揺動を抑制することを可能とした請求項1または2に記載の電気擦弦楽器。 - 前記ピックアップ装置が、個々の前記弦に対応している個々のピックアップ部材の高さを可変とする構造を備え、個々の前記弦と個々の前記ピックアップ部材との距離を調整することによりバランスの取れた音量の出力を可能としたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電気擦弦楽器。
- 前記フレットが取り替え可能な構造を備え、金属製のフレット、木製または樹脂製のフレットを選択して取り付け可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電気擦弦楽器。
- 前記ボディ本体が共鳴用の共鳴胴を備え、電気楽器として電気信号処理を経たスピーカーから出力される音と、前記共鳴胴を介した前記弦の直接の共鳴音の双方の音色を発音することができることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電気擦弦楽器。
- 従来の電気撥弦楽器のネックに対して貼り付ける指板と、前記指板上に設けられたフレットと、従来の電気撥弦楽器のボディ本体に取り付けるブリッジとを含む電気撥弦楽器−電気擦弦楽器変換キットであって、
前記従来の電気撥弦楽器のネックのナットが弦が形成する弦面を平面に形成する形状であり、前記ブリッジが前記弦が形成する弦面を凸曲面に形成する形状であり、前記弦面を前記ネックのローポジションからハイポジションにかけて平面から凸曲面まで滑らかに変化させるものであり、
前記指板が、前記弦面の変化に合わせて平面から凸曲面まで滑らかに変化する形状であり、
前記フレットが、前記ネックのローポジションからミドルローポジションにおいて前記指板上に植設され、前記ネックのミドルハイポジションからハイポジションにおいて前記指板上に植設されず、植設された前記フレットの形状を前記弦面の凸曲面の変化に応じて平面から凸曲面形状まで滑らかに変化するものとしたことを特徴とする電気撥弦楽器−電気擦弦楽器変換キット。
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