JP4854299B2 - 癒着防止材 - Google Patents
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Description
癒着の発生は、長期間にわたって患者に疼痛を与えるだけでなく、合併症を伴う生体機能障害等を引き起こし、甚だしい場合は、再手術の必要すら生ずることとなるため、患者にとって精神的、肉体的な苦痛を伴い、大きな問題となっている。かかる癒着を防止するため、従来から種々の癒着防止材及びその材料が提案され試みられている。
現在使用されている癒着防止材の最も基本的な態様として、創傷部位の組織が修復または治癒するまでの期間にわたって、当該創傷部位を、他の生体組織から物理的に遮蔽・分離して癒着を防止する方法が広く採用されている。このように、生体組織を物理的に遮蔽・分離する素材としては、ポリプロピレン、シリコン樹脂、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン等のプラスチックス材料が使用されている。しかしながら、これらのプラスチックス材料は、通常生体非吸収性の高分子材料であるため、生体組織中にそのまま長時間残留し、組織の修復を遅らせるだけでなく、感染症、炎症の発生原因になる。また、最終的には創傷部位から分離除去されねばならず、組織と融着していた場合、当該分離除去は相当の苦痛を患者に与えることになる。
このため、体内で分解して、生体内に吸収される生体吸収性高分子を癒着防止材とすることが試みられている。
例えば、天然多糖類であるアルギン酸ナトリウムやヒアルロン酸の水溶液を主剤とする腹腔内癒着防止材が知られている(例えば、特開昭57−167919号公報を参照。)。当該水溶液状の癒着防止材は、創傷部位に塗布されるか、腹腔内に注入する等、患部への適用は容易であるが、その形態が水溶液であるため、生体によって速やかに吸収され排泄されてしまいやすく、短期間の癒着防止効果(遮蔽効果)しか期待できず、持続時間が短いので、治癒の遅い損傷部位には用いることができないという欠点がある。
このような低粘度の水溶液からなる癒着防止材は、腹腔内の臓器間の空隙に大量に充填することによって、臓器間の空隙を維持し、遮蔽効果を得ようとする発想からなっており、患者に対して過剰の負担をかけるため望ましくない。さらにまた、腹腔内に充填された低粘度水溶液は、創傷部の周辺に大量に充填されるため、本来、速やかに組織が再生、接着するべき部位、例えば、縫合部などにも進入し、縫合不全のような悪影響を及ぼす危険性もある。
かかる欠点を改良するため、ヒアルロン酸の低粘性水溶液を主体とする癒着防止材については、これを架橋ゲルとして使用することが提案されている(例えば、特開昭60−234864号を参照。)。しかしながら、かかる架橋ゲルは、例えば1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)等の多官能性エポキシドにより触媒存在下で架橋するものであるため、架橋ゲル中に当該架橋剤や触媒が残留する可能性があり、高い安全性が維持されるか否かの点で疑問が残っており、また、架橋剤等を完全に除去することは煩雑な工程を要するという問題がある。
一方、水溶液以外の成形体の形態で使用される生体吸収性高分子からなる癒着防止材としては、キチンやキトサンを主体とするもの(例えば、特許第2948254号を参照。)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン(又は乳酸/グリコール酸共重合体、乳酸/グリコール酸/カプロラクトン共重合体等これらのモノマーの二元又は三元共重合体)等を主体とするもの(例えば、特開2001−192337号、特開平4−283227号を参照。)が提案されている。これらは、繊維、フィルム、チューブ等の任意の形態で使用しうるとされているが、最も好ましくはフィルム状の形態で使用することを企図しているものである。
これらフィルム状の癒着防止材の使用例としては、例えば、腹腔鏡下で胃、小腸、大腸、食道、直腸等の消化器官の手術を行い、その後、当該フィルム状の癒着防止材を丸めて筒状にし、これをポートより腹腔内へ投入、使用するものである。また、全身麻酔、開腹手術時、消化器科の胃切除、肝切除、鼠径ヘルニア等、婦人科の卵巣摘出、子宮筋腫核出術等を行い、その後、フィルム状の癒着防止材を開腹部より投入し、創傷部位に貼付・密着させるもので、ある程度の癒着防止効果を奏することができる。
しかしながら、創傷部位が単純でなく、複雑な形状の創傷部位や腹腔鏡下での使用の場合、上記したような従来の材質により形成されたフィルム状の癒着防止材は、種々の問題が生ずる。すなわち、生体内部の体液と接触すると同時に含水ゲル化して塊となったり、複雑な形状の創傷部位に適合させようと、当該フィルムを密着させる操作を種々試みている際に、フィルムが破れたり、折り重なったりして、形状の復旧が不能となることがあった。また、隙間に空気が溜まったままになったりするため、操作性が必ずしも良いものではない。さらに、創傷部位へ無事装着できたとしても、その後患者の動作に伴い創傷部位からのズレを生じたりする。しかも、場合によっては、これら癒着防止材は、その分解速度が所望されるよりも早いため、創傷部位が完治する前に消失してしまい、癒着防止能が途切れるといった問題が生じている。
なお、その他、従来からの癒着防止材を適用する場合の患者に共通の問題として感染症が挙げられる。すなわち、手術、ケガ、その他の理由によって、生じた創傷により、患者の体力が著しく低下している状態にあるため、しばしばその体内に存在する常在菌により容易に感染症が引き起こされるのである。特に、腹部消化器内科領域での、吻合した腸管などからの感染は、大きな問題になりつつある。このように、癒着防止材を使用する場合は、感染症により、種々の機能不全を起こし、場合によっては再手術が必要になるなどの問題を生じている。
かくして、本発明の目的は、従来の癒着防止材に伴う問題を解決し、複雑な形状、構造の創傷部位にも適用が容易であり、しかも生体組織によって適度に吸収・排泄され、それによって所望の期間にわたって安定してその癒着防止効果を発揮し、かつ、感染症を防止する生物学的に安全な癒着防止材を提供することである。
(1) 生体吸収性高分子を主成分とする創傷部位の癒着防止材であって、当該癒着防止材には少なくとも一種類の治癒促進性の薬剤が含有されていることを特徴とする癒着防止材。
(2) 前記生体吸収性高分子は、ゲル状、固形状または粒状で、創傷部位の形状に合わせて容易に変形可能である(1)に記載の癒着防止材。
(3) 前記ゲル状または固形状の生体吸収性高分子は、乾燥時若しくは含水膨潤時の粘度が0.1〜500000Pa・s、25℃でのヤング率が1〜40MPa、かつ、平均分子量100〜1000000である(1)又は(2)に記載の癒着防止材。
(4) 前記ゲル状の生体吸収性高分子は、粘度0.1〜500000Pa・sで、18ゲージより小さい注入針により、創傷部位へ注入可能である(1)ないし(3)のいずれかに記載の癒着防止剤。
(5) 前記粒状の生体吸収性高分子は、平均粒子径1〜2000μmで、複雑な創傷部位を容易に被覆できる(1)又は(2)に記載の癒着防止材。
(6) 前記ゲル状又は粒子状の生体吸収性高分子が、極小腔より創傷部位に注入可能なものである(1)ないし(5)のいずれかに記載の癒着防止材。
(7) 前記生体吸収性高分子が、少なくとも二種類以上の多糖類及びその誘導体の組成物からなり、当該組成物における前記多糖類及びその誘導体の組成比を調整することにより、生体吸収性を制御することができることを特徴とする請求項1に記載の癒着防止材。
(8)前記癒着防止材がフィルム状あるいはゲル状であり、創傷部位の形状に合わせて変形可能である(7)に記載の癒着防止材。
(9)前記フィルム状の癒着防止材が乾燥時の剛軟度が0.1〜10000mN・mmである(7)又は(8)に記載の癒着防止材。
(10) 前記フィルム状の癒着防止材が2gf/cm2以上の密着強度を有するものである(7)ないし(9)のいずれかに記載の癒着防止材。
(11) 前記ゲル状の癒着防止材が、その乾燥時若しくは含水膨潤時の粘度が0.1〜100000Pa・sである(7)又は(8)に記載の癒着防止材。
(12) 前記組成物を形成する多糖類及びその誘導体のうちの少なくとも1種類がプルラン及びその誘導体である(7)ないし(11)のいずれかに記載の癒着防止材。
(13) ゲル状、固形状、粒状またはフィルム状の癒着防止材が、生体内で3ヶ月以内に分解吸収される(1)ないし(12)のいずれかに記載の癒着防止材。
(14) 生体吸収性高分子100質量部に対し、0.001から10質量部の治癒促進性薬剤を含有している(1)ないし(13)のいずれかに記載の癒着防止材。
(15) 前記治癒促進性薬剤が、抗菌剤、抗生剤、抗炎症剤、抗癒着剤、抗がん剤及び消毒剤からなる群より選択される少なくとも一種類である(1)ないし(14)のいずれかに記載の癒着防止材。
本発明の癒着防止材は、生体吸収性高分子を主成分とし、少なくとも一種類の治癒促進性の薬剤が含有されているものである。
(生体吸収性高分子)
本発明における生体吸収性高分子とは、生体内に吸収され、そこで容易に加水分解や酵素分解され、その分解生成物が最終的には二酸化炭素ガスと水とに代謝され体外に排出される高分子である。
本発明の癒着防止材の主成分である生体吸収性高分子としては、特に限定するものではないが、例えば、乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトン等を重合単位とする単独重合体や共重合体からなる生体吸収性高分子、ヒアルロン酸やアルギン酸を主成分とする生体吸収性高分子が好適に使用される。
前記乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトン等を重合単位とする生体吸収性高分子は、加水分解性の生体吸収性高分子であって、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、乳酸/グリコール酸二元共重合体、乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトン三元共重合体等が好例として挙げられる。
前記ヒアルロン酸やアルギン酸を主成分とする生体吸収性高分子は、それ自体が酵素分解性の生体吸収性高分子であって、例えば、ヒアルロン酸単体、ヒアルロン酸とカルボキシメチルセルロースの共重合体等が好例として挙げられ、また前記アルギン酸を主成分とする生体吸収性高分子としては、例えばアルギン酸単体が好ましいものとしてあげられる。
また、その他、コラーゲン、アテロコラーゲン(コラーゲンをプロテアーゼ処理して水溶性としてもの)、ゼラチン等を主成分とする酵素分解性の生体吸収性高分子であってもよい。
(含水膨潤性の生体吸収性高分子)
本発明の癒着防止材の主成分である生体吸収性高分子は、創傷部位の形状にあわせて、固形状、例えば粒子状として使用することもできるが、含水して膨潤する生体吸収性高分子を、膨潤ゲルの形態で使用することもできる。この生体吸収性高分子のゲル状、固形状、粒状の形態は、分子量を調整することにより選択することができる。
当該含水膨潤性の生体吸収性高分子は、水溶性のものと非水溶性のものがあるが、本発明においては、非水溶性のものが好ましい。当該含水膨潤性の生体吸収性高分子は、ゲル状または固形状に形成し、この形態で癒着防止材として創傷部位に適用することができる。
かかる含水膨潤性の生体吸収性高分子としては、特に限定するものではないが、例えば前記ヒアルロン酸、アルギン酸、キトサン等の多糖類や、ゼラチン等のタンパク質、さらに乳酸/グリコール酸/ε−カプロラクトン三元共重合体(以下「LA/GA/ε−CLT共重合体」という場合がある。)が好例として挙げられる。
当該LA/GA/ε−CLT共重合体を、含水膨潤性の生体吸収性高分子として使用して癒着防止材とする場合、すなわち、ゲル状の癒着防止材を得るうえで、重要なのは、当該生体吸収性高分子の分子量を固体状の場合より低下させることであり、例えばゲル状の癒着防止材では、分子量10〜20000のものが好ましい。
一方固形状(粒状)の癒着防止材の場合は、当該LA/GA/ε−CLT共重合体のモル比は、(3〜75)/(5〜90)/(5〜40)、分子量20000〜300000のものが通常使用される。
本発明における三元共重合体のモル比(または配合比)及び分子量は、ゲル粘度、生体内分解性等により適宜設定可能であり、上記した範囲及び後記実施例に記載したものに限定されるものではない。また、当該三元共重合体は、製造のしやすさの点からは、グリコール酸のモル含有率は高いほうが好ましいが、その適用状況に応じて適宜変更可能であって、このモル含有率に限定されるものではない。
(ゲル状生体吸収性高分子の物性)
前記含水膨潤性の生体吸収性高分子は、乾燥時または含水膨潤時の粘度が0.1〜500000Pa・s、25℃でのヤング率が1〜40MPa、かつ、平均分子量100〜1000000好ましくは100〜100000で、膨潤率が5〜50000%、好ましくは20〜20000%のものを使用することが好ましい。なお、本発明における平均分子量とは、GPCにより測定したモル平均分子量Mnを意味するものである。
ゲル状の癒着防止材においては、その膨潤ゲルの粘度を低くするほど、ゲルの注入が容易となるが、あまり低すぎて、0.1Pa・s未満の場合は、癒着防止材が容易に流出したり、きわめて速やかに生体内に吸収されてしまい、充分な時間、創傷部位へ残存することができない。一方、膨潤ゲルの粘度があまり高すぎて、500000Pa・sを超えるような場合は、膨潤ゲルが硬すぎるため、創傷部位を傷つけるおそれがあるので好ましくない。
膨潤ゲルのヤング率があまり小さく、1MPa未満の場合は、ゲルが柔か過ぎ、逆にあまり高く、40MPaを超えるような場合は、ゲルが硬すぎるため、いずれも膨潤ゲルである癒着防止材の注入操作が困難になるため好ましくない。
膨潤ゲルにおいて、その膨潤率があまり小さく、5%未満の場合は、ゲルを創傷部位へ密着させた後、患者の動作に伴い、ゲルが移動したりして当該部位に固定されず、創傷部位からずれるおそれがある。また、ゲルの膨潤率があまり高く、50000%を超えるような場合は、癒着防止材を生体内に注入する操作において、癒着防止材が体液と接触すると同時に、全体が急激に含水ゲル化してしまうため、その操作性に大きな問題が生じ、好ましくない。
本発明における生体吸収性高分子の平均分子量は、一般的に100〜1000000、好ましくは300〜500000である。分子量があまり小さく、100未満の場合は、創傷部位が完治する以前に、当該高分子は分解消失してしまうので、癒着防止材としての機能を充分奏することができず、一方、その平均分子量があまり大きく、1000000を超えるような場合は、当該吸収性高分子の分解がきわめて遅くなり、創傷が完治した後も、長時間分解せずに残存することになるので好ましくない。
本発明における前記ゲル状の生体吸収性高分子は、粘度が0.1〜500000Pa・sの場合、18ゲージより小さい注入針により、創傷部位へ注入することが可能である。
(粒状の生体吸収性高分子)
本発明における粒状の生体吸収性高分子としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリε−カプロラクトン等が好例として挙げられ、平均分子量は1000〜10000のものであり、平均粒子径1〜2000μm、好ましくは1〜1000μm、更に好ましくは1〜700μmのものであり、後記実施例に示すように、複雑な創傷部位をも、容易に被覆することができる。
本発明の生体吸収性高分子は、固形状、ゲル状、粒子状いずれであっても、極小腔より注入可能である。さらに創傷部位に応じてその量を調整し、充填ができる。
(癒着防止材の使用方法)
本発明の癒着防止材の具体的な使用方法の一例としては、後記実施例に示すように、例えば、腹腔鏡下で胃、小腸、大腸、食道、直腸等の消化器官の手術を行い、その後、膨潤率18000%、含水膨潤時の粘度が2Pa・s、ヤング率が1.5MPa、平均分子量が300のゲル状の形態の癒着防止材をポートより腹腔内へ投与するものである。
また、同様な手術後、膨潤率40%、含水膨潤時の粘度が420000Pa・s、ヤング率が38MPa、平均分子量が78000、平均粒子径が500μmの粒子状の形態の癒着防止材をポートより腹腔内へ投与するものである。
以上が、本発明の生体吸収性高分子を主成分とする癒着防止材の基本的な態様であるが、より好ましい態様として、前記生体吸収性高分子が、少なくとも二種類以上の多糖類及びその誘導体(以下「多糖類等」ということがある。)の組成物からなり、当該組成物における前記多糖類等の組成比を調整することにより、生体吸収性を、創傷部位における癒着防止材の使用の態様に応じて、制御することができるものである。
(多糖類等)
このように、本発明のより好ましい態様としては、主成分である生体吸収性高分子として、少なくとも二種類以上の多糖類及びその誘導体を選択して組成物を形成して使用される。これは、数種の多糖類を混合することによって作製される組成物が極めて良好な、物理的な隔離による癒着防止効果、生物学的な癒着防止効果を有しており、さらに多糖類の種類によっては、組織表面での滞留性にすぐれており、また、多糖類の混合比よって、任意の期間生体内に留まらせ、癒着防止効果を発揮させうるという本発明者らの知見に基づくものである。
かかる多糖類等としては、例えばアガロース、デンプン、プルラン等の単純多糖類;アルギン酸等のポリウロン酸類;カラギーナン、ヒアルロン酸、キチン、キトサン、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のムコ多糖類(またはポリグリコサミン類)などが挙げられる。またこれら多糖類等はその誘導体として生体適合性のある塩の形態になっていてもよい。
このように本発明における多糖類等とは、特に限定するものではなく、それ自身及びその代謝分解物が生体に無害であって、かつ、生体内で吸収・排泄されるものを全て含む。また多糖類の誘導体としては、例えばNa、K等のアルカリ金属やCa、Mg等のアルカリ土類金属の塩、多糖類の水酸基がアセチル化又はエステルされ化学修飾されているものが挙げられる。
(好ましい多糖類等の組み合わせ)
本発明で用いる多糖類としては、癒着防止材としての基本的な作用、すなわち、癒着防止が必要な患部(創傷部位)での物理的な隔離作用を、より効果的に発揮させ、かつ、生体吸収性を制御しうるものが好ましい。しかしながら、実際上は、単一の多糖類等で癒着防止材としての種々の要請をすべて充足することは困難であるが、本発明者らの見出したところによれば、易水溶性又は難水溶性等水溶性の程度、ゲル化能、造粘性等異なった物性を有する二種以上の多糖類等を混合した組成物によれば、当該組成物を構成する各多糖類等の物性、組成割合を任意に変更することにより、単一の多糖類等では困難であった種々の要請を充足しえた癒着防止材を得ることができるのである。
例えば、難水溶性で一般的に増粘材として知られているカラギーナン、キサンタンガム、アルギン酸及びその誘導体やムコ多糖類;ゲル化能が高く、ゲル化剤(ゲル生成性多糖類)として知られているアガロース、グルコマンナン、キシログルカン、1,3−βグルカン、1,4−βグルカン等;水溶性であるプルラン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられ、これら異なる物性を有するものを任意に組み合わせることが好ましい。
二種類以上の多糖類の組み合わせの一つの好ましい例として、水に対しての溶解性が異なる多糖類等を組み合わせることが好ましく、特に、易水溶性の多糖類等と難水溶性の多糖類の組み合わせからなることが好ましい。易水溶性多糖類と難水溶性多糖類の選択及び組み合わせ、その組成比によって、生体内での吸収性の大幅な制御が可能となる。
なお、これらの多糖類等のなかでも、その基本成分としてプルランを選択し、これと他の多糖類等と組み合わせた組成物とすることが一つの好ましい態様である。プルランとは、マルトトリオース(グルコース3分子がα−1,4結合したもの。)が規則正しくα−1,6結合した天然の白色粉末からなる中性多糖類であって、水に溶解してゲル化することなく粘着性・付着性の強い低粘度(1×10−3〜2×10−3Pa・s水溶液を形成する。また当該プルラン水溶液は、被膜形成性、造膜性にすぐれており、キャスト法やコーティング法により強靭なフィルムを形成することが可能であるという特徴を有するものである。なお、プルランは、生体に対する安全性が極めて高く、澱粉と同様に医薬品添加物、化粧品材料として、使用制限なく適用されているものである。
したがって、プルランを、多糖類等の基本化合物とすることにより、生体適合性、創傷部位への被覆性・密着性、創傷部への滞留性に極めて優れた癒着防止材を形成することができる。例えば、後記実施例に示したように、易水溶性のプルランに対し、難水溶性のアガロースを適宜配合した組成物とすることにより、創傷部位の状況等に応じて、適宜フィルム状又はゲル状の癒着防止材とすることができ、いずれも好適な癒着防止機能を奏することができるのである。当該プルランを主体とする組成物の場合は、プルランとアガロース等他のゲル生成性多糖類との質量割合は、例えば、プルラン/他の多糖類=(5〜95)/(95〜5)程度である。
(多糖類等の分子量)
本発明で使用する多糖類等の平均分子量Mnは、特に制限されず、目標とする癒着防止材の適用部位により、必要とされる生体内分解吸収性を考慮して適宜選択されるが、通常、1000〜1000000の範囲のものが好ましい。
(癒着防止材の形態)
本発明の多糖類等を主体とする癒着防止材は、フィルム状あるいはゲル状として創傷部位に好ましく適用されるものであり、創傷部位の形状、状況に合わせて適宜変形可能である。ここで、フィルム状あるいはゲル状の癒着防止材は、一般的又は公知の作製方法で容易に製造可能である。すなわち、フィルム状の癒着防止材は、例えば多糖類等を混合した水溶液から流延法により、キャストフィルムとして作製することができ、また浸漬法や塗布法により作製することもできる。ゲル状の癒着防止材は、例えばゲル生成性多糖類に水または水性媒体を添加してゲル化させることにより容易に得ることができる。なお、多糖類等からなる組成物に対し、これ以外の生体吸収性高分子、例えばすでに述べた、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン(又は乳酸/グリコール酸共重合体、乳酸/グリコール酸/カプロラクトン共重合体)、ゼラチン等のタンパク質を、本発明の癒着防止材の効果を阻害しない範囲で添加してもよい。添加量は、多糖類等に対して、質量比で、50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下である。
(フィルム状の癒着防止材の特性)
多糖類等組成物から形成されるフィルム状の乾燥時の癒着防止材の剛軟度は、0.1〜10000mN・mmであることが好ましく、10〜100mN・mmがより好ましい。当該フィルムの剛軟度が0.1mN・mm未満ではフィルムが柔軟すぎて、手術の際の手技が煩雑であり、また、その剛軟度が10000mN・mmを超えると当該フィルムの柔軟性が極端になくなり、癒着防止材を適応する隣接部位の組織を傷つける可能性があるため好ましくない。くわえて、柔軟性がないため、創傷部位が複雑な形状である場合には、当該形状に応じて創傷部位に当該フィルムを密着させる等の適応が困難になる。
またフィルム状の癒着防止材の密着性は、当該フィルムが生体内の臓器と接触した際の接触面に平行する方向への引っ張り抵抗の測定により評価可能であり、フィルム状の癒着防止材は、2gf/cm2以上、好ましくは5gf/cm2の程度の密着強度を持つことが望ましい。2gf/cm2未満の密着強度では、癒着防止材が複雑な形状の創傷部に対して良好に密着せずはがれ易い。
フィルム状の癒着防止材の厚みは、特に限定するものではないが、通常1〜1000μm、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜100μm程度である。
(ゲル状の癒着防止材の特性)
多糖類等組成物から形成されるゲル状の癒着防止材の粘度は、0.1〜100000Pa・sの範囲が好ましく、1〜1000Pa・sの範囲がより好ましい。
ゲル状の癒着防止材が癒着の防止を円滑に行うためには、一般に3日から3ヶ月、好ましくは7日から2ヶ月程度の期間にわたって癒着防止材が患部(創傷部位)に存在することが望ましいが、粘度が0.1Pa・s未満では、当該患部での滞留性が低くなりすぎて、短時間に癒着防止効果が失われ、安定した癒着防止効果を発揮することができない。また、100000Pa・sを超えると、当該多糖類等組成物が、必要以上に長時間にわたって患部に滞留し、治癒した後においても、生体内で分解・吸収されず、異物として残存する可能性があり好ましくない。
(治癒促進性薬剤)
本発明の癒着防止材には、少なくとも一種類の治癒促進性の薬剤が含有されていることを特徴とする。治癒促進性薬剤とは、最も広義に解釈するものとし、創傷部位が治癒する過程で、生体吸収性の制御、生体内安定性の向上、粘度の調節、剛軟度の調整、又は細菌感染の防止等、治癒の促進に何らかの好ましい寄与を行う一切の薬剤を意味し、例えば、抗菌剤、抗生剤、抗炎症剤、抗癒着剤、抗がん剤及び消毒剤等から選択される少なくとも一種類の薬剤である。
本発明において、癒着防止材に含有されうる治癒促進性薬剤としては、必要に応じて、ペニシリン系類、アンピシリン系類、テトラサイクリン系類、カナマイシン系類、ストレプトマイシン系類、ポリミキシンB、ニューキノロン系類、サルファ剤類、ポリリジン、キトサン、セフェム系類、カルバペネム系類、アミノグリコシド系類、クロラムフェニル系類、テトラサイクリン系類等の抗生剤及び抗菌剤;
コラーゲン、フィブロネクチン、ケラチンなどの構造たんぱく質;塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機塩類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類;アクトシン、プロスタグランディンE1(PGEI)などの血行改善薬、ウリナスタチン、Tissue Inhibitor of Metalloproteinase(TIMP)、アンジオテンシン変換酵素阻害剤などの酵素阻害剤;
FGF(fibroblast growth factor)、BMP(bone morphogenetic protein)、TGFβ1(transforming growth factor)NGF(nerve growth factor)などの増殖因子;などが挙げられ、さらには、ステロイド剤、インドメタシン等の抗炎症剤、抗がん剤、色素、イソジン等の消毒剤、生体内の癒着に深くかかわっていると考えられているカルシウムイオンの不活化剤(キレート剤)などが好ましいものとして挙げられる。
(治癒促進性薬剤の含有量)
これらの治癒促進性薬剤は、1種または2種以上を併用して含有させてもよい。本発明においては、生体吸収性高分子100質量部に、0.001から10質量部、好ましくは0.1から5質量部の治癒促進性薬剤を混合するのが望ましい。当該薬剤の混合量があまり少なく0.001質量部未満であると、当該薬剤の効果が発現しない。また当該薬剤の混合量があまり多く10質量部を超えるような場合は、過剰投与となるので好ましくない。
本発明の生体吸収性高分子は、配合されるこれら治癒促進性薬剤の効果を失活させることなく、均一に混合することが可能であり、創傷部位の治癒期間中は、創傷部位に滞留し、混合した薬剤を徐放して薬剤の効果を阻害せずに発揮させ、治癒後は安全に体内に吸収分解されるものである。
さらに詳述すれば、本発明においては、特に癒着防止材から引き起こされる可能性のある感染症の問題に鑑み、含有させる治癒促進性薬剤としては、抗菌性を有する薬剤が好ましい。その中でも抗菌性に関して広い抗菌スペクトルを有する薬剤が望ましく、特にニューキノロン系のノルフロキサシンが好ましい。
本発明の癒着防止材において、これら治癒促進性薬剤の生体吸収性高分子への混合方法は如何なる手段を講じても良く、単に生体吸収性高分子(特に多糖類等)に混合しても良いし、また生体吸収性高分子(特に多糖類等)に薬剤の効能を失うことなく結合させることも可能である。
また、本発明の癒着防止材においては、特に二種以上の多糖類等を組み合わせ、組成物として使用することにより、適度な生体内における分解速度を得ることができるので、創傷部位が完治するまで分解消失しないで癒着防止効果を維持でき、炎症等の生体への異常を来すことがない。
更に、本発明の癒着防止材においては、治癒促進性の薬剤として、抗菌剤等を含有しているので、当該抗菌剤等の作用により、炎症・感染症の可能性も低減できる。
(癒着防止材の評価方法)
本発明の癒着防止材の物性等の測定、評価方法は以下の通りとした。
(剛軟度)
JIS L1096 B法(スライド法)に準拠して試験を行い評価した。但し、癒着防止材試験片の大きさは50mm×6.35mmと規定した。
(密着強度)
30mm×30mmの癒着防止材の試験片を充分含水したスポンジに密着させ、直後試験片の密着した部位に対し水平方向に、50mm/minのスピードでロードテスター(島津製作所社製)により引っ張り、試験片が完全に剥がれるまで生じる最大引っ張り抵抗(gf)を測定した。計測した引っ張り抵抗は、試験片の大きさ(表面積)で除算し、単位面積あたりの密着強度とした。
(粘度)
粘弾性測定装置(REOLOGICA社製)にて粘性摩擦トルクより換算乗数により粘度を求めた。
(ヤング率)
上記ロードテスター(島津製作所社製)にて、64mm×6.35mmの試験片にカットしたフィルム状癒着防止材を、チャック間距離:20mm、引っ張り速度50mm/minにて引っ張り10%伸長時の引っ張り抵抗値から10%引っ張り伸長時ヤング率を求めた。
当該癒着防止材の投与にあたって、その使用者(執刀医師)が、その操作性を評価した。また、同様にその癒着防止性能(創傷部位からのズレ・癒着や感染症の有無・炎症の有無、分解状況)を評価した。結果を表2に示した。
実施例1と同様にして、癒着防止材の操作性、及びその癒着防止性能を評価した。結果を表2に示した。
実施例1と同様にして、癒着防止材の操作性、及びその癒着防止性能を評価した。結果を表2に示した。
〔比較例1〕
ラットの腹部を切開し、雑菌が付着した紙やすりで小腸を擦り、また、その一部に雑菌を付着させた23G針で穴を開け、そこに表1に示した、ヒアルロン酸かなるフィルム状の癒着防止材を投与した。
実施例1と同様にして、癒着防止材の操作性、及びその癒着防止性能を評価した。結果を表2に示した。
〔比較例2〕
犬の腹部を切開し、雑菌が付着した紙やすりで小腸を擦り、そこにフィルム状の癒着防止材を投与した。
実施例1と同様にして、癒着防止材の操作性、及びその癒着防止性能を評価した。結果を表2に示した。
実施例及び比較例の結果をまとめた表2より、本発明の癒着防止材の有効性が確認された。また、本発明の癒着防止材(実施例1〜3)においては、治癒促進性薬剤として抗菌剤を含有しているため、かかる薬剤を含有していない比較例1〜2と対照することにより、感染防止効果の発現により、炎症防止効果が促進し、かくして癒着防止材の安全性がより向上することも確認された。
B.二種類の多糖類の組成物からなる癒着防止材の試験結果
癒着防止材として、治癒促進性薬剤を含有する二種類の多糖類の組成物からなる癒着防止材の試験を行った。実験方法(ラットによる動物実験)及び評価方法は、以下のとおりである。
(動物実験)
ラットの腹部を切開し、雑菌の付着した紙やすりで小腸を擦り、作製した擬似感染創傷に、癒着防止材がフィルム状の場合は貼り付け、また、ゲル状、ゾル状又は水溶液の場合は腹腔内にゲル等を充填し、腹部を閉じた。なお、実施例、比較例とも10例ずつの埋植を行った。
(評価方法)
1.癒着
2週間及び4週間後に癒着防止材を埋植したラットを再び開腹し、癒着の度合いを肉眼にて観察した。
2.感染
2週間及び4週間後に癒着防止剤を埋植したラットを再び開腹し、感染症の有無を観察した。
3.生体内分解吸収性
埋植後、埋植2週間及び4週間後の癒着防止材の乾燥質量を測定し、分解吸収性を判断した。
4.操作
埋植手技の際の操作性を執刀医師から聴取した。
(多糖類の種類等)
以下、実施例4〜6、比較例3〜5で使用した癒着防止材を構成する多糖類の種類、多糖類組成物の組成、形態等を表3にまとめて示した。なお、実施例の癒着防止材には、全て治癒促進性薬剤として抗菌剤であるノルフロキサシンを0.3mass%混合した。
以上のキャストフィルム(フィルム状癒着防止材)を用いて前記した動物実験を行い、評価した。結果を、表4(癒着防止性)、表5(感染症の発生率)、表6(生体内分解吸収性)及び表7(操作性)にまとめて示した。
以上のゲル状癒着防止材を用いて、実施例4と同様に、前記した動物実験を行い、評価した。結果を、表4(癒着防止性)、表5(感染症の発生率)、表6(生体内分解吸収性)及び表7(操作性)にまとめて示した。
以上のフィルム状癒着防止材を用いて前記した動物実験を行い、評価した。結果を、表4(癒着防止性)、表5(感染症の発生率)、表6(生体内分解吸収性)及び表7(操作性)にまとめて示した。
〔比較例3〕
ポリプロピレン製メッシュ(線形340μm、オープニングエリア68%)を、着防止材として用い、実施例4と同様な動物実験を行い、評価した。結果を、表4(癒着防止性)、表5(感染症の発生率)、表6(生体内分解吸収性)及び表7(操作性)にまとめて示した。
〔比較例4〕
アルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)3gを1000mlに溶解し、この水溶液(粘度は500Pa・s)を得た。当該アルギン酸ナトリ水溶液を癒着防止剤として用いて、実施例4と同様な動物実験を行い、評価した。結果を、表4(癒着防止性)、表5(感染症の発生率)、表6(生体内分解吸収性)及び表7(操作性)にまとめて示した。
〔比較例5〕
癒着防止材を使用することなく、実施例4と同様な動物実験を行い、評価した。結果を、表4(癒着防止性)、表5(感染症の発生率)、表6(生体内分解吸収性)及び表7(操作性)にまとめて示した。
(結果の考察)
(1)癒着防止性を示す表4から、本発明の癒着防止材(プルランとアガロースの二種類の多糖類の組成物)を使用する実施例4〜6においては、いずれも高頻度で癒着を防止することが認められた。一方、生体吸収性のないプロピレン製メッシュを癒着防止材として使用する比較例3は、その物理的遮蔽効果により、多少癒着を防止するが、創傷部位へ当該メッシュが完全には密着していないために、癒着防止効果(防止頻度)が本発明に比較してずっと低い。また、アルギン酸ナトリウム水溶液を癒着防止材として使用する比較例4は、癒着防止効果はさらに低い。これは当該水溶液が生体に早い段階で吸収されてしまうので、癒着防止をするために充分な時間、当該創傷部へ滞留することができないからであると思われる。
(2)感染症の発生率を示す表5から、本発明の癒着防止材を使用する実施例4〜6においては、いずれも、感染症を生じないことがわかる。これは、含有した薬剤であるノルフロキサシンの抗菌活性のためであることは容易に理解される。これに対し、ノルフロキサシンを全く配合していない比較例3〜5においては、非常に高い頻度で感染症が生じた。
(3)生体内分解吸収性を示す表6から、二種類の多糖類の組成物からなる本発明の癒着防止材を使用する実施例4〜6においては、その組成によっても異なるが、少なくとも2週間は生体内に分解されることなく、ある程度滞留し、癒着防止効果を発揮しているものと考えられる。すなわち、実施例の癒着防止材は、易水溶性のプルランと難水溶性のアガロースの組成物からなるものであり、プルラン含量の高い実施例4では、比較的早く生体内に吸収されるに対し、難水溶性のアガロース含量が高い実施例5、6では生体吸収速度が遅くなっており、両者の混合比率により生体内への分解吸収性を制御可能であることがわかる。すなわち、具体的には、難水溶性のアガロースの組成比(混合比)が高くなればなるほど、生体内吸収性は遅くなる。
なお、アルギン酸ナトリウム水溶液からなる癒着防止材の場合(比較例4)では、2週間経過後した時点でアルギン酸ナトリウムは完全に消失しており、生体内で、癒着防止効果を発現するために必要な適度な期間滞留することなく、吸収されてしまっていることが明らかである。
(4)表7は、操作性の結果を示すものであるが、本発明の癒着防止材(実施例4〜6)では、いずれも適切な操作性を有していた。
(5)以上の結果を表8にまとめて示した。表8より、本発明の癒着防止材(実施例4〜6)においては、癒着防止性、感染症発生率、生体内分解吸収性、操作性のいずれにおいても、きわめて有効性を有するものであることが確認できた。特に、本発明の癒着防止材においては、治癒促進性薬剤として例えば抗菌剤を含有しているため、かかる薬剤を含有していない比較例3〜5と対照することにより、感染防止効果の発現による炎症防止効果が奏されるので、癒着防止材の安全性がより向上することも確認された。
Claims (4)
- 生体吸収性高分子を主成分とする創傷部位の癒着防止材であって、当該癒着防止材には少なくとも一種類の治癒促進性の薬剤が含有され、
前記生体吸収性高分子は、少なくとも二種類以上の多糖類及びその誘導体の組成物からなり、当該組成物における前記多糖類及びその誘導体の組成比を調整することにより、生体吸収性を制御することができ、
前記癒着防止材がフィルム状またはゲル状であり、創傷部位の形状に合わせて変形可能であり、
前記フィルム状の癒着防止材は、乾燥時の剛軟度が0 .1〜10000m N・mmであり、かつ2gf/cm2以上の密着強度を有し、
前記ゲル状の癒着防止材は、その乾燥時若しくは含水膨潤時の粘度が0.1〜100000Pa・sであり、
前記二種類以上の多糖類及びその誘導体の組成物は、易水溶性の多糖類と難水溶性の多糖類の組み合わせからなり、
前記組成物を形成する多糖類及びその誘導体のうちの少なくとも1種類が易水溶性の多糖類であるプルラン及びその誘導体であり、
前記組成物の質量割合は、プルラン/難水溶性の多糖類=(5〜95)/(95〜5)であり、
前記多糖類の分子量は、1000〜1000000である、ことを特徴とする癒着防止材。 - ゲル状、またはフィルム状の癒着防止材が、生体内で3ヶ月以内に分解吸収される請求項1に記載の癒着防止材。
- 生体吸収性高分子100質量部に対し、0.001から10質量部の治癒促進性薬剤を含有している請求項1または2に記載の癒着防止材。
- 前記治癒促進性の薬剤は、ニューキノロン系の抗菌剤であるノルフロキサシンであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の癒着防止材。
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