JP4848096B2 - 高圧配電線路の故障点位置標定方法と装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はパルス方式を用いた高圧配電線路の故障点位置標定方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高圧配電線路での地絡故障時に、速やかな故障復旧を図るために停電区間に高電圧パルスを注入し、注入点と故障点の間に流れる電流を、アンテナ式の電流検出器或いは電線へ引っ掛けて検出する携帯式の電流検出器を用いて高電圧パルス注入箇所から故障点に至るまで順番に検知を繰り返す故障点探査方法が従来から行われている。
【0003】
上記故障点探査のために使用される装置は、普段は電力会社の営業所或いは電力会社より委託を受けた工事会社等の営業所等に常備されていて、上記作業の際に工事用車両に積載して作業現場まで運搬し、作業現場の電柱等に仮設して使用されている。
【0004】
この探査方法では故障点に達するまでに時間と人手を要する欠点があるため、パルスレーダ法を用い停電区間の一部より高電圧パルスを注入し、注入したパルス波と故障点からの反射波との時間差を計測し、その時間差より故障点までの距離を標定する方法が考えられているが、故障点の抵抗が高く、放電性の場合には故障点での放電時間遅れが発生し、それにより標定位置の誤差が大となる欠点が残されていた。
【0005】
放電性の故障点に対する放電時間遅れによる標定位置誤差を無くすために、最初に故障点に放電を起こさせる高電圧パルスを注入して故障点で放電を起こさせ、次に該放電状態持続中に位置標定用パルスを注入して前記故障点で反射した波形の戻り時間から故障点位置を求める方法が提案されている(特開平11−218555)。
【0006】
このものは、図4に示すように、パルス発生器2に設けた放電用高電圧パルス発生回路2aのコンデンサに充電した高電圧を、スイッチ2bを閉じて、接続線3A,3B,3Cを介して、高圧配電線路1のR,S,T相に注入して、T相の故障点イのギャップで放電させ、放電が継続している間にスイッチ2dを閉じて、位置標定用低電圧パルス発生回路2cから、位置標定用パルスを高圧配電線路1に注入する。そして、接続線3A,3B,3Cに結合させた変流器4,5,6を介して位置標定用パルスと線路1からの反射波を測定器7に取り込んで故障の標定を行うようになっている。そして、パルス発生回路2aに設けた前記コンデンサの他に、パルス発生回路2cに標定用パルス注入用の電圧を充電するための別のコンデンサを備えていた。この別のコンデンサは低電圧パルスを発生するためのものとはいえ、2kVという高い電圧を充電する。なお、パルス発生回路2aのコンデンサは50kV用のものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
図4で説明した従来の技術では、放電用高圧パルスと位置標定用低電圧パルスの2つのパルス発生用電源が必要で、両電源に夫々高耐圧のコンデンサを備えているため、装置の小型軽量化、低コスト化が図れないという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、1箇所からの測定で故障点位置を正確に標定できるパルスレーダ法を用いて、放電時間遅れによる標定誤差をなくし、故障点位置標定を正確に行い、しかも小型軽量で持ち運びしやすい、安価な故障点標定方法と装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、故障停電区間の1箇所より故障点に放電を起こさせるための高電圧パルスを注入して故障点で放電を起こさせ、該放電状態の持続中にパルス発生器出力端に設けた停電高圧配電線路への流入電流を制限する制限抵抗を小さい抵抗値に変化させることにより位置標定用パルスを注入し、接続線の一端に設けた変流器より健全相と故障相の電流波形を求め、両者の差分を求めることにより、該位置標定用パルスの前記故障点での反射波の装置までの戻り時間差を判定し、装置から故障点までの位置を求めることを特徴とする高圧配電線路の故障点位置標定方法である。
【0010】
請求項2の発明は、高圧配電線路の停電区間の一部から故障点に放電を起こさせる高電圧パルスを注入して故障点で放電を起こさせ、該放電状態持続中に更に位置標定用パルスを注入し、健全相と故障相の電流波形を検出し、その差分を求め、該位置標定用パルスによる前記故障点での反射波のみを取り出し、該反射波が故障点から装置に戻ってくるまでの時間差を判定し、装置から故障点までの距離を求める高圧配電線のパルス方式による故障点位置標定装置において、
該放電状態持続中に、停電高圧配電線路への流入電流を制限する制限抵抗を小さい値に切り替えることによって流入電流値を小電流から大電流に変化させるようにしたパルス発生装置を設けたことを特徴とする高圧配電線路の故障点位置標定装置である。
【0011】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、故障点に放電を起こさせるための高電圧パルス注入時の制限抵抗に対して、直列接続した抵抗及びスイッチを、並列接続し、前記スイッチの投入時に抵抗値を小さくして前記位置標定用パルスを注入すことを特徴とする高圧配電線路の故障点位置標定装置である。
【0012】
請求項4の発明は、請求項2又は3の発明において、故障点に放電を起こさせる高電圧パルスを注入するためと、位置標定用パルスを注入するためのコンデンサを両パルス注入用に共通に唯一箇所具備したことを特徴とする高圧配電線路の故障点位置標定装置である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【0014】
図1(a)は本発明を実施するための構成図を示し、1は地絡事故が発生して図示されていない保護継電装置により事故区間の切り離しが行われた三相の停電高圧配電線路、2は停電高圧配電線路1に高電圧パルスを発生させるためのパルス発生器で、停電高圧配電線路1の一端と接地との間に挿入接続されている。パルス発生器2の出力端子はそれぞれ接続線3A,3B,3Cを介して前記停電高圧配電線路のR相、S相、T相に接続されている。
【0015】
4,5,6はそれぞれ接続線3A,3B,3Cに接続された変流器で、各接続線3A,3B,3Cを流れる電流を検出して測定器7に伝える。測定器7では変流器からの信号の差分を求め、故障点からの反射波の戻り時間を判定し、故障点までの距離を求め、表示する。イはT相に発生した地絡故障点で図1(b)に示すようにギャップGと地絡抵抗Rの直列等価回路からなる。なお、R相、S等は健全相である。
【0016】
図1(c)にパルス発生器2の実施例を示す。直流電源11、該直流電源11から給電されて高電圧を発生する昇圧回路12、ダイオード13、昇圧回路12で発生した高電圧を蓄電する静電容量約2μFのコンデンサ14、パルス発生器2から停電高圧配電線路1への流入電流を制限する制限抵抗15、コンデンサ14に蓄電した高電圧を制限抵抗15を介して停電高圧配線線路1の各相へ印加するスイッチ16、高電圧パルス注入後、放電状態持続中に抵抗18を制限抵抗15に並列接続させて停電高圧配電線路1の各相へ位置標定用パルスを印加するスイッチ17、前記出力端子20A及び接地端子20Bを接続して構成してある。
【0017】
標定に際しては、パルス発生器2を接続線3を介して停電高圧配電線路1に接続し、コンデンサ14を15kVに蓄電した後、スイッチ16を閉じ、放電用高電圧パルスP1を制限抵抗15を介して停電高圧配電線路1に注入する。
【0018】
故障点イにおいては高電圧パルスP1により放電が生じる。故障点イに放電が発生すると、しばらくの間は放電状態が持続した状態になるため、放電時の減衰高周波振動が十分減衰収束する時間(約1〜3ms)後にスイッチ17を閉じる。
【0019】
スイッチ17を閉じることにより、抵抗18に制限抵抗15を並列接続させた状態となり、合成抵抗値の変化に応じた位置標定用パルスP2が停電高圧配電線路1に注入される。
【0020】
図2に健全相及び故障相の測定例を示す。横軸は時間、縦軸は電流を示す。
【0021】
ロは放電用高電圧パルスP1注入による波形変化、ハは該放電用高電圧パルスP1による故障点から反射波形であり、該放電用高電圧パルスP1により故障点で放電が発生したことを顕している。尚、ハの戻り時間には故障点の放電遅れによる誤差を含んでいる。
【0022】
ニはスイッチ17を閉じ、抵抗18に制限抵抗15を並列接続させたことにより合成抵抗値を小さい値に変化させて発生させた位置標定用パルスP2の注入波形である。制限抵抗15とスイッチ17とで標定パルス注入用の並列回路を構成する。位置標定用パルス送出時点では放電用高電圧パルスによる高周波過度現象は減衰収束している。こうして、1個のコンデンサ14で両パルスを供給する。
【0023】
ニの波形部の時間を拡大したものを図3に示す。
【0024】
ホは位置標定用パルスP2の注入波形、ヘは位置標定用パルスP2の故障点からの反射波形である。
【0025】
図1の配電線路1に接続されている分岐線の分岐点からの反射は健全相と故障相とも同じであり、健全相には故障点の電流を含んでいないため、健全相と故障相とで差をとることにより故障点による電流のみを取り出すことができる。このことは、図4の従来技術と同じである。
【0026】
この様にして得られた波形には、当然放電遅れ時間の影響は入っていない。なぜならば先に述べたように放電用高電圧パルスによって故障点は放電破壊し、安定な直流電流が流れている状態(放電状態が持続中の状態)で位置標定用パルスを送出したからである。故障点で反射した波形の戻り時間(図3のホとヘの時間差)に伝送速度を乗じることにより、故障点までの距離を知ることができる。このことも図4の従来技術と同じである。なお、抵抗18の抵抗値が小さい程標定用パルスの電流値を大きくできるので、その抵抗値は零であってもよい。
【0027】
【発明の効果】
請求項1,2の発明では、放電用高圧パルス注入後の故障点での放電状態持続中に出力端に設けた停電高圧配電線路への流入電流を制限する制限抵抗を直列から並列に切り替えることによって位置標定用パルスを注入することができ、故障相と健全相の波形を差分処理することにより故障点からの反射波だけを取り出してその戻り時間差を判定するため、放電遅れ時間による標定誤差を無くした精度の良い故障点の位置標定が1つのパルス発生回路で行うことができるため、小型軽量及び安価な装置とすることができる。標定作業の労力を軽減できる。
【0028】
なお、請求項3の放電を起こさせる高電圧パルス注入時の直列に入る前記制限抵抗値に対して、並列接続時の合成抵抗値を小さくすることにより、位置標定用パルス電流を大きくすることができるため、反射波を計測するに当ってのS/N比を向上させることができ、故障点の位置標定を精度良く行える利点がある。そして請求項4では、装置の大型化、重量増大のもとであるコンデンサを1個にしたため、小型・軽量化に直接役立つ。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の請求項1による実施例の電気的接続を示す略図、(b)は地絡故障点の等価回路、(c)はパルス発生器の電気回路図である。
【図2】図1の実施例における健全相及び故障相の測定電流波形例である。
【図3】図2の一部分の拡大波形である。
【図4】従来の実施例に係る電気的接続を示す略図である。
【符号の説明】
1 停電高圧配電線路
2 パルス発生器
3 接続線
4,5,6 変流器
7 測定器
R相,S相 健全相
T相 故障相
イ 故障点

Claims (4)

  1. 故障停電区間の1箇所より故障点に放電を起こさせるための高電圧パルスを注入して故障点で放電を起こさせ、該放電状態の持続中にパルス発生器出力端に設けた停電高圧配電線路への流入電流を制限する制限抵抗を小さい抵抗値に変化させることにより位置標定用パルスを注入し、接続線の一端に設けた変流器より健全相と故障相の電流波形を求め、両者の差分を求めることにより、該位置標定用パルスの前記故障点での反射波の装置までの戻り時間差を判定し、装置から故障点までの位置を求めることを特徴とする高圧配電線路の故障点位置標定方法。
  2. 高圧配電線路の停電区間の一部から故障点に放電を起こさせる高電圧パルスを注入して故障点で放電を起こさせ、該放電状態持続中に更に位置標定用パルスを注入し、健全相と故障相の電流波形を検出し、その差分を求め、該位置標定用パルスによる前記故障点での反射波のみを取り出し、該反射波が故障点から装置に戻ってくるまでの時間差を判定し、装置から故障点までの距離を求める高圧配電線のパルス方式による故障点位置標定装置において、
    該放電状態持続中に、停電高圧配電線路への流入電流を制限する制限抵抗を小さい値に切り替えることによって流入電流値を小電流から大電流に変化させるようにしたパルス発生装置を設けたことを特徴とする高圧配電線路の故障点位置標定装置。
  3. 故障点に放電を起こさせるための高電圧パルス注入時の制限抵抗に対して、直列接続した抵抗及びスイッチを、並列接続し、前記スイッチの投入時に抵抗値を小さくして前記位置標定用パルスを注入すことを特徴とする請求項2記載の高圧配電線路の故障点位置標定装置。
  4. 故障点に放電を起こさせる高電圧パルスを注入するためと、位置標定用パルスを注入するためのコンデンサを両パルス注入用に共通に唯一箇所具備したことを特徴とする請求項2又は3記載の高圧配電線路の故障点位置標定装置。
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