JP4846083B2 - 蓄電池用電極の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、蓄電池用電極、特にペースト式蓄電池用電極とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
各種の電源として広く使われている電池としては、鉛蓄電池やアルカリ蓄電池があり、それに最近ではリチウム二次電池が用いられている。これらの電池のうちの小型のものはポータブル機器用の電源に、大型のものは産業用の電源として使用されている。これら電池の電極としては、鉛蓄電池では酸化鉛極と鉛極、アルカリ蓄電池では正極にニッケル極で負極にカドミウム極または水素吸蔵合金極、リチウム二次電池ではリチウム金属極、金属酸化物極または黒鉛極などが一般的である。
【0003】
このような電極の製造方法としては、電極の芯材にニッケル粉末を混練したペーストを塗布し、これを焼結して作製した電極基板に活物質を含浸させる焼結式や、発泡メタルなどの三次元構造の導電性多孔体やパンチドメタルなどの二次元構造の導電性多孔体からなる芯材に、活物質を含むペーストを直接充填または塗着するペースト式が存在する。このペースト式の最も大きな特徴は、焼結式と比較して製法が簡単であることから、低価格で電極が得られることである。
【0004】
図8は、本件出願人により提案されて先に公開された特開平8-29812 号公報に記載の蓄電池用電極における電極基板を示す拡大斜視図である。この電極基板は、金属板または金属箔に多数の孔1aを穿孔してなる導電性芯材1の表面に、これに一体化した多数本の繊維状ニッケル焼結体2が配設された構造になっている。このペースト式電極基板の製造に際しては、導電性芯材1に接着剤を塗布して樹脂繊維を植毛し、その樹脂繊維の表面にニッケル層を形成してニッケル繊維とし、続いて樹脂繊維および接着剤を熱分解除去し、導電性芯材1とニッケル繊維とを焼結することによって繊維状ニッケル焼結体2を形成する工程が採用されている。
【0005】
ところで、パンチドメタルなどを芯材として用いた二次元電極基板は、フープ状の金属板などを移送しながら連続生産できる長所がある反面、活物質を含むペーストの保持力が弱く、導電性が悪い欠点がある。一方、発泡メタルなどを用いた三次元電極基板は、二次元電極基板とは逆に、ペーストの保持力および導電性が優れているが、フープ状とした長尺物による連続生産が困難であり、生産性が低いことからコスト高となる。これに対し、上記特開平8-29812 号公報に開示された蓄電池用電極に用いる電極基板は、二次元電極基板と三次元電極基板の長所と短所とが相反する問題を解消できるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の電極基板では、発泡メタルなどの三次元電極基板と同等の活物質の利用率および放電特性を得ようとすれば、三次元電極基板の導電骨格が有する表面積と同じ表面積および導電骨格密度(単位体積当たりの導電体の密度)を得ることが必要となり、そのためには、製造過程における樹脂繊維の径を小さくして樹脂繊維の単位面積当たりの植毛密度を高めるとともに、樹脂繊維の表面に形成するニッケル層を薄くしなければならない。さらに、三次元電極基板と同量の活物質の充填密度を得るためには、電極における導電性芯材が占める体積分だけ、さらに樹脂繊維の径を細くし、且つ表面に形成するニッケル層を薄くする必要がある。
【0007】
上述のようにして得た電極基板は、繊維状ニッケル焼結体2が細くて極めて脆いものになるから、活物質を含むペーストを塗着または充填するときの圧力で繊維状ニッケル焼結体2の骨格が潰れてしまい、特に電極の厚み方向の導電骨格密度の低下に伴い導電性が低下して、均一な導電経路のネットワークを電極内部に形成することが困難となるから、三次元電極基板と同等の活物質の利用率、電池としての放電特性および充放電繰り返し寿命を得られないという課題が残存している。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたもので、二次元的な導電性芯材に繊維状ニッケル焼結体が一体化された構成としながらも三次元電極基板よりも高い骨格密度および表面積を有する電極基板を備えた蓄電池用電極およびそのような蓄電池用電極を高精度に製造することのできる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0019】
本発明の蓄電池用電極の製造方法は、電極基板に活物質を含むペーストを塗着または充填してなる蓄電池用電極の製造に際して、金属板、金属箔またはこれらに穿孔した導電性芯材に、ニッケル粉を含む接着剤を塗布する第1の工程と、前記導電性芯材に、複数の配列用孔が所定の配置で設けられたマスクの前記配列用孔を通してニッケル繊維を植毛するとともに、前記ニッケル繊維の太さの1/10以上で、且つ1/5 以下の太さを有する樹脂繊維を、前記導電性芯材側をアース電位として帯電させつつ前記導電性芯材の表面に静電植毛する第2の工程と、前記導電性芯材を、ニッケルカルボニルガスを含有する雰囲気中において前記ニッケルカルボニルガスが分解する温度まで加熱することにより、前記導電性芯材、ニッケル繊維および樹脂繊維の表面にそれぞれニッケル層を形成する第3の工程と、前記樹脂繊維と接着剤とを熱分解除去し、前記樹脂繊維を除去したのちのニッケル層からなる細いニッケル繊維および前記太いニッケル繊維を、前記導電性芯材にそれぞれ一体焼結して、細い繊維状ニッケル焼結体および繊維状ニッケル焼結体を形成する第4の工程とを有し、前記第1ないし第4の各工程を経ることによって前記電極基板を製作することを特徴としている。
【0020】
この蓄電池用電極の製造方法では、本来フープとして製造される金属板、金属箔またはパンチドメタルなどからなる帯状の導電性芯材を、一連の長い工程に対し連続的に移送して長尺のフープ状電極基板を製造できるので、本発明の蓄電池用電極基板を構成する電極基板を極めて高い生産性で再現性良く製造することができる。
【0021】
上記製造方法の第2の工程中における導電性芯材側をアース電位として樹脂繊維を帯電させつつ前記導電性芯材の表面に静電植毛する工程に代えて、メルトブロー工程によって連続的または断続的な環状形状に形成した樹脂繊維を前記導電性芯材の表面に接着剤で付着させる工程を用いることもできる。これにより、細い繊維状ニッケル焼結体が連続的または断続的な環状形状に形成されて、一つの環状形状の少なくとも一部が導電性芯材の表面に一体焼結された構成の電極基板を製造することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係る蓄電池用電極に用いる電極基板3を示す斜視図、図2は上記電極基板3の縦断面図である。この電極基板3は、金属板に多数の孔7が所定の配置で穿孔された導電性芯材4の両側表面に、太い繊維状ニッケル焼結体8と細い繊維状ニッケル焼結体9とが一体焼結して設けられた構成になっている。
【0023】
上記電極基板3の両面には、図2に2点鎖線で示すように、活物質を含むペースト10が塗着または充填されて、図3に示す本発明の蓄電池用電極11が構成される。この蓄電池用電極11の構成に際してペースト10を電極基板3に塗着または充填するときには、図2に明示するように、導電性芯材4に対し直角または直角に近い角度で起立して導電性芯材4に一体焼結されている太い繊維状ニッケル焼結体8が、多数本の細い繊維状ニッケル焼結体9に対しあたかも支柱として機能し、ペースト10の塗着または充填圧力に抗して細い繊維状ニッケル焼結体9をこれが潰れないように支持する。そのため、得られた蓄電池用電極11は、厚み方向の導電骨格密度を高く保って導電性の低下が防止され、内部全体に均一な導電経路のネットワークが形成されたものとなる。
【0024】
さらに、上記蓄電池用電極11は、その電極基板3が後述する条件に設定して製作されていることにより、導電性芯材4の両側表面に植毛状態に設けられた2種類の繊維状ニッケル焼結体8、9によって厚さ方向の導電経路を疎密なく均一な配置で確保できる三次元的な形態となって、同一重量の三次元電極よりも高い導電骨格密度と表面積とを有するものになっている。
【0025】
すなわち、細い繊維状ニッケル焼結体9の太さは、太い繊維状ニッケル焼結体8の太さの1/10以上で、且つ1/5 以下に設定されている。具体的には、太い繊維状ニッケル焼結体8の太さが20〜100 μmで、細い繊維状ニッケル焼結体9の太さが2〜20μmに設定されている。このように、太い繊維状ニッケル焼結体8は、20μm以上の太さを有していることによって比較的大きな強度を保持し、ペースト10が塗布または充填されるときの圧力に抗して細い繊維状ニッケル焼結体9を潰れないように確実に支持できるとともに、太さが100 μm以下に設定されていることによって導電体としての目付重量が大きくなり過ぎることがなく、ペースト10の充填量の減少が防止される。
【0026】
一方、細い繊維状ニッケル焼結体9は、太い繊維状ニッケル焼結体8で潰れないように支持されることから、2μm程度にまで細くすることが可能となり、重量を増やすことなく本数を増やすことができるので、表面積が増大してペースト10中の活物質との接触面積が大きくなる。したがって、この多数本の細い繊維状ニッケル焼結体9は、それらの間隙に充填された比較的多量の活物質を三次元的に保持しながち導電骨格として機能するので、活物質の利用率が格段に高められる。また、この多数本の細い繊維状ニッケル焼結体9は、活物質を三次元的に包み込むよう機能するので、電池として機能したときの充放電時の結晶構造の膨潤を抑制する。従来の二次元電極基板では、活物質を包み込む導電材が存在しないことから、上記膨潤が助長されていた。
【0027】
また、太い繊維状ニッケル焼結体8は、導電性芯材4の表面に対して直角または直角に近い角度で起立する状態で、導電性芯材4における隣接する二つの穴7,7の間の非穿孔部に少なくとも1本が存在するよう配設されており、細い繊維状ニッケル焼結体9は、太い繊維状ニッケル焼結体8の本数に対し単位面積当たりの配設本数が30〜150 倍となる多数本がランダムな配置で配設されている。したがって、太い繊維状ニッケル焼結体8は、細い繊維状ニッケル焼結体9を確実に支持できる範囲内で可及的に本数を減らしながらも効果的に配置でき、本数を抑えた分だけペースト10の充填量の増大を図ることができる。また、細い繊維状ニッケル焼結体9は、1本の太い繊維状ニッケル焼結体8に対し30本以上設けられることによって所要の表面積を確保できるととにも、150 本以下の本数に制限することによって目付重量の増大に伴うペースト10の充填量の減少が防止される。
【0028】
以上説明した構成を備えた上記蓄電池用電極11は、例えば、10〜30μmの太さの導電性骨格を有する三次元電極基板に比較して、導電骨格密度と表面積とを大幅に高めることができ、その結果、三次元電極基板よりも優れた活物質の利用率と電池としての放電特性および充放電繰り返し寿命の向上とを得ることが可能となる。
【0029】
さらに、図2に明示するように、細い繊維状ニッケル焼結体9の長さは、太い繊維状ニッケル焼結体8よりも長く設定されている。この場合、細い繊維状ニッケル焼結体9の長さは、太い繊維状ニッケル焼結体8の長さに対し10〜70%長く設定することが好ましい。これにより、細い繊維状ニッケル焼結体9は、自体を互いに絡み合わせたり、或いは太い繊維状ニッケル焼結体8に絡み合わせることにより、導電性芯材4に接続される導電体としての網目状のネットワーク化が可能となり、ペースト10中の活物質の利用率をさらに高めることが可能となる。この場合、長くて細い繊維状ニッケル焼結体9は、自体同士の接触部分または太い繊維状ニッケル焼結体8との接触部分を、例えばスプレーガンにより塗布した接着剤で接着するようにすれば、上述の導電体としてのネットワークがより確実に構成されるとともに、細い繊維状ニッケル焼結体9が製造工程中において妄りに動くのを防止して品質の安定化を図ることができる。
【0030】
また、上記構成とした場合には、細い繊維状ニッケル焼結体9がペースト10の塗布または充填時に十分な剛性を発揮して、細い繊維状ニッケル焼結体9の局部的な潰れをも確実に防止することができるとともに、活物質の保持力が一層向上し、且つ電気的なつながりによって放電特性が向上する。
【0031】
さらにまた、上記蓄電池用電極11では、図3に明示するように、導電性芯材4における孔7が形成されていない端辺部にペースト10を設けない無地部12を設けることができるので、この無地部12をそのまま電極端子に接続するためのリード板として活用することができ、リード板を別途設ける場合に比較して、工程の削減に伴ってコストダウンできるとともに、接続に伴う電池内部抵抗の増大を避けることができる。特に、電極に全面的にリードを接続する電池では、多大な効果を得ることができる。
【0032】
図4は、上記電極11を用いて構成したニッケルカドミウム電池を示す一部破断した斜視図である。電池缶13の内部に収容された電極群14は、水酸化ニッケルを主成分とする正極活物質が芯材に塗着されてなる正極側電極17と、水素吸蔵合金粉を主成分とする負極活物質が芯材に塗着されてなる負極側電極18とが、これらの間にセパレータ19を介在して積層した状態で渦巻き状に巻回されている。電池缶13には、上記電極群14が収容されたのちに、電解液(図示せず)が注液され、その開口部が、封口板21、安全弁22、絶縁ガスケット23および金属キャップ24を組み立ててなる封口体20で密閉されている。
【0033】
このニッケルカドミウム電池における正極側電極17および負極側電極18は、上記第1の実施の形態の電極11と同様に、導電性芯材の両側表面に2種類の繊維状ニッケル焼結体を設けた三次元的形状に形成されて高い導電骨格密度を有しているので、厚み方向の導電性が向上し、特に、細い繊維状ニッケル焼結体と活物質との接触面積の増大によって活物質の利用率が格段に向上して、大きな電流を取り出すことができるとともに、放電電圧特性および充放電繰り返し寿命が一層向上する。
【0034】
つぎに、上記蓄電池用電極11を再現性良く量産することのできる製造方法について説明する。図5は本発明の一実施の形態に係る蓄電池用電極11における電極基板3の製造方法を具現化した製造工程を工程順に示した概略工程図である。導電性芯材4としては、厚さ0.035 mm、孔径2mm、開口率52%の帯状の鉄製パンチドメタルが用いられている。この導電性芯材4は、巻き取りロール25に巻回されて、図示しない移送機構およびガイドローラなどにより一定速度で連続的に繰り出されて図示矢印方向に向け移送されていく。なお、導電性芯材4は、穿孔されていない金属板又は金属箔を巻き取りロール25に巻回しておき、巻き取りロール25から引出しながら穿孔装置で孔7を穿孔してパンチドメタルとしてもよい。
【0035】
巻き取りロール25から引き出されて移送される導電性芯材4の一面には、接着剤塗布装置26を通過するときに、平均粒径が2μm前後のニッケル粉とブチラール系結着剤を混練して接着剤容器28に収容されている接着剤27が、6μmの厚さに均一に塗布されて、接着剤層が形成される。なお、接着剤27の塗布手段としては、周知のスプレー方式、スキジー方式、ダイコート方式またはワイヤーバー方式などを用いてもよい。
【0036】
つぎに、一面に接着剤層を形成された導電性芯材4が第1の植毛工程まで移送されたときに、散布用ホッパ29内に収容されている太いニッケル繊維30が、散布用ホッパ29から一定量ずつ散布用ローラ31上に散布されることにより、回転する散布用ローラ31によって均等にほぐされたのちに、移送中の導電性芯材4に対し僅かな間隙を存した上方位置に配置されて一体的に移送される複数個の容器状配列用マスク32のうちの直下位置の配列用マスク32内にほぼ均等に投入される。ここで使用される太いニッケル繊維30は、繊維径が100 μmで、長さが0.5mmに設定されており、この繊維径および長さは何れも後述の焼結工程を経ることにより繊維状ニッケル焼結体として導電性芯材4に一体焼結される場合よりも若干大きい。また、ニッケル繊維30としては、金属ニッケルを伸長して切断したもの、或いはニッケル粉末と接着剤とを混練して繊維状に紡糸したのちに切断したものなどが用いられる。
【0037】
一方、配列用マスク32は、非磁性体、例えばステンレスによって上方開口した容器状に形成されて、その底板部に多数個の配列用孔32aが所定配置に配設されている。配列用孔32aの孔径は、ニッケル繊維30が容易に挿通できるように、ニッケル繊維30の繊維径の1.1 〜1.7 倍に設定されている。また、配列用マスク32は、導電性芯材4の配列方向に対し直交方向の幅と同一の幅を有して、導電性芯材4の移送方法に沿って複数個(この実施の形態では5個の場合を例示)を互いに接触させて一列に配置されている。一列に配列して導電性芯材4と一体的に移送される各配列用マスク32は、散布用ローラ31の下方を通過するときに、ニッケル繊維30を内部全体にほぼ均等に投入される。導電性芯材4の移送路における散布用ローラ31の下方位置には、一対の配向磁石部33,33が導電性芯材4の移送路の上下両側に配置されている。この一対の配向磁石部33,33は、電磁石により構成されて、導電性芯材4の移送路に沿った一定距離の範囲内に導電性芯材4に対し垂直で均一な交番磁場を発生する。
【0038】
したがって、配列用マスク32の内部に投入された太いニッケル繊維30は、導電性芯材4に対し垂直な磁界を受けて、導電性芯材4に対し垂直に位置し、且つ配列用マスク32の配列用孔32aに対応する配置に整列された状態で配列用孔32aを挿通して、各々の下端部が接着剤層によって導電性芯材4の表面に接着される。すなわち、太いニッケル繊維30は、配列用マスク32の各配列用孔32aの配列通りの配置に規制されて、導電性芯材4における隣接する各二つの孔7の間の非穿孔部に対し所定の本数が所定の配置で、且つ導電性芯材4に対し直角または直角に近い姿勢で植毛される。
【0039】
なお、一列に配列されて導電性芯材4と一体的に移送される各配列用マスク32のうちの移送方向の先端の配列マスク32は、自体が有す全ての配列用孔32aを介してニッケル繊維30の植毛が終了したのちに、所定の位置まで移送されたときに、図示しないマスク移送機構によって導電性芯材4に対し垂直方向に持ち上げられる。これにより、導電性芯材4上には、植毛された太いニッケル繊維30が植毛時の直立状態を保持しながら残存する。持ち上げられた配列用マスク32は、2点鎖線矢印で示すように、配列方向の後方側に移送されて、配列方向後端の配列用マスク32に接触させた状態で再び配置される。
【0040】
続いて、導電性芯材4には、接着剤が乾かないうちに、隣接する静電植毛工程に移送される。静電植毛工程では、散布用ホッパ34に収容されている、繊維径が3μmで長さが0.6 mmの細長いレーヨン繊維37が一定量ずつ散布用ローラ38上に散布されることにより、回転する散布用ローラ38によって均等にほぐされたのちに、少しずつ落とされる。この落とされるレーヨン繊維37は、導電性芯材4がアース電位とされていることにより、帯電されつつ導電性芯材4上の接着剤層に確実に植毛される。
【0041】
太いニッケル繊維30と細いレーヨン繊維37とが植毛された導電性芯材4は、図示していな乾燥工程を通過するときに、接着剤が乾燥されて、ニッケル繊維30とレーヨン繊維37とが導電性芯材4に仮固定される。続いて、導電性芯材4は、未着繊維除去工程に送られて、排風ファン39で吸引されている室内をロールブラシ40で摺動されながら通過することにより、接着されていないレーヨン繊維37が払い落とされる。これにより、導電性芯材4は、ニッケル繊維30の他に、レーヨン繊維37が30g/m2 の植毛密度で植毛されてなる片面植毛シートとなる。
【0042】
上記片面植毛シートは、方向転換用ローラ41,42を介して、上述した片面植毛シートを製作するための第1の移送路に対しその下方位置において平行な第2の移送路に導かれる。この第2の移送路には、上述した第1の移送路における各工程と同様の各工程を備えた植毛シート作製工程43が設置されている。したがって、導電性芯材4には、反対側の面にも太いニッケル繊維30と細いレーヨン繊維37とが上述と同様の工程を経て植毛されて、両面植毛シートが作製される。
【0043】
つぎに、両面植毛シートは、20°Cに維持された50%容量のニッケルカルボニルガスを含む一酸化炭素ガス充填オートクレープ44内に送られて、全表面にニッケル蒸着される。このオートクレープ44には、赤外線透過窓47が構成されており、外部にある赤外線源からオートクレープ44内の両面植毛シートをニッケルカルボニルガスが分解する温度にまで加熱されることなくニッケルカルボニルが両面植毛シート上に均一に付着される。つぎに、オートクレープ44内の排気ガスを回収してドライアイスにより−80°Cで凝集凍結させたのちに、280 °Cで再分解し、バーナーで焼結して完全にニッケルカルボニルを除去することにより、ニッケル蒸着シートが作製される。
【0044】
続いて、上記ニッケル蒸着シートは、表面温度が600 °Cになるように調整された電気マッフル炉48内を通過されることにより、ニッケル蒸着シート中の繊維および接着剤が熱分解除去される。これにより、レーヨン繊維37が細い繊維状ニッケルとなる。さらに、ニッケル蒸着シートは、表面温度が1000°Cになるように調整されるとともに窒素ガス50%、水素ガス50%の雰囲気をもつ電気マッフル炉49内を通過されることにより、太いニッケル繊維30と繊維状ニッケルとは、導電性芯材4上に一体焼結されて、それぞれ太い繊維状ニッケル焼結体8および細い繊維状ニッケル焼結体9となり、第1の実施の形態の電極基板3が得られる。この電極基板3における導電体の目付重量は500 g/m2 である。
【0045】
この製造方法では、導電性芯材4として用いる金属板、金属箔またはこれらに穿孔したパンチドメタルなどが本来フープとして製造されるものであるから、帯状の導電性芯材4を一連の長い工程に対し連続的に移送して長尺のフープ状電極基板を製作でき、これを個々の電極基板3に切断してペースト10を塗着また充填することによって製造できるので、本発明の電極基板3を極めて高い生産性で再現性良く製造することができる。これに対し三次元電極基板を製造する場合には、網目状であることから、僅かな引っ張り力でも伸びが生じてしまい、長い工程を連続的に搬送することが困難である。
【0046】
なお、上記実施の形態では、細い樹脂繊維として、レーヨン繊維を用いた場合について説明したが、ウレタンや綿などの熱分解時に溶融しないものであれば、細い樹脂繊維として使用可能である。また、上記実施の形態では、導電性芯材4として、鉄製のパンチドメタルを用いた場合を例示して説明したが、このパンチドメタルに予めニッケルメッキを施して、導電製芯材4と、これの表面上の繊維状ニッケル焼結体8,9との結合を一層強くすることも可能である。さらに、導電性芯材4としては、パンチドメタルでなく、孔無しシート、ワイヤーネットシートまたはラスメタルなどを用いてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態において、林立状態に植毛した細いレーヨン繊維37が僅かな風で撓むことを利用して、スプレーガンで接着剤を塗布し、レーヨン繊維37同士およびレーヨン繊維37と太いニッケル繊維30とを絡ませて恰も導電ネットワークを形成する構成とすることも可能である。しかも、このような構成とすれば、接着剤の塗布によって細いレーヨン繊維37が後工程で動くことがなくなり、品質が安定するとともに、活物質を含むペースト10の塗着または充填時に細い繊維状ニッケル焼結体9が剛性を発揮して局部的な潰れを防ぐことができる。さらに、細い繊維状ニッケル焼結体9が網目状にネットワーク化することにより、活物質の保持力が向上するとともに、電気的なつながりによって放電性が向上する。
【0048】
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る蓄電池用電極に用いる電極基板50を示す斜視図、図7はその電極基板50の縦断面図である。この電極基板50は、金属板に多数の孔7が所定の配置で穿孔された導電性芯材4の両側表面に、太い繊維状ニッケル焼結体8が一体焼結により設けられている点において第1の実施の形態と同様である。この電極基板50が第1の実施の形態の電極基板3と相違する点は、細い繊維状ニッケル焼結体51が、連続的な環状形状に形成されて、一つの環状形の少なくとも一部、つまり環状形状の導電性芯材4に接触する部分が導電性芯材4の表面に一体焼結して設けられている。
【0049】
この電極基板50では、第1の実施の形態の電極基板3で説明したと同様の効果を得られるのに加えて、細い繊維状ニッケル焼結体51による導電ネットワーク化が一層促進されて、電池としたときの放電特性がさらに向上する。また、細い繊維状ニッケル焼結体51は、連続的な環状形状を有していることから、剛性が向上し、太さを可及的に細くして活物質の充填量の増大を図った場合にも、活物質の保持力が低下しない利点がある。
【0050】
上記電極基板50の製造に際しては、図5の製造工程において、細い樹脂繊維の静電植毛工程に代えて、メルトブロー工程を設ける変更を行うだけでよい。このメルトブロー工程では、例えば、平均線径が3μmのナイロン66をメルトブローして、導電性芯材4上に先に植毛されている太いニッケル繊維30の間に一定の間隔でカール状に堆積させる。この間隔は50〜500 μmの範囲に設定することか好ましい。メルトブローする細いナイロンは、溶けている状態で導電性芯材4上に堆積すると、細いナイロン同士が交絡しながら溶着し、太いニッケル繊維を包含しながら三次元の導電ネットワークを構成できる。なお、メルトブロー工程では、導電性芯材4の両面に対し同時に行うようにして、両面側の細いナイロンを導電性芯材4の孔7を通じて互いに交絡した状態に接合することが好ましい。
【0051】
【発明の効果】
以上のように本発明の蓄電池用電極によれば、太さの異なる2種類の繊維状ニッケル焼結体が導電性芯材の表面に一体焼結した電極基板に、活物質を含むペーストを塗着または充填した構成としたので、活物質を含むペーストを電極基板に塗着または充填する際に、導電性芯材に一体焼結されている太い繊維状ニッケル焼結体が、細い繊維状ニッケル焼結体に対しあたかも支柱として機能し、ペーストの塗着または充填圧力に抗して細い繊維状ニッケル焼結体をこれが潰れないように支持する。そのため、この蓄電池用電極は、厚み方向の導電骨格密度を高く保って導電性の低下が防止され、内部全体に均一な導電経路のネットワークが形成されたものとなる。しかも、この電極は、太い繊維状ニッケル焼結体に比較して太さが格段に小さい細い繊維状ニッケル焼結体を多数本設けることができるので、厚さ方向の導電経路を疎密なく均一な配置で確保できる三次元的な形態となり、同一重量の三次元電極よりも高い導電骨格密度と表面積とを有するものになる。
【0052】
また、本発明の蓄電池用電極の製造方法によれば、本来フープとして製造される金属板、金属箔またはパンチドメタルなどからなる帯状の導電性芯材を、一連の長い工程に対し連続的に移送して長尺のフープ状電極基板を製造できるので、本発明の蓄電池用電極基板を構成する電極基板を極めて高い生産性で再現性良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る蓄電池用電極に用いる電極基板を示す斜視図。
【図2】同上の電極基板の縦断面図。
【図3】同上の電極基板を用いて構成した本発明の第1の実施の形態に係る蓄電池用電極を示す一部破断した斜視図。
【図4】同上の蓄電池用電極を用いて構成した電池を示す一部破断した斜視図。
【図5】同上の蓄電池用電極における電極基板の製造方法を具現化した製造工程を工程順に示した概略工程図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る蓄電池用電極に用いる電極基板を示す斜視図。
【図7】同上の電極基板の断面図。
【図8】従来の蓄電池用電極における電極基板を示す拡大斜視図。
【符号の説明】
3,50 電極基板
4 導電性芯材
7 導電性芯材の孔
8 太い繊維状ニッケル焼結体
9,51 細い繊維状ニッケル焼結体
10 ペースト
11 蓄電池用電極
27 接着剤
30 ニッケル繊維
32 マスク
32a 配列用孔
37 レーヨン繊維(樹脂繊維)
Claims (2)
- 電極基板に活物質を含むペーストを塗着または充填してなる蓄電池用電極の製造方法であって、金属板、金属箔またはこれらに穿孔した導電性芯材に、ニッケル粉を含む接着剤を塗布する第1の工程と、前記導電性芯材に、複数の配列用孔が所定の配置で設けられたマスクの前記配列用孔を通してニッケル繊維を植毛するとともに、前記ニッケル繊維の太さの1/10以上で、且つ1/5以下の太さを有する樹脂繊維を、前記導電性芯材側をアース電位として帯電させつつ前記導電性芯材の表面に静電植毛する第2の工程と、前記導電性芯材を、ニッケルカルボニルガスを含有する雰囲気中において前記ニッケルカルボニルガスが分解する温度まで加熱することにより、前記導電性芯材、ニッケル繊維および樹脂繊維の表面にそれぞれニッケル層を形成する第3の工程と、前記樹脂繊維と接着剤とを熱分解除去し、前記樹脂繊維を除去したのちのニッケル層からなる細いニッケル繊維および前記太いニッケル繊維を、前記導電性芯材にそれぞれ一体焼結して、細い繊維状ニッケル焼結体および繊維状ニッケル焼結体を形成する第4の工程とを有し、前記第1ないし第4の各工程を経ることによって前記電極基板を製作することを特徴とする蓄電池用電極の製造方法。
- 第2の工程中における導電性芯材側をアース電位として樹脂繊維を帯電させつつ前記導電性芯材の表面に静電植毛する工程に代えて、メルトブロー工程によって連続的または断続的な環状形状に形成した樹脂繊維を前記導電性芯材の表面に接着剤で付着させる工程を用いるようにした請求項1に記載の蓄電池用電極の製造方法。
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