JP4844096B2 - 有機複合被覆鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、極めて高い耐食性を有し、家電用、建材用、自動車用などとして好適なクロムフリー有機複合被覆鋼板に関するものである。
従来、家電、建材、自動車などに用いられる鋼板としては、亜鉛系めっき鋼板またはアルミニウム系めっき鋼板の表面に、耐食性(耐白錆性、耐赤錆性)を向上させる目的で、クロム酸、重クロム酸またはその塩類を主要成分とした6価クロムを含有する処理液によるクロメート処理が施された鋼板が幅広く用いられている。このクロメート処理は、耐食性に優れ且つ比較的簡単に行うことができる経済的な処理方法である。
クロメート処理は公害規制物質である6価クロムを使用するものであるが、最近では地球規模での環境保護意識の高まりに伴い、リサイクル社会の構築や廃棄物処理の問題解決が必要であるといった社会的背景から、6価クロムの使用を規制し或いは禁止する動きが広まりつつある。さらに、6価クロムを使用する製造者側においても、環境への貢献度が重視されるなかで、従来から用いられてきた6価クロムの利用・排出の削減に取り組む動きが加速している。
従来、亜鉛系めっき鋼板の耐食性を高めるための技術として、特許文献1〜6をはじめとする数多くの提案がなされている。しかし、これらの従来技術は、いずれもクロメート処理を施したり、6価クロム系の防錆顔料を使用するものであるため、さきに述べたように環境面で問題がある。
また、特許文献7には、亜鉛系合金めっき鋼板の表面に、リン酸化合物を主体とする化成処理を施し、その上に有機樹脂、導電性顔料および防錆顔料からなる有機皮膜を形成した技術が開示されている。しかし、この技術は、従来の結晶性のリン酸塩処理を施したものであるため加工性が劣り、また、防錆顔料として6価クロム酸系の防錆顔料を使用しているため環境面でも問題がある。
特開平10−44307号公報 特開平9−276785号公報 特開平9−273786号公報 特開平9−277436号公報 特開平10−43677号公報 特開平10−128906号公報 特開平9−277438号公報
一方、亜鉛系めっき鋼板の耐食性を高めるための技術としては、クロメート処理やクロム系防錆顔料を使用しないクロムフリー処理技術も数多く提案されている。例えば、非クロム系防錆添加剤を使用した技術として、特許文献8,9などがある。
特開2001-335955号公報 特開2004-162097号公報
このうち、例えば特許文献9では、非クロム系防錆添加剤として、(1)カルシウムおよび/またはカルシウム化合物、(2)酸化ケイ素、(3)難溶性リン酸化合物、(4)モリブデン酸化合物、(5)バナジウム化合物、(6)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物、(7)ヒドラジド化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、ピリダジン化合物の中から選ばれる1種以上の、N原子を含有する有機化合物などが挙げられ、これらの1種以上を添加することが示されている。また、これらのうちの2種以上を複合添加した場合には、それぞれに固有の防食作用が複合化されるため、より高度の耐食性が得られるとしている。
特許文献9の上記技術は、クロメートの持つ自己補修性の機能を、非クロム系の防錆添加剤により実現しようとするものであるが、これらの防錆添加剤を添加しただけでは酸素や塩化物イオンなどの腐食因子に対するバリアー性向上という機能は期待できず、耐食性の向上効果が限定されるという問題がある。また、長期にわたる腐食環境においても、早期に有効成分が溶出してしまうために、腐食抑制効果が持続しないという問題もある。
また、バリアー性の向上に関して、特許文献10には有機樹脂にヒドラジン誘導体を付与することで、酸素や塩化物イオンなどの腐食因子に対するバリアー性を向上させる技術が示されている。しかしながら、このような有機樹脂では、長期にわたってバリアー性を確保し、腐食を抑制することは困難である。
また、特許文献11には、水分散性樹脂に有機チタネート化合物を添加することで、下地鋼板との密着性を向上させる技術が、また、特許文献12には特定の水溶性樹脂にチタン化合物およびジルコニウム化合物を添加することで、下地鋼板との密着性を向上させる技術が示されている。しかしながら、水分散性樹脂や水溶性樹脂では、腐食因子に対するバリアー性が弱く、十分な耐食性は得られない。また、アルカリ脱脂に対しても十分な耐久性を有していない。また、これらと有機チタネート化合物やチタン化合物、ジルコニウム化合物との組合せでは密着性が向上するだけであり、腐食因子に対するバリアー性の向上にはほとんど寄与しない。
特開2002−53979号公報 特開2003−155451号公報 特開2003−253464号公報
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、ユーザーでアルカリ脱脂がなされた場合や長期間にわたり腐食環境に曝された場合の耐食性および加工による傷部の耐食性が優れ、且つ皮膜中にクロムを全く含有しない有機被覆鋼板を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、亜鉛系めっき鋼板をベースとする有機被覆鋼板の皮膜形態について検討を重ね、その結果、溶剤系有機樹脂に対して、特定の金属と有機基とが結合した有機金属化合物と非クロム系防錆添加剤とを複合添加した表面処理組成物を用い、有機複合皮膜を形成することにより、極めて優れた耐食性が得られることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなさもので、下記を要旨とするものである。
[1]亜鉛系めっき鋼板の表面に、溶剤系有機樹脂(A)と、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物の中から選ばれる1種以上の有機金属化合物(B)と、非クロム系防錆添加剤(C)とを含有し、前記溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対する前記有機金属化合物(B)の含有量が0.1〜10質量部(固形分)である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された膜厚が0.1〜3μmの有機複合皮膜を有することを特徴とする有機複合被覆鋼板。
[2]上記[1]の有機複合被覆鋼板において、有機金属化合物(B)が、分子構造中にエステル結合を有することを特徴とする有機複合被覆鋼板。
[3]上記[1]または[2]の有機複合被覆鋼板において、溶剤系有機樹脂(A)が、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、これらのエポキシ系樹脂をさらに変性させた樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする有機複合被覆鋼板。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの有機複合被覆鋼板において、非クロム系防錆添加剤(C)が、下記(a)〜(g)の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする有機複合被覆鋼板。
(a)カルシウム化合物
(b)酸化ケイ素
(c)難溶性リン酸化合物
(d)モリブデン酸化合物
(e)バナジウム化合物
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
(g)ヒドラジド化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、ピリダジン化合物の中から選ばれる1種以上の、N原子を含有する有機化合物
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの有機複合被覆鋼板において、表面処理組成物が、溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対して、非クロム系防錆添加剤(C)を1〜120質量部(固形分)含有することを特徴とする有機複合被覆鋼板。
[6]上記[1]〜[5]のいずれかの有機複合被覆鋼板において、有機複合皮膜の下層に、さらに、膜厚が0.01〜2μmのクロムを含まない有機系皮膜または無機系皮膜若しくは有機・無機複合皮膜を有することを特徴とする有機複合被覆鋼板。
本発明の有機複合被覆鋼板は、皮膜中にクロムを含まないにもかかわらず非常に優れた平板耐食性と、アルカリ脱脂後および加工後の耐食性を有し、しかも溶接性、塗装性にも優れている。
以下、本発明の詳細とその限定理由について説明する。
本発明の有機複合被覆鋼板は、亜鉛系めっき鋼板の表面に、特定の成分を含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された有機複合皮膜を有する。
本発明の有機複合被覆鋼板のベースとなる亜鉛系めっき鋼板の種類に特別な制限はないが、例えば、亜鉛めっき鋼板、Zn−Ni合金めっき鋼板、Zn−Fe合金めっき鋼板(電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板)、Zn−Cr合金めっき鋼板、Zn−Mn合金めっき鋼板、Zn−Co合金めっき鋼板、Zn−Co−Cr合金めっき鋼板、Zn−Cr−Ni合金めっき鋼板、Zn−Cr−Fe合金めっき鋼板、Zn−Al合金めっき鋼板(例えば、Zn−5%Al合金めっき鋼板、Zn−55%Al合金めっき鋼板)、Zn−Mg合金めっき鋼板、Zn−Al−Mg合金めっき鋼板(例えば、Zn−6%Al−3%Mg合金めっき鋼板、Zn−11%Al−3%Mg合金めっき鋼板)、さらには、これらのめっき鋼板のめっき皮膜中に金属酸化物、ポリマーなどを分散した亜鉛系複合めっき鋼板(例えば、Zn−SiO分散めっき鋼板)などを用いることができる。
また、上記のようなめっきのうち、同種または異種のものを2層以上めっきした複層めっき鋼板を用いることもできる。
また、めっき鋼板としては、鋼板面に予めNiなどの薄目付めっきを施し、その上に上記のような各種めっきを施したものであってもよい。
めっき方法としては、電解法(水溶液中での電解または非水溶媒中での電解)、溶融法、気相法のうち、実施可能ないずれの方法を採用することもできる。
さらに、めっきの黒変を防止する目的で、めっき皮膜中にNi,Co,Feの1種以上の微量元素を1〜2000ppm程度析出させたり、或いはめっき皮膜表面にNi,Co,Feの1種以上を含むアルカリ性水溶液または酸性水溶液による表面調整処理を施し、これらの元素を析出させるようにしてもよい。
上記亜鉛系めっき鋼板の表面に形成される有機複合皮膜は、溶剤系有機樹脂(A)と、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物の中から選ばれる1種以上の有機金属化合物(B)と、非クロム系防錆添加剤(C)とを含有する表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された皮膜である。この皮膜はクロムを含まない。
表面処理組成物に含有される溶剤系有機樹脂(A)は、水分散性樹脂や水溶性樹脂などに比べて腐食因子である水に対するバリアー性が高く、より優れた耐食性が得られる。また、溶剤系有機樹脂は、アルカリ脱脂などに対する耐薬品性に関しても、水分散性樹脂や水溶性樹脂などに比べて優れていることから、ユーザーで塗油した後にプレス加工が施され、さらに油を除去するためのアルカリ脱脂が行われた後でも、初期の耐食性と変わらない耐食性を維持することができる。
溶剤系有機樹脂(A)としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、これらのエポキシ系樹脂をさらに変性させた樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂などを挙げることができ、これらの中から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。また、これらのなかでも特に、耐食性やめっき層などの下地との密着性の観点からは、エポキシ系樹脂をベースとし、加工性を向上させることを狙いとしてその分子量を適宜最適化したもの、エポキシ系樹脂の一部にウレタンやポリエステル、アミンなどの変性を加えたものが望ましい。
上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック型フェノールなどのポリフェノール類とエピクロルヒドリンなどのエピハロヒドリンとを反応させてグリシジル基を導入してなるか、若しくはグリシジル基導入反応生成物にさらにポリフェノール類を反応させて分子量を増大させてなる芳香族エポキシ樹脂、さらには脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。これらのエポキシ樹脂は、特に低温での皮膜形成性および加工後の耐食性を必要とする場合には、数平均分子量で1500以上とすることが好ましい。
上記変性エポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂骨格中のエポキシ基またはヒドロキシル基に各種変性剤を反応させたものが挙げられる。例えば、乾性油脂肪酸中のカルボキシル基を反応させたエポキシエステル樹脂、アクリル酸、メタクリル酸などで変性したエポキシアクリレート樹脂、イソシアネート化合物を反応させたウレタン変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、有機複合皮膜の耐食性や加工性の向上を狙いとして、特に有機樹脂として熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。この場合、尿素樹脂(ブチル化尿素樹脂など)、メラミン樹脂(ブチル化メラミン樹脂など)、ベンゾグアナミン樹脂などのアミノ樹脂、ブロックイソシアネート、フェノール樹脂などの硬化剤を配合することができる。
以上述べた点から耐食性および加工性を考慮すると、溶剤系有機樹脂(A)としては溶剤系熱硬化性のエポキシ系樹脂が最も好ましい。
有機樹脂を溶解させる有機溶媒の種類は特に限定されない。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどの水酸基を含有するアルコール類やエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などを例示でき、これらの1種または2種以上を使用することができる。有機樹脂としてエポキシ系樹脂を使用する場合は、溶解性、塗膜形成性などの面から、ケトン系またはエーテル系の溶剤が特に好ましい。
表面処理組成物に含有される有機金属化合物(B)は、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物の中から選ばれる1種以上からなる。これらの有機金属化合物は、チタン、ジルコニウム、アルミニウムのいずれかの金属原子に炭素、酸素、窒素、硫黄、リンなどの原子からなる有機基が結合した化合物であり、有機基の結合形式により、大きく、(1)アルコキシタイプ、(2)アシレートタイプ、(3)キレートタイプ(別称コーディネートタイプ)の3種類に分類される。
この有機金属化合物(B)が耐食性を向上させる理由は必ずしも明らかではないが、有機樹脂の架橋性や密着性を高めることで、酸素や塩化物イオンなどの腐食促進因子に対するバリアー性が向上するためであると考えられる。さらに、非クロム系防錆添加剤(C)とともに複合添加することにより、皮膜内での防錆添加剤の分散性を向上させるとともに、有機樹脂と防錆添加剤の密着性を向上させることで、バリアー性がより優れたものとなり、耐食性が向上するものと考えられる。
有機チタン化合物としては、日本曹達(株)製のTST(アルコキシタイプ)、TBSTA(アシレートタイプ)、T−60(キレートタイプ)、味の素ファインテクノ(株)製のプレンアクトKR
TTS(アシレートタイプ)、KR38S(キレートタイプ)、KR44(キレートタイプ)、(株)松本交商製のオルガチックスTA30(アルコキシタイプ)、オルガチックスTPHS(アシレートタイプ)、オルガチックスTC200(キレートタイプ)などが挙げられる(以上、いずれも商品名)。
有機ジルコニウム化合物としては、日本曹達(株)製のZR−181(キレートタイプ)、(株)松本交商製のオルガチックスZA−60(アルコキシタイプ)、オルガチックスZB−320(アシレートタイプ)、オルガチックスZC−550(キレートタイプ)などが挙げられる(以上、いずれも商品名)。
有機アルミニウム化合物としては、味の素ファインテクノ(株)製のプレンアクトAL−M(キレートタイプ)、(株)松本交商製のオルガチックスAL−80(アシレートタイプ)などが挙げられる(以上、いずれも商品名)。
有機チタン化合物の構造は、アルコキシタイプはTi(OR)(Rは有機基)、アシレートタイプはTi(OR)4-n(OCOR′)、キレートタイプはTi(OR)4-n(A)(Aはキレート化合物)で表される。また、有機ジルコニウム化合物の構造は、アルコキシタイプはZr(OR)(Rは有機基)、アシレートタイプはZr(OR)4-n(OCOR′)、キレートタイプはZr(OR)4-n(A)(Aはキレート化合物)で表される。また、有機アルミニウム化合物の構造は、アルコキシタイプはAl(OR)(Rは有機基)、アシレートタイプはAl(OR)3-n(OCOR′)、キレートタイプはAl(OR)3-n(A)(Aはキレート化合物)で表される。これらの構造の違いにより耐食性が異なり、これらの構造別に検討を行った結果、分子構造中にエステル結合(−COO−)を有するアシレートタイプが最も優れた耐食性を示すことが判った。このようにエステル結合を有するものが耐食性に優れる理由としては、有機樹脂の持つ水酸基(−OH)とエステル交換反応が生じやすく、他の構造に比べて有機樹脂の架橋性が高まり、バリアー性が向上するためと考えられる。
表面処理組成物中での有機金属化合物(B)の配合量は、溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対して0.1〜10質量部(固形分)とすることが望ましい。有機金属化合物(B)の配合量が0.1質量部未満では耐食性向上効果が十分でなく、一方、10質量部を超えると、表面処理組成物(処理液)が増粘し、塗布性を劣化させるため好ましくない。また、耐食性も劣る傾向にある。耐食性と組成物粘度の観点から、より好ましい配合量は0.5〜5質量部である。
表面処理組成物に含有される非クロム系防錆添加剤(C)は、初期の耐食性向上を目的として配合されるが、さきに述べたように、有機金属化合物(B)と複合添加することにより、非クロム系防錆添加剤の分散性が向上するとともに、有機樹脂と非クロム系防錆添加剤の密着性が向上することによってバリアー性が向上し、非クロム系防錆添加剤(C)の添加効果がより高められる。
この非クロム系防錆添加剤(C)としては、特に下記(a)〜(g)の中から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
(a)カルシウム化合物
(b)酸化ケイ素
(c)難溶性リン酸化合物
(d)モリブデン酸化合物
(e)バナジウム化合物
(f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
(g)ヒドラジド化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、ピリダジン化合物の中から選ばれる1種以上の、N原子を含有する有機化合物
これら(a)〜(g)の非クロム系防錆添加剤の詳細は、以下のとおりである。
上記(a)の成分であるカルシウム化合物は、カルシウム酸化物、カルシウム水酸化物、カルシウム塩のいずれでもよく、これらの1種または2種以上を使用できる。また、カルシウム塩の種類にも特に制限はなく、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどのようなカチオンとしてカルシウムのみを含む単塩のほか、リン酸カルシウム・亜鉛、リン酸カルシウム・マグネシウムなどのようなカルシウムとカルシウム以外のカチオンを含む複塩を使用してもよい。この(a)の成分は、腐食環境下においてめっき金属である亜鉛やアルミニウムよりも卑なカルシウムが優先溶解し、これがカソード反応により生成したOHと緻密で難溶性の生成物として欠陥部を封鎖し、腐食反応を抑制する。また、シリカとともに配合された場合には、表面にカルシウムイオンが吸着し、表面電荷を電気的に中和して凝集する。その結果、緻密で且つ難溶性の保護皮膜が生成して腐食が封鎖し、腐食反応を抑制する。
上記(b)の成分としては微粒子シリカであるコロイダルシリカや乾式シリカなどを使用することができるが、耐食性の観点からは特に、カルシウムをその表面に結合させたカルシウムイオン交換シリカを使用するのが望ましい。
コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学(株)製のスノーテックスO、20、30、40、C、S(いずれも商品名)を用いることができ、また、ヒュームドシリカとしては、日本アエロジル(株)製のAEROSIL
R971、R812、R811、R974、R202、R805、130、200、300、300CF(いずれも商品名)を用いることができる。また、カルシウムイオン交換シリカとしては、W.R.Grace&Co.製のSHIELDEX C303、SHIELDEX AC3、SHIELDEX AC5(いずれも商品名)、富士シリシア化学(株)製のSHIELDEX、SHIELDEX
SY710(いずれも商品名)などを用いることができる。これらシリカは、腐食環境下において緻密で安定な亜鉛の腐食生成物の生成に寄与し、この腐食生成物がめっき表面に緻密に形成されることによって、腐食の促進を抑制する。
また、上記(c)である難溶性リン酸化合物としては、難溶性リン酸塩を用いることができる。この難溶性リン酸塩は単塩、複塩など全ての種類の塩を含む。また、それを構成する金属カチオンに限定はなく、難溶性のリン酸亜鉛、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウムなどのいずれの金属カチオンでもよい。また、リン酸イオンの骨格や縮合度などにも限定はなく、正塩、二水素塩、一水素塩または亜リン酸塩のいずれでもよく、さらに、正塩はオルトリン酸塩の他、ポリリン酸塩などの全ての縮合リン酸塩を含む。この難溶性リン化合物は、腐食によって溶出しためっき金属の亜鉛やアルミニウムが、加水分解により解離したリン酸イオンと錯形成反応により緻密で且つ難溶性の保護皮膜を生成して腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
また、上記(d)のモリブデン酸化合物としては、例えば、モリブデン酸塩を用いることができる。このモリブデン酸塩は、その骨格、縮合度に限定はなく、例えばオルトモリブデン酸塩、パラモリブデン酸塩、メタモリブデン酸塩などが挙げられる。また、単塩、複塩などの全ての塩を含み、複塩としてはリン酸モリブデン酸塩などが挙げられる。モリブデン酸化合物は不動態化効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食環境下で溶存酸素と共にめっき皮膜表面に緻密な酸化物を形成することで腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
また、上記(e)のバナジウム化合物としては、例えば、5価のバナジウム化合物、4化のバナジウム化合物が適用できる。特に耐食性の観点から4価のバナジウム化合物が好ましい。
また、上記(f)の有機化合物としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。すなわち、トリアゾール類としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾールなど;チオール類としては、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、2−メルカプトベンツイミダゾールなど;チアジアゾール類としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなど;チアゾール類としては、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール類など;チウラム類としては、テトラエチルチウラムジスルフィドなど、がそれぞれ挙げられる。これらの有機化合物は、吸着効果によって自己補修性を発現する。すなわち、腐食によって溶出した亜鉛やアルミニウムがこれらの有機化合物が有する硫黄を含む極性基に吸着して不活性皮膜を形成することで腐食起点を封鎖し、腐食反応を抑制する。
また、上記(g)の有機化合物としては、例えば、以下のようなものを挙げることができる。すなわち、ヒドラジド化合物としては、カルボヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4′−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゾフェノンヒドラゾン、アミノポリアクリルアミドなど;ピラゾール化合物としては、ピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ピラゾロン、3−アミノ−5−メチルピラゾールなど;トリアゾール化合物としては、1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2,3−ジヒドロ−3−オキソ−1,2,4−トリアゾール、1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(1水和物)、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、6−フェニル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジンなど;テトラゾール化合物としては、5−フェニル−1,2,3,4−テトラゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,3,4−テトラゾールなど;チアジアゾール化合物としては、5−アミノ−2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾールなど;ピリダジン化合物としては、マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、4,5−ジブロモ−3−ピリダゾン、6−メチル−4,5−ジヒドロ−3−ピリダゾンなど、がそれぞれ挙げられる。また、これらのなかでも5員環または6員環の環状構造を有し、環状構造中に窒素原子を有するピラゾール化合物、トリアゾール化合物が特に好適である。
上記(a)〜(g)の防錆添加剤は、2種以上を複合添加してもよい。
表面処理組成物中での非クロム系防錆添加剤(C)の配合量は、溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対して1〜120質量部(固形分)とすることが望ましい。非クロム系防錆添加剤(C)の配合量が1質量部未満では耐食性向上効果が十分でなく、一方、120質量部を超えると、皮膜の加工性が劣化し、加工後の耐食性が劣るので好ましくない。耐食性と加工後耐食性の観点から、より好ましい配合量は5〜50質量部である。
また、表面処理組成物(有機複合皮膜)中には、皮膜の加工性を向上させる目的で固形潤滑剤を配合することができる。
本発明に適用できる固形潤滑剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
(1)ポリオレフィンワックス、パラフィンワックス:例えば、ポリエチレンワックス、合成パラフィン、天然パラフィン、マイクロワックス、塩素化炭化水素など
(2)フッ素樹脂微粒子:例えば、ポリフルオロエチレン樹脂(ポリ4フッ化エチレン樹脂など)、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂など
また、この他にも、脂肪酸アミド系化合物(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド、オレイン酸アミド、エシル酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミドなど)、金属石けん類(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ラウリン酸カルシウム、パルミチン酸カルシウムなど)、金属硫化物(例えば、二硫化モリブデン、二硫化タングステンなど)、グラファイト、フッ化黒鉛、窒化ホウ素、ポリアルキレングリコール、アルカリ金属硫酸塩などの1種または2種以上を用いてもよい。
以上の固形潤滑剤の中でも、特に、ポリエチレンワックス、フッ素樹脂微粒子(なかでも、ポリ4フッ化エチレン樹脂微粒子)が好適である。
ポリエチレンワックスとしては、例えば、ヘキスト社製のセリダスト
9615A、セリダスト 3715、セリダスト 3620、セリダスト 3910、三洋化成(株)製のサンワックス 131−P、サンワックス 161−P、三井化学(株)製のケミパール
W−100、ケミパール W−200、ケミパール W−500、ケミパール W−800、ケミパール W−950などを用いることができる(以上、いずれも商品名)。
また、フッ素樹脂微粒子としては、テトラフルオロエチレン微粒子が最も好ましく、例えば、ダイキン工業(株)製のルブロン
L−2、ルブロン L−5、三井・デュポン(株)製のMP1100、MP1200、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンディスパージョン AD1、フルオンディスパージョン
AD2、フルオン L141J、フルオン L150J、フルオン L155Jなどが好適である(以上、いずれも商品名)。
また、これらのなかで、ポリオレフィンワックスとテトラフルオロエチレン微粒子の併用により特に優れた潤滑効果が期待できる。
表面処理組成物中での固形潤滑剤の配合量は、溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対して、1〜30質量部、好ましくは1〜10質量部(いずれも固形分)とすることが望ましい。固形潤滑剤の配合量が1質量部未満では潤滑効果が乏しく、一方、配合量が30質量部を超えると塗装性が低下するので好ましくない。
また、表面処理組成物(有機複合皮膜)中には、さらに、腐食抑制剤として、他の酸化物微粒子(例えば、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなど)、リンモリブデン酸塩(例えば、リンモリブデン酸アルミニウムなど)、有機リン酸及びその塩(例えば、フィチン酸、フィチン酸塩、ホスホン酸、ホスホン酸塩、及びこれらの金属塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩など)、有機インヒビター(例えば、ヒドラジン誘導体、チオール化合物、ジチオカルバミン酸塩など)などの1種または2種以上を添加することができる。
さらに必要に応じて、表面処理組成物(有機複合皮膜)中には添加剤として、有機着色顔料(例えば、縮合多環系有機顔料、フタロシアニン系有機顔料など)、着色染料(例えば、水溶性アゾ系金属染料など)、無機顔料(例えば、酸化チタンなど)、導電性顔料(例えば、亜鉛、アルミニウム、ニッケルなどの金属粉末、リン化鉄、アンチモンドープ型酸化錫など)、メラミン・シアヌル酸付加物などの1種または2種以上を添加することができる。
有機複合皮膜の膜厚は0.1〜3μm、好ましくは0.5〜2.0μmとする。有機皮膜の膜厚が0.1μm未満では耐食性が不十分であり、一方、膜厚が3μmを超えると導電性、加工性が低下する。
有機複合皮膜は、表面処理組成物を亜鉛系めっき鋼板表面に塗布し、乾燥することにより形成される。なお、めっき鋼板の表面は、上記表面処理組成物を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理などの前処理を施すことができる。
表面処理組成物を塗布する方法としては、塗布法、浸漬法、スプレー法などの任意の方法を採用できる。塗布法としては、ロールコーター(3ロール方式、2ロール方式等)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの方法を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理またはスプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
加熱乾燥処理には、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などを用いることができる。加熱処理は、到達板温で80〜300℃、好ましくは120〜250℃の範囲で行うことが望ましい。
表面処理組成物の塗布、加熱乾燥後、通常は水冷を行うことなく空冷により冷却されるが、加熱乾燥後に水冷工程を実施しても構わない。
本発明の有機複合被覆鋼板では、上述した有機複合皮膜の下層に、さらに、膜厚0.01〜2μmのクロムを含まない有機系皮膜または無機系皮膜若しくは有機・無機複合皮膜(以下、便宜上「下層皮膜」という)を形成することができ、この場合には、この下層皮膜が第1層皮膜、有機複合皮膜が第2層皮膜となる。
前記下層皮膜は、亜鉛系めっきとの反応層を有する皮膜であることが好ましい。このような皮膜は、亜鉛系めっきと強固な密着性が得られ、皮膜−亜鉛系めっき界面でのめっき金属の腐食を抑制する。このような反応層を有する下層皮膜と上述した有機複合皮膜との二層構造により、特に優れた耐食性を実現することができる。
下層皮膜は、亜鉛系めっきとの反応層を形成する狙いで、非晶質性のリン酸化合物を含有することが望ましい。非晶質性のリン酸化合物は、亜鉛との密着性を確保する上で有利であるばかりでなく、皮膜中の可溶性リン酸が、亜鉛を捕捉して白錆の発生を抑制する効果がある。
下層皮膜には、このような非晶質性のリン酸化合物に加えて、コロイド状の無機酸化物微粒子などを配合することもできる。この酸化物微粒子としては、コロイダルシリカなどのような二酸化珪素が望ましく、コロイダルシリカとしては、例えば、日産化学(株)製のスノーテックスO、OS、OXS、OUP、AK、O40、OL、OZL(以上、酸性溶液)、スノーテックスXS、S、NXS、NS、N、QAS−25、LSS−35、LSS−45、LSS−75(以上、アルカリ性溶液)などを適用できる(以上、いずれも商品名)。また、触媒化成工業(株)製のカタロイドS、SI−350、SI−40、SA(以上、アルカリ性溶液)、カタロイドSN(酸性溶液)、旭電化工業(株)製のアデライトAT−20〜50、AT−20N、AT−300、AT−300S(以上、アルカリ性溶液)、アデライトAT20Q(酸性溶液)なども適用できる(以上、いずれも商品名)。また、これらの中でも、特に粒子径が14nm以下のもの、さらには8nm以下の微細なものが耐食性の観点から好ましい。また、乾式シリカ微粒子を皮膜組成物溶液に分散させたものを用いても良い。この乾式シリカとしては、日本アエロジル(株)製のAEROSIL
200、300、300CF、380など(いずれも商品名)を用いることができ、なかでも粒子径12nm以下、望ましくは7nm以下のものが好ましい。
上記のほか、酸化物微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化アンチモンなどのコロイド溶液、微粉末を用いることもできる。
なお、従来のリン酸塩処理(結晶性)は、加工性・溶接性が劣るため、好ましくない。
また、下層皮膜は、無機系皮膜、有機系皮膜、有機・無機複合皮膜のいずれでもよいが、自動車用鋼板として厳しいプレス加工を配慮すると、有機樹脂を配合したものであることが望ましく、有機樹脂としては、特に、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂、これらをさらに変性させた樹脂の中から選ばれる1種以上が好ましい。
さらに、これらに加えて、下層皮膜用の組成物に、シランカップリング剤などを添加することにより、耐食性をさらに向上させることができる。このシランカップリング剤としては、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメエキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−(ビニルベンジルアミン)−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができ、これらの1種を単独でまたは2種類以上を混合して使用することができる。これらのシランカップリング剤を含む皮膜が耐食性に優れる理由は、水溶液中のシランカップリグ剤が加水分解することにより生じたシラノール基(Si−OH)がめっき皮膜表面と水素結合をし、さらには脱水縮合反応により優れた密着性を付与するためであると考えられる。
以上述べた点からして、下層皮膜は、水溶性有機樹脂または/および水分散性有機樹脂と、リン酸または/およびリン酸化合物と、シランカップリング剤とを含有し、必要に応じて無機酸化物微粒子などを含有した水性処理液を亜鉛系めっき鋼板表面に塗布し、乾燥させたものが特に好ましい。
下層皮膜の膜厚は0.01〜2μm、好ましくは0.05〜1μmとすることが適当である。下層皮膜の膜厚が0.01μm未満では耐食性が十分に向上せず、一方、膜厚が2μmを超えると、溶接性が低下する。
下層皮膜は、処理液(表面処理組成物)を亜鉛系めっき鋼板表面に塗布し、乾燥することにより形成される。さきに述べたように、めっき鋼板の表面は、処理液を塗布する前に必要に応じてアルカリ脱脂処理し、さらに密着性、耐食性を向上させるために表面調整処理などの前処理を施すことができる。
めっき鋼板表面に処理液をコーティングする方法としては、塗布方式、浸漬方式、スプレー方式のいずれでもよく、塗布方式ではロールコーター(3ロール方式、2ロール方式など)、スクイズコーター、ダイコーターなどのいずれの塗布手段を用いてもよい。また、スクイズコーターなどによる塗布処理、浸漬処理、スプレー処理の後に、エアナイフ法やロール絞り法により塗布量の調整、外観の均一化、膜厚の均一化を行うことも可能である。
コーティングした処理液を加熱乾燥する方法は任意であり、例えば、ドライヤー、熱風炉、高周波誘導加熱炉、赤外線炉などの手段を用いることができる。
この加熱乾燥処理は到達板温で80〜300℃、望ましくは120〜250℃の範囲で行うことが好ましい。
処理液の塗布、加熱乾燥後、通常は水冷を行うことなく空冷により冷却されるが、加熱乾燥後に水冷工程を実施しても構わない。
このような方法で下層皮膜を形成した後、その上層に、さき述べたような方法で表面処理組成物を塗布し、乾燥させることにより、第2皮膜である有機複合皮膜を形成する。
第1層皮膜形成用の表面処理組成物としては、表2に示すものを用いた。この表面処理組成物は、有機樹脂として水溶性または水分散性エポキシ樹脂を用い、これにシランカップリング剤、リン酸などを適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて所定時間攪拌することで調製した。
第2層皮膜形成用の表面処理組成物は、表3に示す有機樹脂、表4に示す非クロム系防錆添加剤、表5に示す化合物を適宜配合し、塗料用分散機(サンドグラインダー)を用いて所定時間攪拌することで調製した。
冷延鋼板をベースとした家電、建材、自動車部品用のめっき鋼板である、表1に示すめっき鋼板を処理原板として用いた。なお、鋼板の板厚は評価の目的に応じて所定の板厚のものを採用した。このめっき鋼板の表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥した後、上記第1層皮膜形成用の表面処理組成物をロールコーターにより塗布し、80〜300℃で加熱乾燥した。皮膜の膜厚は、表面処理組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度など)により調整した。
次いで、上記第2層皮膜形成用の表面処理組成物をロールコーターにより塗布し、各種温度で加熱乾燥した。皮膜の膜厚は、表面処理組成物の固形分(加熱残分)または塗布条件(ロールの圧下力、回転速度など)により調整した。
このようにして得られた有機複合被覆鋼板の皮膜組成と品質性能(耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、加工後耐食性、溶接性、塗装性)を評価した結果を表6〜表8に示す。なお、品質性能の評価は以下のようにして行った。
(1)耐食性
各サンプルについて、下記の複合サイクル試験(CCT)を施し、63サイクル経過後の白錆発生面積率および赤錆発生面積率で評価した。
塩水噴霧(JIS
Z 2371に基づく):2時間

乾燥(60℃):4時間

湿潤(50℃、>95%RH):2時間
その評価基準は以下の通りである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○+:白錆発生面積率5%以上10%未満
○ :白錆発生面積率10%以上30%未満で、赤錆発生なし
△ :赤錆発生ありで、赤錆発生面積率10%未満
× :赤錆発生面積率10%以上
(2)アルカリ脱脂後耐食性
各サンプルについて、日本パーカライジング(株)製「FC−4460」を用いて、60℃、2分間スプレー処理の条件で脱脂した後、下記の複合サイクル試験(CCT)を施し、63サイクル経過後の白錆発生面積率および赤錆発生面積率で評価した。
塩水噴霧(JIS
Z 2371に基づく):2時間

乾燥(60℃):4時間

湿潤(50℃、95%RH):2時間
その評価基準は以下の通りである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○+:白錆発生面積率5%以上10%未満
○ :白錆発生面積率10%以上30%未満で、赤錆発生なし
△ :赤錆発生ありで、赤錆発生面積率10%未満
× :赤錆発生面積率10%以上
(3)加工後耐食性
各サンプルに対して、下記の条件によるドロービードで変形と摺動を付加し、このサンプルを日本パーカライジング(株)製「FC−4460」を用いて、60℃、2分間スプレー処理の条件で脱脂した後、前記「(1)耐食性」で行ったCCTを施し、36サイクル経過後の白錆発生面積率および赤錆発生面積率で評価した。
押付荷重:800kgf
引抜速度:1000mm/min
ビード肩R:オス側2mmR,メス側3mmR
押し込み深さ:7mm
使用油:プレトンR−352L
その評価基準は以下の通りである。
◎ :白錆発生面積率5%未満
○+:白錆発生面積率5%以上10%未満
○ :白錆発生面積率10%以上30%未満で、赤錆発生なし
△ :赤錆発生ありで、赤錆発生面積率10%未満
× :赤錆発生面積率10%以上
(4)溶接性
各サンプルについて、使用電極:CF型Cr−Cu電極、加圧力:200kgf、通電時間:10サイクル/50Hz、溶接電流:10kAの条件で連続打点性の溶接試験を行い、連続打点数で評価した。その評価基準は以下の通りである。
◎ :2000点以上
○ :1000点以上、2000点未満
△ :500点以上、1000点未満
× :500点未満
(5)塗装性
各サンプルにカチオン系電着塗料(関西ペイント(株)製「GT−10」)を膜厚30μmとなるように塗装した後、170℃×20分の焼付を行った。塗装したサンプルを40℃温水中に240時間浸漬し、直ちに碁盤目(10×10個、1mm間隔)のカットを入れて接着テープによる貼着・剥離を行い、塗膜の剥離面積率を測定した。その評価基準は以下の通りである。
◎ :剥離なし
○ :剥離面積率5%未満
△ :剥離面積率5%以上、20%未満
× :剥離面積率20%以上
Figure 0004844096
Figure 0004844096
Figure 0004844096
Figure 0004844096
Figure 0004844096
下記の表6および表7において、表中に記載してある*1〜*6は以下のような内容を示す。
*1:表1に記載のめっき鋼板No.
*2:表2に記載の表面処理組成物No.
*3:表3に記載の有機樹脂No.
*4:表4に記載の非クロム系防錆添加剤No.
*5:表5に記載の化合物No.
*6:質量部(固形分)
Figure 0004844096
Figure 0004844096
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Claims (6)

  1. 亜鉛系めっき鋼板の表面に、溶剤系有機樹脂(A)と、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物の中から選ばれる1種以上の有機金属化合物(B)と、非クロム系防錆添加剤(C)とを含有し、前記溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対する前記有機金属化合物(B)の含有量が0.1〜10質量部(固形分)である表面処理組成物を塗布し、乾燥することにより形成された膜厚が0.1〜3μmの有機複合皮膜を有することを特徴とする有機複合被覆鋼板。
  2. 有機金属化合物(B)が、分子構造中にエステル結合を有することを特徴とする請求項1に記載の有機複合被覆鋼板。
  3. 溶剤系有機樹脂(A)が、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、ポリアルキレングリコール変性エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、これらのエポキシ系樹脂をさらに変性させた樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1または2に記載の有機複合被覆鋼板。
  4. 非クロム系防錆添加剤(C)が、下記(a)〜(g)の中から選ばれる1種以上からなることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の有機複合被覆鋼板。
    (a)カルシウム化合物
    (b)酸化ケイ素
    (c)難溶性リン酸化合物
    (d)モリブデン酸化合物
    (e)バナジウム化合物
    (f)トリアゾール類、チオール類、チアジアゾール類、チアゾール類、チウラム類の中から選ばれる1種以上の、S原子を含有する有機化合物
    (g)ヒドラジド化合物、ピラゾール化合物、トリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、ピリダジン化合物の中から選ばれる1種以上の、N原子を含有する有機化合物
  5. 表面処理組成物が、溶剤系有機樹脂(A)100質量部(固形分)に対して、非クロム系防錆添加剤(C)を1〜120質量部(固形分)含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の有機複合被覆鋼板。
  6. 有機複合皮膜の下層に、さらに、膜厚が0.01〜2μmのクロムを含まない有機系皮膜または無機系皮膜若しくは有機・無機複合皮膜を有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の有機複合被覆鋼板。
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