〔第1の実施の形態〕
まず、添付図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1乃至図10は本発明による容器の殺菌方法の第1の実施の形態を示す図である。このうち図1は容器1の成形から内容物の充填までの概略工程を示す図であり、図2は容器の殺菌方法および殺菌装置10を示す上面図であり、図3は殺菌装置10内における各処理内容を説明する図であり、図4および図5は容器の殺菌装置10を示す側面図であり、図6は放電極35を示す側面図であり、図7は導入手段40の概略構成を示す図であり、図8は蒸気混合ガスを生成する方法を説明する図であり、図9は大気プラズマの発生状況を監視する方法および手段60,65を示す図であり、図10は乾燥手段56を示す図である。
本発明の対象とする殺菌とは、図1に示すように、容器1が成形された後に内容物の充填に先立って行われものである。
なお、本願における容器1とは、金属以外の各種の材料にて構成されたものであればよい。本実施の形態においては、殺菌される容器1として、上端に設けられた開口部1aと、開口部1aから徐々に太さが太くなっていく首部1bと、首部1bの下方に設けられた胴部1cと、を有するボトル型の容器を対象とした例を示す。また本願において、容器1の外面は容器1の外側に露出している面を意味し、外周面2は容器1の外面のうち容器1の側方(図5における紙面の横方)に向けられた面を意味し、底面3は容器1の外面のうち容器の底側(図5における紙面の下側)に向けられた面を意味する。
まず、容器の殺菌装置10について説明する。
図1乃至図10に示すように、殺菌装置10は、チャンバー12と、チャンバー12内に設けられ回転軸L1を中心として回転自在な回転体40と、回転体40上の回転軸L1を中心とした同一円周に沿って等間隔を空けて設けられた複数の処理槽20であって、少なくとも一部分が対向電極30で覆われ殺菌対象の容器1が内部に配置される複数の処理槽20と、各処理槽20に対応して設けられ、処理槽20内に配置される容器1内に挿入されて処理槽20とともに回転する複数の放電極35と、処理槽20内に少なくとも所定の液体を蒸発させた蒸気を導入する導入手段70と、回転体40の回転にともなう処理槽20の移動経路に沿って設けられ、高電圧パルスが印加される高電圧側レール59と接地された接地側レール58とを有する高電圧パルス印加手段57と、を備えている。
また、図2に示すように、殺菌装置10は、チャンバー12内に連通し、チャンバー12内に殺菌剤を噴射する殺菌剤供給手段50をさらに備えている。本実施の形態においては、殺菌剤として過酸化水素を用いており、殺菌剤供給手段50は過酸化水素水と加圧されたエアーとを2流体スプレーで混合し、過酸化水素ミストとしてチャンバー12内に送り込むようになっている。また、この殺菌剤供給手段50は常温または加熱されたエアーをチャンバー12内に送り込むこともできるようになっている。なお、チャンバー12には、チャンバー12内への殺菌剤の供給に対応した1つまたは複数の排気口12aが設けられている。
また同様に、殺菌装置10は、処理槽20内に殺菌剤を供給する処理槽用殺菌剤供給手段50aを備えている(図2)。この処理槽用殺菌剤供給手段50aは上述した殺菌剤供給手段50と同様の構成からなっており、過酸化水素ミストを供給することができるようになっている。図2に示されているように、処理槽用殺菌剤供給手段50aは後に詳述する導入手段70と並列に配置され、導入手段70の管72にバルブを介して連通している。そしてこの管72を経由して処理槽内に過酸化水素ミストを送り込むことができるようになっている。なお、本実施の形態において、このように殺菌剤供給手段50とは別に処理槽用殺菌剤供給手段50aを設けた例を示したが、これに限られず、殺菌剤供給手段50を導入手段70の管72にバルブを介して連通させ、上述した殺菌剤供給手段50により処理槽20内へも過酸化水素ミストを導入することができるようにしてもよい。
図2に示すように、このような殺菌装置10においては、容器1は搬入手段15aによりチャンバー12内に送り込まれ、受け渡しホイール16を介して処理槽20内に配置されるようになっている。また、殺菌装置10で殺菌された後、容器1は受け渡しホイール16を介して処理槽20内から搬出手段15bへ受け渡され、搬出手段15bによりチャンバー12内から運び出されるようになっている。
また、チャンバー12内を含む搬入路14aよりも下流工程側を陽圧とすることができるようになっている。これにより、殺菌装置の稼働中にチャンバー12内から搬入路14aに向けた気流をつくることができ、これにより、搬入路14aから菌が持ち込まれることを防止することができるようになっている。
まず、回転体40について詳述する。
図4および図5に示すように、回転体40は、回転軸L1上に配置されたシャフト49を取り囲むように配置されており、モーター等の駆動手段(図示せず)を介して回転軸L1を中心として回転自在となっている。回転体40は、下方に設けられた下方テーブル41と、上方に設けられた上方テーブル43と、下方テーブル41と上方テーブル43とを連結する連結部45とからなり、これらが一体となり回転する、すなわち、下方テーブル41と上方テーブル43とは同期して回転するようになっている。また、上方テーブル43には放電極35等を上下方向に移動自在に支持する支持部材47が、下方テーブル41に支持される各処理槽20に対応して複数設けられている。本実施の形態において、この支持部材47はエアシリンダ48のロッド48aに固定されている。なお、図2において、上方テーブル43、連結部45、支持部材47、および放電極35は図示されていない。
次に、処理槽20について詳述する。
図4および図5に示すように、処理槽20は処理槽本体21と処理槽蓋体22とからなっている。処理槽本体21は回転体40の下方テーブル41上に載置支持されている。処理槽蓋体22は処理槽本体21の上方に上述した支持部材47を介して上下方向に沿って移動自在に支持されている。支持部材47が下方に移動した場合、処理槽本体21のフランジ21aと処理槽蓋体22とのフランジ22aとが対面するようにして、処理槽本体21と処理槽蓋体22とが重ね合わせられるようになっている(図5)。図5に示すように、処理槽蓋体22には、容器1の開口部1aに対面する位置に処理槽開口部20aが設けられている。この処理槽開口部20aは放電極35や導入手段70の処理槽20内への導入経路として用いることができる限りにおいて大きさ形状等は特に限定されない。また、本実施の形態において、処理槽開口部20aは、ガス(気体)が処理槽20内に導入される際にガスを処理槽20外へ排出するための抜き孔としても機能するようになっている。しかしながら、専用の抜き孔を処理槽本体21または処理槽蓋体22に別途設けるようにしてもよい。
処理槽20内に形成される容器1の収納スペースSは容器1の形状に沿うようになされている。すなわち、図5に示すように、断面において処理槽20内面が容器1から略一定距離離間するようになされ、さらに言い換えると、処理槽20内の収納スペースSが容器1と略相似形状となるようになされている。処理槽20をこのように相似型に形成することにより、対向電極30が容器1および放電極35から大きく離間してしまうことを防止し、効率的に大気圧プラズマを発生させ殺菌効果を向上させることができる。また、処理槽20は処理槽本体21と処理槽蓋体22とに分割可能な分割型としているので、仮に容器1が胴部の一箇所において最も太さが太くなるような形状であったとしても、その部分で処理槽本体21と処理槽蓋体22とを分離するように構成することにより、容器1を処理槽20内に収納可能とし、かつ処理槽20内の収納スペースSと容器1とを相似形状にすることができる。
処理槽20の大きさは、収納スペースSが容器1を収容可能な最小限の大きさに多少の余裕を加えた程度となるようにすればよい。なお、収納スペースSを必要以上に大きくすれば、放電極35と外周対向電極30aの距離が不必要に増加して放電現象の安定性が損なわれるおそれがある。
図4および図5に示すように、本実施の形態において、処理槽20は、内方に配置され収容スペースSに露出した誘電体24と、誘電体24の外方に配置され誘電体24を覆う対向電極30と、から構成されている。誘電体24としては、アクリル樹脂、セラミックス、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、フッ素系樹脂、メチルペンテン系樹脂等の各種の誘電性材料を使用することができる。ただし、容器1の殺菌前等、必要に応じて処理槽20自体またはチャンバー12内全体が殺菌処理されるため、誘電体24はこのとき使用される薬品に対する耐性を有していることが好ましい。また、処理槽20内の収容スペースSには容器1が順次収容され、そして取り出しされる。このとき、処理槽20と容器1との接触により処理槽20が摩耗してしまうことを防止することができるよう、誘電体24が耐摩耗性を有していることが好ましい。さらに、外部から処理槽20内で生じる放電現象を観察することができるよう、誘電体24は透光性を有していることが望ましい。さらにまた、放電現象にともなってわずかながら紫外線が発生するため、誘電体24はUV耐性を有していることが好ましい。このような耐薬品性、耐摩耗性、UV耐性、および透光性を有する材料としてPES(ポリ・エーテル・サルフォン(poly ether sulfone))を誘電体24として用いることができる。
このような誘電体24の厚みは、放電極35と対向電極30との間に安定した放電を生じさせる範囲で適宜に変更してよい。例えば、上述したPESにて処理槽20の処理槽本体21および処理槽蓋体22を構成する場合、それらの厚さは好ましくは0.5mm〜10mmの範囲に設定することができる。
さらに、処理槽20の容器1の底面3に対向する部分には、容器1の底面3と処理槽20との間にガスを流通させるための隙間が生じるよう、容器1を支持する支持手段26としての複数のスペーサが容器1の周方向または半径方向に適宜に間隔を空けて配置されている。スペーサは処理槽20の内側面と同様に誘電体24にて構成されている。スペーサの個数及び大きさは容器1を安定して支持しつつ、容器1の底面と処理槽20との間にガスが十分に回り込める隙間が空くように定めることが望ましい。隙間は0.1mm〜20mmの範囲であることが望ましい。スペーサは処理槽20と別体に構成されても、一体に構成されてもよい。
なお、容器1と処理槽20の底面との間に隙間を生じさせることができる限りにおいて支持手段26の支持形態は問わない。従って、容器1と処理槽20の底面との間に様々な支持手段26を配置して容器1を下から支えるようにするだけでなく、容器1の上方に支持手段26を配置してその一部で容器1を吊り下げるようにしてもよい。
一方、図4および図5に示すように、対向電極30は誘電体24の外方を囲むように設けられている。すなわち、図5に示すように、対向電極30は、誘電体24を挟んで容器1の底面3と対向する底面対向電極30bと、誘電体24を挟んで容器1の外周面2と対向する外周対向電極30aと、から構成されている。
また、図4および図5に示すように、外周対向電極30aは、処理槽20が処理槽本体21と処理槽蓋体22とに分離されることにともない、処理槽本体21側と処理槽蓋体22側とに設けられている。そして、処理槽20は、これらの外周対向電極30aを導通させるための接点アーム27,28を処理槽本体21と処理槽蓋体22とにそれぞれ有している(図4および図5)。処理槽蓋体22側の接点アーム28は、処理槽蓋体22側の外周対向電極30aに導通されるとともに、内方に向けて(回転軸L1側に向けて)延び出している。一方、処理槽本体21側の接点アーム27は、処理槽本体21側の外周対向電極30aに導通されるとともに、内方に向けて延びるとともにさらに上方に向けて延びている。図5に示すように、これらの接点アーム27,28は、処理槽本体21と処理槽蓋体22とが重ね合わされた場合に接触するようになっており、これにより、処理槽本体21側の外周対向電極30aと処理槽蓋体22側の外周対向電極30aとが導通する。
本実施の形態において、外周対向電極30aの上端は収容スペースSに配置された容器1よりも高く、かつ誘電体24の上端よりはわずかに低い位置にある。外周対向電極30aの下端は底面対向電極30bと連結され、一体に構成されている。したがって、本実施の形態において、対向電極30は処理槽開口部20a近傍およびフランジ21a,22a近傍を除いて誘電体24を覆うようになっており、容器1の外形状と略相似形状となっている。しかしながら、対向電極30をこのように構成することは必須ではなく、処理される容器1の形状、求められる殺菌レベル等を考慮して、対向電極30を外周対向電極30aまたは底面対向電極30bのみから構成してもよく、また外周対向電極30aを容器1の底面3よりも幾らか高い位置までしか延在しないようにしてもよく、また外周対向電極30aと底面対向電極30bとを別体に構成してもよい。
対向電極30は導電性の材料(例えばステンレス等の金属)からなる板又は網を誘電体24の外周に巻き付けることによって形成することができる。処理槽20の内部における放電現象を観察することができるよう、対向電極30、特に外周対向電極30aは透光性を有することが望ましい。このような観点から、例えば金属網にて外周対向電極30aを構成すれば、その網目を通して放電現象を確認することができるので好ましい。本実施の形態においては、底面対向電極30bを含む対向電極30全体が金属網から構成されている。
また、このような対向電極30を誘電体24の所望の外面に導電性材料を蒸着して形成することもできる。この場合、蒸着条件を適正にすることにより、電極を薄く構成し処理槽20の内部の放電現象を観察できる程度の透光性を対向電極30に付与することができる。電極を形成するために蒸着する材料としては銅、アルミニウム、金、白金等の金属材料、その他各種の導電性材料を使用することができる。また、蒸着に代え、誘電体24の所望の外面に導電性塗料を塗工して外周対向電極30aを形成することもできる。
次に、放電極35について詳述する。
放電極35はステンレス等の導電性材料を容器1内に挿入可能な太さの棒状部材(例えば、丸棒)に成形してなるものである。図4および図5に示すように、放電極35は各処理槽20の上方において上述した支持部材47により上下方向に移動自在に支持されている。すなわち、処理槽蓋体22の上下方向に移動に同期して移動し、図5に示すように、下方に移動した際に容器1の開口部1aから容器1内に挿入される。
本実施の形態において、この放電極35は高電圧パルス印加手段57の正極と接続されて正極として機能する。高電圧パルス印加手段57の負極および対向電極30はいずれも接地される。放電極35と対向電極30との距離を短縮してなるべく小さいエネルギで放電現象を発生させることを考慮しつつ、放電極35の太さは容器1に挿入可能な範囲で設定することが望ましい。放電極35の長さは容器1に必要十分な深さで挿入できるように定めればよい。放電極35の容器1への挿入量(長さ)は容器1の全高の1/10〜9/10の範囲に設定することが好ましい。放電極35の挿入量が容器1の全高の1/10に満たないと容器1内における放電量が不足し、挿入量が9/10を超えると底面対向電極30b側に放電が集中して容器1の底面が熱変形するおそれがあるとともに、容器1の外周面側にて十分な殺菌効果が得られないおそれがあるからである。
図6(a)に放電極35の一部を拡大して示し、同(b)には放電極35のさらに一部を拡大して示す。これらの図から明らかなように、放電極35の容器1内への挿入範囲の全域には一条の螺旋状のねじ山35aが形成され、これにより放電極35の挿入範囲のほぼ全域に亘って凹凸が設けられている。このように凹凸を設けるのは、放電現象を放電極35の先端35bに集中させることなく、放電極35の容器1内への挿入範囲のほぼ全長に亘って均一に放電を生じさせるためである。つまり、放電極35においては尖った部分で電界が集中して放電が生じるため、放電極35の容器1への挿入範囲の全域に凹凸を満遍なく設けることにより、放電極35の先端35bに限らずねじ山35aの頂点から均一に放電を生じさせて容器1の各部で等しい殺菌作用を生じさせることができる。放電極35の先端35bはこの部分への放電の集中を避けるべくなるべく平坦に形成することが望ましい。
放電極35に形成されるねじ山35aのピッチPは0.01mm〜10mmの範囲が好ましく、さらには0.1mm〜5mmの範囲が好ましい。ピッチPが0.01mm未満の場合には凹凸の間隔が狭すぎて均一な放電が得られないおそれがあり、他方、ピッチPが10mmを超える場合には凸部が疎らに分布して放電密度が減少する。また、ねじ山35aの頂角θは5°〜60°の範囲が好ましく、さらには10°〜45°の範囲が好ましい。頂角θが5°未満の場合はねじ山35aの強度が不足するおそれがあり、頂角θが60°を超えるとねじ山35aの頂部からの放電が弱められるおそれがあるからである。
次に、導入手段70について説明する。
本実施の形態において、導入手段70は所定の液体を蒸発させた蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の内部と外部とに導入することができるようになっている。図7に示すように、このような導入手段70は、処理槽20内まで延在する管72と、管72を加熱するヒーター81と、管72に所定のガスを供給するガス供給手段78と、管72に所定の液体を液滴の状態で供給する液体供給手段80とを有している。
管72の末端は、処理槽20内の容器1内部に連通する内部導入管74と、容器1外部に連通する外部導入管76とから構成されている。図4および図5に示すように、内部導入管74と外部導入管76とは各処理槽20の上方において上述した支持部材47により上下方向に移動自在に支持されており、処理槽蓋体22の上下方向の移動に同期して移動するようになっている。図5に示すように、下方に移動した際、内部導入管74は容器1の開口部1aから容器1内に挿入され、容器1の内部と連通し、外部導入管76は処理槽開口部20aから処理槽20と容器1との間に挿入され、処理槽20内の容器1の外部と連通する。
図7に示すように、液体供給手段80から供給される液体は管72を介して混合部72aに向けて送り込まれる。この時、液体はバルブV1を介して液滴の状態で混合部72aに送り込まれる。また、供給されるガスは管72を介して混合部72aに向けて送り込まれる。混合部72aで混合されたガスと液滴状の液体とがヒーター81に送り込まれ、ヒーター81で加熱されることにより液滴状の液体は蒸発して蒸気となり、加熱されたガスと合わさって蒸気混合ガスが生成されるようになっている。生成された蒸気混合ガスは内部導入管74および外部導入管76を介して処理槽20内の容器1の内部と外部とに導入されるようになっている。なお、液体供給手段80からの液体の供給およびガス供給手段78からのガスの供給は、供給時間および供給量とも制御可能であり、流量計(図示せず)等の適当な計測器により監視することができるようになっている。また、本実施の形態においては、蒸気化した液体が再凝縮することのないよう、管72を加熱(保温)するためのテープヒーター(リボンヒーター)77が、ヒーター81以降から処理槽20近傍までの管72に巻き付けられている。
また、図7に示すように、管路にはバルブV2,V3がさらに設けられており、ガス供給手段78から供給されるガスをヒーター81で加熱することなく常温のまま内部導入管74および外部導入管76を介して処理槽20内の容器1の内部と外部とに導入することもできるようになっている。
なお、図7においては、図2を用いて上述した処理槽用殺菌剤供給手段50aが省略されている。上述したように、処理槽用殺菌剤供給手段50aは内部導入管74および外部導入管76に殺菌剤(過酸化水素ミスト)を導入することができるようになっており、これにより配管等の殺菌処理を行うことができる。
ガス供給手段78から供給される所定のガスとしては、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のガスを使用することができる。これらのガスによれば高電圧パルスを印加した際の絶縁破壊電圧を低下させることができて好ましい。また、上記群から選ばれる2種類以上のガスを混合して供給するようにしてもよい。その他にもプラズマ生成に寄与する限りにおいて種々のガスを利用することができる。ここで、所定のガスに空気が含まれることから、蒸気混合ガスは蒸気混合空気を含む概念と言える。
液体供給手段80から供給される所定の液体としては水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の内外面に曇りが生ずる程度でよく、付着する液滴は直径数μm程度の微粒子であることが好ましい。例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルの場合において、容器1の内面及び外面のいずれに対しても0.01g〜10gの範囲の純水を供給すればよい。なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む有機系水溶液や電解質等を含む無機系水溶液を供給するようにしてもよい。
なお、上述した導入手段70は蒸気混合ガスを導入するようにした例を示したが、単なる所定の液体を蒸発させて生成した蒸気を供給するようにしてもよい。この場合、導入手段70は処理槽20内まで延在する管72と、管72に所定の液体を液滴の状態で供給する液体供給手段80と、供給される液体を加熱するヒーター81を有していればよい。また、このように蒸気を処理槽20内に導入する導入手段70とは別に、所定のガスを処理槽20内に導入するガス導入手段(図示せず)を設けることもできる。
次に、高電圧パルス印加手段57について詳述する。
図2および図9に示すように、高電圧パルス印加手段57は、高電圧パルス電源57aと、高電圧パルスが印加される高電圧側レール59と、接地された接地側レール58とを有している。上述したように、高電圧側レール59と接地側レール58とは回転体40の回転にともなった処理槽20および放電極35の移動経路の外方に移動経路に沿って延在しており、回転体40の回転軸L1を中心とした円弧上に沿って配置されている。
図5に示すように、本実施の形態においては、高電圧側レール59と接地側レール58とは上下方向に離間して同一円弧上に配置されている。高電圧側レール59は下方に移動した(容器1内に挿入された)放電極35の上端部近傍、さらに詳しくは処理槽20内に入り切らなかった部分の外方にこれと同じ高さレベルで配置され、接地側レール58は対向電極30の外方にこれと同じ高さレベルで配置されている。なお、外方とは回転体40の半径方向に沿った方向において回転軸L1から離間する方向を意味する。
一方、図9に示すように、放電極35および対向電極30は高電圧側レール59および接地側レール58にそれぞれ接触するパンタグラフ37,32を有している。このパンタグラフ37,32は回転体40の半径方向に沿って移動自在であり、また半径方向外方に向けて付勢されている。また、パンタグラフ32,37は、レール58,59に接触していない場合、各レール58,59の配置位置よりも回転体40の半径方向外方の円弧上を移動するようになっている。したがって、処理槽20および放電極35が接地側レール58および高電圧側レール59の内方を移動する場合、各パンタグラフ32,37は各レール58,59に接触する。このとき、各パンタグラフ32,37は半径方向外方、すなわち各レール58,59に向けて付勢されているので、各電極30,35と各レール58,59とはパンタグラフ32,37を介して確実に接触し導通状態に保たれる。
高電圧パルス電源57aには例えば電圧38〜80kV、周波数100〜3000Hz(またはpps)の高電圧パルスを放電極35と対向電極30との間に印加できるものが使用される。ただし、高電圧パルス電源57aの性能は殺菌対象の容器1の大きさや処理槽20の容量に応じて適宜に変更してよい。
ところで、図9に示すように、殺菌装置10は、高電圧パルス印加手段57による放電電力の負荷状況を監視する放電電力監視手段60をさらに備えている。放電電力監視手段60は、印加される高電圧パルスの電圧を計測するための高電圧プローブ63と、高電圧パルスの印加にともなって発生する電流を計測するための電流プローブ62と、を有している。本実施の形態において、高電圧プローブ63は接続線63a,63aを介して高電圧側レール59と接地側レール58とに接続されるとともに、信号線63bを介してデジタルオシロモジュールコントローラ61に接続されている。また、本実施の形態において、電流プローブ62は各処理槽20毎に設けられ、各処理槽20の対向電極30に接続されるとともに、信号線62aを介して、例えばデジタルオシロモジュールコントローラ61に接続されている。このような構成により、デジタルオシロモジュールコントローラ61を介して放電電圧および放電電流を監視することができるようになっている。また、本実施の形態によれば、放電電力の負荷状況に異常があればデジタルオシロモジュールコントローラ61から異常信号が発信されるようになっている。
さらに、図9に示すように、殺菌装置10は放電光の発生状況を監視する放電光監視手段65をさらに備えている。放電光監視手段65は、大気圧プラズマにより生ずる放電光を検出し放電光の強さを電気信号に変換する放電光検出部67と、放電光検出部67から電気信号を受けて放電光の強さが所定の基準値以上であるかを判定する判定部66と、を有している。放電光検出部67はフォトダイオード、発光スペクトルモニター、あるいはCCDカメラ等から構成することができ、光を検出して光の強さを電気信号に変換することができる限りにおいて特に限定されない。本実施の形態において、放電光の発生状況に異常があれば判定部66から異常信号が発信されるようになっている。判定部66は電気信号が所定の基準値以上か否かを判定することができる限りにおいて、特に限定されず、本実施の形態においては、判定部66をアナログコンパレータから構成している。
また、これらの監視手段60,65において異常が発見され異常信号が発せられた場合、対象となる容器1は受け渡しホイール16を介して不良品排出口19から排出されるようになっている(図2)。
さらにまた、殺菌装置10は、容器1が排出された処理槽20に温風エアーを導入して処理槽20を乾燥させる乾燥手段56をさらに備えている。図10に示すように、乾燥手段56は支持部材47により上方に移動させられた処理槽蓋体22と、回転体40上に載置された処理槽本体21との間となる位置(高さレベル)に設けられている。この乾燥手段56は上下方向に向けて、すなわち処理槽蓋体22と処理槽本体21とに向けて温風エアーを噴出する吐出孔56aを処理槽20の移動方向に沿って多数有している。吐出孔56aから吐出される温風エアーの温度、吐出量は、処理槽蓋体22および処理槽本体22が通過中に完全に乾燥されるように適宜設定することができる。
次にこのような構成からなる殺菌装置10により容器1を殺菌する方法について説明する。
まず、容器1の殺菌処理に先立って、上述した殺菌装置10自体を殺菌剤(本実施の形態においては過酸化水素ミスト)により殺菌する。この場合、まず、処理槽用殺菌剤供給手段50aおよび殺菌剤供給手段50により、処理槽20内およびチャンバー12内に30℃から50℃前後の温風を吹き込んで処理槽20内およびチャンバー12内を昇温する。次に、殺菌剤を処理槽20内およびチャンバー12内に吹き込む。その後、常温の空気を処理槽20内およびチャンバー12内に吹き込んで処理槽20内およびチャンバー12内を冷却するとともに、残留する過酸化水素成分を処理槽20内およびチャンバー12内から排出する。このような3つの各工程が30分程度行われ、処理槽20内およびチャンバー12内が殺菌される。なお、このような殺菌装置10自体の殺菌処理は、回転体40が回転し、搬入手段15aおよび搬出手段15bが駆動された状態で行われる。これにより、回転体40の隅々まで殺菌処理することができるとともに、搬入手段15aおよび搬出手段15bも殺菌処理することができる。また、上述したようにチャンバー12には排気口12aが設けられているので、温風、過酸化水素ミスト、および空気が順次供給されている間、排気口12aからチャンバー12内の気体が排出されチャンバー12内の圧力が一定に保たれるとともに、効率的にチャンバー12内雰囲気が置換されていくようになっている。
このようなチャンバー12内の殺菌処理が終了した後、チャンバー12内を含む搬入路14aよりも下流工程側は陽圧に保たれ、チャンバー12内から搬入路14aに向けた気流がつくられる。したがって、このようなチャンバー12内の殺菌処理が終了した後に、搬入路14aから菌が持ち込まれることが防止される。
次に、容器1の殺菌処理が行われる。
まず、図3を用いて殺菌方法の概略を説明する。
上述したように搬入手段15aにより搬入路14aを通過してチャンバー12内に容器1が順次持ち込まれる。持ち込まれた容器1は受け渡しホイール16を介して回転体40上の処理槽20内に順次配置されていく。図3に示すように、その後、回転体40の回転にともなって処理槽20が移動し、各容器1および各処理槽20に対する殺菌処理が行われる。殺菌処理された容器1は受け渡しホイール16を介して搬出手段15bに受け渡され、搬出手段15bにより搬出路14bを通過して、次工程である充填工程(図1)へと搬送される。このような殺菌方法によれば、多数の容器1を順次連続して効率的に殺菌処理することができる。
次に、回転体40の回転にともなって処理槽20および容器1になされる処理工程を順に詳述していく。
まず、図4および図5に示すように、受け渡しホイール16を介して処理槽本体21の上方に搬送されてきた容器1が処理槽本体21の支持手段26上に配置される。その後、電極挿入領域A1(図3)において、支持部材47が降下して放電極35が容器1の開口部1aを介して容器1内に挿入される。このとき、放電極35の降下にともない、同様に支持部材47に支持された処理槽蓋体22と、ガス導入手段70の内部導入管74および外部導入管76とが降下する。図5に示すように、処理槽蓋体22は互いのフランジ21a,22aが対面するように処理槽本体21上に載置され、また、処理槽本体21側の外周対向電極30aと処理槽蓋体22側の外周対向電極30aとが接点アーム27,28を介して導通する。また、同様に図5に示すように、ガス導入手段70の内部導入管74は容器1の開口部1aを介して容器1内に連通し、外部導入管76は処理槽20内の容器1の外部に連通する。
次に、図5に示す状態で蒸気導入領域A2(図3)に移動する。ここでは、導入手段70により生成された蒸気混合ガスが、内部導入管74と外部導入管76とを介して処理槽20内の容器1の内部と外部とへ導入される。
このとき、図8に示すように、ガス供給手段78が一定期間連続してガスをヒーター81に供給するとともに、液体供給手段80がガスの供給期間内における所定期間連続して液体を液滴の状態でヒーター81に供給することにより、蒸気混合ガスが生成される。このような方法で蒸気混合ガスを生成する場合、ヒーター温度、供給ガス流速、供給液体流速等を監視することにより、液体が蒸発しきれずに液滴の状態で容器1に向けて噴射されることを防止することができ、また、所望の量の液体を確実に蒸気化した状態で処理槽20内へ導入することができる。
このようにして生成された蒸気が処理槽20内に導入されると、容器1の内外面および処理槽20内面に蒸気が結露して、容器1の内外面および処理槽20の内面に微細な液滴が均一に付着する。また、蒸気は蒸気混合ガスとして処理槽20内に導入されているので、液体の付着にともなって同時に処理槽20内の容器1の内部および外部における雰囲気が殺菌処理に適した所定のガスで置換される。すなわち、高いレベルでの殺菌処理を非常に効率的に行うことができ、また、容器1への液体の付着と処理槽20内の雰囲気置換とを別々に行う場合に比べて、殺菌工程を大幅に短縮することができる。
このとき処理槽20内に導入される液体の適正な供給量は上述した通りであり、処理槽20内面および容器1の内外面には曇りが生じる程度に液体が付着する。一方、内部導入管74および外部導入管76から導入されるガス流量は適宜に定められてよいが、例えば容器1が容量240mLの樹脂製ボトルの場合には、内部導入管74および外部導入管76ともそれぞれ0.1L/min.〜1000L/min.の範囲、より好ましくは10L/min.〜400L/min.の範囲にし、ガスの供給時間は内部導入管74および外部導入管76のいずれにおいても、0.05秒〜60秒の範囲であることが好ましく、また0.1秒〜10秒の範囲に設定することがさらに好ましい。
また、このときのヒーター81の温度は100℃より高いことが好ましく、また130℃以上であることがさらに好ましい。このようにヒーター81の温度を高く設定することにより、液体がより蒸発しやすくなるとともに、いったん蒸気化した液体が再凝縮することをより確実に防止することができるからでる。また、これにともない上述したテープヒーター77の温度を80℃に以上に設定しておくことが好ましく、100℃より高く設定しておくことがさらに好ましい。これにより、ヒーター81以降の管72内で蒸気が再凝縮することを防止することができる。
ところで、このとき、雰囲気置換前に処理槽20内の容器1の内部に滞留していた気体は容器1の開口部1aおよび処理槽開口部20aを介して処理槽20外に排気され、処理槽20内の容器1の外部に滞留していた気体は処理槽開口部20aを介して処理槽20外に排気される。
なお、図8におけるガス供給手段78および液体供給手段80の一つのON状態は一つの処理槽20に対応するものである。この例では、蒸気導入領域A2(図3)を一つの処理槽20のみが通過する、あるいは多数通過する処理槽20に一つずつ蒸気混合ガスを供給するようになっているが、これに限られず、供給量を適宜変更して複数の処理槽20へ同時に蒸気混合ガスを導入するようにしてもよい。
次に、容器1を収容した処理槽20および容器1内に挿入された放電極35は、放電領域A3(図3)に移動する。放電領域A3に入ると、処理槽20および放電極35の移動経路の半径方向外方に、移動経路に沿って高電圧パルス印加手段57の高電圧側レール59と接地側レール58とが設けられている。各放電極35はパンタグラフ37を介して高電圧パルスを印加された高電圧側レール59に順次接触していき、各対向電極30はパンタグラフ32を介して接地された接地側レール58に順次接触していく。これにより、放電極35と対向電極30との間に常温常圧下で高電圧パルスが印加され、放電極35と対向電極30との間に放電が生じ、容器1の内外に存在するガスが電離されて大気圧プラズマが発生する。
また、処理槽20が放電領域A3(図3)を移動する間、すなわち放電極35と対向電極30との間に高電圧パルスが印加されている間、導入手段70からは所定のガスが導入され続ける。このガスは、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる一種類または2種類以上のガスであることが好ましいが、蒸気導入領域A2(図3)で導入されたガスと同一である必要はない。また、ガス流量は蒸気導入領域A3(図3)でのガス流量よりも減少させることが望ましい。蒸気導入領域A3(図3)では雰囲気置換をなるべく短時間で完了するためにガス流量が多くなるように設定されるが、高電圧パルスの印加中にもそのような大流量でガスを供給すれば放電が必要以上に活発化されて容器1の内外面に均一に殺菌効果を生じさせることが困難となるからである。高電圧パルスの印加中のガス流量は放電極35と対向電極30との間の特定箇所に偏ってプラズマが生じることなく、放電極35の全周でプラズマが均一に維持される程度の流量に設定することが望ましい。例えば、容量240mLの樹脂製ボトルの場合、高電圧パルスを印加している間のガス流量は、内部導入管74および外部導入管76とも0.1L/min.〜10L/min.の範囲に設定するとよい。高電圧パルスの印加時間が十分に短い場合には、印加中においてガスの流量を0、すなわちガスの導入を停止してもよい。
これらのことから、処理槽20内面と容器1の内外面とが同時に殺菌される。また、容器1の内外面および処理槽20の内面には殺菌に適した液体の液滴が付着されているとともに、処理槽20内には殺菌に適したガスが充満されている。これにより、絶縁破壊抵抗が低下し、また多くの活性酸素種が生じるので、処理槽20の内面とともに容器1の内外面を同時に高いレベルで殺菌することができる。特に、処理槽20内へ蒸気を導入することにより容器1へ液体を付着させているので、付着した液体は微細かつ均一な液滴となる。これにより、プラズマの発生が均一となりかつ安定するので、殺菌効果のばらつきを解消して殺菌処理の信頼性を高めることができるとともに殺菌効果を格段に向上させることができる。さらに、容器1の殺菌にともなって処理槽20内面も高いレベルで殺菌処理されることから、2次汚染の発生を防止することができる。
なお、高電圧パルス電源57aから印加する高電圧パルスの範囲は上記の通りである。高電圧パルスの印加を継続する時間は容器1の容量にもよるが、0.1秒〜60秒、より好ましくは1秒〜10秒範囲である。
また、このような高電圧パルスが印加されている間、放電電力監視手段60の高電圧プローブ63と電流プローブ62とを介して、印加される高電圧パルスの電圧と発生する電流とを確認することにより放電電力の負荷状況が監視される。さらに、放電光監視手段65によって、大気圧プラズマで生ずる放電光の強さを確認することにより放電光の発生状況が監視される。
このようにして、容器1が殺菌処理された後、処理槽20等は電極取外領域A4(図3)へと移動する。ここでは、支持部材47が上方に移動して処理槽蓋体22とともに放電極35、内部導入管74、および外部導入管76が上方に移動される。そして、異常なく殺菌された容器1は上述したように受け渡しホイール16を介して搬出手段15bに移載されるとともに、搬出路14bを通って殺菌装置10のチャンバー12から排出され、次工程である充填工程(図1)に持ち込まれる。
一方、放電電力監視手段60または放電光監視手段65によって異常が発見された場合には、異常信号を発するとともに対象となる容器1は、受け渡しホイール16を介して搬出手段15bに移載されることなく不良品排出口19から排出されるようになっている(図2)。このようにして、容器1の殺菌処理状態を1つずつ監視して殺菌不十分の容器1を排除することにより、容器1の殺菌状態を一定基準以上に維持することができるとともに、殺菌処理の信頼性をさらに向上させることができる。
ところで、容器1を取り出された処理槽20は乾燥領域A5(図3)へと移動する。図10に示すように、乾燥領域では乾燥手段56により温風が処理槽本体21と、処理槽蓋体22および放電極35とに向けて噴出される。これにより、蒸気導入工程で液体が付着した処理槽20が順次確実に乾燥されていく。乾燥された処理槽20内には、殺菌装置10に搬入されてきた未殺菌の容器1が再度配置され、上述した殺菌工程が繰り返されていく。この場合、殺菌されるべき容器1を再度配置される前に、乾燥手段56によって処理槽20は乾燥されているので、常に一定の条件で容器1の殺菌処理が行われる。これにより、殺菌効果のばらつきを防止し、殺菌処理の信頼性をさらに高めることができる。
以上のように本実施の形態によれば、導入手段70により蒸気が処理槽20内の容器1の内部および外部に導入し、容器1の内外面に液体を付着させることができる。そして、容器1の内外面および処理槽20の内面に液体が付着した状態で放電極35と対向電極30との間に高電圧パルスが印加され、処理槽20内の容器1の内外に存在する気体がプラズマ化するので、多くの活性酸素種が生じ、処理槽の内面とともに容器の内面および外面を同時に高いレベルで殺菌することができる。特に、処理槽内へ蒸気を導入することにより容器へ液体を付着させているので、付着した液体は微細かつ均一な液滴となる。これにより、プラズマの発生が均一となりかつ安定するので、殺菌効果のばらつきを解消して殺菌処理の信頼性を高めることができるとともに殺菌効果を格段に向上させることができる。さらに、容器1の内面および外面の殺菌にともなって処理槽20の内面も高いレベルで殺菌処理されることから、容器1を収容する処理槽20の汚れを原因とする2次汚染を防止することができる。
また、本実施の形態によれば、導入手段70は蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の内部および外部に導入するので、容器1に所定の液体を付着させると同時に処理槽20内の雰囲気を所定のガスで置換することができる。このような方法によれば、処理槽20内を殺菌に適した雰囲気に置換するので、殺菌効果をさらに向上させることができる。特に、蒸気混合ガスを導入することにより容器1への液体の付着と処理槽20内の雰囲気置換を同時に行っているので、上述した高いレベルでの殺菌処理を非常に的確かつ効率的に行うことができる。また、容器1への液体の付着と処理槽20内の雰囲気置換とを別々に行う場合に比べ、殺菌工程を大幅に簡略化することができる。
さらに、本実施の形態によれば、導入手段70は一定期間連続して所定のガスをヒーターに供給するともに、ガスの供給期間内における所定期間連続して所定の液体を液滴の状態でヒーターへ供給することができ、これにより、蒸気混合ガスが生成されている。このような方法によれば、ヒーター温度、供給ガス流速、供給液体流速等を監視することにより、液体が蒸発しきれずに液滴の状態で容器1に向けて噴射されることを防止することができ、また、所望の量の液体を確実に蒸気化した状態で処理槽20内へ導入することができる。これらにより、常に一定量の液体を容器1に均一に付着させることができるので、殺菌効果が常に一定となり殺菌処理の信頼性をさらに高めることができる。
さらにまた、本実施の形態によれば、放電極35の移動経路に沿って設けられた高電圧側レール59と放電極35とがパンタグラフ37を介して接触して導通し、処理槽20の移動経路に沿って設けられ接地された接地側レール58と処理槽20の対向電極30がパンタグラフ32を介して接触して導通するようになっている。これにより、放電極35と対向電極30との間に高電圧パルスが印加されるようになっている。これにより、放電極35および処理槽20の移動にともなって自動的に各電極と各レールが導通状態および非導通状態となるので、特段の制御装置を必要とせず高電圧パルスの印加を簡易、確実そして安全に制御することができる。また、高電圧側レール59および接地側レール58を変更することにより、容易に所望の印加状態を得ることができる。また、多数の容器1を順次効率的に殺菌処理していくことができる。
また、本実施の形態によれば、各電極30,35と各レール58,59がパンタグラフ32,37を介して接触することから、電極30,35とレール58,59との間の導通をより確実にとることができ、これにより、容器1の殺菌処理をより確実に行うことができる。また、多数の容器1を順次効率的に殺菌処理していくことができる。
さらに、本実施の形態によれば、放電電力監視手段60により放電電力の負荷状況を監視することができ、放電光監視手段65により放電光の発生状況を監視することができる。これにより、簡単な構成により容器1の放電状態を1つずつ確認することができ、殺菌不十分の容器1を排除することにより容器1の殺菌状態を一定基準以上に維持することができる。よって、殺菌処理の信頼性をさらに向上させることができる。
さらにまた、本実施の形態によれば、乾燥手段56が設けられていることから、殺菌済みの容器1を排出された処理槽20に温風エアーを導入することができ、これにより、処理槽は殺菌されるべき容器1を再度収納する前に乾燥されるようになっている。このような方法によれば、殺菌されるべき容器1を配置する前に処理槽20が乾燥しているので、常に一定の条件で容器1の殺菌処理を行うことができる。これにより、殺菌効果のばらつきを防止し、殺菌処理の信頼性をさらに高めることができる。
またさらに、本実施の形態によれば、殺菌剤供給手段50および処理槽用殺菌剤供給手段50aが設けられており、容器1の殺菌処理に先立ち、処理槽20および放電極35を含む殺菌装置10を過酸化水素ミスト(殺菌剤)により殺菌処理(無菌化)することができるようになっている。このように容器1の殺菌処理に先立ち殺菌装置を殺菌処理することにより、上述した処理槽20内面の殺菌効果とあいまって、処理装置の汚れを原因とする2次汚染を完全に防止することができる。
なお、上述した実施の形態において、蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の内部および外部に同時に導入して、処理槽20内の容器1の内部および外部の雰囲気を所定のガスで置換するとともに、処理槽20内面と、容器1の内面および外面とに液体を付着させる例を示したが、これに限られない。
上述したように、蒸気混合ガスは液体とガスとを加熱して生成されているため、生成された蒸気混合ガスは高温となっている。このため、処理槽20の形状および大きさ、または容器1の形状および大きさによっては、容器1が内部から加熱されて高温となり容器1の外部に結露して一度付着した液滴が再度蒸発する虞がある。この場合、蒸気の導入方法を以下のように変形してもよい。
まず、第1の変形例として、図11に示すように、導入手段70aが、処理槽20内まで延在する管72と、管72を加熱するヒーター81と、管72に所定のガスを供給するガス供給手段78と、管72に所定の液体を液滴の状態で供給する液体供給手段80と、管72に空気を供給する空気供給手段82と、を有し、処理槽20内に所定の液体を蒸発させてなる蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガス、および空気を導入することができるようにしてもよい。なお、図11において、上述した実施の形態と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
図11に示すように、この導入手段70aにおいては、空気供給手段82が外部導入管76に連通しており、処理槽20内の容器1の外部に空気を導入することができるようになっている。また、バルブV4,V5により蒸気混合ガスを処理槽2内の容器1の内部のみ、あるいは容器1の外部のみに供給することもできるようになっている。なお、図11においては処理槽用殺菌剤供給手段50aを省略しているが、図2に示すように、処理槽用殺菌剤供給手段50aを設けてもよいし、殺菌剤供給手段50とバルブを介して連通させるようにしてもよい。
このような導入手段70aを用いれば、蒸気を導入する工程を、蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の内部に導入する工程と、次に、空気を処理槽20内の容器1の外部に導入する工程と、その後、蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の外部に導入する工程と、から構成することができる。このような方法によれば、蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の内部に導入した後、空気を処理槽20内の容器1の外部に導入にし、容器1の内面に付着した液滴に影響を及ぼすことなく容器1の表面温度を下げることができ、これにより、その後に容器1の外面に付着した液体の蒸発が防止され、容器1の内面および外面による液体付着量のばらつきを防止することができる。このため、容器1の内外面による殺菌効果のばらつきを防止し、容器1をさらに均一に殺菌することができる。
また、図11において2点鎖線で示す冷却装置85を導入手段70aに設け、この冷却装置85を介して冷却した空気を処理槽20内の容器1の外部に導入するようにしてもよい。このようにすると、容器1の冷却を効率的に行うことができ、上述した効果をより顕著に得ることができる。なお、冷却装置85による冷却方法としては空気を断熱膨張させて冷却させる方法等を用いることができ、空気を10℃以下まで冷却させることが好ましい。
また、このような方法においても、上述したように蒸気混合ガスは、一定期間連続して所定のガスをヒーター81へ混合部72aを経由して供給するともに、ガスの供給期間内における所定期間連続して液体を液滴の状態でヒーター81へ混合部72aを経由して供給することにより、生成することができる。
次に、第2の変形例として、図12に示すように、導入手段70bが、処理槽20内まで延在する管72と、管72を加熱するヒーター81a,81bと、管72に所定のガスを供給するガス供給手段78と、管72に所定の液体を液滴の状態で供給する液体供給手段80と、管72に空気を供給する空気供給手段82と、を有し、処理槽20内に所定の液体を蒸発してなる蒸気と空気とを混合した蒸気混合空気、所定の液体を蒸発してなる蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガス、および所定のガスを導入することができるようにしてもよい。なお、図12において、上述した実施の形態または変形例と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
図12に示すように、この導入手段70bにおいては、第1ヒーター81aおよび第2ヒーター81bの2つのヒーターが設けられており、第1ヒーター81aは所定のガスと所定の液体とを加熱して蒸気混合ガスを生成し、第2ヒーター81bは空気と所定の液体とを加熱して蒸気混合空気を生成することができるようになっている。また、液体供給手段78はバルブV1a,V1bを操作することにより、混合部72aを経由して第1ヒーター81aのみに、あるいは混合部72bを経由して第2ヒーター81bのみに液体を供給することができるようになっている。生成された蒸気混合ガスは外部導入管76を経て処理槽20内の容器1の外部に導入され、蒸気混合空気は内部導入管74を経て処理槽20内の容器1に内部に導入されるようになっている。なお、ヒーター81a,81bを1つにするとともにヒーターにより加熱される管72にバルブを設け、バルブを操作することにより蒸気混合ガスと蒸気混合空気とを生成しわけるようにしてもよい。また。この導入手段70bにおいては、バルブV6,V7により常温の所定のガスを処理槽20内の容器1の内部のみ、あるいは外部のみに供給することができるようになっている。なお、第1の変形例と同様に、図12においては処理槽用殺菌剤供給手段50aを省略しているが、図2に示すように、処理槽用殺菌剤供給手段50aを設けてもよいし、殺菌剤供給手段50とバルブを介して連通させるようにしてもよい。
このような導入手段70bを用いれば、蒸気を導入する工程を、蒸気と空気とを混合した蒸気混合空気を処理槽20内の容器1の内部に導入する工程と、次に、所定のガスを処理槽20内の容器1の内部に導入する工程と、その後、蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを処理槽20内の容器1の外部に導入する工程と、から構成することができる。このような方法によれば、蒸気混合空気を処理槽20内の容器1の内部に導入した後、常温の所定のガスで処理槽20内の容器1の内部の雰囲気を置換するとともに容器1内部を確実に冷却することができる。これにより、その後に容器1の外面に付着する液体の蒸発が防止され、容器1の内面および外面による液体付着量のばらつきを防止することができる。このため、容器1の内外面による殺菌効果のばらつきを防止し、容器1をさらに均一に殺菌することができる。
また、上述した変形例1と同様に、冷却装置85(図12における2点鎖線)を導入手段70bに設け、この冷却装置85を介して冷却したガスを処理槽20内の容器1の外部に導入するようにしてもよい。このようにすると、容器1の冷却を効率的に行うことができ、上述した効果をより顕著に得ることができる。なお、冷却装置85による冷却方法としては空気を断熱膨張させて冷却させる方法等を用いることができ、空気を10℃以下まで冷却させることが好ましい。
また、このような方法においても、上述したように蒸気混合ガスおよび蒸気混合空気は、一定期間連続して所定のガスまたは空気をヒーター81a,81bへ混合部72aを経由して供給するともに、ガスまたは空気の供給期間内における所定期間連続して液体を液滴の状態でヒーター81a,81bへ混合部72aを経由して供給することにより、生成することができる。
またさらに、図13に示したように容器1の内部に蒸気等を導入する内部導入管74aの内側に放電極35を同軸に配置することにより、放電極35の周囲から容器1の内部に蒸気等を放出するようにしてもよい。このような構成によれば、容器1の内部に放電極35および内部導入管74aを容易に挿入でき、容器1の開口部1aが狭い場合に特に有利である。また、放電極35および内部導入管74aをいずれも容器1の中心線上に配置できるので、放電極35と外周対向電極30aとの距離を容器1の全周において等しく維持しつつ、容器1の内部において中心線上から周囲に均等に蒸気等を拡散させて容器1の内部における蒸気等の分布の偏りを防ぐことができる。なお、図13において、上述した実施の形態または変形例と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
また、本実施の形態においては、処理槽20の移動にともなって、放電極35と高電圧側レール59とがパンタグラフ37を介して接触して導通し、対向電極30と接地側レール58とがパンタグラフ32を介して接触して導通することにより、放電極35と対向電極30との間に高電圧パルスを印加して処理槽20内の容器の内部および外部に大気圧プラズマを生じさせ、処理槽20内面とともに容器1の内面と外面とを同時に殺菌する例を示したが、これに限られない。放電極35と接地側レール58とがパンタグラフ37を介して接触して導通し、対向電極30と高電圧側レール59とがパンタグラフ32を介して接触して導通することにより、放電極35と対向電極30との間に高電圧パルスを印加するようにしてもよい。さらには、放電領域A3(図3)の前半部分を通過する際に、放電極35と高電圧側レール59とがパンタグラフ37を介して接触して導通し、対向電極30と接地側レール58とがパンタグラフ32を介して接触して導通し、その後、放電領域A3の後半部分を通過する際に、放電極35と接地側レール58とがパンタグラフ37を介して接触して導通し、対向電極30と高電圧側レール59とがパンタグラフ32を介して接触して導通することにより、極性を途中で変更しながら放電極35と対向電極30との間に高電圧パルスを印加するようにしてもよい。このような高電圧パルスの印加方法は、例えば、高電圧側レール59と接地側レール58とを処理槽20の移動方向に沿って分割するとともに、移動方向に沿った前半部分と後半部分とで高電圧側レール59と接地側レール58との高さ方向の配置位置を相互に入れ替えることにより容易に実施することができる。このように放電極35および対向電極30の極性を変えながら高電圧パルスを印加することにより、容器1の内外面および処理槽20の内面を全面にわたってより均一に殺菌処理することができる。なお、放電極35および対向電極30の極性の変更は当然に1回に限られるものではなく、容器1の形状の複雑さや、求められる殺菌レベル等を考慮して、放電極35および対向電極30の極性を2回または3回以上変更するようにしもよい。
さらに、殺菌されるべき容器の形状や要求される殺菌レベルに応じて、図14乃至図17に示すような処理槽100を用いることもできる。なお、図14乃至図17において、上述した実施の形態または変形例と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
この処理槽100は、容器1を下方から支持するステージ110と、そのステージ110上に載置される円筒形の筒状体111と、蓋としての蓋112とを備えている。ステージ110、筒状体111及び蓋112はいずれも誘電体製である。この場合、筒状体111またはステージ110のどちらかまたは両方が透光性を有することが好ましい。外周対向電極30aは筒状体111の外周に、底面対向電極30bはステージ10の下面にそれぞれ密着して配置されることにより処理槽100の一部を構成している。
ステージ110及び蓋112は筒状体111の下端及び上端の開口部111a、111bをそれぞれ確実に覆うように筒状体111よりも大きく形成されている。ステージ110は上述した回転体40の下方テーブル41上に配置されてもよい。ステージ110と筒状体111とは一体化されてもよいし、分離可能であってもよい。蓋112は筒状体111に対して開閉可能に取り付けられてもよいし、筒状体111から分離され、上述した支持部材47のような適当な駆動手段により筒状体111に対して開閉駆動されてもよい。なお、蓋112は開口部111bを完全に閉じる必要はなく、収容スペースSからの蒸気等の拡散を妨げるように開口部111bを狭められるものであればよい。図14では、蓋112に放電極35および導入手段70の内部導入管74および外部導入管76を通すための抜き孔112a、112bが設けられている。これらの抜き孔112a、112bは多少大きめに形成されることにより、置換されるガス等を処理槽100外へ排出するためのガス抜き孔として機能する。抜き孔112a、112bとは別にガス抜き用の孔を設けてもよい。
また、このような処理槽100においては、外周対向電極30aは筒状体111の外周をその全周に亘って取り囲む円筒形状に形成されている。外周対向電極30bの上端は収容スペースSに配置された容器1よりも高く、かつ筒状体111の上端よりは低い位置にある。外周対向電極30aの下端はステージ110の上面と同一の高さに位置している。但し、外周対向電極30aの下端は容器1の底面3よりも幾らか高い位置にあってもよい。
また、図15(a)に示したように、底面対向電極30bはその外周30cが外周対向電極5よりも外側に位置するか、または図15(b)に示すようにその外周30cが外周対向電極30aと一致するように設けることが望ましい。図15(c)に示すように底面対向電極30bの外周30cが外周対向電極30aよりも内側に位置していると、放電極35と底面対向電極30bの外周30cとの間に放電が集中し、放電極35と外周対向電極30aとの間に十分な放電が生じないおそれがある。ステージ110が透光性を有する場合には底面対向電極30bにも透光性を与えて処理槽100内部の放電現象を処理槽100の底側から観察可能としてもよい。
また、このような処理槽100を図14に示す状態から上下反転させ、図16に示すようにして用い、容器1の処理槽100への出し入れを下側から行うようにしてもよい。さらに、図17は、外周対向電極30aおよび底面対向電極30bを保護するため、処理槽100の筒状体111の外側及びステージ110の下面側に、外周対向電極30aおよび底面対向電極30bを覆う保護層125、126を設けた例である。これらの保護層125、126は、筒状体111およびステージ110と同じく誘電体にて構成することが望ましい。また、処理槽100の内部における放電現象を観察可能とするため、これらの保護層125、126にも透光性を付与することが望ましい。なお、保護層125、126のうちいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
また、支持手段26についても、図18乃至図21に示すように変形してもよい。なお、図18乃至図21に示す支持手段の変形例は、図14乃至図17を用いて説明した処理槽100について説明しているが、当然に上述した分離相似型の処理槽20に適用してもよい。また、図18乃至図21において、上述した実施の形態または変形例と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
図18および図19に示す形態では、ステージ110の上面110aに容器1よりも半径方向に大きい凹部110bを形成し、その凹部110b内に容器1の底面3を支える複数のリブ110cを半径方向に間隔を空けて設けることによりリブ110cを支持手段として機能させている。この場合には図18に示したように処理槽100の内底面を構成する凹部110bの底面と容器1の底面3との間に隙間119が形成される。そして、凹部110bの外周からその隙間119に矢印Gで示すごとくガス等が導入される。
図20に示す形態では、容器1よりも大径の網120の裏面側に脚部121を設けて支持手段を構成している。この場合には、ステージ110の上面110aに脚部121を載せ、網120に容器1の底面3を載せることにより、容器1の底面3と処理槽100の内底面110aとの間に隙間119が生じる。そして、矢印Gで示すように網120を通過して隙間119にガス等が導入される。脚部121は半径方向に間隔を空けて設けられてもよいし、リング状でもよい。
図21に示す形態では、処理槽100を上下に反転させ、容器1の首部1bを把持可能な爪部材122と、その爪部材122を蓋112の内面112c上に支持する脚部123とによって支持手段を構成している。この場合には、処理槽100の内底面を構成する蓋112の内面112cと容器1との隙間119に、爪部材122または脚部123の隙間から矢印Gで示したように蒸気等を導入することにより、開口部1aを取り囲む天面を蒸気等と接触させることができる。
なお、容器1の底面3に例えばペタロイドのような凹凸が付されることにより、容器1の底面3と処理槽100の内底面との間に十分な隙間が生じる場合にはスペーサ等の支持手段を省略してもよい。
また、放電極35についても、例えば図22および図23に示すように、殺菌対象となる容器の形状等に応じて様々な変形が可能である。また、図22および図23において、上述した実施の形態または変形例と同一部分には同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
放電極35の容器1内への挿入範囲を、容器1の内周面に沿った形状に形成してもよい。例えば図22に示すように容器1の内周面が開口部1aに向かって漸次拡大するテーパ面状に形成されている場合、放電極35の外周を容器1の内周面に倣って漸次拡大させてもよい。
また、放電極は棒状又は軸状に形成されたものに限らない。例えば図23に示すように容器1がその深さに比して開口部1aの直径が十分に大きい丼又はボウル型の場合には、放電極35をリング状に形成してこれを容器1に水平に挿入することも可能である。
その他にも、本発明は適宜の形態で実施できる。容器1はPETボトル等の樹脂製容器1に限らず、導電性材料にて構成されていない限りは本発明の殺菌対象に含めることができる。本発明において殺菌効果を高めるためには容器1の内外面に対するガスの導入とともに、容器1の内外面に水分を付着させることが望ましい。但し、要求される殺菌効果のレベルが低い場合には水分の付着を省略しても十分な殺菌効果が得られることがある。処理槽20は分離相似型や円筒型に限らず、断面多角形状であってもよい。放電極35、内部導入管74、および外部導入管76を複数設けてもよい。
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図24乃至図33Bは本発明による殺菌方法および殺菌装置の第2の実施の形態を説明する図である。このうち図24は殺菌方法および殺菌装置を示す上面図であり、図25は殺菌装置内における各処理内容を説明する図であり、図26は容器の外面に液体を付着させる方法および付着手段の概略構成を示す図であり、図27は容器の内部に蒸気を導入する方法および導入手段の概略構成を示す図であり、図28は容器の内部への蒸気の導入方法を説明する図であり、図29は殺菌装置を示す部分断面図であり、図30および図31は殺菌装置の動作方法を説明する図であり、図32は高電圧パルス印加手段の概略構成を示す図であり、図33Aおよび図33Bは処理槽の動作方法を説明する図である。
なお、図24乃至図33Bに示された第2の実施の形態において、上述した第1の実施の形態およびその変形例と同一部分には、図24乃至図33B中に同一符号を付し、重複する説明は省略する。
図24乃至図33Bに示すように、本実施の形態において殺菌対象となる容器は、第1の実施の形態と同一である。
まず、本実施の形態における殺菌装置210について説明する。
図24乃至図32に示すように、殺菌装置210は、チャンバー12と、チャンバー12内に設けられた処理チャンバー(処理室)217と、処理チャンバー217外に配置され、回転軸L2を中心として回転自在な第1の回転体244と、第1回転体244によって搬送される殺菌対象の容器1の外面に所定の液体を付着させる付着手段286と、第1回転体244によって搬送される殺菌対象の容器1の内部に所定の液体を蒸発させてなる蒸気を導入する導入手段270と、処理チャンバー217内に配置され、回転軸L1を中心として回転自在な第2回転体240と、処理チャンバー217内に配置され、第2回転体240に支持された仕切部材218と、処理チャンバー217内に配置され、第2回転体240に支持された複数の処理槽220であり、少なくとも一部分が対向電極30で覆われ殺菌対象の容器1が内部に配置される処理槽220と、各処理槽220に対応して設けられ、処理槽220内に配置される容器1内に挿入される放電極35と、高電圧パルスが印加される高電圧側レール259と接地された接地側レール258とを有する高電圧パルス印加手段257と、を備えている。
図24に示すように、殺菌装置210のチャンバー12内は、後に詳述するよう、処理チャンバー217を介し、第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとに区画(区分け)されている。そして、第1の実施の形態と同様に、チャンバー12外よりもチャンバー12内を陽圧(高圧)に保つことができるようになっているとともに、本実施の形態においては、さらに、第1処理スペース205aよりも第2処理スペース205bを陽圧に保つことができるようになっている。したがって、殺菌装置210の稼働中に、チャンバー内からチャンバー外に向けた気流をつくりだすことができるとともに、チャンバー12内においては第2処理スペース205bから第1処理スペース205aに向けた気流をつくりだすことができる。また、本実施の形態において、搬入路14aおよび不良品排出口19は第1処理スペース205aに設けられ、一方、搬出路15bは第2処理スペース205bに設けられている。さらに、図24に示すように、本実施の形態において、殺菌剤供給手段50は、処理チャンバー217内を含み、チャンバー12の第1処理スペース205aおよび第2処理スペース205bに殺菌剤を供給するようになっている。
まず、主に図24および図26乃至27を用いて、第1回転体244と、第1回転体244によって搬送される容器1を処理する付着手段286および導入手段270について説明する。
第1回転体244は、モーター等の駆動手段(図示せず)を介して回転軸L2を中心として回転自在となっており、また、受け渡しホイール16を介して搬送手段15aによって搬送されてきた殺菌対象の容器1を順次受けるようになっている。図24に示すように、第1回転体244は、回転軸L2を中心とした円周上に等間隔を空けて容器1を保持し、回転軸L2を中心として回転することによって保持した容器1を搬送するようになっている。
付着手段286は、第1回転体244によって搬送される容器1に向けて所定の液体を吹き付け、容器1の外面に液体を付着させるようになっている。図24および図26に示すように、このような付着手段286は、第1回転体244により搬送される容器1の移動経路の所定区間に沿って配置された複数の2流体スプレー287と、管289aを介して2流体スプレー287に連通した空気供給手段282と、管289bを介して2流体スプレー287に連通するとともに、管289cを介して空気供給手段282に連通した液体タンク288と、を有している。
空気供給手段282は、管289aを介し、所定圧力および所定流量の空気を2流体スプレー287に送り込むようになっている。
液体タンク288内には所定の液体が収容されている。液体タンク288は図示しない液体供給手段に連通している。そして、液体供給手段は液体タンク288に液体を供給して、液体タンク288内に蓄えられている液体の量が常に一定範囲内となるようにしている。管289bの液体タンク288内にある端部は、所定量に調整された液体中まで延びている。一方、管289cの液体タンク288内にある端部は、液体中まで延びていない、すなわち、液体中に浸かっていない。そして、この管289cを介し、空気供給手段282から液体タンク288内に空気が送り込まれ、これにともない、管289bを介し、液体タンク288から2流体スプレー287へ液体が送り込まれるようになっている。なお、空気供給手段282は、液体タンク288中の圧力が所定の圧力値となるように、液体タンク288へ空気を送り込むようになっており、これにより、2流体スプレー287に所定流量かつ所定圧力の液体が送り込まれる。
なお、各要素には、流量計や圧力計等の適切な計器が設けられており、これによって、上述した各圧力や各流量が一定の値にあることを確認することができるようになっている。
このような構成により、2流体スプレー287に所定流量および所定圧力の液体と空気とが送り込まれ、搬送されている容器1に液体が空気との混合物としてスプレーされる(噴射される)ようになっている。
ここで、所定の液体としては水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の内外面に曇りが生ずる程度でよく、付着する液滴は直径数μm程度の微粒子であることが好ましい。そして、例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルである場合において、容器1の外面に対して0.01g〜10gの範囲の純水を付着させることが好ましい。
なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む有機系水溶液や電解質等を含む無機系水溶液を供給するようにしてもよい。また、空気供給手段に代え、例えば、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウム等を供給するガス供給手段を用いることもできる。また、計器による監視だけでなく、容器1の外面への液体付着状態を検査する何らかの手段を設けるようにすることも好ましい。このような手段として、液体を付着させられた容器1の一方からレーザ光を照射するレーザ光照射器と、容器1の他方から照射されたレーザ光の透過量を測定する測定器と、を有する手段が用いられ得る。
次に、導入手段270について説明する。
本実施の形態において、導入手段270は、所定の液体を蒸発させてなる蒸気と所定のガスとを混合した蒸気混合ガスを、第1回転体244によって搬送される容器1の内部に導入するようになっている。図24および図27に示すように、このような導入手段270は、第1回転体244の容器1を保持する部分にそれぞれ対応して設けられた複数の導入管275と、複数の導入管275にそれぞれ対応して設けられ導入管275を開閉する複数のバルブ279と、複数の導入管275に連結されたループ状のマニホールド273と、所定の液体を収容した液槽290と、液槽290に所定のガスを供給するガス供給手段278と、液槽290とマニホールド273とを連通させる管271と、管271を加熱するヒーター281と、ヒーター以降の管271、マニホールド273、および導入管275に巻き付けられたテープヒーター(リボンヒーター)277と、を有している。
各導入管275の末端は、第1回転体244に保持される容器1の開口部1aの直上または容器1の内部まで延びている。図24に示すように、本実施の形態においては、マニホールド273が円形状からなっており、回転軸L2を中心とした円周に沿うよう、第1回転体244の回転軸L2を中心として配置されている。そして、各導入管275は、回転軸L2を中心とした放射線(半径方向線)に沿ってマニホールド273から延び出ており、回転軸L2を中心として所定角度離間して配置されている。
液槽290は図示しない液体供給手段に連通している。そして、液体供給手段は液槽290に液体を供給して、液槽290内に収容されている液体の量が常に一定範囲内となるようにしている。管271の液槽290内にある端部は液槽290内の上方にあり、液体中まで延びていない、すなわち、液体中に浸かっていない。一方、ガス供給手段278は液槽290の下方から所定のガスを液槽290内に送り込んでおり、供給されたガスは液槽290内の液体中を通過し、液槽290内の液体上方に回収されるようになっている。
また、図27に示すように、液槽290内に蓄えられた液体の温度を調整する調整装置291が設けられている。調整装置291は、液槽290の液体中に配置された加熱機構291bと、液槽290内の液体の温度を測定する熱電対291cと、加熱機構291bおよび熱電対291cに接続された調整制御部291aと、を有している。調整制御部291aは、熱電対291cによる液温の測定結果に基づいて加熱機構291bを入り切りし、液槽290内の液体の温度を一定に保つようになっている。
このような構成によって、液槽290内の液体上方には、所定湿度、所定温度、および所定圧力の蒸気混合ガスが生成されて蓄えられる。そして、バルブ279が開いている導入管275に、管271およびマニホールド273を介して蒸気混合ガスが送り込まれ、該導入管275から容器1の内部に蒸気混合ガスが導入されるようになる。
なお、各要素には、流量計や圧力計等の適切な計器が設けられており、これによって、上述した各圧力や各流量が一定の値にあることを確認することができるようになっている。
ここで、所定の液体としては、水、とりわけ不純物を含まない純水が適している。純水を用いた場合、その供給量は容器1の内外面に曇りが生ずる程度でよく、例えば容器1が容量240mL(ミリリットル)の樹脂製ボトルの場合、容器1の内部に0.01g〜10gの程度の純水が導入されることが好ましい。なお、殺菌効果を向上させることができる限りにおいて、水(純水)に代え、エタノールやアセトン等を含む水溶液を供給するようにしてもよい。また、ここでいう所定の液体は、上述した付着手段286から噴射される液体と必ずしも同一である必要はない。
また、所定のガスとしては、酸素、水素、窒素、二酸化炭素、空気、アルゴン、及びヘリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種類のガスを使用することができる。これらのガスを使用することは、高電圧パルスを印加した際の絶縁破壊電圧の低下や、生成される活性酸素種量の増加等、種々の効果を期待することができる点において好ましい。また、上記群から選ばれる2種類以上のガスを混合して供給するようにしてもよい。その他にもプラズマ生成に寄与する限りにおいて種々のガスを利用することができる。
なお、計器による監視だけでなく、容器1の外面への液体付着状態を検査する何らかの手段を設けるようにすることも好ましい。このような手段として、液体を付着させられた容器1の一方からレーザ光を照射するレーザ光照射器と、容器1の他方から照射されたレーザ光の透過量を測定する測定器と、を有する手段が用いられ得る。
ところで、これらの付着手段286および導入手段270の各構成要素、とりわけ管類が、上述した殺菌剤供給手段50に直接接続されていることが好ましい。
次に、主に図24および図29を用い、処理チャンバー217、処理チャンバー217内に配置された第2回転体240、および第2回転体240に支持された仕切部材218について詳述する。
図29および図24から理解できるように、本実施の形態において、処理チャンバー217は両端が塞がれた略円筒状の形状を有している。処理チャンバー217には、第1回転体244から受け渡しホイール16を介して容器1を受け入れるための受け入れ開口204aと、受け渡しホイール16を介して容器1を排出するための第1排出開口204bおよび第2排出開口204cと、が設けられている。なお、図24に示すように、第1排出口204bは第2処理スペース205bに開放され、第2排出口204cは第1処理スペース205aに向けて開放されている。
第2回転体240は、回転軸L1上に配置されたシャフト49を取り囲むように配置されており、モーター等の駆動手段(図示せず)を介して回転軸L1を中心として回転自在となっている。第2回転体240は、下方に設けられた下方テーブル241と、上方に設けられた上方テーブル243と、下方テーブル241と上方テーブル243とを連結する連結部245とを有している。
また、図24および図29に示されているように、本実施の形態において仕切部材218は略円盤状からなっている。図24に示すように、仕切部材218には、第2回転体240の回転軸L2を中心とした同一円周に沿って等間隔を空けて複数の開口218aが形成されている。仕切部材218は第2回転体240に支持されており、第2回転体240の下方テーブル241、上方テーブル243、および連結部245と同期して回転するようになっている。
図29に示すように、仕切部材218は処理チャンバー217の区画壁近傍まで延びており、区画壁に形成された係合突起状部217cと係合するようになっている。ただし、係合突起状部217cと仕切部材218の端縁との間には若干の隙間が形成されており、仕切部材218は処理チャンバー217(係合突起状部217c)に対してスムースに回転移動することができるようになっている。このような仕切部材218の構成によって処理チャンバー217内が第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとに区分けされるようになっている。
また、図29に示されているように、第2回転体の上方テーブル243も、処理チャンバー217の区画壁近傍まで延びており、区画壁に形成された係合突起状部217cと係合するようになっている。そして、係合突起状部217cと上方テーブル243の端縁との間には若干の隙間が形成されており、上方テーブル243を含む第2回転体240は処理チャンバー217(係合突起状部217c)に対してスムースに回転移動することができるようになっている。
次に、主に図24および図29乃至図31を用い、処理チャンバー217内に配置され、少なくとも一部分が対向電極30で覆われた処理槽220、および処理槽220に対応して設けられた放電極35について詳述する。
このうち、まず処理槽220について説明する。処理槽220は、仕切部材218の各開口218aに対応して複数設けられている。各処理槽220は仕切部材218を挟んで配置された一側処理槽形成部材(処理槽蓋体)222と、他側処理槽形成部材(処理槽本体)221と、を有している。一側処理槽形成部材222は、第2回転体240の上方テーブル243と仕切部材218との間に設けられたエアシリンダ248aにより、支持部材247aを介して連結支持されており、仕切部材218の各開口218aの上方に配置されている。他側処理槽形成部材221は、仕切部材218と第2回転体240の下方テーブル241との間に設けられたエアシリンダ248bにより、支持部材247bを介して連結支持されており、仕切部材218の各開口218aの下方に配置されている。なお、図24に示されているように、エアシリンダ248a,248bおよび支持部材247a,247bは、各処理槽220に対応し、第2回転体240に複数設けられている。したがって、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の各々は、対応するエアシリンダ248a,248bを介し、独立して上下方向に移動し、仕切部材218から離間すること、並びに、仕切部材218に接近して当接することができるようになっている。
なお、図24においては、理解を容易にするため、上方テーブル43等の一部の部材が省略されている。
図29乃至図31に示すよう、一側処理槽形成部材(処理槽蓋体)222および他側処理槽形成部材(処理槽本体)221は、仕切部材218の開口218aの周縁部に設けられた係合溝218bと係合するフランジ222a,221aをそれぞれ有している。したがって、図29および図30に示すように、一側処理槽形成部材222と仕切部材218とが当接すると、フランジ222aと係合溝218bとが係合し、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の対応する開口218aを上方から覆って塞ぐようになる。同様に、図29および図31に示すように、他側処理槽形成部材221と仕切部材218とが当接すると、フランジ221aと係合溝218bとが係合し、他側処理槽形成部材221が仕切部材218の対応する開口218aを下方から覆って塞ぐようになる。そして、図29に示すように、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の両者が仕切部材218に当接して各々が仕切部材218の開口218aを塞いた場合に、一側処理槽形成部材222と他側処理槽形成部材221とによって、より厳密には、一側処理槽形成部材222と他側処理槽形成部材221と仕切部材218によって、外部と区画された内部空間Sを有する処理槽220が形成されるようになる。また、図29乃至図31に示すよう、処理槽220の他側処理槽形成部材221には、第1の実施の形態と同様に、容器1を支持するための支持手段26が設けられている。
なお、図29乃至図31から明らかなように、一側処理槽形成部材(処理槽蓋体)222は、第1の実施の形態の処理槽蓋体22と異なり上方に処理槽開口部20a(図4)が形成されていない。
このようにして形成される処理槽220内の収納スペースSは、第1の実施の形態と同様に、容器1の形状に沿うようになされている。すなわち、図29に示すように、断面において処理槽20内面が容器1から略一定距離離間するようになされ、さらに言い換えると、処理槽20内の収納スペースSが容器1と略相似形状となるようになされている。処理槽20をこのように相似型に形成することにより、対向電極30が容器1および放電極35から大きく離間してしまうことを防止し、効率的に大気圧プラズマを発生させ殺菌効果を向上させることができる。また、処理槽220は第1の実施の形態と同様に分割可能な分割型なっており、仮に容器1が胴部の一箇所において最も太さが太くなるような形状であったとしても、その部分で一側処理槽形成部材222と他側処理槽形成部材221とを分離するように構成することにより、容器1を処理槽220内に収納可能とし、かつ処理槽220内の収納スペースSと容器1とを相似形状にすることができる。なお、処理槽220の大きさは、第1の実施の形態と同様に構成すればよい。
また、本実施の形態における処理槽220は、第1の実施の形態と同様に、収容スペースSに露出した誘電体24と、誘電体24の外方に配置され誘電体24を覆う対向電極30と、を有している。誘電体24に用いられる材料は、第1の実施の形態で説明したような材料を用いればよい。また、誘電体24の厚みについても、第1の実施の形態と同様に構成すればよい。ただし、本実施の形態においては、仕切部材218の開口218aの周縁部も処理槽220の誘電体として機能するようになっている。したがって、仕切部材218の開口周縁部も、誘電体24と同様の材料によって形成すればよい。
本実施の形態における対向電極30は、第1の実施の形態と同様に構成されている。すなわち、対向電極30は底面対向電極30bと外周対向電極30aとを有し、また、処理槽220が一側処理槽形成部材222と他側処理槽形成部材221とに分離されることにともない、外周対向電極30aは一側処理槽形成部材222側と他側処理槽形成部材221側とに設けられている。
図29に示すよう、導電性材料からなり、一側処理槽形成部材222側および他側処理槽形成部材221側の外周対向電極30aとそれぞれ導通した接点アーム222b,221bが、設けられている。また、図29に示されているよう、接点アーム222b,221bに対応して導電性材料からなる接続接点218cが仕切部材218に設けられている。接続接点218cは仕切部材218を貫通し、仕切部材218の下側の第1処理スペース205aおよび上側の第2処理スペース205bの両方に露出している。そして、一側処理槽形成部材222あるいは他側処理槽形成部材221が仕切部材218と当接した場合、各接点アーム222b,221bは接続接点218cと接触し導通するようになっている。したがって、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の両者が仕切部材218に当接すると、一側処理槽形成部材222側の外周対向電極30aと他側処理槽形成部材221側の外周対向電極30aとが、接点アーム222b,221bおよび接続接点218cを介して導通されるようになる。
その他、対向電極30の配置位置、材料、形成方法等については、第1の実施の形態と同様に構成すすることができる。
一方、本実施の形態において、放電極35は、容器1の開口部1a側を受ける一側処理槽形成部材222に支持され、処理槽220内へ延び出ている。このような放電極35は、その他において、第1の実施の形態と同様に構成することができる。
次に、主に図24、図29、および図32を用い、高電圧パルス印加手段57を含む高電圧パルスの印加に関する構成について詳述する。
図24、図29、および図32に示すように、本実施の形態における高電圧パルス印加手段257は、高電圧パルス電源57aと、高電圧パルスが印加される高電圧側レール259と、接地された接地側レール258とを有している。本実施の形態における高電圧側レール259および接地側レール258は略リング状に形成され、図29に示すように、各レール259,258のリング中心と回転軸L1とが一致するように配置されている。なお、図29において、高電圧側レール259はその一部のみが図示されている。
高電圧側レール259は第2回転体240の上方テーブル243に固定され、接地側レール258は第2回転体240の下方テーブル241に固定されており、高電圧側レール259および接地側レール258が第2回転体240とともに回転するようになっている。また、高電圧パルス電源57aと高電圧側レール259とは、導電性材料からなり摺動自在な摺動子255を介して接続されている。この摺動子255は、高電圧側レール259に対して進退自在に保持され、かつ高電圧側レール259に向けて付勢されている。このため、この摺動子255により、回転中の高電圧側レール259と高電圧パルス電源57aとを確実に導通させることができるようになっている。同様に、接地側レール258も摺動子255を介して接地されており、これにより、接地側レール258が回転している場合であっても接地側レール258を確実に導通させることができるようになっている。
また、図24および図32に示すように、本実施の形態における殺菌装置210においては、第2回転体240の移動経路に沿った所定区間を通過している隣り合う複数の処理槽220にそれぞれ対応する放電極35および対向電極30間に、高電圧パルスが印加されるようになっている。そして、図32に示すように、同時に高電圧パルスを印加される電極間数に応じた数(図32中では4つ)以上の接地側レール258が、設けられていることが好ましい。本実施の形態において、各接地側レール258は、すべて略リング状に形成されている。そして、図32に示すように、高電圧パルスを同時に印加される処理槽220の対向電極30は、別個の接地側レール258と接続されている。
一方、各放電極35は、図29および図32に示すように、高電圧開閉接点254を介し、高電圧側レール259と接続されるようになっている。高電圧開閉接点254は、図示しない制御手段に動作させられ、放電極35および該放電極35に対応する処理槽220が高電圧パルスを印加されるべき所定の区間を移動中であり、かつ、その処理槽220内に殺菌対象の容器1が配置されている場合に、高電圧開閉接点254を閉じて、放電極35と高電圧側レール259とを導通させるようになっている。
また、図32に示すように、高電圧パルス印加手段257は、高電圧パルス電源57aに接続された等価回路部251を有している。等価回路部251は、処理槽220内に容器1を配置した状態における1つの対向電極30および放電極35間の抵抗値と略同一の抵抗値を有する抵抗器252bと、抵抗器252bと直列に接続された回路開閉接点252aと、を有した等価回路252を、前記高電圧パルスを同時に印加される電極間数(図32中では4つ)と同じ数だけ、並列に接続した回路を含んでいる。このうち、回路開閉接点252aは、高電圧開閉接点254の開閉を制御する制御手段(図示せず)と接続されている。制御手段は、高電圧パルスを印加されるべき所定の区間を移動している処理槽220中に、容器1を配置されていない処理槽220があれば、その数と同数の等価回路252の回路開閉接点252aを閉じて、該等価回路252の抵抗器252bに高電圧パルスを印加させるようになっている。
なお、高電圧パルス電源57aから印加される高電圧パルスの条件等は、第1の実施の形態と同様にすることができる。
また、図32に示すように、本実施の形態における殺菌装置210は、第1の実施の形態で説明した放電電力監視手段60と放電光監視手段65とをさらに備えている。さらに、本実施の形態における殺菌装置210は、放電電力監視手段60のデジタルオシロモジュールコントローラ61と、放電光監視手段65の判定部66と、に接続された判定手段253をさらに備えている。判定手段253は、デジタルオシロモジュールコントローラ61および判定部66から信号を受け、この信号に基づき、各処理槽220内に配置されている容器1についての殺菌処理の異常の有無を判定するようになっている。そして、判定手段253は、判定結果に基づいて第2回転体240のエアシリンダ248a,248bを動作させ、容器1の処理槽220からの排出、さらには容器1の処理チャンバー217からの排出を制御するようになっている。なお、排出時における処理槽220の一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の動作については、後に詳述する。
なお、図32に示すように、本実施の形態において、放電電力監視手段60の電流プローブ62は接地側レール258毎に設けられており、これにより、放電の際に流れた電流を容器1単位で監視することができるようになっている。
次に、殺菌後の容器1を排出された後の処理槽220に対して処理を施す、言い換えると、殺菌前の容器1を受け入れる前の処理槽220に対して処理を施す各手段について説明する。
本実施の形態における殺菌装置210は、容器1が排出された処理槽220に温風エアーを導入して処理槽220を乾燥させる乾燥手段256をさらに備えている。本実施の形態における乾燥手段256は、図33Bに示すように、温風源256aと、温風源256aに連通し、一側処理槽形成部材222に向けて温風エアーを吹き付ける一側吐出ノズル256bと、温風源256aに連通し、他側処理槽形成部材221に向けて温風エアーを吹き付ける他側吐出ノズル256cと、を有している。一側吐出ノズル256bから温風エアーを吹き付けることにより、一側処理槽形成部材222の内部と、一側処理槽形成部材に支持された放電極35と、仕切部材218の開口218aの周囲と、が乾燥させられる。一方、他側吐出ノズル256cから温風エアーを吹き付けることにより、他側処理槽形成部材221の内部が乾燥させられる。また、吹き出される温風エアーの温度、吐出量は、適宜設定することができるようになっている。
なお、乾燥手段256は、図33Bに示されているよう、処理チャンバー217内において仕切部材218の他側、すなわち、第1処理スペース205aに配置されていることが好ましい。
また、本実施の形態における殺菌装置210は、容器1が配置される前の処理槽220と容器1に挿入される前の放電極35との少なくとも一方の温度を調節する温調手段294をさらに備えている。本実施の形態における温調手段294は、図33Bに示すように、所定の温度のエアーを供給するエアー源294aと、エアー源294aに連通し、一側処理槽形成部材222に向けて所定の温度のエアーを吹き付ける一側吐出ノズル294bと、エアー源294aに連通し、他側処理槽形成部材221に向けて所定の温度のエアーを吹き付ける他側吐出ノズル294cと、を有している。一側吐出ノズル294bから所定の温度のエアーを吹き付けることにより、一側処理槽形成部材222の内部と、一側処理槽形成部材に支持された放電極35と、仕切部材218の開口218aの周囲と、が所定の温度に調整される。一方、他側吐出ノズル294cから所定の温度のエアーを吹き付けることにより、他側処理槽形成部材221の内部が所定の温度に調整される。また、吹き出されるエアーの温度、吐出量は、適宜設定することができるようになっている。
なお、温調手段294は、図33Bに示されているよう、処理チャンバー217内において仕切部材218の他側、すなわち、第1処理スペース205aに配置されていることが好ましい。
また、上述した乾燥手段256および温調手段294のいずれか一方を省略し、他方の手段によって乾燥および温調の両方を行えるようにしてもよい。
さらに、本実施の形態における殺菌装置210は、容器1が配置される前の処理槽220内へ蒸気を導入する予備導入手段295をさらに備えている。予備導入手段295は、上述した導入手段270や、第1の実施の形態において説明した導入手段70,70a,70bと同様の構成をとることができる。また、図33Bに示す例において、予備導入手段295は、一側処理槽形成部材222内へ蒸気を導入するようになっているが、これに限られず、他側処理槽形成部材221内へ蒸気を導入するようにしてもよいし、あるいは、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の両方内へ蒸気を導入するようにしてもよい。さらに、予備導入手段295から導入される蒸気は、導入手段270から導入される蒸気と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、予備導入手段295は、図33Bに示されているよう、処理チャンバー217内において仕切部材218の他側、すなわち、第1処理スペース205aに配置されていることが好ましい。
次にこのような構成からなる殺菌装置210により容器1を殺菌する方法について説明する。
まず、第1の実施の形態と同様に、容器1の殺菌処理に先立ち殺菌装置210自体を、殺菌剤供給手段50を用いて殺菌処理する。このとき、殺菌剤は、処理チャンバー217内を含め、チャンバー12の第1処理スペース205aおよび第2処理スペース205bのいずれにも導入される。殺菌の方法及び条件は、第1の実施の形態と同様にすることができる。
チャンバー12内の殺菌処理が終了した後、チャンバー12の内部を外部よりも陽圧に保ち、さらにチャンバー12内の第2処理スペース205bを第1処理スペース205aよりも陽圧に保つ。これにより、チャンバー12の内部から外部に向けた気流、並びに、第2処理スペース205bから第1処理スペース205aへ向けた気流が作り出される。したがって、気体中に含まれた菌が、チャンバー12の外部から内部へ入り込むこと、並びに、第1処理スペース205aから第2処理スペース205bへ入り込むこと、を防止することができる。
次に、容器1の殺菌処理が行われる。
まず、図25を用いて殺菌方法の概略を説明する。
容器1が、搬入手段15aにより搬入路14aを通過してチャンバー12内に順次持ち込まれる。持ち込まれた容器1は受け渡しホイール16を介して第1回転体244に順次受け渡されていく。第1回転体244に受け渡された容器1は、第1回転体244の回転にともって移動しながら処理を施される。次に、容器1は、受け渡しホイール16を介して第1回転体244から第2回転体240へ順次転載される。転載された容器1は第2回転体240の回転にともなって移動しながら処理を施される。殺菌処理された容器1は受け渡しホイール16を介して搬出手段15bに受け渡され、搬出手段15bにより搬出路14bを通過して、次工程である充填工程(図1)へと搬送される。このような殺菌方法によれば、多数の容器1を順次連続して効率的に殺菌処理することができる。なお、殺菌処理に異常があった容器1については、不良品排出手段19aに受け渡され、不良品排出口19を経由してチャンバー12内から排出される。
次に、第1回転体244および第2回転体240の回転にともなって処理槽20および容器1になされる処理工程を順に詳述していく。
まず、図24に示すように、受け渡しホイール16を介して第1回転体244に受け渡された容器1は、第1回転体244に保持され、第1回転体244の回転にともなって移動する。このとき、第1回転体244には多数の容器1が順次送り込まれてくるが、送り込まれてきた容器1は、回転軸L2を中心とした円周に沿って等間隔に間を空けて第1回転体244に保持される。
図25に示す領域A21においては、付着手段の2流体スプレー287から液体が噴射されている。したがって、第1回転体244の回転にともなって領域A21を通過する容器1はその外面に液体を吹き付けられ、容器1の外面に液体が付着する。このとき、上述したように、2流体スプレー287に供給される液体の流量および空気の流量および圧力は一定となるように調整されている。したがって、各容器1の外面には、略一定量の液体が付着するようになる。
外面に液体を付着させられた容器1は、その後、第1回転体244の回転にともなって領域A22を通過する。上述したように第1回転体244に保持された容器1の直上には、導入手段270の導入管275の末端が配置されている(図27)。そして、容器1が領域A22に入ると、導入手段270のバルブ279が開き、導入管275から蒸気混合ガスが噴射される。このとき、上述したように、所定湿度、所定温度、および所定圧力の蒸気混合ガスが液槽290から管271に送り込まれる。また、液槽290から容器1内までの管路はヒーター281およびリボンヒーター277によって加熱されるので、一度蒸気化した液体が再凝縮することはない。さらに、領域A22は、等間隔で配置された容器1が所定の数量だけ入る(通過する)広さとなっている。すなわち、図28に示すように、開いているバルブ279の数が常に一定数(図28中では2つ)となるようになっている。なお、図28に示す例においては、6つの導入管275およびバルブ279が設けられており、このうちいずれか2つのバルブ279が開いるようになっている。
これらのことから、導入管275から容器1の内部に送り込まれる蒸気混合ガスは一定量となる。このため、容器1の内部に一定量の蒸気を導入することができる。また、蒸気とともに導入されるガスも一定量となるので、この蒸気混合ガスの導入により容器1内の雰囲気を空気以外のガスに確実に置換することもできる。
次に、領域A22を通過した容器1は、受け渡しホイール16を介し、処理チャンバー217の第2回転体240へと転載される。図24に示すように、容器1は、受け渡しホイール16の把持手段16aに保持された状態で、処理チャンバー217の受け入れ開口204aから処理チャンバー217内に入る。このとき、とりわけ図30に示されているように、一側処理槽形成部材222は仕切部材218の開口218aに当接し、開口218aを塞いでいる。一方、他側処理槽形成部材221は仕切部材218から離間した位置に配置されている。そして、図30において二点鎖線で示すように、受け渡しホイール16が容器1を処理チャンバー217内に持ち込むと、他側処理槽形成部材221は上方に移動する(仕切部材218に向けて移動する)。そして、他側処理槽形成部材221がその内部に容器1を受け入れると同時に、受け渡しホイール16の把持手段16aは容器1を解放する。
その後、他側処理槽形成部材221はそのまま上方に移動し、仕切部材218に当接する。このとき、他側処理槽形成部材221が仕切部材218の開口218aを塞ぐようになり、これにより、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221、並びに仕切部材218によって処理槽220の内部が外部から区画され、第1処理スペース205aおよび第2処理スペース205bのいずれからも区画された容器1の収容スペースSが形成される(図29および図33A)。
なお、このような容器1の受け渡しホイール16から処理槽220内への配置は、領域A23において行われ、この間、第2回転体240は一定速度で回転し続けている。また、受け渡しホイール16から容器1が持ち込まれてきていない等、何らかの理由によって、容器1を配置されることなく領域A23を通過した処理槽220を、図示しない制御手段が記憶するようになっている。すなわち、制御手段は、第2回転体の回転にともって移動している各処理槽220が容器1を収容しているか否かを把握することができるようになっている。
図25に示すように、容器1が配置された処理槽220は、その後、領域A24に移動する。この領域A24に入ると、高電圧接続接点254が閉じ、高電圧パルス電源57aに接続された高電圧側レール259と放電極35とが接続(導通)される。これにより、放電極35と接地された対向電極30との間に常温常圧下で高電圧パルスが印加され、放電極35と対向電極30との間に放電が生じ、処理槽220内に大気圧プラズマが発生する。したがって、処理槽220内に電離されたガスが生成され、これにより、処理槽220の内面および処理槽220内に配置されている放電極35とともに容器1の内面および外面が殺菌される。
また、上述したように、容器1の外面には液体が付着し、また容器1の内部には蒸気が存在している。これにより、プラズマの発生が安定するとともに、強力な殺菌能力を有する活性酸素種が生成され、高いレベルで安定した殺菌処理を行うことができる。さらに、上述した領域A22での蒸気混合ガスの導入において、処理槽220内の雰囲気を殺菌に適したガスに置換させておくことも可能である。この場合、さらに高いレベルでの殺菌処理を行うことができる。さらに、処理槽220の内部が外部から区画されているので、殺菌能力を有する活性酸素種が、処理槽220内から拡散して放出されてしまうことを防止することができる。以上のようなことから、領域A24において、処理槽220の内面および処理槽220内に配置されている放電極35とともに容器1の内面および外面が、高いレベルで効率的に安定して殺菌される。
なお、図24、図25、および図32に示されているように、隣り合う複数の処理槽220が領域A24中を同時に移動し、これら複数の容器1が同時に殺菌処理されるようになっている。したがって、多数の容器1を順次効率的に殺菌処理することができる。
また、例えば運転開始時または運転終了時である等の何らかの理由により、容器1が処理槽220に配置されていなかったとすると、該処理槽220に対応する放電極35および対向電極30間の抵抗値は、容器1が配置されている場合に比べ、著しく小さくなる。この結果、該処理槽220に対応する電極間を流れる電流値が著しく大きくなるとともに、同時に高電圧パルスを印加される他の処理槽220に対応する電極間を流れる電流値が小さくなる。その一方で、容器1が配置されていない処理槽220に高電圧パルスが印加されないようにすると、同時に高電圧パルスを印加されるべき他の処理槽220に対応する電極間を流れる電流値が大きくなり、この処理槽220内の容器1が変形してしまう等の不具合が生じてしまう虞がある。
しかしながら、本実施の形態によれば、上述したように、容器1が配置されていない処理槽220を制御手段(図示せず)が把握するようになっており、容器1が配置されていない処理槽220が領域A24を通過する場合、図32に示すように、制御手段は該容器1に対応する高電圧開閉接点254を開いたままに保つ。また同時に、制御手段は、等価回路部251の等価回路252の回路開閉接点252aを閉じる。さらに詳しくは、領域A24に容器1が配置されていない処理槽220が移動してきた場合、該処理槽220に対応する高電圧接続接点254に代え、回路開閉接点252aを閉じるようになっている。したがって、容器1を配置されていない1以上の処理槽220が領域A24を通過している場合、該処理槽220に対応する放電極35および対向電極30間に代え、等価回路252を該処理槽220の数に応じた数だけ並列に接続した等価回路部251に高電圧パルスが印加される。上述したように、各等価回路252は、容器1を配置されている処理槽220に対応する放電極35および対向電極30間の抵抗値と略同一の抵抗値を有している。このため、領域A24を通過中の各処理槽(電極間)を流れる電流は略一定となり、容器1を変形させてしまう等の不具合を防止することができる。加えて、高電圧パルスの印加条件が一定となり、信頼性の高い殺菌処理を安定して行うことができる。
また、高電圧パルスが印加されている間、放電電力監視手段60の高電圧プローブ63と電流プローブ62とを介して、印加される高電圧パルスの電圧と発生する電流とを確認することにより放電電力の負荷状況が監視される。さらに、放電光監視手段65によって、大気圧プラズマで生ずる放電光の強さを確認することにより放電光の発生状況が監視される。本実施の形態においては、図32に示すように、放電電力負荷状況の監視結果および放電光発生状況の監視結果が判定手段253に送信されるようになっている。また、判定手段253は処理槽220内にある容器1について殺菌処理の異常に有無を判定するようになっている。
領域A24で殺菌された容器1を収容した処理槽220は、その後、領域A25および領域A26へと移動する。領域A25および領域A26における処理槽220の動作は、図33Aおよび図33Bに示すように、判定手段253による判定結果によって異なる。まず、殺菌処理の異常が無いと判定された容器1を収容した処理槽220が、領域A25および領域A26へ移動した場合について説明する。
まず、処理槽220が領域A25に入ると、該処理槽220に対応する高電圧開閉接点254が開き、高電圧パルスの印加が停止する。次に、図31および図33Aに示すように、一側処理槽形成部材222が仕切部材218から離間し、処理槽220内と第2処理スペース205bとが連通する。このとき、他側処理槽形成部材221は仕切部材218に当接し、開口218aを塞いだままの状態に維持されているので、第2処理スペース205bが第1処理スペース205aと連通してしまうことはない。なお、容器1とともに処理槽220の内面および放電極35は領域A24において殺菌されているので、このような一側処理槽形成部材222の動作によって、第2処理スペース内205b内に菌が持ち込まれることはない。
次に、図33Aに示すように、受け渡しホイール16の把持手段16aが他側処理槽形成部材221内に収容されている容器1を把持する。その後、受け渡しホイール16の把持手段16aは、容器1を他側処理槽形成部材221内から引き上げるとともに、第1排出口204bを介し、処理チャンバー217内から排出される。図24に示すように、排出された容器1は搬出手段15bに移載されるとともに、搬出路14bを通って殺菌装置10のチャンバー12から排出され、次工程である充填工程(図1)に持ち込まれる。
その一方で、容器1が他側処理槽形成部材221から回収されると、図33Aに示すように、一側処理槽形成部材222は、再び仕切部材218に接近する。そして、一側処理槽形成部材222は仕切部材218に当接して、仕切部材218の開口218aを塞ぐ。これにより、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221、並びに仕切部材218によって処理槽220の内部が外部から区画され、第1処理スペース205aおよび第2処理スペース205bのいずれからも区画された容器1の収容スペースSが形成される(図33A)。このような一側処理槽形成部材222の仕切部材218への再接近は、領域A25または領域A26中にて行われる。
さらに、領域A26中においては、図33Bに示すように、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の開口218aに当接し、開口218aを塞いだ状態で、他側処理槽形成部材221が仕切部材218から離間する。これにより、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の内部と、放電極35とが、処理チャンバー217内の第1処理スペース205aの露出された状態となる。そして、処理槽220は、この状態のまま、領域A27へと移動する。
このような領域A25および領域A26における容器1の排出方法および処理槽220の動作方法が、殺菌処理に異常が無いと判定された容器1およびこれを収容した処理槽220についてのものである。これに対し、殺菌処理の異常が有ると判定された容器1を収容した処理槽220が、領域A25および領域A26へ移動した場合について、以下に説明する。
図33Aに示すように、殺菌処理に異常が有ると判定された容器1を収容した処理槽220は何ら動作することなく領域A25を通過し、領域A26へと移動する。処理槽220が領域A26に入ると、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の開口218aに当接し、開口218aを塞いだ状態で、他側処理槽形成部材221が仕切部材218から離間する。これにより、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221の内部と、放電極35とが、処理チャンバー217内の第1処理スペース205aに露出された状態となる(図30)。
次に、受け渡しホイール16の把持手段16aが他側処理槽形成部材221内に収容されている容器1を把持する。その後、受け渡しホイール16の把持手段16aは、容器1を他側処理槽形成部材221内から引き上げるとともに、第2排出口204cを介し、処理チャンバー217内から容器1を排出する。図24に示すように、排出された容器1は不良品搬出手段19aに移載されるとともに、不良品排出口19を通って殺菌装置10のチャンバー12から排出され、殺菌が十分に行われなかった不良品として回収される。
容器1を回収された処理槽220は、その後、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の開口218aを塞ぐとともに、他側処理槽形成部材221が仕切部材218から離間した状態のまま、領域A27へと移動する。
以上のように、殺菌処理に異常が有ると判定された場合および異常が無いと判定された場合のいずれにおいても、処理槽220は、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の開口218aを塞ぐとともに、他側処理槽形成部材221が仕切部材218から離間した状態で、領域A27に入る。また、領域A27以降の領域A28およびA29においても、処理槽220の一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221は、処理を受けるものの、この状態から動作しない。
次に、領域A27乃至領域A29における処理槽220への処理を説明する。
領域A27においては、図33Bに示すよう、乾燥手段256の一側吐出ノズル256bにより一側処理槽形成部材222に温風エアーが吹き付けられ、これにより、一側処理槽形成部材222の内部と、一側処理槽形成部材222に支持された放電極35と、仕切部材218の開口218aの周囲と、が乾燥させられる。また、乾燥手段256の他側吐出ノズル256cにより他側処理槽形成部材221に温風エアーが吹き付けられ、これにより、他側処理槽形成部材221の内部が乾燥させられる。なお、乾燥手段256は、一側処理槽形成部材222、他側処理槽形成部材221、放電極35、および仕切部材218の開口218aのいずれかのみを乾燥させるようにしてもよい。
次に、領域A28においては、図33Bに示すよう、温調手段294の一側吐出ノズル294bにより一側処理槽形成部材222に所定温度のエアーが吹き付けられ、これにより、一側処理槽形成部材222の内部と、一側処理槽形成部材222に支持された放電極35と、仕切部材218の開口218aの周囲と、が所定の温度に調整される。また、温調手段294の他側吐出ノズル294cにより他側処理槽形成部材221に所定温度のエアーが吹き付けられ、これにより、他側処理槽形成部材221の内部が所定の温度に調整される。
なお、温調手段294は、一側処理槽形成部材222、他側処理槽形成部材221、放電極35、および仕切部材218の開口218aのいずれかのみを温調するようにしてもよい。また、温調手段294は、これらを冷却して温度調節するようにしてもよいし、加熱して温度調節するものであってもよい。さらに、エアーに代えて、所定のガスを吹き付けることにより、温調と同時に、一側処理槽形成部材222および/または他側処理槽形成部材221内を大気圧プラズマの発生に適した雰囲気に置換するようにしてもよい。
その後、領域A29においては、図33Bに示すよう、予備導入手段295によって、処理槽220内に予め蒸気または蒸気混合ガスを導入される。なお、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221のいずれか一方または両方に蒸気が導入されるようにしてもよい。これにより、処理槽220をより高いレベルで殺菌することができるようになる。また、予備導入手段2985から蒸気混合ガスを導入するようにすれば、蒸気の導入と同時に、一側処理槽形成部材222および/または他側処理槽形成部材221内を殺菌に適した雰囲気に置換することもできる。
これら領域A27乃至A29を通過して再度A23に移動してきた処理槽220内には、第1回転体244から送り込まれてきた未殺菌の容器1が再度配置され、この未殺菌の容器1に対し上述した殺菌処理が行われていく。したがって、領域A27乃至A29における処理は、容器1を殺菌する前における処理槽220の準備工程と言える。そして、これらの工程を経て、容器1を受け入れる前の処理槽220を一定の状態に維持することにより、安定した信頼性の高い殺菌処理を行うことができるようになる。
以上のように本実施の形態によれば、殺菌対象の容器1の外面に所定の液体を付着させるとともに殺菌対象の容器1の内部に所定の液体を蒸発させてなる蒸気を導入した後、容器1を処理槽220内に配置するとともに容器1に放電極35を挿入し、放電極35と処理槽220の少なく一部を覆う対向電極30との間に高電圧パルスを印加している。これにより、処理槽220内の容器1の内外に存在する気体がプラズマ化し、処理槽220の内面および処理槽220内に配置されている放電極35とともに容器1の内面および外面を同時に殺菌することができる。特に、容器1の外面に液体が付着しかつ容器1の内面に蒸気が導入されているので、高い殺菌能力を有した多くの活性酸素種が生成されるとともに、容器1の内面および外面に略均一に接触し、容器1の内面および外面を高いレベルで殺菌することができる。
また、本実施の形態によれば、蒸気は、所定のガスと混合された蒸気混合ガスとして、容器1の内部に導入される。このような方法によれば、容器1の内部に蒸気を導入する同時に、処理槽20内の雰囲気をプラズマの発生に適した所定のガスに置換することができる。したがって、プラズマの発生を安定化させ、上述した高いレベルでの殺菌処理を効率的に行うことができる。
さらに、本実施の形態によれば、チャンバー12内を第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとに区画する仕切部材218が、設けられている。また、仕切部材218は開口218aを有し、処理槽220が、仕切部材218の開口218aを両側から塞ぐようになされた一側処理槽形成部材222と、他側処理槽形成部材221と、を有している。そして、殺菌前の容器1を処理槽220内に配置する場合、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の開口218aを覆い第2処理スペース205bと第1処理スペース205aとを遮断した状態で、他側処理槽形成部材221を仕切部材218から離間させて、容器1を第1処理スペース205aから処理槽220内に配置する。一方、殺菌後の容器1を処理槽220内から排出する場合、他側処理槽形成部材221が仕切部材218の開口218aを覆い第2処理スペース205bと第1処理スペース205aとを遮断した状態で、一側処理槽形成部材222を仕切部材218から離間させて、容器1を処理槽220内から第2処理スペース205bへ排出する。したがって、第2処理スペース205bを通過するのは殺菌後の容器1だけとなる。また、排出後の工程を含め一側処理槽形成部材222が仕切部材218から離間し、処理槽220内と第2処理スペース205bが連通するようになるのは、処理槽220の内面および放電極35を含む処理槽220の内部が殺菌された状態にある場合だけである。したがって、第2処理スペース205bを高度の無菌状態に保つことができ、これにより、第2処理スペース205bを移動する殺菌済容器1の無菌状態をより確実に保つことができ、この結果、殺菌処理の信頼性を格段に高めることができる。
なお、仕切部材218の縁部には第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとを連通させる隙間が存在する。しかしながら、また第2処理スペース205bは第1処理スペース205aに比べ陽圧に保たれており、図29乃至図31に示すように、この隙間部分においては、第2処理スペース205bから第1処理スペース205aに向けて気流が生じている。また、そもそもこの隙間は仕切部材218の回転を阻害しないためのものであって非常に小さい。これらのことから、この隙間が第2処理スペース205aの無菌状態に影響を及ぼすことない。
さらに本実施の形態によれば、処理槽220内にある容器1について殺菌処理の異常の有無を判定する判定するようになっている。そして、殺菌処理に異常が有ると判定された容器1を処理槽220から排出する場合、一側処理槽形成部材222が仕切部材218の開口218aを覆い第2処理スペース205bと第1処理スペース205aとを遮断した状態で、他側処理槽形成部材221を仕切部材218から離間させて、容器1を処理槽220内から第1処理スペース205aへ排出する。したがって、殺菌処理の異常に起因して内部に菌が存在するかもしれない処理槽220を第2処理スペース205bに連通させてしまうことはない。したがって、殺菌処理に異常が生じてしまったとしても、これに起因して第2処理スペース205bを汚染させてしまうことはない。これにより、第2処理スペース205bを高度の無菌状態に保つとともに、第2処理スペース205bを移動する殺菌済容器1の無菌状態をより確実に保つことができ、この結果、殺菌処理の信頼性を格段に高めることができる。
さらに、本実施の形態によれば、容器1を排出した後であって容器1を再度受け入れる前の処理槽220に対して処理を行う、乾燥手段256、温調手段294、および予備導入手段295が、第1処理スペース205a内(処理チャンバー217の下方)に配置され、第1処理スペース205aで処理を行うようになっている。したがって、高度の無菌状態に維持することが望まれる第2処理スペース205b内の構成が複雑になってしまうことを防止することができる。すなわち、菌が殺菌されにくい環境をもたらす虞がある管類等の要素が第2処理スペース205bから排除されているので、第2処理スペース205bの無菌性をより確実かつ容易に維持することができる。
さらに、本実施の形態によれば、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221に開口が形成されておらず、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221が仕切部材218に当接することによって形成される処理槽220の内部空間Sは、処理槽220の外部から遮断される。したがって、大気圧プラズマを生じさせることによって生成される強い殺菌能力を有した活性酸素種が、処理槽220の外部に拡散してしまうことがない。これにより、殺菌処理を効率的に行うことができる。
さらに、本実施の形態によれば、隣り合う複数の処理槽220にそれぞれ対応する複数の対向電極30および放電極35間に高電圧パルスが同時に印加されるようになっている。したがって、複数の処理槽220内にそれぞれ配置された複数の容器1に対し、同時に殺菌処理を施すことができ、これにより、多数の容器1を順次効率的に殺菌していくことができる。
さらに本実施の形態によれば、高電圧パルスが印加される領域A24を通過中の処理槽220のうち1以上の処理槽220に容器1が配置されていない場合には、容器1が配置されていない処理槽220に対応する対向電極30および放電極35間に代えて、処理槽220内に容器1を配置した状態での1つの対向電極30および放電極35間の抵抗値と同等の抵抗値を有した等価回路252を前記容器1が配置されていない処理槽220の数だけ接続した回路251に、高電圧パルスが印加されるようになっている。したがって、高電圧パルスが印加される領域A24に容器1が配置されていない処理槽220が移動してくると、該処理槽220に対応する対向電極35および放電極35間に代え、等価回路252に高電圧パルスが印加されるようになっている。そして、等価回路252が容器を配置された1つの処理槽220に対応する対向電極30−放電極35間の抵抗値と略同等の抵抗値を有していることから、高電圧パルスが印加される陽極および陰極間の総抵抗値が略同一となる。したがって、1つの処理槽220(電極間)を流れる電流値が高くなり過ぎることを防止し、容器1を一定条件の下、一定のレベルで安定して殺菌していくことができる。このことは、殺菌処理の開始時や殺菌処理の終了時にとりわけ有用であり、殺菌装置210に投入する1本目の容器1および最終の容器1をも良品として取り扱うことができるようになり、歩留まりを格段に向上させることができる。
なお、本発明による第2の実施の形態に対し、種々の変更が可能である。
例えば、第2の実施の形態において、まず、容器1の外面に液体を付着させ、その後に、容器1の内部に蒸気を導入する例を示したが、これに限られず、容器1の外面に液体を付着させる工程と、容器1の内部に蒸気を導入する工程との、順番を逆にしてもよいし、また、これらの工程を同時に行うようにしてもよい。
また、第2の実施の形態において、判定手段253が、放電電力監視手段60の監視結果および放電光監視手段65の監視結果に基づき、殺菌処理の異常の有無を判定する例を示したが、これに限られない。例えば、放電電力監視手段60の監視結果および放電光監視手段65の監視結果のいずれかのみ基づいて、殺菌処理の異常の有無を判定するようにしてもよい。また、これらに代えて、あるいは、これらに加えて、容器1の外面への液体の付着状況や容器1の内部への蒸気の導入状況に基づいて、殺菌処理の異常の有無を判定するようにしてもよい。さらに、放電電力監視手段60のデジタルオシロモジュールコントローラ61あるいは放電光監視手段65の判定部66自体を判定手段253として用いるようにしてもよい。
さらに、第2の実施の形態によれば、殺菌装置210に、乾燥手段256、予備導入手段295、および温調手段294が別個に設けられている例を示したが、これに限られない。これらの手段を適宜省略または統合してもよい。
さらに、第2の実施の形態において、仕切部材218と第2回転体240とが別体からなる例を示したが、これに限られず、仕切部材218と第2回転体240とが一体に形成されていてもよい。
さらに、第2の実施の形態において、高電圧パルス印加手段257の等価回路部251が、容器を配置された1つの処理槽に対応する対向電極および放電極間の抵抗値と同等の抵抗値を有する抵抗器252bを含んだ等価回路252を有する例を示したが、これに限られない。例えば、各等価回路252の抵抗器252bが、処理槽内に配置される以前の処理に異常がなかった容器を配置された1つの処理槽に対応する対向電極および放電極間の抵抗値と同等の抵抗値を有するようにしてもよい。そしてこの場合、高電圧パルス印加部257が複数の処理槽220に対応する各電極30,35間に高電圧パルスを印加する際に、複数の処理槽220のうち1以上の処理槽220に、処理槽220内に配置される以前の処理に異常があったと判定された容器1が配置されている場合には、該異常があったと判定された容器1が配置されている処理槽220に対応する対向電極30および放電極35間に代え、該異常があったと判定された容器1が配置されている処理槽220の数と同数の等価回路252に、高電圧パルスが印加されるようにしてもよい。ここで、処理槽220内に配置される以前の処理として、第2の実施の形態においては、例えば、領域A21における容器1の外面へ液体を付着させる処理や、領域A22における容器1の内部に蒸気混合ガスを導入する処理が挙げられる。また、例えば、領域A21において容器1の外面に液体を所定の量だけ付着させることができなかった場合、領域A22において容器1の内部に蒸気を所定の量だけ導入することができなかった場合、あるいは領域A22において容器1の内部に雰囲気置換用ガスを所定の量だけ導入することができなかった場合等が、第2の実施の形態において、処理槽220内に配置される以前の処理に異常が有った場合に該当する。そして、処理槽220内に配置される以前の処理に異常が有った容器1が収容されている処理槽220に対応する電極30,35間の抵抗値は、異常が無かった容器1が収容されている処理槽220に対応する電極30,35間の抵抗値と異なってしまう虞がある。このような場合、異常が無かった容器1を収容し同時に高電圧パルスを印加される他の処理槽220内を流れる電流値は、所望の値より大小してしまう。本変形例によれば、このような不具合を排除することができ、これにより、一定の高電圧パルス印加条件による一定の殺菌効果を期待することができる。なお、処理槽220内に配置される以前の処理における異常の有無は、例えば、上述したレーザ光の透過量によって異常の有無を判定する手段、あるいは、導入手段275や付着手段287の各計器等を用いて判定することができ、この判定結果を受けて、上述した制御手段(図示せず)が高電圧開閉接点254および各等価回路252の回路開閉接点252aを操作するようにしてもよい。
さらに、第2の実施の形態において、仕切部材218の下方に第1処理スペース205aが形成され、上方に第2処理スペース205bが形成される例を示したが、これの限られず、殺菌対象の容器1の移動経路と関連させて、第1処理スペース205aおよび第2処理スペース205bの配置を種々変更することができる。
さらに、第2の実施の形態において、チャンバー12内に略円筒状の処理チャンバー217が配置され、処理チャンバー217内に仕切部材218が配置され、この仕切部材218によって処理チャンバー217を介してチャンバー12内が第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとに区分けされている例を示したが、これに限られない。係合突起状部217cの構成を適宜変更し、処理槽220と共同した仕切部材218によって、チャンバー12内を第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとに区分けすることができる限りにおいて、処理チャンバー218の形状を円筒状以外の形状に構成するようにしてもよい。さらには、図34に示すように、殺菌装置210aから処理チャンバー218を省くこともできる。図34に示す殺菌装置210は、略円盤状の仕切部材218と、仕切部材218の形状に対応して開口を形成された板状の係合突起状部217cと、を備えている。係合突起状部217cはチャンバー12の隔壁に設置されており、また係合突起状部217cの開口に対応して仕切部材218が回転自在に設置されている。この係合突起状部217cおよび仕切部材218によって、処理チャンバーを用いることなく、チャンバー12内が第1処理スペース205aと第2処理スペース205bとに区分されている。図34から理解できるように、殺菌前の容器1は、第1処理スペース205aを経由して処理槽220内に収納される。そして、殺菌済の容器(殺菌処理に異常がなかった容器)1は、処理槽220から第2処理スペース205bを経由し、チャンバー12内から排出される。一方、殺菌処理に異常があった容器1は、第2処理スペース205bに入ることなく、処理槽202から第1処理スペース205a内に取り出され、チャンバー内12から排出されていく。なお、図34において上述した第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
さらに、第2の実施の形態において、第1の実施の形態と同様にパンタグラフを用いて、高電圧パルスの印加を制御するようにしてもよい。この場合、上述した高電圧開閉接点254は、常時「閉」、殺菌処理異常有りの場合に「開」となるようにすればよい。逆に、第2の実施の形態における高電圧開閉接点254を用いた高電圧パルスの印加制御を、第1の実施の形態に適用することも可能である。
さらに、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態の変形例で説明したように、放電極35と対向電極30との極性を領域A24内において切り替えるようにしてもよい。
さらに、第2の実施の形態において、第1の実施の形態で説明した導入手段70,70a,70bを容器1の内部に蒸気を導入する手段として用いるようにしてもよい。
さらに、第2の実施の形態によれば、処理槽220が一側処理槽形成部材222と他側処理槽形成部材221とを有する例を示したが、これに限られない。例えば、処理槽220が、仕切部材218の開口218a内に保持されるとともに筒状からなる中間処理槽形成部材をさらに有し、一側処理槽形成部材222および他側処理槽形成部材221が中間処理槽形成部材の両側を開閉するように構成されてもよい。このような処理槽として、例えば、第1の実施の形態の変形例として説明した図14に示す処理槽100を用いることができる。この場合、筒状体111を仕切部材218の開口218a内に挿入固定し、筒状体111を挟み筒状体111に接離可能にステージ110および蓋112を配置するようにしてもよい。また、第1の実施の形態の変形例として説明した図15乃至図17に図示された変形例を、第2の実施の形態に適用することができる。加えて、第2の実施の形態では、放電極35が一側処理槽形成部材222に支持された例を示したが、処理槽220内における容器1の配置方法等に関連して、放電極35が他側処理槽形成部材221によって支持されるようにしてもよい。
さらに、第1の実施の形態において説明した支持手段26の変形例(図18乃至図21含む)を、第2の実施の形態に適用することができる。
さらに、第1の実施の形態において説明した放電極35の変形例(図22および図23)を、第2の実施の形態に適用することができる。また、放電極35の数は1つに限られず、2以上の放電極35が設けられてもよい。
さらに、処理槽220の形状は相似型に限られず、断面多角形状であってもよい。