JP4842494B2 - イオン分布計算方法およびプログラム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はイオン分布計算方法およびプログラムに関し、特に、結晶性を有する部材に複数回に分けてイオンを注入する場合に当該部材内部のイオン分布を計算するイオン分布計算方法およびそのような計算をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造プロセスにおいては、半導体基板に、例えば、砒素や硼素などのイオンを注入し、部材の電気的性質を変更することが一般的に行われている。
【0003】
MOS−FET(metal oxide semiconductor-Field Effect Transistor)の製造プロセスにおいては、Extension,Source/Drain領域へ4方向からイオンを注入する場合がある。
【0004】
図9は、このようなイオン注入の態様を説明するための図である。この図に示すように、MOS−FETの製造プロセスにおいて、イオン注入をする際には、図の左右方向(図中矢印で示す方向)および前後方向の4方向(図示せず)からイオンを注入し、n+領域を形成する。
【0005】
このようなイオン注入を行う際には、注入されたイオンが所望の分布となるようにイオンのエネルギーと、ドーズ量とを決定する必要があることから、パーソナルコンピュータやワークステーション(以下単にコンピュータと称する)を用いてイオン分布をシミュレーションすることが従来から行われてきた。
【0006】
ところで、結晶構造を有する部材にイオンを注入する場合、イオンが衝突した領域では、結晶構造が壊れてアモルファス(amorphous)構造に転化することが知られている。
【0007】
結晶構造が壊れてしまうと、それよりも奥にはイオンが到達しにくくなることから、アモルファス領域よりも奥の領域ではドーズ量を増加してもイオンの濃度が増加しなくなってしまう。
【0008】
図10は、このような現象を説明するための図である。この図の横軸は、イオンが注入される部材の表面からの深さを示し、また、縦軸は注入されたイオンの濃度を示している。また、各曲線は、ドーズ量を変化させた場合の結果を示している。
【0009】
この図に示すように、ドーズ量が増加するに従って、グラフのピーク部分(アモルファス領域に対応する部分)は略比例して増加しているのに対し、それよりも奥に位置する部分(チャネリング領域)はドーズ量が増加してもほとんど変化していない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来において、イオン注入を複数回行う場合のシミュレーションについては、1回分のイオン注入を単純に注入の回数分だけ累積加算して求めるべき結果としていた。
【0011】
アモルファス領域については、前述のように線形性を有するので重ね合わせの定理が成立し、得られる結果も実際の値に近い値が得られていた。
しかし、チャネリング領域については、線形性を有しないことから重ね合わせの定理が成立せず、単純に加算しただけでは得られる結果が実際の値から大きく乖離したものとなっていた。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、結晶構造を有する部材に複数回に分けてイオン注入を行う場合でも実際の値に近いシミュレーション結果を得ることが可能なイオン分布計算方法およびそのようなイオン分布計算方法を実行するプログラムを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によれば表面に突部を設けた結晶性を有する部材の当該突部を含む領域に対して行うイオン注入の全ドーズ量を、複数回に分けて、当該部材表面に対して異なる複数方向からイオン注入を行うときの、当該部材内部のイオン分布を計算するイオン分布計算方法において、前記部材にイオン注入を行う際のドーズ量と、前記部材へのイオン注入によって前記部材内部に形成されアモルファス領域と当該アモルファス領域よりも注入方向奥に位置するチャネリング領域のうちの、当該チャネリング領域のドーズ量との関係を予め求めるステップと、計算された、第i回目(iは自然数)のイオン注入によって生じる第iイオン分布を取得するステップと、前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量との第1の差分を、前記関係から求めると共に、前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量との第2の差分を求め、前記第1,第2の差分を用いて、第i+1回目のイオン注入によって追加されるイオンの濃度分布を示す差分ドーズを計算するステップと、前記差分ドーズを、前記第iイオン分布に加算することによって第i+1回目のイオン注入によって生じる第i+1イオン分布を計算するステップと、を有するイオン分布計算方法が提供される。
【0015】
また、本発明の一観点によれば表面に突部を設けた結晶性を有する部材の当該突部を含む領域に対して行うイオン注入の全ドーズ量を、複数回に分けて、当該部材表面に対して異なる複数方向からイオン注入を行うときの、当該部材内部のイオン分布をコンピュータに計算させるコンピュータ読み取り可能なプログラムにおいて、コンピュータを、予め求められた、前記部材にイオン注入を行う際のドーズ量と、前記部材へのイオン注入によって前記部材内部に形成されるアモルファス領域と当該アモルファス領域よりも注入方向奥に位置するチャネリング領域のうちの、当該チャネリング領域のドーズ量との関係を取得する手段、第i回目(iは自然数)のイオン注入によって生じる第iイオン分布を計算する手段、前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量との第1の差分を、前記関係から求めると共に、前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量との第2の差分を求め、前記第1,第2の差分を用いて、第i+1回目のイオン注入によって追加されるイオンの濃度分布を示す差分ドーズを計算する手段、前記差分ドーズを、前記第iイオン分布に加算することによって第i+1回目のイオン注入によって生じる第i+1イオン分布を計算する手段、として機能させるコンピュータ読み取り可能なプログラムが提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の動作原理を説明する原理図である。この図に示すように、本発明のイオン分布計算方法は、イオン分布特定ステップ30、イオン分布算出ステップ31、差分計算ステップ32およびイオン分布計算ステップ33を有している。
【0018】
ここで、イオン分布特定ステップ30は、既に実行されたn回(nは自然数)のイオン注入によって生じた既存のイオン分布を特定する。
イオン分布算出ステップ31は、第(n+1)回目のイオン注入によって生じると想定されるイオン分布を算出する。
【0019】
差分計算ステップ32は、イオン分布算出ステップ31によって算出された第(n+1)回目のイオン注入によるイオン分布と、イオン分布特定ステップ30によって特定された既存のイオン分布との差分を計算する。
【0020】
イオン分布計算ステップ33は、差分計算ステップ32によって求められた差分から第(n+1)回目のドーズ量を求めて第(n+1)回目のイオン分布を計算する。
【0021】
次に、以上の原理図の動作について説明する。なお、以下では、合計で5回のイオン注入を行う場合であって、第3回目のイオン注入を求める場合を例に挙げて説明する。
【0022】
先ず、イオン分布特定ステップ30は、前回、即ち、第2回目までのイオン注入によって形成されたイオン分布の状態を特定し、特定された情報をイオン分布算出ステップ31に供給する。
【0023】
イオン分布算出ステップ31は、次回、即ち、第3回目のイオン注入によって生じると想定されるイオン分布を算出し、差分計算ステップ32に供給する。
差分計算ステップ32は、イオン分布算出ステップ31によって算出された第3回目のイオン注入によるイオン分布と、イオン分布特定ステップ30によって特定された第2回目までのイオン注入によって形成されたイオン分布との差分を計算し、イオン分布計算ステップ33に供給する。
【0024】
イオン分布計算ステップ33は、差分計算ステップ32から供給された差分のドーズ量を、イオン注入した際に得られるイオン分布を計算する。そして、イオン分布計算ステップ33は、得られた結果を、第3回目のイオン注入によって得られたイオン分布の計算結果として出力する。
【0025】
以上に説明したように、本発明のイオン分布計算方法によれば、既存のイオン分布と、次のイオン注入によって生じると予想されるイオン分布の差分に基づいて注入イオンのドーズ量を計算し、得られたドーズ量に基づいて次のイオン注入によるイオン分布の結果を計算するようにしたので、従来の方法のように1回のイオン注入の結果を複数倍にする場合に比較して、チャネリング領域のイオン分布を正確にシミュレーションすることが可能になる。
【0026】
次に、本発明の実施の形態について説明する。
図2は、本発明の実施の形態の構成例を示す図である。この図に示すように、本発明のイオン分布計算方法を実施するコンピュータ50は、CPU(Central Processing Unit)50a、ROM(Read Only Memory)50b、RAM(Random Access Memory)50c、HDD(Hard Disk Drive)50d、GC(Graphics Card)50e、I/F(Interface)50fおよびバス50gによって構成されており、その外部には表示装置51および入力装置52が接続されている。
【0027】
ここで、CPU50aは、HDD50dに格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、装置の各部を制御する。
ROM50bは、CPU50aが実行する基本的なプログラムやデータを保持している。
【0028】
RAM50cは、CPU50aが実行対象とするプログラムやデータを一時的に格納する。
HDD50dは、CPU50aが実行するプログラムやデータを格納している。また、CPU50aの演算処理によって生成されたデータを格納する。
【0029】
GC50eは、CPU50aから供給された描画データに基づいて描画処理を実行し、得られた画像を映像信号に変換して表示装置51に出力する。
I/F50fは、入力装置52から出力されたデータの表現形式を内部の表現形式に変換して入力する。
【0030】
バス50gは、CPU50a、ROM50b、RAM50c、HDD50d、GC50eおよびI/F50fを相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能にする。
【0031】
表示装置51は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)またはCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイによって構成されており、GC50eから出力された映像信号を表示出力する。
【0032】
入力装置52は、例えば、マウスやキーボードによって構成されており、ユーザの操作に応じたデータを生成して出力する。
次に、以上の実施の形態の動作について説明する。
【0033】
以下では、先ず、イオン分布の計算方法について説明した後、図2に示す実施の形態の動作について説明する。
ドーズ量Φにより半導体基板に対してイオン注入を行った場合における濃度分布N(x)は、以下の式によって表される。
【0034】
【数1】
Figure 0004842494
【0035】
ここで、xは、半導体基板の表面からの距離(深さ)を、rはドーズレシオを、naはアモルファス領域の濃度を、ncはチャネリング領域の濃度を示している。換言すると、本発明の計算方法では、図3に示すように、イオン分布をアモルファス領域におけるイオン分布naと、チャネリング領域におけるイオン分布ncとに分割して計算し、得られた結果を合計することにより、全体のイオン分布を得る方法を採用している。
【0036】
なお、式(1)は、等価的に以下のように表すことができる。
【0037】
【数2】
Figure 0004842494
【0038】
なお、Φchanはチャネリング領域へのドーズ量を示している。ここで、rおよびΦchanはドーズ量Φに依存することから、これらをそれぞれr(Φ)およびΦchanと表すことにする。すると、両者は、以下のような関係を有することになる。
【0039】
【数3】
Figure 0004842494
【0040】
ここで、全ドーズ量Φをn回に均等に分割して注入する場合について考える。この場合、各回において注入されるドーズ量はΦ/nとなる。式(2)のΦにΦ/nを代入すると、各回におけるイオン分布は以下のようになる。
【0041】
【数4】
Figure 0004842494
【0042】
ところで、従来の方法においては、ドーズ量がΦ/nのイオン注入をn回繰り返す場合には、ドーズ量がΦ/nである場合のイオン分布を求めこれを単純にn回分だけ加算することにより計算結果を得ていた。即ち、次のような式によってn回分のイオン分布を得ていた。
【0043】
【数5】
Figure 0004842494
【0044】
しかし、このような方法では、図3に示すncの領域が単純にn倍にされてしまうため、正確なシミュレーション結果を得ることができない。
そこで、本発明の実施の形態では、先ず、図4に示すように、ドーズ量Φとチャネリング領域のドーズ量Φchanとの関係を求める。そして、第(i+1)番目のイオン分布を求める場合には、第i番目のイオン分布と第(i+1)番目のイオン分布の差分を計算し、得られた差分をチャネリング領域へ注入されるドーズ量としてイオン分布を計算する。
【0045】
即ち、第(i+1)回目のイオン注入により新たに追加されるイオンの濃度分布ΔNi(x)は、以下の式によって表される。
【0046】
【数6】
Figure 0004842494
【0047】
従って、第(i+1)回目の注入は、ドーズ量Φ/nであり、また、チャネリング領域のドーズ量が以下の式で示す注入分布であると擬制することができる。
【0048】
【数7】
Figure 0004842494
【0049】
このようにして、各回目におけるイオン注入の結果に応じて変化するイオン分布を計算することが可能になる。
次に、以上の実施の形態の動作を具体的に説明する。図5は、図2に示す実施の形態の動作を説明するためのフローチャートである。この処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0050】
ステップS10:
CPU50aは、入力装置52を介してイオンの注入条件を入力する。なお、イオンの注入条件としては、例えば、全イオンのドーズ量Φ、ドーズレシオrおよび図4に示すドーズ量とチャネリング領域のドーズ量Φchanとの関係を示すデータ等を入力する。
【0051】
ステップS11:
CPU50aは、既存のイオン注入分布のドーズ分布を評価する。即ち、式(4)に示すNi(x)を求める。
【0052】
ステップS12:
CPU50aは、今回注入するドーズ量を用いて差分ドーズを評価する。即ち、図4に示すドーズ量Φとチャネリング領域のドーズ量Φ chan との関係を示すデータを用いて、チャネリング領域のドーズ量の差分を求め、その差分を用いて、今回のイオン注入により新たに追加されるイオンの濃度分布を示す差分ドーズを計算する。
【0053】
ステップS13:
CPU50aは、ステップS12で求めた差分ドーズを、ステップS11で求めた既存のイオン分布に加算することにより、第(i+1)番目の注入によるイオン分布を求める。
【0054】
ステップS14:
CPU50aは、イオン注入処理を繰り返す場合には、ステップS11に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合にはステップS15に進む。
【0055】
ステップS15:
CPU50aは、最終的なイオン分布を発生し、対応する描画命令を生成してGC50eに供給する。
【0056】
ステップS16:
GC50eは、ステップS15においてCPU50aから供給された計算結果を表示装置51に表示させる。
【0057】
以上の処理によれば、チャネリング領域に誤差を生じることなく、イオン分布を正確に計算することが可能になる。
なお、比較のために従来の計算方法の処理の流れについても説明する。
【0058】
図6は、従来の計算方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。この図に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS30:
CPU50aは、入力装置52を介してイオンの注入条件を入力する。
【0059】
ステップS31:
CPU50aは、イオン注入分布を発生する。即ち、式(5)の何れかの式に示す1回分のイオン注入分布を求める。
【0060】
ステップS32:
CPU50aは、ステップS31で得られたイオン分布を既存のイオン注入分布に加算する。
【0061】
ステップS33:
CPU50aは、イオン注入処理を繰り返す場合には、ステップS31に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合にはステップS34に進む。
【0062】
ステップS34:
CPU50aは、最終の分布を発生する。
ステップS35:
CPU50aは、計算結果に対応する描画命令をGC50eに供給する。その結果、計算結果を示す画面が表示装置51に表示される。
【0063】
図7は、本発明の計算方法と、従来の計算方法によってそれぞれ得られた濃度分布を示すグラフである。このグラフの横軸は、半導体基板の表面からの深さを示しており、縦軸は濃度を示している。また、破線(old d−ratio)は、従来の方法によるグラフを示しており、点線(new d−ratio)は、本発明の方法によるグラフを示している。
【0064】
このグラフから分かるように、従来の方法では、本発明の方法と比較して、深い位置にある領域(チャネリング領域)の値が大きくなっている。これは、前述のようにチャネリング領域の誤差に起因するものである。
【0065】
図8は、本発明の計算方法と従来の計算方法のそれぞれによって得られたイオン分布に基づいてシミュレーションされたトランジスタのゲート長と、閾値との関係を示すグラフである。
【0066】
このグラフの横軸は、トランジスタのゲート長を示している。また、縦軸は、トランジスタの閾値を示している。また、線(old d−ratio)は、従来の方法によるグラフを示しており、線(new d−ratio)は、本発明の方法によるグラフを示している。
【0067】
この図から分かるように、従来の計算方法と、本発明の計算方法の誤差は、ゲート長が短くなるほど顕著となっている。近年では、半導体装置上に形成される素子の微細化が進んでいるので、誤差の影響はますます顕著となるものと考えられるため、本発明の計算方法の利用価値が増大するものと考えられる。
【0068】
なお、以上に説明した実施の形態では、ドーズ量を均等にn分割して注入する場合について説明したが、例えば、任意に分割して計算することも可能である。そのような方法について以下に説明する。
【0069】
即ち、ドーズ量Φ1でイオン注入を行った後に、ドーズ量Φ2でイオン注入を行った場合、あるべきイオン分布は以下の式によって表される。
【0070】
【数8】
Figure 0004842494
【0071】
ここで、第2回目のイオン注入後のイオン分布は、以下の式によって表される。
【0072】
【数9】
Figure 0004842494
【0073】
従って、以上の式を用いて、前述の場合と同様に計算をすることにより、任意に分割した場合の結果を得ることができる。
また、以上の実施の形態では、同一のイオンを注入する場合を例に挙げて説明したが複数のイオンを注入する場合に対しても本発明を適用することが可能である。そのような方法を以下に説明する。
【0074】
例えば、ドーズ量Φxにより所定のイオンを注入した後、ドーズ量Φにより異種のイオンを注入する場合を考える。この場合、イオン分布は以下の式で表される。
【0075】
【数10】
Figure 0004842494
【0076】
従って、複数のイオンを使用してイオン注入を行う場合であっても、これらのイオンによるチャネルドーズの分布が分かれば、前述の場合と同様にイオン分布を計算することが可能になる。
【0077】
また、以上の実施の形態では、イオン濃度を深さのパラメータxのみを用いて表すようにしたが、イオンの注入方向が異なれば同一の深さにおいても濃度が異なる場合が生じ得る。その場合には、深さ方向に直交する平面の位置を示すパラメータ(例えば、y)を用いてイオン濃度を示すことも可能である。
【0078】
なお、そのような場合には、イオンを注入するパスに沿ってイオン濃度の分布を計算するようにすればよい。
最後に、上記の処理機能は、コンピュータによって実現することができる。その場合、イオン分布計算方法を実施する装置が有すべき機能の処理内容を記述したプログラムが提供される。そのプログラムをコンピュータで実行することにより、上記処理機能がコンピュータ上で実現される。処理内容を記述したプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータで読み取り可能な記録媒体としては、磁気記録装置、光ディスク、光磁気記録媒体、半導体メモリなどがある。磁気記録装置には、ハードディスク装置(HDD)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープなどがある。光ディスクには、DVD(Digital Versatile Disk)、DVD−RAM(Random Access Memory)、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)、CD−R(Recordable)/RW(ReWritable)などがある。光磁気記録媒体には、MO(Magneto-Optical disk)などがある。
【0079】
プログラムを流通させる場合には、たとえば、そのプログラムが記録されたDVD、CD−ROMなどの可搬型記録媒体が販売される。また、プログラムをサーバコンピュータの記憶装置に格納しておき、ネットワークを介して、サーバコンピュータから他のコンピュータにそのプログラムを転送することもできる。
【0080】
プログラムを実行するコンピュータは、たとえば、可搬型記録媒体に記録されたプログラムもしくはサーバコンピュータから転送されたプログラムを、自己の記憶装置に格納する。そして、コンピュータは、自己の記憶装置からプログラムを読み取り、プログラムに従った処理を実行する。なお、コンピュータは、可搬型記録媒体から直接プログラムを読み取り、そのプログラムに従った処理を実行することもできる。また、コンピュータは、サーバコンピュータからプログラムが転送される毎に、逐次、受け取ったプログラムに従った処理を実行することもできる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、既存のイオン分布を特定し、次のイオン注入によって生じるイオン分布を算出し、既存のイオン分布と次のイオン注入によって生じるイオン分布との差分を求め、この差分に基づいて求められるドーズ量に応じてイオン分布を計算するようにしたので、チャネリング領域において発生する誤差を少なくすることが可能になる。
【0082】
また、以上説明したように本発明では、コンピュータに、既存のイオン分布を特定させ、次のイオン注入によって生じるイオン分布を算出させ、既存のイオン分布と次のイオン注入によって生じるイオン分布との差分を求めさせ、この差分に基づいて求められるドーズ量に応じてイオン分布を計算させるようにしたので、イオン分布を求める際に、チャネリング領域において発生する誤差を少なくすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の動作原理を説明するための原理図である。
【図2】本発明の実施の形態の構成例を示す図である。
【図3】本発明の計算方法の原理を説明するための図である。
【図4】ドーズ量とチャネルドーズ量との関係を示す図である。
【図5】本発明の計算方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】従来の計算方法の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の計算方法と、従来の計算方法によって得られたイオン分布を示す図である。
【図8】本発明の計算方法と、従来の計算方法によって得られたゲート長と閾値との関係を示す図である。
【図9】イオンの注入の様子を示す図である。
【図10】イオン分布のドーズ量との関係を示す図である。
【符号の説明】
30 イオン分布特定ステップ
31 イオン分布計算ステップ
32 差分計算ステップ
33 イオン分布計算ステップ
50 コンピュータ
50a CPU
50b ROM
50c RAM
50d HDD
50e GC
50f I/F
50g バス
51 表示装置
52 入力装置

Claims (8)

  1. 表面に突部を設けた結晶性を有する部材の当該突部を含む領域に対して行うイオン注入の全ドーズ量を、複数回に分けて、当該部材表面に対して異なる複数方向からイオン注入を行うときの、当該部材内部のイオン分布を計算するイオン分布計算方法において、
    前記部材にイオン注入を行う際のドーズ量と、前記部材へのイオン注入によって前記部材内部に形成されアモルファス領域と当該アモルファス領域よりも注入方向奥に位置するチャネリング領域のうちの、当該チャネリング領域のドーズ量との関係を予め求めるステップと、
    計算された、第i回目(iは自然数)のイオン注入によって生じる第iイオン分布を取得するステップと、
    前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量との第1の差分を、前記関係から求めると共に、前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量との第2の差分を求め、前記第1,第2の差分を用いて、第i+1回目のイオン注入によって追加されるイオンの濃度分布を示す差分ドーズを計算するステップと、
    前記差分ドーズを、前記第iイオン分布に加算することによって第i+1回目のイオン注入によって生じる第i+1イオン分布を計算するステップと、
    を有することを特徴とするイオン分布計算方法。
  2. 前記複数回のイオン注入は、全ドーズ量をn回(n≧i+1)に均等に分割して注入することを特徴とする請求項1記載のイオン分布計算方法。
  3. 前記複数回のイオン注入は、全ドーズ量を任意のドーズ量でn回(n≧i+1)に分割して注入することを特徴とする請求項1又は2記載のイオン分布計算方法。
  4. 前記複数回のイオン注入は、各回で異なる種類のイオンを注入することを特徴とする請求項1、2又は3記載のイオン分布計算方法。
  5. 前記第iイオン分布を計算するステップは、イオンを注入する注入パスに沿って前記第iイオン分布を計算し、
    前記第i+1イオン分布を計算するステップは、前記注入パスに沿って前記第i+1イオン分布を計算する、
    ことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のイオン分布計算方法。
  6. 前記第iイオン分布及び前記第i+1イオン分布にはいずれも、アモルファス領域と、チャネリング領域とのそれぞれについてのイオンの分布が含まれることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のイオン分布計算方法。
  7. 前記結晶性を有する部材は、半導体基板であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のイオン分布計算方法。
  8. 表面に突部を設けた結晶性を有する部材の当該突部を含む領域に対して行うイオン注入の全ドーズ量を、複数回に分けて、当該部材表面に対して異なる複数方向からイオン注入を行うときの、当該部材内部のイオン分布をコンピュータに計算させるコンピュータ読み取り可能なプログラムにおいて、
    コンピュータを、
    予め求められた、前記部材にイオン注入を行う際のドーズ量と、前記部材へのイオン注入によって前記部材内部に形成されるアモルファス領域と当該アモルファス領域よりも注入方向奥に位置するチャネリング領域のうちの、当該チャネリング領域のドーズ量との関係を取得する手段、
    第i回目(iは自然数)のイオン注入によって生じる第iイオン分布を計算する手段、
    記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるチャネリング領域のドーズ量との第1の差分を、前記関係から求めると共に、前記部材への第i+1回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量と、前記部材への第i回目のイオン注入によって得られるアモルファス領域のドーズ量との第2の差分を求め、前記第1,第2の差分を用いて、第i+1回目のイオン注入によって追加されるイオンの濃度分布を示す差分ドーズを計算する手段、
    前記差分ドーズを、前記第iイオン分布に加算することによって第i+1回目のイオン注入によって生じる第i+1イオン分布を計算する手段、
    として機能させるコンピュータ読み取り可能なプログラム。
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