JP4839427B2 - 心疾患診断システム - Google Patents
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Description
このため、一般医であっても、専門医と同程度の心疾患に対応する能力レベルを習得しておく必要が生じている。
しかしながら、一般医が、上記専門医と同程度の能力レベルに到達することは極めて容易ならざることであり、一般医の行う心疾患に対応する能力レベルを専門医の能力レベルまで高めるための心疾患診断システムの開発が望まれている。
しかしながら、ガイトンによる基本的循環平衡理論では、肺・体循環の間での血液の移動が考慮されておらず、予後を左右する左心房圧(肺動脈楔入圧)の予測が不可能であった。このため、正確な治療を行うことができない問題点を有していた。
このため、上記する如き血行動態異常の数値が計測されたとしても、循環システム内のどこに異常があるのかについての診断は専門医各自の推測で行われており、明確な基準がないのが現状であった。
請求項2記載の発明は、前記第1算出手段31が、前記入力手段2から入力される心拍出量値と、左心房圧値及び/又は右心房圧値から、(数1)及び/又は(数2)を利用して、前記左心機能値及び/又は右心機能値を算出し、前記第2算出手段32が、前記入力手段2から入力される心拍出量値と、左心房圧値及び右心房圧値から(数3)を利用して、前記有効循環血液量値を算出し、前記第3算出手段33が、前記入力手段2から入力される心拍出量値、右心房圧値と血圧値から(数4)を利用して、前記血管抵抗値を算出し、前記第2算出手段32は、前記(数3)が有する定数値F及びGを、前記患者の体重値によって変化させることを特徴とする。
請求項2記載の発明によって、多種多様な患者に応じて算出される心機能値を補正して算出することができる。また、算出される心機能値を、患者に応じて補正することができるのでより正確な患者の心機能を算出することができる。
図1は、本発明に係る心疾患診断システムの概略構成図である。図2は、心臓の概略図を示しており、本発明に係る心疾患診断システム(1)は、この図2に示される心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値と、血圧値(図示せず)を利用する。
本発明に係る心疾患診断システム(1)を利用することにより、血行動態の異常(心拍出量の低下(末梢循環不全)、左心房圧の増加(肺うっ血)や血圧上昇や低下)の原因が、左心機能あるいは右心機能にあるのか、有効循環血液量の異常にあるのか、血管抵抗にあるのかについて診断することができる。
本発明に係る心疾患診断システム(1)は、入力手段(2)と、算出手段(3)と表示手段(4)を備えてなる。
この入力手段(2)は、算出手段(3)に数値データを入力することができれば特に限定されるものではなく、実際に計測された数値を、本心疾患診断システム(1)を使用する使用者が入力するキーボード等の入力装置を採用することもできるし、患者の血行動態を計測して、直接的に算出手段(3)へ入力を行う計測装置を採用することできる。
この入力手段(2)が入力する血行動態の数値データは血圧値、心拍出量値、右心房圧値と左心房圧値であるが、夫々従来の計測装置を利用することができる。このような計測装置は、特に限定されるものではないが、血圧値は末梢動脈(例えば、橈骨動脈)内にカテーテルを留置して計測することができ、心拍出量値、左心房圧値と右心房圧値はスワンガンツ・カテーテルを利用して計測することができる。また心拍出量値は動脈血圧波形の拡張期時定数から計測することもできる。
このため、左心房圧値は、肺動脈圧の拡張期圧値から連続推定することによって左心房圧値を連続的に推定する方法を採用することによって、連続的な数値として利用する。
この左心房圧値は、肺動脈圧の拡張期圧値と線形関係を有していることが解っているので、複数個体の平均的相関関係に基づき肺動脈拡張期圧から左心房圧値を算出することができる。尚、この肺動脈圧の拡張期圧値を利用して左心房圧値を算出する場合、心拍数の変化に従って、肺動脈圧の拡張期圧値と左心房圧値の相関関係(線形関係)が変化するので、複数個体における平均的相関関係を心拍数で補正することができるようにしておくことが好ましい。
また、心拍出量値は、末梢の血圧波形の拡張期時定数から推定する方法を採用することによって、連続的な数値として利用する。
この心拍出量値は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、末梢の血圧波形の拡張期時定数を利用して算出することができる。
この式(数5)中のA及びBは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される左心機能値を補正することができる。
この場合も、第1算出手段(31)には、(数7)を変換した(数8)を用意しておき、入力手段(2)から入力される数値から右心機能値を算出するように設定しておくことが好ましい。
尚、この(数7)及び(数8)の式中のC及びDは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される右心機能値を補正することができる。
このように、「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値を3軸とする3次元座標で表現することにより、心拍出量の変化を表示する心拍出量曲線を表示することができる。この心拍出量曲線を表示することにより、患者の左心機能と右心機能を統合的に目視することができるようになり、極めて容易に診断を行うことができる。
尚、図3には、正常な場合の心拍出量曲線(a)と障害を受けた心臓の心拍出量曲線(b)が示されており、(a)の心拍出量曲線よりも(b)の心拍出量曲線の方が、左右の心機能を統合した機能が低いことを容易に把握することができる。このように、一空間内に正常心拍出量曲線と測定心拍出量曲線を指示することによって容易に診断を行うこともできる。
この第2算出手段(32)は、心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値から、有効循環血液量値を算出する。
この第2算出手段(32)が有効循環血液量値を算出する方法は、入力手段(2)により入力される心拍出量値、左心房圧値と右心房圧値を利用して、下記(数9)にこれらの数値を代入することにより、有効循環血液量値を算出することができる。
この式(数9)中のE、F及びGは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される有効循環血液量値を補正することができる。
この平面は、「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値の3変数と、定数(E、FとG)から形成されている。この平面の傾きは異なる個体間、または同一の個体内で一定とみなしても差し支えないことがわかっている。
したがって、この静脈還流平面は、傾きが一定であるので、算出される有効循環血液量値によって、平面の高さが決定されることになる。
このように、「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値を3軸とする3次元座標で表現することにより、有効循環血液量を静脈還流平面として表示することができ、患者の有効循環血液量(静脈還流平面)を目視することができるようになり、極めて容易に診断を行うことができる。
尚、図4には、正常な場合の静脈還流平面(c)と有効循環血液量が増加した静脈還流平面(d)が示されており、(c)のよりも(d)の静脈還流平面の方が、高さが高くなることが示されている。このように、一空間内に正常静脈還流平面と計測静脈還流平面を指示することによって容易に診断を行うこともできる。
この第3算出手段(33)は、心拍出量値、右心房圧値と血圧値から、血管抵抗値を算出する。
この第3算出手段(33)が血管抵抗値を算出する方法は、入力手段(2)により入力される心拍出量値、右心房圧値と血圧値を利用して、下記(数11)にこれらの数値を代入することにより、血管抵抗値を算出することができる。
この式(数11)中のHは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される血管抵抗値を補正することができる。
図5において、心拍出量曲線(e)と静脈還流平面(f)との交点から個体の「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値が決定される。もしその個体の「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値が異常で、それらを何らかの正常な値に改善させるときには、その正常値に対応する3次元座標内の目標点を規定する。そしてその目標点において心拍出量曲線(e)と静脈還流平面(f)が交差するよう、個体の心拍出量曲線(e)と静脈還流平面(f)を、各々投薬を行い制御する。これにより最終的に「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値を正常な目標値に到達させることが出来る。
この表示手段(4)は、各算出手段(31〜33)で算出される算出数値(心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値)を表示する。本発明に係る心疾患診断システム(1)は、上記する如く、入力数値を患者から連続的に計測することが可能であるので、各算出手段(31〜33)によって連続的に算出数値を算出することができ、このため、表示手段(4)によって時系列的に連続する折れ線グラフ表示させることが好ましい。
このように、時系列的に連続する折れ線グラフ表示することにより、時系列的な変化を目視して確認することができるので、容易にその変化を把握することができる。
以上が本発明に係る心疾患診断システム(1)の構成である。
図6は、本発明に係る心疾患診断システムを利用する場合のフローチャートを示す。
本発明に係る心疾患診断システム(1)は、上記する如く、実際の使用の場合に於いて定数A乃至Gの設定が必要であるが、ここでは省略する。
まず、患者の血圧値、心拍出量値、右心房圧値と左心房圧値を計測する(S1)。
このとき、患者には、スワンガンツ・カテーテルを装着させることによって、これらの数値を計測するが、他の装置を利用しても構わない。
次に、計測された血圧値、心拍出量値、右心房圧値と左心房圧値は、夫々、入力手段(2)によって算出手段(3)へ入力される。
入力手段(2)によりこれらの計測数値が入力されると、算出手段(3)により左心機能値、右心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値が算出される。具体的には、第1算出手段(31)に心拍出量値と左心房圧値が入力されると、左心機能値が算出される。更に、第1算出手段(31)に心拍出量値と右心房圧値が入力されると、右心機能値が算出される(S2)。
第2算出手段(32)に心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値が入力されると、有効循環血液量値が算出される(S3)。
第3算出手段(33)に心拍出量値、右心房圧値と血圧値が入力されると、血管抵抗値が算出される(S4)。
尚、これらの心拍出量値、左心房圧値、右心房圧値と血圧値が計測される毎に連続して第1乃至第3算出手段(31〜33)が夫々左心機能値、右心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値を算出する。
各算出数値(左心機能値、右心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値)が折れ線グラフとして、表示手段(4)で表示されるので、観察者はそのグラフの移行具合や所定閾値と比することによって患者の心機能、有効循環血液量と血管抵抗を目視して連続的に把握することができるので、確実に患者の診断を行うことができる。
特に、患者の心機能、有効循環血液量と血管抵抗の数値が具体的に表示されるので、患者の病態の原因を確実に把握することができ、極めて適切で且つ迅速に対処することができる。
尚、表示手段(4)に表示される左心機能値、右心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値の各正常値を閾値として表示することによって、算出数値が正常値の範囲内であるか否かを容易に判断することもできる。
この試験例に於いて、本発明に係る心疾患診断システム(1)に使用される数式(上記する(数5)乃至(数11))が正確であるか否かを検討する。
この試験例では、犬7匹を使用してこれらの数式の有効性を検討した。
まず、(数5)及び(数6)で示される定数Aと定数Bについて検討する。これら定数A及び定数Bは、犬の左心機能値算出のための定数を示している。
下記の(表1)で示される如く、定数A及び定数Bは、犬の場合であれば、「A=2.03」、「B=0.80」を使用することができることが確認される。
下記の(表2)で示される如く、定数C及び定数Dは、犬の場合であれば、「C=1.0」、「D=0.88」を使用することができることが確認される。
尚、これら「定数C」と「定数D」は、上記7つの測定値を線形回帰し、実用するに至り補正を行って求めた数値である。
下記の(表3)で示される如く、定数E、定数Fと定数Gは、犬の場合であれば、「E=0.129」、「F=19.61」、「G=3.49」を使用することができることが確認される。
これらの定数を使用した場合に於いて、図7で示される如き犬の心筋梗塞時の血行動態異常の推移が示される場合であれば、図8で示される如き有効循環血液量、左心機能、右心機能と血管抵抗が示されることになる。このように心拍出量、左心房圧(肺動脈楔入圧)、右心房圧と血圧の夫々の数値を経時的に得ることができれば(図7参照)、図8で示す如く、定量的に数値化して連続的に表示することができる。
また、図9には、本発明により算出される心拍出量曲線を示す図であり、(a)は左心房圧と右心房圧を軸に規定する場合、(b)は左心房圧と心拍出量を軸に規定する場合、(c)は右心房圧と心拍出量を軸に規定する場合を示している。
このように、本発明は極めて高い精度で診断を行うことができるとともに、一般医でも容易に目視して診断を行うことができる。
2・・・・入力手段
31・・・第1算出手段
32・・・第2算出手段
33・・・第3算出手段
4・・・・表示手段
Claims (3)
- 患者の心拍出量値と、左心房圧値及び右心房圧値と、血圧値と、を入力する入力手段2と、
入力された前記心拍出量値及び前記左心房圧値及び/又は右心房圧値から、左心機能値及び/又は右心機能値を算出する第1算出手段31と、
入力された前記心拍出量値、前記左心房圧値及び右心房圧値から、有効循環血液量値を算出する第2算出手段32と、
入力された前記心拍出量値、前記右心房圧値と前記血圧値から、血管抵抗値を算出する第3算出手段33と、
前記第1算出手段31で算出される前記左心機能値及び/又は前記右心機能値と、前記第2算出手段32で算出される前記有効循環血液量値と、前記第3算出手段33で算出される前記血管抵抗値とを表示する表示手段4とからなり、
前記入力手段2は、肺動脈圧の拡張期圧値と左心房圧値との線形関係を前記患者の心拍数に基づいて補正し、スワン-ガンツ=カテーテルにより肺動脈圧の拡張期圧値を測定し、当該補正した線形関係と当該測定した肺動脈圧の拡張期圧値とに基づいて、前記左心房圧値を算出して入力し、
前記表示手段4は、正常な心拍出量値からなる正常心拍出量曲線と、正常な有効循環血液量値からなる正常静脈還流平面と、当該正常心拍出量曲線と当該正常静脈還流平面とが交差する交点と、入力された前記心拍出量値からなる心拍出量曲線と、前記第2算出手段32で算出される前記有効循環血液量値からなる静脈還流平面と、当該心拍出量曲線と当該静脈還流平面とが交差する交点とを、右心房圧値と左心房圧値と心拍出量値とからなる3軸により構成される一空間内に表示することを特徴とする心疾患診断システム。 - 前記第1算出手段31が、前記入力手段2から入力される心拍出量値と、左心房圧値及び/又は右心房圧値から、(数1)及び/又は(数2)を利用して、前記左心機能値及び/又は右心機能値を算出し、
前記第2算出手段32が、前記入力手段2から入力される心拍出量値と、左心房圧値及び右心房圧値から(数3)を利用して、前記有効循環血液量値を算出し、
前記第3算出手段33が、前記入力手段2から入力される心拍出量値、右心房圧値と血圧値から(数4)を利用して、前記血管抵抗値を算出し、
前記第2算出手段32は、前記(数3)が有する定数値F及びGを、前記患者の体重値によって変化させることを特徴とする請求項1記載の心疾患診断システム。
- 前記表示手段4が、前記各算出手段31、32、33から算出される各数値を時系列的に連続して表示することを特徴とする請求項1又は2記載の心疾患診断システム。
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