JP4892667B2 - 心疾患治療システム - Google Patents
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Description
このため、一般医であっても、専門医と同程度の心疾患に対応する能力レベルを習得しておく必要が生じている。
しかしながら、一般医が、上記専門医と同程度の能力レベルに到達することは極めて容易ならざることであった。このため、心疾患を治療するために、一般医に専門医と同程度の治療能力を提供することのできる心疾患治療システムの開発が必要となってきている。
しかしながら、特許文献1に記載されるようなシステムは、制御目標が薬剤の血中レベルあるいは、薬剤自体の患者体内における薬理動態であり、患者の血行動態指標、あるいは各臓器システムの改善を目標としておらず、また適用対象は基本的に麻酔下の患者であり、上記する如き問題を解決するに至らなかった。
しかしながら、ガイトンによる基本的循環平衡理論では、肺・体循環の間での血液の移動が考慮されておらず、予後を左右する左心房圧(肺動脈楔入圧)の予測が不可能であった。このため、正確な治療を行うことができない問題点を有していた。
このため、上記する如き血行動態異常の数値が計測されたとしても、その異常の原因がどの部位に起因するのか診断することができず、治療方法の決定は、上記専門医の経験にのみ依存しているのが現状であった。
請求項2記載の発明は、前記第1算出手段31が、前記入力手段2から入力される心拍出量値と、左心房圧値及び/又は右心房圧値から、(数1)及び/又は(数2)を利用して、前記左心機能値及び/又は右心機能値を算出することを特徴とする請求項1記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項4記載の発明は、前記第1目標決定手段71が、目標心拍出量値と、目標左心房圧値及び/又は目標右心房圧値から、(数3)及び/又は(数4)を利用して、前記目標左心機能値及び/又は目標右心機能値を算出することを特徴とする請求項3記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項6記載の発明は、前記第2算出手段32が、前記入力手段2から入力される心拍出量値と、左心房圧値及び右心房圧値から(数5)を利用して、前記有効循環血液量値を算出することを特徴とする請求項5記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項7記載の発明は、前記心疾患治療システムが、更に、目標心拍出量値、目標左心房圧値及び目標右心房圧値から、前記目標有効循環血液量値を算出する第2目標決定手段72を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項8記載の発明は、前記第2目標決定手段72が、目標心拍出量値、目標左心房圧値及び目標右心房圧値から、(数6)を利用して、前記目標有効循環血液量値を算出することを特徴とする請求項7記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項10記載の発明は、前記第3算出手段33が、前記入力手段2から入力される心拍出量値、右心房圧値と血圧値から(数7)を利用して、前記血管抵抗値を算出することを特徴とする請求項9記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項12記載の発明は、前記第3目標決定手段73が、目標心拍出量値、目標右心房圧値及び目標血圧値から、(数8)を利用して、前記目標血管抵抗値を算出することを特徴とする請求項11記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項14記載の発明は、前記各算出手段31、32、33から算出される各数値を時系列的に連続して表示する表示手段6が備えられてなることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の心疾患治療システムを提供する。
請求項15記載の発明は、前記心拍出量値が、スワン-ガンツ=カテーテルにより計測される又は動脈血圧波形の拡張期時定数から算出されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の心疾患治療システムを提供する。
これらの発明を提供することによって、上記課題を悉く解決する。
このように、左右の心機能値と目標心機能値を比較し、その比較結果に応じて投薬が行われるので、確実に且つ正確に患者の心機能の異常状態を正常状態へと治療することができる。
請求項2記載の発明によって、(数1)及び(数2)を利用することにより、より詳細に且つ明確に心機能の算出を行うことができるとともに、A乃至Dの定数を適宜に変更することによって、多種多様な患者に応じて算出される心機能値を補正して算出することができる心疾患治療システムを提供することができる。
このように算出される心機能値を、患者に応じて補正することができるのでより正確な患者の心機能を算出することができ、より高い精度の治療を施すことができる。
請求項3記載の発明によって、目標心拍出量値、目標左心房圧値及び/又は目標右心房圧値を利用して、目標心機能値である目標左心機能値及び/又は目標右心機能値を容易に算出することができる心疾患治療システムを提供することができる。
請求項4記載の発明によって、(数3)及び(数4)を利用することにより、より的確に目標心機能値の算出を行うことができる心疾患治療システムを提供することができる。
このように、算出される有効循環血液量値と目標有効循環血液量値を比較して、その比較結果に応じて投薬が行われるので、確実に且つ正確に患者の有効循環血液量の異常状態を正常状態へと治療することができる。
請求項6記載の発明によって、(数5)を利用することにより、より詳細に且つ明確に有効循環血液量の算出を行うことができるとともに、E乃至Gの定数を適宜に変更することによって、多種多様な患者に応じて算出される有効循環血液量を補正して算出することができる心疾患治療システムを提供することができる。
このように算出される有効循環血液量値を、患者に応じて補正することができるのでより正確な患者の有効循環血液量を算出することができ、より高い精度の治療を施すことができる。
請求項7記載の発明によって、目標心拍出量値、目標左心房圧値及び目標右心房圧値から、容易に目標有効循環血液量値を算出することができる心疾患治療システムを提供することができる。
請求項8記載の発明によって、(数6)を利用することにより、より的確に目標有効循環血液量値の算出を行うことができる心疾患治療システムを提供することができる。
このように、算出される血管抵抗値と目標血管抵抗値を比較して、その比較結果に応じて投薬が行われるので、確実に且つ正確に患者の血管抵抗値の異常状態を正常状態へと治療することができる。
請求項10記載の発明によって、(数7)を利用することにより、より詳細に且つ明確に血管抵抗値の算出を行うことができる心疾患治療システムを提供する。この(数7)の定数Hは、血管抵抗非線形性を補正する定数であり、この定数を調整することで、その非線形性が強い個体においてもシステムの正常な作動が保ち得る。
請求項11記載の発明によって、目標心拍出量値、目標右心房圧値及び目標血圧値から、容易に目標血管抵抗値を算出することができる心疾患治療システムを提供することができる。
請求項12記載の発明によって、(数8)を利用することにより、より的確に目標血管抵抗値の算出を行うことができる心疾患治療システムを提供することができる。
このように、患者の左心機能及び/又は右心機能、有効循環血液量と血管抵抗の異常状態を正常状態へと効果的に投薬治療を行うことができる。
請求項14記載の発明によって、左心機能及び/又は右心機能、有効循環血液量と血管抵抗の各数値を時系列的に連続して表示することができるので、時系列的な変化を見逃すことなく確実に患者を診断することができるとともに、投薬治療による状態の推移を表示することができる心疾患治療システムを提供することができる。
請求項15及び16記載の発明によって、心拍出量が、スワン-ガンツ=カテーテルにより計測される又は動脈血圧波形の拡張期時定数から算出され、左心房圧値がカテーテルにより直接計測される又はスワン-ガンツ=カテーテルによる肺動脈楔入圧又は肺動脈圧の拡張期圧値から連続推定することにより算出されているので、極めて精度の高い心疾患治療システムを提供することができる。
図1は、本発明に係る心疾患治療システムの概略構成図である。図2は、心臓の概略図を示しており、本発明に係る心疾患治療システム(1)は、この図2に示される心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値と、血圧値(図示せず)を利用する。
本発明に係る心疾患治療システム(1)を利用することにより、血行動態の異常(心拍出量の低下(末梢循環不全)、左心房圧の増加(肺うっ血)や血圧上昇や低下)から循環システム内のどこに異常があるのかを診断して、適切な治療薬の投与を行うことができる。
本発明に係る心疾患治療システム(1)は、入力手段(2)と、算出手段(3)と、比較手段(4)と、投薬手段(5)と、表示手段(6)と目標決定手段(7)を備えている。
この入力手段(2)は、算出手段(3)に数値データを入力することができれば特に限定されるものではなく、実際に計測された数値を、本心疾患治療システム(1)を使用する使用者が入力する際のキーボード等の入力装置を採用することもできるし、患者の血行動態を計測して、直接的に算出手段(3)へ入力を行う計測装置を採用することもできる。尚、この心疾患治療システム(1)を常時患者に接続して、心疾患の異常を診断し、投薬治療を施す場合には、患者の血行動態を計測して直接的に算出手段(3)へ入力を行うように設定することが好ましい。
このため、左心房圧値は、肺動脈圧の拡張期圧値から連続推定することによって左心房圧値を連続的に推定する方法を採用することによって、連続的な数値として利用する。
この左心房圧値は、肺動脈圧の拡張期圧値と線形関係を有していることが解っているので、複数個体の平均的相関関係に基づき肺動脈拡張期圧から左心房圧値を算出することができる。尚、この肺動脈圧の拡張期圧値を利用して左心房圧値を算出する場合、心拍数の変化に従って、肺動脈圧の拡張期圧値と左心房圧値の相関関係(線形関係)が変化するので、複数個体における平均的相関関係を心拍数で補正することができるようにしておくことが好ましい。
また、心拍出量値は、末梢の血圧波形の拡張期時定数から推定する方法を採用することによって、連続的な数値として利用する。
この心拍出量値は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、末梢の血圧波形の拡張期時定数を利用して算出することができる。
この目標決定手段(7)は、一つの演算ユニットとして第1乃至第3目標決定手段(71〜73)で行う演算を行うように設定されてもよいし、第1乃至第3目標決定手段(71〜73)の演算を夫々行う三つの演算ユニットから構成されてもよい。
この第1目標決定手段(71)は、上記する目標左心機能値と目標右心機能値を夫々算出することができるように設定してもよいし、目標左心機能値又は目標右心機能値のいずれかを算出するように設定してもよい。
この式(数9)中のA及びBは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される目標左心機能値を補正することができる。
尚、この(数10)の式中のC及びDは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される目標右心機能値を補正することができる。
この第2目標決定手段(72)は、目標心拍出量値、目標左心房圧値及び目標右心房圧値から、目標有効循環血液量値を算出する。
この第2目標決定手段(72)が目標有効循環血液量値を算出する方法は、目標心拍出量値、目標左心房圧値と目標右心房圧値を利用して、下記(数11)にこれらの数値を代入することにより、目標有効循環血液量値を算出することができる。
この式(数11)中のE、F及びGは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで、算出される目標有効循環血液量値を補正することができる。
この第3目標決定手段(73)は、目標心拍出量値、目標右心房圧値と目標血圧値から、目標血管抵抗値を算出する。
この第3目標決定手段(73)が目標血管抵抗値を算出する方法は、目標心拍出量値、目標右心房圧値と目標血圧値を利用して、下記(数12)にこれらの数値を代入することにより、目標血管抵抗値を算出することができる。この(数12)の定数Hは、血管抵抗非線形性を補正する定数であり、患者に応じて調整することで、その非線形性が強い個体においてもシステムの正常な作動が保ち得る。
この式(数13)中のA及びBは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される左心機能値を補正することができる。
この場合も、第1算出手段(31)には、(数15)を変換した(数16)を用意しておき、入力手段(2)から入力される数値から右心機能値を算出するように設定しておくことが好ましい。
尚、この(数15)及び(数16)の式中のC及びDは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで算出される右心機能値を補正することができる。
このように、「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値を3軸とする3次元座標で表現することにより、心拍出量の変化を表示する心拍出量曲線を表示することができる。この心拍出量曲線を表示することにより、患者の左心機能と右心機能を統合した心機能を目視することができるようになり、極めて容易に診断を行うことができる。
尚、図3には、正常な場合の心拍出量曲線(a)と障害を受けた心臓の心拍出量曲線(b)が示されており、(a)の心拍出量曲線よりも(b)の心拍出量曲線の方が、左心機能と右心機能を統合した心機能が低いことを容易に把握することができる。このように、一空間内に正常心拍出量曲線と測定心拍出量曲線を指示することによって容易に診断を行うことができる。
この第2算出手段(32)は、心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値から、有効循環血液量値を算出する。
この第2算出手段(32)が有効循環血液量値を算出する方法は、入力手段(2)により入力される心拍出量値、左心房圧値と右心房圧値を利用して、下記(数17)にこれらの数値を代入することにより、有効循環血液量値を算出することができる。
この式(数17)中のE、F及びGは定数値(定数)であり、患者に応じて適宜変更することのできる数値である。この定数は、予め使用者によって設定されている数値であり、患者に応じて変更することができるので、患者に応じて調整することで、算出される有効循環血液量値を補正することができる。
この平面は、「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値の3変数と、定数(E、FとG)から形成されている。この平面の傾きは異なる個体間、または同一の個体内で一定とみなしても差し支えないことがわかっている。またある患者群では、その特性にあわせ傾きを補正することもできる。
したがって、この静脈還流平面は、傾きが一定であるので、算出される有効循環血液量値によって、平面の高さが決定されることになる。
このように、「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値を3軸とする3次元座標で表現することにより、有効循環血液量を静脈還流平面として表示することができ、患者の有効循環血液量(静脈還流平面)を目視することができるようになり、極めて容易に診断を行うことができる。
尚、図4には、正常な場合の静脈還流平面(c)と有効循環血液量が増加した静脈還流平面(d)が示されており、(c)よりも(d)の静脈還流平面の方が、平行移動し高さが高くなることが示されている。このように、一空間内に正常静脈還流平面と測定静脈還流平面を指示することによって容易に診断を行うことができる。
この第3算出手段(33)は、心拍出量値、右心房圧値と血圧値から、血管抵抗値を算出する。
この第3算出手段(33)が血管抵抗値を算出する方法は、入力手段(2)により入力される心拍出量値、右心房圧値と血圧値を利用して、下記(数19)にこれらの数値を代入することにより、血管抵抗値を算出することができる。この(数19)の定数Hは、血管抵抗非線形性を補正する定数であり、患者に応じて調整することで、その非線形性が強い個体においてもシステムの正常な作動が保ちうる。
図5において、心拍出量曲線(e)と静脈還流平面(f)との交点から個体の「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値が決定される。もしその個体の「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値が異常で、それらを何らかの目標値に改善させるときには、その目標値に対応する3次元座標内の目標点を規定する。そしてその目標点において心拍出量曲線(e)と静脈還流平面(f)が交差するよう、個体の心拍出量曲線(e)つまり左右心機能値、静脈還流平面(f)つまり有効循環血液量を、各々投薬を行い制御する。これにより最終的に「心拍出量」値、「左心房圧」値と「右心房圧」値を正常な目標値に到達させることが出来る。
第1比較手段(41)は、第1算出手段(31)に於いて算出された左心機能値及び/又は右心機能値と、第1目標決定手段(71)に於いて算出された目標左心機能値及び/又は目標右心機能値を比較する。より具体的には、第1算出手段(31)で左心機能値が算出され、この算出された左心機能値と第1目標決定手段(71)に於いて算出された目標左心機能値の比較が行われ、その比較結果に応じて後述する投薬手段(5)へ比較結果の信号が送信されるように設置してもよい。
この第1比較手段(41)が行う比較は、目標左心機能値に対して、算出された左心機能値が、「大きい」、「等しい」と「小さい」の3種類の比較を行うことができ、これら3つの比較結果の中から1つを後述する投薬手段(第1投薬手段(51))へ比較結果の信号として送信することになる。また「大きい」、「等しい」と「小さい」の3種類の比較のみならず、目標左心機能値に対する算出された左心機能値の偏差を定量化した信号を送信することも可能である。
尚、この目標左心機能値は、上記する如く、使用者によって適宜設定することのできる初期設定値であってもよい。また、上記説明は、左心機能値を例示して説明を行ったが、右心機能値も同様に設定されることができるが、右心機能値と左心機能値は同一の推移(挙動)を示すので、どちらか一方を使用することもできる。
この第2比較手段(42)が行う比較は、目標有効循環血液量値に対して、算出された有効循環血液量値が、「大きい」、「等しい」と「小さい」の3種類の比較を行うことができ、これら3つの比較結果の中から1つを後述する投薬手段(第2投薬手段(52))へ比較結果の信号として送信することになる。また「大きい」、「等しい」と「小さい」の3種類の比較のみならず、目標有効循環血液量値に対する算出された有効循環血液量値の偏差を定量化した信号を送信することも可能である。
尚、この目標有効循環血液量値は、上記の如く、使用者によって適宜設定することのできる初期設定値であってもよい。
この第3比較手段(43)が行う比較は、目標血管抵抗値に対して、算出された血管抵抗値が、「大きい」、「等しい」と「小さい」の3種類の比較を行うことができ、これら3つの比較結果の中から1つの比較結果を後述する投薬手段(第3投薬手段(53))へ比較結果の信号として送信することになる。また「大きい」、「等しい」と「小さい」の3種類の比較のみならず、目標血管抵抗値に対する算出された血管抵抗値の偏差を定量化した信号を送信することも可能である。
尚、この目標血管抵抗値は、上記の如く、使用者によって適宜設定することのできる初期設定値であってもよい。
この投薬手段(5)は、第1投薬手段(51)と、第2投薬手段(52)と第3投薬手段(53)を有してなる。第1乃至第3投薬手段(51〜53)は、各手段とも後述する投薬を患者に投薬することができるように設定されるとともに、比較手段(4)から送信される比較結果の信号に応じて、患者への投薬の制御(投薬量の調整)を行うことができる。
この投薬手段(5)は、例えば、複数の自動注入ポンプに接続される多薬剤同時注入用多孔カテーテルを採用することができる。この多孔カテーテルを患者の静脈へ接続することにより、患者の静脈内へ投与するようにする。
この第1投薬手段(51)が行う投薬は、第1比較手段(41)の比較結果の信号にて行われることになるため、心機能の異常が認められる場合に投薬が開始されることになる。
具体的には、第1投薬手段(51)が、第1比較手段(41)から「小さい」という比較結果(算出された左心機能値が目標心機能値よりも低い場合)を受け取った場合には、心機能が異常状態であるとされ、この第1投薬手段(51)は心機能値を上げるための投薬を開始することになる。この場合に使用される薬剤は、強心剤であり、例えば、ドブタミンやドーパミン等が投与されることになる。
また、第1投薬手段(51)が、第1比較手段(41)から「等しい」という比較結果(算出された左心機能値と目標心機能値が等しい場合)を受け取った場合には、心機能が正常状態であるとされ、この第1投薬手段(51)は投薬量を増加させない又は投薬を行わない又は投薬を停止することになる。
またさらに、第1投薬手段(51)が、第1比較手段(41)から「大きい」という比較結果(算出された左心機能値が目標心機能値よりも高い場合)を受け取った場合には、心機能が目標よりさらに良好な状態であるとされ、この第1投薬手段(51)は強心剤の投薬量を減少させる又は、投薬を行わない又は、投薬を停止することになる。
この第2投薬手段(52)が行う投薬は、第2比較手段(42)の比較結果の信号にて行われることになるため、有効循環血液量の異常が認められる場合に投薬が開始されることになる。
具体的には、第2投薬手段(52)が、第2比較手段(42)から「大きい」という比較結果(算出された有効循環血液量値が目標有効循環血液量値よりも高い場合)を受け取った場合には、有効循環血液量が異常状態であるとされ、この第2投薬手段(52)は有効循環血液量値を下げるための投薬を開始することになる。この場合に使用される投薬は、利尿剤、例えばフロセミドが投与されることになる。
また、第2投薬手段(52)が、第2比較手段(42)から「等しい」という比較結果(算出された有効循環血液量値と目標有効循環血液量値が等しい場合)を受け取った場合には、有効循環血液量が正常状態であるとされ、この第2投薬手段(52)は投薬を行わない又は投薬を停止することになる。
またさらに、第2投薬手段(52)が、第2比較手段(42)から「小さい」という比較結果(算出された有効循環血液量値が目標有効循環血液量値よりも低い場合)を受け取った場合には、有効循環血液量が異常状態であるとされ、この第2投薬手段(52)は有効循環血液量値を上げるための投薬が開始されることになる。この場合に使用される投薬は、有効循環血液量を増加させる輸液製剤が投薬され、例えば、低分子デキストランやアルブミン製剤等が投与されることになる。
この第3投薬手段(53)が行う投薬は、第3比較手段(43)の比較結果の信号にて行われることになるため、血管抵抗の異常が認められる場合に投薬が開始されることになる。
具体的には、第3投薬手段(53)が、第3比較手段(43)から「大きい」という比較結果(算出された血管抵抗値が目標血管抵抗値よりも高い場合)を受け取った場合には、血管抵抗が異常状態であるとされ、この第3投薬手段(53)は血管抵抗値を下げるための投薬を開始することになる。この場合に使用される投薬は、血管拡張剤が投薬され、例えば、ニトロプルシドやニトログリセリン、フェントラミン等が投与されることになる。またすでに血管収縮剤、例えばノルエピネフリン等が投与されている場合はそれらが減量されることになる。
また、第3投薬手段(53)が、第3比較手段(43)から「等しい」という比較結果(算出された血管抵抗値と目標血管抵抗値が等しい場合)を受け取った場合には、血管抵抗が正常状態であるとされ、この第3投薬手段(53)は投薬を行わない又は投薬を停止することになる。
またさらに、第3投薬手段(53)が、第3比較手段(43)から「小さい」という比較結果(算出された血管抵抗値が目標血管抵抗値よりも低い場合)を受け取った場合には、血管抵抗が異常状態であるとされ、この第3投薬手段(53)は血管抵抗値を上げるための投薬が開始されることになる。この場合に使用される投薬は、血管収縮剤が投薬され、例えば、ノルエピネフリン等が投与されることになる。またすでに血管拡張剤、例えばニトロプルシドやニトログリセリン、フェントラミン等が投与されている場合はそれらが減量されることになる。
このように、PI制御又はPID制御により薬剤の投与量を制御することにより、極めて精度良く投薬を行うことができるようになる。
また薬剤に対する応答が極めて特異な患者においては、適応制御を採用することにより薬剤の投薬量の調整を好適に実行することができる。
この表示手段(6)は、各算出手段(31〜33)で算出される算出数値(心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値)を表示するが、本発明に係る心疾患治療システム(1)は、上記する如く、入力数値を患者から連続的に計測することが可能であるので、各算出手段(31〜33)によって連続的に算出数値を算出することができる。このため、時系列的に連続する折れ線グラフ表示させることが好ましい。
このように、時系列的に連続する折れ線グラフ表示することにより、時系列的な変化を目視して確認することができるので、容易にその変化を把握することができる。
また、第1乃至第3投薬手段(51〜53)に於いて投薬される薬剤の投与量を表示するように設定されることが好ましい。薬剤の投与量を併せて表示手段(6)により表示させることによって、使用者は効果的に患者の心機能、有効循環血液量、血管抵抗の変化(推移)を薬剤の投与量と併せて観察することができるからである。
以上が本発明に係る心疾患治療システム(1)の構成である。
図6は、本発明に係る心疾患治療システムを利用する場合のフローチャートを示す。
本発明に係る心疾患治療システム(1)は、上記する如く、実際の使用の場合に於いて定数A乃至Gの設定が必要であるが、ここでは省略する。また、目標決定手段(7)の第1乃至第3目標決定手段(71〜73)にて設定される目標心拍出量値、目標右心房圧値、目標左心房圧値と目標血圧値は、使用者により所定値に設定されているとする。
このとき、使用者により設定される目標心拍出量値、目標右心房圧値、目標左心房圧値と目標血圧値から目標決定手段(7)により目標左心機能値、目標右心機能値、目標有効循環血液量値と目標血管抵抗値が算出される。
具体的には、第1目標決定手段(71)に目標心拍出量値と目標左心房圧値が入力されると、目標左心機能値が算出される。更に、第1目標決定手段(71)に目標心拍出量値と目標右心房圧値が入力されると、目標右心機能値が算出される(S01)。
第2目標決定手段(72)に目標心拍出量値、目標左心房圧値及び目標右心房圧値が入力されると、目標有効循環血液量値が算出される(S02)。
第3目標決定手段(73)に目標心拍出量値、目標右心房圧値と目標血圧値が入力されると、目標血管抵抗値が算出される(S03)。
このとき、患者には、スワンガンツ・カテーテルを装着させることによって、これらの数値を計測するが、他の装置を利用しても構わない。
次に、計測された血圧値、心拍出量値、右心房圧値と左心房圧値は、夫々、入力手段(2)によって算出手段(3)へ入力される。
入力手段(2)によりこれらの計測数値が入力されると、算出手段(3)により左心機能値、右心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値が算出される。具体的には、第1算出手段(31)に心拍出量値と左心房圧値が入力されると、左心機能値が算出される。更に、第1算出手段(31)に心拍出量値と右心房圧値が入力されると、右心機能値が算出される(S2)。
第2算出手段(32)に心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値が入力されると、有効循環血液量値が算出される(S3)。
第3算出手段(33)に心拍出量値、右心房圧値と血圧値が入力されると、血管抵抗値が算出される(S4)。
尚、これらの心拍出量値、左心房圧値、右心房圧値と血圧値が計測される毎に連続して第1乃至第3算出手段(31から33)が夫々左心機能値、右心機能値、有効循環血液量値と血管抵抗値を算出する。
このとき、第1比較手段(41)は、算出された左心機能値と目標心機能値との比較結果を第1投薬手段(51)へ送る。
このとき、第2比較手段(42)は、算出された有効循環血液量値と目標有効循環血液量値との比較結果を第2投薬手段(52)へ送る。
このとき、第3比較手段(43)は、算出された血管抵抗値と目標血管抵抗値との比較結果を第3投薬手段(53)へ送る。
このとき、第1比較手段(41)の比較結果が、第1投薬手段(51)により投薬が促される比較結果(算出された心機能値が目標心機能値よりも低い場合)であれば、第1投薬手段(51)は、患者の心機能値を上昇させるために、患者へ強心剤を投与する。
第1投薬手段(51)により投薬が停止又は投薬の必要なしとされる比較結果(算出された心機能値が目標心機能値と等しい場合)であれば、第1投薬手段(51)は投薬を停止又は停止状態を維持する。
第1投薬手段(51)により強心剤投与の投薬が必要なしとされる比較結果(算出された心機能値が目標心機能値よりも高い場合)であれば、第1投薬手段(51)は、強心剤投薬量を減量する又は投薬を停止又は停止状態を維持する。
このとき、第2比較手段(42)の比較結果が、第2投薬手段(52)により投薬が促される比較結果(算出された有効循環血液量値が目標有効循環血液量値よりも低い場合)であれば、第2投薬手段(52)は、患者の有効循環血液量値を上昇させるために、患者へ適切な輸液(低分子デキストランやアルブミン製剤の投与)を行う。
第2投薬手段(52)により投薬が停止又は投薬の必要なしとされる比較結果(算出された有効循環血液量値が目標有効循環血液量値と等しい場合)であれば、第2投薬手段(52)は投薬を停止又は停止状態を維持する。
第2投薬手段(52)により投薬が促される比較結果(算出された有効循環血液量値が目標有効循環血液量値よりも高い場合)であれば、第2投薬手段(52)は、患者の有効循環血液量値を降下させるために、患者へ利尿剤を投与する。
このとき、第3比較手段(43)の比較結果が、第3投薬手段(53)により投薬が促される比較結果(算出された血管抵抗値が目標循血管抵抗値よりも低い場合)であれば、第3投薬手段(53)は、患者の血管抵抗値を上昇させるために、患者へ血管収縮剤を投与する。
第3投薬手段(53)により投薬が停止又は投薬の必要なしとされる比較結果(算出された血管抵抗値が目標血管抵抗値と等しい場合)であれば、第3投薬手段(53)は投薬を停止又は停止状態を維持する。
第3投薬手段(53)により投薬が促される比較結果(算出された血管抵抗値が目標血管抵抗値よりも高い場合)であれば、第3投薬手段(53)は、患者の血管抵抗値を降下させるために、患者へ血管拡張剤を投与する。
尚、上記する如く、第1乃至第3投薬手段(51〜53)は、多段階に調整される投与量により投薬されてもよいし、実時間で薬剤投与量を決定していく制御方法(例えばPI制御、PID制御等)により投与量を制御しても構わない。また薬剤に対する応答が極めて特異な患者においては、適応制御により投与量を制御されても構わない。
このように、表示手段(6)が上記する如き算出値、目標値及び薬剤の投与量を表示することによって、本心疾患治療システム(1)の使用者は、患者の様態を時系列で診断することができるようになる。
この試験例に於いて、本発明に係る心疾患治療システム(1)に使用される数式(上記する(数13)乃至(数18))が正確であるか否かを検討する。
この試験例では、犬7匹を使用してこれらの数式の有効性を検討した。
まず、(数13)及び(数14)で示される定数Aと定数Bについて検討する。これら定数A及び定数Bは、犬の左心機能値を算出するための定数を示している。
下記の(表1)で示される如く、定数A及び定数Bは、犬の場合であれば、「A=2.03」、「B=0.80」を使用することができることが確認される。
下記の(表2)で示される如く、定数C及び定数Dは、犬の場合であれば、「C=1.0」、「D=0.88」を使用することができることが確認される。
尚、これら「定数C」と「定数D」は、上記7つの測定値を線形回帰し、実用するに至り補正を行って求めた数値である。
下記の(表3)で示される如く、定数E、定数Fと定数Gは、犬の場合であれば、「E=0.129」、「F=19.61」、「G=3.49」を使用することができることが確認される。
これらの定数を使用した場合に於いて、本心疾患治療システム(1)を使用した。
図7及び図8は、本発明に係る心疾患治療システムを使用した場合の一実施例を示す。
図7では、血圧、右心房圧、左心房圧及び心拍出量の時間的変化が示されている。この図7で示される如く、治療を開始してから、20分以内に血圧値、右心房圧値、左心房圧値及び心拍出量値が目標値に到達している。尚、この場合の目標値は、「血圧値=90mmHg」、「左心房圧値=10mmHg」及び「心拍出量値=100ml/min/kg」と設定している。
この図8に於いて、治療開始時では、有効循環血液量値が目標有効循環血液量値よりも高い状態にあり、左心機能及び右心機能が目標左心機能及び目標右心機能よりも低い状態にあり、血管抵抗値が目標血管抵抗値よりも高い状態にあり、いずれも目標値からかけ離れた異常状態であった(算出手段(3)により各有効循環血液量値、左心機能値、右心機能値及び血管抵抗値が算出され、比較手段(4)によってその状態(正常状態や異常状態)の判断が行われることになる)。
治療が開始されると、各状態に応じて投薬手段(5)により、各算出数値が各目標値に到達するように投薬が開始される(投薬手段(5)により好適な投与量の投薬が行われる)。上記する工程が繰り返されて、各算出値が目標値に到達している。
このように、本発明に係る心疾患治療システム(1)を使用することにより、患者の心機能値、有効循環血液量値及び血管抵抗値を所望する値へ制御することができるので、心拍出量値、左心房圧値及び血圧値も所望する目標値へと制御することができるようになる。
2・・・・入力手段
31・・・第1算出手段
32・・・第2算出手段
33・・・第3算出手段
41・・・第1比較手段
42・・・第2比較手段
43・・・第3比較手段
51・・・第1投薬手段
52・・・第2投薬手段
53・・・第3投薬手段
6・・・・表示手段
7・・・・目標決定手段
71・・・第1目標決定手段
72・・・第2目標決定手段
73・・・第3目標決定手段
Claims (15)
- 患者の心拍出量値と、左心房圧値及び/又は右心房圧値を入力する入力手段2と、
入力された前記心拍出量値及び前記左心房圧値又は右心房圧値から、左心機能値又は右心機能値を算出する第1算出手段31と、
前記第1算出手段31で算出される左心機能値及び/又は右心機能値と、目標心機能値を比較する第1比較手段41と、
前記第1比較手段41の比較結果に応じて前記患者へ投薬を施す第1投薬手段51とからなる心疾患治療システム。 - 前記心疾患治療システムが、更に、
目標心拍出量値と、目標左心房圧値及び/又は目標右心房圧値から、前記目標心機能値である目標左心機能値及び/又は目標右心機能値を、算出する第1目標決定手段71を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の心疾患治療システム。 - 患者の心拍出量値、左心房圧値及び右心房圧値を入力する入力手段2と、
入力された前記心拍出量値、前記左心房圧値及び右心房圧値から、有効循環血液量値を算出する第2算出手段32と、
前記第2算出手段32で算出される有効循環血液量値と、目標有効循環血液量値を比較する第2比較手段42と、
前記第2比較手段42の比較結果に応じて患者へ投薬を施す第2投薬手段52とからなることを特徴とする心疾患治療システム。 - 前記心疾患治療システムが、更に、
目標心拍出量値、目標左心房圧値及び目標右心房圧値から、前記目標有効循環血液量値を算出する第2目標決定手段72を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の心疾患治療システム。 - 患者の心拍出量値、右心房圧値と血圧値を入力する入力手段2と、
入力された前記心拍出量値、前記右心房圧値と前記血圧値から、血管抵抗値を算出する第3算出手段33と、
前記第3算出手段33で算出される血管抵抗値と、目標血管抵抗値を比較する第3比較手段43と、
前記第3比較手段43の比較結果に応じて患者へ投薬を施す第3投薬手段53とからなる心疾患治療システム。 - 前記心疾患治療システムが、更に、
目標心拍出量値、目標右心房圧値及び目標血圧値から、目標血管抵抗値を算出する第3目標決定手段73を有していることを特徴とする請求項10記載の心疾患治療システム。 - 前記左心房圧値が、カテーテルにより直接計測されている又はスワン-ガンツ=カテーテルによる肺動脈楔入圧又は肺動脈圧の拡張期圧値から連続推定することにより算出されていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の心疾患治療システム。
- 前記各算出手段31、32、33から算出される各数値を時系列的に連続して表示する表示手段6が備えられてなることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載の心疾患治療システム。
- 前記心拍出量値が、スワン-ガンツ=カテーテルにより計測される又は動脈血圧波形の拡張期時定数から算出されていることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載の心疾患治療システム。
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