JP4837638B2 - Mimoアンテナ装置及びそれを備えた無線通信装置 - Google Patents

Mimoアンテナ装置及びそれを備えた無線通信装置 Download PDF

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本発明は、携帯電話機等を用いた移動体通信において通信容量を増大させて高速通信を実現しながら通信品質を良好に保つように制御される無線通信装置のためのアンテナ装置に関し、特にMIMOアンテナ装置及びそれを備えた無線通信装置に関する。
複数のアンテナ素子を用いて複数のチャンネルの無線信号を同時に送受信するMIMO(Multi−Input Multi−Output)技術を採用したアンテナ装置として、例えば特許文献1に開示されたMIMOアンテナ装置がある。
特許文献1のMIMOアンテナ装置を備えた移動通信システムは、その送信側において、通信路符号化器により送信信号を通信路符号化してM個の信号を生成し、これらM個の信号をM個の変調器により変調してM個の複素変調信号(変調シンボル)を生成し、次いで、複素行列演算部によりこれらM個の複素変調信号とM×L個の複素係数から構成される複素行列とを乗算してL個の複素信号を生成し、生成されたL個の複素信号をL個の送信アンテナ素子にて送信する。このとき、複素行列演算部がM個の変調信号に対して異なる複素重みを付与するように行列演算を実行することにより、L個の送信アンテナ素子からそれぞれ送信される無線信号に関してビームフォーミングが達成される。これにより、特許文献1の移動通信システムは、干渉波抑圧のためのビームフォーミングに加えて送信ダイバーシチ効果を得ることを目的としている。また、ダイバーシチ効果により、伝搬チャンネルの環境が動的に変動する場合であっても、変調方式や伝送速度が適切に制御されたデータ伝送方式を提供する。さらに、特許文献1の移動通信システムは、その受信側において、N個の受信アンテナ素子を用いて受信されたN個の受信信号に対して、MIMO復調器によりN×M個の複素係数からなる複素行列を乗算してM個の複素信号(受信シンボル)を生成し、M個の復調器によりM個の複素信号をそれぞれ復調してM個の復調信号を生成し、次いで、通信路復号化器によりM個の復調信号を通信路復号化して受信データとして出力する。このとき、受信側のMIMO復調器において、干渉低減のためにMMSE(Minimum Mean Square Error:最小平均2乗誤差)アルゴリズムを適用することで、雑音や干渉による影響を最小化することが可能になる。
このように、特許文献1の移動通信システムは、送信側では、M個の変調信号に対してM×L個の要素からなる複素行列を乗算してL個の複素信号を生成し、これらをL個の送信アンテナ素子から送信することで、伝送路多重化による高速データ通信を可能にし、また受信側では、MIMO復調器での干渉低減により干渉限界を拡張することが可能な、MIMOアンテナ装置を備えた移動通信システムを提供することができる。
さらに、トランスバーサルフィルタを備えた従来のMIMOアンテナ装置として、例えば特許文献2に開示されたMIMOアンテナ装置がある。
特許文献2のMIMOアンテナ装置を備えたMIMO−OFDM受信機は、複数個の受信アンテナ素子に対してそれぞれ設けられたトランスバーサルフィルタにより干渉波を除去し、その後にMIMO復調を行う。これにより干渉波のある環境においてもMIMO受信が可能になる。従って、特許文献2によれば、同一チャンネル干渉が存在するマルチパス環境において、干渉を抑圧でき、タイミング再生やチャンネル推定の精度の劣化を補償することが可能で、かつ常に高速信号伝送を実現できるMIMO−OFDM受信機を提供することができる。以上により、特許文献2のMIMO−OFDM受信機は、受信アンテナ素子毎に設けられたトランスバーサルフィルタにより干渉波を除去した後にMIMO復調を行うことで、干渉波のある環境においてもMIMO受信が可能になり、高速無線伝送を可能にする、MIMOアンテナ装置を備えたMIMO−OFDM受信機を提供する。
特開2004−266586号公報。 特開2005−065197号公報。
特許文献1に記載された従来のMIMOアンテナ装置には、以下のような課題があった。本従来例では、データ伝送をできるだけ高速化する目的で、送信側にM個の変調器とL個の送信アンテナ素子とを備えることで、干渉波抑圧のためのビームフォーミングに加えて送信ダイバーシチ効果を得ることが可能なMIMOアンテナ装置を開示している。しかしながら、特許文献1のMIMOアンテナ装置では、送信アンテナ素子の数が多くなるので、携帯電話機のような1波長もしくはそれ以下のサイズの小型機器には、複数のアンテナ素子群を搭載することはきわめて困難であった。また、携帯電話の基地局に特許文献1のMIMOアンテナ装置を用いる場合においても、アンテナ素子数の増加に伴うコストの増加と、制御が複雑になるという課題があった。
一方、特許文献2に記載された、複数のトランスバーサルフィルタを用いた従来のMIMOアンテナ装置には以下のような課題があった。本従来例では、受信アンテナ素子毎にトランスバーサルフィルタを備えたので干渉波を抑圧することは可能であるが、受信回路規模が大きくなるという欠点があった。すなわち、本従来例のMIMOアンテナ装置を小型形状で構成したり、電池で駆動するような携帯無線機に用いたりすることは不可能であった。
本発明の目的は、以上の課題を解決し、小型形状のMIMOアンテナ装置であっても、所望の受信品位が得られない場合に干渉波抑圧とMIMO復調処理とを両立することにより高品位でかつ高速な通信を行うことが可能なMIMOアンテナ装置、及びそれを備えた移動体用の無線通信装置を提供することにある。
本発明の態様に係るMIMOアンテナ装置によれば、
送信側無線局装置により所定のデータストリーム数及び変復調方法を有するMIMO(Multi−Input Multi−Output)通信方式で変調された後送信された複数の無線信号を受信するMIMOアンテナ装置において、
上記複数の無線信号をそれぞれ受信する複数のアンテナ素子と、
上記複数の無線信号の受信信号レベルをそれぞれ検出する検出手段と、
上記複数の無線信号をMIMO復調して第1の復調信号を生成するとともに、上記第1の復調信号の信号品位を判定するMIMO復調手段と、
上記送信側無線局装置によって使用されるMIMO通信方式を制御する制御信号を上記送信側無線局装置に無線送信する無線送信手段と、
上記受信信号レベル及び上記信号品位に基づいて、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数及び変復調方法の少なくとも一方を変更するように、上記無線送信手段に上記制御信号を送信させることにより上記送信側無線局装置を制御するとともに、上記MIMO復調手段を制御する制御手段とを備え、
上記制御手段は、上記第1の復調信号の信号品位が所定の第1のしきい値未満である場合において、
(1)上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが所定の第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を削減し、
(2)上記複数の無線信号の少なくとも1つに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値未満であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも低い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする。
上記MIMOアンテナ装置において、上記制御手段は、上記第1の復調信号の信号品位が上記第1のしきい値以上である場合において、上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも高い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする。
また、上記MIMOアンテナ装置において、上記制御手段は、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を所定数に削減した場合において、上記MIMO復調手段による復調回数が所定の最大復調回数を超えたとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を増大させることを特徴とする。
上記MIMOアンテナ装置は、
上記データストリーム数が1つであるとき、主ビームを所望波信号の方向に向けるように上記複数の無線信号に重み付けして復調することにより第2の復調信号を生成するアダプティブ復調手段と、
上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段又は上記アダプティブ復調手段に入力するように切り換えるスイッチ手段とをさらに備え、
上記制御手段はさらに、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御しかつ上記第1の復調信号の信号品位が上記第1のしきい値未満である場合において、
(1)上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を1つに削減し、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記アダプティブ復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御し、
(2)上記複数の無線信号の少なくとも1つに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値未満であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも低い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする。
また、上記MIMOアンテナ装置において、上記アダプティブ復調手段は、漸化的な繰り返し処理を実行することにより主ビームを所望波信号の方向に向けるように上記複数の無線信号に重み付けすることを特徴とする。
さらに、上記MIMOアンテナ装置において、上記制御手段は、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御しかつ上記第1の復調信号の信号品位が上記第1のしきい値以上である場合において、上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも高い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする。
またさらに、上記MIMOアンテナ装置において、上記制御手段は、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記アダプティブ復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御した場合において、上記アダプティブ復調手段による復調回数が所定の最大復調回数を超えたとき、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御し、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を増大させることを特徴とする。
また、上記MIMOアンテナ装置において、上記無線送信手段は、上記複数のアンテナ素子のうちの少なくとも1つを用いて上記制御信号を上記送信側無線局装置に送信することを特徴とする。
また、本発明によれば、上記MIMOアンテナ装置を備えたことを特徴とする無線通信装置が提供される。
本発明によれば、以上の構成を備えたことにより、復調信号の信号品位及び受信信号の信号レベルに基づいて、MIMO通信方式のデータストリーム数の削減を実行すること、及び/又はMIMO通信方式の変復調方法の変更を実行することにより、小型形状のMIMOアンテナ装置であっても、所望の受信品位が得られない場合にMIMO通信方式のデータストリーム数と変復調方法とを適応的に制御し、さらには干渉波抑圧とMIMO復調処理とを両立することにより高品位でかつ高速な通信を行うことが可能なMIMOアンテナ装置、及びそれを備えた移動体用の無線通信装置を提供することができる。
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。適応変調を行うMIMO無線通信において、復調信号品位がしきい値以下になったときに、MIMOアンテナ装置を構成する各アンテナ素子に係る受信信号レベルを取得し、これらの受信信号レベルが所定の受信電力以上の場合に送信側無線局装置に通知し、複数M個の送信データストリームのうちの1つを削減させる。データストリーム数を1つに削減したときには、アダプティブ復調手段を用いて複数の受信信号の振幅及び位相を制御してもよく、これにより所望波信号の方向にビームを向けかつ干渉波信号の方向にヌルを向けることができる。一方、しきい値未満の場合には、より伝送レートの低い変復調方法を用いて送信するように送信側無線局装置に通知する。これにより、MIMO通信の高速無線伝送とアダプティブアレーアンテナの干渉波抑圧技術を両立させることで高品位でかつ高速な通信を実現する。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明の実施形態を説明するため図面の全体にわたり、同様の機能を有する構成要素は同一の符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する。
第1の実施形態.
図1は、本発明の第1の実施形態に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。以下、図1を参照しながら本実施形態のMIMOアンテナ装置について説明する。図1において、3つの受信アンテナ素子1a,1b,1cは、送信側無線局装置(図示せず。)から所定のMIMO通信方式を用いて送信された3つの異なる無線信号をそれぞれ受信し、受信アンテナ素子1a,1b,1cは、受信された各無線信号をアナログ/ディジタル(A/D)変換回路2に入力する。A/D変換回路2は、入力された各無線信号に対応して3つのA/D変換器を備え、これらのA/D変換器により各無線信号に対して別個にA/D変換処理を実行して、処理後の各信号(以下、受信信号という。)をMIMO復調回路3と信号レベル検出回路4とにそれぞれ出力する。MIMO復調回路3は、3つの受信信号に対してMIMO復調処理を実行して1つの復調信号を出力するとともに、復調信号の信号品位を表す基準として復調信号のビット誤り率(BER)を判定し、判定結果の情報をコントローラ5に出力する。信号品位として、ビット誤り率(BER)に代えて、パケットエラーレートを用いてもよく、もしくはスループット(例えば、受信されたデータのレートで表される。)を用いてもよい。信号レベル検出回路4は、3つの受信信号の信号レベルをそれぞれ検出して、検出結果の情報をコントローラ5に出力する。信号レベルは、例えば、搬送波電力対雑音電力比(CNR)又は所望波信号電力対干渉波信号電力及び雑音電力比(SINR)の形式で検出される。また、MIMO復調回路3は、例えば所定のデータ量(ビット数又はパケット数など)を単位として、受信信号のデータの復調処理を実行した回数(以下、復調回数という。)をコントローラ5に送る。コントローラ5は、BERと信号レベルの情報に基づいて、図7及び図8を参照して後述されるMIMO適応制御処理を実行し、それによって送信側無線局装置及びMIMO復調回路3が使用している通信方式を変更する。
本実施形態において、送信側無線局装置及びMIMO復調回路3において使用されている通信方式は、通信のデータストリーム数と、通信の変復調方法とによって決定される。詳しくは、MIMOアンテナ装置と送信側無線局装置とは、1つ乃至3つのデータストリームを用いたMIMO通信のいずれかを選択的に実行することができる。データストリーム数が1つのときは、SISO(Single−Input Single−Output)通信ともいう。また、MIMOアンテナ装置と送信側無線局装置とは、伝送レートが異なる複数の変復調方法のうちのいずれかを選択的に用いてMIMO通信(又はSISO通信)を実行することができ、例えば伝送レートが増大する順に列挙すると、BPSK、QPSK、16QAM及び64QAMのうちのいずれかを選択的に用いて通信することができる。なお、使用する変復調方法は、以上に列挙した方式に限定されるものではなく、実施例に応じて変更可能である。コントローラ5は、送信側無線局装置及びMIMO復調回路3により使用されている通信方式を変更するとき(すなわち、データストリーム数及び変復調方法の少なくとも一方を変更するとき)、無線送信回路6及びそれに接続された送信アンテナ素子7を用いて、送信側無線局装置における通信方式(すなわちMIMO通信又はSISO通信)の変調処理を変更させるように送信側無線局装置に要求するための制御信号を送信し、それとともに、MIMO復調回路3において使用されている通信方式(すなわちMIMO通信又はSISO通信)の復調処理を変更させる。
本実施形態のMIMOアンテナ装置は、A/D変換回路2の前段において、受信アンテナ素子1a,1b,1cにおいて受信された各無線信号から所定の周波数の信号を分離する高周波フィルタと、信号を増幅するための高周波増幅器とを必要に応じて備えることが好ましい。また、本実施形態のMIMOアンテナ装置は、MIMO復調回路3の前段において、A/D変換回路2から出力された各受信信号の周波数を変換するためのミキサー等の高周波回路や、中間周波数回路及び信号処理回路等を必要に応じて備えることが好ましい。以上に列挙した構成要素は、本願明細書及び図面では説明の簡単化のために省略した。
ここでは一例として、受信アンテナ素子数が3つの場合を例に説明を行うが、受信アンテナ素子数が2つもしくは4つ以上の構成も可能である。また、送信アンテナ素子数が1つの場合を例に挙げて説明するが、送信アンテナ素子が複数個設けられた構成も可能である。
以上説明した本実施形態のMIMOアンテナ装置によれば、以上の構成を備えたことにより、コントローラ5が、復調信号の信号品位及び受信信号の信号レベルに基づいて、MIMO通信方式のデータストリーム数の削減を実行すること、及び/又はMIMO通信方式の変復調方法の変更を実行することにより、小型形状のMIMOアンテナ装置であっても、所望の受信品位が得られない場合にMIMO通信方式のデータストリーム数と変復調方法とを適応的に制御することにより高品位でかつ高速な通信を行うことが可能なMIMOアンテナ装置を提供することができる。
図2は、本実施形態の変形例に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。この変形例のMIMOアンテナ装置は、図1の送信アンテナ素子7を、MIMO受信のための受信アンテナ素子1a,1b,1cのうちの1つ(図2の場合は、アンテナ素子1c)に一体化させた構成を有することを特徴とする。図2において、アンテナ素子1cはその下端においてアンテナ共用器(デュプレクサ)21を備え、アンテナ素子1cで受信された無線信号はアンテナ共用器21を介してA/D変換回路2に入力される一方、無線送信回路6から出力された無線信号はアンテナ共用器21を介してアンテナ素子1cを励振させる。アンテナ共用器21は、受信信号と送信信号の周波数が異なる場合に、受信信号と送信信号との分離に使用される。送信アンテナ素子7を一体化させる受信アンテナ素子は、受信アンテナ素子1a,1bのいずれかであってもよい。以上の構成により、図2の変形例のMIMOアンテナ装置は、装置内のアンテナ素子の個数を削減することができ、小型な移動体無線通信端末において効率よくMIMOアンテナ装置を実現することができる。
また、図2の変形例では、送信アンテナ素子として1つの受信アンテナ素子のみを使用する構成を例に挙げて説明したがこれに限られるものではなく、複数の受信アンテナ素子1a,1b,1cの2つ以上を送信アンテナ素子として使う構成も可能である。これにより、送信時においても、アレーによるビームフォーミングの効果によるアンテナ利得の向上が期待できる。さらには複数の受信アンテナ素子1a,1b,1cのうちの2つ以上を送信アンテナ素子として用いる場合には、切り換え制御による切り換えダイバーシチに代表される送信ダイバーシチやMIMO送信を実行することも可能である。これにより、より安定し、より高速な無線信号の送信を可能にする。また、図2の変形例では、受信信号と送信信号との分離にアンテナ共用器21を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限られるものではなく、スイッチやサーキュレータを使う構成も可能である。スイッチは、信号を送信する時間と信号を受信する時間が異なる場合に最適であり、サーキュレータは、送信信号と受信信号間の周波数差及び時間差がない場合においても使用可能である。
次に、図3乃至図6を参照して、本実施形態のMIMOアンテナ装置を携帯無線通信装置として実装する例について説明する。図3は、本実施形態の第1の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。
図3の携帯無線通信装置は、ほぼ直方体形状の上部筐体31と下部筐体32とを備え、これらがヒンジ部33により連結された折りたたみ型の携帯電話機として構成されている。上部筐体31はスピーカ35とディスプレイ36を備え、下部筐体32はキーボード37とマイクロホン38を備えて構成される。上部筐体31の内部には、その左端に近接しかつ携帯無線通信装置の長手方向と平行になるようにストリップ導体1aaが設けられ、ストリップ導体1aaは、ヒンジ部33の一部を構成するヒンジ部導体1abと電気的に接続され、ストリップ導体1aaとヒンジ部導体1abとは、ともに受信アンテナ素子1aとして動作する。同様に、上部筐体31の内部には、その右端に近接しかつ携帯無線通信装置の長手方向と平行になるようにストリップ導体1baが設けられ、ストリップ導体1baは、ヒンジ部33の一部を構成するヒンジ部導体1bbと電気的に接続され、ストリップ導体1baとヒンジ部導体1bbとは、ともに受信アンテナ素子1bとして動作する。下部筐体32内には、U字型に折り曲げられたストリップ状の導体にてなる受信アンテナ素子1cが設けられる。図3に示した実装例では、受信アンテナ素子1cの一部は、下部筐体32の下端から突出したブーム部34の中を貫通するように設けられるが、それに代わって、受信アンテナ素子1cの全体が下部筐体32の内部に設けられてもよい。さらに、下部筐体32から突出するように、ロッド状の導体にてなる送信アンテナ素子7が設けられる。携帯無線通信装置は、図1のA/D変換回路2、MIMO復調回路3、信号レベル検出回路4、コントローラ5及び無線送信回路6などを含む無線通信回路39を備え、無線通信回路39のA/D変換回路2は受信アンテナ素子1a,1b,1cに接続され、無線通信回路39の無線送信回路6は送信アンテナ素子7に接続される。
また、図4は、本実施形態の第2の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。この実装例では、図3のロッド状の送信アンテナ素子7を除去し、代わりに、無線通信回路39はアンテナ共用器21をさらに備え、受信アンテナ素子1a,1b,1cのうちのいずれか1つ(例えば、受信アンテナ素子1a)を送信アンテナ素子と共用する。図4の実装例の携帯無線通信装置によれば、装置の外部に突出したアンテナ素子を除去したことにより、図3の実装例の場合よりもコンパクトな携帯無線通信装置を提供することができる。
またさらに、図5は、本実施形態の第3の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。この構成では、携帯無線通信装置は、上部筐体31に設けられた2つの受信アンテナ素子1a,1bと、下部筐体32に設けられた1つの送信アンテナ素子7とを備えている。オプションとして無線通信回路39内にアンテナ共用器21を備え、受信アンテナ素子1a,1bのいずれかをもう1つの送信アンテナ素子として共用し、2つの送信アンテナ素子により送信ダイバーシチを行ってもよい。
また、図6は、本実施形態の第4の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。この構成では、携帯無線通信装置は、上部筐体31に2つのアンテナ素子1a,1bを備え、そのうち一方を送信アンテナ素子として共用する。この構成によれば、他の実装例に係る携帯無線通信装置に比べて、その内部構造を大幅に簡略化することができる。
以下、本実施形態のMIMOアンテナ装置の動作原理について説明する。なお、本明細書において、イメージ入力された数式とテキスト入力された数式とを混在させて用いており、各数式を識別するために、それら各数式の最後部に記載した一連の通し番号(1),(2),…を用いて「式(1),式(2),…」等と呼ぶこととする。
MIMO通信システムは、送信機及び受信機においてそれぞれ複数のアンテナ素子を用いて、同じ周波数帯域内で同時に送信された複数の信号系列を空間的に多重化することによって伝送容量を増大させ、MIMO復調後の複数の信号系列に係る合計伝送速度の増大を図る技術である。ここでは一例として、固有モード伝送方式をもとに説明を行う。送信機及び受信機のアンテナ素子の数をそれぞれn個とすると、受信信号yは次式で表すことができる。
[数1]
y=Hx+w (1)
ここで、受信信号を表すyは、サイズがnのベクトルであり、その各要素は受信機の各アンテナ素子で受信された信号を表す。Hはサイズがn×nの行列であり、チャンネル行列と呼ばれ、その各要素Hijは、送信機のj番目のアンテナ素子と受信機のi番目のアンテナ素子との間の伝搬係数、すなわち、これらのアンテナ素子間で送受信される信号の位相回転量及び振幅減衰量を表す。また、送信信号を表すxは、サイズがnのベクトルであり、その各要素xは、送信機の各アンテナ素子から送信される信号であって、互いに直交する信号を表す。wはサイズがnのベクトルであり、その各要素は受信機の各アンテナ素子で受信された熱雑音を表す。
受信機においてチャンネル行列Hを取得するために、受信機は所定のパイロット信号xを予め記憶し、送信機はこの既知のパイロット信号xを受信機に伝送し、受信機は、当該受信機が予め記憶したパイロット信号xと、受信信号y(すなわち伝送されたパイロット信号x)とに基づいて、式(1)からチャンネル行列Hを計算する。
ここで、チャンネル行列Hに対する特異値分解(Singlar Value Decomposition:SVD)を行うと、次式のようになる。
Figure 0004837638
式(2)において、U,Σ,Vはそれぞれサイズがn×nの行列であり、Σはそのi行目i列目の要素がσ(0≦i≦q)でありかつその他の要素が0である行列である。また、uとvはそれぞれ行列UとVのi番目の列ベクトルであり、それぞれ他の列ベクトルと直交している。qはチャンネル行列Hのランクであり、以下の説明ではq=nであるとする。上付き添字Hは複素共役転置を表す。ここで、行列UとVは、サイズがn×nの単位行列Iに対して次式を満足する。
[数2]
U=I (3)
[数3]
V=I (4)
さらに、固有値分解(Eigenvalue Decomposition:EVD)を行うと、次式が求まる。
Figure 0004837638
式(5)において、λはチャンネル行列の積HHの固有値であり、λ=σ である。
ベクトルu は、行列Uの要素となる他の行ベクトルと互いに直交しており、送信機の各アンテナ素子から送信される信号のウエイト(振幅と位相)に使用され、ベクトルuは、行列Uの要素となる他の列ベクトルと互いに直交しており、受信機の各アンテナ素子において受信される信号のウエイトに使用される。このようにウエイトを使用することにより直交した指向性が得られる。
ここで、式(1)より、受信信号電力はHx(Hx)=HHxxとなる。行列xxは送信信号電力を表す。ただし、ベクトルxの各要素は互いに直交した信号であるので、行列xxは対角行列diag[x ,x ,…,x ]となる。一方、行列HHは対角行列diag[λ,λ,…,λ]となる。すなわち、送信機及び受信機の各アンテナ素子において直交したウエイトを使用することにより複数の伝搬経路を分離することができ、このときの受信信号電力はλ となる。信号xがすべて等しい場合、各伝搬経路における受信信号電力は固有値λの比になる。
ここで、送信機のアンテナ素子数が2個であり、かつ受信機のアンテナ素子数が2個であるMIMO通信システムを一例として、受信信号電力の導出について具体的に説明する。この場合、チャンネル行列Hと、送信機のアンテナ素子から送信された送信信号ベクトルxとは、以下の式で表される。
Figure 0004837638
Figure 0004837638
ここで、wを、受信機のアンテナ素子で受信された雑音ベクトル(送信信号ベクトルxに対する振幅比)であるとすると、受信信号ベクトルyは以下の式で求められる。
Figure 0004837638
次に、受信信号ベクトルの共分散行列Ryyを次式により求める。
Figure 0004837638
上式で、ベクトルyは以下の式で表される。
Figure 0004837638
通常、MIMO通信システムでは、送信機の異なるアンテナ素子から送信される異なる信号は互いに無相関である。ここで送信信号が無相関であるということについて説明する。送信信号系列は「−1」と「1」の要素からなる1次元信号系列であるものとする。例えば、送信信号ベクトルx,xがそれぞれ4つの要素を有する場合の一例を以下に示す。
[数4]
=(1,−1,1,1) (11)
[数5]
=(1,1,−1,1) (12)
相関とは、信号系列の要素毎の積の和を系列数で割ったものと定義すると、送信信号ベクトルxとxの相関値R12は次式で表される。
[数6]
12=(1・1+(−1)・1+1・(−1)+1・1)/4=0 (13)
すなわち、相関値R12が0となる場合に無相関となる。逆に、相関値が1となるのは、x=xの場合である。また、雑音ベクトルは送信信号ベクトルと無相関であり、かつ、異なるアンテナ素子で受信される雑音ベクトルも互いに無相関である。
以上より、式(9)の共分散行列Ryyの期待値を受信信号電力として次式のように計算することができる。
Figure 0004837638
ここで、送信信号ベクトルについての仮定より、次式を用いた。
Figure 0004837638
以上説明したMIMOアンテナ装置の動作原理によれば、MIMO通信システムの伝送容量CMIMOは次式で与えられる。
Figure 0004837638
ここで、SNRは総送信信号電力対雑音比であり、すなわちSNR/n=x である。伝送容量CMIMOの単位は[ビット/秒/Hz]である。一方、送信機において1つのアンテナ素子を用い、かつ受信機において1つのアンテナ素子を用いる通常の一対一通信(SISO)の場合には、伝送容量CSISOは以下の式で得られる。
Figure 0004837638
式(17)において、hは伝搬係数であり、伝送容量CSISOの単位は[ビット/秒/Hz]である。
例えば、式(16)と式(17)の比較を簡単化するため、hh=λ=λとし、SNR・λ/n≫1とする。このとき、式(16)の伝送容量CMIMOは、次式のように計算される。
Figure 0004837638
一方、式(17)の伝送容量CSISOは、次式のように計算される。
Figure 0004837638
例えば、n=4、SNR・λ=1024の場合には、MIMO伝送容量CMIMO=4・(10−2)=32[ビット/秒/Hz]であり、SISO伝送容量CSISO=10[ビット/秒/Hz]であり、MIMO伝送容量はSISO伝送容量よりも増加していることがわかる。
以上のように、MIMOアンテナ装置では、互いに直交する指向性を複数の信号系列に割り振ることで空間的に信号を多重させ伝送容量を増加させ、それにより、MIMO復調後の複数の信号系列の合計の伝送速度の高速化を達成することができる。
式(16)によれば、チャンネル行列Hから計算される固有値λが大きいほど、MIMO伝送容量は増加することがわかる。固有値λはチャンネル行列Hの各要素により求まるので、上記のことは、チャンネル行列Hの各要素が大きいほど高速伝送が可能であることを意味している。また、式(1)に記したように、受信された信号には熱雑音ベクトルwが含まれる。実際の受信機では熱雑音成分を除去することができないので、このことがチャンネル行列Hから固有値λを計算する際の誤差要因となる。従って、できるだけ大きな受信信号電力を得ることが、MIMOアンテナ装置における伝送速度の高速化につながる。
一方、干渉波がある場合には、式(1)は次式のようになる。
[数7]
y=Hx+H+w (20)
ここで、Hはサイズがnのベクトルであり、その要素はそれぞれ、受信機の各アンテナ素子で受信された干渉波信号を表す。ここで、干渉波信号とは、隣接基地局装置から到来した同一周波数の同一チャンネル干渉波の信号や、所望波信号ではあるが異なる長い経路を経由して到来したために時間的な遅れを生じた遅延波の信号を示す。遅延波信号は、テレビジョン放送やラジオ放送等のアナログ無線通信において、例えばテレビジョン放送のゴーストとして画面表示の品質を劣化させる。一方、ディジタル無線通信では、熱雑音、同一チャンネルの干渉波信号、及び遅延波信号は、いずれも所望波信号のビット誤りとして直接的に影響し、所望波の信号品位を劣化させる。
式(20)において、ベクトルH及びwの各要素がベクトルHxの各要素に比べて十分小さい場合には、SINRが大きいために高速通信が可能であるが、ベクトルH及びwの各要素が無視できないレベルに達すると急激に復調信号の誤り率の性能が劣化する。例えば、QPSK変調の場合には、10−6の誤り率を満足するためには、SINRは約13dB必要である。
ここで、式(20)より、復調信号品位が劣化する要因は、干渉波信号ベクトルHの要素と熱雑音ベクトルwの要素とに分類できる。熱雑音は変調信号の帯域幅と受信機の雑音性能で定まるために、周囲の環境による変動は少ない。すなわち、SINRの低下は、主に、受信信号レベルが低下したときに発生する。一方、受信信号レベルが大きい場合においても、干渉波信号の信号レベルも大きければSINRが小さくなる。すなわち、復調信号の信号品位が劣化した場合には、それが受信信号レベルの低下に起因するものか、もしくは、干渉波信号に起因するものかを判断することが重要となる。ここで、信号品位とは、ビット誤り率(BER)もしくはパケットエラーレートもしくはスループットを表す。以上の動作原理をふまえて、本実施形態のMIMOアンテナ装置を制御する方法について以下に説明する。
図7は、コントローラ5によって実行されるMIMO適応制御処理を示すフローチャートである。初期状態において、MIMOアンテナ装置及び送信側無線局装置は、3つのデータストリームと所定の変復調方法とを用いたMIMO通信を実行し、MIMOアンテナ装置は、その3つの受信アンテナ素子1a,1b,1cのすべてを用いて無線信号を受信している。図7のステップS1において、コントローラ5は、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいて、MIMO復調回路3に復調処理を実行させるとともに、復調信号の信号品位としてそのBERを判定させ、判定結果の情報をMIMO復調回路3から取得する。次いでステップS2において、コントローラ5は、復調信号のBERが所定のしきい値T1以上であるか否かを判定し、しきい値T1未満であるときはステップS3に進み、しきい値T1以上であるときはステップS7に進む。ここで、BERのしきい値T1は、MIMO復調回路3が瞬時のBER(すなわち、非常に短い時間区間で測定されたBER)を取得する場合には、例えば10−6に設定され、一方、レイリーフェージングの多重波環境を考慮し、所定時間にわたって時間平均されたBERをMIMO復調回路3が取得する場合には、例えば10−2に設定される。次いでステップS3において、コントローラ5は、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいて、信号レベル検出回路4に各受信信号の信号レベルを検出させ、検出結果の情報を信号レベル検出回路4から取得する。ステップS4において、コントローラ5は、所定のしきい値T2未満の信号レベルを有する受信信号が存在するか否かを判定し、すべての受信信号の信号レベルがしきい値T2以上であるときはステップS5に進み、そうでないときはステップS6に進む。
ここで、受信信号の信号レベルのしきい値T2は、(a)MIMOアンテナ装置及び送信側無線局装置により使用されている変復調方法(すなわち、BPSK、QPSK、16QAM、又は64QAM)と、(b)復調信号の信号品位及び各受信信号の信号レベルが瞬時の値として取得されるか、それとも時間平均された値として取得されるかということとに依存する。ここで、図9及び図10を参照して、受信信号の信号レベルのしきい値T2の判定について説明する。図9及び図10のグラフでは、受信信号の信号レベルとしてCNRを例示的に用いている。図9は、瞬時のCNR及びBERを示すグラフである。この場合、CNRのしきい値は、変復調方法毎に、瞬時のBERのしきい値として設定されたBER=10−6に相当する値に設定され、すなわち、BPSKのときはCNR=11dBに設定され、QPSKのときはCNR=14dBに設定され、16QAMのときはCNR=21dBに設定され、64QAMのときはCNR=27dBに設定される。図10は、時間平均されたCNR及びBERを示すグラフである。この場合、CNRのしきい値は、変復調方法毎に、時間平均されたBERのしきい値として設定されたBER=10−2に相当する値に設定され、すなわち、BPSKのときはCNR=14dBに設定され、QPSKのときはCNR=17dBに設定され、16QAMのときはCNR=23dBに設定され、64QAMのときはCNR=28dBに設定される。信号レベルのしきい値T2は、以上例示した値に限らず、使用されている各変復調方法においてエラーフリーとなる信号レベル(例えば電力)に対応する値に設定されることが可能である。
ステップS5において、コントローラ5は、送信側無線局装置とMIMO復調回路3のMIMO通信のデータストリーム数を削減する。例えば、送信側無線局装置とMIMOアンテナ装置とが3つのデータストリームを用いたMIMO通信を実行していたとき、2つのデータストリームを用いたMIMO通信、又は1つのデータストリームを用いたSISO通信を実行するように、通信方式を変更する。ステップS5でデータストリーム数を削減したことによってデータストリーム数が1になったとき(ステップS10がYESのとき)は、コントローラ5は、ステップS11のSISO通信処理に進み、そうでないとき(ステップS10がNOのとき)はステップS12に進む。
図8は、図7のSISO通信処理のステップS11を示すサブルーチンである。図8のステップS14において、コントローラ5は、信号レベルが最大になる受信アンテナ素子で受信された受信信号のみを復調するように、MIMO復調回路3に復調処理(すなわちSISO通信の復調処理)を継続させる。次いでステップS15において、コントローラ5は、MIMO復調回路3による復調処理の回数が所定の最大復調回数を超えたか否かを判定する。ステップS15における最大復調回数は、電波状況をモニタリングする周期として決められる。あるいは、ステップS15では、復調処理の回数を最大復調回数と比較することに代えて、MIMO復調回路3による復調処理が所定時間にわたって継続してタイムアウトしたか否かを判定してもよい。ステップS15において復調処理の回数が最大復調回数を超えたと判断されるまでステップS14に戻って復調処理が継続され、最大復調回数を超えた場合には、コントローラ5は、ステップS16において、送信側無線局装置とMIMO復調回路3のデータストリーム数を増加させ、通信方式をSISOからMIMOに変更する。ステップS16において、コントローラ5は、データストリーム数を好ましくは最大値(すなわち3個)になるように初期化する。データストリーム数を増加させた後、コントローラ5はステップS1に戻る。
なお、変形例として、ステップS10では、データストリーム数が1以外の所定数(例えば、2個)に削減されているか否かを判断し、YESのときは、ステップS11のSISO通信処理ではなく、図8のステップS16のみを実行してもよい。これによれば、データストリーム数を変化させる範囲が制限され、SISO通信を実行することなく常にMIMO通信を実行しながら、そのデータストリーム数を変化させることができる。
また、ステップS6において、コントローラ5は、送信側無線局装置とMIMO復調回路3の変復調方法を、現在の伝送レートよりも低速な伝送レートの変復調方法に変更する。例えば、送信側無線局装置とMIMOアンテナ装置とが64QAMを用いてMIMO通信を実行していたとき、16QAM、QPSK及びBPSKのいずれかの変復調方法を用いたMIMO通信に変更する。変復調方法の変更後、コントローラ5はステップS12に進む。
ステップS2において復調信号のBERがしきい値T1以上であったときは、前述のようにステップS7に進む。ステップS7では、コントローラ5は、ステップS3と同様に、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいて、信号レベル検出回路4に各受信信号の信号レベルを検出させ、検出結果の情報を信号レベル検出回路4から取得する。ステップS4において、コントローラ5は、ステップS4の場合と同じしきい値T2未満の信号レベルを有する受信信号が存在するか否かを判定し、すべての受信信号の信号レベルがしきい値T2以上であるときはステップS9に進み、そうでないときはステップS12に進む。ステップS9において、コントローラ5は、送信側無線局装置とMIMO復調回路3の変復調方法を、現在の伝送レートよりも高速な伝送レートの変復調方法に変更する。例えば、送信側無線局装置とMIMOアンテナ装置とがBPSKを用いてMIMO通信を実行していたとき、QPSK、16QAM及び64QAMのいずれかの変復調方法を用いたMIMO通信に変更する。変復調方法の変更後、コントローラ5はステップS12に進む。コントローラ5は、ステップS12においてMIMO復調回路3に復調処理を継続させ、次いでステップS13において、MIMO復調回路3による復調処理の回数が所定の最大復調回数(例えば、ステップS15の最大復調回数と同じ回数)を超えたか否かを判定し、最大復調回数を超えた場合にはステップS1に戻り、そうでない場合には、ステップS12に戻ってMIMO復調回路3に復調処理を継続させる。変形例として、ステップS2において復調信号のBERがしきい値以上であったときは、コントローラ5は、ステップS7乃至S9を実行することなく、ステップS1に戻るとともにMIMO復調回路3に復調処理を継続させてもよい。
以上説明したように、本実施形態のMIMOアンテナ装置によれば、復調信号の信号品位及び受信信号の信号レベルに基づいて、MIMO通信方式のデータストリーム数の削減を実行すること、及び/又はMIMO通信方式の変復調方法の変更を実行することにより、小型形状のMIMOアンテナ装置であっても、所望の受信品位が得られない場合にMIMO通信方式のデータストリーム数と変復調方法とを適応的に制御することにより高品位でかつ高速な通信を行うことが可能なMIMOアンテナ装置、及びそれを備えた移動体用の無線通信装置を提供することができる。
第2の実施形態.
図11は、本発明の第2の実施形態に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のMIMOアンテナ装置は、図1に示すMIMOアンテナ装置の構成に加えて、アダプティブ復調回路12と、A/D変換回路2をMIMO復調回路3及びアダプティブ復調回路12のいずれかに接続するスイッチ回路11とをさらに備えたことを特徴とする。本実施形態のMIMOアンテナ装置は、干渉波信号を受信した場合に、所定の条件下で、アダプティブ復調回路12による漸化的な繰り返し計算を用いた復調処理を実行するようにスイッチ回路11を切り換えることを特徴とする。
スイッチ回路11は、A/D変換回路2から出力される3つの受信信号に対応して3つのスイッチを備え、これらのスイッチは、コントローラ5の制御に従って、3つの受信信号をMIMO復調回路3にそれぞれ入力するか、又はアダプティブ復調回路12にそれぞれ入力する。アダプティブ復調回路12に入力された3つの受信信号は、振幅調整器13a,13b,13cによってそれぞれ振幅調整され、振幅調整後に、移相器14a,14b,14cによってそれぞれ位相調整される。ここで、振幅調整器13a,13b,13cによる振幅調整量と移相器14a,14b,14cによる位相調整量とは、3つの受信信号を取得してこれらに基づきウエイト計算(詳細後述)を実行する振幅位相コントローラ17によって制御される。振幅及び位相調整後の各受信信号は合成器15によって合成され、次いで、復調器16が合成後の受信信号に対して復調処理を実行して復調信号を出力する。信号品位として、ビット誤り率(BER)に代えて、パケットエラーレートもしくはスループットを用いてもよい。また、MIMO復調回路3及びアダプティブ復調回路12はそれぞれ、例えば所定のデータ量(ビット数又はパケット数など)を単位として、受信信号のデータの復調処理を実行した回数(復調回数)をコントローラ5に送る。コントローラ5は、BER、信号レベル及び復調回数の情報に基づいて、図13及び図14を参照して後述されるMIMO適応制御処理を実行し、それによって送信側無線局装置及びMIMO復調回路3が使用している通信方式を変更する。
図12は、本実施形態の変形例に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。この変形例のMIMOアンテナ装置は、図2に示した第1の実施形態の変形例と同様に、図11の送信アンテナ素子7を、MIMO受信のための受信アンテナ素子1a,1b,1cのうちの1つ(図12の場合は、アンテナ素子1c)に一体化させた構成を有することを特徴とする。以上の構成により、図12の変形例のMIMOアンテナ装置は、装置内のアンテナ素子の個数を削減することができる。
MIMO復調では、一般には、既知信号(リファレンス信号)を受信側無線局装置に予め格納し、この既知信号と同じ信号を送信側無線局装置から受信側無線局装置に送信し、受信側無線局装置において、予め格納された既知信号と受信された既知信号との相関を計算することにより、受信信号の振幅と位相を検出する。ここで、相関を計算する方法は、受信側無線局装置で予め格納している既知信号の複素共役と、受信された既知信号とを乗算することにより行う。さらに、既知信号が複数のビットを含む場合は、ビット毎の相関を計算し、その和もしくは平均値を相関値として用いることが可能である。また、異なる信号系列(ストリーム)においては、異なる時間に既知信号と同じ信号を送信側無線局装置より送信し、受信側無線局装置でストリーム毎に伝搬推定を行いMIMO復調を可能にする。しかしながら、干渉波信号が強い場合には、そもそも相関を計算することが不可能になる。これは、受信信号に干渉波信号が加算されることにより、既知信号との相関が下がるためである。
このように、干渉波信号を受信した場合には、通常のMIMO復調ができないことが想定される。そこで、受信信号を既知信号に近づけるように制御を行うアダプティブアレーアンテナの干渉抑圧技術が必要になる。アダプティブアレーアンテナは信号品位を改善させる結果として、SINRを最大にするように動作する。特に、干渉波信号が既知信号でない場合には、繰り返し計算によるアダプティブ制御が好ましい。本実施形態のMIMOアンテナ装置では、アダプティブ復調回路12を備えたことにより、以上説明した好適な処理を実行可能である。
図13及び図14は、図11のコントローラ5によって実行されるMIMO適応制御処理を示すフローチャートである。図13のステップS21において、コントローラ5は、スイッチ回路11をMIMO復調回路3に接続するように初期化する。ステップS22において、コントローラ5は、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいて、MIMO復調回路3に復調処理を実行させるとともに、復調信号の信号品位としてそのBERを判定させ、判定結果の情報をMIMO復調回路3から取得する。次いでステップS23において、コントローラ5は、MIMO復調回路3の復調信号のBERが所定のしきい値T1以上であるか否かを判定し、しきい値T1未満であるときはステップS24に進み、しきい値T1以上であるときはステップS29に進む。ここで、BERのしきい値T1は、図7のステップS2と同様に設定される。次いでステップS24において、コントローラ5は、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいて、信号レベル検出回路4に各受信信号の信号レベルを検出させ、検出結果の情報を信号レベル検出回路4から取得する。ステップS25において、コントローラ5は、所定のしきい値T2未満の信号レベルを有する受信信号が存在するか否かを判定し、少なくとも1つの受信信号の信号レベルがしきい値T2未満であるときはステップS26に進み、そうでないときは図14のステップS32に進む。ここで、信号レベルのしきい値T2は、図7のステップS4と同様に設定される。ステップS26において、コントローラ5は、図7のステップS6と同様に、送信側無線局装置とMIMO復調回路3の変復調方法を、現在の伝送レートよりも低速な伝送レートの変復調方法に変更する。ステップS27において、MIMO復調回路3により復調処理を継続し、次いでステップS28において、コントローラ5は、図7のステップS13と同様に、MIMO復調回路3による復調処理の回数が所定の最大復調回数を超えたか否かを判定し、最大復調回数を超えた場合にはステップS22に戻り、そうでない場合には、ステップS27に戻ってMIMO復調回路3に復調処理を継続させる。
ステップS23において復調信号のBERがしきい値T1以上であったときは、前述のようにステップS29に進む。ステップS29乃至S31は、図7のステップS7乃至S9と同様であり、ステップS29では、コントローラ5は、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいて、信号レベル検出回路4に各受信信号の信号レベルを検出させ、検出結果の情報を信号レベル検出回路4から取得する。ステップS30において、コントローラ5は、ステップS25の場合と同じしきい値T2未満の信号レベルを有する受信信号が存在するか否かを判定し、すべての受信信号の信号レベルがしきい値T2以上であるときはステップS31に進み、そうでないときはステップS27に進む。ステップS31において、コントローラ5は、図7のステップS9と同様に、送信側無線局装置とMIMO復調回路3の変復調方法を、現在の伝送レートよりも高速な伝送レートの変復調方法に変更する。変復調方法の変更後、コントローラ5はステップS27に進む。
ステップS25においてすべての受信信号の信号レベルがしきい値T2以上である場合には、前述のように図14のステップS32に進む。ステップS32において、コントローラ5は、送信側無線局装置とMIMO復調回路3のMIMO通信のデータストリーム数を1つに削減して、SISO通信を実行するように通信方式を変更する。コントローラ5は、ステップS33において、スイッチ11をアダプティブ復調回路12に接続し、ステップS34において、A/D変換回路2により取得された各受信信号に基づいてアダプティブ復調回路12に復調処理を実行させる。アダプティブ復調回路12は、MIMOアンテナ装置の主ビームを所望波信号の方向に向けるように、あるいは、主ビームを所望波信号の方向に向けかつ干渉波信号の方向にヌルを向けるように、各受信信号に重み付けして復調する。アダプティブ復調回路12による重み付け(すなわちウエイトの計算)については、詳細後述する。次いで、ステップS35において、コントローラ5は、アダプティブ復調回路12による復調処理が所定の最大復調回数(例えば、ステップS28の最大復調回数と同じ回数)を超えたか否かを判定し、最大復調回数を超えた場合には、MIMO通信を用いる場合の所望波信号及び干渉波信号の状況を再び調べるためにステップS36に進み、そうでない場合には、ステップS34に戻ってアダプティブ復調回路12に復調処理を継続させる。ステップS36において、コントローラ5は、送信側無線局装置で用いる通信方式をMIMOに変更し、図13のステップS21に戻る。ここで、ステップS36における通信方式の変更は、送信側無線局装置で用いる通信方式のデータストリーム数を好ましくは最大値(すなわち3個)になるように増大させること等を含む。
以上説明したように、本実施形態のMIMOアンテナ装置によれば、所望波信号及び干渉波信号の状況に応じて、アダプティブ復調を用いることも含めた干渉波抑圧のための処理を実行可能なMIMOアンテナ装置を実現することができる。特に、所望波信号が強い場合(すなわち、ステップS23がYESである場合)には、ステップS29で信号レベル検出回路4により受信信号の信号レベルを検出し、復調方法をアダプティブ復調に切り換えるしきい値(すなわち、ステップS25のしきい値T2)よりも受信信号レベルが大きい場合(すなわち、ステップS30がYESである場合)には、ステップS31において、送信される無線信号の変復調方法を伝送レートの速い変復調方法に変更する(例えば、変復調方法の多値化を増やす等)ように送信側無線局装置に通知する。これにより、高速でかつ高品位な通信を実現することができる。また、ステップS28及びS35の最大復調回数を設定することにより、電波状況を再モニタリングする周期を決めることができ、所望波信号及び干渉波信号の伝搬環境の変化にも最適に対応できるMIMOアンテナ装置を実現できる。
以下に、ステップS34におけるアダプティブ復調回路12による復調処理について説明する。本実施形態では、振幅位相コントローラ17は、3つの受信アンテナ素子1a,1b,1cの受信信号のみを使用した繰り返し計算によってアダプティブ復調処理を実行するが、この処理は受信アンテナ素子の素子数に応じて変更可能であることは明らかであろう。
受信アンテナ素子1a,1b,1cで受信された信号は、A/D変換回路2においてディジタル信号に変換され、スイッチ回路11を介して振幅位相コントローラ17へ入力される。ディジタル信号は、本実施形態では3つの要素を持つベクトルとみなすこともできる。振幅位相コントローラ17は、振幅及び位相制御された後の各受信信号を合成器15により合成した合成出力信号を復調器16で復調した結果の信号品位(例えばBER)が最良になるように、振幅調整器13a,13b,13cによる振幅調整量と移相器14a,14b,14cによる位相調整量とを決定する。以下に、振幅調整器13a,13b,13cによる振幅調整量と移相器14a,14b,14cによる位相調整量(以下、ウエイトと呼ぶ。)の算出方法を示す。
各受信アンテナ素子1a,1b,1cのそれぞれに係るウエイトWiは、次式により定義される。
[数8]
Wi=Ai・exp(j・φi) (21)
式(21)において、jは虚数単位である。また、パラメータiは1,2,3の値をとり、それぞれ、各受信アンテナ素子1a,1b,1cで受信された信号に対応する。また、Aiは振幅調整量を表し、φiは位相調整量を表す。以下の説明では、簡単化のために、受信アンテナ素子1a,1b,1cのうちのいずれか1つで受信された1つの受信信号s(t)に対するウエイトw(t)を計算する方法について説明する。
ウエイトを求める方法にはいくつか方法があるが、ここでは最急降下法(LMS:Least Means Squares)を用いた例を示す。この方法では、アダプティブ復調処理を実行する受信側無線局装置は予め既知の信号系列(又は参照信号)r(t)を保有し、所望波信号はこの既知の参照信号r(t)を含んで送信され、受信側無線局装置は、受信された所望波信号が保有していた参照信号に近くなるように、受信された所望波信号の振幅調整量及び位相調整量を制御する。本実施形態では、一例として振幅位相コントローラ17に参照信号が保持されていると仮定する。具体的には、振幅位相コントローラ17は、受信されてアダプティブ復調回路12に入力されたディジタル信号s(t)に、振幅と位相の成分を持ったウエイトw(t)を乗算するように、振幅調整器13a,13b,13c及び移相器14a,14b,14cを制御する。このウエイトw(t)をディジタル信号s(t)に乗算した信号と、参照信号r(t)との残差e(t)を求める。このとき残差e(t)は次式により得られる。
[数9]
e(t)=r(t)−w(t)×s(t) (22)
ここで、残差e(t)は正あるいは負の値をとる。従って、式(22)により求めた残差e(t)の2乗した値の最小値を漸化的に求める(すなわち、繰り返し計算を実行する)。従って、(m+1)回目の繰り返し計算により得られるウエイトw(t,m+1)は、m回目のウエイトw(t,m)を用いて次式により得られる。
[数10]
w(t,m+1)=w(t,m)+u×s(t)×e(t,m) (23)
ここで、uはステップサイズと呼ばれ、ステップサイズuが大きいとウエイトが最小値に収束する繰り返し計算回数が少なくなるという利点があるが、ステップサイズuが大き過ぎると最小値付近で振動してしまうという欠点がある。従って、ステップサイズuの選定には、システムに応じて十分注意する必要がある。逆に、ステップサイズuを小さくすることによりウエイトは安定して最小値に収束するが、繰り返し計算回数は増加する。繰り返し計算数が増加するとウエイトを求めるのに時間がかかる。仮にウエイト算出時間が周囲環境の変化時間(例えば数ミリ秒)よりも遅い場合には、このウエイトを用いた信号品位の改善は不可能となる。そこで、ステップサイズuを決定する場合にはできるだけ高速且つ安定な収束の条件を選ぶ必要がある。また、式(23)の残差e(t,m)は、次式により定義される。
[数11]
e(t,m)=r(t)−w(t,m)×s(t) (24)
この式(24)の値を用いて式(23)を漸化的に更新する。なお、ウエイトを求めるための最大繰り返し計算回数は、ウエイト算出時間が無線システムの切り換え時間よりも遅くならないように設定する。
ここでは、一例として最急降下法に基づくウエイトの計算方法を説明したが、これに限られるものではない。例えば、より早く判定が可能なRLS(Recursive Least−Squares)の方法、SMI(Sample Matrix inversion)の方法を用いることも可能である。この方法により計算時間は短くなるが、振幅位相コントローラ17における計算が複雑になる。
また、信号系列の変調方式がディジタル位相変調のような一定の包絡線を持つような定包絡線変調である場合には、CMA(Constant Modulus Algorithm)を使用することも可能である。
以上に示したように、本発明の実施形態によれば、アダプティブ復調処理を実行可能なMIMOアンテナ装置において、復調信号の信号品位がしきい値T1以下になったときに、MIMOアンテナ装置を構成する各アンテナ素子における受信信号レベルを取得し、この取得された受信信号レベルに基づいて、所望波信号及び干渉波信号が存在する無線環境に応じて最適なMIMO通信を可能にするMIMOアンテナ装置を実現することができる。
本発明によれば、復調信号の信号品位及び受信信号の信号レベルに基づいて、MIMO通信方式のデータストリーム数の削減を実行すること、及び/又はMIMO通信方式の変復調方法の変更を実行することにより、小型形状のMIMOアンテナ装置であっても、所望の受信品位が得られない場合に干渉波抑圧とMIMO復調処理とを両立することにより高品位でかつ高速な通信を行うことが可能なMIMOアンテナ装置、及びそれを備えた移動体用の無線通信装置を提供することができる。
第2の実施形態に係るさらなる変形例として、3つのデータストリームを用いたMIMO通信を実行しているときに1つの干渉波信号が存在する場合、2つのデータストリームを用いたMIMO通信により無線通信を実行するMIMOアンテナ装置を構成することもでき、データストリーム毎にアダプティブ制御を繰り返し行うことでMIMO復調を可能にする。
以上に示したように、本実施形態の構成によれば、小型形状のMIMOアンテナ装置であっても、所望の受信品位が得られない場合にMIMO通信方式のデータストリーム数と変復調方法とを適応的に制御し、さらには干渉波抑圧とMIMO復調処理とを両立することにより高品位でかつ高速な通信を行うことが可能なMIMOアンテナ装置、及びそれを備えた移動体用の無線通信装置を提供することができる。
本発明の第1の実施形態に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態の変形例に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施形態の第1の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。 本発明の第1の実施形態の第2の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。 本発明の第1の実施形態の第3の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。 本発明の第1の実施形態の第4の実装例に係る、MIMOアンテナ装置を備えた携帯無線通信装置の構成を示す透視図である。 図1のコントローラ5によって実行されるMIMO適応制御処理を示すフローチャートである。 図7のSISO通信処理のステップS11を示すサブルーチンである。 図7のMIMO適応制御処理におけるしきい値の判定を説明するための、瞬時のCNR及びBERを示すグラフである。 図7のMIMO適応制御処理におけるしきい値の判定を説明するための、時間平均されたCNR及びBERを示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施形態の変形例に係るMIMOアンテナ装置の構成を示すブロック図である。 図11のコントローラ5によって実行されるMIMO適応制御処理の第1の部分を示すフローチャートである。 図11のコントローラ5によって実行されるMIMO適応制御処理の第2の部分を示すフローチャートである。
符号の説明
1a,1b,1c…受信アンテナ素子、
1aa,1ba…ストリップ導体、
1ab,1bb…ヒンジ部導体、
2…A/D変換回路、
3…MIMO復調回路、
4…信号レベル検出回路、
5…コントローラ、
6…無線送信回路、
7…送信アンテナ素子、
11…スイッチ回路、
12…アダプティブ復調回路、
13a,13b,13c…振幅調整器、
14a,14b,14c…移相器、
15…合成器、
16…復調器、
17…振幅位相コントローラ、
21…アンテナ共用器、
31…上部筐体、
32…下部筐体、
33…ヒンジ部、
34…ブーム部、
35…スピーカ、
36…ディスプレイ、
37…キーボード、
38…マイクロホン、
39…無線通信回路。

Claims (9)

  1. 送信側無線局装置により所定のデータストリーム数及び変復調方法を有するMIMO(Multi−Input Multi−Output)通信方式で変調された後送信された複数の無線信号を受信するMIMOアンテナ装置において、
    上記複数の無線信号をそれぞれ受信する複数のアンテナ素子と、
    上記複数の無線信号の受信信号レベルをそれぞれ検出する検出手段と、
    上記複数の無線信号をMIMO復調して第1の復調信号を生成するとともに、上記第1の復調信号の信号品位を判定するMIMO復調手段と、
    上記送信側無線局装置によって使用されるMIMO通信方式を制御する制御信号を上記送信側無線局装置に無線送信する無線送信手段と、
    上記受信信号レベル及び上記信号品位に基づいて、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数及び変復調方法の少なくとも一方を変更するように、上記無線送信手段に上記制御信号を送信させることにより上記送信側無線局装置を制御するとともに、上記MIMO復調手段を制御する制御手段とを備え、
    上記制御手段は、上記第1の復調信号の信号品位が所定の第1のしきい値未満である場合において、
    (1)上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが所定の第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を削減し、
    (2)上記複数の無線信号の少なくとも1つに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値未満であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも低い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とするMIMOアンテナ装置。
  2. 上記制御手段は、上記第1の復調信号の信号品位が上記第1のしきい値以上である場合において、上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも高い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする請求項1記載のMIMOアンテナ装置。
  3. 上記制御手段は、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を所定数に削減した場合において、上記MIMO復調手段による復調回数が所定の最大復調回数を超えたとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を増大させることを特徴とする請求項1又は2記載のMIMOアンテナ装置。
  4. 上記MIMOアンテナ装置は、
    上記データストリーム数が1つであるとき、主ビームを所望波信号の方向に向けるように上記複数の無線信号に重み付けして復調することにより第2の復調信号を生成するアダプティブ復調手段と、
    上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段又は上記アダプティブ復調手段に入力するように切り換えるスイッチ手段とをさらに備え、
    上記制御手段はさらに、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御しかつ上記第1の復調信号の信号品位が上記第1のしきい値未満である場合において、
    (1)上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を1つに削減し、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記アダプティブ復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御し、
    (2)上記複数の無線信号の少なくとも1つに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値未満であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも低い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする請求項1記載のMIMOアンテナ装置。
  5. 上記アダプティブ復調手段は、漸化的な繰り返し処理を実行することにより主ビームを所望波信号の方向に向けるように上記複数の無線信号に重み付けすることを特徴とする請求項4記載のMIMOアンテナ装置。
  6. 上記制御手段は、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御しかつ上記第1の復調信号の信号品位が上記第1のしきい値以上である場合において、上記複数の無線信号のすべてに係る受信信号レベルが上記第2のしきい値以上であるとき、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式の変復調方法を、現在の伝送レートよりも高い伝送レートを有する変復調方法に変更することを特徴とする請求項4又は5記載のMIMOアンテナ装置。
  7. 上記制御手段は、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記アダプティブ復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御した場合において、上記アダプティブ復調手段による復調回数が所定の最大復調回数を超えたとき、上記スイッチ手段を切り換えて上記複数の無線信号を上記MIMO復調手段に入力するように上記スイッチ手段を制御し、上記送信側無線局装置及び上記MIMO復調手段によって使用されるMIMO通信方式のデータストリーム数を増大させることを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1つに記載のMIMOアンテナ装置。
  8. 上記無線送信手段は、上記複数のアンテナ素子のうちの少なくとも1つを用いて上記制御信号を上記送信側無線局装置に送信することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載のMIMOアンテナ装置。
  9. 請求項1乃至8のうちのいずれか1つに記載のMIMOアンテナ装置を備えたことを特徴とする無線通信装置。
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