JP4832134B2 - カブトガニ由来のg因子の生産方法 - Google Patents
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Description
AcNPV:Autographa californicaの核多角体病ウイルス
BG:(1→3)−β−D−グルカン
Et:エンドトキシン(「リポポリサッカライド」ともいう。)
HEPES:2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(2-[4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic acid)
HPR:ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase)
MOI:多重感染度(multiplicity of infection)
NPV:核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus)
PBS:リン酸緩衝生理食塩液(phosphate buffered saline)
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction)
pNA:パラニトロアニリン
PVDF:ポリビニリデン・ジフルオリド(polyvinylidene difluoride)
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)
SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
カブトガニ・アメボサイト・ライセート(以下、単に「ライセート」という。)を使用して、EtやBGを測定する方法が知られている。この方法は、EtやBGによってライセートが凝固することに基づいている。この凝固反応は、いくつかの凝固因子が段階的に活性化されることによって引き起こされる(特許文献1、非特許文献1)。
例えば、BGがライセートに接触すると、ライセート中に存在するG因子が活性化されて活性型G因子が生成する。この活性型G因子は、ライセート中に存在するプロクロッティングエンザイムを活性化してクロッティングエンザイムが生成する。このクロッティングエンザイムは、ライセート中に存在するコアキュローゲン分子中の特定の箇所を限定水解し、これによりコアギュリンゲルが生成してライセートが凝固する。コアギュローゲンは、合成基質(例えばt−ブトキシカルボニル−ロイシル−グリシル−アルギニン−pNA(Boc−Leu−Gly−Arg−pNA))にも作用して、そのアミド結合を水解してpNAを遊離する。したがって、生成した発色物質(pNA)の吸光度を測定することにより、BGを定量することができる(特許文献1)。
ここにいうカブトガニは、タキプレウス・トリデンタツス、リムルス・ポリフェムス、タキプレウス・ギガス及びカルシノスコルピウス・ロツンディカウダから選択されることが好ましい。
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(B)「配列番号2に示されるアミノ酸配列における1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は転位したアミノ酸配列を含み、かつ、カブトガニ由来のG因子のαサブユニットの活性を有するタンパク質」をコードするDNA。
(a)配列番号1における塩基番号1〜2022で示される塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号1における塩基番号1〜2022で示される塩基配列を含む塩基配列において、その塩基配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列における1若しくは数個のアミノ酸を欠失、置換、挿入または転位させる塩基の変異を有し、かつ、発現されるタンパク質がカブトガニ由来のG因子のαサブユニットの活性を有することを特徴とするDNA。
ここにいう「ウイルス」は、バキュロウイルスであることが好ましい。バキュロウイルスのなかでも、NPVが好ましく、AcNPVであることがより好ましい。
また本発明は、カブトガニ由来のG因子のβサブユニットをコードするDNAが保持された、ウイルス(以下「本発明ウイルス2」という。)を提供する。
(A)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(B)「配列番号4に示されるアミノ酸配列における1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は転位したアミノ酸配列を含み、かつ、カブトガニ由来のG因子のβサブユニットの活性を有するタンパク質」をコードするDNA。
(a)配列番号3における塩基番号1〜930で示される塩基配列を含むDNA、
(b)配列番号3における塩基番号1〜930で示される塩基配列を含む塩基配列において、その塩基配列によってコードされるタンパク質のアミノ酸配列における1若しくは数個のアミノ酸を欠失、置換、挿入または転位させる塩基の変異を有し、かつ、発現されるタンパク質がカブトガニ由来のG因子のβサブユニットの活性を有することを特徴とするDNA。
ここにいう「ウイルス」は、バキュロウイルスであることが好ましい。バキュロウイルスのなかでも、NPVが好ましく、AcNPVであることがより好ましい。
また本発明は、本発明ウイルスを保持する細胞(以下「本発明細胞」という。)を提供する。
本発明細胞は、本発明ウイルス1と、本発明ウイルス2の両方を保持するものが好ましい。この細胞は、本発明ウイルス1と、本発明ウイルス2とを、前者のMOIが後者のMOIよりも高くなるように細胞に感染させて得られるものであることが好ましい。この場合には、本発明ウイルス1のMOIと、本発明ウイルス2のMOIとが1.5:1〜64:1となるように設定されることが好ましい。
また本発明細胞は、昆虫由来の細胞であることが好ましい。
<1>−1 本発明ウイルス1
本発明ウイルス1は、カブトガニ由来のG因子のαサブユニットをコードするDNAが保持された、ウイルスである。
このようなDNAとしては、以下のようなカブトガニに由来するG因子のαサブユニットがコードされているDNAが例示される;
タキプレウス・トリデンタツス、リムルス・ポリフェムス、タキプレウス・ギガス及びカルシノスコルピウス・ロツンディカウダ。
これらのなかでも、タキプレウス・トリデンタツスやリムルス・ポリフェムスに由来するG因子のαサブユニットがコードされているDNAが好ましく、タキプレウス・トリデンタツスに由来するG因子のαサブユニットがコードされているDNAがより好ましい。
(A)配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(B)「配列番号2に示されるアミノ酸配列における1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は転位したアミノ酸配列を含み、かつ、カブトガニ由来のG因子のαサブユニットの活性を有するタンパク質」をコードするDNA。
ここにいう「配列番号2に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA」は、タキプレウス・トリデンタツスに由来するG因子のαサブユニットをコードするDNAである。
<1>−2 本発明ウイルス2
本発明ウイルス2は、カブトガニ由来のG因子のβサブユニットをコードするDNAが保持された、ウイルスである。
(A)配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA、
(B)「配列番号4に示されるアミノ酸配列における1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は転位したアミノ酸配列を含み、かつ、カブトガニ由来のG因子のβサブユニットの活性を有するタンパク質」をコードするDNA。
ここにいう「配列番号4に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするDNA」は、タキプレウス・トリデンタツスに由来するG因子のβサブユニットをコードするDNAである。
また上記の「(B)のDNAによってコードされるタンパク質」の意義は、前記の「<1>−1」と同様である。なお(B)のDNAによってコードされるタンパク質は、カブトガニ由来のG因子のβサブユニットの活性を有するものである。G因子のβサブユニットはセリンプロテアーゼ活性を有していることから、セリンプロテアーゼ活性の有無を調べることによって、βサブユニットの活性の有無を調べることができる。
なお、「数個のアミノ酸」、「DNAが保持された」等の意義は、「<1>−1」と同様である。また本発明ウイルス2の製造方法も、前記「<1>−1」における「配列番号2」を「配列番号4」と読み替えたものと同じである。
また、前記(A)又は(B)のDNAが保持されたウイルスが製造されたか否かの確認も、「<1>−1」と同様に行うことができる。本発明ウイルス2も、例えば後述する「本発明細胞」の製造に使用することができ、ひいては本発明方法等に利用することができる。
<2>本発明細胞
本発明細胞は、本発明ウイルスを保持する細胞である。
本発明細胞が、本発明ウイルス1と、本発明ウイルス2の両方を保持する細胞である場合には、当該細胞は、本発明ウイルス1と本発明ウイルス2とを、前者のMOIが後者のMOIよりも高くなるように細胞に感染させて得られるものであることが好ましい。このような本発明細胞としては、例えば、本発明ウイルス1のMOIと本発明ウイルス2のMOIの比を1.5:1〜64:1となるようにして細胞に感染させたものを例示することができる。この本発明ウイルス1のMOIと本発明ウイルス2のMOIとの比は、1.5:1〜32:1であることがより好ましく、2:1〜32:1であることがより好ましく、2:1〜16:1であることがより好ましく、2:1〜8:1であることがより好ましく、2:1〜6:1であることがより好ましく、2:1〜4:1又は3:1〜5:1であることがより好ましく、4:1であることがより好ましい。
<3>本発明方法
本発明方法は、本発明細胞を生育させ、その生育物からカブトガニ由来のG因子のαサブユニット及び/又はβサブユニットを採取する工程を少なくとも含む、カブトガニ由来のG因子のαサブユニット及び/又はβサブユニットの生産方法である。
αサブユニットとβサブユニットの両方を生産させると、「αサブユニット及びβサブユニットから構成され、カブトガニ由来のG因子の活性を保持しているタンパク質」を生産させることができる。
生産されたタンパク質が、αサブユニット及び/又はβサブユニットであるか否か、αサブユニット及びβサブユニットから構成されているか否か、カブトガニ由来のG因子の活性を保持しているか否か等は、採取されたタンパク質のアミノ酸配列、分子量、電気泳動結果、サブユニットに特異的に反応する抗体を用いたウエスタンブロッティング、BGへの結合能、セリンプロテアーゼ活性の有無等を分析することによって確認することができる。
<1>G因子のαサブユニットの発現
G因子のαサブユニットをコードするcDNA(九州大学大学院医学研究院分子細胞生化学分野の牟田達史博士より入手した。このcDNAは、前記の非特許文献2に記載の方法で調製したものである。)を、トランスファーベクター(pPSC8)に導入し、所定の塩基配列を有するクローンを選択した。選択された発現ベクター(FactorG-α/pPSC8)DNAとバキュロウイルス(AcNPV)DNAをSf9細胞にコトランスフェクトした。この培養液上清から得られたウイルス液を純化し、増幅した。バキュロウイルスに感染した細胞からウイルスDNAを抽出しシークエンス解析をした。得られたウイルス液をexpresSF+(登録商標)細胞に感染させ、ウエスタンブロッティングによって発現物の解析を行った。以下、これらのステップの詳細を説明する。
1.発現ベクターの構築
G因子のαサブユニットをコードするcDNA(FactorG-α/pFastbac1)をBamHI/Hind IIIで処理し、目的遺伝子が含まれる約2,100bpの断片を回収した。このサンプルを平滑末端化処理後、Nru Iで処理したpPSC8(プロテイン・サイエンス(Protein Science)社製)と混合し、ライゲーション反応を行った。ライゲーション産物でE.coli JM109を形質転換し、形質転換体を得た。目的サイズの断片が確認されたプラスミドを精製し、シークエンスを確認した。シークエンスの解析には、以下のプライマー、及びABI Prism Big Dye Terminator Cycle Sequencing Kit Ver.3 (Applied Biosystems社)を使用した。また電気泳動には自動シークエンサーABI Prism 310 Genetic Analyzer (Applied Biosystems社)を、解析にはGenetyx(ゼネティクス社)を使用した。プライマー配列を配列表の配列番号5〜13に示す。
配列番号5:PSC F
配列番号6:PSC R
配列番号7:Factor G α 441/460-F
配列番号8:Factor G α 941/960-F
配列番号9:Factor G α 1601/1620-F
配列番号10:Factor G α 582/563-R
配列番号11:Factor G α 1082/1063-R
配列番号12:Factor G α 1582/1563-R
配列番号13:Factor G α 1700/1681-R
目的遺伝子の挿入が確認されたクローンを、50μg/mLのアンピシリンを含む100mLのLB培地に植菌し、30℃で一晩培養した。増殖した菌体を回収し、Plasmid Midi Kit(QIAGEN社)のマニュアルに従ってプラスミドを精製した。
2.コトランスフェクション
25cm2フラスコに播いた1.0 x 106 個のSf9細胞に、G因子のαサブユニットをコードするcDNAを保持する発現ベクター 4.6 μg、Linear AcNPV DNA 85ng及びLIPOFECTIN Reagent((インビトロジェン)Invitrogen社製)5μLを含む無血清SF-900 II 培地(インビトロジェン(Invitrogen)社製) 200μLを添加した。28℃で6時間静置後、培養液量が5mLとなるように無血清Sf-900 II培地を加えた。さらに28℃で9日間培養後に培養上清を回収し、コトランスフェクション溶液とした。
3.組換えウイルスの純化
組換えウイルスの純化は、プラークアッセイ法で行った。具体的な方法は以下の通りである。
4.組換えウイルスの増幅
次いで、組換えウイルスの増幅(組換えウイルス液の作製)を行った。具体的な方法は以下の通りである。
5.遺伝子挿入確認
その後、細胞へのDNAの挿入を確認した。具体的な方法は以下の通りである。
配列番号14:PSC F2
配列番号15:PSC R2
0.2mLのサンプルチューブに上記のウイルスDNA 1μL、2.5mM dNTP 8μL、KOD buffer 5μL、25mM 塩化マグネシウム溶液 4μL、PSC F2及びPSC R2プライマー(4pmol/mL)をそれぞれ2.5μL、KOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)1μL及び滅菌した純水26μLを添加してよく攪拌した。これを用いて、「94℃で30秒間、50℃で30秒間、74℃で60秒間」のサイクルを30サイクル繰り返してPCRを行った。
6.組換えウイルス液の作製
対数増殖期にある培養昆虫細胞 expresSF+(登録商標;プロテイン・サイエンス(Protein Science)社製)を、1.5 x 106 個/mlとなるように無血清 Sf-900 II培地で希釈し、250 ml 三角フラスコに100 ml用意した。これに上記第2代ウイルス液を1 ml加え、130 rpm、28℃で3日間振盪培養した。培養後、培養液を、3,000 x g、4℃で15分間遠心し、上清と沈殿に分画した。この培養上清を回収し、第3代ウイルス液とした。
7.タイター測定
2.0 x 106 個のSf9細胞を直径60 mmのシャーレに播き、28℃で1時間静置して細胞を底面に定着させた後、培養液を除去した。第3代ウイルス液を無血清Sf-900II 培地で105、106、107及び108倍に希釈し、これらの溶液をそれぞれ1 mlずつシャーレに添加し、室温で1時間穏やかに振盪した。その後、シャーレ上清(ウイルス液)を取り除き、0.5% SeaKemGTG agarose(BMA社製)を含有する無血清Sf-900II 培地 4 ml を流し込んで、28℃で9日間静置培養した。培地ごとに、観察されたプラークの個数を数え、タイターを求めた。
8.発現試験
昆虫細胞 expresSF+を、1.5 x 106 個/mlとなるように無血清 Sf-900 II培地で希釈し、250 ml 三角フラスコ3本に100 mlずつ用意した。これらに上記第3代ウイルス液を各々MOI=0.5、2、8となるように加え、130 rpm、28℃で3日間振盪培養した。培養後、培養液を、3,000 x g、4℃で15分間遠心し、上清と沈殿に分画した。
9.発現物の確認
前記「8.」で回収したサンプルについて、定法に従いSDS−PAGEを行った。セミドライブロッティング法によりブロッティング膜にタンパク質を転写し、以下の条件でウエスタンブロッティングを行った。なお、ウイルス中に組み込まれた「G因子のαサブユニットをコードするDNA」は、His-tagが結合した形で発現されるようデザインされている。
ブロッティング膜:PVDFを用いた。
10.結果
pPSC8に挿入後の全塩基配列を解析した結果、G因子のαサブユニットをコードするDNAの塩基配列と完全に一致した。このことから、PCRによってミューテーションが導入されていないことが確認された。また組換えウイルスにおける目的配列のN末端及びC末端に対応する部分の塩基配列を解析した結果、G因子のαサブユニットをコードするDNAの塩基配列と一致した。このことから、組換えウイルス中にG因子のαサブユニットをコードするDNAの塩基配列の存在が確認された。
<2>G因子のβサブユニットの発現
G因子のβサブユニットをコードするcDNA(九州大学大学院医学研究院分子細胞生化学分野の牟田達史博士より入手した。このcDNAは、前記の非特許文献2に記載の方法で調製したものである。)を、前記<1>と同様に発現させ、その発現物の解析を行った。以下、これらのステップの詳細を説明する。
1.発現ベクターの構築
G因子のβサブユニットをコードするcDNA(FactorG-β/pFastbac1)をBamHI/Hind IIIで処理し、目的遺伝子が含まれる約1,000bpの断片を回収した。このサンプルを平滑末端化処理後、Nru Iで処理したpPSC8と混合し、ライゲーション反応を行った。ライゲーション産物でE.coli JM109を形質転換し、形質転換体を得た。目的遺伝子の挿入が確認されたクローンを、50μg/mLのアンピシリンを含む100mLのLB培地に植菌し、37℃で一晩培養した。増殖した菌体を回収し、Plasmid Midi Kit(QIAGEN社)のマニュアルに従ってプラスミドを精製した。
2.コトランスフェクション
25cm2フラスコに播いた1.0 x 106 個のSf9細胞に、G因子のβサブユニットをコードするcDNAを保持する発現ベクター 4.6 μg、Linear AcNPV DNA 85ng及びLIPOFECTIN Reagent 5μLを含む無血清SF-900 II 培地 200μLを添加した。28℃で6時間静置後、培養液量が5mLとなるように無血清Sf-900 II培地を加えた。さらに28℃で7日間培養後に培養上清を回収し、コトランスフェクション溶液とした。
3.組換えウイルスの純化
組換えウイルスの純化は、プラークアッセイ法で行った。具体的な方法は以下の通りである。
4.組換えウイルスの増幅
次いで、組換えウイルスの増幅(組換えウイルス液の作製)を行った。具体的な方法は以下の通りである。
5.遺伝子挿入確認
その後、細胞へのDNAの挿入を確認した。具体的な方法は以下の通りである。
配列番号16:PSC F2
配列番号17:PSC R2
0.2mLのサンプルチューブに上記のウイルスDNA 1μL、2.5mM dNTP 8μL、KOD buffer 5μL、25mM 塩化マグネシウム溶液 4μL、PSC F2及びPSC R2プライマー(4pmol/mL)をそれぞれ2.5μL、KOD DNAポリメラーゼ(TOYOBO社)1μL及び滅菌した純水26μLを添加してよく攪拌した。これを用いて、「94℃で30秒間、50℃で30秒間、74℃で60秒間」のサイクルを30サイクル繰り返してPCRを行った。
配列番号18:PSC F
配列番号19:PSC R
6.組換えウイルス液の作製
対数増殖期にある培養昆虫細胞 expresSF+(登録商標)を、1.5 x 106 個/mlとなるように無血清 Sf-900 II培地で希釈し、250 ml 三角フラスコに100 ml用意した。これに上記第2代ウイルス液を1 ml加え、130 rpm、28℃で3日間振盪培養した。培養後、培養液を、3,000 x g、4℃で15分間遠心し、上清と沈殿に分画した。この培養上清を回収し、第3代ウイルス液とした。
7.タイター測定
2.0 x 106 個のSf9細胞を直径60 mmのシャーレに播き、28℃で1時間静置して細胞を底面に定着させた後、培養液を除去した。第3代ウイルス液を無血清Sf-900II 培地で105、106、107及び108倍に希釈し、これらの溶液をそれぞれ1 mlずつシャーレに添加し、室温で1時間穏やかに振盪した。その後、シャーレ上清(ウイルス液)を取り除き、0.5% SeaKemGTG agarose(BMA社製)を含有する無血清Sf-900II 培地 4 ml を流し込んで、28℃で9日間静置培養した。培地ごとに、観察されたプラークの個数を数え、タイターを求めた。
8.発現試験
昆虫細胞 expresSF+を、1.5 x 106 個/mlとなるように無血清 Sf-900 II培地で希釈し、250 ml 三角フラスコ3本に100 mlずつ用意した。これらに上記第3代ウイルス液を各々MOI=0.5、2、8となるように加え、130 rpm、28℃で3日間振盪培養した。培養後、培養液を、3,000 x g、4℃で15分間遠心し、上清と沈殿に分画した。
9.発現物の確認
前記「8.」で回収したサンプルについて、前記「<1>の9.」と同じ方法でSDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを行った。なお、ウイルス中に組み込まれた「G因子のβサブユニットをコードするDNA」は、His-tagが結合した形で発現されるようデザインされている。
10.結果
組換えウイルスにおける目的配列のN末端及びC末端に対応する部分の塩基配列を解析した結果、G因子のβサブユニットをコードするDNAの塩基配列と一致した。このことから、組換えウイルス中にG因子のβサブユニットをコードするDNAの配列が確認された。
<3>G因子のα及びβサブユニットの共発現
前記<1>及び<2>において調製したG因子のα及びβサブユニットについてのそれぞれの第3代ウイルス液を用いて、両サブユニットの共発現を試みた。
サンプル1:αサブユニット:βサブユニット=1:0(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=57.7:0(ウイルス量(μL))
サンプル2:αサブユニット:βサブユニット=0:1(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=0:187.5(ウイルス量(μL))
サンプル3:αサブユニット:βサブユニット=1:1(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=57.7:187.5(ウイルス量(μL))
サンプル4:αサブユニット:βサブユニット=1:2(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=57.7:375(ウイルス量(μL))
サンプル5:αサブユニット:βサブユニット=1:4(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=57.7:750(ウイルス量(μL))
サンプル6:αサブユニット:βサブユニット=2:1(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=115.4:187.5(ウイルス量(μL))
サンプル7:αサブユニット:βサブユニット=4:1(MOI比)
αサブユニット:βサブユニット=230.8:187.5(ウイルス量(μL))
上清について、SDS-PAGEゲルを10%ゲル(BIO-RAD社)とし、検出用の抗体を抗GST-HRP Conjugate(Amersham Biosciences社)とした以外は、前記「<1>の9.」と同じ方法で、SDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを行った。なお、ウイルス中に組み込まれた「G因子αサブユニットをコードするDNA」及び「G因子のβサブユニットをコードするDNA」は、いずれもGSTが結合した形で発現されるようデザインされている。
その結果、目的の位置(約75kDa付近及び約37kDa付近)に抗GST抗体と反応するバンドが確認された。このことから、G因子のα及びβサブユニットの両方が発現されたことが確認された。
また、上清をNi Sepharose 6 Fast Flow(Amersham Biosciences社)を用いて精製し、これを脱塩・濃縮したサンプルについて、SDS-PAGEゲルを5−20%グラジエントゲル(ATTO社)とし、一次抗体を抗G因子αサブユニット血清と抗G因子βサブユニット血清(いずれも、九州大学大学院医学研究院分子細胞生化学分野の牟田達史博士より恵与された。)との混合物とし、二次抗体としてHRP結合抗ウサギIgG抗体を用い、検出にKonica Immunostain HRP-100(Konica Minolta社)を用いた以外は、前記「<1>の9.」と同じ方法で、SDS−PAGE及びウエスタンブロッティングを行った。なお、ウイルス中に組み込まれた「G因子αサブユニットをコードするDNA」及び「G因子のβサブユニットをコードするDNA」は、いずれもHis-tagが結合した形で発現されるようデザインされている。
その結果、目的の位置(約75kDa付近及び約37kDa付近)に抗体と反応するバンドが確認された。このことからも、G因子のα及びβサブユニットの両方が発現されたことが確認された。
(結果)
サンプル1(α:β=1:0):0.166
サンプル2(α:β=0:1):0.167
サンプル3(α:β=1:1):0.278
サンプル4(α:β=1:2):0.190
サンプル5(α:β=1:4):0.169
サンプル6(α:β=2:1):0.730
サンプル7(α:β=4:1):1.078
G因子 :1.328
この結果から、サンプル6や7のように、細胞にウイルスを感染させる際にαサブユニットをコードするDNAを保持するウイルスのMOIを、βサブユニットをコードするDNAを保持するウイルスのMOIよりも高くしたものにおいて、G因子の活性が認められた。またこの結果から、以上のようにして発現されたαサブユニット及びβサブユニットの各々は、それぞれの機能を失っていないことも確認された。
Claims (5)
- 以下の(1)及び(2)の両方を保持し、(1)の多重感染度が(2)の多重感染度よりも高くなるように感染させて得られることを特徴とする細胞;
(1)タキプレウス・トリデンタツス由来のG因子のαサブユニットをコードするDNAが保持されたバキュロウイルス、
(2)タキプレウス・トリデンタツス由来のG因子のβサブユニットをコードするDNAが保持されたバキュロウイルス。 - 前記(1)の多重感染度と、前記(2)の多重感染度とが1.5:1〜64:1となるように設定されることを特徴とする、請求項1に記載の細胞。
- バキュロウイルスが、核多角体病ウイルスである、請求項1又は2に記載の細胞。
- 細胞が、昆虫由来の細胞である、請求項1〜3のいずれかに記載の細胞。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞を生育させ、その生育物から、カブトガニ由来のG因子の活性を保持しているタンパク質を採取する工程を少なくとも含む、カブトガニ由来のG因子の生産方法。
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