JP4831730B2 - 培養液貯留用器具、シャーレの蓋 - Google Patents

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Description

本発明は微生物や生体細胞を培養するために用いる、シャーレ、シャーレに収容される培養液貯留用器具及び当該シャーレの蓋に関するものである。
微生物や生体細胞を培養する場合には底面が円形のシャーレが広く用いられている。このシャーレは本体と、必要に応じて使用される蓋とによって構成される。市販品のシャーレ本体で微生物等の培養に広く用いられているもののサイズは内径が35mm、深さが9mmである。このシャーレ本体に培養液を貯留し、培養液内において微生物や生体細胞の培養を行う。
また、シャーレ本体に貯留されている培養液を置換する、所謂置換培養を行う場合には、シャーレ本体に貯留された培養液内に2本のホースを入れて、一方のホースから培養液を吸引し、他方のホースから培養液を供給する。この培養液吸引用ホースと培養液供給用ホースはシャーレ本体と蓋との間の隙間からシャーレ本体内へ差し込むようにしている。
しかしながら、シャーレ本体に貯留された培養液のうち培養のために消費される量は極僅かでしかなく、その殆どは水位を一定以上に保つため入れられたもので、培養液の殆どが無駄になっている問題がある。
置換培養において用いられるホースは柔軟なプラスチック等によって構成されているため、シャーレ本体に差し込んだホースの一端部が不用意に湾曲してしまい、この一端部の位置を正確に管理することは不可能である。培養液吸引用ホースの一端部開口がシャーレ本体に貯留された培養液に浸かっていないと培養液を吸引することができないため、培養液をどうしても多めに入れて水位を必要以上に高くしてしまうことになる。このため、所謂置換培養においては、特に培養液を無駄にすることになる。
培養液の種類によっては極めて高価なものがあり、上記のような培養液の無駄な使用は実験コスト上において無視できない問題である。
本発明は上記従来の課題に着目して為されたものであり、培養液の無駄な使用を抑えることができる培養液貯留用器具、シャーレの蓋及びシャーレを提供することを課題とする。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、弾性変形可能な材料によって構成され、シャーレ本体の底面部に設置されて収容される器具本体と、前記器具本体に形成された培養液貯留用の穴または凹部と
前記器具本体の底面に形成された吸着用の凹部と、前記器具本体内に形成され前記穴または凹部の周面から上面に延びた一対の保持スリットと、前記保持スリットに保持され、前記穴または凹部に一端が連通し他端が外方に引き出されるホースとが備えられていることを特徴とする培養液貯留用器具である。
請求項2の発明は、請求項1に記載した培養液貯留用器具において、器具本体は穴内または凹部内を外部から透視できる材料によって構成されていることを特徴とする培養液貯留用器具である。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した培養液貯留用器具において、器具本体は、器具本体が収容される底面部が円形のシャーレ本体の内径より僅かに小さい直径の円盤状に形成されていることを特徴とする培養液貯留用器具である。
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した培養液貯留用器具において、穴または凹部は器具本体の中心部に設けられていることを特徴とする培養液貯留用器具である。
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれかに記載した培養液貯留用器具において、一方の保持スリットの穴または凹部に連通する一端部を、他方の保持スリットの前記穴または凹部に連通する一端部より高所に配置したことを特徴とする培養液貯留用器具である。
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載した培養液貯留用器具の器具本体が収容されるシャーレ本体の上面開口を覆うシャーレの蓋において、ホースをシャーレの外部へ引き出すための引き出し口が設けられていることを特徴とするシャーレの蓋である。
請求項7の発明は、請求項6に記載したシャーレの蓋において、引き出し口はシャーレの蓋の上面部から周面部にかけて連続する切り欠きによって構成されていることを特徴とするシャーレの蓋である。
請求項8の発明は、請求項6または7に記載したシャーレの蓋において、引き出し口の上方に位置し、引き出し口の上面を覆う覆い部が設けられていることを特徴とするシャーレの蓋である。
本発明の培養液貯留用器具によれば、培養液の無駄な使用を抑えることが可能となる。
本発明のシャーレ及びシャーレの蓋によれば、培養液貯留用器具の穴または凹部に連通するホースをシャーレ外に引き出すことができる。
本発明の実施の形態1に係るシャーレ2、培養液貯留用器具1及びシャーレの蓋3を図1から図6にしたがって説明する。
培養液貯留用器具1の構造について説明する。
符号5は器具本体を示し、この器具本体5は透明なシリコーンによって構成されており、弾性変形可能である。器具本体5は後述するシャーレ本体19の内径より僅かに小さい直径Pが33mm、厚さTが5mmの円盤状で、中心部に直径8mmの培養液貯留用の丸穴6が形成されている。また、図2に示すように器具本体5の底面には吸着用の凹部7が設けられている。
器具本体5には一対の保持スリット9、11が形成されており、保持スリット9、11にはホース13、15が保持されている。ホース13、15の一端は穴6の周面に露出する状態で備えられ、穴6と連通している。またホース13、15の一端は、穴6の高さ方向の中心よりやや下側に互いに対向して配置されている。ホース13、15は30cm程度の長さを有しており、その他端には接続パイプ17がそれぞれ取り付けられている。
シャーレの蓋3の構造について説明する。
蓋3は、シャーレ本体19の上面開口を覆うものであり、シャーレ本体19と蓋3とによってシャーレ2が構成される。このシャーレ本体19は、その底面部65が平面視円形に形成されており、内径P2が35mm、深さT2が9mmである。シャーレ2は透明プラスチックによって構成されている。
蓋3には、その上面部20から周面部22にかけて連続する一対の切り欠き21、23が形成され、切り欠き21、23は互いに対向して配置されている。切り欠き21、23は周面部22の下端が開放されている。
また蓋3の上面部20には覆い部としてのカバーハウジング25、27が設けられ、このカバーハウジング25、27は外部方向へ開口する開口部29、31を除いた部分が閉鎖された形状に形成されている(図3参照)。従って、カバーハウジング25、27は切り欠き21、23の上面を覆っている。よって、落下菌がシャーレ本体19に入り込むのを防止することができる。
尚、蓋3の内面には3つの凸部4が形成されている。
シャーレ2が収容される顕微鏡観察用培養器33について説明する。
顕微鏡観察用培養器33は、加温プレート35、上下面が開口する水槽ユニット47及び蓋39等によって構成されている。
加温プレート35はハウジング41と、このハウジングに保持されるヒーター43とから成り、ヒーター43の中心には丸穴45が形成されている。
水槽ユニット47には環状の水槽49が設けられている。水供給管51の一端部は水槽49へ突出するように備えられ、水供給管51の他端部には給水ホース53が接続されている。ガス供給管55の一端部も水槽49へ突出するように備えられ、ガス供給管55の他端部にはガスホース57が接続されている。
また、水槽ユニット47には薄い金属板によって構成される一対の押さえ板58が設けられており、この押さえ板58の一端部は水槽49に固定されたブロック61に回動自在に支持されている。
蓋39はハウジング59と、このハウジング59に保持された透明ガラスヒーター61とによって構成されている。
次に、培養貯留用具1を収容したシャーレ2を顕微鏡観察用培養器33に収容し、生体細胞等の培養を行う手順について説明する。
加温プレート35を顕微鏡のステージSの開口Saに嵌め、ハウジング41の段差部を開口Saの周縁部に係止させる。そして、この加温プレート35に対応するように水槽ユニット47をステージS上に設置して、更に水槽ユニット47の上面開口を覆うように蓋39を備える。
図示しないコントローラーを操作して、加温プレート35のヒーター43、蓋39の透明ガラスヒーター61をオンする。また給水ホース53、水供給管51を介して水を水槽49に供給して貯留する。さらにガスホース57、ガス供給管55を介して顕微鏡観察用培養器33内へCO2ガスを供給する。
顕微鏡観察用培養器33に備えられた温度センサー等の検知結果に基づき、ヒーター43、ガラスヒーター61等が制御され、顕微鏡観察用培養器33内の温度等が所定の条件に保たれる。
一方、培養液貯留用器具1の器具本体5をシャーレ本体19に収容する。前述のように、器具本体5の直径はシャーレ本体19の内径より僅かに小さい寸法に設定されているので、器具本体5をシャーレ本体19に収容するだけで、器具本体5の中心部分とシャーレ本体19の中心部分とが重複した状態となる。
また、器具本体5の底面には凹部7が形成されているので、器具本体5をシャーレ本体19の底面部65に押し付けて弾性変形させ、凹部7内の空気を排出させれば、凹部7内が負圧になり、器具本体5はシャーレ本体19の底面部65に吸着して固定される。
これにより、器具本体5の丸穴6とシャーレ本体19の底面部65の上面とによって培養液貯留用凹部66が形成される。この培養液貯留用凹部66に培養液Cを六分目程度、即ちホース13、15の一端部より水位が上になる程度まで入れて、この培養液C内に生体細胞Dを入れる。この培養液貯留用凹部66に貯留された培養液Cの量は約2.4ccである。これに対し、培養液Cをシャーレ本体19に直接入れて貯留する場合の培養液Cの量は約41ccである。従って、培養液Cの使用量を約17分の1にすることが可能となり、培養液Cの使用量を大幅に抑えることができて、しかも生体細胞Dの培養に必要な水位を得ることができる。
そして、ホース13、15を左右それぞれの方向へ引き出し、ホース13、15のそれぞれの他端部をシャーレ本体19の外側に配置する。次いで、蓋3を被せて本体19の上面開口を覆う。この際、シャーレ本体19の外側に配置されたホース13、15に切り欠き21、23を対応させる。これによりに切り欠き21、23及びカバーハウジング25、27の開口部29、31からホース13、15が引き出された状態となる。従って、ホース13、15がシャーレ本体19の縁と蓋3との間に挟まって、押し潰されるのを防止することができる。
このように切り欠き21、23は蓋3の上面部20から周面部22にかけて連続して形成され、またカバーハウジング25、27には外部方向へ開口する開口部29、31が設けられているので、蓋3をシャーレ本体19に被せるだけで、ホース13、15をシャーレ2外へ引き出した状態とすることが可能である。
尚、蓋3の内面には3つの凸部4が形成されているので、この凸部4がシャーレ本体19の上端部に当接する。従って、シャーレ本体19の上端部と蓋3の内面との間に隙間ができ、シャーレ本体19に蓋3をした状態でも、シャーレ2の通気性が保たれる。
上記シャーレ2は顕微鏡観察用培養器33に収容される。即ち、シャーレ2をヒーター43上に設置して、培養液貯留用凹部66とヒーター43の丸穴45の中心部に対応するように位置させる。前述のように器具本体5の中心部分とシャーレ本体19の中心部分とが重複した状態となっているので、シャーレ本体19の中心部を丸穴45の中心部に合わせて対応させれば、培養液貯留用凹部66と丸穴45の中心部とが重複した状態となる。
そして、一対の押さえ板58を蓋3に弾接させて、シャーレ2を固定する。
尚、シャーレ2と器具本体5は透視できる材料によって構成されているので、顕微鏡観察用培養器33に収容した状態でも、培養液貯留用凹部66内の培養液Cや生体細胞Dの状態が外部から明瞭に目視することができる。
また、ホース13、15は顕微鏡観察用培養器33のホース引き出し穴67から外部へ引き出されて、ホース13の接続パイプ17にはホース69を介して培養液吸引装置が接続され、ホース15の接続パイプ17には培養液供給装置がホース69を介して接続されている。そして、培養液貯留用凹部66内の培養液Cをホース13、パイプ17及びホース69を介して吸引し、また培養液貯留用凹部66内へホース15、接続パイプ17及びホース69を介して培養液Cを供給し、所謂置換培養を行う。
前述のように、顕微鏡観察用培養器33内の温度、湿度等が所定の条件に保たれており、またシャーレ本体19に蓋3をした状態でも、凸部4がシャーレ本体19の上端部に当接することによって、シャーレ本体19の上端部と蓋3の内面との間に隙間ができているので、シャーレ2内も生体細胞Dの培養に適した環境条件になる。
上記のようにして顕微鏡観察用培養器33に収容したシャーレ2内で生体細胞Dを培養してその状態変化を顕微鏡観察する。即ち、顕微鏡観察用培養器33の上方に位置するコンデンサーEから培養液貯留用凹部66内の生体細胞Dに対し光が照射され、顕微鏡観察用培養器33及びステージSの丸穴Saを挟んでコンデンサーEの下方に対向して備えられた対物レンズFによって生体細胞Dを捉えて顕微鏡観察を行う。
本発明の実施の形態2に係る培養液貯留用器具71を図7、図8にしたがって説明する。
培養液貯留用器具71は実施の形態1に係る培養液貯留用器具1とほぼ同じ構造を有し、その使用方法も同様であるので、その相違点についてのみ説明することとし、同じ構造部分については実施の形態1で用いた符号を付して説明を省略する。
実施の形態2以下においては、顕微鏡観察用培養器33の構造、顕微鏡観察用培養器33を顕微鏡のステージSに設置する手順及びその動作について、実施の形態1において用いた符号を付して、その説明を省略する。
培養液貯留用器具71の器具本体73の中心には、底部75を有する凹部77が形成されている。器具本体73と底部75は透明なシリコーンによって構成されている。凹部77の直径は8mmで、厚さTは5mmであり、底部75の厚さは0.5mmである。
本発明の実施の形態3に係る培養液貯留用器具81を図9、図10にしたがって説明する。
培養液貯留用器具81は実施の形態1に係る培養液貯留用器具1とほぼ同じ構造を有し、その使用方法も同様であるので、その相違点についてのみ説明することとし、同じ構造部分については実施の形態1で用いた符号を付して説明を省略する。
ホース13の穴6に連通する一端部は、ホース15の穴6に連通する一端部より高所に配置されている。
図10に示すように、培養液貯留用器具81をシャーレ本体19に収容し、培養液貯留凹部66に培養液Cを貯留する。ホース13には実施の形態1と同様に培養液吸引装置が接続され、ホース15には培養液供給装置が接続されている。
培養液貯留用凹部66内の培養液Cをホース13介して吸引し、また培養液貯留用凹部66内へホース15を介して培養液Cを供給し、所謂置換培養を行う。
尚、培養液貯留用凹部66に貯留される培養液Cの水は一定に保つ必要がある。
培養液吸引装置が培養液貯留凹部66内の培養液Cを吸引する能力は、培養液供給装置が培養液貯留凹部66内へ培養液Cを供給する能力より高くなるように設定されている。培養液貯留凹部66内の培養液Cはホース13を介して吸引されるが、培養液Cの水位がホース13の一端部開口より下側にくると、培養液吸引装置が駆動した状態であっても、培養液Cの吸引はそれ以上行われない。即ち、ホース15から培養液Cが培養液貯留凹部66へ供給され、培養液貯留凹部66内の培養液Cが増えて、その水位がホース13の一端部開口の下端よりも上がると、その分だけ培養液Cがホース13から吸引される。
前記したように、培養液吸引装置が培養液貯留凹部66内の培養液Cを吸引する能力は、培養液供給装置が培養液貯留凹部66内へ培養液Cを供給する能力より高くなるように設定されているので、培養液Cの供給量が、吸引量を上回ることはない。従って、培養液貯留凹部66に貯留される培養液Cの水位はホース13の一端部開口の下端とほぼ同じ高さになるように常に調節される。
このように、実施例3に係る培養液貯留用器具81を用いれば、培養液貯留凹部66内の培養液Cの水位を容易且つ確実に管理することが可能となる。
本発明の実施の形態4に係るシャーレ101を図11から図16にしたがって説明する。
シャーレ101は透明プラスチック製で、シャーレ本体19と、このシャーレ本体19の上面開口を覆う蓋103とによって構成されている。シャーレ本体19は平面視円形の底面部65を有しており、その内径Pは35mm、深さTは9mmである。
蓋103の上面部109には2つの丸穴111、112が形成されている。また上面部109の内面側には円筒状の嵌合筒部116、117が設けられており、この嵌合筒部116、117の嵌合丸穴119、121は上面部109の丸穴111、112にそれぞれ連続している。
尚、蓋103の内面には3つの凸部4が形成されている。
ホルダー122、123は弾性変形可能な材料としての透明なシリコーンによって構成され、ある程度の厚さを有する板状の主部124と、この主部124の下面に形成された嵌合凸部125とから構成されている。嵌合凸部125はシャーレの蓋103の丸穴111、112及び嵌合筒部116、117の嵌合丸穴119、121にぴったり嵌まる直径の円柱状に形成されている。
ホルダー122、123には、連通部材としてのL字状に曲げられたパイプ126、127が保持されている。パイプ126、127は硬質材料としてのステンレススチールによって構成されている。パイプ126、127の一端部は嵌合凸部125の下面から突出して下方を向いており、他端部は主部124の側面から突出してほぼ水平方向へ延びている。
ホルダー122、123の嵌合凸部125はシャーレの蓋103の丸穴111、112及び嵌合筒部116、117に嵌合され蓋103に取り付けられている。従って、シャーレの蓋103の内側と外側は、ホルダー122、123に保持されたパイプ126、127を介して連通している。即ち、パイプ126、127の一端部はシャーレの蓋103の内側に備えられ、他端部はシャーレの蓋103の外側に備えられている。
丸穴111、112及び嵌合筒部116、117に嵌合された嵌合凸部125は任意の位置で止めることができる。従って、ホルダー122、123の嵌合凸部125を嵌合筒部116、117に入れる深さを変えることによって、パイプ126、127の一端部の突出量を変更することができる。よって、パイプ126、127の一端部開口126a、127aを任意の位置に備えることができる。
ホルダー122、123は互いに対向して配置され、よってパイプ126、127は互いに対向して配置されている。パイプ126、127の一端部は後述するように、シャーレ本体19に蓋103を被せた状態でシャーレ本体19の底面部65に向かって突出し、他端部は外部に露出してほぼ水平方向へ延びる姿勢となる。前記パイプ126、127の外部に露出する他端部にはホース13、15が接続される。
培養液Cをシャーレ本体19に入れて貯留する。シャーレ本体19に貯留されている培養液Cの水位は4mmである。この培養液C内に生体細胞Dを入れて、蓋103をシャーレ本体19に被せて、シャーレ本体19の上面開口を覆う。蓋103をシャーレ本体19に被せた状態で、パイプ126、127の一端部はシャーレ本体19の底面部65に向かって突出している。そしてパイプ126、127の一端部開口126a、127aはシャーレ本体3の底面部65と対向し、一端部開口126a、127aとシャーレ本体3の底面部65との距離Kは3mmに設定されており、一端部開口126a、127aは培養液Cに浸かった状態となっている。
このようにパイプ126、127は不用意に湾曲しない硬質材料であるステンレススチールによって構成され、且つ取り付け位置が変更可能なホルダー122、123に保持されているので、パイプ126、127の一端部開口126a、127aの配置位置を任意に調節することができる。よって、一端部開口126a、127aとシャーレ本体3の底面部65との距離を高精度に管理することができる。
また、前述したように、パイプ126、127の一端部の突出量を変更することができるので、パイプ126、127の一端部開口126a、127aとシャーレ本体19の底面部65との距離を調節することが可能である。
尚、蓋103の凸部4がシャーレ本体19の上端部に当接することによって、シャーレ本体19の上端部と蓋103の内面との間に隙間ができる。
次に、シャーレ101を顕微鏡観察用培養器33に収容し、生体細胞等の培養を行う手順について説明する。
シャーレ101をヒーター43上に設置して、その中心部とヒーター43の丸穴45の中心部に対応するように位置させる。そして、一対の押さえ板58を蓋103に弾接させて、シャーレ101を固定する。
尚、シャーレ101は透視できる材料によって構成されているので、顕微鏡観察用培養器33に収容した状態でも、シャーレ本体19内の培養液Cや生体細胞Dの状態が外部から明瞭に目視することができる。
また、ホース13、15は顕微鏡観察用培養器33のホース引き出し穴67から外部へ引き出され、ホース13には培養液吸引装置が接続され、ホース15には培養液供給装置が接続されている。そして、シャーレ本体19内の培養液Cをパイプ126とホース13を介して吸引し、またシャーレ本体19内へホース15とパイプ127を介して培養液Cを供給し、所謂置換培養を行う。
前記のように、パイプ126、127の一端部開口126a、127aとシャーレ本体19の底面部65との距離Kは3mmに設定されているので、培養液Cの水位を4mmまで低くしても、パイプ126からシャーレ本体19内の培養液Cの吸引を行うことが可能である。従って、培養液Cをパイプ126から吸引可能なぎりぎりの水位となるように貯留することができる。よってシャーレ本体19に培養液Cを余分に入れてしまうのを防止でき、培養液Cの使用量を抑えることができる。
前述のように、顕微鏡観察用培養器33内の温度、湿度等が所定の条件に保たれており、またシャーレ本体19に蓋103をした状態でも、凸部4がシャーレ本体19の上端部に当接することによって、シャーレ本体19の上端部と蓋103の内面との間に隙間ができているので、シャーレ101内も生体細胞Dの培養に適した環境条件になる。
上記のようにして顕微鏡観察用培養器33に収容したシャーレ101内で生体細胞Dを培養してその状態変化を顕微鏡観察する。即ち、顕微鏡観察用培養器33の上方に位置するコンデンサーEからシャーレ本体19内の生体細胞Dに対し光が照射され、顕微鏡観察用培養器33及びステージSの丸穴Saを挟んでコンデンサーEの下方に対向して備えられた対物レンズFによって生体細胞Dを捉えて顕微鏡観察を行う。
図16に示すように、ホルダー122の嵌合凸部125の嵌合筒部116に対する取り付け位置を、ホルダー123の嵌合凸部125の嵌合筒部117に対する取り付け位置より高くする。即ち、ホルダー122の嵌合凸部125を、ホルダー123の嵌合凸部125よりも嵌合筒部116に浅く嵌合させる。これにより、パイプ126の一端部開口126aはパイプ127の一端部開口127aより高所に位置することになる。
上記のように、ホルダー122、123の嵌合凸部125を嵌合筒部116、117に入れる深さを調節することによって、後述するようにパイプ126、127の一端部開口126a、127aとシャーレ本体19の底面65との距離Kを調節することができる。
培養液吸引装置はシャーレ本体19内の培養液Cを吸引する能力は、培養液供給装置がシャーレ本体19内へ培養液Cを供給する能力より高くなるように設定されている。シャーレ本体19内の培養液Cはパイプ126及びホース13を介して吸引されるが、培養液Cの水位がパイプ126の一端部開口126aより下側にくると、培養液吸引装置が駆動した状態であっても、培養液Cの吸引はそれ以上行われない。即ち、ホース15及びパイプ127から培養液Cがシャーレ本体19へ供給され、シャーレ本体19内の培養液Cが増えて、その水位がパイプ126の一端部開口126aよりも上がると、その分だけがパイプ126及びホース13から吸引される。
前記したように、培養液吸引装置はシャーレ本体19内の培養液Cを吸引する能力は、培養液供給装置がシャーレ本体19内へ培養液Cを供給する能力より高くなるように設定されているので、培養液Cの供給量が、吸引量を上回ることはない。従って、シャーレ本体19に貯留される培養液Cの水位はパイプ126の一端部開口126aとほぼ同じ高さになるように常に調節される。
このように、シャーレ本体19内の培養液Cの水位を容易且つ確実に管理することが可能となる。
本発明の実施の形態5に係るシャーレ171を図17、図18にしたがって説明する。
シャーレ171は実施の形態4に係るシャーレ101とほぼ同様の構造を有しているので、同様の構造部分については実施の形態4で用いた符号を付してその説明を省略し、その相違点についてのみ説明する。
シャーレの蓋173には実施の形態4の嵌合筒部116、117は設けられておらず、丸穴111、112だけが形成されている。
ホルダー122、123にはL字状の連通穴128が形成されており、この連通穴128は主部124の一側面と嵌合凸部125の下面とに開口を有している。
直管状のパイプ126bはホルダー122の主部124の一側面の開口から連通穴128へ差し込まれ嵌合している。また、直管状のパイプ126cは嵌合凸部125の下面の開口から連通穴128へが差し込まれ嵌合している。
直管状のパイプ127bはホルダー123の主部124の一側面の開口から連通穴128へ差し込まれ嵌合している。また、直管状のパイプ127cは嵌合凸部125の下面の開口から連通穴128へ差し込まれ嵌合している。
パイプ126b、126c、127b、127cは硬質材料としてのステンレススチールによって構成されている。
これら連通穴128を有するホルダー122、123、パイプ126b、127b及びパイプ126c、127cによって連通部材が構成されている。また、パイプ126c、127cのホルダー122、123から突出する部分が連通部材の一端部となり、シャーレの蓋173をシャーレ本体19に被せて上面開口を覆った状態では、パイプ126c、127cの一端部がシャーレ本体19の底面65へ向かって突出する。また、パイプ126b、127bが連通部材の他端部となる。
上記のようにホルダー122、123の連通穴128にパイプ126b、126c及びパイプ127b、127cをそれぞれ差し込むだけなので、実施の形態4のようにL字状のパイプ126、127をホルダー122、123に保持させるためインサート成形等を行う必要がなく、製造工程を簡単なものとできる。
パイプ126bのホルダー122から突出する部分にはホース13が接続され、パイプ127bのホルダー123から突出する部分にはホース15が接続されている。
このシャーレ171では、シャーレ本体19に貯留された培養液Cはパイプ126c、連通穴128、パイプ126b及びホース13を介して吸引され、またホース15、パイプ127b、連通穴128及びパイプ127cを介して培養液Cがシャーレ本体19内へ供給される。
尚、実施の形態4と同様に、ホルダー122の穴111に対する取り付け位置を、ホルダー123の穴112に対する取り付け位置より高くして、パイプ126cの一端部開口126dをパイプ127cの一端部開口127dより高所に位置させて、シャーレ本体19内の培養液Cの水位を管理することが可能である。
以上、本発明の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、実施の形態1から3において、器具本体5、73、81にスリット9、11、ホース13、15を設けない構成としてもよい。この構成では所謂置換培養には使用しない。
また、器具本体5は全体を透視できる材料によって構成したが、これに限定されず透明でない材料によって構成してもよい。また、器具本体77は少なくとも底部75を透視できる材料によって構成すればよく、それ以外の部分を透視できない材料によって構成してもよい。
更に、器具本体5、73、81を弾性変形しない例えば硬質のプラスチック、ガラス等によって構成してもよい。またホース13、15は3本以上備えるようにしてもよい。
また、器具本体5、73、81の底面に凹部7を形成しない構成としてもよい。
器具本体5、73、81の直径、厚さ寸法及び丸穴6、凹部77の直径、深さ寸法は、上記したものに限定されず、シャーレの大きさ、培養する微生物や生体細胞の種類等によって適宜設定されるものである。
上記実施の形態では器具本体5、73にスリット9、11を形成し、スリット9、11にホース13、15を挟み込むことによって保持したが、スリット9、11を形成する代わりに穴を形成して、この穴にホース13、15を通して、一端部が器具本体5の穴6または器具本体73の凹部77に連通するように備えてもよい。
上記実施の形態4、5では、連通部材を2つ備えたが、3つ以上備える構成としてもよい。
また、パイプ126、127、126c、127cは不用意に湾曲せず、その姿勢を保持できる硬質材料であればステンレススチール以外の金属、例えばアルミニウム合金等によって構成してもよく、また硬質のプラスチック、ガラス等によって構成してもよい。
ホルダー122、123はシリコーン以外の弾性変形可能な合成ゴム等によって構成してもよい。
パイプ126、127、126c、127cの一端部開口126a、127aとシャーレ本体19の底面65との距離Kを調節できる構成としたが、本発明はこれに限定されず、ホルダー122、123の嵌合凸部125を嵌合筒部116、117に固定して、距離Kを調節できない構成とすることも可能である。また、ホルダー122、123をシャーレの蓋103に固定する方法は嵌合に限らず、ネジ等により固定してもよい。
尚、ホルダー122、123は蓋103に固定して、上記したように、パイプ126、127の一端部開口126a、127aとシャーレ本体19の底面65との距離Kを調節できない構成とすることも可能である。また、ホルダー122、123をシリコーンのように弾性変形しない硬質のプラスチックによって構成することも可能である。
本発明の実施の形態1に係る培養液貯留用具及び、この培養液貯留用具を収容するシャーレの斜視図である。 図1のA−A断面図である。 図1のB−B断面図である。 図1の培養液貯留用具をシャーレに収容した状態の斜視図である。 図4の培養液貯留用具を収容したシャーレを顕微鏡観察用培養器に収容した状態の斜視図である。 図5のG−G断面図である。 本発明の実施の形態2に係る培養液貯留用具及び、この培養液貯留用具を収容するシャーレの斜視図である。 図7のA−A断面図である。 本発明の実施の形態3に係る培養液貯留用具の断面図である。 本発明の実施の形態3に係る培養液貯留用具をシャーレに収容した状態の断面図である。 本発明の実施の形態4に係るシャーレの分解斜視図である。 図11のシャーレに培養液及び生体細胞を入れた状態の斜視図である。 図12のA−A断面図である。 図12のシャーレを顕微鏡観察用培養器に収容した状態の斜視図である。 図14のB−B断面図である。 本発明の実施の形態4に係るシャーレを使用して培養液の水位を一定に保つ方法を説明するための断面図である。 本発明の実施の形態5に係るシャーレの分解斜視図である。 図17のシャーレの図13に対応する断面図である。
符号の説明
1、71、81 培養液貯留用具 2 シャーレ 3 シャーレの蓋
4 凸部 5、73 器具本体 6 丸穴 7 凹部
9、11 保持スリット 13、15 ホース 17 接続パイプ
19 シャーレ本体 20 蓋の上面部 22蓋の周面部
21、23 切り欠き 25、27 カバーハウジング
29、31 開口部 33 顕微鏡観察用培養器
35 加温プレート 37 水槽ユニット 39 蓋
41 ハウジング 43 ヒーター 45 丸穴
47 水槽ユニット 49 水槽 51 水供給管
53 給水ホース 55 ガス供給管
57 ガスホース 58 押さえ板
59 ハウジング 61 透明ガラスヒーター 63 固定ブロック
65 シャーレ本体の底面部 66 培養液貯留用凹部
67 穴 69 ホース
75 底部 77 凹部
S 顕微鏡のステージ Sa ステージの穴 C 培養液
D 生体細胞 E コンデンサー F 対物レンズ
P 培養液貯留用器具の器具本体の直径
T 培養液貯留用器具の器具本体の厚さ
P2 シャーレ本体の内径
T2 シャーレ本体の深さ
101、171 シャーレ 103、173 シャーレの蓋
109 シャーレの蓋の上面部 111、112 丸穴
116、117 嵌合筒部 119、121 嵌合丸穴
122、123 ホルダー 124 ホルダーの主部
125 ホルダーの嵌合凸部 126、27 パイプ
126a、127a パイプの一端部開口
126b、126c、127b、127c 直管状にパイプ
126d、127d パイプの一端部開口 128 連通穴
K パイプの一端部開口とシャーレ本体の底面部との距離

Claims (8)

  1. 弾性変形可能な材料によって構成され、シャーレ本体の底面部に設置されて収容される器具本体と、前記器具本体に形成された培養液貯留用の穴または凹部と、前記器具本体の底面に形成された吸着用の凹部と、前記器具本体内に形成され前記穴または凹部の周面から上面に延びた一対の保持スリットと、前記保持スリットに保持され、前記穴または凹部に一端が連通し他端が外方に引き出されるホースとが備えられていることを特徴とする培養液貯留用器具。
  2. 請求項1に記載した培養液貯留用器具において、器具本体は穴内または凹部内を外部から透視できる材料によって構成されていることを特徴とする培養液貯留用器具。
  3. 請求項1または2に記載した培養液貯留用器具において、器具本体は、器具本体が収容される底面部が円形のシャーレ本体の内径より僅かに小さい直径の円盤状に形成されていることを特徴とする培養液貯留用器具。
  4. 請求項1から3のいずれかに記載した培養液貯留用器具において、穴または凹部は器具本体の中心部に設けられていることを特徴とする培養液貯留用器具。
  5. 請求項1から4のいずれかに記載した培養液貯留用器具において、一方の保持スリットの穴または凹部に連通する一端部を、他方の保持スリットの前記穴または凹部に連通する一端部より高所に配置したことを特徴とする培養液貯留用器具。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載した培養液貯留用器具の器具本体が収容されるシャーレ本体の上面開口を覆うシャーレの蓋において、ホースをシャーレの外部へ引き出すための引き出し口が設けられていることを特徴とするシャーレの蓋。
  7. 請求項6に記載したシャーレの蓋において、引き出し口はシャーレの蓋の上面部から周面部にかけて連続する切り欠きによって構成されていることを特徴とするシャーレの蓋。
  8. 請求項6または7に記載したシャーレの蓋において、引き出し口の上方に位置し、引き出し口の上面を覆う覆い部が設けられていることを特徴とするシャーレの蓋。
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