JP4831687B2 - 間葉系幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導方法 - Google Patents

間葉系幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導方法 Download PDF

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Description

本発明は、間葉系幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導方法、及び象牙質の再生方法に関する。より詳細には、本発明は、間葉系幹細胞をMIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することにより象牙芽細胞に分化させる方法に関する。さらに本発明は、象牙芽細胞への分化能を有する細胞を培養した培養上清を用いて間葉系幹細胞を培養することで間葉系幹細胞に歯髄細胞に類似した性質を持たせ、この細胞に、サイトカインやビタミン類などの生理活性物質を添加することで、間葉系幹細胞から象牙芽細胞へ分化させる方法に関する。本発明はさらに、上記方法により再生された象牙質に関する。本発明はさらに、上記方法により分化誘導された象牙芽細胞もしくは再生された象牙質を用いて歯科患者を治療する方法に関する。
再生医療や細胞療法の実現のためには、いかなる分野においても、その基盤となる細胞の供給源の確保は必要不可欠な命題であり、これは、歯科領域の分野においても例外ではない。歯科領域における細胞医療・再生医療を実現するためには、その硬組織形成に関与するエナメル芽細胞や象牙芽細胞を形成するための細胞を別の細胞から誘導する技術が不可欠である。しかしながら、現状においては、象牙芽細胞、エナメル芽細胞をはじめ、一部の例外を除き、その他の歯を構成する細胞を誘導する技術は確立されていない。
他の細胞から歯の細胞を誘導する技術の例として、Kramerらは、インフォームドコンセントのもとに採取したヒト歯根膜細胞とヒト骨髄より採取した間葉系幹細胞(以下、MSCとも略記する)を共培養することにより、MSCが歯根膜に含まれる繊維芽細胞と同様の性質をもつ細胞に分化することを見出した(J Dent.Res.83(1):27−34,2004)。
また、Shibaらは、歯髄由来の繊維芽細胞から、象牙芽細胞に対して特異性の高いマーカーである、DSPP(Dentin shialophosphoprotein)を強発現させる系を見出している(Biochem Biophys Res Commun.306(4):867−71,2003)。
また、特開2003−52360号公報には、基底膜細胞外基質の存在下において、間葉系幹細胞を培養することによって、例えば、基底膜細胞外基質でコートした培養皿上で間葉系幹細胞を培養することによって、間葉系幹細胞が著しく速く増殖すること、骨芽細胞、軟骨細胞、又は脂肪細胞への分化能力を維持できること、低濃度の血清でも効果的に増殖させることができること、ヒト血清を用いて培養することができること、更には優れた分化誘導培養が可能であることが記載されている。
しかしながら、現在までに、象牙芽細胞への分化誘導技術は、Shibaらの事例のように、すでに歯に含まれる細胞を用いての成功例は報告されているが、歯科領域におけるMSCなどの多能性幹細胞を用いた技術については、Kramerらのような歯根膜についての成功例はあるが、歯の硬組織形成の中心的役割を担う、象牙芽細胞やエナメル芽細胞を誘導したという例は報告されていない。
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、間葉系幹細胞から象牙芽細胞へと分化誘導する方法を提供することを解決すべき課題とした。また、本発明は、う蝕などの歯科疾患への臨床応用を可能とするような象牙質を再生する方法を提供することを解決すべき課題とした。さらに本発明は、分化誘導された象牙芽細胞又は再生した象牙質を用いてう蝕などの歯科疾患を治療する方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、間葉系幹細胞をMIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導させることができることを実証した(図1)。さらに別の解決手段として、本発明者らは、間葉系幹細胞に対して、歯髄細胞などの象牙芽細胞への分化誘導能を有する細胞の培養上清の存在下で培養することにより、間葉系幹細胞に歯髄細胞と類似の分化誘導能をもたせることができることを見出し、この手法を用いても間葉系幹細胞から象牙が細胞を誘導する系を構築できることを実証した(図2)。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、間葉系幹細胞を、象牙芽細胞への分化因子の受容体を誘導する因子及び象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子の存在下で培養することによって、象牙芽細胞へと分化させることを含む、間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法が提供される。
好ましくは、象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子は、MIP−1α(macrophage inflammatory protein−1 alpha)、MIP−1β(macrophage inflammatory protein−1 beta)、MIP−3α(macrophage inflammatory protein−3 alpha)、MCP−1(monocyte chemoattractant protein−1)、IP−10(IFN−gamma−inducible protein 10)、IL−2(interleukin 2)、IL−4(interleukin 4)、IL−5(interleukin 5)、IL−10(interleukin 10)、MIG(mucosal injury grades)、MCP−4(monocyte chemoattractant protein−4)、またはエオタキシン−1である。
好ましくは、象牙芽細胞への分化因子の受容体は、CCR6、CCR5、CXCR4、CXCR3、またはCCR−8である。
好ましくは、間葉系幹細胞をMIP−3α(Macrophage inflammatory protein−3alpha)受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することを含む、間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法が提供される。
好ましくは、MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子として少なくともデキサメタゾンを使用する。
好ましくは、MIP−3α受容体を陽転させる分化因子として、デキサメタゾン、β−グリセロホスフェート、及びアスコルビン酸を使用する。
好ましくは、MIP−3α受容体はCCケモカインレセプター6(CCR6)である。
本発明の別の態様によれば、間葉系幹細胞を、象牙芽細胞への分化因子の受容体を誘導する因子及び象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子の存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、間葉系幹細胞をMIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、間葉系幹細胞を、象牙芽細胞への分化因子の受容体を誘導する因子及び象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子の存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞を培養することによって象牙質を再生することを含む、象牙質の製造方法が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、間葉系幹細胞をMIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞を培養することによって象牙質を再生することを含む、象牙質の製造方法が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、間葉系幹細胞を、象牙芽細胞への分化因子の受容体を誘導する因子及び象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子の存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞を培養することによって再生された象牙質が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、間葉系幹細胞をMIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞を培養することによって再生された象牙質が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、口腔間葉系細胞の培養上清の存在下において、間葉系幹細胞を培養することによって、該間葉系幹細胞を象牙芽細胞へと分化させることを特徴とする、間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法が提供される。
好ましくは、上記の間葉系幹細胞に、分化誘導因子を添加することによって、該間葉系細胞をさらに分化させることができる。
好ましくは、分化誘導因子は、BMP−2(bone morphogenetic protein−2)、BMP−4(bone morphogenetic protein−4)、BMP−7(bone morphogenetic protein−7)、MIP−3α、MCP−1、TGF−β(transforming growth factor−beta)、デキサメタソン、β−グリセロリン酸、アスコルビン酸、タクロリムス、シクロスポリン、スタチン、ビタミンD、グルココルチコイド等、あるいはその誘導体である。
好ましくは、口腔間葉系細胞の培養上清は、象牙芽細胞への分化誘導能を有する細胞の培養上清である。
好ましくは、担体上で、口腔間葉系細胞の培養上清の存在下において、間葉系幹細胞を培養する。
好ましくは、口腔間葉系細胞は、象牙芽細胞、歯胚間葉系細胞、歯乳頭細胞、歯根膜細胞、歯髄細胞、歯肉線維芽細胞、又はこれらの前駆細胞である。
本発明のさらに別の態様によれば、歯髄細胞の培養上清の存在下において間葉系間細胞を培養することを含む、間葉系幹細胞の分化促進方法が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した間葉系幹細胞の分化促進方法により得られる細胞にデキサメタソンを加えて培養することを含む、間葉系幹細胞の分化促進方法が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明の間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法により得られる、増殖または分化した細胞が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、上記した本発明の間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法により分化した間葉系幹細胞を用いて、象牙質を再生する方法が提供される。
本発明によればさらに、上記方法により得られる分化誘導された象牙芽細胞、又は上記方法により再生された象牙質を患者に移植することを含む、歯科患者の治療方法が提供される。
図1は、MIP−3αを用いた象牙芽細胞の分化誘導技術の模式図を示す。
図2は、歯髄上清を用いた象牙芽細胞の分化誘導技術の模式図を示す。
図3は、MIP−3αによるヒトMSCのアルカリフォスファターゼ活性の変化を測定した結果を示す。
図4は、DexによるMIP−3α受容体の発現を調べた結果を示す。
図5は、MIP−3αによるヒトMSCからのDSPPの発現を調べた結果を示す。
図6は、歯髄上清を用いた際の、MSCの増殖能の変化を示す。
図7は、歯髄上清を用いた際の、MSCのALP活性の変化を示す。
図8は、歯髄上清を用いた際の、MSCのPCR結果を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の第一の態様によれば、間葉系幹細胞を、象牙芽細胞への分化因子の受容体を誘導する因子及び象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子の存在下で培養することによって、象牙芽細胞へと分化させることを含む、間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法が提供される。上記の中でも好ましい態様によれば、間葉系幹細胞をMIP−3α(Macrophage inflammatory protein−3alpha)受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することができる。
また、本発明の第二の態様によれば、口腔間葉系細胞の培養上清の存在下において、間葉系幹細胞を培養することによって、該間葉系幹細胞を象牙芽細胞へと分化させることを特徴とする、間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法が提供される。
本発明は、哺乳類の生体内に含まれる間葉系幹細胞(以下、MSC)に対して、適切な分化誘導処理を施すことで、MSCから硬組織形成に必須な象牙芽細胞を誘導する技術である。
本発明は、哺乳類の生体内に含まれるMSCから象牙芽細胞を誘導する技術であり、本発明以外に、現在までに、MSC、ES細胞などの多能性幹細胞から象牙芽細胞に誘導したという報告はない。本発明では、MSCに対して、MIP−3α(Macrophage inflammatory protein−3alpha)を作用させることによりMSCからDSPP強陽性の細胞を誘導している。
本発明において使用しているMSCは、MIP−3αの受容体であるCCR6(CC chemokine receptor 6)を発現しておらず、そのままではMIP−3aを適用することはできないが、MIP−3αと、デキサメタゾン(以下、Dex)などの他の分化誘導因子とを併用することで、MSCでは本来陰性であるCCR6を陽転させ、MIP−3αの適用可能な範囲を広げることに成功した。
前述したShibaらの報告(Biochem Biophys Res Commun.306(4):867−71,2003)においても、MIP−3αを利用しているが、先行技術においては、歯に含まれる歯髄繊維芽細胞をそのまま使用しているのに対して、本発明では、多能性幹細胞であるMSCを細胞供給源としている点、並びに、先行技術の歯髄繊維芽細胞は最初からMIP−3受容体陽性であるのに対して、本発明では、初期段階ではMIP−3α受容体が陰性であるMSCに対して適用可能である点などにおいて、本発明は先行技術とは異なる。
本発明においては、象牙芽細胞誘導能を有する分化誘導因子として、MIP−1α、MIP−1β、MIP−3α、MCP−1、IP−10、IL−2、IL−4、IL−5、IL−10、MIG、MCP−4、またはエオタキシン−1などを使用することができる。また、象牙芽細胞への分化因子の受容体の具体例としては、CCR6(CC chemokine receptor 6)、CCR5(CC chemokine receptor 5)、CXCR4(CXC chemokine receptor 4)、CXCR3(CXC chemokine receptor 3)、またはCCR−8(CC chemokine receptor 8)などを挙げることができる。
本発明において間葉系幹細胞は、1種類の細胞から成る単一の細胞として培養してもよいし、2種類以上の細胞からなる細胞混合物として培養してもよい。
幹細胞とは、外胚葉(歯髄細胞(歯髄線維芽細胞を含む)、上皮細胞(歯)、エナメル上皮基底膜細胞、神経細胞、象牙芽細胞、セメント芽細胞など)、中胚葉(骨芽細胞、軟骨細胞、骨細胞、腎基底膜細胞、血液系細胞)、内胚葉(消化管上皮細胞、消化管実質細胞)などの細胞へと分化しうる又はそれらの修復を促進しうる多能性を有する未分化な細胞である。本発明で用いる間葉系幹細胞は、骨髄および/または骨膜由来あるいは末梢血由来であり、且つ間充織組織系の組織、例えば脂肪組織、軟骨組織または骨組織に分化しうる多能性を有する未分化な細胞である。
間葉系幹細胞は、当該細胞を有する任意の骨髄または骨膜あるいは末梢血から採取することができるが、多量の細胞が採取可能であること及び採取が容易であるという観点から、大腿骨、脛骨又は骨盤(腸骨)から採取することが好ましい。ヒト以外の哺乳動物の場合は、腸骨および脛骨から間葉系幹細胞を採取することもできる。
骨髄由来の間葉系幹細胞の採取方法は当業者に公知であり、例えば医療において用いられている通常の採取方法を用いることができる。口腔組織から分離した間葉系幹細胞を利用することもできる。
具体的には、ヒトに対しては、患者に対するインフォームドコンセントのもとに、ヒト大腿骨、腸骨、顎骨、末梢血管等のMSCが存在する組織および器官より、注射器や穿刺針などを用いて骨髄や末梢血を無菌的に必要量採取し、そのまま、培養容器に播種し浮遊系細胞と接着系細胞を分離することで使用するか、フローサイトメトリー、または密度勾配遠心法などの手法を用いることで、MSCを採取分離する。
ヒト以外の哺乳動物の骨髄から間葉系幹細胞を採取する際には、例えば骨(大腿骨、脛骨)の両端を切断し、間葉系幹細胞の培養に適する培地で骨内を洗浄して、洗い出された該培養液から間葉系幹細胞を取得することができる。
間葉系幹細胞の初代培養及び/又は継代培養を行うには、採取分離した細胞を適当な培地(例えば、DMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)培地)を用い、組織培養用培養皿に細胞を播種して初代培養及び継代培養する。培養に用いる血清としては、ウシ胎児血清(FBS)を用いることが出来る。本発明においては、培地への10%以下の血清の添加量においても良好な増殖結果を得ることができる。また、人血清を用いても、著明な増殖結果を得ることが出来る。
細胞の培養は、動物細胞の培養に用いる通常の血清入り培地や無血清培地を用いて、通常の動物細胞の培養条件(例えば、室温から37℃の温度;5%CO2インキュベーター内など)の下で行なうことができる。培養の形態は特に限定されないが、例えば、静置培養で行なうことができる。
本発明において、間葉系幹細胞の分化誘導培養を行うには、初代培養及び継代培養した間葉系幹細胞を、分化誘導培地を用いて培養し、細胞を分化誘導することにより行うことができる。分化誘導培地としては、MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αを添加した培地のことを言う。
なお、分化誘導を行う際には、MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3α(Macrophage inflammatory protein−3alpha)を添加した培地を使用して培養を行ってもよいし、MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子を添加した培地を使用して培養を行った後に、MIP−3αを添加した培地を使用して培養を行ってもよい。即ち、本明細書で言う「間葉系幹細胞をMIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αの存在下で培養する」とは、(1)MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子及びMIP−3αを同時に含む培地を用いて培養する場合、並びに(2)MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子を含む培地を用いて培養した後に、MIP−3αを含む培地を用いて培養する場合の両方を包含する。
MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子の具体例としては、デキサメタゾン、β−グリセロホスフェート、アスコルビン酸の組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。MIP−3α受容体の発現を誘導する分化因子の他の具体例としては、各種サイトカイン(例えば、TGF−β、TNF−α(tumor necrosis factor−alpha)、FGF、BMP、HGF(hepatocyte growth factor)、アクチビンなど)、各種ケモカイン、ペプチドホルモン(インスリン、グルカゴン、ソマトスタチン、成長ホルモンなど)、ステロイド系ホルモン(例えば、エストロゲン、テストステロン、副腎皮質ホルモン、その他ステロイド系医薬品など)、薬剤、生理活性ペプチド(RGD、DEGA配列などの生理活性機能をもつアミノ酸配列を含むペプチド)、抗生物質(シクロスポリン、タクロリムスなど)、ビタミン類(ビタミンDなど)が挙げられる。
上記した分化因子の添加量は、MIP−3α受容体の発現を誘導できる限り特に限定されない。分化因子量の添加量を増減させることにより、間葉系幹細胞から象牙芽細胞への分化誘導効率を制御することができる。
MIP−3αの添加量は、培地中に、好ましくは0.1ng/ml〜10μg/ml、より好ましくは、1ng/ml〜10μg/mlである。
また、デキサメタゾンの添加量は、培地中に、好ましくは1×10−9〜1×10−6mol/l、より好ましくは1×10−8〜1×10−7mol/lである。
更に、β−グリセロホスフェートの添加量は、培地中に、好ましくは10〜1000mmol/l、より好ましくは20〜500mmol/lである。
更に、アスコルビン酸の添加量は、培地中に、好ましくは1×10−5〜1×10−2mol/l、より好ましくは5×10−5〜1×10−3mol/lである。
また、培養上清を用いる細胞の分化の制御方法は、第一の種類の細胞の培養上清の存在下において第二の種類の細胞を培養することによって、該第二細胞を象牙芽細胞への分化能を有する細胞への分化を促進させ、象牙芽細胞への分化能を有した該第二細胞に対して、適切な分化誘導因子を添加することにより、該第二細胞を象牙芽細胞へ分化させることを特徴とする方法である。好ましい方法によれば、歯髄細胞に代表される歯原性間葉系細胞の存在下において、間葉系細胞を培養し、培養上清で培養した細胞にデキサメタソンを加えて細胞を培養することができる。
本発明は生体内において、歯髄細胞などの象牙芽細胞への分可能を有している細胞に関連する因子が、細胞を培養する際に培養上清に分泌されることを利用した技術である。生体において、生体の器官および組織の発生、細胞の形態および性質の維持、あるいは細胞の分化には、それぞれの細胞から分化誘導因子を含む生理活性因子が放出され、組織、細胞の分化、あるいは性質の維持を行っている。
本発明は、このような生物学的特性を利用し、細胞の培地交換の際に出る培養上清に含まれる生理活性物質の効果を期待し、特に、歯髄細胞などの象牙芽細胞への分化誘導能を有する細胞の培養上清を間葉系細胞などの多分化能を有する細胞に用いることで、この細胞に上清のもととなった細胞と類似の性質の細胞に分化させる技術である。
本発明では、培養上清を採取するための細胞として、例えば、歯原性間葉系細胞を使用することができる。本発明で用いる間葉系細胞としては、間葉系細胞であれば特に限定はしないが、好ましくは、象牙芽細胞、歯胚間葉系細胞、歯乳頭細胞、歯根膜細胞、歯髄細胞、歯肉線維芽細胞、又はこれらの前駆細胞が挙げられる。これらの細胞は単離した一種類の細胞から培養してもよいし、組織等からそのままの形で2種類以上の細胞混合物として培養してもよい。
本発明で使用する間葉系幹細胞として、例えば、骨髄由来幹細胞を使用することができる。本発明で用いる間葉系幹細胞としては、間葉系幹細胞であれば採取部位は特に限定はしないが、好ましくは、腸骨骨髄、顎骨骨髄、あるいは末梢血由来のものが挙げられる。これらのものは、組織から単離して、単一種の細胞から培養してもよいし、骨髄等からそのままの形で2種類以上の細胞混合物として培養してもよい。
本発明で象牙芽細胞へ分化を促進するための分化誘導因子としては、象牙芽細胞への分化誘導能があれば特にその種類は限定されないが、たとえば、サイトカイン類、ケモカイン類、ビタミン類、抗生物質、ホルモン生理活性物質が挙げられる。好ましくは、BMP−2、BMP−4、BMP−7、MIP−3α、MCP−1、TGF−β、デキサメタソン、β−グリセロリン酸、アスコルビン酸、タクロリムス、シクロスポリン、スタチン、ビタミンD、グルココルチコイド等が挙げられる。これらの因子は、単一の添加でもよいし、複数の因子を組み合わせて添加してもよい。
上清を採取するための歯原性細胞は、哺乳動物(例えば、ヒト、ブタ、イヌ等)の歯胚、歯牙、および歯周組織から公知の方法により採取することができる。例えば、歯髄細胞の場合、抜去した歯牙をハンマー等で破砕し、滅菌した針などで歯牙の内部にある歯髄組織を無菌的に掻き出し、掻き出した歯髄組織をコラゲナーゼで酵素処理し、その後ピペッティング操作と遠心操作を繰り返すことで、歯髄細胞を回収することができる。得られた細胞を、15%のウシ胎児血清を含むDMEM培地とF12培地を1:1の割合で混和した培地で培養することで、歯髄細胞を培養することができる。
培養上清は、公知の方法により採取することができる。例えば、歯髄細胞の培養中おける培地交換の際に培養上清を採取し、採取した培養上清に対してフィルターろ過を行って浮遊している細胞や不純物を除去してから用いることができる。
また、歯胚間葉系細胞の場合、ヒトやブタより採取した歯胚をディスパーゼ処理して上皮系組織と間葉系組織を分離し、分離した間葉系組織をコラゲナーゼ処理することで得ることができる。更に、公知の方法に従い、腸骨等から骨髄穿刺を行って骨髄を採取し、培養することで間葉系の幹細胞を得ることができる。
上記の方法に従って培養した細胞に対して、BMP−2やデキサメタソンなどを添加してさらに培養すると、象牙芽細胞に類似した性質の細胞へ分化させることができる。
本発明において、細胞の培養は担体上で行ってもよいし、担体無しで培養してもよい。担体としては、象牙質の形成に必要とされる時間を耐久することができ、かつその後、速やかに吸収されるものが好ましい。さらに、細胞と高い親和性を有する材料からなる担体を使用することが好ましい。
担体の素材は、上記特性を満たすものであれば特に限定されないが、例えば、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ(DL−ラクチド−コーグリコシド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLLA)、ポリカプロラクトンなどの合成高分子材料、またはコラーゲン、ゼラチン、フィブリンなどの蛋白質材料、あるいはヒアルロン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、象牙、サンゴなどの天然由来材料を使用することもできる。さらに、リン酸三カルシウム(β−TCP)などの無機材料も使用することができる。
PGA、PLLA、PLGAまたはポリカプロラクトンなどの合成材料を使用する場合には、細胞の接着及び増殖性を高めるために、表面にコラーゲン溶液又はフィブロネクチン溶液などをコートして使用することもできる。
上記の担体の形態としては、メッシュ形態、スポンジ形態、ゲル形態、不織布形態、粒状形態などが可能である。
担体は細胞を移植しやすい形状に加工したものが好ましく、板状、球状の多孔体あるいは中空で一端が開放されており、周囲から血管が進入しやすくなっているものが好ましい。
担体は、目的に適合した形態のものを作製することが好ましい。このためには、目的とする形態をレジン等で作製した後に印象材を用いて型を取得する。その後、レジン等の型を取り出し、担体を構成する合成材料を流し込むことによって目的の形態を再現することができる。
本発明の方法では、間葉系幹細胞を担体に播種して、または必要に応じて播種後培養し、該培養細胞を担体と一緒に直接患者に移植してもよい。あるいはさらに好ましくは、分離した間葉系幹細胞を培養して増殖させた後に担体に播種して、または必要に応じて播種後培養し、次いで該培養細胞を担体と一緒に移植し、体内で象牙質を再生させることができる。
あるいはまた、分離した間葉系幹細胞を培養して増殖させた後に担体に播種して、または必要に応じて播種後培養し、ついで該培養細胞を担体と一緒に移植動物に移植し、該移植動物の体内で象牙質を再生させることができる。移植動物の種類は特に限定されないが、好ましくは哺乳動物であり、例えば、マウス(ヌードマウス)、ラット(ヌードラット)などのげっ歯動物や、ブタ、イヌなどの大型哺乳動物を使用することができる。移植の部位は特に限定されず、例えば、背部皮下、腎皮膜下、腹部大網、顎骨などが挙げられる。
上記した本発明の方法により分化誘導された象牙芽細胞及び本発明の方法により再生した象牙質は、う蝕などの歯科疾患を有する患者に移植することによって、該歯科患者を治療することができる。即ち、象牙質を用いる歯科疾患の治療方法、例えば、髄腔の穿孔や露髄部の治療、根管治療などへの適用も本発明の範囲内のものである。歯科患者に移植された後も象牙質の成長を継続させることにより、象牙質を形成させることができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
実施例1:MIP−3αによるヒトMSCのアルカリフォスファターゼ活性の変化
(1)方法
実施例の実験には、Camblex社(Cambrex Bio Science Walkersville,Inc)より購入したMSCを使用した。実験に使用したMSCは健康な18歳男性の腸骨由来のもので、CD105,CD166,CD29,CD44陽性、CD14,CD34,CD45陰性の条件でフローサイトメトリーにより単離されたものである。
12穴プレートに、10%ウシ胎児血清を含んだDMEM培地を用いてヒトMSCを培養した。培養したMSCに対して、MIP−3α(終濃度2ng/ml)を加え、通常の骨分化誘導因子である、デキサメタゾン(Dexamethasone,以下、Dexとも略記する)(最終濃度10nM)、β−グリセロホスフェート(β−Glycerophosphate,以下、β−GPとも略記する)(最終濃度100mM)、及びアスコルビン酸(Ascorbic acid,以下、AAとも略記する)(最終濃度100μM)を添加した(図3のDex+MIP)。また、対照として、培地に何も添加しない実験(図3のNon treat)、MIP−3αのみを培地に添加した実験(図3のMIP(+))、並びにDex、β−GP、及びAAのみを培地に添加し、MIP−3αを添加しない実験(図3のDex(+))も同時に行った。上記した各因子の添加後1日目、4日目、及び7日目に、間葉系細胞の初期の分化指標である、アルカリフォスファターゼ(以下、ALP)活性を測定した。
(2)結果
通常の骨系分化誘導因子であるDex、β−GP、及びAAのみを添加した細胞群に対して、Dex、β−GP、AA、及びMIP−3αを添加した細胞群においては、高いALP活性値を示す結果となった。一方で、MIP−3αのみを添加したMSCについては、若干のALP活性の上昇は見られたが、大幅なALP活性の上昇はみられなかった(図3)。
(3)結果の解釈
実施例1の結果、Dex、β−GP、及びAAのみを加えた場合よりも、Dex、β−GP、及びAAに加えてMIP−3αを培地に添加した細胞において高いALP活性が示されたことから、MIP−3αが分化を亢進する作用を有することが考えられる。また、MIP−3αのみを添加した群で上昇したALP活性については、コンフルエントなどの理由により自然分化したMSCに対して、MIP−3αが作用したものと考えられる。
実施例2:DexによるMIP−3α受容体の発現
(1)方法
ヒトMSCをディッシュ上で培養し、サブコンフルエントになったMSCに対して、Dex(最終濃度10nM)、β−GP(最終濃度100mM)、及びAA(最終濃度100μM)を添加して、さらに培養し、この条件で培養した細胞に対して、抗ヒトCCR6抗体を用いて免疫染色を行い、分化因子の作用によるヒトMSCのCCR6(CC chemokine receptor 6)の発現の有無を調べた(図4のDex(+))。また、対照として、Dex、β−GP、及びAAを添加しない実験も行った(図4のDex(−))。
(2)結果
Dex、β−GP、及びAAで分化誘導をかけたヒトMSCのCCR6の発現を調べた結果、未分化なMSCでは、抗CCR6抗体で染色されず、Dexを作用させたヒトMSCでは抗CCR6抗体で染色されたことから、未分化なMSCではCCR6が発現していないのに対して、分化したヒトMSCがCCR6を発現することが示された(図4)。
(3)結果の解釈
実施例2の結果、ヒトMSCからもCCR6を発現させることができることが示され、これにより、本来、MIP−3α受容体が発現していないヒトMSCにおいても、他の分化誘導因子と併用することで、MIP−3αの効果を得ることが可能であることが実証された。
実施例3:ヒトMSCからのDSPPの発現
(1)方法
未分化なヒトMSCをディッシュに培養し、サブコンフルエントになるまで培養したヒトMSCに対して、Dex(最終濃度10nM)、β−GP(最終濃度100mM)、AA(最終濃度100μM)、及びMIP−3α(最終濃度2ng/ml)を添加し、7日間培養した(図5のMD+)。また、対照として、上記因子を添加しない実験(図5のNon treatment)、Dex、β−GP、及びAAのみを添加した実験(図5のD+)、及びMIP−3αのみを添加した実験(図5のM+)を行った。
培養したヒトMSCから全RNAを回収し、回収したRNAから逆転写酵素を用いてRNA由来のcDNAを作成し、これに対して歯の象牙芽細胞に対して特異性の高いDSPPプライマーを用いてPCRを行った。
実施したPCR条件については、レフトプライマー:AGAAGGACCTGGCCAAAAAT(配列番号1)、ライトプライマー:TCTCCTCGGCTACTGCTGTT(配列番号2)を使用し、これらのプライマーに対してPCRバッファー、Taqポリメラーゼなどを必要量加え、熱変性94℃、アニーリング温度60℃、伸長反応72℃の条件で35サイクルのPCR反応を実施した。
(2)結果
本検討の結果、Dex(最終濃度10nM)、β−GP(最終濃度100mM)、AA(最終濃度100μM)、及びMIP−3α(最終濃度2ng/ml)を添加したヒトMSCにおいて、添加後7日目に、象牙芽細胞に対して特異性の高いマーカーであるDSPPが検出された(図5)。
(3)結果の解釈
ヒトMSCに適切な分化誘導条件で分化誘導を行った結果、DSPPの発現が確認されたことから、この分化誘導方法により、ヒトMSCが象牙芽細胞の方向へ分化が進行したものと考えられ、本技術を用いることで、MSCから象牙芽細胞を誘導できることが実証された。
実施例4:歯髄上清を用いたMSCの培養
(1)方法
ヒトの抜去歯より採取した歯髄細胞をMSCGM培地にて培養し、コンフルエントに達した歯髄細胞の培地を交換した。その後、2日おきに培地交換を行い、培地交換の際にでる培養上清を採取した。採取した培養上清に対して、フィルターろ過を行い、浮遊している細胞や不純物を完全に除去した。
上記の方法で採取した培養上清をベースとなっている培地であるMSCGM培地で希釈し、この希釈した培養上清を用いて間葉系幹細胞(MSC)の培養を行い、MSCの増殖、分化を検討した。
(2)結果
12well plateに1×10個のMSCを播種し、MSCGM、MSC培養上清、歯髄培養上清を用いて細胞を培養し、WST−8を用いて培地の違いによる細胞増殖の変化を測定した。実験の結果、歯髄上清で培養した群において、有意な細胞増殖能の減少が確認された(図6)。
12well plateにMSCを任意量播種し、MSCGM、MSC培養上清、歯髄培養上清を用いて細胞を培養し、ALP活性を測定することにより、歯髄上清によるMSCの分化誘導能を検討した。実験の結果、歯髄上清で培養した群において、有意なALP活性の上昇が確認された(図7)。
12well plateにMSCを任意量播種し、MSCGM、歯髄培養上清を用いて細胞を培養し、培養細胞よりRNAを採取。PCRを用いて、間葉系細胞の分化の指標となるALP、骨誘導に必須の転写因子であるCbfa1の検出を行い、上清によるMSCの分化誘導能を検討した。実験の結果、歯髄上清で培養した群において、有意なALP活性の上昇が確認されたが、骨誘導の指標となるCbfa1の発現は確認されなかった(図8)。
(3)結果の解釈
歯髄細胞の培養上清で間葉系幹細胞を培養した結果、細胞増殖能の減少とALP活性の上昇がみられたことから、間葉系幹細胞の分化が進行したものと考えられる。また、骨マーカーのCbfa1の上昇は見られず、ALPのみが上昇しており、この結果は、培養上清のもととなっている歯髄細胞の性質に類似していることから、この処理により、間葉系幹細胞が歯髄細胞様の性質の細胞に分化したことが考えられる。
本発明は、ヒト間葉系幹細胞(以下、MSCとも略記する)から象牙芽細胞への分化誘導技術である。本発明によれば、骨髄、末梢血などの生体各所に含まれる幹細胞から歯科領域における細胞医療、再生医療に用いる象牙芽細胞を得ることができる。
また、現在までに、ES細胞やMSCなどの多能性幹細胞から象牙芽細胞を誘導した事例は報告されていないことから、歯科領域においてMSCのみならず、ES細胞等の多能性幹細胞を歯科領域に利用するための基盤技術としても有用性の高いものであると考えられる。

Claims (2)

  1. 間葉系幹細胞を、デキサメタゾン、β−グリセロホスフェート、アスコルビン酸及びMIP−3αの存在下で培養することによって、象牙芽細胞へと分化させることを含む、間葉系幹細胞から象牙芽細胞を製造する方法。
  2. 間葉系幹細胞を、デキサメタゾン、β−グリセロホスフェート、アスコルビン酸及びMIP−3αの存在下で培養することによって象牙芽細胞へと分化誘導することによって製造される象牙芽細胞を培養することによって象牙質を再生することを含む、象牙質の製造方法。
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