JP4831159B2 - 信号処理方法及びパルスフォトメータ - Google Patents
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- A61B5/7207—Signal processing specially adapted for physiological signals or for diagnostic purposes for noise prevention, reduction or removal of noise induced by motion artifacts
Description
号成分を抽出する信号処理に関し、特には医療の分野において、特に循環器系の診断に用
いられるパルスフォトメータにおける信号処理の改良に関する。
法には様々な方法が提案されている。
それらは、一般的には周波数領域や時間領域による処理が行われている。
医療現場でも、光電脈波計と言われる脈波波形や脈拍数を測定する装置、血液に含まれ
る吸光物質の濃度測定として、酸素飽和度SpO2の測定装置、一酸化炭素ヘモグロビン
やMetヘモグロビン等の特殊ヘモグロビンの濃度の測定装置、注入色素濃度の測定装置
などがパルスフォトメータとして知られている。
中でも酸素飽和度SpO2の測定装置を特にパルスオキシメータと呼んでいる。
に透過又は反射させ、その透過光又は反射光の光量を連続的に測定することで得られる脈
波データ信号から対象物質の濃度を求めるものである。
そしてその脈波データに雑音が混入すると、正しい濃度の計算が出来ず、誤処置につな
がる危険が生じる。
パルスフォトメータにおいても従来より雑音を低減するために周波数帯域を分割して信
号成分に着目したり、2つの信号の相関を取るなどの方法が提案されてきた。
しかし、これらの方法は解析に時間がかかるなどの問題があった。
つの波長の光を生体組織に照射して透過光から得られる2つの脈波信号のそれぞれの大き
さを縦軸、横軸としてグラフを描き、その回帰直線を求め、その回帰直線の傾きに基づい
て、動脈血中の酸素飽和度ないし吸光物質濃度を求めることを提案している。
この発明により、測定精度を高め、低消費電力化することができた。
しかし、各波長の脈波信号についての多くのサンプリングデータを用いて回帰直線ないし
その傾きを求めるためには、なお多くの計算処理を要していた。
その解析においては従来技術のように脈波信号そのものを抽出するのではなく、脈波信号
の基本周波数を求め、さらには精度を高めるためにその高調波周波数を用いたフィルタを
用いて脈波信号をフィルタリングする方法を提案している。
も多様で、病院で使用するSpO2より高い耐アーチファクト性が要求される。
アーチファクトが混入すると測定系が乱され,SpO2を誤って表示する場合がある。
代表的なアーチファクトとして体動があり、被測定者が装着したプローブが体動で動き
,光源と受光面の光学経路が変化したり,生体組織に加わる力で組織が変形する等が原因
である。
特に新生児や幼児でアーチファクトの混入が多く、手足の動き、泣きじゃくり、震え、
咳等がアーチファクト源となる。
クトの混入した場合にもより正確なSpO2の測定が可能となる信号処理方法、信号処理
装置及びそれを用いたパルスフォトメータを提供することにある。
前記2つの測定信号による測定信号ベクトルを分離マトリクスによって、脈波信号ベク
トルとアーチファクト信号ベクトルとに分離するに際して、前記脈波信号の安定区間のノ
ルム比と、前記アーチファクト区間の下記の式8で示す逐次補正ノルム比とによって分離することを特徴とするパルスフォトメータの信号処理方法。(請求項1)
また、前記請求項1又は2に記載のパルスフォトメータにおける信号処理は、動脈血中の酸素飽和度、特殊ヘモグロビン濃度又は注入色素濃度の内の少なくとも1つを演算することを特徴とする。(請求項3)
チファクトの混入した場合にもより正確信号成分の分離が可能となる信号処理方法、信号
処理装置及びそれを用いたパルスフォトメータを実現できる。
ータを例に挙げて原理を説明する。
なお、本発明の技術は、パルスオキシメータに限られず、特殊ヘモグロビン(一酸化炭
素ヘモグロビン、Metヘモグロビンなど)、血中に注入された色素などの血中吸光物質
をパルスフォトメトリーの原理を用いて測定する装置(パルスフォトメトリー)に適用でき
る。
図1のようになっている。
異なる波長の光を発光する発光素子1、2は、交互に発光するように駆動回路3により
駆動される。
発光素子1、2に採用する光はそれぞれ動脈血酸素飽和度による影響が少ない赤外光(
例えば940[nm])、動脈血酸素飽和度の変化に対する感度が高い赤色光(例えば660
[nm])がよい。
して電気信号に変換される。
なお、図1では透過光を受光しているが反射光を受光するようにしてもよい。
そして、これらの変換された信号は増幅器6で増幅され、マルチプレクサ7によりそれ
ぞれの光波長に対応したフィルタ8−1、8−2に振り分けられる。
各フィルターに振り分けられた信号はフィルタ8−1、8−2によりフィルタリングされ
てノイズ成分が低減され、A/D変換器9によりデジタル化される。
ている。
デジタル化された各信号列は処理部10に入力され、ROM12に格納されているプロ
グラムにより処理され、酸素飽和度SpO2が測定され、その値が表示部11に表示され
る。
図2の(a)及び(b)は、前記発光素子1、2からの発光された光が生体組織4を透過してフ
ォトダイオード5で受光して電気信号に変換された脈波データで、(a)は赤色光の場合を
、(b)は赤外光を示している。
図2の(a)では、横軸を時間、縦軸を受光出力とすると、フォトダイオード5での受光
出力は、赤色光の直流成分(R’)と脈動成分(ΔR’)が重畳された波形となっている
。
また、図2の(b)では、横軸を時間、縦軸を受光出力とすると、フォトダイオード5で
の受光出力は、赤外光の直流成分(IR’)と脈動成分(ΔIR’)が重畳された波形と
なっている。
まれていて、そのアーチファクトの周波数成分と信号の周波数成分に共通する周波数帯域
が存在するため、アーチファクト成分を除去して信号成分を正確に把握することが困難で
あった。
り、震え、咳等の大きなアーチファクトに相当する大きなアーチファクトを人為的に加え
て測定例に基づいて説明する。
上段が赤外光(IR)、下段が赤色光(R)である。
波長は、それぞれ波長940nm(赤外光)と660nm(赤色光)である。
図3の上部に示す黒線区間は人為的にアーチファクトを加えたタッピング区間を示し、
プローブ装着側の指先で素早く(例えば、3Hz程度)机面を繰り返し叩く動作を行って
いる。
は視認できない。
観測信号は各々の直流透過光成分で規格化した後、帯域幅0.5〜5Hz、6次のバタワース
フィルタでフィルタし、サンプリング間隔は16msである。
横軸が赤外光、縦軸が赤色光である。
図4の傾斜は観測信号のアーチファクト区間の赤外光と赤色光のノルム比で与えられ、
その傾斜からアーチファクトのノルム比「φN 」が分かる。
いて説明する。
図5は、図3の例を信号処理のためのモデル化した図である。
時刻tnにおける脈波信号pは、係数1でIR端子に伝達され、R端子には係数φSで伝
達される。
同様に、時刻tnにおけるアーチファクト信号nは、係数1でIR端子に伝達され、R
端子には係数φNで伝達される。
φSとφNはそれぞれ、脈波信号のφS:=Rp,tn/IRp,tn、アーチファクト信
号のφN :=Rn,tn/IRn,tnである。
観測時刻をtn:tn+kに拡張すれば p,n,IR,Rはベクトルになる。
添え字pulseは脈波の安定区間を表し、添え字noiseはアーチファクト区間を示す。
脈波の安定区間とアーチファクト区間は、時刻も区間長も異なる。
化させた3種類のシミュレーションを行った結果を図6に示す。
図6(a)、(b)、(c)で、横軸はIR信号、縦軸はR信号である。
シミューレーションは、脈波を鋸歯状波、アーチファクトを正弦波とした。
脈波信号の振幅とアーチファクト信号の振幅の関係は、図6(a)では、脈波信号(pu
lse)の振幅とアーチファクト信号(Artifact)の振幅は、それぞれ、(0.25:0.
75)である。
図6(b)では、脈波信号(pulse)の振幅とアーチファクト信号(Artifact)の振幅
は、それぞれ、(0.33:0.66)である。
図6(c)では、脈波信号(pulse)の振幅とアーチファクト信号(Artifact)の振幅
は、それぞれ、(0.5:0.5)である。
前記数1で示すノルム比φS=0.55で、前記数2で示すノルム比の真値
図6の(a)〜(c)に示した相関図はいずれも平行四辺形で、アーチファクト >
脈波であれば、短辺の傾斜がφSに一致し、長辺の傾斜がφNに一致する。
アーチファクト < 脈波であれば、逆で、長辺の傾斜がφSに一致し、短辺の傾斜が
φNに一致する。
ある。実線は参考例として提案する後述の「補正ノルム比」である、
前記補正ノルム比が平行四辺形の長辺の傾斜である「ノルム比の真値」、
脈波とアーチファクトの振幅が近づくに連れて、順に「ノルム比」と「ノルム比の真値
」との乖離が増えていることが判る。
観測信号ベクトル[IR R]T を分離マトリクスSによって脈波信号ベクトルpと
アーチファクト信号ベクトルnに分離する。
肩の「T」は転置を表している。
分離マトリクスSは、式(2)に示すMの逆マトリクスである。
ここで、「φS」は、脈波の安定区間における観測信号のノルム比である。
残る、「φN」を推定できれば[1 φS]T と[1 φN]T を基底ベクトルとする
Mが定まる。
「φN」はアーチファクト区間における観測信号のノルム比である。
なお、脈波の安定区間では「φNpulse」=1とした。
+n noise=tj:j+kは、それぞれ脈波の安定区間とアーチファクト区間を示す。
脈波と安定区間とアーチファクト区間で、時刻とサンプル数が相違している。
ノルム比から「φS」,「φN」を求める利点は、ユークリッドノルムの定義から散発的
な雑音に対して堅固であることにある。
クトルである。
したがって、アーチファクト区間でも、脈波が重畳していることが原因で、
そこで、参考例として、乖離を補正する手段として、「補正ノルム比」
この補正方法は、アーチファクト区間に重畳した脈波が安定区間の振幅と同じであるこ
とを前提としている。
補正は、以下の式(4)で行う。
アーチファクト区間では、脈波信号は埋もれて観測困難な場合が多い。
そこで、脈波信号の安定区間でノルムをとり、
アーチファクト信号の振幅は、アーチファクト区間のノルム
ここで、、脈波区間とアーチファクト区間のサンプル点数が異なっているので、それぞ
れの区間のサンプル点数の平方根で除している。
絶対値は、アーチファクト以外の観測雑音で根号内が負になることを考慮している。
って分離した結果を図7を用いて説明する。
図7は、観測信号を分離マトリクスSによって分離した波形を示す図である。
図7のサンプリング間隔は16ms 、フィルタは帯域幅0.5〜5Hz,6次のバタワー
スフィルタである。
図7の波形の上部の横線はアーチファクト区間を示している。
図7(a)は、「ノルム比」と「φS」で分離した脈波を示し、図7(b)は、前記「
補正ノルム比」と「φS」とで分離した脈波である。
後者では、脈波を明瞭に視認でき、特に、20秒以降での脈波がより明瞭に分離されて
いる。
一方、12.5秒〜18.5秒の区間では、アーチファクトが増加している。
ト区間に対し17点の移動平均を行った結果を示す図である。
図8(a)は、「ノルム比」と「φS」で分離した脈波を示し、図8(b)は、前記「
補正ノルム比」と「φS」とで分離した脈波である。
「補正ノルム比」による分離が、ノルム比「φN」による分離に比較して、大振幅の針
状アーチファクトが減っていることが分かる。
「補正ノルム比」による分離では、17〜23秒の区間でアーチファクトが減少し、ス
ムースな脈波形状を示している。また、30〜35秒の区間でも、「補正ノルム比」によ
る分離でスムースな脈波形状を示している。
か長方形に近づく。
図9は分離後の相関を示す図である。
図9(a)は「ノルム比」と「φs」で分離した脈波とアーチファクトの相関関係、(
b)は「補正ノルム比」と「φs」で分離した脈波とアーチファクトの相関関係、(c)
は「ノルム比」と「φs」で分離後脈波を17点の移動平均を行った脈波とアーチファク
トの相関関係、(d)は「補正ノルム比」と「φs」で分離後脈波を17点の移動平均を
行った脈波とアーチファクトの相関関係を示す。(a)より(b)、(c)より(d)が
適切に分離されていることが分かる。
」にどの程度近づけたか分からない。
そこで、「補正ノルム比」で分離した結果を以下の式(6)の評価関数Hにより評価す
る。[Σ]は分離した脈波ベクトルpとアーチファクトベクトルnの分散共分散マトリク
スである。
Hは、trace[Σ]と対角要素2Σ12 の絶対値の比である。
補正が適切であれば、[Σ]は対角マトリクスに近ずく。Hの値が小さいほどpとnの
独立性が高い。
図10の上段は「ノルム比」で分離をした場合で、下段は、「補正ノルム比」で分離を
した場合である。
それぞれの場合で、フィルタ帯域幅0.5〜5Hz,6次のバタワースフィルタの場合と
、当該フィルタの処理後に17点の移動平均を行った場合の評価結果を示している。
「補正ノルム比」で分離した方が、H=0.0042とH=0.0492と小さい値と
なって対角性が改善されていることが分かる。
ファクトを加えているため「補正ノルム比」は固定値である。
しかし、実際のアーチファクトは、時間的に変化しているのが通常で、その場合には、
「ノルム比の真値」である
本発明は、上述の参考例である「補正ノルム比」が時間的に変化するアーチファクトに
対しては十分でない点を改良する技術に関する。
。
真の混合マトリクスを、
漏れ込み比率Lは、式(7)で評価できる。
例えば、脈波とアーチファクトの振幅をそれぞれ1とし、
幅の16%が脈波側に漏れ込み、この漏れ込み量は少なくはない。
一般に「真のノルム比」は時間で変化するのに対して、「補正ノルム比」はアーチファ
クト区間で一定値であって、「真のノルム比」の時間変化に追従できず、何らかの対策が
必要になる。
ム比」と「真のノルム比」が乖離するので、本発明では、乖離を補正する手段として、以
下にのべる「逐次補正ノルム比」
この補正法は、アーチファクト区間に重畳した脈波の振幅が安定区間の脈波の振幅と同
じであることを前提にしている。
補正は、下記の式(8)でサンプル点ごとに逐次行う。この、
(successively-compensated-norm-ratio)と称する。
脈波はアーチファクト区間ではアーチファクトに埋もれて観測困難である。脈波振幅は
脈波の安定区間のノルムをとり、
一方、J時点のアーチファクト振幅は、Jを含む前後k点をとり、合計2k+1点のノル
ム
ここで、脈波区間とアーチファクト区間のサンプル数が異なるため、
いる。
Sによって分離した結果を、「「ノルム比」及び参考例である「補正ノルム比」を用いた
場合と併せて図11に示す。
図11のAは、アーチファクト区間を「逐次補正ノルム比」で分離した場合。
図11のBは、アーチファクト区間を「補正ノルム比」で分離した場合。
図11のCは、アーチファクト区間を「ノルム比」で分離した場合。
よる分離では、BとCに比べてアーチファクト振幅が小さくなっている。
特に、20秒付近のアーチファクトで振幅の差があり、8秒付近で、BとCの脈波の存
在は視認できるが、Aでは前後とつながりの良い脈波として明瞭に分離されている。
ている。
さらに、20秒直前の急峻なアーチファクトの立ち上がり部分でも、BとCに比べて明
瞭に分離されている。
る。
図12から、アーチファクト振幅が、C>B>A の順に分離されていることが理解でき
る。
したがって、本発明の「逐次補正ノルム比」が、「ノルム比」及び参考例である「補正
ノルム比」に比較して、より適正な値に補正され優れていることが理解できる。
」にどの程度近づけたか分からない。
そこで、「補正ノルム比」で分離した結果を、前記の式(6)の評価関数Hにより評価
する。[Σ]は分離した脈波ベクトルpとアーチファクトベクトルnの分散共分散マトリ
クスである。
Hは、trace[Σ]と対角要素2Σ12 の絶対値の比である。
補正が適切であれば、[Σ]は対角マトリクスに近ずく。Hの値が小さいほどpとnの
独立性が高い。
前記評価関Hで評価した結果は、Hの値が小さい程、分離が良好であることを示してい
る。
評価関数Hで評価した結果も、図11の結果と同様に、C>B>A の順に分離されて
いることが理解できる。
以下の発明は、分離マトリクスSの悪条件を緩和するための改良技術に関する。
(1) 不安定となる領域
逆問題では一般的な性質として分離マトリクスが悪条件であると解が不安定になる。
図14(c)は、図14(a)及び(b)に示した観測波形から得たサンプル数k=10におけ
るφ N のトレンドで逐次ノルム比Sφ S である。
図14(c)に示す如く、Sφ N 比は大きく変化している。
図14(c)中の棒線は、脈波の安定区間(1〜3.5秒)で得たφ S で、φ S =0.5357であ
る。
棒線とSφ N の交点近傍は、Sφ N ≒φ S であり、分離マトリクスは悪条件で振動やスパイクが発生する領域である。
一般に、健常人のφ S は、約0.55である。
観測信号に観測雑音があると、分離によって振幅が増大する等の異常が起こることがあ
る。この異常は分離マトリクスが悪条件である場合に発生し、分離マトリクスの固有ベク
トルと固有値が関係する。
ば、Sの列ベクトルは線形独立である。 ε=0であれば、線形従属で悪行列である。
になると異常が発生する。
二波長のSpO2では、分離マトリクスSは2×2で、二つの固有ベクトルVと二つの
固有値λを持つ。
式(10)で、Gは脈波等の信号源ベクトル、Oは観測信号ベクトルである。分離マト
リクスSの固有ベクトルと固有値は式(11)と式(12)となる。V 1 とV 2 は規格化
固有ベクトルである。ここで観測信号Oが固有ベクトルVと等しければ、マトリクスの固
有ベクトルと固有値の関係から式(13)が成立する。分離した信号源ベクトルGのノル
ムは式(14)で表せる。
図15は、式(14)から求めた雑音拡大係数である。
φ N をφ S との比で表す。 φ S は0.55とした。雑音拡大係数は φ N /φ S =1.2で
約15倍強、φ N /φ S =1.3で約10倍である。 φ N /φ S =1では無限大である。
図15に雑音拡大係数を示したが、ここで雑音拡大方向を確認する。観測信号に加え
るノルム1の雑音として、IR観測信号に振幅1のsinを加え、R観測信号にcosを加えた。
独立なランダム雑音N(0.1)について検討した。分離マトリクスのφ S =0.55,φ N /φ
S =1.3としたときのシミュレーション結果を図16に示す。
した時の分離マトリクスの固有ベクトル方向である。
楕円は単位円となる信号を分離マトリクスで分離した時の分離後の信号が描く軌跡であ
る。固有ベクトル方向に観測信号の振幅が増している。その振幅は楕円の長軸頂点と原点の長さで、φ N /φ S =1.3では約10倍である。図15で、φ N /φ S =1.3を見ると約10倍で結果が一
致する。
である。一点鎖線は分離マトリクスの固有ベクトルである。ランダム雑音の場合も雑音拡
大方向は分離マトリクスの固有ベクトル方向で最大である。その雑音拡大係数は、φ N /
φ S =1.3で約10倍である。
(1) 処理の流れ
悪条件の緩和策としてゲイティングを提案する。
アーチファクトに関わるパラメータを処理する処理の流れを図17に示す。
ゲイティングは悪条件でゲートを開き、「逐次補正ノルム比」
ここで、
悪条件とする閾値はζの上限ζ u と下限ζ l で設定する。 ζはφ S をζ u とζ l 倍
する係数で図15で決める。
例えば、ζ u =1.3 ,ζ l =0.7 のように1を挟んで対象な係数である。
例えば、ζ=φ N /φ S =1.3に選ぶと、雑音拡大係数は約10である。観測信号の信号対雑音比(SNR)が1/100(-40dB)を確保できれば、分離後のSNRとして1/10(-20dB)程度を望
める。
ここで、増大する観測雑音は混合マトリクスの固有ベクトル方向周辺を向いたベクトル
である。固有ベクトルの方向から離れると図16の楕円が示すように雑音拡大係数は減る
。
ゲイティングは、
血液のない組織ではφ N は約1であるため、ここでは
「ノルム比の真値」
従って、
した脈波ベクトルp とアーチファクトベクトルnの分散共分散マトリクスである。
Hはtrace[Σ]と対角要素2Σ 12 =2Σ 21 の絶対値の比である。 補正が適切で
あれば、[Σ]は対角マトリクスに近づく。Hの値が小さいほどpとnの独立性が高く良い
分離である。
アーチファクト区間の始点に|と終点に>マークを付した。
図18のAはゲイティングを行わずに「逐次補正ノルム比」
している。
図18のBはゲイティングの係数をζ u =1.3 ,ζ l =0.7 ,k=10とし、「逐次補正
ノルム比」
図18のCは、ゲイティングの係数をζ u =1.3 ,ζ l =0.7 ,k=60で分離した結果であ
り、スパイクの発生はない。アーチファクトの第一区間,第二区間,第三区間とも逐次補
正ノルム比による分離でアーチファクトが大幅に減っている。無調整で評価関数値H=0.
0382が得られた。
図18のDは、全観測区間のノルム比φ N で分離した結果である。評価関数値H=0.27
81である。
波の分離を行った結果である。
ζ u とζ l の間隔が狭まるとスパイクの発生が多くなることが分かる、ζ u =1.2 とζ
l =0.8 ではスパイクの発生はない。
閾値幅を拡大し過ぎるとゲイティングが頻繁に実行され、適切な「逐次補正ノルム比」
が使われる区間が減るため分離の質が低下する。
図18のBで、ゲイティング後に数カ所でスパイクが残っている。
そこで、6秒付近のスパイクの性質を検討する。
図20は、図18のBにおける5.7〜6.2秒の間の脈波と「ゲイティング後の逐次補正ノ
ルム比」
図20のAは、k=10でゲイティングにより分離した脈波であり、残存スパイクが5.8秒前と5.9秒付近に複数ある。
図20のBの実線は、ゲイティングを行った「ゲイティング後の逐次補正ノルム比」
トレンドの縦軸は、閾値付近を表示するための頂点は切り取ってある。
一点鎖線はゲイティングを実施した閾値を示す。閾値は、ζ u =1.3 ,ζ l =0.7 である
。
○印が閾値内にある区間(例えば、5.8秒付近〜5.9秒前)でゲイティングが実行されて
いる。
「ゲイティング後の逐次補正ノルム比」は、その区間で事前に定められた
「ゲイティング後の逐次補正ノルム比」のトレンドが閾値外にある場所では残存スパイ
クが5.8秒少し前と5.9秒付近で発生している。
この結果から、初期設定で指定した閾値内ではゲイティングが正確に実行されているこ
とが分かる。
図20のDでは、「逐次補正ノルム比」のトレンドは全て閾値の上側にあるためゲイテ
ィングは実行されていない。
残存スパイクは、初期設定で指定した閾値外で発生している。これらのスパイクは観測
雑音ベクトルが分離マトリクスの固有ベクトル方向と同方向であるために振幅が増大して
発生したスパイクである。
式(18)に示すように、分離マトリクスに正則化パラメータを追加項として加え、任
意の小さな値であるλを評価関数値が最小となるように調整する。λの決定には反復演算
が必要であり、その調整が難しいという欠点がある。
使用した観測波形は図14の(a)(b)である。
図21の上段の(a)は、λ=0.05,k=10で悪条件を緩和した例である。λ=0.05で評価関
数値がH=0.0042と最も小さかった。しかし、スパイクは多く残存している。
図21の下段の(b)は、λ=0.455,k=10で悪条件を緩和した例である。スパイクは消失
しているが脈波の分離は良くなく、評価関数値もH=0.888と悪い。
タッピングアーチファクトに埋もれた脈波を図18のBと同じパラメータである
図18のCは、ゲイティングの係数をk=60,ζ u =1.3 ,ζ l =0.7を使用して分離した
例を図22に示す。
難しい。
図22の中段(b)と下段(c)は、ゲイティングによる逐次補正ノルム比で分離した脈波で
ある。中段(b)は、タッピング区間で脈波像が良く分離されていて、スパイクは発生して
いない。下段(c)は、脈波の周期長を考慮し、17点の移動平均を施した結果で、中段(b)に
比べてさらに明瞭である。評価関数値は=0.1302とH=0.0253である。
上記の記載から、本発明のゲイティングを行う逐次補正ノルム比によって、アーチファ
クト区間を指定することなく脈波の分離ができることが明らかである。
2 発光素子
3 駆動回路
4 生体組織
5 フォトダイオード
6 変換器
7 マルチプレクサ
8 フィルタ
9 A/D変換器
10 処理部
11 表示部
12 ROM
13 RAM
Claims (3)
- 異なる2つの波長の光を生体組織に照射し、
当該生体組織を透過又は反射した各波長の光を電気信号に変換した2つの測定信号から、脈波信号とアーチファクト信号とに分離するパルスフォトメータの信号処理方法であって、
前記2つの測定信号による測定信号ベクトルを分離マトリクスによって、脈波信号ベク
トルとアーチファクト信号ベクトルとに分離するに際して、前記脈波信号の安定区間のノ
ルム比と、前記アーチファクト区間の下記の式8で示す逐次補正ノルム比とによって分離することを特徴とするパルスフォトメータの信号処理方法。
- 前記逐次補正ノルム比が、前記分離マトリクスが悪条件となる値となった時、前記逐次補正ノルム比を前記脈波信号の安定区間のノルム比から離れた値に置き換えることを特徴とする請求項1に記載のパルスフォトメータの信号処理方法。
- 前記請求項1又は2に記載のパルスフォトメータにおける信号処理は、動脈血中の酸素飽和度、特殊ヘモグロビン濃度又は注入色素濃度の内の少なくとも1つを演算することを特徴とするパルスフォトメータ。
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