JP4354387B2 - 信号分離システム、信号分離方法及び信号分離プログラム - Google Patents

信号分離システム、信号分離方法及び信号分離プログラム Download PDF

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Description

本発明は、複数の信号源信号が混合された観測信号から特定の信号源信号を分離(抽出)する信号分離システムに係り、とりわけ、信号源信号の分離処理を任意の条件下で精度良く行うことができる信号分離システム、信号分離方法及び信号分離プログラムに関する。
多くの応用分野において、複数の信号源信号が混合された各種の観測信号(EEG(脳波)信号、MEG(脳磁図)信号、混合音声信号、画像信号、地震信号等)と各信号源信号との間の関係は、次式(1)のような線形混合モデルにより表される。
X=AS+V … (1)
ここで、X=[(1),…,(K)]∈Rn×Kは観測行列(observable matrix)であり、その列ベクトル(i)は、n個の観測信号のセットとして、(i)=[x(i),…,x(i)](i=1,2,…,K)と表される。また、S=[(1),…,(K)]∈Rm×Kは信号源行列(source matrix)であり、その列ベクトル(i)は、m個の未特定の信号源信号のセットとして、(i)=[s(i),…,s(i)](i=1,…,K)と表される。さらに、A∈Rn×mは混合行列(mixing matrix)(チャネルパラメータ)であり、また、V∈Rn×Kはガウス分布の雑音行列(noise matrix)である。なお、nはセンサー等の観測点の数、mは未特定の信号源の数、Kは利用可能なサンプルの総数である。また、下線付きの英字はベクトルを表すものとする。
なお、上式(1)において、雑音行列Vは信号源行列Sとの関係で無視することができる場合があり、その場合には、上式(1)の線形混合モデルは、雑音のないモデルとして次式(2)により表される。以下、説明を簡単にするため、次式(2)の線形混合モデルを中心に説明する。
X=AS … (2)
上式(1)のような線形混合モデルにおいて、観測行列Xに基づいて混合行列(チャネルパラメータ)Aを推定することができれば、既存の任意の手法を用いて上式(2)を解くことにより信号源行列(データセットのクラスタ)Sを推定することができる。すなわち、上式(2)のような線形混合モデルにおいては、観測行列Xに基づいて混合行列Aを推定する方法が非常に重要であり、このための方法として従来から幾つかの方法が提案されている。
このような従来の方法としては、混合行列Aの逆行列である信号分離行列(de-mixing matrix)Wを推定することにより混合行列Aを推定する独立成分解析法(ICA:Independent Component Analysis)が知られている(非特許文献1)。
しかしながら、独立成分解析法では、雑音等による推定誤差(numerical instability / approximation error)のために、信号分離行列Wの逆行列である行列W−1が計算できない場合が多く、仮に計算できたとしても混合行列Aと行列W−1の間で大きな差異を生じてしまう場合が多いという問題がある。また、独立成分解析法では、混合行列Aが特異(singular)である場合には、上式(2)の線形混合モデルがそもそも解けないという問題がある。さらに、独立成分解析法では、個々の信号源が統計的に独立であり、かつ、信号源の数が観測点(センサー)の数と等しいかそれよりも小さい、という制約条件を満たす必要があるという問題がある。
一方、このような独立成分解析法以外の方法として、標準的なクラスタリング法(K−meansクラスタリング法等)も知られている。
しかしながら、標準的なクラスタリング法では、繰り返し(iterative)計算によってパラメータを調整するので、大域的収束点(globally convergent point)に収束するかどうかが一意に定まらず、局所解(locally convergent point)に陥る可能性が高いという問題がある。また、標準的なクラスタリング法では、繰り返し計算を行うことに起因した問題として、初期値の与え方次第で混合行列Aの各成分の調整の挙動が大幅に変化してしまうので、信号源行列S内の各成分の分散(データ構造)が十分にスパース(sparse)でない場合には、最終的に得られる混合行列Aの各成分が真の値から大幅にずれてしまう場合が多いという問題がある。
A. Cichocki and S. Amari: Adaptive Blind Signal and Image Processing - Learning Algorithms and Applications, John Wiley & Sons, 2002.
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、複数の信号源信号が混合された各種の観測信号から信号源信号を分離する処理(信号源信号の分離処理)を、信号源信号の統計的な性質や、観測信号の数と信号源信号の数との関係、信号源信号を含む信号源行列のデータ構造の性質等にかかわらず、任意の条件下で精度良く行うことができる信号分離システム、信号分離方法及び信号分離プログラムを提供することを目的とする。
本発明は、その第1の解決手段として、複数の信号源信号が混合された観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離システムにおいて、複数の観測信号を取り込む入力部と、前記入力部により取り込まれた各観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離部とを備え、前記信号分離部は、前記入力部により取り込まれた各観測信号を所定のサンプル数分だけ含む時間領域の観測行列を時間周波数領域の観測行列に変換する時間周波数変換部と、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列に基づいて、観測行列と信号源行列との間の関係を規定する混合行列を推定する混合行列推定部と、前記混合行列推定部により推定された混合行列と、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列とに基づいて、信号源信号を所定のサンプル数分だけ含む時間周波数領域の信号源行列を推定する信号源行列推定部と、前記信号源行列推定部により推定された時間周波数領域の信号源行列を時間領域の信号源行列に変換する逆時間周波数変換部とを有し、前記信号分離部の前記混合行列推定部は、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる成分間の比を成分として持つ複数の行列を求める第1処理と、前記第1処理で求められた各行列に含まれる各行ベクトルの成分の範囲を予め設定した正の定数個の部分空間に分け、それに基づいて前記各行列を前記正の定数個の部分行列に分割することにより、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する複数の部分行列を求める第2処理と、前記第2処理で求められた複数の部分行列に含まれる特定の部分行列の列ベクトルの平均を計算するとともに正規化し、混合行列の各列ベクトルを推定する第3処理とを行うことを特徴とする信号分離システムを提供する。
なお、上述した第1の解決手段において、前記信号分離部の前記時間周波数変換部は、ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間領域の観測行列を前記時間周波数領域の観測行列に変換し、前記信号分離部の前記逆時間周波数変換部は、逆ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間周波数領域の信号源行列を前記時間領域の信号源行列に変換することが好ましい。
また、上述した第1の解決手段において、前記信号分離部の前記混合行列推定部は、前記第1処理の対象となる前記時間周波数領域の観測行列として、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる列ベクトルの中からノルムが所定値に満たない列ベクトルを取り除いたものを用いることが好ましい。
さらに、上述した第1の解決手段において、前記信号源行列推定部は、線形計画法を用いて前記混合行列と前記時間周波数領域の観測行列とに基づいて前記時間周波数領域の信号源行列を推定することが好ましい。
本発明は、その第2の解決手段として、複数の信号源信号が混合された観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離方法において、入力部により取り込まれた各観測信号を所定のサンプル数分だけ含む時間領域の観測行列を時間周波数領域の観測行列に変換する第1ステップと、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列に基づいて、観測行列と信号源行列との間の関係を規定する混合行列を推定する第2ステップと、前記第2ステップで推定された混合行列と、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列とに基づいて、信号源信号を所定のサンプル数分だけ含む時間周波数領域の信号源行列を推定する第3ステップと、前記第3ステップで推定された時間周波数領域の信号源行列を時間領域の信号源行列に変換する第4ステップとを含み、前記第2ステップは、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる成分間の比を成分として持つ複数の行列を求める第1処理と、前記第1処理で求められた各行列に含まれる各行ベクトルの成分の範囲を予め設定した正の定数個の部分空間に分け、それに基づいて前記各行列を前記正の定数個の部分行列に分割することにより、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する複数の部分行列を求める第2処理と、前記第2処理で求められた複数の部分行列に含まれる特定の部分行列の列ベクトルの平均を計算するとともに正規化し、混合行列の各列ベクトルを推定する第3処理とを含むことを特徴とする信号分離方法を提供する。
なお、上述した第2の解決手段において、前記第1ステップは、ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間領域の観測行列を前記時間周波数領域の観測行列に変換し、前記第4ステップは、逆ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間周波数領域の信号源行列を前記時間領域の信号源行列に変換することが好ましい。
また、上述した第2の解決手段において、前記第2ステップは、前記第1処理の対象となる前記時間周波数領域の観測行列として、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる列ベクトルの中からノルムが所定値に満たない列ベクトルを取り除いたものを用いることが好ましい。
さらに、上述した第2の解決手段において、前記第4ステップは、線形計画法を用いて前記混合行列と前記時間周波数領域の観測行列とに基づいて前記時間周波数領域の信号源行列を推定することが好ましい。
本発明は、その第3の解決手段として、上述した第2の解決手段に係る信号分離方法に含まれる前記第1ステップ乃至前記第4ステップに対応する手順をコンピュータに実行させることを特徴とする信号分離プログラムを提供する。
本発明によれば、時間周波数領域の観測行列に基づいて、観測行列と信号源行列との間の関係を規定する混合行列を推定する際に、時間周波数領域の観測行列に含まれる成分間の比を成分として持つ複数の行列Xを求める第1処理と、この第1処理で求められた各行列Xを分割し、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する複数の部分行列Xを求める第2処理と、この第2処理で求められた複数の部分行列に含まれる特定の部分行列の列ベクトルの平均を計算して混合行列Aの各列ベクトルを推定する第3処理とを行うようにしているので、混合行列を任意の条件下で精度良く推定することができる。また、このようにして推定された混合行列を用いれば、時間周波数領域の信号源行列すなわち時間領域の信号源行列Sについても任意の条件下で精度良く推定することができる。このため、複数の信号源信号が混合された各種の観測信号から信号源信号を分離する処理(信号源信号の分離処理)を、信号源信号の統計的な性質や、観測信号の数と信号源信号の数との関係、信号源信号を含む信号源行列のデータ構造の性質等にかかわらず、任意の条件下で精度良く行うことができる。
発明を実施するための形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1乃至図3は本発明による信号分離システムの一実施の形態を説明するための図である。
図1に示すように、本実施の形態に係る信号分離システム10は、複数の信号源信号が混合された観測信号(EEG(脳波)信号、MEG(脳磁図)信号、混合音声信号、画像信号、地震信号等)から特定の信号源信号を分離するものであり、複数の観測信号を取り込む入力部11と、入力部11により取り込まれた各観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離部12とを備えている。
このうち、入力部11は、観測信号を検出するためのn個のセンサー11aを含み、これらの各センサー11aにより検出されたn個の観測信号が信号分離部12に入力されるようになっている。
また、信号分離部12は、入力部11の各センサー11aにより検出されたn個の観測信号に基づいて未特定の信号源信号(例えばm個の信号源信号)を推定するものであり、ウェーブレット・パケット変換部(時間周波数変換部)13、混合行列推定部14、信号源行列推定部15及びウェーブレット・パケット変換部(時間周波数変換部)16を有している。
ここで、入力部11の各センサー11aにより検出されたn個の観測信号は、当該n個の観測信号を所定のサンプル数(K個)だけ含む時間領域の観測行列Xとして信号分離部12に入力される。一方、信号分離部12から最終的に出力されるデータは、m個の信号源信号を含む時間領域の信号源行列Sである。より具体的には、時間領域の観測行列Xは、X=[(1),…,(K)]∈Rn×Kと表され、その列ベクトル(i)は、n個の観測信号のセットとして、(i)=[x(i),…,x(i)](i=1,2,…,K)と表される。また、時間領域の信号源行列Sは、S=[(1),…,(K)]∈Rm×Kと表され、その列ベクトル(i)は、m個の未特定の信号源信号のセットとして、(i)=[s(i),…,s(i)](i=1,…,K)と表される。なお、このような観測行列X及び信号源行列Sは、上述したように、混合行列A∈Rn×mを用いて上式(2)の線形混合モデルにより表される。
信号分離部12は、上式(2)の線形混合モデルに従って観測行列Xに基づいて信号源行列Sを求めるためのものであり、その処理は、(1)観測行列Xに基づいて混合行列Aを推定(ブラインド同定)する第1段階、及び、(2)第1段階で推定された混合行列Aと観測行列Xとに基づいて信号源行列Sを推定する第2段階、という2段階の処理に大きく分けられる。
以下、信号分離部12で行われる処理の詳細について説明する。
(基本原理)
まず、信号分離部12で行われる処理の基本的な原理について説明する。
上述したように、時間領域の観測行列X及び信号源行列Sは、混合行列Aを用いて上式(2)の線形混合モデルにより表されるが、ここでは、時間領域の観測行列X及び信号源行列Sを時間周波数領域の観測行列X′及び信号源行列S′に変換する。このとき、よりスパースな時間周波数領域の表現を得るため、上式(2)に対して、標準的なウェーブレット変換ではなくウェーブレット・パケット変換を施す。これにより、時間周波数領域の観測行列X′及び信号源行列S′に関して、次式(3)のような新しい線形混合モデルが得られる。なお、ウェーブレット・パケット変換は一種の線形変換であり、その詳細については、例えば非特許文献2(G. Strang and T. Nguyen: Wavelets and Filter Banks, Wellesley-Cambridge Press, 1995.)に記載されている。
Figure 0004354387
上式(3)において、時間周波数領域の観測行列X′の各行は、時間領域の観測行列Xの対応する観測信号の時間周波数表現であり、時間周波数領域の信号源行列S′の各行は、時間領域の信号源行列Sの対応する信号源信号の時間周波数表現である。
ここで、時間周波数領域の信号源行列S′が、0でない成分を一つだけ持つ列ベクトル(すなわち、一つの成分のみが主要な意味を持つ列ベクトル)の数が十分に大きくなるような態様でスパースであるものとする。例えば、次式(4)に示すように、信号源行列S′のL個の列ベクトル[′(i),…,′(i)]が、1番目の成分のみが0でない列ベクトルであるとする。
Figure 0004354387
この場合、時間周波数領域の観測行列X′の列ベクトル[′(i),…,′(i)]は、次式(5)に示すようなものとなる。
Figure 0004354387
ここで、q∈{1,…,n}とすると、時間周波数領域の観測行列X′の各列ベクトル′(i)=[x′(i),…,x′(i)](j=1,…,L)の各成分とx′(i)との比が次式(6)に従って計算される。
Figure 0004354387
今、上式(6)を上式(5)に適用すると、次式(7)が得られる。
Figure 0004354387
また、上式(7)から次式(8)が得られる。これにより、列ベクトル を特定のスケールで推定することができる。なお、次式(8)により表される の各成分は、次式(9)のようにも表される。
Figure 0004354387
Figure 0004354387
ここで、上式(7)の等式から、上式(7)の左辺の行列(次式(10)の行列)のn個の行ベクトルはいずれも、jとx′(j)との関係において座標系で水平線(図7参照)を形成するものであることが分かる。
Figure 0004354387
また、上式(10)の行列は、元の時間周波数領域の観測信号X′に基づいて得られる次式(11)の行列([x′(j)/x′(j)]n×K)の部分行列であることも分かる。
Figure 0004354387
なお、上式(11)においては、次式(12)の条件を満たすものとする。
Figure 0004354387
以上のようにして、n個の行ベクトルのそれぞれが水平線を形成するような行列(元の時間周波数領域の観測信号X′に基づいて得られる上式(11)の行列(n×Kの行列)の部分行列)を見つけることができれば、上式(8)を用いて混合行列Aの列ベクトルを推定することが可能となり、最終的に混合行列A及び信号源行列Sを推定することができる。
(信号分離部12における具体的な処理)
次に、図1乃至図3により、上述した基本的な原理に従って信号分離部12で行われる具体的な処理(混合行列A及び信号源行列Sを推定する処理)について説明する。
<段階1>
信号分離部12において、n個の観測信号を所定のサンプル数(K個)だけ含む時間領域の観測行列X∈Rn×Kが入力されると、まず、信号分離部12のウェーブレット・パケット変換部13により、入力部11から入力された時間領域の観測行列Xの各行ベクトルに対してウェーブレット・パケット変換が施され、時間領域の観測行列Xが時間周波数領域の観測行列X′に変換される(図2のステップ101)。
次に、信号分離部12の混合行列推定部14により、ウェーブレット・パケット変換部13により変換された時間周波数領域の観測行列X′に基づいて、時間周波数領域の観測行列X′と時間周波数領域の信号源行列S′との間の関係を規定する混合行列Aを推定する。
<段階2>
具体的には、まず、ウェーブレット・パケット変換部13により変換された時間周波数領域の観測行列X′に基づいて、それぞれの列ベクトルのノルムがξ(予め設定した正の定数)よりも大きくなるような部分観測行列X(^)(Xの上部に「^」が付けられた表記と同じもの)を求める(図2のステップ102)。なお、列ベクトル[x′(i),…,x′(i)]のノルムは次式(13)により定義される。
Figure 0004354387
なお、上述したステップ102の処理は、後続する処理における計算負荷を軽減し、また、雑音の影響を不相応に受けている列ベクトルを取り除くという意味で好ましいものである。
<段階3>
次いで、n=1〜nに関して、段階3.1及び3.2(図2のステップ104乃至117)を含むループを繰り返す。
<段階3.1>
具体的には、まず、段階2で求められた部分観測行列X(^)に含まれる成分間の比をとることで行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する、次式(14)のような比行列X(^)′を計算する(ステップ104)。
Figure 0004354387
なお、上式(14)において、Kは行列X(^)の列ベクトルの数よりも等しいか小さい数である。ここで、行列X(^)のn番目の行ベクトルの成分が小さい(例えば、予め設定した正の定数ξよりも小さい)場合には、その成分を含む行列X(^)の対応する列ベクトルを無視する。
ここで、上式(14)の比行列X(^)′は、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線(その高さは特定のスケールでの混合行列Aの列ベクトルの成分に対応している)を形成する幾つかの部分行列を含むものであり、このような部分行列が以下の段階3.2により見つけられる。
<段階3.2>
次いで、n=1〜n(n≠n)に関して、段階3.2.1、3.2.2及び3.2.3(図2のステップ105乃至115)を含むループを繰り返す。
<段階3.2.1>
具体的には、まず、上式(14)の比行列X(^)′のn番目の行ベクトル(次式(15)のベクトル)の最小値(r′n2)及び最大値(R′n2)を求める。
Figure 0004354387
ここで、[r′n2,R′n2]の範囲をM(予め設定した正の定数)個の部分区間に分け、比行列X(^)′をM個の部分行列X″,…,X″M0に分割する(図2のステップ107)。なおこのとき、各部分行列X″(k=1,…,M)のn番目の行ベクトルの全ての成分はk番目の部分区間内にある。また、各部分行列X″(k=1,…,M)は、比行列X(^)′の異なる列ベクトル(信号源成分の一つだけが0でない異なる時間周波数領域の点に対応する列ベクトル)を含む。
<段階3.2.2>
次いで、段階3.2.1で求められた部分行列X″(k=1,…,M)の中から、列ベクトルの数がJ(予め設定した正の整数)よりも小さい部分行列を削除し、新たな部分行列X″jk(k=1,…,N)を求める(図2のステップ108)。
以上の段階3.2.1及び3.2.2(図2のステップ107及び108)により、上述したような部分行列(行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する部分行列)が見つけられる。なお、このようにして求められる部分行列(ほぼ同一の列ベクトルを持つ部分行列)の全ての成分は、当該部分行列のn個の行ベクトルに対応するn個の水平線を形成するものとなる。また、このような部分行列の平均列ベクトルは、混合行列の一つの列ベクトル(すなわち、クラスタリング法でのクラスタ中心ベクトル)に対応するものとなる。
しかしながら、これらの段階のみでは、混合行列を推定するのに用いられる部分行列の数が多すぎる場合があり、以下の段階3.2.3により、段階3.2.1及び3.2.2で求められた部分行列の数を減少させる。
<段階3.2.3>
すなわち、n=1〜n(n≠n,n≠n)に関して、段階3.2.3.1(図2のステップ109乃至113)を含むループを繰り返す。
<段階3.2.3.1>
具体的には、n=1〜n(n≠n,n≠n)に関して、段階3.2.2で求められた複数の部分行列X″jk(k=1,…,N)に基づいて、混合行列Aの列ベクトルに対応するベクトル を求める(ステップ111)。
すなわち、k=1〜Nに関し、以下の段階3.2.3.1(a)〜(c)(図3のステップ201乃至207)を含むループを繰り返す。
(a) まず、部分行列X″jkに対して、上述した段階3.2.1(図2のステップ107)と同様の処理を行う(図3のステップ202)。なおここでは、段階3.2.1におけるn及びX(^)′に代えてn及びX″jkが用いられる。これにより、それぞれの部分行列X″jkに対して、M個の部分行列X″ (jk)(q=1,…,M)が求められる。
(b) 次いで、このようにして得られたM個の部分行列X″ (jk)(q=1,…,M)に対して、上述した段階3.2.2(図2のステップ108)と同様の処理(X″及びJに代えてX″ (jk) 及びJ(予め設定した正の定数)が用いられる)を行って新たな部分行列を求めた後(図3のステップ203)、求められた部分行列の中から、n個の行ベクトルの分散の合計が最も小さい部分行列(例えばX″ (jk))を選択する(図3のステップ204)。
以上の段階3.2.3.1(a)及び(b)は、上述した段階3.2.1及び3.2.2と同様に、段階3.2.2で求められた部分行列の数を減少させるものである。そして、このようにして求められた部分行列X″ (jk)によれば、その行ベクトルによってn個のはっきりとした水平線(図8参照)が形成される。
(c) 最後に、このようにして求められた部分行列X″ (jk)の全ての列ベクトルの平均を計算するとともに正規化し、混合行列Aの列ベクトルに対応するベクトル を推定する(ステップ205)。
<段階4>
以上のようにして、n,n,n,kに関しての4つのループを繰り返すと、混合行列Aの列ベクトルに対応するベクトルのセットである行列E=[ ,…, N0]が求められる。なおここでは、ループが4つあるので、混合行列Aに含まれる一つの列ベクトルに対応して複数のベクトルが推定されることとなるが、これらの推定された全てのベクトルが行列E内に含まれることとなる。すなわち、推定された行列Eは、混合行列Aよりも多くの列ベクトルを持つこととなる。
このため、段階4において、推定された行列Eの列ベクトルのうち冗長なものを削除する。具体的には、推定された行列Eの列ベクトルの中にほとんど同じか又は方向が反対の列ベクトルが存在している場合には、これらの列ベクトルを一つの正規化された平均列ベクトルに置き換える。そして最終的に、このようにして求められた行列A∈Rn×m0(m≦m)が元の混合行列Aを推定したものとして求められる(図2のステップ118)。
<段階5>
その後、信号分離部12の信号源行列推定部15により、混合行列推定部14により推定された混合行列A(すなわち行列A)と、ウェーブレット・パケット変換部13により変換された時間周波数領域の観測行列X′とに基づいて、線形計画法を用いて、信号源信号を所定のサンプル数分だけ含む時間周波数領域の信号源行列S′を推定する。具体的には、次式(16)により定義される線形計画問題を解くことにより、時間周波数領域の信号源行列S′を推定する。
Figure 0004354387
なお、混合行列推定部14により推定された行列Aは、本質的ではない列ベクトルの大きさや順番等を無視すれば、混合行列Aに近い部分行列を含んでいる。また、非特許文献3(Y. Q. Li, A. Cichocki and S. Amari, "Analysis of Sparse representation and blind source separation," Neural Computation, vol. 16, pp. 1193-1234.)におけるロバスト性についての解析によれば、このような時間周波数領域の信号源行列S′の推定は、行列Aに含まれる部分行列が十分に混合行列Aに近ければ効果的に行われることが分かっている。
最後に、信号分離部12の逆ウェーブレット・パケット変換部16により、信号源行列推定部15により推定された時間周波数領域の信号源行列S′に対して逆ウェーブレット・パケット変換が施され、時間領域の信号源行列Sに変換される。
なお、上述した信号分離部12における処理にあたっては5つのパラメータ(解析領域での行列の成分の大きさに関連したパラメータξ,ξ、部分区間の数M,選択された部分行列の列ベクトルの数の最小値J,J)が存在しているが、これらのパラメータの値は、処理対象となる問題(サンプルの総数や、ウェーブレット・パケット変換で得られる係数の絶対値の最大値等)に応じて予め決められている。
このように本実施の形態によれば、信号分離部12の混合行列推定部14において、時間周波数領域の観測行列X′に含まれる成分間の比を成分として持つ複数の比行列X(^)′を求める第1処理と、この第1処理で求められた各比行列X(^)′を分割し、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する複数の部分行列X″を求める第2処理と、この第2処理で求められた複数の部分行列X″に含まれる特定の部分行列の列ベクトルの平均を計算して混合行列Aの各列ベクトルを推定する第3処理とを行うようにしているので、混合行列Aを任意の条件下で精度良く推定することができる。また、このようにして推定された混合行列Aを用いれば、時間周波数領域の信号源行列S′すなわち時間領域の信号源行列Sについても任意の条件下で精度良く推定することができる。このため、複数の信号源信号が混合された各種の観測信号から信号源信号を分離する処理(信号源信号の分離処理)を、信号源信号の統計的な性質や、観測信号の数と信号源信号の数との関係、信号源信号を含む信号源行列のデータ構造の性質等にかかわらず、任意の条件下で精度良く行うことができる。
より具体的には、本実施の形態に係る信号分離方法によれば、従来の信号分離方法として一般的に用いられている独立成分解析法や標準的なクラスタリング法(K−meansクラスタリング法等)で生じるような問題が生じない。以下、本実施の形態に係る信号分離方法の利点を従来の信号分離方法と比較して説明する。
(1) 独立成分解析法との比較
独立成分解析法は、本実施の形態に係る信号分離方法と同様に、混合行列Aや信号源行列Sを推定するために用いることができる。具体的には、独立成分解析法では、混合行列Aの逆行列である信号分離行列Wを推定することにより混合行列A及び信号源行列Sを推定するものであり、混合行列Aの推定は、推定された信号分離行列Wの逆行列W−1を求めることにより行われ、一方、信号源行列Sの推定は、推定された信号分離行列Wと観測信号行列Xとの積を求めることにより行われる。
しかしながら、このような独立成分解析法では、雑音等による推定誤差のために、信号分離行列Wの逆行列である行列W−1が計算できない場合が多く、仮に計算できたとしても混合行列Aと行列W−1の間で大きな差異を生じてしまうことが多い。また、独立成分解析法では、混合行列Aが特異である場合には、上式(2)の線形混合モデルがそもそも解けない。さらに、独立成分解析法では、個々の信号源が統計的に独立であり、かつ、信号源の数が観測点(センサー)の数と等しいかそれよりも小さい、という制約条件を満たす必要があるので、多くの現実的なケース(脳内信号源の推定等)に適用することができない。
これに対し、本実施の形態に係る信号分離方法では、逆行列を介して混合行列Aを間接的に推定するのではなく、より直接的に混合行列Aを推定するので、独立成分解析法に比べてより精度良くかつ確実に混合行列A及び信号源行列Sを推定することができる。また、本実施の形態に係る信号分離方法では、個々の信号源が統計的に独立でなくともよく、また、信号源の数についての制約もないので、多くの現実的なケースに対して効果的に適用することができる。
(2) 標準的なクラスタリング法との比較
標準的なクラスタリング法(K−meansクラスタリング法等)は、本実施の形態に係る信号分離方法と同様に、混合行列Aや信号源行列Sを推定するために用いることができる。具体的には、標準的なクラスタリング法では、繰り返し計算によってパラメータを調整することにより混合行列Aや信号源行列Sを推定する。
しかしながら、このような標準的なクラスタリング法では、繰り返し計算によってパラメータを調整するので、大域的収束点に収束するかどうかが一意に定まらず、局所解に陥る可能性が高い。また、標準的なクラスタリング法では、繰り返し計算を行うことに起因した問題として、初期値の与え方次第で混合行列Aの各成分の調整の挙動が大幅に変化してしまうので、信号源行列S内の各成分の分散(データ構造)が十分にスパース(sparse)でない場合には、最終的に得られる混合行列Aの各成分が真の値から大幅にずれてしまう場合が多い。
これに対し、本実施の形態に係る信号分離方法では、パラメータの調整のために繰り返し計算が行われることがないので、大域的収束点に収束しないといった問題がない。また、本実施の形態に係る信号分離方法では、初期値の選定次第で混合行列Aの各成分の調整の挙動が大幅に変化してしまうといった問題がなく、信号源行列S内の各成分の分散(データ構造)が十分にスパースでなくとも、最終的に得られる混合行列Aの各成分が真の値から大幅にずれたものとはならない。
なお、上述した実施の形態においては、n個の水平線を形成する部分行列を求めるため、上式(14)の比行列X(^)′に含まれるn個の行ベクトルの全てに関して、その各行ベクトルの成分の範囲をM個の部分空間に分け、それに基づいて、行ベクトルの比行列X(^)′をM個の部分行列X″,…,X″M0に分割するようにしているが、比行列X(^)′の2つの行ベクトルに関して同様の処理を行うだけでも、ほぼ同様の結果を得ることができる。すなわち、上式(14)の比行列X(^)′に含まれる2個の行ベクトル(例えば1番目の行ベクトル及び2番目のベクトル)に関して、その各行ベクトルの成分の範囲をM個の部分空間に分け、それに基づいて、行ベクトルの比行列X(^)′をM個の部分行列X″,…,X″M0(これらの各部分行列に含まれる2つの行ベクトルのそれぞれの全ての成分は、対応する2つの部分区間のそれぞれの内にある)に分割するようにしてもよい。本発明者らがシミュレーション等により検証した結果では、部分行列に含まれる2つの行ベクトルのそれぞれの全ての成分が、対応する2つの部分区間のそれぞれの内にある場合b(すなわち、2つの行ベクトルが2つの水平線を形成する場合)には、他の行ベクトルも水平線を形成することが分かっている。
また、上述した実施の形態においては、信号分離部12の信号源行列推定部15により、混合行列推定部14により推定された混合行列A(すなわち行列A)と、ウェーブレット・パケット変換部13により変換された時間周波数領域の観測行列X′とに基づいて、時間周波数領域信号源行列S′を推定する方法として、線形計画法を用いているが、これに限らず、任意の最適化問題解決法を用いることができる。
さらに、上述した実施の形態において、信号分離システム10の信号分離部12の各部(ウェーブレット・パケット変換部13、混合行列推定部14、信号源行列推定部15及び逆ウェーブレット・パケット変換部16)はいずれも、コンピュータシステム上で稼働するプログラムとして実現することができる。このようなプログラムは、メモリ、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM及びDVD等のようなコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納され、コンピュータシステムのプロセッサから逐次読み出されて実行されることにより上述したような機能ないし手順が実現される。
次に、上述した実施の形態の具体的実施例について述べる。なお、本実施例においては、人為的に用意した混合信号データとしての観測行列Xに基づいて混合行列A及び信号源行列Sを推定する場合を例に挙げて説明する。
(実施例)
本実施例において、信号源行列S∈R4×10000は、[−5,5]の範囲で一様分布をなす値を持つ成分からなるものであり、0でない成分を一つだけ持つ800個の列ベクトルを含んでいるものとした。また、このような800個の列ベクトルのうち、第1群である200個の列ベクトルはその第1成分が0でなく、第2群である200個の列ベクトルはその第2成分が0でなく、第3群である200個の列ベクトルはその第3成分が0でなく、第4群である200個の列ベクトルはその第4成分が0でないものとした。
また、混合行列A∈R3×4は、次式(17)のような、ランダムに選ばれた成分(正規化された成分)のみを持つものとした。
Figure 0004354387
さらに、観測行列X∈R3×10000は、上式(2)のX=ASに従って、予め準備された信号源行列Sと混合行列Aとの積をとることにより求めた。
そして、本実施例においては、このようにして求められた観測行列Xに対して、上述した信号分離方法(段階1〜3)を用いて処理を行い、混合行列Aを推定した。ただし、本実施例では、観測行列Xが人為的に準備されたものであり適度のスパース性を持っているので、段階1及び5は実行しなかった。
ここで、信号分離方法の具体的な手順は上述したものと同様であるので、詳細な説明は省略するが、段階3.1によって求められた比行列X(^)′の成分は図4及び図5に示すようなものとなった。このうち、図4は段階3.1によって求められた比行列X(^)′の成分の3次元的な分散の様子を示す図、図5は比行列X(^)′の1番目の行ベクトルの全ての成分を示す図である。図4及び図5から明らかなように、この段階では、複数の成分が集合したクラスタは何ら見つけられない。特に図4では、混合行列の4つの列ベクトルのそれぞれの方向も何ら示されていない。これは、全点の2%のみがこれらの各方向を表しているに過ぎないからである。
また、段階3.2.1によって求められた行列X″の1番目の行ベクトルの成分は図6に示すようなものとなり、段階3.2.2によって求められた行列X″jkの成分は図7に示すようなものとなった。なお、図6において、横方向に伸びる実線は幾つかの部分区間を表している。図6及び図7から明らかなように、この段階では、雑音が重ねられた幾つかの線セグメントが存在していることが分かる。
さらに、段階3.2.3.1(b)によって求められた行列X″ (jk)の成分は図8に示すようなものとなった。図8から明らかなように、この段階では、はっきりとした3つの線セグメントが存在していることが分かる。これらの3つの線セグメントは、混合行列Aの1番目の列ベクトルの3つの成分に対応する高さを持つ、X″ (jk)の3つの行ベクトルによって形成されている。X″ (jk)の正規化された平均列ベクトルは、混合行列Aの推定された列ベクトル(推定された行列Eの列ベクトルの一つ)に対応している。
以上のようにして、混合行列Aに対応する行列Eを推定した結果、次式(18)の行列が得られた。
Figure 0004354387
ここで、このようにして推定された行列Eの列ベクトルと上式(17)の混合行列Aの列ベクトルとを比較すると、混合行列Aの全ての列ベクトルが非常に良く推定されていること、推定された行列E内に幾つかの冗長なベクトルが存在していることが分かる。
このため、最終的に、この推定された行列E内に存在する冗長なベクトルを取り除くことにより(上述した信号分離方法の段階4)、最終的な混合行列A(行列A)の推定を行った。
以上により、信号源行列Sの列ベクトルの8%のみがスパースである(1つの成分のみが0でない)にもかかわらず、上述した信号分離方法が良好に機能するものであることが分かった。
(比較例)
比較例として、上述した実施例で用いられた観測行列Xに対して、K−meansクラスタリング法を用いて処理を行い、混合行列Aを推定した。次式(18)はその結果得られた混合行列Aの推定行列を示す。
Figure 0004354387
上式(18)の推定行列と上式(17)の混合行列Aとを比較すると、K−meansクラスタリング法では混合行列が良好に推定されないことが分かる。
産業上の利用分野
本発明に係る信号分離システムは、生物医学信号処理や音声処理、画像処理、地震信号処理等の分野で効果的に用いることができる。以下、具体的に説明する。
(1) 生物医学信号処理
脳波(EEG)信号や脳磁図(MEG)信号等を含む生物医学信号は、未特定の複数の脳内信号源、アーティファクト及び雑音等の混合信号として、上式(1)(2)の線形混合モデルの形で現れる。すなわち、観測信号である生物医学信号を含む観測行列Xは、未特定の混合行列Aと未特定の信号源行列Sとの積の形で表される。
本発明に係る信号分離システムによれば、脳波計や脳磁図計等によって観測された生物医学信号に基づいて混合行列Aを推定することができ、また、他の手法と組み合わせることにより信号源行列Sを推定することができるので、結果的に、脳内信号源を特定することができる。このようにして特定される脳内信号源は、頭部損傷や脳感染、脳出血、アルツハイマー病、脳組織の変性、脳卒中、脳腫瘍等の病気によって引き起こされるものである。従って、これらの脳内信号源を見つけることは医療診断にとって有用である。
(2) 音声処理
混合音声信号は、未特定の複数の音声信号源及び雑音等の混合信号として、上式(1)(2)の線形混合モデルの形で現れる。すなわち、観測信号である混合音声信号を含む観測行列Xは、未特定の混合行列Aと未特定の信号源行列Sとの積の形で表される。
本発明に係る信号分離システムによれば、マイクロフォンやソナー等によって観測された混合音声信号に基づいて混合行列Aを推定することができ、また、他の手法と組み合わせることにより信号源行列Sを推定することができるので、結果的に、未特定の複数の音声信号源を特定することができる。
(3) 画像処理
核磁気共鳴機能画像(fMRI)等の医療画像や天体画像等の画像デジタル信号は、未特定の複数の画像信号源及び雑音等の混合信号として、上式(1)(2)の線形混合モデルの形で現れる。すなわち、観測信号である画像デジタル信号を含む観測行列Xは、未特定の混合行列Aと未特定の信号源行列Sとの積の形で表される。
本発明に係る信号分離システムによれば、カメラや天体望遠鏡等によって観測された画像デジタル信号に基づいて混合行列Aを推定することができ、また、他の手法と組み合わせることにより信号源行列Sを推定することができるので、結果的に、未特定の複数の画像信号源を特定することができる。
(4) 地震信号処理
地震信号は、地震によって引き起こされる未特定の複数の地震信号源、他の信号源及び雑音等の混合信号として、上式(1)(2)の線形混合モデルの形で現れる。すなわち、観測信号である地震信号を含む観測行列Xは、未特定の混合行列Aと未特定の信号源行列Sとの積の形で表される。
本発明に係る信号分離システムによれば、地震計によって観測(記録)された地震信号に基づいて混合行列Aを推定することができ、また、他の手法と組み合わせることにより信号源行列Sを推定することができるので、結果的に、未特定の複数の地震信号源を特定することができる。
本発明の一実施の形態に係る信号分離システムの構成を示すブロック図。 図1に示す信号分離システムの信号分離部で行われる処理を説明するためのフローチャート。 図2に示すステップ111の処理を説明するためのフローチャート。 実施例において中間的に得られた行列(段階3.1の処理(図2のステップ104の処理)後に得られた比行列)の成分の3次元的な分散の様子を示す図。 実施例において中間的に得られた行列(段階3.1の処理(図2のステップ104の処理)後に得られた比行列)の1番目の行ベクトルの全ての成分を示す図。 実施例において中間的に得られた行列(段階3.2.1の処理(図2のステップ107の処理)後に得られた行列)の1番目の行ベクトルの幾つかの成分を示す図。 実施例において中間的に得られた行列(段階3.2.2の処理(図2のステップ108の処理)後に得られた行列)の全ての成分を示す図。 実施例において中間的に得られた行列(段階3.2.3.1(b)の処理(図3のステップ203の処理)後に得られた行列)の成分を示す図。
符号の説明
10 信号分離システム
11 入力部
11a センサー
12 信号分離部
13 ウェーブレット・パケット変換部
14 混合行列推定部
15 信号源行列推定部
16 逆ウェーブレット・パケット変換部

Claims (9)

  1. 複数の信号源信号が混合された観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離システムにおいて、
    複数の観測信号を取り込む入力部と、
    前記入力部により取り込まれた各観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離部とを備え、
    前記信号分離部は、
    前記入力部により取り込まれた各観測信号を所定のサンプル数分だけ含む時間領域の観測行列を時間周波数領域の観測行列に変換する時間周波数変換部と、
    前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列に基づいて、観測行列と信号源行列との間の関係を規定する混合行列を推定する混合行列推定部と、
    前記混合行列推定部により推定された混合行列と、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列とに基づいて、信号源信号を所定のサンプル数分だけ含む時間周波数領域の信号源行列を推定する信号源行列推定部と、
    前記信号源行列推定部により推定された時間周波数領域の信号源行列を時間領域の信号源行列に変換する逆時間周波数変換部とを有し、
    前記信号分離部の前記混合行列推定部は、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる成分間の比を成分として持つ複数の行列を求める第1処理と、前記第1処理で求められた各行列に含まれる各行ベクトルの成分の範囲を予め設定した正の定数個の部分空間に分け、それに基づいて前記各行列を前記正の定数個の部分行列に分割することにより、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する複数の部分行列を求める第2処理と、前記第2処理で求められた複数の部分行列に含まれる特定の部分行列の列ベクトルの平均を計算するとともに正規化し、混合行列の各列ベクトルを推定する第3処理とを行うことを特徴とする信号分離システム。
  2. 前記信号分離部の前記時間周波数変換部は、ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間領域の観測行列を前記時間周波数領域の観測行列に変換し、前記信号分離部の前記逆時間周波数変換部は、逆ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間周波数領域の信号源行列を前記時間領域の信号源行列に変換することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記信号分離部の前記混合行列推定部は、前記第1処理の対象となる前記時間周波数領域の観測行列として、前記時間周波数変換部により変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる列ベクトルの中からノルムが所定値に満たない列ベクトルを取り除いたものを用いることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
  4. 前記信号源行列推定部は、線形計画法を用いて前記混合行列と前記時間周波数領域の観測行列とに基づいて前記時間周波数領域の信号源行列を推定することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシステム。
  5. 複数の信号源信号が混合された観測信号から特定の信号源信号を分離する信号分離方法において、
    入力部により取り込まれた各観測信号を所定のサンプル数分だけ含む時間領域の観測行列を時間周波数領域の観測行列に変換する第1ステップと、
    前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列に基づいて、観測行列と信号源行列との間の関係を規定する混合行列を推定する第2ステップと、
    前記第2ステップで推定された混合行列と、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列とに基づいて、信号源信号を所定のサンプル数分だけ含む時間周波数領域の信号源行列を推定する第3ステップと、
    前記第3ステップで推定された時間周波数領域の信号源行列を時間領域の信号源行列に変換する第4ステップとを含み、
    前記第2ステップは、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる成分間の比を成分として持つ複数の行列を求める第1処理と、前記第1処理で求められた各行列に含まれる各行ベクトルの成分の範囲を予め設定した正の定数個の部分空間に分け、それに基づいて前記各行列を前記正の定数個の部分行列に分割することにより、行ベクトルが時間周波数領域の座標系で水平線を形成する複数の部分行列を求める第2処理と、前記第2処理で求められた複数の部分行列に含まれる特定の部分行列の列ベクトルの平均を計算するとともに正規化し、混合行列の各列ベクトルを推定する第3処理とを含むことを特徴とする信号分離方法。
  6. 前記第1ステップは、ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間領域の観測行列を前記時間周波数領域の観測行列に変換し、前記第4ステップは、逆ウェーブレット・パケット変換を用いて前記時間周波数領域の信号源行列を前記時間領域の信号源行列に変換することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  7. 前記第2ステップは、前記第1処理の対象となる前記時間周波数領域の観測行列として、前記第1ステップで変換された時間周波数領域の観測行列に含まれる列ベクトルの中からノルムが所定値に満たない列ベクトルを取り除いたものを用いることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
  8. 前記第4ステップは、線形計画法を用いて前記混合行列と前記時間周波数領域の観測行列とに基づいて前記時間周波数領域の信号源行列を推定することを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の信号分離方法。
  9. 請求項5乃至8のいずれか一項に記載の信号分離方法に含まれる前記第1ステップ乃至前記第4ステップに対応する手順をコンピュータに実行させることを特徴とする信号分離プログラム。
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