JP4830107B2 - スピン記録方法および装置 - Google Patents

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本発明は、孤立スピンを利用したスピン記録方法および装置に関する。
今日、情報記録デバイスとしては、磁化の向きにより情報を記録する磁気記録デバイスが一般的である。磁気記録の方式には、記録媒体の磁化方向が磁気ヘッドの走行方向に平行な長手記録方式と、磁気ヘッドの走行方向に垂直な垂直記録方式とがある。
長手記録方式は、従来、一般的な磁気記録方式であるが、技術の多年にわたる蓄積と向上によって記録密度は限界に近づいていると言われている。
一方、垂直記録方式は、最近実用化されつつある磁気記録方式であり、記録密度の増大に伴いビットの安定性が増すため、高密度記録に有利であると期待されている(非特許文献1)。垂直記録方式は、隣接する記録ビット同士に吸引力が働くため、長手記録方式に比べ高密度で安定な磁化が得られるという特長があり、現在、記録媒体としては、高密度記録が可能なCo−Cr合金系媒体と、熱安定性が高い非晶質媒体とが開発されている。
竹野入俊司、酒井泰志、榎本一雄、及川忠明、渡辺貞幸、上住洋之、島津武仁、村岡裕明、中村慶及、「CoPtCr-SiO2グラニュラー垂直磁気記録媒体」、日本応用磁気学会誌 Vol. 27, No. 9, 2003
しかしながら、垂直記録方式においても、現在の研究開発スピードが続けば、磁壁程度(約10nm)の幅を持った微細な磁石を並べる必要があることが予想されており、本質的には、現行の技術(長手記録方式)と同様に強磁性材料を使用する限り、磁壁以下の大きさにはなれず、記録密度の向上には一定の限界がある。
また、仮に磁壁以下の原子・分子スケールの構造物をビットとして作成できたとしても、交換相互作用(原子間の距離程度の大きさ内で働く)や超交換相互作用(他の物質を介在して交換相互作用よりも長い距離で働く)があれば、ビット内のスピン同士が相互作用し、安定したビットにはならない。すなわち、従来は、一般に、材料として強磁性体が使用されるため、周囲に漏れ磁場が形成され、ビット間に相互作用(磁気双極子的相互作用)が生じて、隣接するビットが反転するなどの障害が生じるおそれがある。しかも、ビットを原子・分子のスケールまで縮小しようとすれば、漏れ磁場よりも原子上の電子のスピン間の相互作用(交換相互作用)が大きくなることが予想され、この交換相互作用によりビット間に相互作用が生じて、やはり、隣接するビットが反転するなどの障害が生じるおそれがある。したがって、従来の材料を使用する限り、原子・分子スケールのビットを形成したとしても、孤立的な安定したビットにはならず、安定的に読み出し/書き込みを行うには限界がある。
本発明の目的は、原子・分子スケールの安定したビットを形成して、記録密度を大幅に向上することができるスピン記録方法および装置を提供することである。
本発明は、奇数個の電子を持つ原子またはイオンを有するとともに、物質表面の隣接するスピンと相互作用を持たない孤立スピンを有し、前記孤立スピンがクラマースの二重項により形成された常磁性物質に対して、情報を前記孤立スピンの状態として書き込むようにした。
本発明によれば、原子・分子スケールの安定したビットを形成して、記録密度を大幅に向上することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本発明は、常磁性化合物に含まれる遷移元素原子(イオン)の不完全殻の電子が持つ固有の角運動量(スピン角運動量または単にスピンと呼ばれる。ここでは単に「スピン」と呼ぶ)を利用する新規なメモリに関する。本明細書中では、この新規なメモリを「スピンメモリ」と呼ぶことにする。
本発明者は、記録密度を向上させるためには、原子・分子スケールの安定したビットを形成することが必要であることを見出した。また、原子・分子スケールの安定したビットを形成するためには、漏れ磁場や交換相互作用の影響を回避し、ビット間の相互作用がない材料を用いる必要があることを見出した。さらに、そのためには、ビット上に奇数個の電子を持つ(クラマースの二重項を持つ)常磁性物質の孤立スピンを利用すればよいことを見出したのである。ここで、「孤立スピン」とは、隣接する格子上のスピンと相互作用を持たないスピンを意味する。なお、クラマース(Kramers)の二重項は、クラマースの二重縮退または単にクラマースの縮退とも呼ばれる。クラマースの二重項については、後で詳細に説明する。
本発明は、クラマースの二重項を持つ特定の材料において、孤立スピンが2つの状態(アップ(up)またはダウン(down))を有する点に着目し、クラマース(Kramaers)の二重項を持つ原子(イオン)の孤立スピンの状態(アップまたはダウン)を検出または反転することにより、孤立スピンをビットとしたメモリの読み取りと書き込みを行うものである。
換言すれば、本発明は、基本的に常磁性物質の単一原子のスピンのみを利用するメモリであって、磁場を加えてスピン軸(z軸)を決め、スピンの状態(±S)で情報(信号)を記録し、スピンの反転操作により記録した情報の読み取りや書き換え、消去を行うスピンメモリである。
さらに、より具体的には、単結晶中に相互に十分離れた距離にある遷移元素の原子(イオン)を含む化合物は常磁性を示し(常磁性物質)、各遷移元素原子(イオン)はその不完全殻の電子が固有の角運動量(スピン)を持つ。極めて低い温度において、そのような常磁性物質の原子(イオン)は全スピン量子数Sに関して最低エネルギー状態が縮退しているため、磁場のない状態で±Sの選択により情報(信号)の記録が可能となる。より詳細には、スピンメモリの記録媒体としては、好ましくは、1)常磁性物質で、2)スピン間の相互作用(キュリー温度などの磁気変態点:Tc)が小さく、3)局在スピンが十分低温までキュリーの法則またはキュリー−ワイスの法則に従い、4)原子(イオン)の電子数が奇数個の場合にどんなに低い対称性の結晶場でも最低エネルギーのスピン状態にクラマース縮退が残る物質を利用する。奇数個の電子を持つ原子(イオン)では、全スピン量子数Sは必ず半奇数であり、スピンハミルトニアンは、磁場のないとき、クラマースの二重項が残り、±Sは同じエネルギー状態にある。ハミルトニアンの時間反転対称性から磁場とスピン磁気モーメントを同時に反転すればエネルギーは変わらないため、極めて低い温度でスピンの最低エネルギー準位にクラマースの二重項が残る常磁性物質では、最低エネルギー準位のスピンを磁場で反転することにより±Sの選択が可能となり、磁場のない状態で記録を行うことができる。本発明は、このようなクラマース二重項を持つ孤立スピンを利用して、情報(信号)を記録し、読み取り、書き換える等の操作を行うメモリである。ここで、「クラマースの二重項」とは、奇数個の電子を持つ原子(イオン)が電場におかれたとき、電場の対称性がどんなに低くても、また、スピン−軌道相互作用を考慮しても、各エネルギー準位に残る二重の縮退をいう。この縮退は、外から磁場をかけない限り、取り除くことができない(クラマースの定理)。
このように、本発明では、クラマースの二重項を利用するため、構造中の1原子、1分子、1クラスタ上の孤立スピンが純然たるスピンのみからなり、そのような孤立スピンの状態をビットとしたメモリを形成することができる。読み出しと書き込みについては、プローブ顕微鏡などのスピンプローブや、磁気プローブなどを用いて、スピンを反転させることによって書き込みを行い、また、反転させない程度の相互作用を検出することによって読み出しを行う。
以下、図面を用いて本発明の原理を説明する。
本発明では、スピンメモリの材料として、ビット上に奇数個の電子を持つ、つまり、クラマースの二重項を持つ常磁性物質(好ましくは、後述する断熱消磁作業物質)を選択する。
このような物質を用いて形成した孤立スピンは、クラマースの二重項を持ち、その状態(スピンの方向)は、アップ(up)かダウン(down)かの二者択一であり、探針を用いて計測するまでは知ることができない。しかし、計測が終わればその状態は壊れてしまう。
既知の特定方向のスピン状態を持つ探針(例えば、磁性を持つ探針)と、クラマースの二重項を持つ孤立スピンとが相互作用を開始した時、探針と孤立スピンとの間の相互作用力は、互いのスピンの向きに応じて2つのレベルに分かれる。すなわち、反発力の強弱、引力の強弱、または、反発力と引力といった2つのレベルの違いが生じる。これは、要するに、探針との相互作用に違いがある2種類の孤立スピンが生じることを意味する。しかし、探針と孤立スピンとの間の相互作用力が微弱であれば、具体的には、例えば、探針と孤立スピンとの距離が十分に離れていたり、探針と孤立スピンとの間で電子がトンネルしない状態に保たれている場合、孤立スピンの状態は変化しない確率が高いと考えられる。したがって、クラマースの二重項を持つ孤立スピンは、メモリのビットして動作可能であると考えられる。
図1は、本発明のスピン記録方法の動作原理を説明するための模式図であり、(A)は、計測前の状態を示す図、(B)は、計測時の状態を示す図である。
図1に示すように、図示しない基板上に複数のビット1が形成されている。各ビット1は、クラマースの二重項を持ち、スピン状態としてアップ(up)またはダウン(down)のいずれかの方向をとる。しかし、上記のように、どちらの状態(方向)であるかは、計測前には決定できない。すなわち、図1(A)に示すように、計測前、つまり、探針3と基板との距離が大きい場合、探針3と各孤立スピンとの間に相互作用が働かないため、各ビットのスピン状態は不明である。図1では、不明であるスピン状態を「up」または「down」で表記している。また、探針3は、既知の特定方向(ここでは、一例として、例えば、ダウン)のスピンを持っている。
図1(B)に示すように、探針3と基板との距離が小さくなると、探針3と最も近いビット1aについて、両者の相互作用を通じて、スピンの状態(方向)が決定される。しかし、探針3と基板とが近づき過ぎると、探針3と各ビット1との間で電子のトンネルが生じるため、各ビット1上のスピン状態を決定できなくなる。したがって、計測に際しては、探針3と基板との距離を電子のトンネルが生じない距離に保ちつつ、探針3と各ビット1との間の「ポテンシャル」を、例えば、探針3の周波数変調などを通じて測定する。計測後は、探針3を基板から離す。このプロセスにより、各ビット1上のスピン状態を計測する。よって、上記のように、各ビット1上の孤立スピンは、計測時にのみスピンの方向を示すことになる。図1では、計測したスピンの方向を実線の矢印で示す。なお、探針3は、計測のプロセスを通じて同じものを使用しなければならない。
このように、本発明では、スピンメモリの材料に関して、ビット上に奇数個の電子を持つこと(つまり、クラマースの二重項を持つこと)だけを条件に物質(常磁性物質、好ましくは、断熱消磁作業物質)を選定することができ、材料の選定対象を大幅に拡大することができる。また、ビットの配列手段には何ら制限がないため、材料表面に自由にビットを作製することができる。
以下では、本発明の原理をより詳細に説明する。
原子スケールのスピンメモリは、1nm程度の空間に1個または数個の遷移元素の原子(イオン)を含む系において、情報(信号)の記録を担う各スピンを制御することができるメモリ素子である。
本発明に係るスピンメモリの材料(記録媒体)は、クラマースの二重項を持つ特定の材料である。具体的には、例えば、常磁性物質で、かつ、スピン間の相互作用(キュリー温度などの磁気変態点:Tc)が小さい、局在原子(イオン)からなる物質である。このような物質としては、1K以下まで常磁性を示す断熱消磁作業物質(例えば、ミョウバン類やタットン塩など)が知られている。断熱消磁作業物質は、断熱消磁法を用いて温度を下げることができる物質であって、局在スピンが十分低温までキュリーの法則またはキュリー−ワイスの法則に従う常磁性体で、しかも、原子(イオン)の電子数が奇数個の場合において、磁場のないときに、スピンのエネルギー準位に関してクラマースの二重項が残る物質である。このような常磁性物質は、極めて低い温度で全スピン量子数Sに関して最低エネルギー準位のスピン状態が縮退しており、磁場のない状態で±Sの選択をスピン軸に沿って磁場を印加して行い、磁場のない状態では±Sのスピンの状態が安定であるため、スピン状態の記録が可能であり、スピンメモリの記録媒体として有望である。また、スピンメモリの記録媒体は、物質表面の原子スケールで平滑性を有し、かつ、化学的に安定であることが必要である。
また、後述する微細構造定数Dが負である一軸異方性の結晶物質は、極めて低い温度で最低エネルギー準位のスピン状態が縮退しているため、一軸異方性の方向に磁場を印加してスピン軸を一軸異方性の方向にとることにより、磁場のない状態でスピンの±Sの選択が可能となり、スピンメモリを構成することができる。磁場のないとき、微細構造定数Dが負で大きければ、スピンのエネルギー準位は縮退しており、スピン状態はエネルギー的に十分安定であると考えられる。
次いで、常磁性物質内の局在原子(イオン)の電子配置、特に局在スピンの状態について説明する。
(自由原子(イオン)の電子配置)
原子番号Zの自由原子は、中心にある原子核が+Zeの電荷を持ち、原子核の周囲をZ個の電子(電荷−e)が運動する多電子力学系として記述される。Z個の電子の運動は、原子の中心を原点とする位置ベクトルr(直交座標(x,y,z)または極座標(r,θ,φ))を用いて、式(1)に示す系のハミルトニアンHにより表される。
H=Σ(h/2m)Δ+ΣV(r) …(1)
但し、ΣV(r)=Σ[(−Ze)/r+Σj≠i/rij] …(2)
ここで、式(1)の右辺の第1項は、電子の運動エネルギーであり、第2項は、電子が受けるクーロンポテンシャルである。また、式(2)に示すクーロンポテンシャルの右辺の第1項は、原子核から電子が受けるクーロン相互作用であり、第2項は、電子間のクーロン相互作用Vである。
ここでは、電子が受ける上記2種類のクーロン相互作用を平均の中心場ポテンシャルV(r)で近似し、自由原子の電子構造については、原子核から平均位置rにある1個の電子がV(r)中を運動する水素原子のエネルギー準位にZ個の電子をエネルギーの低い順に配置した水素形原子の近似から出発する。
水素形原子の電子軌道(殻)は、4つの量子数n,l,m,sで決まる。すなわち、波動関数とエネルギーは、それぞれ、ψn,l,ml,s(r,θ,φ)、En,lで表される。ここで、nは、主量子数(原子核の中心電場中での電子のエネルギーの大きさを表す)であり、n=1,2,3,4,5,…の値をとる。lは、方位量子数(軌道角運動量の大きさを表す)であり、主量子数nが決まれば、l=0,1,2,3,4,…,n−1となり、それぞれ順に記号s,p,d,f,g,…で表される。mは、磁気量子数(軌道角運動量lのz成分lの大きさを表す)であり、方位量子数lが決まれば、m=−l,−l+1,…,0,…,l−1,lの2l+1個の値をとる。mの各値に対応する定常状態は縮退しているが、z方向に磁場をかけるとmに比例したエネルギー変化を受けて縮退がとれる。sは、スピン量子数であり、s=+1/2,−1/2の値をとる。
軌道のエネルギーは、主量子数nと方位量子数lで決まる。例えば、n=3のときは、l=0,1,2で、それぞれ順に3d殻のs軌道、p軌道、d軌道と呼ばれる。各軌道には、2l+1個の状態があり、さらに±のスピン状態がある。したがって、3d殻のs軌道には2個の電子、p軌道には6個の電子、d軌道は10個の電子、f軌道には14個の電子がそれぞれ入れる。量子数n,lで指定される軌道が電子で満たされている場合は「閉殻(完全殻)」(軌道角運動量の和およびスピン角運動量の和がゼロ)、満たされていない場合は「非閉殻(不完全殻)」とそれぞれ呼ばれる。
磁性原子(イオン)は、不完全殻の電子を持つ場合であり、主たる遷移元素原子(イオン)は、3d殻と4f殻の不完全殻を持つ場合である。これらの電子殻は、原子の比較的内部に存在する。
(不完全殻の電子間相互作用とLS多重項)
遷移元素の原子(イオン)の不完全殻では、1つの電子配置に多くの状態がある。例えば、2個の電子があるd殻には10(=45)個の可能な状態がある。これらの状態は、ポテンシャルV(r)の近似では同じエネルギーを持つが、電子間のクーロン相互作用Vを考慮すると、いくつかのエネルギー準位に分かれる。
個々の電子の軌道角運動量lはもはや運動の保存量ではないが、電子全体の軌道角運動量の総和つまり全軌道角運動量L(=Σl)は保存量である。これは、原子をある軸の周りに回転させても原子核の中心電場および電子間クーロン相互作用のエネルギーは変わらないからである。不完全殻の電子状態は、全軌道角運動量Lの大きさと、そのz成分の固有値Mとで指定される。
電子のスピン間の相互作用は、パウリ(Pauli)の原理(1つの電子状態には1個しか電子が入れない)により、2つの電子のスピンが互いに平行な場合は同じ場所を占めることができないが、スピンが互いに反平行の場合は同じ場所を占めることができるため、スピンが互いに平行な場合は電子間のクーロン相互作用のエネルギーが反平行の場合に比べて低い。すなわち、パウリの原理と電子間のクーロン相互作用は、2つの電子スピンを互いに平行にする力となる。個々の電子のスピンsは保存量ではないが、電子全体のスピンの総和つまり全スピン角運動量S(=Σs)は保存量であるため、全スピン角運動量Sの大きさとそのz成分Msを用いて不完全殻の電子状態を分類することができる。
結局、不完全殻の電子状態は、L、M、S、Msの4つの量子数で分類される。しかし、電子間のクーロン相互作用VのエネルギーはM、Msに依存しないため、Vが依存するLとSを指定した(2L+1)×(2S+1)個の状態はLS多重項と呼ばれる。遷移元素および希土類元素のLS多重項を表すには、電子配置d、fとL、Sを用いて、分光学の記号:2S+1で表される。L=0,1,2,3,4,5,6,…に対してそれぞれ順に記号S,P,D,F,G,H,I,…が用いられる。
LS多重項の最低エネルギー状態については、次のフント(Hund)の規則が成り立つ。フントの規則によれば、LS多重項で最低のエネルギーを持つ電子配置(基底状態)は、次の条件で決まる。
(第1則)パウリの原理が許す範囲で最大のSを持つ。
(第2則)最大のSを持つ配置の中で、最大のLを持つ。
(スピン−軌道相互作用とJ多重項)
1つのLS多重項はLとSの間に働くスピン−軌道相互作用によりさらに分裂し、L+S=Jで定義される全角運動量Jの大きさJで指定されるJ多重項に分かれる。Jは、J=L+S、L+S−1、…、|L+S|−1、|L+S|の値を1つずつとる。
スピン−軌道相互作用は、本質的に磁気的相互作用であり、電子が原子核の周りを軌道運動(角運動量l)すれば、電子から見て、原子核の運動は軌道電流を作り電子の位置に磁場を作る。この磁場と電子のスピンsとが結合してスピン−軌道相互作用となり、1つの電子についてζl・sと表される。ζは、比例定数である。電子全体で総和をとれば、スピン−軌道相互作用は、次の式(3)で表される。
ls=ζΣ・s …(3)
スピン−軌道相互作用Vは、1つのLS多重項に属する状態間に行列要素を持つだけでなく、異なるLS多重項間にも行列要素を持っている。しかし、LS多重項間のエネルギー差(電子間のクーロン相互作用Vのエネルギー差)は、Hlsに比べて大きいため(V>Hls)、1つの多重項でVを考えればよい。
1つのLS多重項でHlsは有効ハミルトニアン(effective Hamiltonian)(指定された多重項内でのみ意味を持つハミルトニアン。そこではHlsと同じ行列要素を持つ)の形で、次の式(4)で表される。
(HlsLS=HLS=λLS …(4)
但し、λは、スピン軌道結合定数であり、異なるLS多重項では異なる値を持つ。
基底状態のLS多重項では、フントの規則により、状態の電子数nが電子殻の状態の総数2l+1よりも小さければ(n<2l+1)、個々の電子のスピンsと全スピン角運動量Sは、s=S/n、λ=ζ/nとおけば、式(3)から式(4)が導かれる。n>2l+1では同様にしてλ=−ζ/(4l+2−n)となる。すなわち、n<2l+1の場合はλ>0、n>2l+1の場合はλ<0、n=2l+1の場合はL=0、S=(2l+1)/2となる。
鉄族遷移元素の原子(イオン)の3d殻または希土類元素の原子(イオン)の4f殻のλは、
3d殻では、n<5(less than half)でλ>0、n>5(more than half)でλ<0、
4f殻では、n<7(less than half)でλ>0、n>7(more than half)でλ<0、
である。
この式により、例えば、3d軌道の場合、この軌道に入っている電子の個数(n)が、この軌道に入りうる電子の最大数(10個)の半分(5個)よりも小さいとき、つまり、半分未満しか3d軌道が充填されていない原子の場合には、スピン−軌道相互作用はプラスとして働くことになる。
1つのJ多重項では、スピン軌道のエネルギー(HLS)は、HLS=λLS=(λ/2)(J−L−S)であるから、
=(λLS)
=(λ/2)[J(J+1)−L(L+1)−S(S+1)] …(5)
となり、一定値となる。J多重項のエネルギーは等差級数的で、間隔は、次の式(6)で表される(ランデの間隔)。
ΔE=E−EJ−1=λJ …(6)
式(4)は軌道磁気モーメント(−μL)に磁場λS/μが働いた結果と考えれば、次の式(7)および式(8)で示すLおよびSの運動方程式から、
h(dL/dt)=λ[S×L]=λ[J×L] …(7)
h(dL/dt)=λ[L×S]=λ[J×S] …(8)
LとSは、磁場λJ/μの下で歳差運動をしていることになる。LとSのJに平行な成分は、1つのJ多重項に属する状態間の行列要素であり、J行列要素に比例している。
〈J,M|L|J,Mj’〉=a〈J,M|J|J,Mj’〉 …(9)
〈J,M|S|J,Mj’〉=(1−a)〈J,M|J|J,Mj’〉 …(10)
ここで、比例定数aは、
a={J(J+1)+L(L+1)−S(S+1)}/2J(J+1) …(11)
である。
(1原子当たりの磁気モーメント−原子のスピン)
最低エネルギーのJ多重項において、原子磁気モーメントm=−(L+2S)μの行列要素は、式(9)〜式(11)から、
m=−μ(L+2S)=−μ(2−a)J=−gμJ …(12)
で表される。但し、μはボーア(Bohr)磁子、g(=3/2+{S(S+1)−L(L+1)}/2J(J+1))はランデのg因子である。
4f殻は、遷移元素の原子(イオン)の内部にあり、HLSのエネルギーが後述する結晶電場のエネルギーよりも大きいため、原子磁気モーメントを式(12)で表すことができる。
しかし、3d殻の鉄族遷移元素の原子(イオン)では、結晶場がLS結合よりも強く(Vcr>HLS)、軌道角運動量Lの消失(quenching)が起こるため、磁気モーメントは、スピンSのみからなり、m=−gμSとなる。
(結晶電場による軌道の分裂)
3d遷移元素の原子(イオン)の不完全殻の電子は、結晶中の周囲のイオンが作る電場(結晶場)の中を運動している。この結晶場Vcrは、周囲のイオンの空間配置による対称性を持つ。電子の軌道運動は、このような結晶場の対称性を反映する。
例えば、3d殻の1個の電子が立方対称な結晶場の中に存在する場合、電子の受ける立方対称な結晶場は、6個の周囲のイオンが作る正八面体の対称性の場合と、4個のイオンが作る正四面体の対称性の場合とがある。
自由電子近似で3d殻の電子状態は、軌道角運動量lの大きさに依存して2l+1=5重に縮退している。また、立方対称な結晶場は、次の式(13)で表される。
cr=A{x+y+z−3r/5} …(13)
縮退した軌道運動のエネルギーは、結晶場で分裂し、2重縮退の準位(dγ:軌道の角度部分はd(3z−r)、d(x−y))と、3重縮退の準位(dε:d(yz)、d(zx),d(xy))とに分かれる。結晶場の符号Aによっていずれの軌道のエネルギーが低いかが決まる。正八面体対称の結晶場では、エネルギーはdε準位が低く、正四面体対称では、エネルギーはdγ準位が低くなる。
結晶の対称性が正方対称、三方対称、斜方対称と低くなるにつれて、軌道の分裂はさらに進み、斜方対称では縮退はなくなる。
結晶の対称性から最低の軌道のエネルギー準位に縮退が残る場合、結晶は、自発的に歪んで軌道の縮退をとるようになる(ヤーン−テラー(Jahn-Teller)効果)。但し、例外として、奇数個の電子のときのクラマース縮退は、外部磁場をかけなければとれない。
d電子が2個以上の場合は、VcrとVの大小が問題となる。Vcr>Vの場合は強い結晶場、Vcr<Vの場合は弱い結晶場とそれぞれ呼ばれる。強い結晶場の場合、電子配置は、Vcrで分裂した準位にパウリの原理を満たすように順に電子を満たす(low spin state)。この場合は、結晶場で分かれた準位に低いエネルギーから順に±スピンの電子が詰まるため、全体のスピンは低くなる。これに対し、弱い結晶場の場合は、フントの規則を満たすようにSを最大にするように電子を満たす(high spin state)。この場合は、フントの規則によりスピンの大きい配置が低いエネルギーを持つ。
結晶場が十分に低対称の場合、磁性イオンの最低エネルギー状態は、軌道の縮退がなくなって一意的に決まり、軌道角運動量Lのこの状態についての期待値〈L〉は必ずゼロである。これは、結晶場による軌道角運動の凍結と呼ばれる。
結晶場で分裂した軌道の各エネルギー準位は、おのおの、全スピンに関して2S+1個の縮退した準位を持ち、このスピン準位は磁場で分裂する。
(イオンの結晶磁気異方性)
一般に結晶格子と直接結合しているのは電子の軌道角運動量で、電子スピンは直接結晶場と結合しない。しかし、d電子やf電子のスピン状態は、次のように結晶場の対称性を反映する。
3d電子の全軌道角運動量Lは、対称性が十分低い結晶場では消失しているため、イオンの磁気モーメントは、3d電子のスピンSから生じている。しかし、3d殻は原子の外側近くに存在し結晶場の影響を受けやすい(Vcr>HLS)。電子スピンと結晶格子の結合はLS結合(HLS)の二次の摂動を通して行われ、スピンに依存した電子のエネルギーが生じる。
これに対して、希土類イオンでは、4f不完全殻の電子軌道は、原子の内部に存在し結晶場の影響は受けにくいが、LS結合が強いため(Vcr<HLS)、J多重項の基底状態のスピン準位が結晶場の影響で分裂し、Jに依存した電子のエネルギーが決まる。
原子磁気モーメントは、d電子ではSに、f電子ではJにそれぞれ比例するため、磁気モーメントの結晶方位依存性(結晶磁気異方性)が決まる。
(1)鉄族イオンのスピンハミルトニアン(磁気異方性)
上記のように、d電子はスピン−軌道相互作用HLSを受けている。通常、Vcr>HLSであるため、結晶場が十分に低対称であれば、基底状態の軌道の縮退がなくなって軌道角運動量が消失(〈L〉AV=0)し、Lによる異方性はない。しかし、全スピンSはMの異なる2S+1重の縮退を持つため、スピン−軌道相互作用HLSのこのスピン縮退した状態について摂動計算をすれば、HLSはスピンSの結晶方位依存性(磁気異方性)を示すエネルギー、つまり、スピンハミルトニアンを与える。
LSの二次摂動計算の結果は、基底状態の|gMs>(Ms=S,S−1,…,−S)と|gMs′>との間に、
−ΣMs″<gMs′|HLS|eMs″><eMs″|HLS|gMs>/(Ee−Eg) …(14)
の行列要素を持つ行列である。ここで、Egは基底状態のエネルギーであり、Ee、|eMs″>は、励起状態のエネルギーと波動関数をそれぞれ表す。Eg、Eeは、いずれもMs、Ms″によらない。
式(14)の行列要素は、
<gMs′|HLS|eMs″>=Σμλ<g|Lμ|e><Ms′|Sμ|Ms″>、
ΣMs″<Ms′|Sμ|Ms″><Ms″|Sμ|Ms′>=ΣMs″<Ms′|SμSμ|Ms′>、
に注意すると、基底状態で定義される次の行列要素、
−λΣμνΛμνμν …(15)
と同じである(effective Hamiltonian)。但し、Λμν=Σ<g|Lμ|e><e|Lν|g>/(Ee−Eg)であり、μ,νはx,y,zのいずれかである。結局、スピンハミルトニアンは、式(15)の行列要素を持つ行列で表され、S≧1である。
S=1/2の場合、スピンハミルトニアンは、aE+a+a+aとなる。但し、Eは二次元の単位マトリックス、a、a、a、aは定数である。
磁場がある場合のエネルギーは、−mH=−μ(L+2S)Hであり、μLHの一次摂動はゼロとなるが、二次摂動のエネルギーは、上記のHLS=λLSと同じように扱えるため、磁場がある場合に基底状態のスピン状態を決めるハミルトニアンは、
eff=−λΣμνΛμνμν
+2μSH−2μλΣμνΛμνμν−μ ΣμνΛμνμν …(16)
となる。
磁場の一次に比例する項Hzeffは、
zeff=μSgH …(17)
で表される。ここで、行列要素gμν=2(δμν−λΛμν)を持つテンソルは、gテンソルと呼ばれる。
磁場がない場合のスピンハミルトニアンは、立方対称の結晶場では定数となるが、一般の対称性では主軸を適当に選べば、
−λ(Λxx +Λyy +Λzz ) …(18)
で表される。これは、通常、次の式(19)に書き換えられる。
DS +E(S −S ) …(19)
但し、D=−λ{Λzz−(Λxx+Λyy)/2}、E=−λ(Λxx−Λyy)/2である。正方対称の結晶場では、E=0である。
cr〜HLSの場合、結晶場で軌道状態の縮退は完全にはなくならない。この場合は、VcrとHLSを同時に考慮して最低エネルギーの分裂を求めることが必要となる。
ハミルトニアンの時間反転対称性から電子が奇数個の原子(イオン)では、磁場のないとき、ハミルトニアンはすべての相互作用を考慮しても少なくとも二重縮退している(クラマース縮退)。
すなわち、奇数個の電子を持つ原子(イオン)では、全スピン量子数Sは必ず半奇数であり、スピンハミルトニアンは、磁場のないとき、クラマースの二重項が残り、±Sは同じエネルギーの状態である。ハミルトニアンの時間反転対称性から磁場と磁気モーメントを同時に反転すればエネルギーは変わらないため、極低温でスピンの最低エネルギー準位にクラマースの二重項が残る常磁性物質では、最低エネルギー準位のスピンを磁場で反転することにより±Sの選択が可能となる。
なお、電子数が偶数個の場合において、特に極低温で最低エネルギーのスピン準位だけが実現されているときは、軌道角運動量の場合と同様に、スピン準位間のエネルギー差がkTに比べて大きいとき、スピン角運動量Sが消失する可能性がある。したがって、偶数個の電子を持つ場合は、スピンメモリの記録媒体として不適である。
(2)希土類イオンの磁気異方性
希土類イオンの場合は、HLS>Vcrであるため、HLSを対角化してJ多重項に分類し、1つのJ多重項の結晶場による分裂を検討する。有効ハミルトニアンの考えは、d電子と同じように適用することができる。一般に、Vcrは、Jの偶数次のべき乗で表される。
(スピンメモリ用常磁性物質)
スピンメモリの動作温度kTで、スピン準位間のエネルギー差がkTに比べて十分大きい場合、原子(イオン)のスピンを利用してメモリを作製することができる。この目的に適した記録媒体としては、例えば、以下の常磁性物質がある。
(1)常磁性物質で磁性イオン間の相互作用(キュリー温度などの磁気変態点:Tc)が極めて小さい物質がある。このような物質としては、1K以下まで常磁性を示す断熱消磁作業物質(ミョウバン類やタットン塩など)が知られている。上記のように、断熱消磁作業物質は、局在磁気スピンが十分低温までキュリーの法則またはキュリー−ワイスの法則に従う常磁性体で、原子(イオン)の電子数が奇数個の場合にどんなに低い対称性の結晶場でもスピンのクラマース縮退が残る物質である。表1は、断熱消磁作業物質の例を示している。
Figure 0004830107
ここで、「比熱の山」とは、比熱が最大になるときの温度を意味する。結晶場が縮退をといて分裂したときに、このような比熱の山が生じる。すなわち、系が取りうる状態が増えることにより比熱が増大する現象が、所定の物質に見られるということである。また、表1中の、半整数(1/2、3/2、5/2、7/2、…)のスピンを持つ物質は、奇数個の電子を持つ(つまり、クラマースの二重項を持つ)ため、本発明のスピンメモリ用の材料として適している。
(2)結晶場が軸対称であれば3d軌道の基底状態に縮退がない場合、軸に平行に磁場を印加すればスピンハミルトニアンは、μH+DS となる。但し、Dは微細構造定数である。Dが負で大きければ、磁場のない状態でスピン状態(±S)は縮退してz軸方向のスピンは安定である。また、4f軌道の場合はS→Jとおけばよい。微細構造定数Dは、例えば、常磁性帯磁率や常磁性共鳴吸収の実験から求められる。
ミョウバンやタットン塩と呼ばれる一連の複塩について、常磁性帯磁率の測定や常磁性共鳴吸収の実験などから、表2に示す定数が測定されている。表2は、特に、遷移金属イオンの常磁性を示している。
Figure 0004830107
ここで、磁化率とは、物質を磁場Hの中に置いた時に生ずる磁化をMとした場合に、dM/dHで定義される量のことである。MもHもベクトルであるため、磁化率は2階のテンソル量で定義される。方向によって磁化の仕方が違うことになる。磁化率は温度の関数でもある。
また、gはg因子を示し、一般に近似理論から得られる値との補正を示す量である。この場合、磁気回転比を示す。通常は2程度になる。また、gが軸対象の場合、軸方向の要素をg、軸に垂直方向の要素をgと表す。これらの値が異なれば軸方向の磁気異方性が強いと言える。
また、Dの微細構造因子は、エネルギー準位の微細な構造を表す。Dの値(絶対値)が大きい場合は、いろいろな相互作用が生じていることが考えられる。また、微細構造因子Dは、一軸異方性エネルギーをも表す。ここでは、微細構造因子Dは、波数の逆数の単位で表している。
ミョウバンの結晶構造は、立方結晶で、磁気異方性は小さい。タットン塩は、斜方結晶で、対称性はC 2h−P2/aである。表2のニッケルタットン(Ni-Tutton)塩の(NH)Ni(SO)・6HOの場合、結晶定数は、a=8.98Å、b=12.22Å、c=6.10Å、β=107゜4’で、単位格子中の分子数(Z)は、Z=2である。また、最隣接Niイオン間距離は3.05Å、次の隣接イオンは7.45Åと8.56Åであり、平均して160Åの体積中に1個の磁性イオンが含まれる。
表2に示すように、微細構造因子(D)は、D=−2.25(cm−1)で、磁気異方性は、負の一軸性で大きい。Ni2+は3dでS=1であるため、一軸磁気異方性エネルギー(Ea)の大きさは、Ea=2.25cm−1であり、1cm−1≒1Kであるため、温度で数ケルビン程度となる。一般に、一軸異方性のDパラメータは、LS結合のパラメータの自乗λに比例し、λは10cm−1である。また、多重項間のエネルギー差ΔE〜10〜10cm−1として、DはLS結合の二次の摂動項λ/ΔEであるため、磁気異方性エネルギー(Ta)のオーダーは、温度にして1〜10K程度となる。一軸異方性エネルギーの等価磁場(Ha)は、Ha≒DS /gμS〜104〜5Gである。なお、一軸性とは、磁気異方性に関して、1つの軸を持ち、その軸に対して垂直な方向には磁気異方性を持たない物質のことである。
(磁気モーメントの磁場による反転)
容易軸方向(z軸)に磁場Hを印加し、同時に垂直面内に角速度ωの回転磁場を印加する。磁気角運動量比をγとして、Hまたはωをゆっくりとスピン−格子緩和時間Tよりも遅い速さで変化させると、H+ω/γ>0では磁気モーメントがz軸の正方向を向いていても、H+ω/γ=0で回転を始めて、H+ω/γ<0では反転してz軸の負方向を向く。すなわち、いわゆる磁気モーメントmの磁場による反転(adiabatic rapid passage)が起こる。
すなわち、外部磁場の量子化軸をz軸とし、これに垂直な振動磁場(回転磁場)を与えると、その分裂幅に見合ったエネルギーの周波数の場合、レベル間に有限の遷移確率が生じる。Hは容易軸方向に与えた磁場の大きさを意味し、これに対して磁気モーメントを持つ存在(この場合は原子)は、垂直に与えた磁場は容易軸周辺を角速度ωで回転するようになる。H+ω/γはベクトル量の値になる。よって、Hとωが同じ方向を向いていれば正になり、逆であれば負になる。また、その中間的なあらゆる角度も考えられる。
ここで、例えば、パルス的に強い交流磁場を加えると、まず、スピン間の相互作用でスピン系のみで熱平衡に達する。この時間は、スピン−スピン緩和時間Tと呼ばれる。次に、スピン系の温度が格子系と熱平衡になろうとする。この時間は、スピン−格子緩和時間Tと呼ばれる。
以上の物理現象を利用して、クラマースの二重項を持つ孤立スピンを利用した記憶素子(スピンメモリ)を実現する。
すなわち、上記のように、クラマースの二重項を持つ常磁性物質(断熱消磁作業物質)では、極低温で最低エネルギー準位のスピン状態が縮退しており、磁場のない状態で±Sの選択をスピン軸に沿って磁場を印加して行い、磁場のない状態では±Sのスピンの状態が安定であるため、クラマースの二重項を持つ孤立スピンをスピンメモリのビットにすることができる。
また、上記のように、微細構造定数Dが負である一軸異方性の結晶物質では、極低温で最低エネルギー準位のスピン状態が縮退しているため、一軸異方性の方向に磁場を印加してスピン軸を一軸異方性の方向にとることにより、磁場のない状態でスピンの±Sの選択が可能となり、同じくクラマースの二重項を持つ孤立スピンをスピンメモリのビットにすることができる。磁場のないとき、微細構造定数Dが負で大きければ、スピンのエネルギー準位は縮退しており、スピン状態はエネルギー的に十分安定である。
上記いずれの物質の場合も、記録媒体が薄膜結晶で、かつ、薄膜の法線が印加磁場の方向と平行な場合が、より有効である。
なお、スピンメモリの材料としては、さらに、上記のように、物質表面の原子的スケールでの平滑性や化学的な安定性が必要である。
また、記録方法に関しては、上記いずれの物質も極低温では最低エネルギー準位のスピン状態が縮退しており、スピン軸に沿って磁場を印加してスピンの±Sの選択が可能となり、磁場のない状態で±Sのスピンの状態が安定であるため、スピン磁気記録が可能である。
具体的には、前者の物質の場合は、断熱消磁法を用いて、等温磁化(磁場印加向きを−z軸とする)後に断熱的に消磁すれば、外部磁場のない状態で物質の温度は下がり、エントロピーの低い状態となる。この状態では、スピンは磁場を印加した方向(−z軸)に整列している。この状態がスピンメモリの初期(消磁)状態である。
その後、信号を記録したい原子(イオン)に、例えば、走査型記録装置の磁性探針を近接させて交換力により原子のスピンを逆転すれば、当該原子のスピンを反転させて安定的に保持することができる。このとき、反転スピンが持つエネルギーは反転前と変わらないため、スピンの記録が可能である。
記録した信号の消去は、全体に磁場を印加して消磁するか、あるいは、記録したスピンを磁性探針で反転することによって行うことができる。
また、記録したスピンを書き換える方法としては、所定の原子スピンを局所的な「磁気モーメントの磁場による反転(adiabatic rapid passage)」の過程で反転させる方法もある。
また、後者の物質の場合、つまり、大きな負の一軸磁気異方性を持つ結晶の場合も、極低温では最低エネルギー準位のスピン状態が縮退しているため、一軸異方性の方向に磁場を印加してスピン軸とすれば、磁場のない状態でスピンの±Sの選択が可能となり、メモリ動作が可能となる。この場合も、記録の初期状態、記録、書き換え、消去は、上記と同様に行うことができる。
次に、スピンメモリにおける読み出し/書き込みの方法と原理についてより具体的に説明する。
スピンメモリにおいて、読み出し/書き込みは、例えば、スピンプローブまたは磁気プローブを用いて行うことができる。スピンプローブとは、スピン偏極した探針を尖端に持つプローブであり、磁気プローブとは、磁性体などを尖端に持つプローブである。スピンプローブには漏れ磁場はないが、磁気プローブには漏れ磁場がある。
まず、読み出しについては、基板上の孤立スピンにスピンプローブまたは磁気プローブを近づけ、離した時にスピンの配向性およびプローブの配向性が修復する領域においてプローブと基板との間に働く力をあらかじめ計測しておき、スピンメモリのビット上でこの力を測定し、あらかじめ計測しておいた力と比較する。このとき、引力が働きやすければ、両者の配向性は反平行であり、逆に、反発力が強ければ、両者の配向性は平行であると考えられる。これらの力は、原子間力顕微鏡やプローブ顕微鏡などにより、直接観測することができる。このようにしてスピンの配向性を検出することで、ビットを読み出すことができる。
また、書き込みについては、読み出しの場合よりもさらにプローブを基板に近づけ(例えば、基板内の原子間距離程度)、より強く相互作用させる。これにより、プローブがスピンのリザーバとなり、スピンが基板に供給され、プローブが持つスピンの方向に基板上の孤立スピンが反転される。この過程を用いてビットを書き込むことができる。また、このとき、基板の温度を上げることにより、孤立スピンが反転しやすくなる。
以下、図2〜図8を用いてより具体的に説明する。なお、図2〜図8において、スピンの方向を示す矢印について、実線の矢印は、スピンの方向が既知であるかまたは計測されたことを示し、破線の矢印は、計測前または計測後のため、スピンの方向が不明であることを示している。上記のように、本発明に係るスピンメモリでは、各ビット上の孤立スピンの状態(スピン方向)は、計測時にのみ顕在化される。よって、図2〜図8では、計測対象つまり読み出し/書き込み対象のビット(孤立スピン)については、実線の矢印でスピンの方向を示し、それ以外のビット(孤立スピン)については、破線の矢印でスピンの方向を示している。
図2は、磁気プローブを用いた読み出し/書き込みの方法を説明するための図である。図2に示すように、磁気プローブ11には尖端に磁性体13が設けられている。この方法では、磁気プローブ11と表面原子の孤立スピン1との間に磁力線が生じる。
図3(A)は、磁気プローブ11を用いた読み出し過程を模式的に示す図である。この場合、表面原子の形状に加え、表面原子の孤立スピン1と磁気プローブ11のスピン15の方向により相互作用の力が異なる。この過程では、磁気プローブ11の磁場と表面原子の孤立スピン1との相互作用を測定する。図3(A)中の破線17は、測定した相互作用を示している。
図3(B)は、磁気プローブ11を用いた書き込み過程を模式的に示す図である。この場合、読み出し時よりもさらに磁気プローブ11を表面に近づけ、磁気プローブ11の磁場が書き込み対象となる特定の孤立スピン1b上で反転する程度に近づいた時、書き込みが行われる。ただし、書き込み対象以外の他の孤立スピンとは、反転させない程度に距離を保つ必要がある。
図4は、スピンプローブを用いた読み出し/書き込みの方法を説明するための図である。図4に示すように、スピンプローブ21には、尖端に、スピン偏極した探針23が設けられている。この方法では、スピンプローブ21と表面原子の孤立スピン1との間に磁力線は生じない。
図5(A)は、スピンプローブ21を用いた読み出し過程を模式的に示す図である。この場合、表面原子の形状に加え、表面原子の孤立スピン1とスピンプローブ21のスピン(探針)23の方向により相互作用の力が異なる。この過程では、スピンプローブ21のスピン23と表面原子の孤立スピン1との相互作用を測定する。両者の配向性が平行であれば反発的な交換相互作用が働き、両者の配向性が反平行であれば吸引的な交換相互作用が働く。図5(A)中の破線25は、測定した相互作用を示している。
図5(B)は、スピンプローブ21を用いた書き込み過程を模式的に示す図である。この場合、読み出し時よりもさらにスピンプローブ21を表面に近づけ、スピンプローブ21のスピン(探針)23と表面原子の孤立スピン1との相互作用から、反発力を押し切ってスピンプローブ21を近づけた時、書き込み対象となる特定の孤立スピン1bが反転し、書き込みが行われる。ただし、書き込み対象以外の他の孤立スピンとは、反転させない程度に距離を保つ必要がある。
読み出し/書き込みの方法には、その他いろいろなバリエーションが考えられる。例えば、電気的にデータの読み出しと書き込みが随時可能な半導体メモリであるRAMは、本発明の一つの適用例である。なお、図6〜図8では、基板上の孤立スピンの状態(スピン方向)を破線の矢印で示しているが、電流が流れて計測対象となった時には実線の矢印となる。
図6は、本発明を適用したRAMの構造を模式的に示す図である。このRAMは、基板31上に2組のナノワイヤ33、35を互いに交差するように設けて構成されている。ナノワイヤ33、35は、例えば、カーボンナノチューブなどである。この場合、基板31上の孤立スピン1は、ナノワイヤ33、35に電流を流して生じる磁場によって反転させられる。
図7は、本発明を適用したRAMにおける書き込みの方法を説明するための要部拡大図である。図7に示すように、ナノワイヤ33に対し、同図に示す方向Aに電流を流すと、白抜きの矢印37の方向に磁場が生じる。また、交差するナノワイヤ35に対しても、同様に、同図に示す方向Bに電流を流すことにより、ナノワイヤ33、35が交差する部分における磁場が強まり、その交差部分の孤立スピン(書き込み対象)1bを反転させることができる。ただし、書き込み対象以外の他の孤立スピンが反転しないように、電流の大きさを制御する必要がある。
図8は、本発明を適用したRAMにおける読み出しの方法を説明するための図である。読み出しは、薄膜に対して垂直な方向に行われる。図8の例では、メモリ本体を構成する基板31上の各ビットに電極を与え、この電極を含む回路39によって、各ビットを流れる電流を検出する。各回路39は、電流計41と電源43を含んでいる。例えば、スピンメモリの材料として微細構造定数Dが負である一軸異方性の結晶物質を用いた場合、矢印5で示す方向の磁気異方性を有する基板31と、読み出し対象ビットの孤立スピン1bとが平行であれば電流が流れやすく、反平行であれば電流が流れにくいため、検出する電流値の大小によって各ビットを読み出すことができる。
なお、本実施の形態では、基本的に記録単位は1個の原子(イオン)であるが、これに限定されるわけではなく、数個の原子(イオン)のクラスタを記録単位として利用することもできる。すなわち、記録方法に応じて記録領域に1個の遷移元素原子(イオン)を含む最小の記録単位の大きさまで記録単位の領域を変えることができる。
本発明に係るスピン記録方法および装置は、原子・分子スケールの安定したビットを形成して、記録密度を大幅に向上することができるスピン記録方法および装置として有用である。
本発明のスピン記録方法の動作原理を説明するための模式図であり、(A)は、計測前の状態を示す図、(B)は、計測時の状態を示す図 本発明の一実施の形態における磁気プローブを用いた読み出し/書き込みの方法を説明するための図 (A)は、磁気プローブを用いた読み出し過程を模式的に示す図、(B)は、磁気プローブを用いた書き込み過程を模式的に示す図 本発明の他の実施の形態におけるスピンプローブを用いた読み出し/書き込みの方法を説明するための図 (A)は、スピンプローブを用いた読み出し過程を模式的に示す図、(B)は、スピンプローブを用いた書き込み過程を模式的に示す図 本発明のさらに他の実施の形態におけるRAMの構造を模式的に示す図 RAMにおける書き込みの方法を説明するための要部拡大図 RAMにおける読み出しの方法を説明するための図
符号の説明
1 ビットまたは孤立スピン
1a 計測対象のビットまたは孤立スピン
1b 読み出し/書き込み対象の孤立スピン
3、23 探針
11 磁気プローブ
21 スピンプローブ
31 基板
33、35 ナノワイヤ
37 合成磁場の方向
39 電流検出回路

Claims (12)

  1. 奇数個の電子を持つ原子またはイオンを有するとともに、物質表面の隣接するスピンと相互作用を持たない孤立スピンがクラマースの二重項により形成された断熱消磁作業物質に対して、外部磁場により前記クラマースの二重項の縮退を解いて前記孤立スピンが磁気モーメントを持つようにし、前記孤立スピンの磁気モーメントを利用して情報を書き込みまたは読み出す、スピン記録方法。
  2. 前記断熱消磁作業物質は、ミョウバン類またはタットン塩である、請求項1記載のスピン記録方法。
  3. 前記断熱消磁作業物質は、FeNH(SO)・12HO、CrK(SO)・12HO、CrRb(SO)・12HO、Cr(NHCH)(SO)・12HO、Gd(SO)・8HO、Mn(NH)(SO)・6HO、Co(NH)(SO)・6HO、CuK(SO)・6HO、CoSiF・6HO、CuSiF・6HO、MnSiF・6HO、CeMg(NO)・24HOからなる群から選ばれる、請求項1記載のスピン記録方法。
  4. 前記断熱消磁作業物質は、微細構造定数が負である一軸異方性の結晶物質である、請求項1記載のスピン記録方法。
  5. 前記断熱消磁作業物質は、KNi(SO)・6HO、(NH)Ni(SO)・6HOからなる群から選ばれる、請求項4記載のスピン記録方法。
  6. 前記孤立スピンの磁気モーメントと相互作用を行うプローブを用いて、前記孤立スピンを反転させない程度の相互作用を検出することにより、情報の読み出しを行う、請求項1記載のスピン記録方法。
  7. 基板上に配列された読み出し対象の孤立スピンに対して磁気プローブを所定の位置に接近させたときの、前記磁気プローブと前記読み出し対象の孤立スピンの磁気モーメントとの相互作用を測定し、測定した相互作用に基づいて前記孤立スピンの磁気モーメントの向きを検出することにより、情報の読み出しを行う、請求項1記載のスピン記録方法。
  8. 前記孤立スピンの磁気モーメントと相互作用を行うプローブを用いて、前記孤立スピンの磁気モーメントを反転させることにより、情報の書き込みを行う、請求項1記載のスピン記録方法。
  9. 基板上に配列された書き込み対象の孤立スピンに対して磁気プローブを所定の読み出し位置よりもさらに前記基板に近い所定の書き込み位置に接近させ、前記磁気プローブと前記書き込み対象の孤立スピンの磁気モーメントとの相互作用により前記書き込み対象の孤立スピンの磁気モーメントの向きを反転させることにより、情報の書き込みを行う、請求項1記載のスピン記録方法。
  10. 前記孤立スピンの近傍に電流を流して外部磁場を形成することにより、前記孤立スピンを反転させる、請求項1記載のスピン記録方法。
  11. メモリ本体を構成する基板上の各孤立スピンを互いに交差するナノワイヤの交差部分に配置し、前記基板上の書き込み対象の孤立スピンに対応するナノワイヤに電流を流して前記書き込み対象の孤立スピンの近傍に外部磁場を形成して前記書き込み対象の孤立スピンを反転させることにより、情報の書き込みを行う、請求項1記載のスピン記録方法。
  12. 奇数個の電子を持つ原子またはイオンを有するとともに、物質表面の隣接するスピンと相互作用を持たない孤立スピンがクラマースの二重項により形成された断熱消磁作業物質と、
    前記断熱消磁作業物質に対して、外部磁場により前記クラマースの二重項の縮退を解いて前記孤立スピンが磁気モーメントを持つようにし、情報を前記孤立スピンの磁気モーメントを利用して書き込みまたは読み出す手段と、
    を有するスピン記録装置。
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