本発明は本明細書に記載される好ましい実施形態に関して記載される。しかしながら、これらの実施形態は本発明を説明するためのものであり、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないと理解されるはずである。
本明細書で用いられるように、「非多分散の」という用語は、Ekwuribeの米国特許第5,359,030号に記載される多分散混合物と対照をなす分散度を有する化合物の混合物を記載するために用いられる。
本明細書で用いられるように、「実質的に単分散の」という用語は、混合物中の少なくとも約95パーセントの化合物が同じ分子量を有する化合物の混合物を記載するために用いられる。
本明細書で用いられるように、「単分散の」という用語は、混合物中の約100パーセントの化合物が同じ分子量を有する化合物の混合物を記載するために用いられる。
本明細書で用いられるように、「実質的に純粋な単分散の」という用語は、混合物中の少なくとも約95パーセントの化合物が同じ分子量を有し且つ同じ分子構造を有する化合物の混合物を記載するために用いられる。従って、実質的に純粋な単分散の混合物は実質的に単分散の混合物であるが、実質的に単分散の混合物は必ずしも実質的に純粋な単分散の混合物ではない。
本明細書で用いられるように、「純粋な単分散の」という用語は、混合物中の約100パーセントの化合物が同じ分子量を有し且つ同じ分子構造を有する化合物の混合物を記載するために用いられる。従って、純粋な単分散の混合物は単分散の混合物であるが、単分散の混合物は必ずしも純粋な単分散の混合物ではない。
本明細書で用いられるように、「重量平均分子量」という用語は、混合物中の所与分子についての重量分率と混合物中の各分子についての分子質量の積和として定義される。「重量平均分子量」はMwの記号により表される。
本明細書で用いられるように、「数平均分子量」という用語は、混合物の全重量÷混合物中の分子数として定義され、Mnの記号により表される。
本明細書で用いられるように、「分散係数」(DC)という用語は、次式:
により定義され、
式中:
nは試料中の異なる分子の数であり、
N
iは試料中のi番目分子の数であり、
M
iはi番目分子の質量である。
本明細書で用いられるように、「被験者内変動(intra−subject variability)」という用語は、被験者が異なる時間に同じ用量の薬物または薬学的組成物を投与される場合に、同じ被験者内で生じる活性の変動を意味する。
本明細書で用いられるように、「被験者間変動(inter−subject variability)」という用語は、それぞれの被験者が同じ用量の所与の薬物または薬学的組成物を投与される場合に、二以上の被験者間での活性の変動を意味する。
本明細書で用いられるように、「生物有効性(bioefficacy)」という用語は、インビボで1つ以上の所望の受容体と相互作用する薬物または薬物コンジュゲートの能力を意味する。
本明細書で用いられるように、「カルシトニン薬」という用語は、カルシトニンの生物活性の全てまたは幾つかを保有する薬物を意味する。
本明細書で用いられるように、「カルシトニン」という用語は、天然、合成、または遺伝子操作の起源により提供されるニワトリ・カルシトニン、ウナギ・カルシトニン、ヒト・カルシトニン、ブタ・カルシトニン、ラット・カルシトニンまたはサケ・カルシトニンを意味する。
本明細書で用いられるように、「カルシトニン類似体」という用語は、1つ以上のアミノ酸が置換されているが、カルシトニンの活性の幾つかまたは全てを保持するカルシトニンを意味する。該類似体は、置換の位置を上付き文字として添えた置換アミノ酸を言及した後カルシトニンを記述することにより記載される。例えば、「Pro2カルシトニン、ヒト」は、ヒトのカルシトニン分子の2番目の位置で通常見出されるグリシンがプロリンと置換したことを意味する。
カルシトニン類似体は、当業者に理解されるように、種々の手段により得られ得る。例えば、ある種のアミノ酸は、相互作用結合能をかなり喪失することなく、例えば抗体の抗原結合領域または基質分子の結合部位などの構造を備えたカルシトニン構造において、他のアミノ酸と置換され得る。カルシトニンの相互作用能および性質はその生体機能活性を規定するため、ある種のアミノ酸配列の置換がアミノ酸配列で為され得るにも関わらず、依然として同様の性質を有するポリペプチドのままである。
このような置換を作製する際に、アミノ酸のハイドロパシー指標が検討され得る。ポリペプチドに相互作用的生体機能を付与する際のアミノ酸のハイドロパシー指標の重要性は一般に当分野で理解されている。アミノ酸の相対的なハイドロパシー特性は、得られるポリペプチドの二次構造に寄与し、他の分子、例えば、酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原等とポリペプチドとの相互作用を順次規定する。それぞれのアミノ酸はその疎水性および下記の電荷特性に基づいてハイドロパシー指標が指定される。イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸塩(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸塩(−3.5);アスパラギン(−3.5);リシン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)。当業者に理解されるように、ある種のアミノ酸は同様なハイドロパシー指標または点数を有する他のアミノ酸と置換されてもよく、依然として同様な生物活性を有するポリペプチドを生じ、即ち、依然として生体機能的に等価なポリペプチドを得る。このような変化を生成する際に、ハイドロパシー指標が相互の±2内であるアミノ酸の置換が好ましく、相互の±1内であるものが特に好ましく、相互の±0.5内であるものが更により特に好ましい。
類似アミノ酸の置換が親水性に基づいて効果的に為され得ることも当分野で理解される。米国特許第4,554,101号は、タンパク質の最大局所平均親水性(greatest local average hydrophilicity)が、その隣接アミノ酸の親水性に支配されるので、タンパク質の生物学的特性に相関することを規定する。米国特許第4,554,101号に詳述されるように、下記の親水性値がアミノ酸残基に指定されている。アルギニン(+3.0);リシン(±3.0);アスパラギン酸塩(+3.0±1);グルタミン酸塩(+3.0±1);セリン(seine)(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);トリプトファン(−3.4)。当業者に理解されるように、アミノ酸は同様な親水性値を有する他と置換でき、生物学的に等価な、特に免疫学的に等価なポリペプチドを依然得ることができる。このような変化において、親水性値が相互の±2内であるアミノ酸の置換が好ましく、相互の±1内であるものが特に好ましく、相互の±0.5内であるものが更により特に好ましい。
上記で概説したように、アミノ酸の置換は、従って、一般にアミノ酸側鎖置換の相対的類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、大きさ等に基づくものである。種々の前記特性を考慮に入れる典型的な置換(即ち、ポリペプチドの生物活性を著しく変えることなく交換され得るアミノ酸)は、当業者に周知であり、例えば、アルギニンおよびリシン;グルタミン酸塩およびアスパラギン酸塩;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシンおよびイソロイシン。
本明細書で用いられるように、「カルシトニン断片」という用語は、カルシトニンの活性の幾つかまたは全てを保持する、カルシトニンで見られるアミノ酸配列のセグメントを意味する。
本明細書で用いられるように、「カルシトニン断片類似体」という用語は、セグメントの1つ以上のアミノ酸が置換されているが、カルシトニンの活性の幾つかまたは全てを保持する、カルシトニン分子に見られるアミノ酸配列のセグメントを意味する。
本明細書で用いられるように、「PEG」という用語は直鎖または分岐のポリエチレングリコールポリマーを指し、ポリエチレングリコールのモノメチルエーテル(mPEG)を含む。「PEGサブユニット」、即ちポリエチレングリコール・サブユニットという用語は、一つのポリエチレングリコール単位、即ち?(CH2CH2O)?を指す。
本明細書で用いられるように、「親油性(lipophilic)」という用語は、脂質への溶解能ならびに/または生体膜を貫通、相互作用および/もしくは横断する能力を意味し、「親油性部分」または「脂肪親和性(lipophile)」という用語は、親油性である部分、および/または他の化学物質に結合するとこのような化学物質の親油性を増す部分を意味する。親油性部分の例は、アルキル、脂肪酸、脂肪酸のエステル、コレステリル、アダマンチルなどを含むが、これらに限定されない。
本明細書で用いられるように、「低級アルキル」という用語は1から5の炭素原子を有する置換または非置換のアルキル部分を指す。
本明細書で用いられるように、「高級アルキル」という用語は6以上の炭素原子を有する置換または非置換のアルキル部分を指す。
本発明の実施形態において、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの実質的に単分散の混合物が提供される。単分散混合物におけるそれぞれのカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートは、ポリエチレングリコール部分を含むオリゴマーと結合したカルシトニン薬を含む。好ましくは、混合物の少なくとも約96、97、98または99パーセントのコンジュゲートが同じ分子量を有する。より好ましくは、混合物は単分散混合物である。更により好ましくは、混合物は実質的に純粋な単分散混合物である。更により好ましくは、混合物の少なくとも約96、97、98または99パーセントのコンジュゲートが同じ分子量及び同じ分子構造を有する。最も好ましくは、混合物は純粋な単分散混合物である。
カルシトニン薬はカルシトニンであることが好ましい。より好ましくは、カルシトニン薬はサケ・カルシトニンである。しかしながら、カルシトニン薬は、例えば、カルシトニン前駆ペプチド、カルシトニン、カルシトニン類似体、カルシトニン断片、およびカルシトニン断片類似体を含む、当業者に知られる種々のカルシトニン薬から選択され得ることが理解されるべきである。カルシトニン前駆ペプチドは、カタカルシン(PDN−21)(C−プロカルシトニン)、およびN−proCT(アミノ末端プロカルシトニン切断ペプチド)、ヒトを含むが、これらに限定されない。カルシトニン類似体は上述のカルシトニンにおける1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。カルシトニン断片は、カルシトニン1−7、ヒト;およびカルシトニン8−32、サケを含むが、これらに限定されない。カルシトニン断片類似体は上述のカルシトニン断片中の1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、ポリエチレングリコール部分を含む種々のオリゴマーであり得る。好ましくは、オリゴマーのポリエチレングリコール部分は少なくとも2、3または4のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。より好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも5または6のポリエチレングリコール・サブユニットを有し、最も好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも7のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、追加の親水性部分、親油性部分、スペーサー部分、リンカー部分、および末端部分を含むが、これらに限定されない、1つ以上の他の部分を含み得る。オリゴマーの種々の部分は加水分解性結合または非加水分解性結合のいずれかにより互いに共有結合する。
オリゴマーは、糖、ポリアルキレンオキシド、およびポリアミン/PEG共ポリマーを含むが、これらに限定されない1つ以上の追加の親水性部分(即ち、ポリエチレングリコール部分に加えた部分)をさらに含み得る。ポリエチレングリコールはポリアルキレンオキシドであるため、追加の親水性部分はポリエチレングリコール部分であってもよい。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合により結合する場合、同じ部分であると考えられる。例えば、
の部分は6つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する一つのポリエチレングリコール部分である。この部分がオリゴマーにおける唯一つの親水性部分である場合、オリゴマーは追加の親水性部分を含まない。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合以外の結合により結合する場合、異なる部分であると考えられる。例えば、
の部分は、4つのポリエチレングリコール・サブユニットを有するポリエチレングリコール部分および2つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する追加の親水性部分である。好ましくは、本発明の実施形態によるオリゴマーは、ポリエチレングリコール部分を含むが、追加の親水性部分を含まない。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上の親油性部分をさらに含み得る。親油性部分は、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル部分、または飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐の脂肪酸部分であることが好ましい。親油性部分がアルキル部分である場合、1から28の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和のアルキル部分であることが好ましい。より好ましくは、アルキル部分は2から12の炭素原子を有する。親油性部分が脂肪酸部分である場合、2から18の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和である天然脂肪酸部分であることが好ましい。より好ましくは、脂肪酸部分は3から14の炭素原子を有する。最も好ましくは、脂肪酸部分は少なくとも4、5または6の炭素原子を有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上のスペーサー部分を更に含み得る。スペーサー部分は、例えば、親油性部分から親水性部分を分離するため、カルシトニン薬から親油性部分もしくは親水性部分を分離するため、第二の親水性もしくは親油性の部分から第一の親水性もしくは親油性の部分を分離するため、またはリンカー部分から親水性部分もしくは親油性部分を分離するために用いられ得る。スペーサー部分は、糖、コレステロールおよびグリセリンの部分からなる群より選択されることが好ましい。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを結合するために用いられる1つ以上のリンカー部分をさらに含み得る。リンカー部分はアルキル部分および脂肪酸部分からなる群より選択されることが好ましい。
オリゴマーはカルシトニン薬に結合しないオリゴマーの1つ以上の端部に1つ以上の末端部分をさらに含んでよい。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましく、低級アルキルまたは低級アルコキシの部分であることがより好ましい。最も好ましくは、末端部分はメチルまたはメトキシである。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましいが、当業者に理解されるように、末端部分は糖、コレステロール、アルコール、および脂肪酸を含むが、これらに限定されない種々の部分であってよいと理解されねばならない。
オリゴマーはカルシトニン薬に共有結合することが好ましい。ある実施形態において、カルシトニン薬は加水分解性結合(例えばエステル結合またはカーボネート結合)を利用してオリゴマーと結合する。加水分解性結合はプロドラッグとして作用するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供することができる。1例において、例えばカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが不活性である場合(即ち、該コンジュゲートがカルシトニン薬の一次作用機構を通じて身体に影響を及ぼす能力を欠失する)、1つ以上のオリゴマーがそれらの個別のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートから開裂し、活性薬物を提供するので、加水分解性結合は、所定の期間にわたってカルシトニン薬を投与する、徐放性または制御放出の効果を提供することができる。他の実施形態において、カルシトニン薬は非加水分解性結合(例えば、カルバメート結合、アミド結合、またはエーテル結合)を利用してオリゴマーと結合する。非加水分解性結合の使用は、長期間、好ましくは少なくとも2時間、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが血流で循環できることが望ましい場合に、好ましいかもしれない。オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合する場合、オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを共有結合するために用いられる1つ以上の結合部分をさらに含む。結合部分は、共有結合、エステル部分、カーボネート部分、カルバメート部分、アミド部分および第二級アミン部分からなる群より選択されることが好ましい。オリゴマーの1より多い部分がカルシトニン薬と共有結合し得る。
オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合することが好ましいが、オリゴマーがカルシトニン薬と非共有結合して非共有結合のカルシトニン薬−オリゴマー錯体を形成し得ることが理解されるべきである。当業者に理解されるように、非共有結合は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、およびミセル封入またはリポソーム封入を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態により、オリゴマーは、当業者に理解されるように、選択様式で非共有結合能を付与するため(例えば、水素結合能を付与するため)、好適に構築、修飾および/または適切に官能化され得る。本発明の他の実施形態により、オリゴマーは、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、胆汁酸、胆汁酸誘導体、脂肪酸、脂肪酸誘導体、サリチル酸、サリチル酸誘導体、アミノサリチル酸、およびアミノサリチル酸誘導体を含むが、これらに限定されない種々の化合物で誘導体化され得る。生じるオリゴマーは、薬物分子、医薬品、および/または製剤賦形剤と非共有結合(錯体形成)し得る。生じる錯体は均衡のとれた親油性および親水性を有することが好ましい。本発明の更に他の実施形態により、オリゴマーはアミンおよび/またはアルキルアミンで誘導体化され得る。適切な酸性条件下で、生じたオリゴマーは薬物分子、医薬品および/または製剤賦形剤と非共有結合した錯体を形成し得る。このような錯化から得られる生成物は均衡のとれた親油性・親水性を有することが好ましい。
1より多いオリゴマー(即ち、複数のオリゴマー)がカルシトニン薬と結合し得る。複数のオリゴマーは同じであることが好ましい。しかしながら、複数のオリゴマーが互いに異なり得る又は複数のオリゴマーの幾つかは同じで幾つかは異なり得ることが理解されるべきである。複数のオリゴマーがカルシトニン薬と結合する場合、1つ以上のオリゴマーが加水分解性結合でカルシトニン薬と結合し、また1つ以上のオリゴマーが非加水分解性結合でカルシトニン薬と結合することが好ましいこともある。または、複数のオリゴマーをカルシトニン薬と結び付ける全ての結合は加水分解性であってよいが、例えば、1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から速やかに取り外され、かつ1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から徐々に取り外されるような、様々な程度の加水分解性を有する。
オリゴマーは、求核性のヒドロキシル官能基および/またはアミノ官能基を含むがこれらに限定されないカルシトニン薬の様々な求核性残基でカルシトニン薬と結合し得る。カルシトニン薬がポリペプチドである場合、求核性ヒドロキシル官能基は例えばセリンおよび/またはチロシン残基で見出され、求核性アミノ官能基は例えばヒスチジンおよび/もしくはリシン残基で、ならびに/またはポリペプチドのN末端1つ以上で見出され得る。オリゴマーがカルシトニン・ポリペプチドのN末端1つ以上に結合すると、結合は第二級アミンを形成することが好ましい。カルシトニン薬がサケ・カルシトニンである場合、例えば、オリゴマーは、Lys11、Lys18および/またはN末端のアミノ官能基を含む、サケ・カルシトニンのアミノ官能基に結合し得る。1つ以上のオリゴマーはサケ・カルシトニンに結合し得るが、オリゴマーがLys11およびLys18のアミノ官能基に結合する場合、血清カルシウム低減能の向上など、より高い生物有効性がジコンジュゲート・サケ・カルシトニンで観察される。
本発明の実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は種々の方法により合成され得る。例えば、カルボン酸およびポリエチレングリコールからなる実質的に単分散のオリゴマー混合物は、実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するのに十分な条件の下で、実質的に単分散のカルボン酸混合物を実質的に単分散のポリエチレングリコール混合物と接触させることにより合成される。実質的に単分散の混合物のオリゴマーは次いでカルシトニン薬と反応できるように活性化されカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供する。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の1実施形態は図3に図示され下記の実施例11〜18に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図4に図示され下記の実施例19〜24に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図5に図示され下記の実施例25〜29に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図6に図示され下記の実施例30〜31に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図7に図示され下記の実施例32〜37に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図8に図示され下記の実施例38に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための更なる他の合成経路の実施形態は図9に図示され下記の実施例39に記載される。実質的に単分散のオリゴマー混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図10に図示され下記の実施例40に記載される。
実質的に単分散の活性オリゴマー混合物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供するのに十分な条件の下で、実質的に単分散のカルシトニン薬混合物と反応し得る。好ましい合成は下記の実施例41に記載される。当業者に理解されるように、反応条件(例えば、選択されるモル比、溶媒混合物および/またはpH)は、実質的に単分散の活性オリゴマー混合物と実質的に単分散のカルシトニン薬混合物との反応から生じるカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物が、実質的に単分散の混合物であるように制御され得る。例えば、リシンのアミノ官能基での結合は反応溶液のpHをリシンのpKaより下に維持することにより抑制できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、例えばHPLCを利用して分離および単離され、実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物、例えばモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲート混合物を提供できる。特定の単離コンジュゲートのコンジュゲーションの程度(例えば、単離分子がモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートであるか否か)は、当業者に理解されるように、質量分析を含むがこれに限定されない種々の技法を利用して、測定および/または確認できる。特定のコンジュゲート構造(例えば、オリゴマーがサケ・カルシトニンモノコンジュゲートのLys11、Lys18またはN末端にあるか否か)は、当業者に理解されるように、配列解析、ペプチド・マッピング、選択的酵素切断、および/またはエンドペプチダーゼ切断を含むが、これらに限定されない種々の技法を利用して、測定および/または確認することができる。
当業者に理解されるように、カルシトニン薬の1つ以上の反応部位は、例えば、カルシトニン薬をN−tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)またはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)(N−FMOC)などの適切な遮断試薬と反応させることにより、遮断され得る。この過程は、例えばカルシトニン薬がポリペプチドであり、該ポリペプチドのN末端にオリゴマーを有する不飽和コンジュゲート(即ち、全ての求核性残基が結合するとは限らないコンジュゲート)を形成することが望ましい場合に好ましいかもしれない。このような遮断後、実質的に単分散の遮断カルシトニン薬混合物は実質的に単分散の活性オリゴマー混合物と反応し、1つ以上の求核性残基と結合するオリゴマーを有し且つ他の求核性残基と結合する遮断部分を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。コンジュゲーション反応後、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートは、当業者に理解されるように、脱遮断され得る。必要ならば、次にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述したように分離され実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は脱遮断前に分離できる。
本発明の実施形態による実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は、従来の混合物の性質と比較すると、向上した性質を有することが好ましい。例えば、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は少なくとも5パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも10、11、12、13または14パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。より好ましくは、該コンジュゲートの混合物は、少なくとも15、16、17、18または19パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができ、最も好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも20パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。
他の例として、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性とそれぞれ比較すると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。キモトリプシンまたはトリプシンに対する耐性は、試験される分子が下記の実施例51で概説される手法を用いて適用酵素で分解される際に残存する百分率に相当する。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーとコンジュゲートしないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーとコンジュゲートしないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約15パーセント高く、最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーとコンジュゲートしないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーとコンジュゲートしないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーとコンジュゲートしないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーとコンジュゲートしないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約30パーセント高い。
更なる他の例として、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より高い生物有効性を有することが好ましい。特定化合物の生物有効性はその曲線下面積(AUC)値に相当する。好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約5パーセント高い。より好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約10パーセント高い。
更なる他の例として、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、実質的に単分散の混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビボ活性より高いインビボ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、例えばH.R.Allcock & F.W.Lampe,CONTEMPORARY POLYMER CHEMISTRY 394−402(2d.ed.,1991)に記載されるゲル透過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
他の例として、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、実質的に単分散の混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビトロ活性より高いインビトロ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、実質的に単分散の混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性と比べると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、実質的に単分散のカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、実質的に単分散の混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の被験者間変動より低い被験者間変動を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。被験者間変動は、当業者に理解されるように、種々の方法により測定することができる。被験者間変動は下記の通りに計算されるのが好ましい。用量反応曲線下面積(AUC)(即ち、用量反応曲線と基線値との間の面積)は個々の被験者について測定される。全被験者の平均AUCは、各被験者のAUCを合計し、その和を被験者数で割ることにより決定される。次に、被験者のAUCと平均AUCとの差の絶対値が各被験者について決定される。次いで、得られた差の絶対値は合計され、被験者間変動を表す数値が得られる。低い値は低い被験者間変動を表し、高い値は高い被験者間変動を表す。
本発明の実施形態による実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は上述の向上した性質2つ以上を有することが好ましい。より好ましくは、本発明の実施形態による実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は上述の向上した性質3つ以上を有する。最も好ましくは、本発明の実施形態による実質的に単分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は上述の向上した性質4つ以上を有する。
本発明の更なる他の実施形態において、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するコンジュゲート混合物が提供される。該混合物中の各コンジュゲートはポリエチレングリコール部分を含むオリゴマーと結合したカルシトニン薬を含む。標準偏差は約14ダルトン未満であることが好ましく、約11ダルトン未満であることがより好ましい。分子量分布は、例えばH.R.Allcock & F.W.Lampe,CONTEMPORARY POLYMER CHEMISTRY 394−402(2d.ed.,1991)に記載されるゲル透過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない、当業者に公知の方法により測定することができる。次いで、分子量分布の標準偏差は、当業者に理解されるように、統計学的方法により決定することができる。
カルシトニン薬は、好ましくはカルシトニンであろう。より好ましくは、カルシトニン薬はサケ・カルシトニンである。しかしながら、カルシトニン薬は、例えば、カルシトニン前駆ペプチド、カルシトニン、カルシトニン類似体、カルシトニン断片、およびカルシトニン断片類似体を含む、当業者に公知の様々なカルシトニン薬から選択できることが理解されるべきである。カルシトニン前駆ペプチドは、カタカルシン(PDN−21)(C−プロカルシトニン)、およびN−proCT(アミノ末端プロカルシトニン切断ペプチド)、ヒトを含むが、これらに限定されない。カルシトニン類似体は上述のカルシトニンにおける1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。カルシトニン断片は、カルシトニン1−7、ヒト;およびカルシトニン8−32、サケを含むが、これらに限定されない。カルシトニン断片類似体は上述のカルシトニン断片中の1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、ポリエチレングリコール部分を含む種々のオリゴマーであってよい。好ましくは、オリゴマーのポリエチレングリコール部分は少なくとも2、3または4のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。より好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも5または6のポリエチレングリコール・サブユニットを有し、最も好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも7のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、追加の親水性部分、親油性部分、スペーサー部分、リンカー部分、および末端部分を含むが、これらに限定されない、1つ以上の他の部分を含んでよい。オリゴマーの種々の部分は加水分解性結合または非加水分解性結合のいずれかにより互いに共有結合する。
オリゴマーは、糖、ポリアルキレンオキシド、およびポリアミン/PEG共ポリマーを含むが、これらに限定されない1つ以上の追加の親水性部分(即ち、ポリエチレングリコール部分に加えた部分)をさらに含み得る。ポリエチレングリコールはポリアルキレンオキシドであるため、追加の親水性部分はポリエチレングリコール部分であってもよい。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合により結合する場合、同じ部分であると考えられる。例えば、
の部分は6つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する一つのポリエチレングリコール部分である。この部分がオリゴマーにおける唯一つの親水性部分である場合、オリゴマーは追加の親水性部分を含まない。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合以外の結合により結合する場合、異なる部分であると考えられる。例えば、
の部分は、4つのポリエチレングリコール・サブユニットを有するポリエチレングリコール部分および2つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する追加の親水性部分である。好ましくは、本発明の実施形態によるオリゴマーは、ポリエチレングリコール部分を含むが、追加の親水性部分を含まない。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上の親油性部分をさらに含み得る。親油性部分は、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル部分、または飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐の脂肪酸部分であることが好ましい。親油性部分がアルキル部分である場合、1から28の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和のアルキル部分であることが好ましい。より好ましくは、アルキル部分は2から12の炭素原子を有する。親油性部分が脂肪酸部分である場合、2から18の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和である天然脂肪酸部分であることが好ましい。より好ましくは、脂肪酸部分は3から14の炭素原子を有する。最も好ましくは、脂肪酸部分は少なくとも4、5または6の炭素原子を有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上のスペーサー部分を更に含み得る。スペーサー部分は、例えば、親油性部分から親水性部分を分離するため、カルシトニン薬から親油性部分もしくは親水性部分を分離するため、第二の親水性もしくは親油性の部分から第一の親水性もしくは親油性の部分を分離するため、またはリンカー部分から親水性部分もしくは親油性部分を分離するために用いられ得る。スペーサー部分は、糖、コレステロールおよびグリセリンの部分からなる群より選択されることが好ましい。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを結合するために用いられるリンカー部分1つ以上をさらに含み得る。リンカー部分は、好ましくは、アルキル部分および脂肪酸部分からなる群より選択される。
オリゴマーはカルシトニン薬に結合しないオリゴマーの1つ以上の端部に1つ以上の末端部分をさらに含んでよい。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましく、低級アルキルまたは低級アルコキシの部分であることがより好ましい。最も好ましくは、末端部分はメチルまたはメトキシである。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましいが、当業者に理解されるように、末端部分は糖、コレステロール、アルコール、および脂肪酸を含むが、これらに限定されない種々の部分であってよいと理解されねばならない。
オリゴマーはカルシトニン薬に共有結合することが好ましい。ある実施形態において、カルシトニン薬は加水分解性結合(例えばエステル結合またはカーボネート結合)を利用してオリゴマーと結合する。加水分解性結合はプロドラッグとして作用するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供することができる。1例において、例えばカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが不活性である場合(即ち、該コンジュゲートがカルシトニン薬の一次作用機構を通じて身体に影響を及ぼす能力を欠失する)、1つ以上のオリゴマーがそれらの個別のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートから開裂し、活性薬物を提供するので、加水分解性結合は、所定の期間にわたってカルシトニン薬を投与する徐放性または制御放出の効果を提供することができる。他の実施形態において、カルシトニン薬は非加水分解性結合(例えば、カルバメート結合、アミド結合、またはエーテル結合)を利用してオリゴマーと結合する。非加水分解性結合の使用は、長期間、好ましくは少なくとも2時間、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが血流で循環できることが望ましい場合に、好ましいかもしれない。オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合する場合、オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを共有結合するために用いられる1つ以上の結合部分をさらに含む。結合部分は、共有結合、エステル部分、カーボネート部分、カルバメート部分、アミド部分および第二級アミン部分からなる群より選択されることが好ましい。オリゴマーの1より多い部分がカルシトニン薬と共有結合し得る。
オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合することが好ましいが、オリゴマーがカルシトニン薬と非共有結合して非共有結合のカルシトニン薬−オリゴマー錯体を形成できることが理解されるべきである。当業者に理解されるように、非共有結合は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、およびミセル封入またはリポソーム封入を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態により、オリゴマーは、当業者に理解されるように、選択様式で非共有結合能を付与するため(例えば、水素結合能を付与するため)、好適に構築、修飾および/または適切に官能化され得る。本発明の他の実施形態により、オリゴマーは、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、胆汁酸、胆汁酸誘導体、脂肪酸、脂肪酸誘導体、サリチル酸、サリチル酸誘導体、アミノサリチル酸、およびアミノサリチル酸誘導体を含むが、これらに限定されない種々の化合物で誘導体化され得る。得られるオリゴマーは、薬物分子、医薬品、および/または製剤賦形剤と非共有結合(錯体形成)し得る。得られる錯体は、好ましくは、均衡のとれた親油性および親水性を有する。本発明の更に他の実施形態により、オリゴマーはアミンおよび/またはアルキルアミンで誘導体化され得る。適切な酸性条件下で、生じたオリゴマーは薬物分子、医薬品および/または製剤賦形剤と非共有結合した錯体を形成し得る。このような錯化から生じる生成物は、好ましくは、均衡のとれた親油性および親水性を有する。
1より多いオリゴマー(即ち、複数のオリゴマー)がカルシトニン薬と結合し得る。複数のオリゴマーは同じであることが好ましい。しかしながら、複数のオリゴマーが互いに異なり得る又は複数のオリゴマーの幾つかは同じで幾つかは異なり得ることが理解されるべきである。複数のオリゴマーがカルシトニン薬と結合する場合、1つ以上のオリゴマーが加水分解性結合でカルシトニン薬と結合し、また1つ以上のオリゴマーが非加水分解性結合でカルシトニン薬と結合することが好ましいこともある。または、複数のオリゴマーをカルシトニン薬と結び付ける全ての結合は加水分解性であってよいが、例えば、1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から速やかに取り外され、かつ1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から徐々に取り外されるような、様々な程度の加水分解性を有する。
オリゴマーは、求核性のヒドロキシル官能基および/またはアミノ官能基を含むがこれらに限定されないカルシトニン薬の様々な求核性残基でカルシトニン薬と結合し得る。カルシトニン薬がポリペプチドである場合、求核性ヒドロキシル官能基は例えばセリンおよび/またはチロシン残基で見出され、求核性アミノ官能基は例えばヒスチジンおよび/もしくはリシン残基で、ならびに/または1つ以上のポリペプチドのN末端で見出され得る。オリゴマーがカルシトニン・ポリペプチドの1つ以上のN末端に結合すると、好ましくは、結合は第二級アミンを形成する。カルシトニン薬がサケ・カルシトニンである場合、例えば、オリゴマーは、Lys11、Lys18および/またはN末端のアミノ官能基を含む、サケ・カルシトニンのアミノ官能基に結合し得る。1つ以上のオリゴマーはサケ・カルシトニンに結合し得るが、オリゴマーがLys11およびLys18のアミノ官能基に結合する場合、血清カルシウム低減能の向上など、より高い生物有効性がジコンジュゲートサケ・カルシトニンで観察される。
標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は種々の方法により合成され得る。例えば、カルボン酸およびポリエチレングリコールからなり標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するオリゴマーの混合物は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するオリゴマーの混合物を提供するのに十分な条件の下で、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルボン酸の混合物を標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するポリエチレングリコール混合物と接触させることにより合成される。次いで、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する混合物のオリゴマーはカルシトニン薬と反応できるように活性化され、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供する。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の1実施形態は図3に図示され下記の実施例11〜18に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図4に図示され下記の実施例19〜24に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図5に図示され下記の実施例25〜29に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図6に図示され下記の実施例30〜31に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図7に図示され下記の実施例32〜37に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図8に図示され下記の実施例38に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための更なる他の合成経路の実施形態は図9に図示され下記の実施例39に記載される。標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図10に図示され下記の実施例40に記載される。
標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供するのに十分な条件の下で、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬の混合物と反応する。好ましい合成は下記の実施例41に記載される。当業者に理解されるように、反応条件(例えば、選択されるモル比、溶媒混合物および/またはpH)は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物と、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬の混合物との反応から生じるカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物が、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する混合物であるように制御することができる。例えば、リシンのアミノ官能基でのコンジュゲーションは反応溶液のpHをリシンのpKaより下に維持することにより抑制できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、例えばHPLCを利用して分離および単離でき、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物、例えばモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートの混合物を提供し得る。特定の単離コンジュゲートのコンジュゲーションの程度(例えば、単離分子がモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートであるか否か)は、質量分析を含むがこれに限定されない、当業者に理解される種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。特定のコンジュゲート構造(例えば、オリゴマーがサケ・カルシトニンモノコンジュゲートのLys11、Lys18またはN末端にあるか否か)は、配列解析、ペプチド・マッピング、選択的酵素切断、および/またはエンドペプチダーゼ切断を含むが、これらに限定されない、当業者に理解される種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。
当業者に理解されるように、カルシトニン薬の1つ以上の反応部位は、例えば、カルシトニン薬をN−tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)またはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)(N−FMOC)などの適切な遮断試薬と反応させることにより、遮断できる。この過程は、例えばカルシトニン薬がポリペプチドであり、該ポリペプチドのN末端にオリゴマーを有する不飽和コンジュゲート(即ち、全ての求核性残基が結合するとは限らないコンジュゲート)を形成するのが望ましい場合に好ましいかもしれない。このような遮断後、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する遮断カルシトニン薬の混合物は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有する活性オリゴマーの混合物と反応し、1つ以上の求核性残基と結合するオリゴマーを有し且つ他の求核性残基と結合する遮断部分を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。コンジュゲーション反応後、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートは、当業者に理解されるように、脱遮断することができる。必要ならば、次にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述したように分離し、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は脱遮断前に分離することができる。
本発明の実施形態による標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、従来の混合物の性質と比較すると、改良された性質を有することが好ましい。例えば、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は少なくとも5パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも10、11、12、13または14パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。より好ましくは、該コンジュゲートの混合物は、少なくとも15、16、17、18または19パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができ、最も好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも20パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。
他の例として、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性とそれぞれ比較すると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。キモトリプシンまたはトリプシンに対する耐性は、試験される分子が下記の実施例51で概説される手法に類似する手法を用いて適用酵素で分解される際に残存する百分率に相当する。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約15パーセント高く、最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約30パーセント高い。
更なる他の例として、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より高い生物有効性を有するのが好ましい。特定化合物の生物有効性はその曲線下面積(AUC)値に相当する。好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約5パーセント高い。より好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約10パーセント高い。
更なる他の例として、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビボ活性より高いインビボ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、例えばH.R.Allcock & F.W.Lampe,CONTEMPORARY POLYMER CHEMISTRY 394−402(2d.ed.,1991)に記載されるゲル透過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
他の例として、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビトロ活性より高いインビトロ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性と比べると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の被験者間変動より低い被験者間変動を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。被験者間変動は、当業者に理解されるように、種々の方法により測定することができる。被験者間変動は下記の通りに計算されることが好ましい。用量反応曲線下面積(AUC)(即ち、用量反応曲線と基線値との間の面積)は個々の被験者について測定される。全被験者の平均AUCは、各被験者のAUCを合計し、その和を被験者数で割ることにより決定される。次に、被験者のAUCと平均AUCとの差の絶対値が各被験者について決定される。次いで、得られた差の絶対値は合計され、被験者間変動を表す数値が得られる。低い値は低い被験者間変動を表し、高い値は高い被験者間変動を表す。
本発明の実施形態による標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質2つ以上を有することが好ましい。より好ましくは、本発明の実施形態による標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質3つ以上を有する。最も好ましくは、本発明の実施形態による標準偏差約22ダルトン未満の分子量分布を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質4つ以上を有する。
本発明の更なる他の実施形態により、コンジュゲートの混合物が提供され、それぞれのコンジュゲートはポリエチレングリコール部分を含むオリゴマーと結合したカルシトニン薬を含み、該混合物は、
において、10,000を上回る分散係数(DC)を有し、
式中:
nは試料中の異なる分子の数であり、
N
iは試料中のi番目分子の数であり、
M
iはi番目分子の質量である。
コンジュゲートの混合物は100,000を上回る分散係数を有することが好ましい。より好ましくは、コンジュゲート混合物の分散係数は500,000を超え、最も好ましくは、分散係数は10,000,000を超える。変数n、Ni、およびMiは、実施例49で後述される方法を含むがこれに限定されない、当業者に理解される種々の方法により測定することができる。
カルシトニン薬はカルシトニンであることが好ましい。より好ましくは、カルシトニン薬はサケ・カルシトニンである。しかしながら、カルシトニン薬は、例えば、カルシトニン前駆ペプチド、カルシトニン、カルシトニン類似体、カルシトニン断片、およびカルシトニン断片類似体を含む、当業者に公知の種々のカルシトニン薬から選択され得ることが理解されるべきである。カルシトニン前駆ペプチドは、カタカルシン(PDN−21)(C−プロカルシトニン)、およびN−proCT(アミノ末端プロカルシトニン切断ペプチド)、ヒトを含むが、これらに限定されない。カルシトニン類似体は上述のカルシトニンにおける1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。カルシトニン断片は、カルシトニン1−7、ヒト;およびカルシトニン8−32、サケを含むが、これらに限定されない。カルシトニン断片類似体は上述のカルシトニン断片中の1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、ポリエチレングリコール部分を含む種々のオリゴマーであってよい。好ましくは、オリゴマーのポリエチレングリコール部分は少なくとも2、3または4のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。より好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも5または6のポリエチレングリコール・サブユニットを有し、最も好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも7のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、追加の親水性部分、親油性部分、スペーサー部分、リンカー部分、および末端部分を含むが、これらに限定されない、1つ以上の他の部分を含み得る。オリゴマーの種々の部分は加水分解性結合または非加水分解性結合のいずれかにより互いに共有結合する。
オリゴマーは、糖、ポリアルキレンオキシド、およびポリアミン/PEG共ポリマーを含むが、これらに限定されない1つ以上の追加の親水性部分(即ち、ポリエチレングリコール部分に加えた部分)をさらに含み得る。ポリエチレングリコールはポリアルキレンオキシドであるため、追加の親水性部分はポリエチレングリコール部分であってもよい。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合により結合する場合、同じ部分であると考えられる。例えば、
の部分は6つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する一つのポリエチレングリコール部分である。この部分がオリゴマーにおける唯一つの親水性部分である場合、オリゴマーは追加の親水性部分を含まない。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合以外の結合により結合する場合、異なる部分であると考えられる。例えば、
の部分は、4つのポリエチレングリコール・サブユニットを有するポリエチレングリコール部分および2つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する追加の親水性部分である。好ましくは、本発明の実施形態によるオリゴマーは、ポリエチレングリコール部分を含むが、追加の親水性部分を含まない。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上の親油性部分をさらに含み得る。親油性部分は、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル部分、または飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐の脂肪酸部分であることが好ましい。親油性部分がアルキル部分である場合、1から28の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和のアルキル部分であることが好ましい。より好ましくは、アルキル部分は2から12の炭素原子を有する。親油性部分が脂肪酸部分である場合、2から18の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和である天然脂肪酸部分であることが好ましい。より好ましくは、脂肪酸部分は3から14の炭素原子を有する。最も好ましくは、脂肪酸部分は少なくとも4、5または6の炭素原子を有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上のスペーサー部分を更に含み得る。スペーサー部分は、例えば、親油性部分から親水性部分を分離するため、カルシトニン薬から親油性部分もしくは親水性部分を分離するため、第二の親水性もしくは親油性の部分から第一の親水性もしくは親油性の部分を分離するため、またはリンカー部分から親水性部分もしくは親油性部分を分離するために用いられ得る。スペーサー部分は、糖、コレステロールおよびグリセリンの部分からなる群より選択されることが好ましい。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを結合するために用いられるリンカー部分1つ以上をさらに含み得る。リンカー部分は、好ましくは、アルキル部分および脂肪酸部分からなる群より選択される。
オリゴマーはカルシトニン薬に結合しないオリゴマーの1つ以上の端部に1つ以上の末端部分をさらに含んでよい。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましく、低級アルキルまたは低級アルコキシの部分であることがより好ましい。最も好ましくは、末端部分はメチルまたはメトキシである。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましいが、当業者に理解されるように、末端部分は、糖、コレステロール、アルコール、および脂肪酸を含むが、これらに限定されない種々の部分であってよいと理解されねばならない。
オリゴマーはカルシトニン薬に共有結合することが好ましい。ある実施形態において、カルシトニン薬は加水分解性結合(例えばエステル結合またはカーボネート結合)を利用してオリゴマーと結合する。加水分解性結合はプロドラッグとして作用するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供することができる。1例において、例えばカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが不活性である場合(即ち、該コンジュゲートがカルシトニン薬の一次作用機構を通じて身体に影響を及ぼす能力を欠失する)、1つ以上のオリゴマーがそれらの個別のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートから開裂し、活性薬物を提供するので、加水分解性結合は、所定の期間にわたってカルシトニン薬を投与する徐放性または制御放出の効果を提供することができる。他の実施形態において、カルシトニン薬は非加水分解性結合(例えば、カルバメート結合、アミド結合、またはエーテル結合)を利用してオリゴマーと結合する。非加水分解性結合の使用は、長期間、好ましくは少なくとも2時間、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが血流で循環できることが望ましい場合に、好ましいかもしれない。オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合する場合、オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを共有結合するために用いられる1つ以上の結合部分をさらに含む。結合部分は、共有結合、エステル部分、カーボネート部分、カルバメート部分、アミド部分および第二級アミン部分からなる群より選択されることが好ましい。オリゴマーの1より多い部分がカルシトニン薬と共有結合し得る。
オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合することが好ましいが、オリゴマーがカルシトニン薬と非共有結合して非共有結合のカルシトニン薬−オリゴマー錯体を形成できることが理解されるべきである。当業者に理解されるように、非共有結合は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、およびミセル封入またはリポソーム封入を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態により、オリゴマーは、当業者に理解されるように、選択様式で非共有結合能を付与するため(例えば、水素結合能を付与するため)、好適に構築、修飾および/または適切に官能化され得る。本発明の他の実施形態により、オリゴマーは、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、胆汁酸、胆汁酸誘導体、脂肪酸、脂肪酸誘導体、サリチル酸、サリチル酸誘導体、アミノサリチル酸、およびアミノサリチル酸誘導体を含むが、これらに限定されない種々の化合物で誘導体化され得る。得られるオリゴマーは、薬物分子、医薬品、および/または製剤賦形剤と非共有結合(錯体形成)し得る。得られる錯体は、好ましくは、均衡のとれた親油性および親水性を有する。本発明の更に他の実施形態により、オリゴマーはアミンおよび/またはアルキルアミンで誘導体化され得る。適切な酸性条件下で、生じたオリゴマーは薬物分子、医薬品および/または製剤賦形剤と非共有結合した錯体を形成し得る。このような錯化から生じる生成物は、好ましくは、均衡のとれた親油性および親水性を有する。
1より多いオリゴマー(即ち、複数のオリゴマー)がカルシトニン薬と結合し得る。複数のオリゴマーは同じであることが好ましい。しかしながら、複数のオリゴマーが互いに異なり得る又は複数のオリゴマーの幾つかは同じで幾つかは異なり得ることが理解されるべきである。複数のオリゴマーがカルシトニン薬と結合する場合、1つ以上のオリゴマーが加水分解性結合でカルシトニン薬と結合し、また1つ以上のオリゴマーが非加水分解性結合でカルシトニン薬と結合することが好ましいこともある。または、複数のオリゴマーをカルシトニン薬と結び付ける全ての結合は加水分解性であってよいが、例えば、1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から速やかに取り外され、かつ1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から徐々に取り外されるような、様々な程度の加水分解性を有する。
オリゴマーは、求核性のヒドロキシル官能基および/またはアミノ官能基を含むがこれらに限定されないカルシトニン薬の様々な求核性残基でカルシトニン薬と結合し得る。カルシトニン薬がポリペプチドである場合、求核性ヒドロキシル官能基は例えばセリンおよび/またはチロシン残基で見出され、求核性アミノ官能基は例えばヒスチジンおよび/もしくはリシン残基で、ならびに/または1つ以上のポリペプチドのN末端で見出され得る。オリゴマーがカルシトニン・ポリペプチドの1つ以上のN末端に結合すると、好ましくは、結合は第二級アミンを形成する。カルシトニン薬がサケ・カルシトニンである場合、例えば、オリゴマーは、Lys11、Lys18および/またはN末端のアミノ官能基を含む、サケ・カルシトニンのアミノ官能基に結合し得る。1つ以上のオリゴマーはサケ・カルシトニンに結合し得るが、オリゴマーがLys11およびLys18のアミノ官能基に結合する場合、血清カルシウム低減能の向上など、より高い生物有効性がジコンジュゲートサケ・カルシトニンで観察される。
10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は種々の方法により合成され得る。例えば、カルボン酸およびポリエチレングリコールからなり10,000を超える分散係数を有するオリゴマーの混合物は、10,000を超える分散係数を有するオリゴマーの混合物を提供するのに十分な条件の下で、10,000を超える分散係数を有するカルボン酸混合物を、10,000を超える分散係数を有するポリエチレングリコール混合物と接触させることにより合成される。次いで10,000を超える分散係数を有する混合物のオリゴマーはカルシトニン薬と反応できるように活性化され、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供する。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の1実施形態は図3に図示され下記の実施例11〜18に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図4に図示され下記の実施例19〜24に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図5に図示され下記の実施例25〜29に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図6に図示され下記の実施例30〜31に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図7に図示され下記の実施例32〜37に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図8に図示され下記の実施例38に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための更なる他の合成経路の実施形態は図9に図示され下記の実施例39に記載される。10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図10に図示され下記の実施例40に記載される。
10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供するのに十分な条件の下で、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬の混合物と反応する。好ましい合成は下記の実施例41に記載される。当業者に理解されるように、反応条件(例えば、選択されるモル比、溶媒混合物および/またはpH)は、10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物と、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬の混合物との反応から生じるカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物が、10,000を超える分散係数を有する混合物であるように制御することができる。例えば、リシンのアミノ官能基でのコンジュゲーションは反応溶液のpHをリシンのpKaより下に維持することにより抑制できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、例えばHPLCを利用して分離および単離でき、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物、例えばモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートの混合物を提供し得る。特定の単離コンジュゲートのコンジュゲーションの程度(例えば、単離分子がモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートであるか否か)は、質量分析を含むがこれに限定されない、当業者に理解される種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。特定のコンジュゲート構造(例えば、オリゴマーがサケ・カルシトニンモノコンジュゲートのLys11、Lys18またはN末端にあるか否か)は、配列解析、ペプチド・マッピング、選択的酵素切断、および/またはエンドペプチダーゼ切断を含むが、これらに限定されない、当業者に理解される種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。
当業者に理解されるように、カルシトニン薬の1つ以上の反応部位は、例えば、カルシトニン薬をN−tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)またはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)(N−FMOC)などの適切な遮断試薬と反応させることにより、遮断できる。この過程は、例えばカルシトニン薬がポリペプチドであり、該ポリペプチドのN末端にオリゴマーを有する不飽和コンジュゲート(即ち、全ての求核性残基が結合するとは限らないコンジュゲート)を形成するのが望ましい場合に好ましいかもしれない。このような遮断後、10,000を超える分散係数を有する遮断済みカルシトニン薬の混合物は、10,000を超える分散係数を有する活性オリゴマーの混合物と反応し、1つ以上の求核性残基と結合するオリゴマーを有し且つ他の求核性残基と結合する遮断部分を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。コンジュゲーション反応後、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートは、当業者に理解されるように、脱遮断することができる。必要ならば、次にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述したように分離し、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は脱遮断前に分離することができる。
本発明の実施形態による10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、従来の混合物の性質と比較すると、改良された性質を有することが好ましい。例えば、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は少なくとも5パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも10、11、12、13または14パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。より好ましくは、該コンジュゲートの混合物は、少なくとも15、16、17、18または19パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができ、最も好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも20パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。
他の例として、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性とそれぞれ比較すると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。キモトリプシンまたはトリプシンに対する耐性は、試験される分子が下記の実施例51で概説される手法と類似した手法を用いて適用酵素で分解される際に残存する百分率に相当する。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約15パーセント高く、最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約30パーセント高い。
更なる他の例として、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より高い生物有効性を有することが好ましい。特定化合物の生物有効性はその曲線下面積(AUC)値に相当する。好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約5パーセント高い。より好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約10パーセント高い。
更なる他の例として、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビボ活性より高いインビボ活性を有するのが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、例えばH.R.Allcock & F.W.Lampe,CONTEMPORARY POLYMER CHEMISTRY 394−402(2d.ed.,1991)に記載されるゲル透過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
他の例として、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビトロ活性より高いインビトロ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性と比べると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の被験者間変動より低い被験者間変動を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。被験者間変動は、当業者に理解されるように、種々の方法により測定することができる。被験者間変動は下記の通りに計算されることが好ましい。用量反応曲線下面積(AUC)(即ち、用量反応曲線と基線値との間の面積)は個々の被験者について測定される。全被験者の平均AUCは、各被験者のAUCを合計し、その和を被験者数で割ることにより決定される。次に、被験者のAUCと平均AUCとの差の絶対値が各被験者について決定される。次いで、得られた差の絶対値は合計され、被験者間変動を表す数値が得られる。低い値は低い被験者間変動を表し、高い値は高い被験者間変動を表す。
本発明の実施形態による10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質2つ以上を有することが好ましい。より好ましくは、本発明の実施形態による10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質3つ以上を有する。最も好ましくは、本発明の実施形態による10,000を超える分散係数を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質4つ以上を有する。
本発明の他の実施形態により、それぞれのコンジュゲートが、オリゴマーと結合したカルシトニン薬を含み且つ同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する、コンジュゲートの混合物が提供される。
カルシトニン薬はカルシトニンであることが好ましい。より好ましくは、カルシトニン薬はサケ・カルシトニンである。しかしながら、カルシトニン薬は、例えば、カルシトニン前駆ペプチド、カルシトニン、カルシトニン類似体、カルシトニン断片、およびカルシトニン断片類似体を含む、当業者に公知の種々のカルシトニン薬から選択され得ることが理解されるべきである。カルシトニン前駆ペプチドは、カタカルシン(PDN−21)(C−プロカルシトニン)、およびN−proCT(アミノ末端プロカルシトニン切断ペプチド)、ヒトを含むが、これらに限定されない。カルシトニン類似体は上述のカルシトニンにおける1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。カルシトニン断片は、カルシトニン1−7、ヒト;およびカルシトニン8−32、サケを含むが、これらに限定されない。カルシトニン断片類似体は上述のカルシトニン断片中の1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、ポリエチレングリコール部分を含む種々のオリゴマーであってよい。好ましくは、オリゴマーのポリエチレングリコール部分は少なくとも2、3または4のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。より好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも5または6のポリエチレングリコール・サブユニットを有し、最も好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも7のポリエチレングリコール・サブユニットを有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、追加の親水性部分、親油性部分、スペーサー部分、リンカー部分、および末端部分を含むが、これらに限定されない、1つ以上の他の部分を含み得る。オリゴマーの種々の部分は加水分解性結合または非加水分解性結合のいずれかにより互いに共有結合する。
オリゴマーは、糖、ポリアルキレンオキシド、およびポリアミン/PEG共ポリマーを含むが、これらに限定されない1つ以上の追加の親水性部分(即ち、ポリエチレングリコール部分に加えた部分)をさらに含み得る。ポリエチレングリコールはポリアルキレンオキシドであるため、追加の親水性部分はポリエチレングリコール部分であってもよい。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合により結合する場合、同じ部分であると考えられる。例えば、
の部分は6つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する一つのポリエチレングリコール部分である。この部分がオリゴマーにおける唯一つの親水性部分である場合、オリゴマーは追加の親水性部分を含まない。隣接のポリエチレングリコール部分は、エーテル結合以外の結合により結合する場合、異なる部分であると考えられる。例えば、
の部分は、4つのポリエチレングリコール・サブユニットを有するポリエチレングリコール部分および2つのポリエチレングリコール・サブユニットを有する追加の親水性部分である。好ましくは、本発明の実施形態によるオリゴマーは、ポリエチレングリコール部分を含むが、追加の親水性部分を含まない。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上の親油性部分をさらに含み得る。親油性部分は、飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐のアルキル部分、または飽和もしくは不飽和の直鎖もしくは分岐の脂肪酸部分であることが好ましい。親油性部分がアルキル部分である場合、1から28の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和のアルキル部分であることが好ましい。より好ましくは、アルキル部分は2から12の炭素原子を有する。親油性部分が脂肪酸部分である場合、2から18の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和である天然脂肪酸部分であることが好ましい。より好ましくは、脂肪酸部分は3から14の炭素原子を有する。最も好ましくは、脂肪酸部分は少なくとも4、5または6の炭素原子を有する。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、1つ以上のスペーサー部分を更に含み得る。スペーサー部分は、例えば、親油性部分から親水性部分を分離するため、カルシトニン薬から親油性部分もしくは親水性部分を分離するため、第二の親水性もしくは親油性の部分から第一の親水性もしくは親油性の部分を分離するため、またはリンカー部分から親水性部分もしくは親油性部分を分離するために用いられ得る。スペーサー部分は、糖、コレステロールおよびグリセリンの部分からなる群より選択されることが好ましい。
オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを結合するために用いられるリンカー部分1つ以上をさらに含み得る。リンカー部分はアルキル部分および脂肪酸部分からなる群より選択されるのが好ましい。
オリゴマーはカルシトニン薬に結合しないオリゴマーの1つ以上の端部に1つ以上の末端部分をさらに含んでよい。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましく、低級アルキルまたは低級アルコキシの部分であることがより好ましい。最も好ましくは、末端部分はメチルまたはメトキシである。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましいが、当業者に理解されるように、末端部分は糖、コレステロール、アルコール、および脂肪酸を含むが、これらに限定されない種々の部分であってよいと理解されねばならない。
オリゴマーはカルシトニン薬に共有結合することが好ましい。ある実施形態において、カルシトニン薬は加水分解性結合(例えばエステル結合またはカーボネート結合)を利用してオリゴマーと結合する。加水分解性結合はプロドラッグとして作用するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供することができる。1例において、例えばカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが不活性である場合(即ち、該コンジュゲートがカルシトニン薬の一次作用機構を通じて身体に影響を及ぼす能力を欠失する)、1つ以上のオリゴマーがそれらの個別のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートから開裂し、活性薬物を提供するので、加水分解性結合は、所定の期間にわたってカルシトニン薬を投与する徐放性または制御放出の効果を提供することができる。他の実施形態において、カルシトニン薬は非加水分解性結合(例えば、カルバメート結合、アミド結合、またはエーテル結合)を利用してオリゴマーと結合する。非加水分解性結合の使用は、長期間、好ましくは少なくとも2時間、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが血流で循環できることが望ましい場合に、好ましいかもしれない。オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合する場合、オリゴマーは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを共有結合するために用いられる1つ以上の結合部分をさらに含む。結合部分は、共有結合、エステル部分、カーボネート部分、カルバメート部分、アミド部分および第二級アミン部分からなる群より選択されることが好ましい。オリゴマーの1より多い部分がカルシトニン薬と共有結合し得る。
オリゴマーがカルシトニン薬と共有結合することが好ましいが、オリゴマーがカルシトニン薬と非共有結合して非共有結合のカルシトニン薬−オリゴマー錯体を形成できることが理解されるべきである。当業者に理解されるように、非共有結合は、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス結合、およびミセル封入またはリポソーム封入を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態により、オリゴマーは、当業者に理解されるように、選択様式で非共有結合能を付与するため(例えば、水素結合能を付与するため)、好適に構築、修飾および/または適切に官能化され得る。本発明の他の実施形態により、オリゴマーは、アミノ酸、オリゴペプチド、ペプチド、胆汁酸、胆汁酸誘導体、脂肪酸、脂肪酸誘導体、サリチル酸、サリチル酸誘導体、アミノサリチル酸、およびアミノサリチル酸誘導体を含むが、これらに限定されない種々の化合物で誘導体化され得る。得られるオリゴマーは、薬物分子、医薬品、および/または製剤賦形剤と非共有結合(錯体形成)し得る。得られる錯体は、好ましくは、均衡のとれた親油性および親水性を有する。本発明の更に他の実施形態により、オリゴマーはアミンおよび/またはアルキルアミンで誘導体化され得る。適切な酸性条件下で、得られるオリゴマーは薬物分子、医薬品および/または製剤賦形剤と非共有結合した錯体を形成し得る。このような錯化から得られる生成物は、好ましくは、均衡のとれた親油性および親水性を有する。
1より多いオリゴマー(即ち、複数のオリゴマー)がカルシトニン薬と結合し得る。複数のオリゴマーは同じであることが好ましい。しかしながら、複数のオリゴマーが互いに異なり得る又は複数のオリゴマーの幾つかは同じで幾つかは異なり得ることが理解されるべきである。複数のオリゴマーがカルシトニン薬と結合する場合、1つ以上のオリゴマーが加水分解性結合でカルシトニン薬と結合し、また1つ以上のオリゴマーが非加水分解性結合でカルシトニン薬と結合することが好ましいこともある。または、複数のオリゴマーをカルシトニン薬と結び付ける全ての結合は加水分解性であってよいが、例えば、1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から速やかに取り外され、かつ1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解によりカルシトニン薬から徐々に取り外されるような、様々な程度の加水分解性を有する。
オリゴマーは、求核性のヒドロキシル官能基および/またはアミノ官能基を含むがこれらに限定されないカルシトニン薬の様々な求核性残基でカルシトニン薬と結合し得る。カルシトニン薬がポリペプチドである場合、求核性ヒドロキシル官能基は例えばセリンおよび/またはチロシン残基で見出され、求核性アミノ官能基は例えばヒスチジンおよび/もしくはリシン残基で、ならびに/または1つ以上のポリペプチドのN末端で見出され得る。オリゴマーがカルシトニン・ポリペプチドの1つ以上のN末端に結合すると、結合は、好ましくは、第二級アミンを形成する。カルシトニン薬がサケ・カルシトニンである場合、例えば、オリゴマーは、Lys11、Lys18および/またはN末端のアミノ官能基を含む、サケ・カルシトニンのアミノ官能基に結合し得る。1つ以上のオリゴマーはサケ・カルシトニンに結合し得るが、オリゴマーがLys11およびLys18のアミノ官能基に結合する場合、血清カルシウム低減能の向上など、より高い生物有効性がジコンジュゲート・サケ・カルシトニンで観察される。
混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は種々の方法により合成され得る。例えば、カルボン酸およびポリエチレングリコールからなり且つ混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するオリゴマーの混合物は、混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するオリゴマー混合物を提供するのに十分な条件の下で、混合物中のそれぞれのポリエチレングリコール分子が同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するポリエチレングリコール混合物とカルボン酸混合物とを接触させることにより合成される。次いで混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する混合物のオリゴマーはカルシトニン薬と反応できるように活性化され、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供する。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の1実施形態は図3に図示され下記の実施例11〜18に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図4に図示され下記の実施例19〜24に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図5に図示され下記の実施例25〜29に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図6に図示され下記の実施例30〜31に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図7に図示され下記の実施例32〜37に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図8に図示され下記の実施例38に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための更なる他の合成経路の実施形態は図9に図示され下記の実施例39に記載される。混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図10に図示され下記の実施例40に記載される。
混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマーの混合物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供するのに十分な条件の下で、カルシトニン薬の混合物と反応する。好ましい合成は下記の実施例41に記載される。当業者に理解されるように、反応条件(例えば、選択されるモル比、溶媒混合物および/またはpH)は、混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマー混合物とカルシトニン薬混合物との反応から生じるカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物が、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するコンジュゲート混合物であるように制御され得る。例えば、リシンのアミノ官能基での結合は反応溶液のpHをリシンのpKaより下に維持することにより抑制され得る。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、例えばHPLCを利用して分離および単離でき、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物、例えばモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲート混合物を提供し得る。特定の単離コンジュゲートのコンジュゲーションの程度(例えば、単離分子がモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートであるか否か)は、当業者に理解されるように、質量分析を含むがこれに限定されない種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。特定のコンジュゲート構造(例えば、オリゴマーがサケ・カルシトニンモノコンジュゲートのLys11、Lys18またはN末端にあるか否か)は、当業者に理解されるように、配列解析、ペプチド・マッピング、選択的酵素切断、および/またはエンドペプチダーゼ切断を含むが、これらに限定されない種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。
当業者に理解されるように、カルシトニン薬の1つ以上の反応部位は、例えば、カルシトニン薬をN−tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)またはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)(N−FMOC)などの好適な遮断試薬と反応させることにより、遮断され得る。この過程は、例えばカルシトニン薬がポリペプチドであり、該ポリペプチドのN末端にオリゴマーを有する不飽和コンジュゲート(即ち、全ての求核性残基が結合するとは限らないコンジュゲート)を形成するのが望ましい場合に好ましいこともある。このような遮断後、遮断カルシトニン薬の混合物は、混合物中の各オリゴマーが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有する活性オリゴマー混合物と反応し、1つ以上の求核性残基と結合するオリゴマーを有し且つ他の求核性残基と結合する遮断部分を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供し得る。コンジュゲーション反応後、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートは、当業者に理解されるように、脱遮断され得る。必要ならば、次にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述したように分離され、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供し得る。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は脱遮断前に分離することができる。
本発明の実施形態による混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、従来の混合物の性質と比較すると、向上した性質を有するのが好ましい。例えば、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、好ましくは、少なくとも5パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも10、11、12、13または14パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。より好ましくは、該コンジュゲートの混合物は、少なくとも15、16、17、18または19パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができ、最も好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも20パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。
他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性とそれぞれ比較すると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。キモトリプシンまたはトリプシンに対する耐性は、試験される分子が下記の実施例51で概説される手法と類似した手法を用いて適用酵素で分解される際に残存する百分率に相当する。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約15パーセント高く、最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約30パーセント高い。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より高い生物有効性を有することが好ましい。特定化合物の生物有効性はその曲線下面積(AUC)値に相当する。好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約5パーセント高い。より好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約10パーセント高い。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビボ活性より高いインビボ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、例えばH.R.Allcock & F.W.Lampe,CONTEMPORARY POLYMER CHEMISTRY 394−402(2d.ed.,1991)に記載されるゲル透過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビトロ活性より高いインビトロ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性と比べると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の被験者間変動より低い被験者間変動を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。被験者間変動は、当業者に理解されるように、種々の方法により測定することができる。被験者間変動は下記の通りに計算されることが好ましい。用量反応曲線下面積(AUC)(即ち、用量反応曲線と基線値との間の面積)は個々の被験者について測定される。全被験者の平均AUCは、各被験者のAUCを合計し、その和を被験者数で割ることにより決定される。次に、被験者のAUCと平均AUCとの差の絶対値が各被験者について決定される。次いで、得られた差の絶対値は合計され、被験者間変動を表す数値が得られる。低い値は低い被験者間変動を表し、高い値は高い被験者間変動を表す。
本発明の実施形態による混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、上述の向上した性質2つ以上を有することが好ましい。より好ましくは、本発明の実施形態による混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質3つ以上を有する。最も好ましくは、本発明の実施形態による混合物中の各コンジュゲートが同数のポリエチレングリコール・サブユニットを有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述の向上した性質4つ以上を有する。
本発明の更なる他の実施形態により、コンジュゲートの混合物が提供され、それぞれのコンジュゲートは、同じ分子量を有し、式A:
の構造を有し、式中:
Bは結合部分であり、
Lはリンカー部分であり、
G、G’およびG’’は個々に選択されるスペーサー部分であり、
Rは親油性部分であり且つR’はポリアルキレングリコール部分であるか、またはR’は親油性部分であり且つRはポリアルキレングリコール部分であり、
Tは末端部分であり、
j、k、mおよびnは個々に0または1であり、
pは1からカルシトニン薬の求核性残基数までの整数である。
カルシトニン薬はカルシトニンであることが好ましい。より好ましくは、カルシトニン薬はサケ・カルシトニンである。しかしながら、カルシトニン薬は、例えば、カルシトニン前駆ペプチド、カルシトニン、カルシトニン類似体、カルシトニン断片、およびカルシトニン断片類似体を含む、当業者に知られる種々のカルシトニン薬から選択され得ることが理解されるべきである。カルシトニン前駆ペプチドは、カタカルシン(PDN−21)(C−プロカルシトニン)、およびN−proCT(アミノ末端プロカルシトニン切断ペプチド)、ヒトを含むが、これらに限定されない。カルシトニン類似体は上述のカルシトニンにおける1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。カルシトニン断片は、カルシトニン1−7、ヒト;およびカルシトニン8−32、サケを含むが、これらに限定されない。カルシトニン断片類似体は上述のカルシトニン断片中の1つ以上のアミノ酸の置換により提供され得る。
本発明のこれらの実施形態により、オリゴマーのポリアルキレングリコール部分は少なくとも2、3または4のポリアルキレングリコール・サブユニットを有することが好ましい。より好ましくは、ポリアルキレングリコール部分は少なくとも5または6のポリアルキレングリコール・サブユニットを有し、最も好ましくは、ポリエチレングリコール部分は少なくとも7のポリアルキレングリコール・サブユニットを有する。ポリアルキレン・グリコール部分は、ポリエチレン・グリコール部分、ポリプロピレングリコール部分、またはポリブチレン・グリコール部分などの低級ポリアルキレン・グリコール部分であることが好ましい。より好ましくは、ポリアルキレン・グリコール部分はポリエチレン・グリコール部分またはポリプロピレングリコール部分である。最も好ましくは、ポリアルキレン・グリコール部分はポリエチレン・グリコール部分である。ポリアルキレン・グリコール部分がポリプロピレングリコール部分である場合、該部分は均一の(即ち、ランダムでない)構造を有することが好ましい。均一の構造を有する典型的なポリプロピレングリコール部分は下記:
の通りである。
この均一のポリプロピレングリコール構造はポリプロピレングリコール鎖において各酸素原子に隣接した唯一つのメチル置換炭素原子を有するものとして記載され得る。このような均一のポリプロピレングリコール部分は親油性および親水性の両特性を示し得るため、親油性ポリマー部分を用いることなく両親媒性カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供するのに役立つ。更に、ポリプロピレングリコール部分の第二級アルコール部分とカルシトニン薬との結合は、例えば腸に見出されるトリプシンおよびキモトリプシンなどの酵素により惹起される分解に対する耐性が向上したカルシトニン薬(例えば、サケ・カルシトニン)を提供し得る。
本発明の実施形態による均一のポリプロピレングリコールは、これから記述するつもりの図11から13に図示されるように合成されることが好ましい。図11に図示されるように、1,2−プロパンジオール53は第一級アルコール遮断試薬と反応して第二級アルコール伸長モノマー54を提供する。第一級アルコール遮断試薬は、t−ブチルジフェニルシリルクロリドおよびt−ブチルジメチルシリルクロリドなどの塩化シリル化合物、ならびにAc2Oなどのエステル化試薬を含むが、これらに限定されない、当業者に理解される、様々な第一級アルコール遮断試薬であってよい。好ましくは、第一級アルコール遮断試薬は、t−ブチルジフェニルシリルクロリドまたはt−ブチルジメチルシリルクロリドなど、実質的に第二級アルコールと反応しない第一級アルコール遮断試薬である。第二級アルコール伸長モノマー(extension monomer)(54)は塩化メタンスルホニル(MeSO2Cl)と反応して第一級伸長アルコールモノマーのメシラート55を生じ得る。
または、第二級アルコール伸長モノマー54は第二級アルコール遮断試薬と反応して化合物56を提供し得る。第二級アルコール遮断試薬は、塩化ベンジルを含むが、これに限定されない、当業者に理解される様々な第二級アルコール遮断試薬であってよい。化合物56はB1脱遮断試薬と反応して遮断部分B1を除去し第一級アルコール伸長モノマー57を提供し得る。B1脱遮断試薬は、当業者に理解される様々な脱遮断試薬から選択され得る。第一級アルコールがエステルを形成することにより遮断された場合、B1脱遮断試薬は塩基(例えば、炭酸カリウム)などの脱エステル化試薬である。第一級アルコールが塩化シリルを用いて遮断された場合、B1脱遮断試薬はフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)であるのが好ましい。第一級アルコール伸長モノマー57は塩化メタンスルホニルと反応して第二級アルコール伸長モノマーのメシラート58を生じ得る。
第一級アルコール伸長モノマー54および第二級アルコール伸長モノマー57は下記の通りにキャッピングされ得る。第二級アルコール伸長モノマー54はキャッピング試薬と反応して化合物59を生じ得る。キャッピング試薬は、塩化メチルなどのハロゲン化アルキルを含むが、これに限定されない、当業者に理解される種々のキャッピング試薬であってよい。化合物59は上述のB1脱遮断試薬と反応し第一級アルコール・キャッピングモノマー60を生じ得る。第一級アルコール・キャッピングモノマー60は塩化メタンスルホニルと反応して第二級アルコール・キャッピングモノマーのメシラート61を生じ得る。第一級アルコール伸長モノマー57はキャッピング試薬と反応して化合物62を生じ得る。キャッピング試薬は上述のような種々のキャッピング試薬であってよい。化合物62はB2脱遮断試薬と反応して遮断部分B2を除去し第二級アルコール・キャッピングモノマー63を提供し得る。B2脱遮断試薬は、パラジウム/活性炭触媒の存在下でのH2を含むが、これに限定されない、当業者に理解される種々の脱遮断試薬であってよい。第二級アルコール・キャッピングモノマーは塩化メタンスルホニルと反応し第一級アルコール・キャッピングモノマーのメシラート64を生じ得る。図11で図示される実施形態はキャッピングモノマーの合成を示すが、同様の反応が実施されキャッピングポリマーを提供できることは理解されるべきである。
一般に、鎖の伸長は、第一級アルコール伸長モノマー57などの第一級アルコール伸長モノマーまたはポリマーと、例えば第一級アルコール伸長モノマーのメシラート55などの第一級アルコール伸長モノマーまたはポリマーメシラートとを反応させることにより、または例えば第二級アルコール伸長モノマー54などの第二級アルコール伸長モノマーまたはポリマーと、例えば第二級アルコール伸長モノマーのメシラート58などの第二級アルコール伸長モノマーまたはポリマーメシラートとを反応させることにより行われ、種々の均一なポリプロピレン鎖を生じることができる。
例えば、図13において、第一級アルコール伸長モノマーのメシラート55は第一級アルコール伸長モノマー57と反応してダイマー化合物65を生じる。または、第二級アルコール伸長モノマーのメシラート58は第二級アルコール伸長モノマー54と反応してダイマー化合物65を生じる。ダイマー化合物65のB1遮断部分は上述のB1脱遮断試薬を用いて除去され、第一級アルコール伸長ダイマー66を生じ得る。第一級アルコール伸長ダイマー66は塩化メタンスルホニルと反応して第二級アルコール伸長ダイマーのメシラート67を生じ得る。または、ダイマー化合物65のB2遮断部分は上述のB2脱遮断試薬を用いて除去され、第二級アルコール伸長ダイマー69を生じ得る。第二級アルコール伸長ダイマー69は塩化メタンスルホニルと反応して第一級アルコール伸長ダイマーのメシラート70を生じ得る。
当業者に理解されるように、鎖の伸長過程は、様々な他の鎖の長さに到達するまで反復され得る。例えば、図13に図示されるように、第一級アルコール伸長ダイマー66は第一級アルコール伸長ダイマーのメシラート70と反応し、テトラマー化合物72を生じ得る。図13で更に図示されるように、一般的な鎖伸長反応スキームは、第一級アルコール伸長モノマーまたはポリマーの73を第一級アルコール伸長モノマーまたはポリマーのメシラート74と反応して、均一なポリプロピレンポリマー75を生じる工程を含む。mおよびnの値はそれぞれ0から1000以上の範囲に及ぶ。mおよびnはそれぞれ0から50までであることが好ましい。図13に図示される実施形態は、第一級アルコール伸長モノマーおよび/またはポリマーのメシラートと反応する第一級アルコール伸長モノマーおよび/またはポリマーを示すが、同様な反応が第二級アルコール伸長モノマーおよび/またはポリマーならびに第二級アルコール伸長モノマーおよび/またはポリマーのメシラートを用いて実施できることは理解されるべきである。
第一級アルコール伸長モノマーもしくはポリマーの末端または第一級アルコール伸長モノマーもしくはポリマーのメシラートの末端は、第一級アルコール・キャッピングモノマーもしくはポリマーのメシラートまたは第一級アルコール・キャッピングモノマーもしくはポリマーとそれぞれ反応し、キャッピングされた均一のポリプロピレン鎖を生じ得る。例えば、図12に図示されるように、第一級アルコール伸長ダイマーのメシラート70は第一級アルコール・キャッピングモノマー60と反応し、キャッピング/遮断された第一級アルコール伸長トリマー71を生じる。当業者に理解されるように、B1遮断部分は除去され、生じたキャッピングされた第一級アルコール伸長トリマーは第一級アルコール伸長モノマーまたはポリマーのメシラートと反応し、キャッピングされたトリマー71の鎖を伸長し得る。
第二級アルコール伸長モノマーもしくはポリマーの末端または第二級アルコール伸長モノマーもしくはポリマーのメシラートの末端は、第二級アルコール・キャッピングモノマーもしくはポリマーのメシラートまたは第二級アルコール・キャッピングモノマーもしくはポリマーとそれぞれ反応し、キャッピングされた均一のポリプロピレン鎖を生じ得る。例えば、図12に図示されるように、第二級アルコール伸長ダイマーのメシラート67は第二級アルコール・キャッピングモノマー63と反応し、キャッピング/遮断された第一級アルコール伸長トリマー68を生じる。B2遮断部分は上述したように除去され、生じたキャッピングされた第二級アルコール伸長トリマーは第二級アルコール伸長量体(mer)のメシラートと反応し、キャッピングされたトリマー68の鎖を伸長し得る。図12で図示される合成はダイマーとキャッピングモノマーとの反応を示しトリマーを提供するが、キャッピング過程は均一のポリプロピレングリコール部分の合成におけるどの時点でも実施できること、または、キャッピングされていない均一のポリプロピレングリコール部分が生じ得ることが理解されるべきである。図12で図示される実施形態はキャッピングモノマーを用いた合成によるポリブチレンオリゴマーのキャッピングを示すが、本発明のポリブチレンオリゴマーが、図11で上述したキャッピング試薬を用いて直接(即ち、キャッピングモノマーを付加せずに)キャッピングされ得ることが理解されるべきである。
本発明の実施形態による均一のポリプロピレングリコール部分は、ポリエチレングリコール部分に関して本明細書に記載される方法を含むが、これらに限定されない、当業者に理解される種々の方法により、カルシトニン薬、カルボン酸などの親油性部分、および/または様々な他の部分と結合し得る。
本発明のこれらの実施形態により、親油性部分は当業者に理解される親油性部分である。親油性部分は、飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐のアルキル部分、または飽和もしくは不飽和、直鎖もしくは分岐の脂肪酸部分であることが好ましい。親油性部分がアルキル部分である場合、1から28の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和のアルキル部分であることが好ましい。より好ましくは、アルキル部分は2から12の炭素原子を有する。親油性部分が脂肪酸部分である場合、2から18の炭素原子を有する直鎖の飽和または不飽和の天然脂肪酸部分であることが好ましい。より好ましくは、脂肪酸部分は3から14の炭素原子を有する。最も好ましくは、脂肪酸部分は少なくとも4、5または6の炭素原子を有する。
本発明のこれらの実施形態により、スペーサー部分のG、G’およびG’’は、当業者に理解されるようなスペーサー部分である。スペーサー部分は、糖、コレステロールおよびグリセリンの部分からなる群より選択されることが好ましい。好ましくは、これらの実施形態のオリゴマーはスペーサー部分を含まない(即ち、k、mおよびnは0であることが好ましい)。
本発明のこれらの実施形態により、リンカー部分Lは、当業者に理解されるように、該薬と該オリゴマーを結合するために用いられる。リンカー部分はアルキル部分および脂肪酸部分からなる群より選択されることが好ましい。
本発明のこれらの実施形態により、末端部分は、好ましくはアルキルまたはアルコキシの部分であり、より好ましくは低級アルキルまたは低級アルコキシの部分である。最も好ましくは、末端部分はメチルまたはメトキシである。末端部分はアルキルまたはアルコキシの部分であることが好ましいが、末端部分は、糖、コレステロール、アルコール、および脂肪酸を含むが、これらに限定されない、当業者に理解される種々の部分であってよいことが理解されるべきである。
本発明のこれらの実施形態により、式Aの構造の括弧で囲まれた部分により表されるオリゴマーは、カルシトニン薬に共有結合する。ある実施形態において、カルシトニン薬は加水分解性結合(例えばエステル結合またはカーボネート結合)を利用してオリゴマーと結合する。加水分解性結合はプロドラッグとして作用するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供することができる。1例において、例えばカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが不活性である場合(即ち、該コンジュゲートがカルシトニン薬の一次作用機構を通じて身体に影響を及ぼす能力を欠失する)、1つ以上のオリゴマーがそれらの個別のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートから開裂し、活性薬物を提供するので、加水分解性結合は、所定の期間にわたってカルシトニン薬を投与する徐放性効果または制御放出の効果を提供することができる。他の実施形態において、カルシトニン薬は非加水分解性結合(例えば、カルバメート結合、アミド結合、またはエーテル結合)を利用してオリゴマーと結合する。非加水分解性結合の使用は、長期間、好ましくは少なくとも2時間、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートが血流で循環できることが望ましい場合に、好ましいこともある。結合部分Bは、当業者に理解されるように、カルシトニン薬とオリゴマーとを共有結合するために用いられる様々な結合部分であってよい。結合部分は、共有結合、エステル部分、カーボネート部分、カルバメート部分、アミド部分および第二級アミン部分からなる群より選択されることが好ましい。
変数pは1からカルシトニン薬の求核性残基の数までの整数である。pが1を超える場合、1より多いオリゴマー(即ち、複数のオリゴマー)が該薬と結合する。本発明のこれらの実施形態により、複数のオリゴマーは同じである。複数のオリゴマーが該薬と結合する場合、1つ以上のオリゴマーが加水分解性結合で該薬と結合すること並びに1つ以上のオリゴマーが非加水分解性結合で該薬と結合することが好ましいかもしれない。または、複数のオリゴマーを該薬と結び付ける全ての結合は加水分解性であってよいが、例えば、1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解により該薬から速やかに取り外され、かつ1つ以上のオリゴマーが体内での加水分解により該薬から徐々に取り外されるような、様々な程度の加水分解性を有する。カルシトニン薬がサケ・カルシトニンである場合、pは、好ましくは1または2であり、より好ましくは2である。
オリゴマーは、求核性のヒドロキシル官能基および/またはアミノ官能基を含むがこれらに限定されないカルシトニン薬の様々な求核性残基でカルシトニン薬と結合し得る。カルシトニン薬がポリペプチドである場合、求核性ヒドロキシル官能基は例えばセリンおよび/またはチロシン残基で見出され、求核性アミノ官能基は例えばヒスチジンおよび/もしくはリシン残基で、ならびに/または1つ以上のポリペプチドのN末端で見出され得る。オリゴマーがカルシトニン・ポリペプチドの1つ以上のN末端に結合すると、結合は、好ましくは第二級アミンを形成する。カルシトニン薬がサケ・カルシトニンである場合、例えば、オリゴマーは、Lys11、Lys18および/またはN末端のアミノ官能基を含む、サケ・カルシトニンのアミノ官能基に結合し得る。1つ以上のオリゴマーはサケ・カルシトニンに結合し得るが、オリゴマーがLys11およびLys18のアミノ官能基に結合する場合、血清カルシウム低減能の向上など、より高い生物有効性がジコンジュゲート・サケ・カルシトニンで観察される。
混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は、種々の方法により合成され得る。例えば、カルボン酸およびポリエチレングリコールからなるオリゴマーの混合物は、オリゴマーの混合物を提供するのに十分な条件の下で、カルボン酸混合物をポリエチレングリコール混合物と接触させることにより合成される。次いで混合物のオリゴマーはカルシトニン薬と反応できるように活性化され、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートを提供する。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の1実施形態は、図3に図示され下記の実施例11〜18に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図4に図示され下記の実施例19〜24に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図5に図示され下記の実施例25〜29に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図6に図示され下記の実施例30〜31に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図7に図示され下記の実施例32〜37に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の更なる他の実施形態は図8に図示され下記の実施例38に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための更なる他の合成経路の実施形態は図9に図示され下記の実施例39に記載される。各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物を提供するための合成経路の他の実施形態は図10に図示され下記の実施例40に記載される。
各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマー混合物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供するのに十分な条件の下で、混合物中のそれぞれの薬物が同じ分子量を有するカルシトニン薬の混合物と反応する。好ましい合成は下記の実施例41に記載される。当業者に理解されるように、反応条件(例えば、選択されるモル比、溶媒混合物および/またはpH)は、カルシトニン薬の混合物と、各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物との反応から得られるカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物が、それぞれのコンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するコンジュゲートの混合物であるように制御できる。例えば、リシンのアミノ官能基でのコンジュゲーションは反応溶液のpHをリシンのpKaより下に維持することにより抑制できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、例えばHPLCを利用して分離および単離でき、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物、例えばモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲート混合物を提供し得る。特定の単離コンジュゲートのコンジュゲーションの程度(例えば、単離分子がモノ−、ジ−、またはトリ−コンジュゲートであるか否か)は、質量分析を含むがこれに限定されない、当業者に理解される種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。特定のコンジュゲート構造(例えば、オリゴマーがサケ・カルシトニンモノコンジュゲートのLys11、Lys18またはN末端にあるか否か)は、配列解析、ペプチド・マッピング、選択的酵素切断、および/またはエンドペプチダーゼ切断を含むが、これらに限定されない、当業者に理解される種々の技法を利用して、測定および/または確認され得る。
当業者に理解されるように、カルシトニン薬の1つ以上の反応部位は、例えば、カルシトニン薬をN−tert−ブトキシカルボニル(t−BOC)またはN−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)(N−FMOC)などの適切な遮断試薬と反応させることにより、遮断できる。この過程は、例えばカルシトニン薬がポリペプチドであり、該ポリペプチドのN末端にオリゴマーを有する不飽和コンジュゲート(即ち、全ての求核性残基が結合するとは限らないコンジュゲート)を形成するのが望ましい場合に好ましいかもしれない。このような遮断後、遮断カルシトニン薬の混合物は混合物中の各オリゴマーが同じ分子量を有し且つ式Aのオリゴマーの構造を有する活性オリゴマーの混合物と反応し、1つ以上の求核性残基と結合するオリゴマーを有し且つ他の求核性残基と結合する遮断部分を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。コンジュゲーション反応後、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートは、当業者に理解されるように、脱遮断され得る。必要ならば、次にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は上述したように分離し、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を提供できる。または、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は脱遮断前に分離することができる。
本発明の実施形態により、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、従来の混合物の性質と比較すると、改良された性質を有することが好ましい。例えば、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は少なくとも5パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができることが好ましい。好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも10、11、12、13または14パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。より好ましくは、該コンジュゲートの混合物は、少なくとも15、16、17、18または19パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができ、最も好ましくは、該コンジュゲートの混合物は少なくとも20パーセントまで血清カルシウム濃度を下げることができる。
他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性とそれぞれ比較すると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。キモトリプシンまたはトリプシンに対する耐性は、試験される分子が下記の実施例51で概説される手法と類似する手法を用いて適用酵素で分解される際に残存する百分率に相当する。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約15パーセント高く、最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のキモトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約10パーセント高い。より好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約20パーセント高い。最も好ましくは、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のトリプシンによる分解に対する耐性は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬混合物のトリプシンによる分解に対する耐性より約30パーセント高い。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン−オリゴマーコンジュゲート混合物は、オリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より高い生物有効性を有することが好ましい。特定化合物の生物有効性はその曲線下面積(AUC)値に相当する。好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約5パーセント高い。より好ましくは、該混合物の生物有効性はオリゴマーと結合しないカルシトニン薬の生物有効性より約10パーセント高い。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビボ活性より高いインビボ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、例えばH.R.Allcock & F.W.Lampe,CONTEMPORARY POLYMER CHEMISTRY 394−402(2d.ed.,1991)に記載されるゲル透過クロマトグラフィーなどのサイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のインビトロ活性より高いインビトロ活性を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物のキモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性と比べると、キモトリプシンおよび/またはトリプシンによる分解に対する耐性が増すことが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。
更なる他の例として、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と同じ数平均分子量を有する多分散のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の被験者間変動より低い被験者間変動を有することが好ましい。当業者に理解されるように、混合物の数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィーを含むが、これに限定されない種々の方法により測定することができる。被験者間変動は、当業者に理解されるように、種々の方法により測定することができる。被験者間変動は下記の通りに計算されることが好ましい。用量反応曲線下面積(AUC)(即ち、用量反応曲線と基線値との間の面積)は個々の被験者について測定される。全被験者の平均AUCは、各被験者のAUCを合計し、その和を被験者数で割ることにより決定される。次に、被験者のAUCと平均AUCとの差の絶対値が各被験者について決定される。次いで、得られた差の絶対値は合計され、被験者間変動を表す数値が得られる。低い値は低い被験者間変動を表し、高い値は高い被験者間変動を表す。
本発明の実施形態による、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、上述の向上した性質2つ以上を有することが好ましい。より好ましくは、本発明の実施形態による、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、上述の向上した性質3つ以上を有する。最も好ましくは、本発明の実施形態による、混合物中の各コンジュゲートが同じ分子量を有し且つ式Aの構造を有するカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、上述の向上した性質4つ以上を有する。
本発明の実施形態によるコンジュゲート混合物を含む薬学的組成物も提供される。上述したカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、既知の技法に従って、薬学的担体中の投与用に製剤され得る。例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(9th Ed.1995)を参照のこと。本発明の実施形態による薬学的組成物の製造において、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、通常、特に薬学的に許容し得る担体と混合される。担体は、無論、薬学的組成物の任意の他成分と適合できる意味で許容されるべきであり、患者に有害であるべきでない。担体は固体または液体または両方であってよく、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物と共に、単位投与剤形、例えば錠剤として製剤されることが好ましい。該剤形は約0.01または0.5重量%から約95または99重量%のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物を含み得る。薬学的組成物は、1つ以上の副成分を任意に含む該構成要素を混合するステップを含むが、これに限定されない薬学の周知技法のいずれかにより調製され得る。
本発明の実施形態による薬学的組成物は、経口、直腸、局所、吸入(例えば、エアロゾルで)、口内(例えば、舌下)、膣、非経口(例えば、皮下、筋内、皮内、関節内、胸膜腔内、腹腔内、大脳内、動脈内、または静脈内)、局所(即ち、気道面を含む皮膚および粘膜の両面)および経皮投与に適した組成物を含むが、所与の任意の事例で最も適切な経路は、治療される状態の性質および重症度ならびに使用される特定のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の性質に依存するだろう。
経口投与に適した薬学的組成物は、カプセル、カシェ剤、ロゼンジ、または錠剤などの個別単位で提示され得る。該単位のそれぞれは、粉末もしくは顆粒として;水性もしくは非水性の液体の溶液もしくは懸濁液として;または水中油乳剤もしくは油中水乳剤として、規定量のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を含む。このような製剤は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物と適切な担体(上記の1つ以上の副成分を含み得る)とを結び付けるステップを含む任意の適切な薬学方法により調製され得る。一般に、本発明の実施形態による薬学的組成物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物を液体担体または微細に分割された固体担体または両方と均一に且つ密に混合した後、必要な場合は、生じた混合物を成形することにより調製される。例えば、錠剤は、任意には1つ以上の副成分とともに、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物を含む粉末または顆粒を圧縮または成形することにより調製され得る。圧縮錠剤は、任意には結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、および/または表面活性/分散剤と混合した粉末または顆粒など、フリーフロー剤形の混合物を適切な機械で圧縮することにより調製され得る。成形錠剤は不活性液体結合剤で湿した粉末化合物を適切な機械で成形することにより作製され得る。
口内(舌下)投与に適した薬学的組成物は、風味付けされた基剤、通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカントにカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を含むロゼンジ、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアなどの不活性基剤にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を含むトローチを含む。
非経口投与に適した本発明の実施形態による薬学的組成物は、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の水性および非水性の滅菌注射溶液を含む。この調製物は対象とするレシピエントの血液と等張であることが好ましい。これらの調製物は、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および該組成物を対象レシピエントの血液と等張にさせる溶質を含み得る。水性および非水性の滅菌懸濁液は懸濁剤および増粘剤を含み得る。該組成物は、単回投薬(unit/dose)または複数回投薬(multi−dose)の容器で、例えば密閉されたアンプルおよび水薬瓶で提示され得る。該組成物は、使用直前に、滅菌液体担体、例えば生理食塩水または注射用水の添加だけが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存され得る。即席の注射溶液および懸濁液は、前述した種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製され得る。例えば、密閉容器に単位投与剤形のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物を含む、注射可能な安定した滅菌組成物が提供され得る。カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は、被験者への注射に適した液体組成物を形成するために、薬学的に許容し得る適切な担体を用いて再構成できる凍結乾燥の剤形で提供される。単位投与剤形は通常約10mgから約10gのカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を含む。カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物は実質的に水に不溶性である場合、生理学的に許容される十分な量の乳化剤が、水性担体にカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物を乳化するのに十分な量で使用され得る。このような有用な乳化剤の1つはホスファチジル・コリンである。
直腸投与に適した薬学的組成物は単位投与座薬として提示されるのが好ましい。これらは、1つ以上の従来の固体担体と、例えばココアバターと、カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの混合物とを混合した後、生じた混合物を成形することにより調製され得る。
皮膚への局所適用に適した薬学的組成物は、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ジェル、スプレー、エアロゾル、または油の剤形をとることが好ましい。使用され得る単体は、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、経皮エンハンサー、およびそれらの二つ以上の組み合わせを含む。
経皮投与に適した薬学的組成物は、レシピエントの表皮と長時間密に接触したままであるように適応された個別パッチとして提示され得る。経皮投与に適した組成物はイオン泳動法(例えば、Pharmaceutical Research 3(6):318(1986)参照)によっても送達され得る。該組成物は通常カルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の任意に緩衝された水性溶液の剤形をとる。適切な製剤はクエン酸塩またはビス/トリス緩衝液(pH6)またはエタノール/水を含み、0.1Mから0.2Mの活性成分を含む。
有効量の該薬学的組成物を投与することにより該治療の必要性がある被験者の骨障害を治療する方法も提供される。骨障害は、好ましくは過剰な破骨細胞骨吸収および/または高カルシウム血清効果を特徴とする。本発明の方法により治療および/または予防され得る骨障害は、骨粗しょう症、パジェット病、および高カルシウム血症を含むが、これらに限定されない。
本発明はさらに本発明のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲートの有効量を投与することにより該治療の必要性がある被験者の疼痛を治療する方法を提供する。本明細書で用いられるように、「疼痛を治療する」とは、痛覚に悩むもしくは経験する被験者、または疼痛もしくは痛覚を経験する危険性のある被験者に鎮痛効果を与える任意の種類の作用または機構を指し、痛覚もしくは疼痛の申告を減少させるステップまたは痛覚の進行もしくは疼痛の申告を遅らせるステップを含む。疼痛は、本明細書に記載の方法により、本発明の組成物を投与することにより治療され(例えば疼痛症状の完全なまたは部分的な撲滅により)、そのことは、痛覚または疼痛の申告もしくは知覚を定量的にまたは定性的に測定するよう設計された当分野で公知のアッセイにより測定することができる。痛覚または疼痛の申告は、本発明が属する分野の当業者に理解されるプロトコルにより評価できる。例えば、疼痛は、一方の端を「無疼痛」とし他方の端を「想像できる最悪の疼痛」とした10cmの直線を含む視覚的アナログ評価スケール(VAS)を用いて定量的に評価され得る。または、機械的なVAS装置(計算尺型装置)が疼痛を評価するために使用できる。術後の疼痛は該直線または機械的VASのいずれかを用いて評価できる。「疼痛を治療する」という語句は、痛覚または疼痛の申告の発症を予防するための被験者の予防的治療をさらに含む。従って、疼痛の治療は、痛覚または疼痛の申告の完全および/または部分的な撲滅を含み得る。例えば、治療は、感知される疼痛の強度および/または不快感を減少させることを含む痛覚および/または疼痛の症状のあらゆる減少を含み得る。
本明細書で用いられるように、「疼痛」はあらゆる種類の疼痛を指し、本発明の方法および組成物は特定の種類の疼痛または本明細書に記載される二種類以上の疼痛の感覚および/または申告を緩和および/または軽減するために被験者を治療することを対象とする。疼痛は急性または慢性の疼痛であり得る。本明細書に記載される疼痛は、不快、過敏、火傷様痛(burning)、圧迫感(pinching)、刺痛(stinging)などの感覚を含み得る。本発明により治療できる種類の疼痛例は、炎症、内臓痛、神経因性疼痛、腰痛、切開痛(切開による疼痛または切開により惹起される疼痛)、術後の疼痛、末梢性疼痛(即ち、筋、腱など、または末梢神経自体に起因する疼痛)、中枢性疼痛および脊椎痛(即ち、中枢神経系の病理から生じる疼痛)、および術後の切開痛、ならびに文献に記載されるように現在知られる又は後に同定される他の種類の疼痛を含むが、これらに限定されない。さらに、「疼痛」という用語は侵害受容性疼痛または痛覚も指す。
本明細書で用いられる「有効量」は、所望する治療効果を生じるのに十分な本発明の化合物または組成物の量を指す。有効量は、被験者の年齢および生理的状態、該障害の重症度、治療期間、任意の併用療法の性質、使用される薬学的に許容し得る担体、ならびに当業者の知識および技能の範囲内にある同様の因子に応じて変化するであろう。任意の個別事例における適切な「有効量」は、適切な教科書および文献を参照することにより並びに/またはルーティーンの実験を用いることにより、当業者によって決定され得る(例えば、Remington,The Science And Practice of Pharmacy(9th Ed.1995)を参照)。
その使用が本発明の範囲内にある任意のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の有効量は、混合物毎に、患者毎に、若干変化し、患者の年齢および状態ならびに送達経路などの因子に応じて変化するであろう。このような用量は当業者に公知の常套的な薬学的手法に従って決定できる。一般命題として、約0.1mg/kgから約50mg/kgの用量が治療効力を有するであろう。全ての重量はカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物の重量に基づいて計算される。高濃度での毒性の懸念は、約10mg/kgまで等の低レベルまで静脈投与を限定し得る。全ての重量は活性基剤の重量に基づいて計算される。約10mg/kgから約50mg/kgの用量は経口投与に用いられ得る。通常、約0.5mg/kgから約5mg/kgの用量は筋内注射に使用され得る。投与頻度は通常1日当たり1、2、もしくは3回であるか又は該状態を調節するのに必要な回数である。または、該薬−オリゴマーコンジュゲートは持続注入により投与され得る。治療期間は治療される骨障害の種類に応じて変化し、患者の寿命と同じ長さのこともある。
本発明の実施形態によるコンジュゲート混合物を合成する方法も提供される。下記の合成経路の実施形態は単分散混合物の合成を対象とするものであるが、同様な合成経路が本発明の実施形態による他のカルシトニン薬−オリゴマーコンジュゲート混合物を合成するために利用することができる。
ポリエチレングリコール部分を含むポリマーの実質的に単分散の混合物は反応1:
で図示されるように提供される。
R1はHまたは親油性部分である。R1は、好ましくは、H、アルキル、アリールアルキル、芳香族部分、脂肪酸部分、脂肪酸部分のエステル、コレステリル、またはアダマンチルである。R1は、より好ましくは、H、低級アルキル、または芳香族部分である。R1はH、メチル、またはベンジルであることが最も好ましい。
式Iにおいて、nは1から25である。好ましくはnは1から6である。
X+は陽イオンである。好ましくは、X+は、強塩基など、PEGのヒドロキシル部分をイオン化できる化合物中の任意の陽イオンである。陽イオンの例は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、セシウムイオンおよびタリウムイオンを含むが、これらに限定されない。
R2はHまたは親油性部分である。R2は直鎖または分岐のアルキル、アリールアルキル、芳香族部分、脂肪酸部分、または脂肪酸部分のエステルであることが好ましい。R2は、低級アルキル、ベンジル、1から24の炭素原子を有する脂肪酸部分、または1から24の炭素原子を有する脂肪酸部分のエステルであることがより好ましい。R2は、メチル、1から18の炭素原子を有する脂肪酸部分、または1から18の炭素原子を有する脂肪酸部分のエチルエステルであることが最も好ましい。
式IIにおいて、mは1から25である。好ましくは、mは1から6である。
Msはメシラート部分(即ち、CH3S(O2)−)である。
反応1で図示するように、式Iの構造を有する化合物の混合物は、式IIの構造を有する化合物の混合物と反応し、ポリエチレングリコール部分を含み且つ式IIIの構造を有するポリマーの混合物を提供する。式Iの構造を有する化合物の混合物は実質的に単分散の混合物である。好ましくは、式Iの化合物の混合物において少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有し、より好ましくは、式Iの化合物の混合物は単分散の混合物である。式IIの化合物の混合物は実質的に単分散の混合物である。好ましくは、式IIの化合物の混合物において少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有し、より好ましくは、式IIの化合物の混合物は単分散の混合物である。式IIIの化合物の混合物は実質的に単分散の混合物である。好ましくは、式IIIの化合物の混合物において少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有する。より好ましくは、式IIIの化合物の混合物は単分散の混合物である。
反応1は約0℃から約40℃の間で実施されることが好ましく、より好ましくは約15℃から約35℃の間で実施され、最も好ましくは室温(約25℃)で実施される。
反応1は、当業者に理解されるように、様々な期間実施され得る。反応1は、約0.25、0.5または0.75時間から約2、4または8時間の期間、実施されることが好ましい。
反応1は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ペンタン、N−メチルピロリジノン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、またはこれらの混合物など(これらに限定されない)の非プロトン溶媒中で実施されることが好ましい。より好ましくは、溶媒はDMF、DMAまたはトルエンである。
式IIの化合物に対する式Iの化合物のモル比は約1:1を上回ることが好ましい。モル比は少なくとも約2:1であることがより好ましい。過剰の式Iの化合物を供給することにより、式IIの化合物の実質的に全てが反応することを保証でき、以下に論じるように式IIIの化合物の回収に役立ち得る。
式Iの化合物は反応2:
で図示するように調製されることが好ましい。
R1およびX+は上述する通りであり、式IVの化合物の混合物は実質的に単分散であり、好ましくは、式IVの化合物の混合物において少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有し、より好ましくは、式IVの化合物の混合物は単分散の混合物である。
式IVの化合物のPEG部分のヒドロキシル部分をイオン化できる種々の化合物は、当業者に理解されるであろう。ヒドロキシル部分をイオン化できる化合物は、好ましくは強塩基である。より好ましくは、ヒドロキシル部分をイオン化できる化合物は、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムt−ブトキシド、カリウムt−ブトキシド、ブチルリチウム(BuLi)、およびリチウムジイソプロピルアミンからなる群より選択される。ヒドロキシル部分をイオン化できる化合物は、より好ましくは水素化ナトリウムである。
式IVの化合物に対する式IVの化合物のPEG部分のヒドロキシル部分をイオン化できる化合物のモル比は少なくとも約1:1であるのが好ましく、少なくとも約2:1であることがより好ましい。過剰の該ヒドロキシル部分をイオン化できる化合物を供給することにより、式IVの化合物の実質的に全てが反応して式Iの化合物を提供することを保証する。従って、式IVの化合物および式Iの化合物の両方が反応生成物の混合物に存在する場合に生じ得る分離困難が回避できる。
反応2は約0℃から約40℃の間で実施されることが好ましく、より好ましくは約0℃から約35℃の間で実施され、最も好ましくは約0℃から室温(約25℃)の間で実施される。
反応2は、当業者に理解されるように、様々な期間実施され得る。反応2は、約0.25、0.5または0.75時間から約2、4または8時間の期間、実施されることが好ましい。
反応2は、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルリン酸トリアミド、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、トルエン、ベンゼン、ヘキサン、ペンタン、N−メチルピロリジノン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、またはこれらの混合物など(これらに限定されない)の非プロトン溶媒中で実施されることが好ましい。より好ましくは、溶媒はDMF、ジクロロメタンまたはトルエンである。
式IIの化合物は反応3に図示されるように調製されることが好ましい。
R2およびMsは上述の通りであり、式Vの化合物は式Vの化合物の実質的に単分散の混合物として提示され、好ましくは、式Vの化合物の混合物において少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有し、より好ましくは、式Vの化合物の混合物は単分散の混合物である。
Qはハロゲン化物であり、好ましくは塩素またはフッ素である。
CH3S(O2)Qはハロゲン化メタンスルホニルである。ハロゲン化メタンスルホニルは塩化メタンスルホニルまたはフッ化メタンスルホニルであることが好ましい。より好ましくは、ハロゲン化メタンスルホニルは塩化メタンスルホニルである。
式Vの化合物に対するハロゲン化メタンスルホニルのモル比は約1:1を超えることが好ましく、少なくとも約2:1であることがより好ましい。過剰のハロゲン化メタンスルホニルを供給することにより、式Vの化合物の実質的に全てが反応して式IIの化合物を提供することを保証する。従って、式Vの化合物および式IIの化合物の両方が反応生成物の混合物に存在する場合に生じ得る分離困難が回避できる。
反応3は約−10℃から約40℃の間で実施されることが好ましく、より好ましくは約0℃から約35℃の間で実施され、最も好ましくは約0℃から室温(約25℃)の間で実施される。
反応3は、当業者に理解されるように、様々な期間実施され得る。反応3は、約0.25、0.5または0.75時間から約2、4または8時間の期間、実施されることが好ましい。
反応3は、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノ−n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、モノシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、またはこれらの混合物を含むが、これらに限定されない脂肪族アミンの存在下で実施されることが好ましい。より好ましくは、脂肪族アミンはトリエチルアミンなどの第三アミンである。
当業者に理解されるように、式Vの化合物の実質的に単分散の様々な混合物が市販されている。例えば、R2がHまたはメチルである場合、式Vの化合物はPEGまたはmPEGの化合物であり、それぞれAldrich of Milwaukee,Wisconsin;Fluka of Switzerland、および/またはTCl America of Portland,Oregonから市販されている。
R
2が例えば高級アルキル、脂肪酸、脂肪酸のエステル、コレステリル、またはアダマンチルなどの親油性部分である場合、式Vの化合物は当業者に理解されるような種々の方法により提供され得る。式Vの化合物は下記:
の通りに提供されることが好ましい。
R2は親油性部分であり、好ましくは高級アルキル、脂肪酸エステル、コレステリル、またはアダマンチルであり、より好ましくは脂肪酸の低級アルキルエステルであり、最も好ましくは1から18の炭素原子を有する脂肪酸のエチルエステルである。
R3は、H、ベンジル、トリチル、テトラヒドロピラン、または当業者に理解されるような他のアルコール保護基である。
X2 +はX+に関して上述する陽イオンである。
mの値は上述する通りである。
反応4に関して、式VIの化合物の混合物は、反応1に関して上述する反応条件と同様な条件下で式VIIの化合物の混合物と反応する。式VIの化合物の混合物は実質的に単分散の混合物である。式VIの化合物の混合物における少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有する。より好ましくは、式VIの化合物の混合物は単分散の混合物である。式VIIの化合物の混合物は実質的に単分散の混合物である。好ましくは、式VIIの化合物の混合物における少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有する。より好ましくは、式VIIの化合物の混合物は単分散の混合物である。
反応5に関して、式VIIIの化合物は、当業者に理解されるような種々の方法により、加水分解されてR3部分をアルコールに変換し得る。R3がベンジルまたはトリチルである場合、該加水分解は当業者に知られるように、パラジウム炭触媒の存在下でH2を用いて実施されることが好ましい。無論、R3がHである場合、反応5は不必要である。
式VIの化合物は市販されているか又は反応3に関して上述されるようにして提供することができる。式VIIの化合物は反応2に関して上述されるようにして提供することができる。
PEG部分を含み且つ上記の式IIIの構造を有するポリマーの実質的に単分散の混合物は、PEG鎖を伸長するために、PEG部分を含む実質的に単分散の他のポリマーとさらに反応し得る。例えば、下記のスキーム:
が用いられ得る。
Ms、mおよびnは反応1に関して上述する通りであり;pはnおよびmと同様であり、X2 +は反応1に関して上述されたX+と同様である。Qは反応3に関して上述される通りである。R2は反応1に関して上述する通りであり、好ましくは低級アルキルである。R1はHである。反応6は反応3に関して上述されたのと同様な様式で実施されることが好ましい。反応7は反応1に関して上述されたのと同様な様式で実施されることが好ましい。式IIIの化合物の混合物における少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有し、より好ましくは、式IIIの化合物の混合物は単分散の混合物である。式Xの化合物の混合物は実質的に単分散の混合物である。好ましくは、式Xの化合物の混合物における少なくとも約96、97、98または99パーセントの化合物が同じ分子量を有し、より好ましくは、式Xの化合物の混合物は単分散の混合物である。
本発明の実施形態による工程は、これから記載する図1に示すスキームにより図示される。実質的に単分散のポリエチレングリコールを含むオリゴマーの合成は、実質的に単分散のポリエチレングリコールのモノベンジルエーテル(1)の調製により開始する。過剰の、市販の実質的に単分散のポリエチレングリコールは、Coudert et al(Synthetic Communications,16(1):19−26(1986)により記載されるように、水性水酸化ナトリウムの存在下で塩化ベンジルと反応する。次に、1のナトリウム塩はNaHの添加により調製され、このナトリウム塩はヒドロキシアルカン酸のエステル(2)から合成されるメシラートと反応する。メシラートの置換の生成物(3)は接触水素化により脱ベンジル化されアルコール(4)を得る。このアルコールのメシラート(5)は、塩化メタンスルホニルの添加により調製され、実質的に単分散のポリエチレングリコール誘導体のモノメチルエーテルのナトリウム塩との反応において求電子試薬として使用され得ることにより、該オリゴマーのポリエチレングリコール部分を所望の長さまで伸長し、長いエステル(6)を得る。該エステルは、水性塩基中で該酸(7)に加水分解され、カルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドとの反応により活性エステル(8)に変換され得る。図1に図示されるオリゴマーはN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて活性化されるが、本発明のオリゴマーを活性化するために、パラ−ニトロフェニルクロロホルメート、フェニルクロロホルメート、3,4−フェニルジクロロホルメート、および3,4−フェニルジクロロホルメートなどの活性フェニルクロロホルメート;トレシル化(tresylation);およびアセタール形成を含むが、これらに限定されない種々の他の試薬を使用できることは理解されるべきである。
さらに図1に言及すると、qは1から24である。好ましくは、qは1から18であり、qは4から16であることがより好ましい。R4は加水分解を受けることができる部分であり、カルボン酸を提供する。R4は好ましくは低級アルキルであり、より好ましくはエチルである。変数のnおよびmは反応1に関して上述したものである。
本明細書に記載の手法で使用される全ての出発物質は市販されているか又は市販の出発物質を用いて当分野で公知の方法により調製可能である。
本発明はこれから下記の実施例に関して記載する。これらの実施例は本発明の態様を例証する目的のものであり、特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を制限するものでないことが理解されるべきである。
[実施例]
[実施例1から実施例10]
実施例1から10の反応は、他に明記しない限り、マグネチックスターラーを使用して窒素下で実施した。「ワークアップ(work−up)」は、有機溶媒での抽出、飽和NaCl溶液を用いた有機相の洗浄、乾燥(MgSO4)、および蒸発(回転式蒸発器)を意味する。薄層クロマトグラフィーはシリカゲル60°F−254で事前に塗布したMerckガラスプレートで実施し、スポットをヨード蒸気により可視化した。全ての質量スペクトルは、Macromolecular Resources Colorado State University,COにより測定され、m/z(相対強度)の大きさで報告される。元素分析および融点はGalbraith Laboratories,Inc.,Knoxville,TNにより実施された。実施例1から10は図2で図示されるスキームについて言及する。