JP4828668B2 - 杭打ち工法および加振制御方法 - Google Patents
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Description
本願は、2010年01月15日に、日本に出願された特願2010−007054号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
また、このような共振杭打ち工法としては、主に1/4波長の共振モードを利用して杭頭が節となる共振振動により打設する工法(以下、単に杭頭節工法という)(例えば、特許文献1〜3参照)と、主に1/2波長の共振モードを利用して杭頭が腹となる共振振動により打設する工法(以下、単に杭頭腹工法という)(例えば、特許文献4参照)とが知られている。
また、特許文献4記載の杭頭腹工法では、杭頭節工法と比べて杭の先端(以下、単に杭先端という)の振動応答が小さくなるため、杭頭節工法と比べて施工能力が小さいという問題点がある。ここで、先端とは、地盤に埋まる側の端部である。
さらに、杭頭節工法および杭頭腹工法では、共振周波数が杭の長さのみで決定されるため、打設することができる杭の長さ範囲が制限され、汎用性が低いという問題点がある。
すなわち、
(1)本発明の一態様に係る杭打ち工法は、杭の長さ方向の共振振動を利用して杭を地盤に打設する杭打ち工法であって、前記杭の杭頭に前記杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下の荷重を加え、前記杭頭が腹となる共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する。
(3)上記(1)または(2)に記載の杭打ち工法は、前記杭を把持する杭把持装置に前記杭頭を把持させ;前記杭把持装置に把持された前記杭頭に前記荷重を加える;ことが好ましい。
(4)上記(3)に記載の杭打ち工法は、前記杭把持装置が、本体部と、前記本体部に設けられ前記杭の前記杭頭を囲むように配置された把持部とを備え;前記本体部の内部に錘が配置されており;前記錘と前記杭把持装置との質量の総和が前記杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下である;ことが好ましい。
(5)本発明の一態様に係る加振制御方法は、共振振動を利用して杭を地盤に打設するときの前記杭への加振を制御する加振制御方法であって、前記杭の打ち込みの深さおよび前記地盤の硬さのうちの少なくとも一方に基づいて、前記杭の杭頭に加える荷重を前記杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下の範囲で調整し;前記杭頭が腹となる共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する。
(6)上記(5)に記載の加振制御方法は、前記共振モードが、1/2波長の共振モード及び1/1波長の共振モードであり;前記杭の長さに基づいて、前記1/2波長の共振モードまたは前記1/1波長の共振モードを選択し;この選択した前記共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する;ことが好ましい。
その結果、本発明者は、荷重が大きくなるほど共振周波数が低くなり、杭先端(杭頭)の振動応答が大きくなり、さらに、杭頭が節となる共振振動よりも杭頭のひずみが小さくなることを見出した。また、杭頭に加える荷重が杭の質量の3倍を超えると、共振周波数がほとんど変化しないことを見出した。
本発明は、以上のような知見により完成したものである。
さらに、共振周波数を杭頭に付与する荷重で調整できるため、打設することができる杭の長さ範囲が制限されることなく、杭打ち工法の汎用性を向上することができる。このとき、共振杭打ち工法共通の利点である地盤振動の低減効果は変わらない。
なお、本発明の一態様にかかる杭打ち工法では、杭頭に杭の質量の0.26倍以上かつ1.1倍以下の荷重を加えることがより好ましい。また、本発明の一態様にかかる加振制御方法では、杭頭に加える荷重を前記杭の質量の1.1倍までの範囲で調整することがより好ましい。
荷重が1.1倍を超えると、荷重の増加量に対する共振周波数の変化量が1.1倍以下の場合と比べて小さくなり顕著な効果が見られなくなるとともに、加振対象の総質量が増加してしまい杭打ち機の負荷が大きくなる場合がある。
また、杭Pの長さが長く、1/2波長の共振モードの共振周波数では地盤振動の低減効果が小さいと判断した場合、杭Pを1/1波長の共振モードで共振振動させるように加振機で加振させる。このように、杭の長さに応じて、共振モードを選択して加振することにより、杭の長さを変更しなくても、杭の共振周波数が高くなり地盤振動が小さくなる。
上記(4)に記載の杭打ち工法によれば、本体部の内部に錘が配置されているため、錘を変えることにより、杭の杭頭に加える荷重を杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下となるように、調整することが可能となる。これにより、簡易な工法により、共振周波数帯域が高く、振動応答を大きくすることが可能となる。
図1は、本実施形態の杭打ち機の概略構成を示す側面図である。
図1において、本実施形態の杭打ち機1は、共振振動を利用して杭Pを地盤Gに打設する装置である。この杭打ち機1は、杭Pを加振する加振機2と、杭把持装置3と、図示しない制御装置とを備えている。
杭把持装置3は、加振機2に取り付けられて、杭Pの杭頭Phを把持する。制御装置(図示略)は、杭打ち機1全体を制御する。また、杭Pの地盤Gに埋まる側の端部が杭先端Pfである。
杭把持装置3は、内部に空洞を有し略箱状の本体部31と、杭Pの杭頭Phを把持する複数の把持部32とを備えている。把持部32は、杭Pの杭頭Phを囲むように配置され、本体部31から下方に突出している。この把持部32は、制御装置(図示略)により杭頭Phを把持するように動作する。
本体部31の内部には、あらかじめ準備されている複数の錘33のうちのいずれか1個あるいは複数個が設置される。この1個あるいは複数の錘33の質量と杭把持装置3(本体部31及び把持部32を含む)との質量の和が杭Pの質量の0.26倍から3倍の範囲に収まるように、錘33の質量が設定されている。このような錘33のうちのいずれか1個あるいは複数個が本体部31内に設置されると、杭頭Phには、杭Pの質量の0.26倍以上かつ3倍以下の荷重が付加される(加えられる)。つまり、杭把持装置3と錘33との質量の和が、前記の杭頭に付加する荷重に相当する。
まず、作業者は、地盤Gの硬さ、杭Pの打ち込み深さ(地盤Gから杭先端Pfまでの長さ、すなわち、目標打設深度を示す)に基づいて、適切な長さあるいは太さ(外径)の杭Pを選択して、杭把持装置3に把持させる。そして、1個あるいは複数の錘33の質量と杭把持装置3との質量の和が杭Pの質量の0.26倍から3倍の範囲となるように、杭Pの杭頭Phに付加する荷重を調整する。すなわち、適切な質量の錘33を杭把持装置3に設置する。
そして、作業者は、まず、杭打ち機1の制御装置を操作して加振機2を動作させる。次に、杭Pの質量の0.26倍から3倍の範囲内の荷重が付加された杭Pを1/2波長の共振モードの共振振動を発生させるような周波数で加振させて打設する。ここで、杭Pに付加する荷重は、杭Pの質量の0.26倍から1.1倍の範囲内がより好ましい。
このように、杭Pの杭頭Phに荷重を付加して加振することにより、杭Pの杭頭Phに荷重が付加されずに1/2波長の共振モードで共振振動する場合と比べて杭先端Pfの加速度応答が大きくなり、かつ、杭頭Phが節となるように共振振動する場合と比べて杭頭Phのひずみが小さくなった状態で打設される。
このように、杭Pの長さに応じて、共振モードを選択して加振することにより、杭Pの長さを変更しなくても、杭Pの共振周波数が高くなり地盤振動が小さくなる。
また、杭把持装置3に杭頭Phを把持させているため、容易に施工できる。
本実施例では、杭頭Phに荷重を付加することによる効果を確認した。
図2に示すように、杭Pの長さ方向に沿った5箇所に、加速度計Aを互いに等間隔になるように取り付けた。また、加振機2の先端に取り付けた杭把持装置3にこの杭Pを把持させた。さらに、杭把持装置3と錘33との質量の和を杭Pの質量で除算した値(以下、単に付加荷重比という)がそれぞれ以下の表1の値となるような錘33を、杭把持装置3に設置した。そして、加振機2のパワーを一定にして、杭Pに加振する周波数(以下、単に加振周波数という)を変化させていき、実施例1〜4における共振周波数と、加振時の杭先端Pfの加速度(以下、単に先端加速度という)との関係を調べた。
図3に示すように、付加荷重比が大きくなるほど、1/2波長共振周波数(1/2波長の共振モードにおける共振周波数)が低くなるとともに、先端加速度比が大きくなることが確認できた。また、1/4波長共振周波数(1/4波長の共振モードにおける共振周波数)については、付加荷重比が大きくなっても、あまり変化しないことが確認できた。
付加荷重比が1.1以下の場合には、付加荷重比が大きくなるほど1/2波長共振周波数が低くなるが、1.1を超えると、1/2波長共振周波数はほとんど変化しないことが確認できた。
前述した実測値の近似曲線は、理論値に対してやや大きな値を示し、特に質量比1.0以上の領域では5%ほどの乖離を示す。しかし、理論値および近似曲線は、何れも質量比の上昇に伴って一定の1/2波長共振周波数比に収斂する傾向を示しており、理論値によって前述した実測値に基づく近似曲線の正しさが裏付けられたと考えられる。
なお、理論値および近似曲線がそれぞれ質量比の上昇に伴って一定の周波数比に収斂するのは、荷重を付加しない場合の1/2波長共振から1/4波長共振に共振モードが移行していくことによると考えられる。
また、理論値に対して近似曲線が高い値を示すのは、実験時の装置の問題、例えば杭把持装置3に装着する際に、杭Pおよび錘33が厳密に垂直に設置できず、僅かに垂直方向からずれている等の理由によると考えられる。
杭Pのような一次元弾性体の共振モードは、波動方程式と境界条件とから求めることができる。
まず、次式の波動方程式が一般的に知られている。
また、長さ方向の変位uは、位置x及び時間tの関数を用いて次式のように表せる。なお、ωは角振動数、cは弾性波速度、CおよびDは係数である。
両端の境界条件が自由端の場合、ひずみは0であり、次式が成立する。
付加荷重のない端部(杭先端pf側、x=0)では、自由端であるため、前述した式(3)により次式が成立する。
付加荷重がある端部(杭頭ph側、x=l)では、式(6)から式(10)の各式から、次式が得られる。
また、この場合の振動モードは次式となる。
前述した実施例1〜4および比較例1において、各々の1/2波長共振周波数で、加振機2のパワーを一定にして、杭Pを加振した状態で地盤へ打設し、付加荷重と限界到達深度および打設速度との関係を調べた。
その結果、図5に示すように、付加荷重比が大きくなるほど、限界到達深度比が大きくなっていることが確認できた。
その結果、図6に示すように、付加荷重比が大きくなるほど、打設速度比が速くなっていることが確認できた。
ここでは、以下の表2に示すように、比較例1の1/2波長共振モード(以下、比較例2という)、実施例3の1/4波長共振モード(以下、比較例3という)、実施例3の1/2波長共振モード(以下、実施例5という)のそれぞれの条件での影響を比較した。
また、評価No.2に示すように、比較例2,3の共振振動が杭の長さのみに依存する。一方、実施例5では、杭把持装置3の質量により共振振動の周波数を制御できることが確認できた。
さらに、評価No.3,4に示すように、比較例3の共振周波数域では、25Hz〜127Hzであるのに対し、実施例5の共振周波数域では、37.5Hz〜190.5Hzである。したがって、実施例5では、1/4波長共振モード(比較例3)と比べて共振周波数が高く地盤振動の低減効果が高いという1/2波長共振モードの特性を維持していることが確認できた。
また、評価No.5,6,7に示すように、実施例5では、本来、1/4波長振動モード(比較例3)と比べて施工能力が低い1/2波長共振モードでありながら、荷重を付加することにより振動応答を大きくできる。したがって、施工速度や限界到達深度といった施工能力を改善できることが確認できた。
そして、評価No.8〜No.10に示すように、杭頭Phに生じるひずみに応じて杭把持装置3の把持力を設計するため、杭頭Phのひずみが大きいほど把持力の要求値が高くなるところ、実施例5では、把持力の要求値が1/4波長振動モード(比較例3)の半分程度であることから、杭打ち機1への負荷が大幅に軽減され、共振杭打ち工法の実現性が高いことが確認できた。
したがって、上記測定結果により、施工準備時間、共振周波数域、地盤振動の低減効果、施工速度、杭打ち機の耐久性のすべてが良好である結果を得ることができたのは、実施例5である。すなわち、杭Pの杭頭Phに杭Pの質量の0.77倍の荷重を付加することにより、杭先端Pfの加速度応答を大きくすることができ、施工能力を向上させることが可能となる。
また、本実施例では、杭Pの杭頭Phに杭Pの質量の0.77倍の荷重を付加した場合について説明したが、0.26倍以上かつ3.0倍以下でも同様の効果を得ることができた。
例えば、前記実施形態では、杭把持装置3に杭Pを把持させていたが、これのみに限らない。すなわち、加振機2の先端に錘33をボルト止めなどにより着脱自在に固定するとともに、錘33の先端に杭Pを着脱自在に固定してもよい。このような構成の場合、加振機2に錘33を介さずに杭Pを固定できるようにすれば、杭Pに付加する荷重を3倍までの間で調整することができる。また、杭Pの共振モードを1/2波長のみに設定可能にしてもよい。そして、制御装置により、地盤振動検出器で検出された地盤振動があらかじめ設定された基準値よりも大きいと判断した場合、杭Pの共振モードを1/2波長から1/1波長に自動的に変更する構成としてもよい。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的であり、本発明は限定されない。すなわち、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
P 杭
Ph 杭頭
G 地盤
Claims (6)
- 杭の長さ方向の共振振動を利用して杭を地盤に打設する杭打ち工法であって、
前記杭の杭頭に前記杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下の荷重を加え;
前記杭頭が腹となる共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する;
ことを特徴とする杭打ち工法。 - 前記共振モードが、1/2波長の共振モード及び1/1波長の共振モードであり;
前記杭の長さに基づいて、前記1/2波長の共振モードまたは前記1/1波長の共振モードを選択し;
この選択した前記共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する;
ことを特徴とする請求項1に記載の杭打ち工法。 - 前記杭を把持する杭把持装置に前記杭頭を把持させ;
前記杭把持装置に把持された前記杭頭に前記荷重を加える;
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の杭打ち工法。 - 前記杭把持装置が、本体部と、前記本体部に設けられ前記杭の前記杭頭を囲むように配置された把持部とを備え;
前記本体部の内部に錘が配置されており;
前記錘と前記杭把持装置との質量の総和が前記杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下である;
ことを特徴とする請求項3に記載の杭打ち工法。 - 共振振動を利用して杭を地盤に打設するときの前記杭への加振を制御する加振制御方法であって、
前記杭の打ち込みの深さおよび前記地盤の硬さのうちの少なくとも一方に基づいて、前記杭の杭頭に付加する荷重を前記杭の質量の0.26倍以上かつ3倍以下の範囲で調整し;
前記杭頭が腹となる共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する;
ことを特徴とする加振制御方法。 - 前記共振モードが、1/2波長の共振モード及び1/1波長の共振モードであり、
前記杭の長さに基づいて、前記1/2波長の共振モードまたは前記1/1波長の共振モードを選択し;
この選択した前記共振モードに対応する共振振動によって前記杭を加振する;
ことを特徴とする請求項5に記載の加振制御方法。
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