JP4828510B2 - コレステロール応答性評価試験用食品及びコレステロール応答性の評価方法 - Google Patents
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はじめて知る高コレステロール、主婦の友社、東京:64−73(2002)
コレステロール含有物及び酸性水中油型乳化食品を含み、
1食当たりのコレステロール含量が400mg以上であり、かつ1食当たりの脂質含量が20g以上であることができる。
コレステロール含有物を収容する第1容器と、
酸性水中油型乳化食品を収容する第2容器と、
を含み、
前記コレステロール含有物及び前記酸性水中油型乳化食品の混合物が、上記コレステロール応答性評価試験用食品である。
乾燥卵黄及び卵黄型マヨネーズを含み、
1食当たりの前記乾燥卵黄の含量が15〜20gであり、かつ、1食当たりの前記卵黄型マヨネーズの含量が40〜60gである。
乾燥卵黄を収容する第1容器と、
卵黄型マヨネーズを収容する第2容器と、
を含み、
前記乾燥卵黄及び前記卵黄型マヨネーズの混合物が、上記コレステロール応答性評価試験用食品である。
上記コレステロール応答性評価試験用食品を摂取した被験者から採取された血清中のコレステロール濃度を指標として、コレステロール応答性を評価することを含む。
本発明の一実施形態に係るコレステロール応答性評価試験用食品(以下単に「評価試験用食品」ともいう。)は、酸性水中油型乳化食品及びコレステロール含有物を含む。本実施形態に係る評価試験用食品では、酸性水中油型乳化食品とコレステロール含有物との配合割合を適宜調整することで、1食当たりのコレステロール含量と脂質含量とが特定割合となるように調整されている。
本発明における酸性水中油型乳化食品とは、食酢等の酸剤の添加によりpH値が酸性域にある水中油型の乳化食品一般をさし、代表的にはマヨネーズや各種のドレッシング類があげられる。酸性水中油型乳化食品中にコレステロール含有物が均一に分散し易く、かつ、全卵型マヨネーズよりもコレステロール及び脂質を多く含むため試験食1食当りの摂取量が少なく済み、被験者に負担とならない点で、酸性水中油型乳化食品は卵黄型マヨネーズであることが好ましい。なお、JAS規格では「マヨネーズ」は「卵黄又は全卵を使用し、かつ、必須原材料、卵黄、卵白、たん白加水分解物、食塩、砂糖類、香辛料、及び調味料(アミノ酸等)以外の原材料を使用していないもの」と定義されているが、本発明において「卵黄型マヨネーズ」とは、前記「マヨネーズ」の定義において卵黄を使用したものをいう。また、卵黄型マヨネーズで使用される卵黄は、他の卵由来の成分、例えば卵白等を商業的に許容される範囲で含んでいてもよい。
本発明におけるコレステロール含有物とは、食品への添加が許可されており、コレステロールを含有する物であれば特に制限はなく、具体的には、例えば、いくら、卵、乾燥卵黄、レバー等が挙げられる。より少ない配合量で特定量のコレステロール含量を満たすことができ、酸性水中油型乳化食品中での分散性に優れ、かつ酸性水中油型乳化食品中とともに乳化物を構成することができる点で、コレステロール含有物は乾燥卵黄であることが好ましい。
本発明におけるコレステロール応答性は、例えば、高比重リポ蛋白(HDL)、低比重リポ蛋白(LDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)及びカイロミクロン等のリポタンパク質、前記VLDL及びカイロミクロンが血中のリポタンパク質リパーゼにより分解されて生じるレムナント様リポタンパク質(RLP)に含まれるコレステロール(レムナント様リポタンパク質コレステロール:RLP)の濃度を測定した値を指標として用いればよい。このうち、コレステロール応答性評価を行うにあたっては、本実施形態に係る評価試験用食品に含まれるコレステロール中の含有割合が高く、血清中のコレステロール濃度をより正確に示すレムナント様リポタンパク質コレステロール濃度(RLP−C)をコレステロール応答性評価の指標として用いることが好ましい。
本実施形態に係る評価試験用食品は、後述するように、1食当たりのコレステロール含量が400mg以上である。1日当たりの好ましいコレステロール摂取量の上限が約700mgであり、好ましくは400〜600mgである。従来のコレステロール応答性を評価する方法はこの上限(700mg)に近いコレステロールを被験者に投与する必要があったが、本実施形態に係る評価試験用食品は乳化物の形態であることでコレステロールの体内への吸収率を高めることができることから、本実施形態に係る評価試験用食品1食当たりのコレステロール含量は、好ましくは600mg以下で足りる。
本実施形態に係る評価試験用食品は、1食当たりの脂質含量が20g以上であることが好ましく、20〜80gであることがより好ましく、20〜60gであることがさらに好ましい。本実施形態に係る評価試験用食品において、評価試験用食品1食当たりのコレステロール含量が400mg以上であることに加えて、1食当たりの脂質含量を20g以上とすることにより、体内へのコレステロールの吸収性をさらに高めることができる。
本実施形態に係る評価試験用食品の製造方法は特に限定されないが、例えば、コレステロール含有物及び酸性水中油型乳化食品等を予め攪拌混合した混合物として流通させる場合は、乾燥卵黄等のコレステロール含有物、卵黄型マヨネーズ等の酸性水中油型乳化食品、更に必要に応じて、調味料、香辛料、糖類、pH調整剤、保存料、キレート剤、その他の食品原料や食材を用意し、これらの原材料を、ミキサー等の攪拌混合機に投入し、常法により攪拌混合することにより、本実施形態に係る評価試験用食品を得ることができる。得られた評価試験用食品は、ポリエチレン製のパウチ等に充填後、好ましくは密封後、ヒートシールして容器詰めし、チルド温度や常温で流通させる容器詰め製品とすることができる。
本発明の一実施形態に係るコレステロール応答性評価試験用キットは、コレステロール含有物を収容する第1容器と、酸性水中油型乳化食品を収容する第2容器と、を含み、コレステロール含有物及び酸性水中油型乳化食品の混合物が本実施形態に係る評価試験用食品である。すなわち、この場合、コレステロール含有物及び酸性水中油型乳化食品をそれぞれ個別の容器(第1容器及び第2容器)に詰め、コレステロール応答性評価試験用キット(以下単に「評価試験用キット」ともいう。)として流通させることができる。
本実施形態に係る評価試験用食品によって、上述の作用効果が得られる理由は定かではないが、以下の作用機序が考えられる。まず、コレステロールは摂取すると胃内で乳化され、その後、小腸まで運ばれ、胆汁酸などとミセルを形成し小腸吸収細胞の手前に近づく。そこで単量体として放出された前記コレステロールは、小腸微絨毛膜にある受容体を介して小腸吸収細胞内に取り込まれる。取り込まれたコレステロールは、コレステロールエステルへと変換された後、アポリポタンパク質の一種であるApoB48などと共にカイロミクロンを形成しリンパ管へ放出される。その後、胸管を介して血中に放出されたカイロミクロンはリポタンパク質リパーゼの作用により代謝され、カイロミクロンレムナントへと変換されて、肝臓にあるレムナント受容体を介して肝臓に取り込まれる。
本発明の一実施形態に係るコレステロール応答性の評価方法(以下単に「評価方法」ともいう。)は、本実施形態に係る評価試験用食品を摂取した被験者から採取された血清中のコレステロール濃度を指標として、コレステロール応答性を評価することを含む。
以下、本発明のコレステロール応答性評価試験用食品及びコレステロール応答性の評価方法について、実施例、比較例及び試験例を挙げて具体的に説明する。なお、本発明はこれらに限定するものではない。
まず、酸性水中油型乳化食品として卵黄型マヨネーズ(植物油脂70%、液卵黄15%、食酢12%、調味料及び香辛料3%から常法により調製したもの、pH4.0)45部、コレステロール含有物として乾燥卵黄粉末((株)全農・キユーピー・エツグステーシヨン製)17部を準備した。次に、これらの原料をミキサー(ホバート社製)に投入して攪拌混合することで、スイートポテト状の実施例1のコレステロール応答性評価試験用食品を得た。
試験例1では、実施例1のコレステロール応答性評価試験用食品を摂取した被験者から採取された血清中のコレステロール(レムナント様リポタンパク質コレステロール)濃度を指標として、コレステロール応答性を評価した。
試験例1では、健常人(20〜60歳の血清総コレステロール濃度が200〜260mg/dlの男性53名)を被験者とした。次に、前記被験者を12時間以上絶食後、実施例1で得られたコレステロール応答性評価試験用食品62gを食パン2枚に挟み、前記評価試験用食品を5分以内で食べきれるように摂取させた。
前記評価試験用食品の摂食前及び摂食後120分、240分及び360分経過後に前記被験者から採血を行った。採血は、真空採血管(ベノジェクトII真空採血管、テルモ(株))と採血針(ベノジェクトII採血針S、テルモ(株))を用いて静脈から血液を採取した。得られた血液は血清RLP−C(血清中のレムナント様リポタンパク質コレステロール濃度)を測定するまで凍結保存した。
被験者から採取した血清RLP−Cを、Camposらの方法[Campos, E., Nakajima, K., Tanaka, A., and Havel, R.J., Properties of an apolipoprotein E-enriched fraction of triglyceride rich lipoprotein isolated from human blood plasma with a monoclonal antibody to apolipoprotein B-100. J. Lipid Res., 33, 369-380 (1992)]に基づいて測定した。つまり、アポタンパク質AI及びアポタンパク質B100に対するモノクローナル抗体を使用した沈殿法を用いて血清RLP−Cを測定した。血清RLP−Cの摂食後0〜360分の結果に基づいて、血清濃度−時間曲線下面積値(IAUC)を台形法により算出し、IAUCに基づいて被験者のコレステロール応答性を評価した。その結果を図1に示す。
図1は、各被験者(被験者番号1〜53)の血清RLP−Cの血清濃度−時間曲線下面積値(IAUC)を示すグラフである。
実施例1で得られた評価試験用食品の代わりに、卵黄型マヨネーズ15g(表1より、コレステロール含量22.5mg及び脂質10.8gを含有する)を評価試験用食品として用い、健常人(20〜60歳の血清総コレステロール濃度が200〜260mg/dlの男性15名)を被験者として、評価試験用食品の摂取後120分、180分、240分、及び360分後に採血を行って、血清RLP−Cを測定した以外は試験例1と同様の試験を行った。その結果を図3に示す。
実施例1において酸性水中油型乳化食品(卵黄型マヨネーズ)を用いないで、油脂(菜種サラダ油(S)、日清オイリオグループ(株))31.5部を配合した他は、実施例1と同様の方法により、比較例2のコレステロール応答性評価試験用食品を製した。
実施例1及び比較例2によって得られたコレステロール応答性評価試験用食品について、下記方法により、コレステロールの油脂への移行に及ぼす乳化の影響を評価した。その結果を表2に示す。
500mlのビーカーに、0.1%ペプシン溶液に塩酸を添加してpH2.0に調整した人工胃液300g及び実施例1で得られたコレステロール応答性評価試験用食品62gを入れて混合した後、37℃で30分間攪拌した。次に、遠心分離機(国産遠心器(株)製)を用いて3000rpmで10分間遠心分離を行い、分離された油脂部を回収した。その後、残渣を−20℃で24時間放置することで、乳化を破壊し、上記と同様の方法で遠心分離を行い、油脂部を回収した。前記2箇所で回収した油脂部をガスクロマトグラフィーに供し、油脂のコレステロール含量を測定した。比較例2で得られた評価試験用食品についても同様の方法にて、油脂のコレステロール含量を測定した。
表2より、酸性水中油型乳化食品を用いた実施例1のコレステロール応答性評価試験用食品は、酸性水中油型乳化食品を用いない比較例2のコレステロール応答性評価試験用食品に比べて、油脂中にコレステロールが効率良く移行されていることが理解できる。従って、本試験例によれば、上述のように酸性水中油型乳化食品にコレステロール含有物を混合することで、コレステロール含有物が乳化により油脂中に取り込まれ易くなるため、実施例1の評価試験用食品を摂取した際の胃内での乳化が助長されると考えられる。すなわち、実施例1のコレステロール応答性評価試験用食品は、コレステロール含有物及び酸性水中油型乳化食品を含み、1食当たりのコレステロール含量が400mg以上であり、かつ1食当たりの脂質含量が20g以上であることにより、コレステロールの吸収性に優れている。これにより、該評価試験用食品を用いて、被験者に負担なくコレステロール応答性を短期間で評価できることが理解できる。
実施例1において、酸性水中油型乳化食品(卵黄型マヨネーズ)の配合量を表3に示す配合量に変えた以外は、実施例1と同様の方法で4種類のコレステロール応答性評価試験用食品(実施例2〜5)を製した。次に、実施例2〜5のコレステロール応答性評価試験用食品を用いて、試験例2と同様の方法によりコレステロールの油脂への移行に及ぼす乳化の影響を評価した。結果を表3に示す。
Claims (6)
- コレステロール応答性評価試験用食品を摂取した被験者から採取された血清中のレムナント様リポタンパク質コレステロール濃度を指標として、コレステロール応答性を評価するコレステロール応答性の評価方法であって、
前記コレステロール応答性評価試験用食品は、コレステロール含有物及び酸性水中油型乳化食品を含む乳化物の形態であり、1食当たりのコレステロール含量が400〜600mgであり、かつ1食当たりの脂質含量が20g以上である、コレステロール応答性の評価方法。 - 前記コレステロール応答性の評価は、
前記コレステロール応答性評価試験用食品を摂取した被験者から採取された血清中のコレステロール濃度の所定時間内における変化量に基づいて行う、請求項1記載のコレステロール応答性の評価方法。 - 前記コレステロール応答性の評価において、前記変化量が所定値より大きい場合コレステロール応答性有りと判定し、一方、前記変化量が所定値より小さい場合コレステロール応答性無しと判定する、請求項2記載のコレステロール応答性の評価方法。
- 前記コレステロール応答性評価試験用食品は、
前記コレステロール含有物100質量部に対して前記酸性水中油型乳化食品60〜290質量部含む、請求項1乃至3のいずれかに記載のコレステロール応答性の評価方法。 - 前記コレステロール含有物を収容する第1容器と、
前記酸性水中油型乳化食品を収容する第2容器と、
を含み、
前記コレステロール含有物及び前記酸性水中油型乳化食品の混合物が、請求項1乃至4のいずれかに記載のコレステロール応答性の評価方法で使用される前記コレステロール応答性評価試験用食品である、コレステロール応答性評価試験用キット。 - 前記コレステロール応答性評価試験用食品において、
前記コレステロール含有物が乾燥卵黄であり、
前記酸性水中油型乳化食品が卵黄型マヨネーズであり、
1食当たりの前記乾燥卵黄の含量が15〜20gであり、かつ、1食当たりの前記卵黄型マヨネーズの含量が40〜60gである、請求項1乃至4のいずれかに記載のコレステロール応答性の評価方法。
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